第35回 5年目3月 盛岡大会
5年目3月
3月シリーズ「バトルアトランティス2014」は東北地方を巡業する。
巡業する選手たちの一日の流れは下記の通りである。
「おはよーございまふ」朝10時青森市のビジネスホテル前に集合。
「小川さん、全員いる?」
「はい、大丈夫です」
この団体はストイックな選手が多いので、朝の集まりはいい。逆に社長や営業スタッフの方が業務上の交際や細かい雑務に追われて井上秘書に携帯を鳴らされて起こされるパターンが多い。
「じゃあ、出発だ」
路線バスを改造した移動車両に乗り、すぐに外国人用の宿舎に立ち寄りEWAの外国人選手やデスピナといった招待選手を乗せる。バスは東北自動車道をひた走り、きょうの興行開催地盛岡へ向かう。移動バスの中では若手選手はたいてい眠っている。小川ひかるは「個人情報保護士認定試験」といった本を読んだりしている。南利美はポータブルDVDで試合チェックに余念がない。沢崎秋山は眠ったまま過ごし、伊達遥は携帯サイトを見て時間をつぶしている。井上霧子秘書はお菓子を食べ漁り、今野社長は新聞や雑誌のチェックをしたあとはノートパソコンを開いてメールを打っている。最近は移動の際にも高速道路が使えるほど団体の懐具合もましになってきた。
午後1時ごろ盛岡市街に入った。昼食は各自で盛岡市内で軽くすませ、そのあと2時過ぎに会場「友愛ドーム」入り。まず全員でリング設営。今野社長も「メタボリックシンドローム」防止のため鉄骨を運ぶ。土台の鉄骨を組んで、板を敷いてマットを敷く。キャンバスを敷き詰め、エプロンを張りロープを張って完成。20人がかりなので設営は比較的速いほうだ。時間が押しているときは外国人選手も手伝ってくれる。
このころ会場設営スタッフが来て、音響関係や照明関係のセッティング。大型ビジョンも設置。今野社長は進行具合を確認しながらロープの張り具合をキュッキュッと調整。そのあと自分で受け身なども軽く試して、リングの音の鳴り具合を確認してみる。このへんで16時ごろ、選手がわらわらと練習。会場の外周を草薙みことと富沢レイ、伊達遥の3人が軽快にランニング。リング上では沢崎と秋山が受け身の練習。その隣で南と小川が関節技のスパーリング。リング下では保科、渡辺、ミシェール滝の3人がまったりとストレッチで身体をほぐす。会場の隅で吉田龍子と上原今日子が黙々とバーベルを上げている。
会場隅のテントでは今野社長と井上秘書が長机にグッズを並べていた。販売商品はTシャツ(伊達、沢崎、秋山、上原、草薙、保科、小川、富沢の8種類、各2500円)と販売された写真集、SPZの激闘を収録したDVD(3000円)である。
17時半、「開場しまーす」と井上秘書が発し、選手はいったん控室へ。日本人選手は青コーナー側と赤コーナー側、外国人選手は外国人選手控室に陣取り準備する。ほどなく観客が入ってくる。今野社長と井上秘書は営業スタッフとともに売店で「増収」に励んだ。
レイちゃんTシャツが売れてきたな・・・
そう思いながら今野社長が販売に没頭していると「お!社長!」「あ!霧子さーん」と常連ファンから声がかかる。弱小団体から始まったので、いい意味での手作り感の残っている団体とファンの間では評判で、社長がグッズ販売の先頭に立っているのは周知の事実である。
そして試合開始の18時半が近づき、社長は売店を離れてスタッフの控室へ向かい、「イタリー製高級スーツ」に着替えて、木槌とゴング、選手たちのテーマ曲の入ったノートパソコンを携えてリングサイド本部席へ向かう。本部席に座るのは社長と京スポ新聞、週刊ハッスル、週刊リングの記者。社長が本部席に陣取ったところで場内暗転。館内がワアア・・・と歓声。
木槌でゴングを5回叩き、社長が挨拶のあとカードを読み上げる。第3試合のほかは顔見せ的なカードを並べたので反応は今ひとつであった。
第1試合は「6時半の女」ミシェール滝対「シングル戦でいまだ勝ち星のない」渡辺智美。永沢舞の連敗記録をとうに更新している。ミシェール滝の格好つけたファイトに館内笑いが起こる。最後は客席にアピールしまくってからミサイルキックで滝が快勝。続く第2試合は「箱入り娘。写真集5冊」保科優希対「常連外人」デスピナ・リブレ。保科もアキレス腱固めや逆片エビなどで良く攻めたが、最後はデスピナが鋭いローリングソバットを決めて3カウント。ここで休憩。
休憩後の試合は南利美対上原今日子。関節のヴィーナスの登場に場内は沸き立つが、試合が始まったら独特のレスリングに館内は静まり返る。だが上原もグラウンドでの攻防には少し付き合っただけで、ドロップキックやローリングソバットでダメージを与えてゆく。しかし中盤、逆片エビ固め、腕ひしぎと南が関節地獄で上原の動きを止める。裏投げはカウント2.9で返した上原だったが続くフランケンシュタイナーを返せず3カウントを聞いた。24分31秒の真剣勝負に場内拍手。
セミは草薙、小川のAACタッグ王者チームに最近急速に力をつけてきた吉田龍子、富沢レイの異色タッグという組み合わせ。4人のコール時には大量の紙テープが舞う。草薙組の先発は小川。吉田のラリアットを脇固めで切り返して沸かせる。小川のうまさは相手を深追いせず、すぐ草薙にタッチするところ。さすがに吉田と草薙では吉田の分が悪くなるが、吉田が早めのスプラッシュマウンテンで草薙に大ダメージを与える。これで小川がダメージ回復のために捕まってしまう。どうにかしのいで草薙にスイッチ。頃合いを見て草薙が兜落とし発動。豪快な投げ技に館内沸く。小川は富沢の前に立ちふさがる。これで吉田はカウント3を奪われた。タッグ王者が連係の良さを見せて快勝。頭を押さえて悔しそうに引き上げる吉田。人気チームの勝利に館内沸く。
そしてメイン。地方大会ではメインは6人タッグが組まれることが多い。沢崎秋山伊達の一期生トリオに、ナスターシャ・ハン、ロレン・ニールセン、ユーリ・スミルノフのEWAトリオ。単純明快な日本人対外国人のカード。セミまでの激闘ですっかりファンも出来上がっているので館内は大盛り上がり。試合は伊達の蹴り、沢崎の投げが良く決まり、秋山も良くつないで外国人チームを追い詰めて行って、最後はなんと秋山がナスターシャ・ハンを肩車で担いで、コーナー最上段から沢崎がダイビングラリアット!ダブルインパクト炸裂。滅多に見られない超絶連係に盛岡のファンは大声援。EWAのトップ、ナスターシャもこれは返せず3カウントを聞いた。17分13秒と、勝負タイムはSPZにしては短かったが、豪快な結末にファンは沸いた。
メインが終わったのが20時半、日本人選手総出でリング撤収。21時半には全員が会場を後にしてバスに乗り込んだ。盛岡市内の宿舎に荷物を置いて、各自連れ立って食事へ。伊達秋山沢崎は焼肉店で肉類を補給し、少しビールを飲んだ。草薙富沢上原は和食ファミレスチェーンで向かい、南と滝は吉田を連れて盛岡での行きつけの洋食店へ。今野社長と秘書井上は小川ひかる、渡辺智美と寿司屋へ。負け続けの選手へ高級食事で懐柔するのは旗揚げ以来の手法である。23時過ぎには各自宿舎へ戻り、翌日も秋田で興行があるので早めに寝る。
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こうして東北巡業も進んでゆく。第3戦の秋田大会、南がまたも吉田に敗れるハプニング。スプラッシュマウンテンを返す事ができなかった。勢いに乗る吉田は翌日の仙台大会でも秋山相手に優位に試合を進め、26分の激闘の末ドロップキックで秋山から3カウント。
仙台大会のメインは沢崎対ナスターシャ・ハンのEWA選手権。EWAのエージェント、クリステン氏が「EWAベルトはうちの宝ダ!ナントシテモ取り返してコイ!」と厳命し、「奮起した」ナスターシャが連続挑戦。こんどはハンの執念が勝り、試合終盤STFとドラゴンスリーパーが決まって沢崎からギブアップ勝ち。ベルトがEWAに戻った。
第7戦宇都宮大会のメインは、草薙、小川のAACタッグ王座に伊達、上原の「南国ストロングス」が挑む。
―まずまっさきに小川さんをつぶして草薙さんを孤立させる。いくら草薙さんでも1対2では隙ができるー
そう作戦を立てて王者組に挑んだ伊達組。序盤、伊達が小川に打撃で猛攻を仕掛けて、エルボーでいきなり小川を鼻から流血に追い込む。やっと反撃したあと草薙にスイッチしたが、上原と伊達にかわるがわる攻められては草薙にもスキが出始め、そこを狙った伊達、殺人ニーリフト2連発。1ヶ月前のSPZタイトル戦の惨劇が蘇る。ここは小川のカットに救われた草薙、だが、カットに入った小川を二人がかりで殴って場外に落として、孤立した草薙に合体パワーボム。さすがの草薙みこともこれは返せなかった。王座移動。
最終戦は埼玉・市ヶ谷記念ホール大会。第3試合で富沢レイが23分の激闘の末、小川ひかるをローリングソバットで前月に引き続き下す。セミ前は南対ナスターシャ・ハンの「関節技世界一決定戦」。ハンがドラゴンスリーパーで南からギブアップを奪った。セミは草薙、吉田のタッグがニールセン、スミルノフのEWA軍と激突し、草薙がニールセンをフォール。そしてメインのSPZ選手権は、伊達遥対沢崎光のSPZ選手権。
沢崎は直近2回のSPZ選手権では勝てないまでも2回連続で60分フルタイムドローを演じているのでなんとかするかと思われたが、今回は伊達が終始ペースを握り、沢崎のタイガースープレックスを受け切って、そのあと殺人ニーリフト2連発。沢崎悶絶。フォールを返せず。伊達が初防衛に成功。
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SPZ世界選手権試合
○伊達遥(20分くらい、ニーリフトからの片エビ固め)沢崎光×
第6代王者が初防衛に成功。
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