第45回 SPZタッグ初代王者決定戦 草薙、小川×秋山、沢崎
12月シリーズ「スノーエンジェルシリーズ2014」が開幕。
「社長、新日本女子さんからEXタッグリーグに草薙選手と伊達選手の招待状が・・・」
「あ、断っていいよ。SPZタッグ王者決定戦やるから」
「秋山選手が負傷、軽傷ですが」
「参ったな、2戦目の埼玉大会のタッグ王座決定戦だけ出させて対応しよう」
新咲祐希子をAACに海外修行に出す。「上位が鉄板状態なので」海外で経験を積ませることにした。
12月最初の試合は札幌キターアリーナ大会。この団体、北海道と東北はきちんと回る。うまい物好きの社長の性格が現れているのかも知れないが。
「さあ今日も超満員です、精一杯戦ってお客さんを喜ばせて、終わったらおいしいものを食べましょう」
試合前の赤コーナー側控室、今野社長が選手に檄を飛ばす。
「おおーっ!」
しかし、メインに出る上原と伊達は浮かない顔をしていた。
札幌大会第1試合、6時半の女の定位置に戻った保科が渡辺と手堅く戦って手堅く勝利。
第2試合は小川ひかる対ウィン・ミラー。武闘館でも2回組まれたファン好みのカード。
「オアーッ」
気合いを発しながら小川をコブラツイストで絞るミラー。
「オガワ、オガワ、オガワ、オガワ・・・」
館内に響くオガワコール。小川は必死の思いでロープに手を伸ばした。そのあともややミラーが優勢で小川得意の関節技を出させなかったが、12分ごろ結末は唐突に。小川が出したステップキックでミラーが少しぐらついた。その隙を狙ってミラーの背中に回り両腕をフックして
逆さ押さえ込み。
あっけにとられる対戦相手のミラーと満員の観衆。この団体は殴り極め投げが主流なので、こんなムーブをやるのは小川しかいないし、小川も裏技にしているので時々しか出さない。
ワン、トゥ、スリー。
井上レフェリーの手がマットを3つ叩く。
「12分4秒、逆さ押さえ込みで小川ひかるの勝ち」
一瞬の静寂、そして歓声。まだ余力があったミラーだが今回はしてやられたぜといった感じで小川と握手をして退場。
「いやーうまいね小川さん」
「あんなので決まるところ、生ではじめてみたよ」
小川は一礼してから退場。ファンは大歓声。
第3試合は沢崎対ドリュークライ。前の2試合で会場のファンはすっかり出来上がっていて、沢崎の繰り出す技一つ一つに声援が飛ぶ。沢崎が地力の差を見せて、最後はジャーマンで完勝。その試合が終わると休憩。ファンは好カードのシングルマッチ3試合の余韻に浸った。だが本当に面白いカードはまだまだ残っている。
休憩明けはSPZ王者吉田龍子と永沢舞のシングル戦。どちらも相当の実力者なので激戦が予想された。だが吉田は強いときは強いのだが、草薙のような安定感がない。永沢に終始主導権を握られ、最後はキャプチュードで動きが鈍ったところを、両腕を交差されて捕まえられ、肩車で担ぎ上げられてそのまま後方へスープレックス。JOサイクロン発動。強靭な足腰とブリッジワークがうまくないとできない高難易度の技だが、ガタイのいい吉田にも決めてしまうのだから恐れ入る。これを吉田は返せなかった。ノンタイトル戦なのでベルトは移動しないが、吉田は憮然とした表情で引き上げた。
セミファイナルは草薙、富沢の異色タッグ(でも2期生の同期)に南姉妹というカード。やはり草薙の実力が抜きん出ているので南姉妹は苦戦したが、富沢が出てきたところで南がラッシュをかけ、ジャーマンでカウント3。
メインは伊達、上原対チョチョカラス、ナスターシャハンのAACタッグ戦。伊達とのタッグ解消を宣言した上原だったが、AACタッグのベルトを持っている以上は防衛戦をしなければいけないので久しぶりに伊達とのタッグ。でも大会場札幌のメインなので目の前の相手に集中。なにしろ相手はAACエースのチョチョカラスにEWAエースのナスターシャなので穴がない。試合はハンの決め技絞め技ショー。まずドラゴンスリーパーで上原に大ダメージ。ついで出てきた伊達にもSTFで長時間しめあげて大ダメージ。そのあとチョチョカラスが華麗な戦いでつないだあと、ハンが出てきて上原にアキレス腱固め。これが極まってしまい。突然もがき苦しみだす上原。伊達がカットに入ろうとしたときにはもう上原はギブアップの言葉を口にしていた。勝負タイム24分1秒、ハンの技術がギラリと光った。これでベルト移動。
試合後、手早くリングを撤収し、選手たちは札幌の街へ。4期生以降の5人は札幌ラーメン。今野社長と井上秘書、小川、南はすすきのでカニ鍋をつついた。
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「埋まらなかった・・・」
2戦目のさいたまスペシャルホール大会。3万人収容の会場で2万5千人の入り。メインのSPZタッグ王者決定戦のカードが先月のブトウカン大会と一緒なので訴求に乏しかったのだろうか。
さてメイン。青コーナー側から秋山沢崎、赤コーナー側から草薙小川が入場。
「えー、この試合は、スーパースターズブロレスリングゼットがえー、認定する、えー、タッグ選手権試合であることを認定する。えー、2014年12月10日、えー、SPZ代表取締役今野和弘、えー、代読京スポ新聞若林太郎」
いつものように京スポ新聞の記者若林氏が認定証を読み上げる。
「さて解説の保科さん、この試合のポイントは」
「そうですね~、草薙さんひとりでどれだけ秋山選手沢崎選手を追い込めるかというのと、小川選手が捕まらずに草薙さんにスイッチできるかがポイントだと思います」
「そうですか、秋山組はやはり小川を狙ってきますか」
「そうですね~、小川選手、4人の中で実力的にはいちばん・・・そのまあなんですから。でも、小川選手と組んだときの草薙選手は強いですよ~」
試合は大熱戦となった。中盤小川が秋山のコブラツイスト、ドラゴンカベルナリア、そして合体パワーボムに捕まりもうダメかと思われたがなんとかステップキックで反撃し草薙にタッチ。草薙が獅子奮迅の活躍を見せ、秋山を投げまくり草薙流兜落とし、しかしここで秋山が場外へエスケープ。ここが勝負の分かれ目、場外DDTで追い打ちをかけた後リングに戻ったが、秋山がなんとか反撃して沢崎にスイッチ。草薙の息も乱れていたのでいったん小川にタッチしようかと目を向けたが、小川はまだリング下でうずくまっている。
「あ、孤立したか・・・それでもやるっ・・・」
それでも沢崎をノーザンで攻めるが、草薙も長時間二人を相手にし続けてスタミナ切れ。足が止まったところを沢崎がジャンピングネックブリーカー炸裂。草薙はこの後のフォールを返せなかった。小川がふらつきながらカットに入ったが秋山が妨害。勝負タイム54分17秒。4選手大の字。館内は大声援。
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SPZ世界タッグ初代王者決定戦
秋山美姫、○沢崎光(54分17秒、ネックブリーカーからの片エビ固め)草薙みこと×、小川ひかる
※秋山・沢崎組が初代王者となる
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こうして一期生の同期入門のふたり、秋山・沢崎がSPZタッグ初代王者に輝いた。
勝った秋山沢崎組、渡辺智美にベルトを巻いてもらい満面の笑顔。控室に戻ってビールで乾杯した。
敗れた小川草薙は控室でバッタリ倒れこむ。ハイブリッド南が二人のシューズの紐を解く。
「ハァ、ハァ、草薙さん・・・後半助けに入れなくて、本当にごめんなさい・・・」
「いや、私もまだまだ・・・修行が足りない」
「みこっちゃん、小川さん」今野社長が現れた。
「いい試合だったよ、また次がある」
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