4年目4月 SPZ選手権 伊達遥×草薙みこと
旗揚げ4周年記念大感謝シリーズが始まった。初戦の鹿島大会のセミで沢崎が初めてチョチョカラスからフォール勝ちを収めた。メインではAACタッグ挑戦の決まっている伊達、秋山が南、上原と対戦し、合体パワーボムで上原を倒しタッグベルト奪取をアピールした。
2戦目の新潟大会、メインで組まれたのは上原今日子対小川ひかるのAACジュニア戦。4ヶ月連続での同一カード。しかし両者の力関係は逆転したか。関節技でねちねち攻める小川に対して中盤、上原が新技を出した。首と足を掴んだままスープレックス気味に投げるキャプチュードで小川の意識を刈り取り優位に立ち、最後は2発目のキャプチュードで小川を沈めた。上原は初防衛に成功。
「もう、上原さんには勝てないのかな・・・」
小川ひかるは追い抜かれる苦しさを感じた。
第4戦の大阪舞州大会、新人の永沢舞のデビュー戦。相手は保科優希。
うーん、なんか緊張してきちゃった、どうしよー。
スリーパーで絞められ苦しい展開。アームホイップやフロントスープレックスなどで反撃させてもらえたが、最後は腕十字で痛めつけられた後、強烈なチョップで倒され3カウントを奪われた。勝負タイム10分46秒。
よくわからないまま控室へ戻った永沢に先輩レスラーから祝福の言葉。「これでレスラーの仲間入りだ、頑張れ」
第3試合で上原今日子がミミ吉原越え。中盤まではミミ吉原が関節技や掌底で優勢に進めたが、キャプチュードで頭から落とされて形勢逆転。弱ったミミ吉原を見てここが攻め時だと感じた上原は、ジュニア王座を獲ったフェイスクラッシャーで吉原を叩きつけカウント2.5、直後にフランケンシュタイナーを繰り出す大技の波状攻撃。吉原は3カウントを聞いた。勝負タイム10分42秒。
「そんなぁ・・・デビュー1年のコに負けるなんて」
その夜、ショックで落ち込んだミミ吉原を社長と井上秘書が飲みに連れ出したが、吉原はがっくりと落ち込み続けた。
さて、大阪大会のメインは沢崎、草薙組対秋山、伊達組のAACタッグ選手権。一進一退の攻防が続いたが、中盤に伊達が放ったSPZキック(ハイキックから改称)で草薙の動きが止まり、そのまま孤立した草薙が攻められて、最後は合体パワーボムで大ダメージを負った後の秋山のDDTに3カウントを奪われ王座移動。秋山、伊達組は約1年ぶりの王座奪還。
「やられた・・・決して油断したわけでは・・」
悔しさを押し殺して引き上げる草薙。AACシングルのベルトを獲って何とか勝てる相手だと心のどこかで慢心があったのだろうか・・・
第6戦の滋賀大会、保科優希の地元である上メインでタイトルマッチが組まれたので超満員。第3試合ではまた上原今日子対ミミ吉原の「残酷な世代交代」カード。
これで負けたらあたしは・・・
積極的に攻めて、ドラゴンスリーパーも出して、上原の若さとパワーに負けないよう精一杯の力を出した。フランケンシュタイナー、フェイスクラッシャーをもらったが立ち上がり、フロントスープレックスで投げ返す。
―この一撃にすべてをかける!
上原が立ち上がってくるや右ハイキック一閃。頭に命中。
―入った。ゴメン上原さん。
ワン、トゥ、・・・
カウント2.8でフォールを跳ね返す上原。
―そんな、返された?
ここで決めないといけないと焦った吉原はドラゴンスリーパーを再度繰り出したが、あまりにもロープに近く逃げられてしまった。
ハァ、ハァ・・・
焦る吉原に上原が組み付きロープに振って、帰ってきたところを頭をつかまれて、この日2度目のフェイスクラッシャーを食らい、吉原は頭を打って動けなくなった。そのままフォールされてカウント3.
デビュー1年の若手相手によもやの2連敗。
「ちょっと、ごめん、一人にさせて・・・」
心配した社長が控室前まで来たが、吉原は振り切ってコスチュームの上からジャージを着てそのまま体育館を出てタクシーに乗り、宿泊先のホテルへ一人で帰ってしまった。
このバタバタで動揺したのか、次の試合は南対沢崎のシングルマッチだったが、荒れた展開の末に南はフォール負けを喫した。
大津大会のメインは草薙対チョチョカラスのAAC選手権試合。「クサナギはダテのようなデンジャラスなハードヒットを持っていない、スープレックスでオーソドックスに攻めてくる選手だ。強敵だがチョチョなら勝てる、頑張レ、ベルトを持ってメキシコに帰ろう」ハヤトール氏のアドバイスを受けチョチョカラスがベルト奪還に動いた。
ハヤトール氏の暗示?を受けたチョチョカラスはリングを縦横無尽に飛び回る本来の持ち味を出し草薙を追い込む。しかし中盤、草薙も兜落とし、ノーザンライトスープレックスで反撃。チョチョカラスもジャーマンで応戦。カウント2.8で返す草薙。チョチョカラスはバックドロップを狙うも空中で切り返されて押しつぶされた。そのあと草薙の2度目のノーザン。叩きつけられた際に草薙の肩がチョチョカラスのみぞおちに入り、チョチョカラスは無念の3カウントを聞いた。
―去年の秋には何もさせてもらえなかったチョチョカラスさんに勝てたー
「クッ、負けてしまった」
「ドント・ウォーリー、前半は勝ってた、あのカブトオトシとかいう投げを早めに繰り出してきたクサナギがウマカッタ。次ヤレバ勝テル、信ジロ」
「・・・そうね」
翌朝、大津のホテル前、集合時間にミミ吉原は現れた。
「-もう大丈夫よ、後輩にひとつやふたつ負けたぐらいで落ち込んでられないわ」
―よかった。
バスは東京へ戻り、移動日をはさんで行われた八王子大会―メインは南、吉原、小川のチーム関節地獄と、沢崎、草薙、上原の6人タッグマッチ。相変わらずの大熱戦。個々の力で上回る一期生プラス上原、連携で対抗する関節地獄。試合は6人の持ち味が入り乱れる大激戦となった。
「もう逃げられないわよ!」
小川ひかるのSTFが草薙を捉える。草薙もしかしAACチャンプの意地をみせ振りほどき、タイガースープレックスで逆襲。カウント3直前で南のカットが間に合った。小川はフラフラになりながらも逆片エビで草薙に一矢報いたあと、
「ミミさん!」吉原にタッチ。
草薙も沢崎にタッチ。
「これで終わりですっ!」
ミミ吉原、渾身のドラゴンスリーパーが沢崎を捕らえる。これはなんとか逃げた沢崎だったが、もはやフラフラ状態で、続く掌底に倒されて、ミミ吉原が格上の沢崎からカウント3を奪取。草薙も上原もコーナー下でダメージを負っていてカットにすばやく入れなかった。場内割れんばかりの吉原コール。32分30秒の大激闘。チーム関節地獄の3人で手上げ。
「やっぱりプロレスは面白いわ」
控室に戻った吉原がしみじみと呟く。
最終戦横浜大会、SPZのタイトルマッチが行われるとあって館内は超満員の盛況。初代王者・伊達遥の初防衛戦の相手は、よりによって先月AAC戦で敗北を喫した草薙みこと。
中盤、草薙がフロントスープレックスの連打で活路を見出し、前回の決め技のサソリ固め、ドラゴンスリーパーなどで伊達の動きを止めた。しかし伊達も切り札のSPZキックからフォール。
まだ動ける、まだ闘える。
カウント3直前で右肩を上げて返す草薙。すぐに伊達のアキレス腱固め。草薙はロープに逃れる。そのあと草薙がボディスラムで転がして、コーナー最上段からボディプレス。これは意地で返す伊達、しかしー
チョチョカラスを下したノーザンライトがここで火を噴いた。叩きつけられた衝撃、伊達返せず3カウントを聞いた。
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SPZ世界選手権試合
○草薙みこと(30分23秒 ノーザンライトスープレックスホールド)伊達遥
初代王者が初防衛に失敗。草薙みことが2代目王者となる。
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「解説のミミ吉原さん、勝敗を分けたポイントは」
「うーん、総合力の差が出ましたね、草薙選手は投げ技、極め技、飛び技と有効な技の引き出しが多いですからね、蹴りしかない伊達選手との違いが出たと思います」
かくて30分23秒の激闘を制した草薙みことがSPZの2代目王者に輝き、AACと合わせてシングルの2冠王。富沢レイが草薙の腰にベルトを巻いた。
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