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2007年3月31日 (土)

第73回 1期生・デビュー7周年

8年目5月

かんたんなあらすじ:

横浜戸塚に本拠地自社ビルを構えるまでに成長したお嬢様プロレス団体「SPZ」は8年目5月を迎え、1期生は相前後して「デビュー7周年」を迎えるに至った。金儲け主義者の腹黒い「今野社長」は、人気の高い1期生の7周年の「メモリアルマッチ」を組むことにより集客増を図ろうともくろむのであった。

最終戦は横スペ大会。本拠地に戻ってきた。きょうはタイトル戦も組まれていないカードだが、「旗揚げ7周年記念スペシャルマッチ5試合」を行うので、超満員の観衆で埋まった。

第1試合はスイレン草薙対マイトス香澄。序盤はあどけなさを残す両者の殴り合い。

「これがボクのとっておきだよ!」

マイトスのフロントスープレックス炸裂。しかしカウント2.5で返したスイレン草薙が、

「これで決めます!」

フロントスープレックスのお返し。マイトスは衝撃で目の前が真っ黒になり3カウントを奪われた。

「スイレンさん投げ技は鋭いですね、草薙さんのように強くなるかもしれません」

「・・・あのくらいは当然ですね。草薙流は投げ技の武術ですから、問題は技ではなくて心です。あのコがそれをわかってくれるかどうかなんですが・・・」

控室のモニタを見ながら草薙みことと小川ひかるが話していた。

第2試合は小川ひかる、富沢レイ対ミレーヌ・シウバ、デスピナのタッグマッチ。シウバとデスピナは旗揚げ直後のSPZ、まだ若手だった1期生のカベとして最初に立ちはだかった選手たち。これもひとつのメモリアルマッチといえた。試合は富沢レイがデスピナにストレッチプラム。

「うぐぐぐ・・・」

「アブナイ!」カットに入ろうとするミレーヌ・シウバ。しかし良く見ていた小川が「抱きつき」で阻止。

「ギブアップ・・・」デスピナが降参の言葉を口にした。ながいあいだアイドルレスラー扱いで同期の草薙に実力は遠く及ばない富沢も、そこそこのレスラーとなら充分渡り合える実力をつけてきた。

第3試合は次代を担う若手実力者のタッグマッチ。上原今日子、永沢舞対吉田龍子、ハイブリッド南のタッグ戦。現在進行形のSPZの激しい戦いを4選手が繰り広げる。1期生2期生がトップを離れる日はそう遠くない。そのあとはこの4人がSPZを支えてゆかなければならない。27分の激闘の末、最後は永沢がSPZ王座奪取の勢いそのままに、ハイブリッド南をJOサイクロンで仕留めた。

*********************

その試合が終わると休憩。そのあと場内が暗転。

「保 科 優 希 デ ビ ュ ー 7 周 年 記 念 試 合 」

オーロラビジョンに流れる巨大文字。場内のファンが一斉に手拍子が。そして流れる「ボレロ」。

ほわほわの赤いコートを来た保科優希がども、どもと手を振りながら笑顔で入場。

普段は「6時半の女」として第1試合で盛り上げ役を担う保科だが、きょうは7時40分に登場。保科も1年目の4月、横浜赤レンガ大会のSPZ旗揚げ戦でデビューし、長らくこの団体の前座戦線を支えてきた。永沢も吉田もハイブリッド南も、新人の頃はこの選手にもまれて、素人からいっぱしのレスラーへ変貌を遂げてきた。そして保科も先月デビュー7周年を迎えたが、「7冊目の写真集撮影」のため、メモリアルマッチは5月に延期となっていた。もっとも、対戦相手は今野社長のワンパターンなマッチメイクの影響で過去100回以上シングル対戦した5期生の渡辺智美である。

賞状と金一封の授与セレモニーの後、今野社長のコールを受ける保科。

「赤コーナー、滋賀県大津市出身、保科、ゆうーきー」

エメラルドグリーンとピンクの紙テープが乱れ飛ぶ。万年前座の選手だが、根強い人気を誇る。

―勝つことが、保科さんにできる最高の恩返しだ。

渡辺智美がここ2年で覚えた技を駆使して、一歩一歩保科を追い込んでゆく。保科も懸命にアキレス腱固めで応戦するが、最後は渡辺が走りこんでのヒップアタックで保科からカウント3を奪った。勝負タイム24分36秒の、アイドルレスラー同士とは思えない激戦だった。

かなりの時間をかけて起き上がった両者がリング上でガッチリと握手。白星では飾れなかったが、保科のメモリアルマッチは幕を閉じた。

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★保科優希デビュー7周年記念試合★

渡辺智美(24分36秒、ヒップアタックからの片エビ固め)保科優希

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続く第5試合、またオーロラビジョンには巨大字幕が。

「南 利 美 デ ビ ュ ー 7 周 年 記 念 試 合」

「スピード」のテーマ曲がかかると、ものすごい歓声を受けながら南利美がいつも通りクールな表情でリングへ向かう。1年目の5月、旗揚げ第2弾シリーズ初戦の名古屋大会で小川ひかるを破ってデビューを飾った南もデビュー7周年。SPZベルトを2度巻いた、この選手の活躍ぶりはいまさら語る必要もない。最近こそ能力に翳りが見えはじめ、トップ戦線から離れて前半の試合に回ることも多くなったが、姉妹タッグや草薙連合でメインやセミに出るときはきっちり関節地獄で存在感を誇示する。

大歓声が轟き渡る中セレモニー。京スポ新聞若林記者が記念の盾、今野リングアナが金一封を手渡し、そのあと対戦相手の「ちょい悪常連外人」マリア・クロフォードが入場。いくら南の能力が落ちてきてもこのクラスの選手ならファンも安心してみていられる。

「赤コーナー、高知県高知市出身、みなみー、としーみー!」

今野社長のコールを受け、ものすごい量の紫の紙テープがリングに舞う。リングが見えなくなるくらいの量だった。

午後8時15分、ゴング。ミナミ、ミナミの大声援を受けながら、落ち着いた試合運びでマリア・クロフォードを追い込んでゆく南。ときおり脇固めや逆片エビを挟んで体力をじわじわと奪って、最後は裏投げ、延髄斬りをたたきこんで3カウントを奪った。場内ワアアアと大歓声。勝負タイム16分4秒。

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★南利美デビュー7周年記念試合★

南利美(16分4秒、延髄斬りからの片エビ固め)M・クロフォード

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南利美、リング下で珍しくマイクを持ったと思ったら、

「どうもありがとう」

一言だけ言い残して退場。

その次もメモリアルマッチ。

「秋 山 美 姫 デ ビ ュ ー 7 周 年 記 念 試 合 !!」

「DETECT」に乗って、白いロングガウンを羽織った秋山美姫がリングへ。またまた賞状と記念の特大クリスタルグラス、金一封が贈られた。対戦相手はEWAのドリュー・クライ。現在の力関係から行って秋山にはやや分の悪い相手だ。

「赤コーナー、鳥取県米子市出身―。あきやまー、みーきー」

かなりの量の水色紙テープが舞う。1年目5月の旗揚げ2弾シリーズ初戦・名古屋大会でデビューした少女は、南や伊達、沢崎たちと出世争いを繰り広げ、関節技も飛び技パワー技もなんでもこなせる選手として一目置かれるようになり、AACシングルのベルトも巻き、沢崎とのタッグでもSPZタッグベルトも巻く一流レスラーへ駆け上がった。最近でもタッグではまだまだ通用する力を持っている。

試合はさすがにドリューの打撃技に苦しんだが、試合中盤に起死回生のドラゴンカベルナリア。この技で何人もの選手が泣いた。最後は息切れを起こしたドリューをコブラツイストで絞り上げてギブアップを奪った。相変わらずの技のキレ。場内にアキヤマコールが響き渡る。

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★秋山美姫デビュー7周年記念試合★

秋山美姫(15分くらい、コブラツイスト)ドリュー・クライ

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そして8時55分、セミファイナル。

「★ 沢 崎 光 デ ビ ュ ー 7 周 年 記 念 試 合 ★」

一期生メモリアルマッチ4連発のトリは「エクスプロージョン」がかかる中、「脳天クラッシャー」沢崎光がいつものようにTシャツを羽織ってリングイン。そのあと表彰セレモニー。そしてリングアナのコール。

赤コーナー、広島県尾道市出身、さわざきー、ひかーるー!」

南、秋山と同じく1年目5月の名古屋大会でデビューした沢崎、団体の成長と歩調をあわせるように力をつけ、タッグ戦線を中心に数々のベルトを巻いた。

対戦相手は新咲祐希子17歳。勢いに勝る新咲が獣のように沢崎に襲い掛かり、沢崎は得意の投げを出せずにズルズルと追い込まれ、最後は新咲のフェイスクラッシャー。これはカウント2.8で返した沢崎だったが、直後の新咲のショルダータックルにはね飛ばされ、続くフォールを返せなかった。

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★沢崎光デビュー7周年記念試合★

新咲祐希子(12分くらい、ショルダータックルからの片エビ固め)沢崎光

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メインイベントは特別試合、草薙みこと・伊達遥の「一夜限りの超ドリームタッグ」がナスターシャ・ハン、チョチョカラスの「最強外人連合」と激突。メモリアルシングルマッチ4連発で、すでに館内の時計はゴング前の時点で21時20分を回り、やや観衆も疲れ気味だったがドリームタッグに沸いた。

試合は伊達が外人組の攻勢の矢面に立ち、持ち前の打たれ強さで付け入る隙を与えず、逆にチョチョカラスを「殺人ヒザ魚雷」で戦闘不能にして、孤立したナスターシャを草薙が落ち着いて「草薙流兜落とし」で仕留めた。19分42秒。決してロングマッチの死闘ではなかったが、館内は豪華タッグに酔いしれた。そしてSPZを支えてきた「2大怪獣」がガッチリと握手。

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2007年3月30日 (金)

第72回 8年目5月 永沢舞「やったね!」

8年目5月。

今野社長の胸に「引退後の選手の働き口を確保しておきたいから」という思いがあり、大阪阿部野橋にグッズショップ「SPZフィーバー」3号店を出店。あとは延び延びになっていたAACの引き抜き返しを1億2千万円をつぎ込んで行った。

5月シリーズはSPZ所属選手フルメンバーが巡業参加、そして外国人も6名参戦とあって、22名での大所帯サーキットとなった。カードを考えるのも一苦労。地方大会はメインやセミで、軍団構成をもとにタッグマッチや6人タッグマッチを並べてゆけばよいが、1万人規模以上の大会場では「ひねり」を利かせたカード編成をしなければ常連ファンが来てくれない。

**********************

第4戦名古屋大会、第4試合でハイブリッド南対チョチョカラス。激戦の末、ハイブリッドがネオ・サザンクロスロックでAACのトップにギブアップ勝ち。わずか2年でトップレスラーと肩を並べるに至った。

「まだまだ、膝蹴り女とみこみこを倒さないと・・・」

で、セミ前が永沢舞対「膝蹴り女」伊達遥の対決。こまかいことを何も考えずに投げ技を乱発した永沢が優位に進め、伊達はヒザ魚雷を発射するどころでなく防戦一方。

「くっ!SPZキックだ!」

がすっ!

伊達の渾身のハイキックが永沢の頭を直撃。

「いったーい。じゃあこっちも、ネコキーック、とぉー!」

ばきっ!

重さはないがスピードのあるハイキックが伊達の顔面を直撃。伊達は鼻から血を滴らせながら吹っ飛んだ。

    ・・このコ、こんなことができた・・・の・・?

自分の得意技をやり返された伊達は呆然。

「いまがチャ-ンス!」

背後から腕をとってクロスさせてJOサイクロン!伊達はなすすべなくカウント3を聞いた。

セミファイナルは「ドリームカード」吉田龍子、上原今日子対草薙みこと、南利美のタッグマッチ。大物選手4人の激突に場内は盛り上がった。

「リミさん!そっち!」

草薙と南のダブルラリアットが吉田を捕える。代わった上原にも投げまくりの草薙劇場を展開。しかし長時間、強者2人と渡り合って疲れた草薙が南にスイッチすると攻守ところを変える。しかし南も飛びつき腕ひしぎで再度流れを変える。最後は草薙と吉田が一騎打ちの様相を呈してきた。

「うりゃああああっ」

吉田のプラズマサンダーボムが草薙をマットにたたきつける。カウント2.8で返す草薙。ここで30分時間切れのゴング。

メインはナスターシャ・ハン対新咲祐希子のEWA選手権。どうみても「集客ねらいと、トップまであと一歩の若手に経験をつませる」カード。

新咲も良く攻めたのだが、

「骨がきしむ音を聞かせてちょうだい・・・」

STFが長時間決まり、新咲の体力をごっそり奪ってゆく。しかし新咲もフェイスクラッシャーで持ち直すが、最後は相手の動きを良く見ていたナスターシャが背面トペで押しつぶしてのフォール勝ちをスコア。EWA王者が防衛に成功。

**********************

翌日の大阪城大会、メインは吉田、新咲のSPZタッグ王座にナスターシャ・ハン、ドリュー・クライのEWAトップ2が挑むカード。

「ゆっこ、きょうは本当に負けらんないよ、まけたらうちのタッグベルトが海外流出だから」

「はいっ、頑張ります」

自団体選手同士での奪い合いとは別の緊張感がある。

「いくぞっ!フィニッシュはこれだっ!」

吉田の「殺人」スプラッシュマウンテンがドリュークライの意識を闇に落とす。続くフォールはナスターシャのカットに阻まれた。

「ユキコ!おまえが決めろ!先輩命令だ!」

新咲とタッチして吉田はナスターシャを「ぶちかまし」で場外に落として、さらに追撃。教科書どおりの分断作戦。

あとは新咲がリング上に転がった状態のマグロ・・・いや、ドリュー・クライをフェイスクラッシャーで料理するだけだった。王者組が4回目の防衛に成功。

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SPZタッグ選手権(60分1本勝負)

吉田龍子、○新咲祐希子(30分くらい、フェイスクラッシャーからの片エビ固め)ナスターシャ・ハン、ドリュー・クライ×

王者組が4度目の防衛に成功

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その翌日、広島の若鯉球場大会。

「埋まらなかった・・・沢崎さんどうしてくれるのよ」冗談交じりに落胆する今野社長。3万人収容のスタジアム、観衆23000人、8割弱の入り。採算ラインはクリアしたが外野席に空席が見られるのはやはり寂しい。メインは吉田龍子対永沢舞のSPZ選手権が組まれた。

電波ソング「Change my style」に乗って永沢が長い花道を入場。そのあと攻撃的な「赤い破片」が流れ、吉田が入場。一見イロモノレスラーに見える永沢だが、吉田の破天荒パワーに対抗するのは永沢の無神経、いや、無心で闘うスタイルが有効だと社長は考えた。

試合の方はやはり、永沢がノーザンやフロントスープレックスの乱打乱打で追い込み、吉田に波状攻撃をさせなかった。勢いに乗る永沢はあまり見せないムーンサルトプレスまでを繰り出した。

「ぐはっ・・・」

吉田のような重さはないが、身軽さゆえのスピードがある。これはカウント2.8でクリアした吉田、

「うぉあーー」

最後の力を振り絞ってラリアット。しかし食らった永沢は吹っ飛ばされながらも冷静だった。

・・・龍子さんかなり弱ってる、よし勝てる。

体勢を立て直して、回り込んで、とどめのJOサイクロン炸裂。吉田は返す事ができなかった。

「やったね!!」

勝負タイム22分38秒、第17代王者吉田龍子が2回目の防衛に失敗、永沢舞が18代王者に輝く。くどいようだがこのベルト、創設してからまだ4年2ヶ月である。伊達のV10のあとは各トップ選手の腰を行ったり来たりである。永沢も10代、14代と続いて3度目の戴冠である。

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SPZ世界選手権(60分1本勝負)

○永沢舞(22分38秒、JOサイクロン)吉田龍子×

第17代王者が2度目の防衛に失敗、永沢舞が第18代王者となる

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第7戦福岡ボートメッセ大会、メインはナスターシャ・ハン対チョチョカラスのAAC選手権。外人同士のタイトル戦となった。ふだんはトップ外人として吉田永沢草薙といった日本人選手と戦うことの多い両者だが、こんかいは最強外人の座とAACベルトをかけてぶつかりあった。ナスターシャがネチネチとサンボの秘術でチョチョカラスを追い込めば、チョチョカラスも見事なフォームのムーンサルトを炸裂させる。しかし最後は

「ウフフフ・・・これで終わり・・」

ナスターシャが必殺のSTFでチョチョカラスを下し防衛に成功。

そしてシリーズ最終戦はSPZの本拠地、新横浜の横スペ大会へ。なんとこの大会ではメモリアルマッチが4連発という豪華編成である。

(長くなるので続きます)

2007年3月29日 (木)

第71回 小川ひかるデビュー7周年記念試合

あらすじ:横浜に本拠地を置くお嬢様プロレス団体「SPZ(スーパースターズプロレスリング・ゼット)」は旗揚げ7周年を迎え、世界トップクラスの女子プロレス団体となった。

第2戦の新潟大会。スイレン草薙の相手は小川ひかる。このシリーズは6時半の女、保科が「写真集撮影」で不在なので新人の相手は不足しており、小川や南といったそこそこの選手が相手をせざるを得ないカード編成。小川もスイレンをスリーパーで軽くひねってからいきなりSTF。

「あああううう!」

えげつない絞り技に耐えるスイレン草薙だったが、

小川はなかなかギブアップしないスイレンにとどめをさそうと、STFの顔面のフックを頬から鼻の上をつぶすようにずらした。これにはたまらずスイレンギブアップ。4分48秒という短時間決着。

4戦目の岐阜大会、さすがに一方的に叩きのめされるカードを組み続けた今野社長が思い直したのか、スイレン草薙対マイトス香澄のシングルマッチを第1試合に組んだ。当然勝ったほうがプロ初勝利となる。スイレン草薙がスリーパーで体力を奪っておいてのドロップキックで初勝利を挙げた。

新人同士のカードは連日組まれ、6戦目の京都大会でマイトス香澄がお返しにドロップキックでプロ初勝利を挙げた。

京都大会メインは吉田、新咲対草薙、小川のSPZタッグ戦。小川が新咲、草薙が吉田を担当する戦法をとり、小川がSTFで新咲をあわやというところまで追い込んだが、意外にも草薙が吉田の前に押されっぱなしでダメージを重ねていって、最後は合体パワーボムで3カウントを奪われてしまった。王者組が3度目の防衛に成功。

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SPZ世界タッグ戦(60分1本勝負)

○吉田龍子 新咲祐希子(30分くらい、合体パワーボム)草薙みこと×小川ひかる

王者組が3度目の防衛に成功。

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「・・・吉田さんも粗さがなくなってきましたね」

*********************

最終戦、旗揚げ7周年記念興行は新日本ドームでの開催。上原、伊達のスター選手看板を2枚欠いて観客動員が心配されたが、超満員札止め・5万人超の集客に成功。秋葉原にグッズショップ2号店をオープンさせるなどの営業努力、そして今日の「目玉カード」が効を奏したと社長は胸をなでおろした。

第1試合、渡辺智美対ドリュークライ。これは力関係からいってドリューの圧勝。

第2試合のタッグマッチは南利美、マイトス対沢崎、スイレンの新人と1期生を混ぜたカード。

うわー、こんなに早くドームで試合できるなんて・・・

マイトス香澄は恍惚の表情で三塁側ダグアウトから花道をリングへ向かった。

試合は新人二人が早々とスタミナ切れを起こしてしまったので、後半は南対沢崎のシングルマッチの様相になってきた。沢崎の勢いを返し技をまぜながら封じてゆく南。そして試合終盤両者がフラフラになったところで、再度出てきたスイレンに攻撃の的を絞る。

「カスミッ」

南の指示で前後からスイレンをはさんでー

ダブルラリアット。すかさず南が押さえ込んでカウント3。

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第3試合はハイブリッド南対秋山美姫。関節技が得意な両者の激突。最後はハイブリッドがかかと落としで秋山を仕留めた。その試合が終わると休憩になる。

********************

休憩明けの試合に出る小川が一塁側ダグアウト奥の控室で出番を待っているとー

「小川さん小川さん」

「あ、社長・・・」

「デビュー7周年おめでと。記念試合頑張って、あとこれ着てって」

渡されたのはブルーのロングガウンだった。背中に「OGAWA 7」とプリントされている。

「あ、ありがとうございます」

そして休憩明けー

バックスクリーンに映し出された文字は

「小 川 ひ か る デ ビ ュ ー 7 周 年 」

 そう、旗揚げ7周年ということは旗揚げメンバーの小川もデビュー7周年。ここでブルーのレーザー光線が飛び交う中を、ロングガウンに身を包んだ小川が花道に姿を見せる。そしていつものテーマ曲「マイティ・ウイング」会場大盛り上がり。7年前横浜赤レンガ会場でデビューした15歳の少女は、挫折、そして努力を繰り返して中堅レスラーの座を掴むにいたり、AACジュニアやSPZタッグのベルトも巻くに至った。

その温厚で人あたりのいい性格は団体の皆の心をまとめ、SPZを今日の隆盛に導くに至った。伊達や南のようなファンをうならせる力も技量もない小川、しかし等身大、精一杯のファイトが多くのファンの胸を打ち、いつしか大声援が飛ぶようになった。そして7周年の今日。小川ひかるは新日本ドームのセミ前のリングへ向かう。古くからのファンには泣いている人もいた。

試合に先立ちセレモニー。(試合後だと悲惨な負け方をした場合・・・というのがある)京スポ新聞若林氏が表彰状を朗読。表彰状と記念の盾、今野社長兼リングアナから金一封が贈られた。そのあと対戦相手のマリア・クロフォードが入場。彼女も常連外人だが、きょうは圧倒的ベビーフェースの小川のメモリアルマッチなので、ヒールをやるつもりでいた。

青コーナー、イギリス出身、マリアー、クロフォーッ!」

赤コーナー、長野県松本市出身、おがわー、ひかるー!」

大量に舞う青い紙テープ。リングに大きな花が咲いた。

しかし対戦相手のクロフォードも遠慮なくステップキックやアキレス腱固めで小川を「ゆっくり、たっぷり」いたぶってゆく。場内にひびくオガワコール。しかし試合中盤、形勢が逆転したのはー

「関節の悲鳴を聞きなさい!」

小川のSTFがリング中央で決まる。ドームは異様な雰囲気に包まれた。2分ほど耐えてクロフォードが振りほどいたが、もう一度アームホイップで投げてからSTF。館内がウワァァと、みんなが小川の勝利を願って、言葉にならない歓声を上げる。しかしクロフォードも耐え切った。

クロフォードがフラフラの状態だが、アキレス腱固め、スクラップバスターで反撃する。これを受けきった小川が、3度目のSTF。

しつこいくらいに顔面を絞め続けられて、クロフォードも痛みに根負けしてギブアップの言葉を吐いた。その瞬間、新日本ドームは一つになった。勝負タイム26分31秒。この選手の試合はよく長引く。

「みなさん、応援ありがとうございます!」

一礼して花道を引き揚げる小川、こうして小川の7周年メモリアルマッチは白星で幕を閉じた。

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小川ひかるデビュー7周年記念試合 30分1本勝負

小川ひかる(26分31秒、STF)M・クロフォード

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セミファイナルは永沢舞、新咲のコンビに、ナスターシャ・ハン、ユーリスミルノフのEWA勢が激突するカード。新咲がローリングソバットでスミルノフを仕留めた。そしてメイン。

王者吉田龍子対挑戦者草薙みことのSPZタイトルマッチ。

力押しで攻めてくる吉田には最近、草薙は分が悪い。力のこもったラリアットやDDTを受け続け、徐々に草薙の身体から力が失われていった。試合後半に放ったニーリフトで草薙がマットに這いつくばる。

―今だ。

吉田が草薙を抱えあげてプラズマサンダーボム。これはカウント2.5でクリアした草薙だったが、続くスプラッシュマウンテン。これを草薙は返せなかった。第17代王者、吉田が初防衛に成功。勝負タイム19分8秒。

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SPZ世界選手権試合(60分1本勝負)

吉田龍子(19分8秒、スプラッシュマウンテンからのエビ固め)草薙みこと

第17代王者が初防衛に成功

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2007年3月28日 (水)

第70回 8期生デビュー

これまでのあらすじ

横浜のお嬢様プロレス団体「SPZ]は、創立8年目を迎え、団体の草創期を支えた1期生に能力の翳りが見え出したので、積極的な新人獲得を行うに至った。新人スカウトで草薙みことのツテでスイレン草薙を獲得し、さらに新人テストを行う・・・・

「あー、秋山さん?今社長から連絡があって、応募者が予想よりすっごく多いから、明日の新人テスト、1・2期生は全員休み没収で審査員やれって、ふふ、じゃあね」

 その翌々日、SPZは約3年ぶりに新人テストを行った。業界最大手の新日本女子に人気はともかく個々の選手の力量は完全に上を行くといわれているSPZだけあって、秦野市体育館を借り切って行われた新人テストには100人以上の受験希望者が殺到した。これだけの大人数をどうやってふるいにかけようか、今野社長とテスト実施委員の小川ひかる、井上霧子が前日あわてて鳩首協議して決めたテスト内容は下記の通りだった。

「えっとぉ、それではテストを行いますので、バスに乗ってくださいね~」テストの説明はリングドクターの羽山女医が行う。2台の「かなちゃん号」に分乗させられて30分ほど、着いたところは・・・

「はい、ここは丹沢山脈の麓、大倉というところです。ここから丹沢の山のてっぺんまで登って頂きます。頂上には草薙選手がいますので、受験票と引き換えに草薙神社のお札をもらってからここまで戻って来てください~。5番目までに戻ってきた方が夕方の2次審査に進めます~」

15・16の少女たちが一斉に丹沢塔ノ岳に登らされる。表向きは「レスラーに最も必要な持久力を見る」というものであったが、100人をさばく名案が他になかったのが真相である。とはいえ大人でも頂上まで登り3時間、下り2時間を要する1500メートルの山なのでたいへんな試験である。

「あ、途中で気分が悪くなったりリタイヤされる方は何箇所かに営業スタッフがいますので申し出てくださいね~、倒れた方には注射打ってあげますから心配要りませんよ~」

天然マッド女医の言葉にざわつく受験者。

「ボ、ボク、注射はいやだよう・・・」

「では、すたーとぉー」

午前10時、号令とともに100人余の少女たちが一斉にスタート。走り出す者もいた。

「あ、もしもし、いまスタートしました、頂上で御札配るのよろしくお願いします~」

携帯で連絡を入れる。その頃頂上では

「ふぅ、山はいいのう・・・」

頂上で富士山を望みながら阪口レフェリーと草薙みことはお茶をすすっていた。

1時間経過。

「ダメだな、このくらい1時間で登れないようじゃ、一流のアスリートになんてなれっこない」

「ちょっと心配ですね」

レースではもののみごとにウサギとカメ現象が起こっていた。大多数の走り出した受験者が高度1000メートル前後でバテて動きが止まってしまい、逆にゆっくり歩いた受験者がテスト開始から2時間余、ようやく頂上近くに現れた。待ちくたびれた草薙と阪口レフェリーは「週刊ハッスル」を読みながら頂上に着く受験生を待った。

「はい、お疲れ様です。あなたに草薙の加護がありますように」

お札を受け取る受験者は息もたえだえといった様子だった。

「ハァ、疲れたーー!」

9番目に到着した小柄なショートカットの少女が息を弾ませながら草薙からお札を受け取る。

「お疲れ様です。足元に気をつけながら戻りなさい」

お札を渡された少女は目の前のスター選手に

「あっ、草薙さんだー!!」

「まだ勝負は後半、これからですよ、諦めずに頑張りなさい」

「はいっ!」足早に折り返していく少女。

「いまの・・・案外通りよるかもしれん。足が震えとらん」

「・・・そうですね」

お札を受け取る受験者は息もたえだえといった様子だった。目安の2時間半以内に赤いお札を受け取れたのは10人だけであった。あとは通常の白いお札が配られる。

テスト開始から4時間が過ぎようとする頃、なんとか最初の受験者が息を弾ませながら降りてきた。ひとり、ふたり、三人、四人・・・皆がその場に座り込み、動けない状態。五人目に現れたのは小柄な少女だった。下りでも何人か追い抜いたらしい。

「ハァ、ハァ、ボク頑張ったよぉ~」

「ハーイ、どこもケガしてませんね~、痛いところありませんね~」

「全、全然、平気でっすっ!」

これで2次テスト出場者が決まった。

営業スタッフはリタイアしたり動けなくなった受験生の回収や誘導におおわらわだった。まさか高度1000メートル地点で置き去りにするわけにもいかない。残りの90余名はSPZグッズの詰まった袋を差し上げてお帰りいただく仕儀となった。

2次テストに進んだ5人は体育館に戻り、控室で「焼き肉弁当」の昼食が支給された。だが一人を除いて手をつけようとしない。

「・・・・・・・」

「わー、焼肉だー、うれしいなー」

きれいに平らげたのはショートカットで小柄な少女ひとりであった。

実はこれもテストの一環だったりする。「死闘の後でも食えなくてはレスラーは務まらない」井上秘書の持論。

そのあと疲労回復の意味合いもある筆記試験。中二レベルの常識問題と、「プロレスの基本知識」を問うものであった。そのあと体育館で五時から2次テスト。腕立てや腹筋、スクワットが5分間で何回できるかを課す。ここで2人が脱落。

今野社長のかんたんな面接をはさんで、最終試験はスパーリング、といっても体操用マットの上に選手がひとり座っていて、3分以内にその選手を押し倒して肩を一瞬でもマットにつけたらパスという代物。しかしマットの上に座っていたのは関節のヴィーナスだった。

デロリーン。3名の受験生に緊張が走る。あの南利美が最終試験の審査員なのである。

「レスラーは物怖じしない強さと絶対に諦めないという心が絶対に必要」伊達遥の意見だった。

「安心して、3分間はこちらから攻撃しないわ。その間に私を押さえ込んでみなさい、あ、何してもいいからね」

最初の受験生、番号7番は緊張の色をありありと浮かべながら南に挑んでいったが、どうしても南の防御を崩せず押し倒すことができない。時間だけが過ぎていって3分経過のタイマーが鳴り、南が」

「あなたよくがんばったわ・・・でもこれまでね・・・」

と某選手のまねをしてスリーパーに捕える。7番は3秒でタップ。実はこのスリーパーも試験だったりする。

「あなた、なかなかやるわね、はい次」

2番目の受験番号51番も挑みかかっていったが、動かすこともできない。2分過ぎに通常のレスリングではだめだと判断したのか、グーで殴ろうとしたが百戦錬磨の南はあっさりと見切る。そして、

「もう、逃げられないわよ」

某選手のまねをしてスリーパーに捕える。51番はすぐさまタップ。

「あなた、なかなかやるわね、はい次」

「おねがいしますっ!」

ここまで残った小柄な少女が南にぶつかってゆく、しかし南は動じない。しかしこの少女は彼女なりに作戦を考えていった。何度目かぶつかっていって肩で息をする・

「どうしたの?もう終わり?」

「たーっ」気合いとともに大きく腕を広げて南に向かってゆく。

・・・いい踏み込みね。

ぱんっ!

南にぶつかる手前で広げた手を思い切りパチンと合わせた。いわゆる猫だまし。こんな手にひっかかる南も南だが・・

「へ?」

「今だ!」

全力で南を押し倒す。だが南もとっさの判断で身体をひねって押さえ込まれるのを回避した。

「・・・いい度胸ね・・・」

ここで3分タイマーが鳴った。

「この技に耐えられるかしら?」

南がスリーパー。だが少女は耐えた。耐えて落ちてしまった。

「あら?」

「壊した~、壊した、リミさんが壊した~」

審査員兼雑用係でついてきた秋山美姫がはやしたてる。

小川ひかるがその少女に活を入れる。

「あれ、ボク、どうなって・・・」

「・・・あなた、名前を聞かせてくれるかしら」

「はい、ボク・・・秋山香澄です。」

こうしてテストは終わった。採用の結果は後日連絡しますと社長が話して解散。

テスト終了後、一期生二期生を含めて誰を採用するか会議。もっとも各人の意見は一致していた。

「受験番号88番、秋山香澄。東京都江戸川区出身、身長152cm、スポーツ歴はハンドボール・・・、ちょっと上背はないけど、ガッツありそうだからやれるんじゃないですか」

「ようし、採用しよう」

4月10日、スイレン草薙と秋山香澄の入寮。

「あたしが寮長の吉田だ!がんばれよ!期待してっから」

そして吉田寮長が寮生を紹介する。渡辺智美5期生、ハイブリッド南と新咲祐希子の6期生、そして「寮に居座り続ける」草薙みこと2期生。荷物を置いてすぐ道場で練習。

「明日から4月シリーズで巡業でたぶんデビューだと思うから受け身だけは覚えて」

吉田龍子や永沢舞にかわるがわる投げられるスイレン草薙。

「-まだまだァ!」

バァン!バァン!

「・・・ハァ、ハァ・・・・」

しかしスイレン草薙は起き上がってくる。リング下では香澄はとっくに伸びてしまっているのに。

―また凄いのが入ってきたよ。

1期生の間にも緊張が走る。

そして4月シリーズ「旗揚げ7周年記念シリーズ SPZバトルカデンツァ」がスタート。開幕戦は選手の「栄養補給」をかねたのか、札幌キターアリーナ大会。

第1試合は渡辺智美対スイレン草薙。

「青コーナー、山形県朝日町出身―、すいれんー、くさなぎー」

コスチュームは草薙みことの色違い。

「なおスイレン草薙選手はこの試合がデビュー戦となります」

ファイッ!

ゴングが鳴った。

「・・・・みんなが、私を、見ている・・・」

輝くライトを浴びて、9000人の大観衆が一斉にリング上を注視している。渡辺がサッと組み付いてスリーパー。

「ぬぐうっ・・・・」

しつこいくらいスリーパーをかけ続けられて、スイレンの動きが鈍ったところを足を抱えられて逆片エビ固め。

ぐいぐいと絞り上げられるスイレン、腰に鋭い痛みが。

「ギブアップ・・・」

スイレン草薙は言うまいと誓っていた言葉を言ってしまった。

「6分31秒、逆片エビ固めで渡辺智美の勝ち」

そんな・・・なにもやれなかった・・・

呆然とした表情で、礼をするのも忘れて引き揚げるスイレン。

第2試合は南利美対マイトス香澄。本名の秋山香澄では秋山美姫とまぎらわしいのでリングネームをつけさせた。一時代を築いた南がついに新人のデビュー戦の相手を務めるポジションにまで下がった・・・場内はため息。

しかし南利美は意に介さず、マイトスをスリーパーで軽く締めたあと、いきなり逆片エビで仕留めにかかった。

「ぐ、あ、うーっつ」

絞り上げられながらも痛みに耐える香澄。

さんざん絞ったあと、一息入れてまた逆片エビで絞り上げる。

「う、ぐ、ああー」

場内からはブーイングも。しかしマイトス、うめき声を上げて涙を浮かべても、ギブアップの言葉をなかなか口にしない。

南利美はやれやれと思い、これ以上本気を出して絞ったらケガをさせてしまうと判断し、自ら逆片エビを解いて、フラフラと起き上がったマイトスに組み付いて。

「動かないで。」

若干手加減したものの裏投げ一閃。マイトス香澄は頭からマットへ。フォールを返せるはずがない。カウント3。勝負タイム7分18秒。香澄は意識を失ったままカウント3を聞いた。南利美はゴングを聞くやサッと退場。

井上レフェリーがマイトス香澄を介抱する。

「香澄ちゃん、立てる?」

「・・・はい」

「お辞儀だけしたら、リング降りて、渡辺さんの肩につかまって戻りなさい、良く頑張った。」

「・・・はい」

マイトス香澄に暖かい拍手が送られた。デビュー戦で南利美に裏投げまで出させたのだから。

控室ではみんながデビューした二人に祝福の言葉をかけた。

「おめでとう!」「今日からあたしたちとおなじレスラーの仲間入りだ!」

2007年3月27日 (火)

第69回 7年目3月 SPZ選手権 伊達遥×吉田龍子

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7年目3月

3月シリーズ「ハイブリッドバトル2016」は東北地方を回る興行。シリーズ前半は東北地方の体育館を回っていくので、看板選手を順繰りにメインやセミのタッグマッチであててゆく。ちなみに7年目3月時点でのSPZ派閥?抗争図は下記の通りである。カッコ内は入門年次である。

SPZ本隊: 伊達遥(1)、沢崎光(1)、秋山美姫(1)保科優希(1)

南・草薙連合軍(ファンの通称くーるびゅーちー連合)

南利美(1)、ハイブリッド南(6)、草薙みこと(2)、小川ひかる(1)

若手連合「新世代軍」:上原今日子(3)、永沢舞(4)、吉田龍子(5)新咲祐希子(6)、富沢レイ(2)、渡辺智美(5)

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秋田大会第3試合は南姉妹対草薙、小川のタッグマッチ。

草薙の投げ技攻勢がいまいち不発で、逆に南利美が関節攻勢で草薙をあと一歩まで追い詰める。残り時間2分で小川が、スタミナ切れを起こして横たわるハイブリッド南にー

「もう逃げられないわよ!」STF発動。場内どっと沸く。

―うわ、痛いっ、でも姉さんと組んで、こんな人に取られるわけには行かない。

南利美がカットに入ったが草薙につかまった。小川の手首がハイブリッドの顔面をえぐる。しかし耐えるハイブリッド

―負けるもんか、あともうちょっと・・・・

ここでゴング、タイムアップ。30分時間切れ引き分け。場内は4選手の頑張りに拍手を送った。

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4戦目仙台大会のメインは、吉田、新咲のSPZタッグ王座に1期生の秋山沢崎が挑むカード。昨年11月のタッグリーグ最終戦でも1勝1敗なので決着戦の意味合いもあった。だがいくら挑戦者組が息のあったところを見せても、吉田の規格外のパワーにはさして通用しない。試合中盤、吉田のスプラッシュマウンテンで沢崎がカウント2.8まで追い込まれる。

「ぐはーーー」

沢崎は秋山にタッチするや場外青コーナー下で倒れこんでしまった。それでも40分過ぎに復活してリングイン。新咲にタイガードライバーを決める。しかし最後は吉田が締める。秋山にも強烈なスプラッシュマウンテンで半失神に追い込み、カウント2.9で辛うじて返したところを強烈なステップキックで意識を断ち切って3カウントを奪った。勝負タイム57分6秒という超絶ロングマッチ。吉田以外の3人は試合終了後しばらく起き上がれなかった。王者組が王座防衛に成功。

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SPZタッグ選手権(60分1本勝負)

○吉田龍子、新咲祐希子(57分6秒、ステップキックからの片エビ固め)秋山美姫×、沢崎光

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第6戦山形大会。メインは地元凱旋の草薙が南姉妹とトリオを組んで、吉田永沢新咲の若手トリオ。しかしこの団体、繰り返して書くが地元興行の場合、対戦相手のほうが「恥かかせてやるべ」ということでハッスルする。地元選手に勝たせるには今野社長が「カード的配慮」するのが手っ取り早いのだが、それをファンに察知されてもいけない・・・難しいところである。

「チャンス到来、まってましたぁー!」

草薙が永沢のJOサイクロンを食らって、カウント2.9で返すも、南にタッチするやダメージが深く、リング下でうずくまってしまう。終盤、ハイブリッド南が奮戦するも吉田のフランケンシュタイナー2連発。そして新咲のフェイスクラッシャーに力尽きた。38分2秒のロングマッチに場内は沸いた。

「これでまた一歩最強に近づけたかな?」

カレー女もとい、新咲が勝ち誇る。最近の南姉妹は姉をかばおうと奮戦するあまり、タッグマッチの「引きどころ」を知らないハイブリッドが相手チームにつかまって負けるケースも出てきた。青コーナー側でガックリと肩を落とす3人。

1階席の奥に怪しげな修行服姿の一団が。

「そろそろ、みことに代わる次の戦士を送り込まねば・・・」

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最終戦さいたまスペシャルホール大会のメインは伊達遥対吉田龍子のSPZ選手権。前月の横浜大会で草薙を破った吉田が挑戦者に名乗りを上げた。「いつまでも先輩方の時代じゃないことを証明する」そういい残してリングへ向かった。

吉田はブレーンバスターやDDTで伊達のバリアを破り、なんと伊達のお株を奪うニーリフト。

「はうっ・・・・・・」

自らの得意技を先に仕掛けられ動揺する伊達。しかし伊達もー

がすっ!

得意のSPZキックを繰り出して形勢逆転を狙う。

吉田がそろそろ勝負に出ないとヤバイと判断しプラズマサンダーボム。カウント2.5で返す伊達。そしてー

がすっ!

伊達、再びSPZキック。側頭部に鋭い蹴りが入った。

・・ってーな、この・・・

吉田もムキになってロー、ミドル、ハイの「デンジャラスキック」乱打。これで伊達の動きが止まった。

「行くぞっ!フィニッシュはこれだっ!」

伊達の腰に手を回して高々と担ぎ上げ、そのまま垂直に落とす。位置エネルギープラス吉田の全パワーの衝撃が、伊達の意識を根こそぎ持っていった。

ワン、トゥ、スリッ。

勝負タイム36分13秒の死闘に終止符を打ったのはスプラッシュマウンテンだった。

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SPZ世界選手権(60分1本勝負)

吉田龍子(36分13秒、スプラッシュマウンテンからのエビ固め)伊達遥

第16代王者が初防衛に失敗、吉田が第17代王者となる。

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「・・・・負けた・・・」

伊達遥、6度目の王座転落。吉田龍子が第17代王者に輝く。今野社長は天下の移ろいやすさに苦笑するしかなかった。

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8年目4月。

伊達遥に映画出演依頼。上原今日子に写真集のオファー。激闘続きで気分転換させたかったので承諾。かくて上原今日子セカンド写真集「KINSEI」が発売された。強さと美しさを兼ね備えた上原の写真集、ものすごい売れ行きだったらしい。

保科優希にも写真集オファー。断る理由もないので7th写真集「KIRAMEKI」が世に出ることになった。これで写真集発売冊数記録をさらに更新して「7冊」となった。これ以降彼女はファンの間で「6時半・7冊の女」と呼ばれるようになった。もう23歳になる保科選手だが、独特の雰囲気で根強い人気があるようだ。

悪いこと?に富沢レイにも写真集オファー。呆れたが社長は受けた。セカンド写真集「WAKASHIO」が発売。ハードなレスリングが売りのSPZが3人も写真集を同時発売するとはあの団体はおかしくなってしまったのかと巷で噂された。

SPZプロレスの決算日は3月31日である。通常も「ギリギリの人数で運営する」SPZはこの時期社長以下営業・経理スタッフは「修羅場」と化す。とくに最近は団体の売上規模が大きくなってきたので損益計算書を作るのも大変であった。観客動員数は伸びているが、あんまり利益をためこまず利益は選手やファンに還元する方針の今野社長。7年目も少しばかりの黒字で決算確定した。

4月上旬のある日、今野社長と草薙みこと、井上秘書の3人は山形新幹線「つばさ」に乗っていた。

「草薙さん、その紹介してくれる人って、どんな人なの」

「草薙の里では、年に一回、武芸を競う集まりがあります。近在の信徒の中で武術をたしなむものが一同に会し、実戦での組み手を行います。私も14の頃と15の頃と2回出ましたが・・・あまりいい結果ではありませんでした」

「そうなの」

「で、今年も3月に集まりがあったのですが、そのコはまだ15歳なんですけど、初出場で、15人の対戦相手をことごとく撃破したそうです。全勝での優勝者が出るのは近年では例のないことです」

「ほう・・・」

「本来なら優勝者は師範として、草薙神社に務めなければならないのですが、そのコは在家の信徒の方で、「山奥の寺にいるより草薙みことがのさばっているプロレスとかいう世界で修行した方が強くなれる」と言い、私に口利きを申し出てきたのです。」

なにしろここ数年、草薙みことのSPZでの活躍はめざましいものがあり、草薙信徒の間でも「有名」になってしまっている上、みことがファイトマネーのほとんどを神社に送金しているせいで草薙神社の境内設備が整えられ、信徒数も増えてきており、最近は中学高校の運動部の強化合宿に神社の武道場を貸して境内に宿泊させる「サイドビジネス」も好調らしい。

山形からローカル線で一時間、そのあとタクシーで1時間余。ここから3時間の山道歩き。

「オレもう42さいなのにこんな運動をさせられるとは・・・」

息を弾ませつつ歩く今野社長。運動不足気味の上、決算のバタバタでここ数日疲労が蓄積している・・・しかし元レスラーの井上霧子と草薙みことは苦もなく歩いている。

その晩は6年前と同じように草薙神社の「宿堂」で宿泊。とはいえ夕食は精進料理。般若湯が少しだけ出た。そのあと夕方のお勤め。6年前より宗教儀式はグレードアップしていた。

翌日、その少女と入団交渉。

「えっと、草薙流武術は日本でも有数の古武術です。実戦能力においては敵はいないと私は思っています。私はその頂点に立つつもりでやっています。ですが、そのためにはみことさんを越えないといけないと思いました」

ハイブリッド南もそうだったが、誰かの影響を受けて入門を志す人は勝ち気な性格だ。

「そのためにはSPZプロレスの場で草薙さんを倒して、なおかつ頂点にい続けることが必要だと思いました。社長さん、ぜひ入門させてくださいっ。」

「でも、えーと、本堂さん、SPZプロレスはとってもハードですよ、へたしたら死ぬかも知れない、草薙選手もひどいめにあってるから」

「・・・やる気があれば、来てください」

「大丈夫です。プロレスでの闘い方を覚えたら必ずみことさんに勝ちます。みことさんを倒したあの膝蹴りの人にも勝ちます」

「・・・ま、まあ、志が高いのはいい事だと思います。頑張って修行してください」

どうもこの少女は信仰心よりも武術を極めようとする心の方が強いようである。

あとは社長が細かい条件面を説明して入団交渉の打ち合わせは終わった。4月10日入寮、リングネームは「スイレン草薙」とすることで話がまとまった。

山形からの帰りの新幹線の中、井上秘書がぼそりと一言。

「将来のことを考えますと、もう一人とっておきたいですね」

今野社長もそう思っていたらしく、

「久々に新人テストでもやりますか」と返事した。

2007年3月26日 (月)

第68回 7年目2月 横浜決闘(後編)

前回のあらすじ

横浜に本拠地を持つお嬢様プロレス団体「SPZ」は7年目を迎え、多くのスター選手を擁する日本有数の女子プロレス団体に成長した。トップ争いは混沌としてきて天下は回りもち状態。そして3期生の上原今日子がついにSPZベルトを永沢舞から奪取したが、上原は大胆にも初防衛戦の相手に先輩の伊達遥を希望した。7年目2月、横浜スペシャルホールで決戦のカードが組まれ、セミファイナルが終わり、そしてメインイベントを迎える~

メインの上原今日子VS伊達遥のSPZ選手権。

まず挑戦者の伊達遥が青コーナー側から入場。今回は気合いが入ってたのか、鳳凰ガウンを身に纏わずTシャツだけ羽織って入場。

「ハルカ!ハルカ!ハルカ!ハルカ!」

場内ものすごいハルカコール。一期生のエース、団体の顔である。いつもどおりクールな表情でリングイン。

そして「disintegration」がかかり、赤コーナー側から上原今日子がベルトを肩にかけて入場。

「ウエハラ!ウエハラ!ウエハラ!ウエハラ!」

きょうはセミまでの6試合が長かったのでウォーミングアップも万全。身体が温まっていたので上原もTシャツだけ羽織ってリングイン。

「えー、この試合はスーパースターズプロレスリング・ゼットが認定する、えーSPZ世界ヘビー級選手権のタイトルマッチであることを、えー宣言する。えー2016年2月26日、SPZコミッショナー今野和弘、えー代読、京スポ新聞、若林太郎」      

認定証の読み上げのあと、

「青コーナー、宮崎県都城市出身、だてー、はるーかー」

ドワァァァァァァ!

紫の紙テープが乱舞。

「赤コーナー、SPZ世界選手権チャンピオン、上原ー、きょーこー」

ドォォォォォ!

赤の紙テープ乱舞。

「レフェリー、ピンクシューズ阪口」

午後21時31分、運命のゴング。

上原が勝って新時代の扉が開くのか、それとも伊達が1期生の意地を見せるのか、1万5千の観衆は固唾を呑んで見守った。

しかしー

上原の攻撃は散発的で、伊達の「耐久バリア」を崩せるレベルではなかった。逆に伊達の方がアームホイップやエルボーの連打で手数に勝り、優位に試合を進める。

ごすっ!

伊達は普段はあまりやらないヘッドバットまで繰り出して勝利への執念を見せ、15分過ぎに最初の殺人ヒザ魚雷発射。ドボドボと上原の腹部に膝が突き立てられる。

「ぐうう・・」

その場に立ち竦む上原、こんどは伊達、コーナーに素早く駆け上がってミサイルキックで空襲。

そしてふらふらと起き上がった上原に組み付いて2度目の殺人ヒザ魚雷。

「がはっ・・・」

腹筋の装甲を貫き、上原の戦意を根こそぎ砕いていく。マットに這いつくばり、のたうち回る上原。会場からは歓声と悲鳴が交錯する!

上原は長い時間をかけて起き上がりフラフラと伊達に組み付き、スリーパー。そのあとドロップキックで反撃するが、それまでだった。

受けきった伊達が、

3度目の殺人ヒザ魚雷。

「ぐふっ!・・・」

これで上原は吹っ飛んだ。もう痛いなんてもんじゃない。

試合を見ていた新咲や秋山沢崎といったセコンド陣も、うわ今日の伊達さんは怖い。と引きつった顔。

これで上原は動けなくなったが、なお、続くフォールをレスラーの本能だけでカウント2.9で返す。しかしー

伊達が上原に組み付いて、ヒザ魚雷に行くと見せかけてのブレーンバスター。

バァンッ!

昔のネズミ捕り器のバネを思わせるような、力のこもった高速での一撃。続くフォール、上原今日子、こんどは返せず試合終了。

「29分56秒、ブレーンバスターからの片エビ固めで、伊達遥の勝ち・・・」

22時1分、両者の決闘は幕を閉じた。

上原は「またしても」伊達に完膚なきまで叩きのめされてしまった。セコンドの新咲に背負われて退場する上原に大声援が送られた。

SPZ初代王者の伊達遥が16代王者に返り咲いた。このベルト、創設されてから4年弱なのにもう16代王者誕生という足腰の定まらないベルトである。

それだけトップグループ各人の力が拮抗していると言うことなのだろうか・・・今野社長はひとり慨嘆した。

歴代王者は以下の通り。(名前横の数字は防衛回数)

初代 伊達遥    0

2代目 草薙みこと 0

3代目 南利美   0

4代目 伊達遥  10

5代目 草薙みこと 1

6代目 伊達遥   1

7代目 南利美   0

8代目 吉田龍子  1

9代目 伊達遥   1

10代目 永沢舞  0

11代目 吉田龍子 0

12代目 伊達遥  0

13代目 草薙みこと4

14代目 永沢舞  0

15代目 上原今日子0

16代目 伊達遥

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試合後の控室。上原今日子は床の上に横たわっていた。

殺人ヒザ魚雷の乱発を受けた腹部が痛々しい。

「どうすりゃ、いいんだよ・・・」

若手のころから伊達さんとタッグを組んでいるうちに、伊達さんの強さに憧れ、そしていつしかその壁を越えてみたいとおもうようになった。幾年も練習を重ね、実力ではSPZのトップグループに入り「マットの覇者」とまで称されるに至った。それでもなお、伊達さんの壁は高い。

「勝てないよ、あの人には・・・」

「入るぞ・・・」

今野社長と小川ひかる、井上秘書が入ってきた。

「あ、小川さん、社長」

「あーまだ着替えてないのか、上原さん、さっさと着替えて『よこ川』行くぞ、はんせい会だ」

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その30分後、戸塚の日本料理店「よこ川」で「はんせい会」が行われた。まじめな話し合いの様相を帯びていたので酒類は出ない。

「私は、もう限界なんでしょうか」

やっとベルトに手が届き、自分に自信が持てるようになった。しかしその自信は1ヶ月で打ち砕かれてしまった。

「伊達さんに、勝てそうにありません」

社長はノートパソコンを取り出して先ほどの試合映像を流した。序盤は基本技の攻防、手数に勝った伊達が頃合いを見て殺人ヒザ魚雷を繰り出している。あとは上原沈没へ一直線。

「小川さん、ぼく素人なので何かアドバイスでも」

「えっと・・・その前に、」

小川ひかるが珍しく上原の頭をごく軽くチョップで一撃。

「負けて悔しいのは分かりますけど、先輩の前で限界だなって言っちゃダメですよ。あなたにやられて泣いた人は何人もいるんですから」

そのあと小川はカバンから週刊ハッスルのバックナンバーを取り出した。SPZ横浜決戦の事前特集記事でSPZ歴代王者一覧が掲載されている。

「・・・これは」

「伊達さん、きょうでベルト巻いたのは6回目。ということは5回は負けて王座から転落してる。伊達さんの次のチャンピオンを見てみたら」

「草薙さん、草薙さん、南さん、永沢、草薙さん・・・」

「・・・見て何か気づきませんか?」

「・・・あっ」

「南さんのは関節が極まっちゃったから別として、投げ技を何も考えずにポンポン出してくる選手に分が良くないと思いますよ。伊達さんとやる場合、考える前にとにかく動かないと」

「そうですか・・・次、頑張ります」

こうして上原今日子の「1ヶ月だけの頂点」は終わった。

2007年3月25日 (日)

第67回 7年目1月 横浜決闘(前編)

7年目1月

1月末のある日小川ひかるがにこやかに社長に報告。

「大学のほう、なんとか卒業できそうです」

小川ひかるは4年目の春からオフの日を中心に横浜市内の大学に通い経済学を学び、レスラーとの2足のわらじを履いている。本人いわく「近いところを選びました」ので受験も難なくパスし、学業も「移動バスの中はテキストがよく読めます」とのことなので、巡業中は講義には出られないが、本人いわく「大学というところは試験さえ受ければ単位が取れます。あとはその積み重ねです」とのことで、定期試験のある7月と1月だけはハードだったが、あとは難なくこなしていた。それでも何科目かは試験を受ける代わりにレポートを提出してしのいでいた。

「引退後の事を考えて、取れるものはとっておきたいですから」

社長はその日小川と若手選手数人を「よこ川」に誘った。

***********************

2月シリーズ「UZUMAKIバトル2016」が始まった。

緒戦は久しぶりの沖縄興行。SPZ王者のベルト、団体最強の称号を持って凱旋した上原を4199人のファンは大歓声で迎えた。永沢舞・吉田龍子と「3・4・5期生連合トリオ」を組んで、伊達沢崎秋山の1期生トリオと激突。しかし一期生チームの上原の地元だからといって花を持たせるつもりはまったくなく、逆に「大恥」をかかせてやると意気込んで後輩たちを迎撃。長年かけて培われた連係で追い込んでゆくが、永沢も吉田との連係でダブルインパクトを初披露し秋山を戦闘不能に追い込む。しかしー。

伊達の殺人ヒザ魚雷が永沢の腹部に命中。

「あが・・・」

永沢は直後のフォールを返せなかった。一期生トリオが32分38秒の激闘を制した。

************************

サーキットは九州から四国へ回り、第3戦は高知大会、メインは地元凱旋の南姉妹が小川を加えたトリオで吉田永沢新咲の「4-6期生連合軍」と激突。

「ガンバレ南利美」「関節のヴィーナス降臨」などといった横断幕が立ち並ぶ中のメイン。しかし南にはかつてのように試合をリードする力はなく、最後は吉田永沢のダブルパワーボムに小川が撃沈されてしまった。

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第5戦大阪城大会。メインで組まれたのは吉田・新咲の持つSPZタッグベルトに南姉妹が挑戦するカード。

「ハイブリッド」

「はい」

「タッグでもベルトへの挑戦はたぶん今日が最後になるわ」

「えっ」

「さ、行きましょう」

姉妹タッグ、ハイブリッドがデビューして1年ぐらいは南利美が未熟なハイブリッドをサポートしていたが、いまでは南利美のほうが戦いについていくのに苦労するようになり、相手も底知れぬ素質のあるハイブリッドよりは落ち目の南を狙って攻めてくるようになった。トップに立っていたものとしてはそうとうな屈辱である。

「タッグマッチでは相手チームの弱い方を狙いなさい、その方が勝つ確率がぐんと上がるわ」と後輩に指導していた南、まさか自分がそれをやられるとは・・・

それでもハイブリッドが意地を見せ、吉田をネオサザンクロスロック、合体パイル、合体パワーボムで吉田をカウント2.8まで追い込む。しかし南が4人のなかで、ハイレベルな激闘に最初についていけなくなり、やっとの思いで新咲をブレーンバスターで投げ返してハイブリッドにタッチ。そのまま場外で横たわり荒い息をゼエゼエとはずませた。そして孤立したハイブリッドを王者組が仕留めるのにさしたる時間はかからなかった。フィニッシュは合体パワーボム。王者組が初防衛に成功。

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SPZタッグ選手権

吉田龍子、○新咲祐希子(39分39秒、合体パワーボムからのエビ固め)南利美、ハイブリッド南×

第3代王者組が初防衛に成功

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ファンは39分39秒の激闘に沸いたが、南利美のプライドはズタズタであった。小川の肩を借りて控室に戻る。

―もう、私に残された時間はそう長くない・・・

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さて2月シリーズ最終戦は横スペ大会。

「横浜決闘 上原VS伊達 SPZ世界タイトル戦」

といった内容のポスターが横浜線や京浜東北線の駅に貼られた。その効果もあって15749名の超満員札止め。試合開始前、今野社長により読み上げられたカードを聞いた満場のファンは一瞬静まり返った。

第1試合は定番カードの「踊るの大好き」渡辺智美対「6時半の女」保科優希、両者の抗争?はここ2年以上続いている。両方とも団体内での位置づけは「アイドルレスラー」だが、基本技の攻防はしっかり行う。渡辺も実力はつけて来ているし、保科も南とおなじ年齢なので能力に翳りが見え始めているのだが、保科が渡辺の勢いをうまくいなしながら渡辺のスタミナを徐々に剥ぎ取ってゆく。

「これで決まりです~」

保科がリング中央でアキレス腱固め、渡辺も散々この技を食らっているのでポイントをずらして脱出。しかし最後は保科が教科書どおりのキレイなフォームでドロップキックを放ち、渡辺からカウント3を奪取。第1試合から26分56秒の激闘。これがSPZクオリティなのかとファンは熱い歓声を送った。

続いて組まれた第2試合は、南利美対小川ひかる。ながいあいだトップ戦線で活躍してきた南にとって、こんな大会場での第2試合は「屈辱」にまみれたカード。南を実力で追い越した選手が多くなるに至って、今野社長も配慮しきれなかった。

プライドを傷つけられた南は小川に猛然と襲いかかって行った。だが小川も手の内の知れた相手なのでドロップキックや脇固めで応戦。しかし前座に回された悔しさをぶつけた南が裏投げ2連発。しかし小川がこれをカウント2で返し、そしてSTFで反撃。これはニアロープだったので助かった。

小川さんにまで負けたらリングに上がれない!

鬼気迫る表情で南は3発目の裏投げ。小川はたまらず場外にエスケープ。しかし南は容赦せず場外で逆片エビ固めの追い打ち。

「南!リングに戻りなさいっ!」

井上レフェリーが珍しく声を荒げる。

その声にはっとした感じで逆片エビを解いてリングに戻る。そのあと場外カウント18でリングに戻ってきた小川だったがもはや立っているのがやっと。南がショルダータックルで倒してカウント3奪取。それでも小川を仕留めるのに23分19秒を要した。

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第3試合は新咲、富沢レイの異色タッグにドリュー・クライ、ユーリ・スミルノフのカード。13分の熱戦の末、新咲がスミルノフをフェイスクラッシャーで仕留めた。その試合が終わると休憩。

前半3試合だけで入退場を含め1時間20分を要する熱戦の連続。ファンは面白いさすがSPZだと感心したが、まだ「料理」は半分以上残っている・・・・

後半4試合目、秋山沢崎対ナスターシャ・ハン、クロフォードのカードが試合が始まったのが午後8時10分。

ナスターシャの掌底をもらった秋山が鼻から流血。これで動きが鈍った秋山をナスターシャが攻めて追い込むが、そこは長年の盟友、沢崎が自慢の投げ技でフォローし、クロフォードが出てきたところで猛ラッシュ。しかしクロフォードも粘ってナスターシャにつなげる。この試合はナスターシャが意地を見せ執拗なアキレス腱固めで秋山をギブアップ寸前に追い込む。けっきょく30分フルタイムドロー。

―うわやばい時間押してきたよ。

今野社長の心配をよそに午後8時50分、本日の目玉である「3大シングルマッチ」その1.草薙みこと対吉田龍子。

―いつまでもアンタの時代じゃないんだよ!

吉田がムーンサルトプレスを3連発で叩き込む。重量級の吉田が天空から何度も降ってくるのだからたまらない。草薙は無念のカウント3を喫した。長い試合が続いて疲れ気味の館内を察したのか、吉田が10分足らずで草薙を仕留めた。

セミは進境著しいハイブリッド南が前SPZ王者の永沢舞と激突。4期生の永沢が自信を持って戦い、「とおー」投げ技連発でハイブリッドを追い込む。ハイブリッドもネオサザンで反撃したがそれまでで、最後は永沢のムーンサルトからジャンピングニーの猛攻に撃沈。勝負タイム13分14秒。

そしてメインの上原今日子VS伊達遥のSPZ選手権。

(長くなるので続きます)

2007年3月24日 (土)

第66回 上原今日子、悲願のSPZベルト初戴冠

SPZの2016はお正月、1月5日の新日本ドーム大会からスタートした。男子団体の最大手のドーム興行の翌日で「男対女のドーム興行戦争」と騒がれたが、無事に超満員札止めとなった。

第2試合は小川ひかる、富沢レイの「関節技使い同士なんだけど普段はあまりタッグを組まない2人」と、マリア・クロフォード、ウェイン・ミラーのEWA軍が激突。4人とも極め技を得意とするので、試合はレスリングの奥深くへ入り込み、30分タイムアップドロー。お屠蘇気分を吹き飛ばす激闘に5万人超の観衆は拍手を送った。

「はー、1期生のあたしたちがドームで休憩前なのねぇ」

今回の目玉は「死闘!3大シングルマッチ」なので、秋山沢崎のタッグチームは割を食って、第3試合での登場。それでも相手はドリュークライ、ユーリ・スミルノフのEWAの強豪である。連係プレーで勝った秋山沢崎が有利に進め、最後は沢崎が必殺のタイガースープレックスでスミルノフを仕留めた。ここで休憩。

休憩明けの第4試合は伊達遥対ハイブリッド南のシングルマッチ。今回は南利美、新咲祐希子はヒザの負傷で欠場。なので後半はシングルマッチを3連発というカード編成。

―とうとうここまできた。

ハイブリッド南は心中期するものがあった。雑誌や新聞で見た、姉さんを何度もボコボコにした張本人が目の前にいる。やっとシングルで戦えるところまでポジションを上げてきた。

だが伊達もこういうときは怖い。ハイブリッドは関節技を狙うのだが伊達はロープ際で闘って、絶好機をつくらせない。逆にハイブリッドが徐々に追い込まれて、

がすっ!

鋭いSPZキック一閃。

「なっ・・・・」

前のめりにマットに崩れ落ちる。ハイブリッド南はこの一撃で動けなくなった。18分16秒、フォール負け。

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セミファイナルは草薙みこと対吉田龍子。元SPZ王者同士の戦い。次の挑戦権のことを考えるとお互い負けられない。しかし試合中に突如吉田が足首を痛めるアクシデント。異変を察知した草薙がサッとコブラツイストを決めてギブアップを奪った。勝負タイム13分1秒。やや不完全燃焼な試合だった。

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メインは永沢舞対上原今日子のSPZタイトルマッチ。

3期生の上原、SPZの中で人気実力ともトップクラスなのだが、絶対的な大技がないことと、追い込まれるともろい面が災いして、SPZのベルトに縁がない状態が続いている。が、今回挑戦する相手は過去のシングル戦績では分のいい永沢なので、上原はチャンスと考えベルト獲りに挑んだ。伊達とのコンビを解消して団体のトップを狙ってからは思い通りに行かない苦難の日々が続き、1期生2期生の伊達草薙といった化け物連中には勝てず、後輩の永沢、吉田にSPZベルト獲得では先を越されていたので、このチャンスは絶対ものにすると入れ込んでいた。

「かわいそうだけどこれでおわリッ!」

中盤、上原がフライングニールキックで勝負に出る。しかし永沢もノーザンライト、ジャンピングニーで反撃。

「これでどうだ!」

上原がドラゴンスリーパーでしめあげる。鍛え上げられた腕が永沢の意識を漂白してゆく。永沢はかろうじて右足をロープにかけたがぐったりとしていた。

―詰めを間違わなければ、勝てる。

上原は長年の得意技、フェイスクラッシャーで永沢の顔面をマットに叩きつける。躍動感あふれる攻撃だ。

ワン、トゥ・・

しかしニアロープ、良く見ていた永沢がサードロープに足をかけた。意識もうろうとする中永沢は必死にタイガードライバーで反撃。

これをカウント2でクリアした上原はすばやく組み付いて、右腕で永沢の首を、左腕で永沢の左足をフックしてそのまま担ぎ上げてさらにジャンプを加え、永沢を頭からマットへ突き刺した。上原があまり見せない奥の手、フィッシャーマンバスターが炸裂。これで永沢の意識は闇に落ちた。

「ワン、トゥ、スリッ!」

阪口レフェリーの手が3つマットを叩いた。

「ヨッシャー!」

勝負タイム24分44秒、第15代王者誕生。男女問わず幅広い上原ファンの声援がドームを震わせる。

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SPZ世界選手権(60分1本勝負)

○上原今日子(24分44秒、フィッシャーマンバスターからの片エビ固め)永沢舞×

第14代王者が初防衛に失敗、上原今日子が第15代王者になる

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今野社長からベルトを受け取る上原、しかし上原はベルトを腰に巻かずに肩にかけた。

「今日は、ファンの皆さんのおかげで勝てました。応援ありがとうございました。でも、自分の中では、伊達さんに勝って、真のチャンピオンだと思っていますので、来月、伊達さんに勝ったときにベルトを巻きたいと思います」

かつてタッグを組んだときに伊達遥の恐ろしさを存分に見ていて、この人に勝たない限りはチャンピオンの資格はない、そう考えていた上原なりのこだわりであった。

「いやかいせつの小川さん、ますますこの団体のトップ争いは混沌としてきましたねぇ」

「そうですね。伊達さん、草薙さん、吉田選手、今戦った永沢選手と上原選手。この5人は試合の流れ次第でいつチャンピオンになってもおかしくないですから。これからハイブリッド選手や新咲選手も割って入ってきますから、これからもっとこのリングは面白くなりますよ」

「ありがとうございました、かいせつはSPZの「関節キラー」小川ひかる選手、実況は私、森がお送りいたしました」

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試合後の青コーナー側控室。

「かんぱーい」

5日前に20歳になったタイミングでベルトを獲ってしまうタイミングのよさ。上原はカップに注がれたビールに少しだけ口をつけた。

「今日子ちゃん、おめでとう!」

秋山沢崎がビールを上原に頭からかける。

「ぶっ、ちょっと、目に・・・入って」

「いっぺんこれ後輩にやってみたかったのよ、でも草薙さんイメージ的にあわないし、未成年の選手にやったらアレだから」

「上原さん・・・その・・・来月・・・たぶん横浜で当たると思うんだけど・・・よろしく・・」

伊達が祝福の言葉?をかける。

「はい、今度こそ負けませんからね。そのために練習してますから」

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1月シリーズは最初にドーム大会があって、そのあと地方をサーキットする展開。最終戦は山梨カイメッセ大会。メインは上原今日子対秋山美姫のカード。昨夏のSPZクライマックスでは不覚をとっている相手だったので上原はガンガン攻めて、関節大逆転の隙を与えぬまま攻めて、ジャーマンで秋山を葬った。

「伊達さんに勝つまでは負けられませんよ」

こうして1月シリーズは幕を閉じた。

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「今のままじゃいけないかなって思うんです、私もう強くなれないんでしょうか・・・」

さすがに明るい永沢も、SPZベルトを2回も手に入れながら翌月に他人に明け渡すとあっては落ち込む。社長はなんとか永沢を励ました。

2007年3月23日 (金)

7年目12月 第2回選手会興行in横浜

2015年大晦日、選手会主催でSPZ各選手のファンクラブ会員限定イベント

「SPZ年越し殴り合いin横浜」が開催された。

横浜の赤レンガアリーナ。旗揚げ興行を行った思い出の地で、大晦日の夜ならではのイベントが。

「もう今年はリングで闘うのやだよ。誰かさんに蹴られて痛かったんだから」

ことしは「社長登場のストリートファイトマッチ」はないが、それでもイベント盛りだくさん。

1.トークショー

1期生の保科、南、伊達、小川、秋山、沢崎が移動中や食事中の映像を見ながらまったりと話すイベント。秋山沢崎が良く話すが、あとの人は元々無口なのであまり話さずお茶を飲んでいた。

2.パンチングボール選手権、「なんちゃってSPZクライマックス」

リング上に据えつけられたのはどこで調達したのか、ゲームセンターで一時期流行した「パンチングボール」だった。要するに殴って最高点をたたき出すのは誰かというイベント。

出場選手は以下の8人

A.今野社長(SPZ社長)

「ほわぁーっ!」40代のおじさんが奇妙な声を上げてパンチングボールを殴る。85kg。

B.井上霧子(SPZレフェリー)

「はっ!」

現役時代を思わせる裏拳。この人もこういう遊びのときはマジになる。120kgをたたき出した。

C.リングドクター羽山海

「えいっ」めいっぱい力を込めて殴りつけて80kg。

D.小川ひかる(一期生代表)

「ていっ」この選手は打撃技をあまり実戦で出さないので、力のない右ストレートに館内どっと沸く。結果は85kg。社長と同じ破壊力・・・

E.富沢レイ(二期生代表)

「レイちゃんハンマー!」

げすっ!

ベイダーハンマーのようなスイングブローが勢いよく命中。130kg。

F.上原今日子(三期生代表)

「せいっ!」マジ掌底炸裂。140kg。館内どよめき。

G.永沢舞(四期生代表)

「こんなので本気出してもね~、とおっ」

それでも、はり手で軽く105kgを出すのだから恐れ入る。

H.吉田龍子(五期生代表)

「遊びじゃないんだよ!」グーパンチ炸裂。

ぱっしーん。

軽く打ったのだが135kg。この結果上原今日子(この日が20歳の誕生日)に賞状と「横浜中華街お食事券」が贈られた。最下位の羽山海には罰ゲームとして「アニメソング1曲歌唱の刑」が科せられた。

3.ラッキーナンバー抽選会。

選手がもういらないなーと思った物品を提供するイベント。入場時に渡された4桁のラッキーナンバーが読み上げられるたびに館内どよめく。南利美は2年連続でサンダルを提供。富沢レイは「深夜アニメのDVD10巻組み」を提供。「キック練習用ミット」とか「中小企業診断士問題集」といいった豪華商品?を提供した選手がいた。

ここで時間調整をかねた休憩。

4.普通のシングルマッチ 15分1本勝負

渡辺智美対小川ひかる

23時45分きっかりに試合開始。

まずリング中央でクリーンに握手。そのあと10分ほど地味なグラウンド・レスリングの応酬。地味な腕の取り合いに観客が見入るのだから両者ともプロとしてしっかりとした技術を持っている。終盤、渡辺がしつこくアキレス腱固めを繰り出し痛めつけるが、小川がここでSTFで逆襲。

「このまま年越します!」

同時にスクリーンにカウントダウンの文字が。

20、19,18,17・・・

必死にもがいて、ロープへ匍匐前進する渡辺。

10,9,8,7・・・

観衆全員でカウントダウン。

「ごー、よん、さん、にー、いち、ぜろっ!」

カンカンカンカン!

ここで試合終了のゴング。けっきょく普通のシングルマッチは時間切れ引き分けに終わった。

「ナイスファイトでした!」

小川ひかると渡辺智美がガッチリ握手。そこへアクション映画音楽のテーマが流れ・・・

「ただいまより全選手参加のバトルロイヤルを行います!」

館内どええええええの歓声。この団体、バトルロイヤルは旗揚げ以来、初めて行われる。

5.お年玉争奪バトルロイヤル

花道からいつの間にかコスチュームに着替えた12名のレスラーが一斉に入場。全員リングに上がったのを見て今野社長がゴングを一打。

パッシーン!

先ほどの戦いのダメージが残る小川ひかる、吉田龍子のラリアット一撃で転倒、そこへ5期生6期生が一斉に踏みつけフォール。まっさきに選手会長が脱落。

「小川ひかる退場」

まあこんなものね、とさばさばした表情で小川は引き揚げた。

ここで一期生連合が動いた。

南秋山沢崎伊達保科の5人が吉田龍子を袋叩き。

「そ、そんな、うわぁー」

5人がかりでど突き倒されてその上から5人が覆いかぶさるフォール。

「吉田龍子退場」

そのあと悪の5人組は草薙みことに襲い掛かる。

「そんな、5対1なんて卑怯です」

抗議に耳を貸さず、悪の5人組は草薙みことをよってたかって殴り倒し、また5人が覆いかぶさってフォール。

「草薙みこと退場」

―バトルロイヤルでは強い選手を最初にみんなでつぶすのがセオリーよ。

軍師・南利美の冷酷な作戦に犠牲者が。しかし身内から思わぬ攻撃が・・・

「てやーっ」

ハイブリッド南が南利美に延髄ラリアット。

「くっ、あ、あんたねぇ・・・」

背後からの攻撃にあえなく転倒した南利美、秋山沢崎伊達が裏切ってカバー。カウント3。

「南利美退場」

いっぽう、反対側コーナーでは

「とおー」

「ぐわああっ」

永沢舞が上原今日子を見事なバックドロップでたたきつけたが、カバーされたのはなぜか投げた方のSPZ王者永沢。バックドロップで投げた後だけに防ぎようがなかった。秋山沢崎伊達がカバー。カウント3が入った。

「永沢舞退場」

そのころ富沢レイは・・・

「まじめに闘ってもねぇ」

観客席で休憩して体力を温存していた。常連客とアニメ談義などしている。

ニュートラルコーナーではハイブリッド南と新咲祐希子がふつうに殴り合っていた。

「この技に耐えられるかしら?」

ハイブリッド南がアキレス腱固め、新咲苦悶の表情。

「今よ!」

一期生の残り4人が手分けしてハイブリッドと新咲の上に覆いかぶさる。残っていた上原渡辺も加担。

「ハイブリッド南退場、新咲祐希子退場」

試合開始から5分そこそこで残りは上原渡辺富沢、そして一期生の秋山沢崎伊達保科、はやくも半分に減った。

「しゃっ!」

伊達の首を狙う上原がここで仕掛ける。打点の高いドロップキック。伊達もすばやく組み付いていって、

殺人ヒザ魚雷!

新春1回目の殺人ヒザ魚雷。ダメージを負ってマットに転がる上原、全員が覆いかぶさってフォール。

「上原今日子 退場」

保科と渡辺がいつもどおりのど突き合いを展開するが、15分戦ってダメージの深い渡辺の動きを見切った保科。

「これで決まりです~」

普段は出すことのないスモールパッケージホールドでカウント3奪取。

「渡辺智美退場」

しかしここですばやくリングインした富沢レイ、スモールパッケージを半回転させて保科の肩をマットにつけて、自身もその上から覆いかぶさる。あっという間にカウント3.

「保科優希退場」

これでリングに残ったのは伊達秋山沢崎富沢の4選手。

秋山沢崎が富沢を味方に引き入れ、3人でこのメンツでは最強の伊達を殴り倒す。

「これが3本の矢の教えです!」

沢崎がほえる。

1対1ではかなわない相手でも、3人で寄ってたかって殴れば絶対に勝てるということらしい。

3人がかりのケンカキックで倒された伊達、無念の3カウント。

「伊達遥 退場」

しかし富沢は伊達のカバーをカウント2で離れて、伊達退場が宣告されるや沢崎をスクールボーイで丸め込んだ!

「し、しまった・・・」

「ワン、トゥ、スリー」

「沢崎光退場」

あえなく沢崎退場。残るは秋山と富沢のみ、賞金欲しさなのか、富沢も秋山に懸命に食らいついていったのだが、最後は地力の差が出て秋山のDDT炸裂。富沢は無念の3カウントを聞いた。バトルロイヤルでも最後の1人はシングルマッチに近くなる。

「12分3秒、DDTからの片エビ固めで、秋山美姫の勝ち」

「やったーっ!」

1期生をうまくコントロールした秋山美姫が優勝。「お年玉」として「1万円」が贈られた。ファンは選手間の人間模様が垣間見えたので笑った。

「あけましておめでとうございます、ことしもSPZを宜しくお願いいたします」

最後に今野社長と井上霧子の挨拶、そしていちはやくジャージに着替えた小川ひかる選手会長の新年挨拶。そのあとバトルロイヤル優勝者の秋山を加えて4人で鏡割り。めでたさいっぱいの選手会興行は終わった。

2007年3月22日 (木)

第64回 時に異様な力を発揮する永沢舞・・・

12月シリーズ「スノーエンジェルシリーズ」開幕。

借金返済のため利益を出さなければならないシリーズなので、大きめの会場を回り、札幌から福岡への大移動も敢行した。

福岡ではナスターシャ・ハン対秋山美姫のAAC戦、広島ではナスターシャ・ハン対新咲祐希子のEWA選手権といった「集客目的のタイトルマッチ」を組み、ナスターシャ・ハンが両方とも「脱出不能」STFで挑戦者を退けたが、両会場とも超満員札止めとなった。

最終戦のさいたま大会では、草薙みこと対永沢舞のSPZ選手権が組まれた。大方の予想ではここまで4連続防衛を果たしている草薙が手堅く勝って、ベルトを持って越年するだろうといったものだった・・・

しかしここで大番狂わせ。

「とおー」

容赦のないフロントスープレックス、ノーザンといった投げ技の連発で、草薙がじわじわと追い込まれる。

「投げろ!草薙ーー」

場内のみことファンの声援が飛ぶが、きょうの草薙はやられっぱなし。永沢の動きを見すぎたのか、いつもの問答無用の投げ技乱発に持ち込めない。

「いきまーす!」

最後まで永沢のペースは崩れず、キャプチュード、トドメのJOサイクロンと永沢が押し切って草薙みことから3カウント奪取。2回目のSPZベルト戴冠。王者草薙は5回目の防衛に失敗。

頭を押さえながらぼうぜんと引き揚げる草薙みこと。

ー永沢さんが時に異様な力を発揮するのは分かっていましたけど・・・戦いかたが似てるから潰されることはないと思っていましたが・・・甘く見ていたようですね・・・

「やったー!!」ファンの声援に応える永沢。この団体では喜びをストレートに出す選手は少ない。

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SPZ選手権

○永沢舞(20分くらい、JOサイクロン)草薙みこと×

第13代王者が5度目の防衛に失敗、永沢舞が第14代王者となる

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年末恒例のプロレス大賞。

何と最優秀選手賞は吉田龍子。18歳になったばかりでの受賞。シングルのベストバウトは先日の草薙みこと対永沢舞のSPZ戦、タッグのベストバウトはどこかの地方会場で苦し紛れに組んだ伊達、草薙組対吉田、永沢組が受賞。借金苦にあえぐSPZには計5000万円の貴重な現金収入となった。

SPZの2016年はお正月、1月5日の新日本ドーム大会からスタートする・・・

2007年3月21日 (水)

第63回 7年目11月SPZタッグリーグ戦

11月シリーズ「SPZタッグリーグ戦」が始まった。出場チームは下記8チーム。

    南姉妹 

・吉田龍子、新咲祐希子組(SPZタッグ王者)

    秋山沢崎(一期生同時入門)

    草薙みこと小川ひかる(前回優勝)

    永沢舞、富沢レイ

・伊達遥、保科優希(一期生コンビ)

    ナスターシャ・ハン、マリア・クロフォード(EWA代表)

    ウェイン・ミラー、カレン・ニールセン(EWA代表)

上原今日子と渡辺智美はケガのため欠場。

初戦の大阪城大会前、今野社長は選手全員を集めてゲキ。

「えー、うちの会社は2億7千万、借金をしました」

動揺が走る。

「来年4月に寮の移転を行いますので、その建設資金に10億かかります。7億ちょいは手持ち資金で出しましたが、あとの2億7千万は借金しました。で、3ヶ月以内、来年の2月末までに完済しないと会社がつぶれます。皆様一生懸命ファイトしていただいて会場を埋めてください。よろしくお願いいたします。みんなの力を貸してください」

選手の間にはじめは動揺が走ったが、小川選手会長が「私は社長を信じています」とフォローしたので、選手の士気はむしろ上がった。

(このゲーム、金溜め込んでると空き巣イベント起こっちゃう)

メインは満員にするために組んだ吉田龍子対伊達遥のシングルマッチ。伊達が殺人ヒザ魚雷を乱発し、吉田をマットに沈めた。

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2戦目の浜松大会からタッグリーグ戦がスタート。

伊達、保科○(2点)-カレン、ウェイン×(0点)

伊達のアシストを受けた保科がドラゴンスリーパーで決めた。

南、H南○(2点)-草薙、小川×(0点)

ハイブリッドのアキレス腱固めが極まってしまい、小川ギブアップ。前年優勝チームが黒星発進・・・

沢崎秋山○(2点)-永沢×、富沢(0点)

穴のないチーム。沢崎秋山が分断に成功、最後は孤立した永沢を攻め立て、秋山の「ひっさつ?」DDTで決めた。

吉田○、新咲(2点)―ナスターシャ×、クロフォード(0点)

SPZタッグ王者チームは白星発進。

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3戦目は千葉幕張大会。

ナスターシャ、クロフォード○(2点)ーウェイン×、カレン(0点)

草薙○、小川(2点)-伊達、保科×(2点)

草薙が手堅く保科を仕留めた。

秋山沢崎○(4点)―南、H南×(2点)

秋山沢崎が2勝目、沢崎がジャーマン2連発でハイブリッドを沈めた。

吉田○、新咲(4点)―永沢、富沢(0点)

 吉田がキャプチュードで富沢を撃沈。

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第4戦は新潟大会。

ナスターシャ○、クロフォード(4点)―伊達、保科×(2点)

 保科が伊達につなぐ前に外人組に集中攻撃され撃沈。

永沢、富沢○(2点)-ウェイン×、カレン(0点)

永沢が投げまくって大ダメージを与え、富沢が延髄斬りでトドメ。

草薙○、小川(4点)-秋山×沢崎(4点)

沢崎が小川を捕獲してタイガースープレックス、合体パワーボムであと一歩まで追い込むが小川はするりと逃げて草薙にスイッチ。草薙がいつものパターンで秋山を追い込み、草薙流兜落としで万事休すかと思われたが秋山冷静にロープブレイク。しかしー

―小川さんっ!アレいきましょう!

サッとリングインした小川がふらつく秋山を肩車で抱え上げて、草薙がコーナー最上段からラリアット。ダブルインパクト炸裂。

まっさかさまにマットに転落した秋山は無念の3カウントを聞いた。27分53秒の好試合。

吉田○新咲(6点)南×、H南(2点)

南姉妹、吉田のパワーの前に撃沈。フィニッシュは合体パワーボムだった。

***************************

第5戦は長野大会。

永沢○富沢(4点)-伊達、保科×(2点)

穴のあるチーム同士の対戦は、永沢がスープレックス乱発で保科を仕留めた。

南、H南○(4点)-カレン、ウェイン×(0点)

ハイブリッドのネオ・サザンクロスロックが決まりウェイン・ミラーはたまらずギブアップ。

沢崎○秋山(6点)―ナスターシャ、クロフォード×(0点)

秋山沢崎がクロフォードに的を絞り勝利。

吉田○新咲(8点)-草薙、小川×(4点)

つなぎの達人小川、きょうは相手チームの猛攻をさばききれず、吉田のムーンサルトに撃沈・・・

************************

第6戦は岐阜大会。吉田組が破竹の5連勝。

南、○H南(6点)―永沢、富沢×(4点)

草薙、○小川(6点)―ナスターシャ、クロフォード×(4点)

沢崎○秋山(8点)―伊達、保科×(2点)

吉田○新咲(10点)―ウェイン、カレン(0点)

第7戦は名古屋大会。

南、○H南(8点)―ナスターシャ、クロフォード×(4点)

南姉妹3連勝。ハイブリッドのネオサザンが猛威を振るう。

沢崎○秋山(10点)-ウェイン、カレン×(0点)

草薙○、小川(8点)-永沢、富沢×(4点)

草薙流兜落としが炸裂。

吉田○、新咲(12点)-伊達、保科×(2点)

「おらぁっ!」

吉田龍子のラリアットが保科優希を吹っ飛ばす。大先輩に対しても容赦なし。

「ぶーぶーぶーぶー」

「人でなしーっ!」

吉田の保科に対する遠慮ない攻撃に館内大ブーイング。優勝を狙う吉田組はやはり保科に的を絞るのがセオリー。普段は第1試合で会場を温める仕事をする保科がメインで奮闘するも吉田のデンジャラスキックに力尽きた。

*********************************

最終戦は横スペ大会。超満員の盛況。全勝の吉田組を1敗の秋山沢崎が追う展開。最終戦メインで両チームの直接対決。秋山沢崎が優勝するためには2連勝しなければならない。

ナスターシャ○、クロフォード(6点)-永沢、富沢×(4点)

EWAコンビが有終の美。富沢は永沢につなぐ前にナスターシャのアキレス腱固めに力尽きた・・・このコンビけっきょく2勝どまり。

南 ○H南(10点)―伊達、保科×(2点)

ネオ・サザンクロスロック発動。保科たまらずギブアップ。南姉妹は10点でリーグ戦終了。

草薙○、小川(10点)ウェイン×、カレン(0点)

草薙がEWAの中堅どころ2人を問題にせず。前年優勝の草薙組も10点でリーグ戦終了。

沢崎○秋山(12点)―吉田、新咲×(12点)

沢崎秋山が一期生の意地を見せた。吉田が有利に試合を運ぼうと考えたのか、早い段階で秋山沢崎に1発ずつスプラッシュマウンテンを見舞うも、秋山沢崎両者とも驚異の粘りを見せ、逆に吉田に着々とダメージを与えて新咲を引きずり出し、

吉田ほど強くはない新咲に集中砲火を浴びせ、最後はこのリーグ戦初公開のダブルインパクト!

「アーーーーッ!!」

悲鳴とともにまっさかさまに転落する新咲。

こんなの新咲は受けきれるはずもなくカウント3を聞いた・・・この結果両チームが12点で並んだので優勝決定戦。館内「もう1試合見られる!」大喜び。

************************

「マジっすか・・・」戻った控室で横になりながら秋山が漏らす。

両者とも26分の激闘のダメージ、そして吉田のスプラッシュマウンテンを一発ずつ食らって息も絶え絶え。そんななかもう1試合闘わなければならない。彼女たちも2試合やることは覚悟していたが、こんなズタズタの状態で2試合目に臨むとは思っていなかった。とりあえず20分間のインターバルは横になってダメージの回復を待った。

―こんなハードな試合を2試合やれなんてひどい話。・・・みんなあのパワー女が悪い。回復力なら16、17歳のあいつらが21歳のうちらよりどう考えても有利。でもあたしらにはこの団体をここまで引っ張ってきた誇りと経験がある。ビールで乾杯できない未成年の5期生6期生コンビに優勝賞金さらわれてたまっか。

秋山美姫はSPZタッグリーグ戦に過去4回出て4回とも準優勝という結果である。(パートナーは伊達が2回、沢崎が2回)

「伊達さん、」秋山が不機嫌な顔で言う。

「な、なに・・・?」

「猛然と腹が立ってきたわ。あいつらはり倒してくるから、ビール用意しといて」

「あ、もう用意してあります~、社長指示で5缶ほど買いました~」

保科がテーブルの隅を指さす。乾杯用の「スーパードライ」が用意してあった。(吉田組の控室にもスポーツドリンクを5缶ほど届けたのだがそれは言わないでおいた)

一方の吉田新咲はもっと深刻。吉田はまだまだいけそうだが、ダブルインパクトを食らった新咲は半失神状態でセコンドの力を借りながら控室へ戻った。

「ゆっこ、もう1試合やれるか?」

「あうー」

「優勝したらカレー食いに行こうな、横須賀に海軍カレーのうまい店あるんだ」

「あ、カレー・・・」

「・・・やばいな・・・」

リング上では小川ひかると井上秘書、今野社長の急造トークショー。話す内容を決めていなかったので会場はダレた。

「もつれた責任の一端は秋山さんチームに勝っちゃった私たちにもあるんですけど(会場笑い)こうなったら決定戦はおなじ1期生の沢崎さん秋山さんに勝って欲しいと思います」

午後8時30分、いよいよ優勝決定戦のゴング。重い足取りで秋山沢崎が入場。次いで吉田、新咲が入場。館内大盛り上がり。

新咲はやはり足元がふらついていたが、必死にドロップキックなどで手数を返し吉田にスイッチ。吉田のパワー殺法、個々の力ではかなわないが、秋山組は早いタッチワークと連係攻撃でうまく対応するがー

吉田のスプラッシュマウンテンが形勢を一変。大ダメージを食らった沢崎、動けなくなった。すかさず吉田がムーンサルトプレス、カウント2.5で返されてもう一発コーナーに上がってムーンサルトプレス。秋山がカットに入ろうとしたが新咲が抱きついて離れない。重爆ムーンサルトを2連発で食らった沢崎は動けず、無念の3カウントを聞いた・・・

決定戦の勝負タイムは15分24秒、5期生6期生チームが優勝をさらい、賞状、金一封と「デジタルカメラ」が贈られた。準優勝の秋山沢崎にも賞状と「マイナスイオンドライヤー」が贈られた。

「これも努力の結果というところかな・・・」

「まさか優勝できるなんて・・・すっごくうれしい!」

一方の一期生側控室。

「はぁぁ・・・」

「ゴメン、美姫」

秋山沢崎は3年連続準優勝という結果。準優勝は賞品もしょぼい上に賞金が出ないのであまりおいしくない。一期生テスト組の名タッグといわれていてもリーグ戦では優勝できない。連係がいくらよくても個々の力が下だと勝てないのかな・・・

用意されたビールは保科が気を利かせたのか、どこかへ消えていた。

2007年3月19日 (月)

第61回 7年目10月 最強巫女伝説

7年目10月

保科優希に写真集オファー、アイドルレスラー扱いなので受ける。ほどなく保科優希6th写真集「BIWAKO」が発売され、写真集発売回数でミミ吉原の「5冊」を抜いて単独トップに立った。

上原今日子負傷。同じタイミングで映画出演のオファーが着たので映画収録を優先させた。

2度目のドーム興行のカードを考えていたところ、

「社長大変です!」井上秘書が飛び込んできた。

AACのハヤトール氏から連絡があり、「新日本女子が自分のあずかり知らぬところでAACと契約を結んでしまった。従って次期シリーズAACの選手は来日できない」

新日本女子が最近ドーム興行を行うなど、業界ナンバーワンの座を争うようになってきたSPZへのイヤガラセとして、提携先のAACを横取りしてきたのだ。

「井上さん、ファンの間ではチョチョカラスさんのファイトを見たい人もいるから、お金積んでかまわないから来月抜き返してください」

いっぽうメキシコでは、

「シンザキサーン」

「ハイ、どうしたの? ハヤトールさん」

「大変申し訳ないのですが、SPZとAACの提携が切れましたので、日本へ帰ってください」

ということで新咲祐希子表向きは凱旋帰国。

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10月シリーズ「エクストリームバトル2015」、開幕戦青森大会、セミ前の試合で新咲の凱旋試合が組まれた。相手は「かませ犬?」小川ひかる。一方的に攻めて、小川にほとんど何もさせず、最後はギロチンドロップで3カウント奪取。

翌日の岩手大会、新咲の対戦相手はトップグループに近い一期生、前SPZタッグ王者の沢崎、さすがに一進一退の攻防となったが、最後はフェイスクラッシャーで戦意を奪っておいてのブレーンバスターで沢崎にフォール勝ち。

その次の日秋田大会、セミで新咲対ハイブリッド南の6期生同士の対決が組まれた。新咲も良く攻めて行ったが、最後に大逆転。ハイブリッドのネオ・サザンクロスロックが決まり、新咲は抜けられずギブアップするしかなかった。

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仙台大会のメインは草薙、小川のSPZタッグ王座に吉田、新咲の5・6期生コンビが挑むタイトルマッチ。

「結局のところ、あのチームを倒すには草薙さんを潰さなきゃだめなんだよね」

そう考えて吉田龍子はリングへ向かった。試合が始まり、草薙が吉田のパワー殺法に苦戦。そのあと新咲にフェイスクラッシャーを浴びて小川にスイッチ。小川がつかまり、吉田のプラズマサンダーボムを浴びてフラフラに。なんとか小川もSTFで反撃し草薙にスイッチ。しかし草薙が吉田を攻めきれず、逆にスプラッシュマウンテンが火を噴く。

バーーン!。

高々と担ぎ上げてから、マットへ垂直落下。草薙の意識は薄れ、3カウントを奪われてしまった。王座移動。

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SPZタッグ選手権

○吉田龍子、新咲祐希子(30分くらい、スプラッシュマウンテンからのエビ固め)草薙みこと× 小川ひかる

2代目王者は3度目の防衛に失敗。吉田・新咲組が第3代王者となる。

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10月25日、2回目の新日本ドーム大会。超満員札止め52108名の観衆で埋まった。

第1試合は富沢レイが5期生の渡辺智美をアキレス腱固めで仕留めた。

第2試合は小川ひかる対EWAの新鋭選手ウェイン・ミラー。タッグベルトを失った小川だが人気は相変わらず根強い。地味な攻防が続くがファンは固唾を呑んで見守る。しかしウェインが13分ごろ繰り出した脇固めが極まってしまい、小川はギブアップ。

第3試合は永沢舞対カレン・ニールセン。永沢がJOサイクロンで圧勝。

休憩後の第4試合は秋山美姫、沢崎光 対ナスターシャ・ハン、ユーリ・スミルノフのタッグマッチ。27分21秒の息詰まる戦いは秋山が返し技の背面トペでナスターシャを押しつぶして3カウントを奪取した。

セミファイナルはSPZタッグ王者となった吉田、新咲組に南姉妹がノンタイトルながら対決するカード。

「そろそろ派手に決めようか!」

吉田のスプラッシュマウンテン炸裂。南利美はなんとかカウント2.8で返したものの、ハイブリッドにタッチするやリング下でのびてしまった。孤立したハイブリッドを攻め立て、最後は新咲がジャンピングニーでけりをつけた。20分47秒の激闘だったが、それ以上に吉田の力強さが光った。

メインは草薙みこと対伊達遥のSPZ選手権。SPZクライマックスで2連敗しているので伊達は期するものがあった。しかし、いざゴングがなると草薙がアームホイップやフロントスープレックスで攻め立て、サソリ固めやドラゴンスリーパーで大ダメージを与え、タイガードライバーの連発で伊達はカウント2.8まで追い込まれる。まだ膝蹴りは一度も火を噴いていない。

「うーっ」

リング上で横たわってうめく伊達。そのスキにコーナー最上段に登った草薙がダイビングプレス。一斉に光るフラッシュ。

近年草薙が決め技の一つにしているダイビングプレスを食らい、伊達はたまらず3カウントを聞いた。勝負タイム20分30秒。王者が4度目の防衛に成功。

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SPZ世界選手権

○草薙みこと(20分30秒、ダイビングボディプレスからの体固め)伊達遥×

第13代王者が4度目の防衛に成功

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草薙みこと、V4達成。現時点でのトップグループでは頭ひとつ抜け出ている印象をファンは受けた。

2007年3月18日 (日)

第61回 7年目9月 SPZ秋爽シリーズ

前回までのあらすじ

横浜のお嬢様プロレス団体「SPZ」は創立7年目を迎え、新日本ドーム大会を敢行するなど、世界でも指折りの女子プロレス団体に成長した。人気、実力、美貌をかねそなえた選手たちの織りなすドラマ、7年目9月シリーズ「秋爽シリーズ2015」が開幕。

シリーズ初戦高知大会、初戦のメインは南利美・ハイブリッド南の南姉妹がチョチョカラス、ジョーカーウーマン組と対戦するカード。だがファンが眼にしたのは残酷な光景。あの南利美がチョチョカラスやジョーカーウーマン相手に防戦一方なのだ。逆にハイブリッドのほうがチョチョカラスをサザンクロスロックで攻めるがカットに阻まれる。最後はハイブリッドがつかまってしまい、ジョーカーアタック(変形フェイスクラッシャー)の前に無念の3カウント。30分の好勝負だったが、このくらいの相手なら関節技でなんとか故郷に錦を飾ってくれるだろうという思いでマッチメークした今野社長も頭を抱え込んだ。

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シリーズ2戦は宮崎大会。当然メインは伊達遥で、秋山沢崎とトリオを組んで、チョチョカラス、ジョーカーウーマン、ミレーヌシウバと激突。さすがに秋山沢崎伊達は一期生トリオなので連係も流れるよう。目と目で3人が通じ合って合体攻撃を繰り出すのだから凄い。最後は沢崎がジャーマンでシウバを仕留めた。

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今シリーズは数千人規模の体育館を回る地方興行が多いので、メインのカード編成もわかりやすい6人タッグを中心に据えた。第4戦の石川金沢大会も、メインは南姉妹プラス小川の「関節地獄連合軍」に、秋山伊達沢崎「一期生トリオ」がぶつかるカード。実力ではもう姉に並んだのではないかとファンの間でうわさされているハイブリッドが奮闘するも、さすがに伊達には歯が立たない。とはいえ関節連合軍が小川が司令塔となって早いタッチワークで戦い、的を絞らせない。地方会場では珍しいロングマッチになった。

だが伊達の牙城は崩せない。小川の動きがやや落ちてきたところへ殺人ヒザ魚雷炸裂。

「がは・・・っ」

小川は軽量なので膝蹴りで吹っ飛ばされる。

それでも小川が奮起してバックドロップで反撃し、南利美にスイッチ。しかしここで伊達のSPZキック炸裂。

「うっ・・・・」

頭に大ダメージを負った南はハイブリッドにタッチせざるを得ない。リング下で一期生二人がのびている中、若いハイブリッドは奮闘したが、最後は秋山のDDTに力尽きた。

勝負タイム32分58秒。意気揚々と引き揚げる一期生トリオ、そのあとのびていた小川と南姉妹がふらふらと起き上がって、3人並んでリング上で一礼。盛大な拍手が送られた。

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第7戦、宇都宮大会のメインは草薙みこと・小川ひかるのSPZタッグベルトに、EWAのドリュークライ、マリアクロフォードが挑むタイトル戦。例によって小川が序盤つかまり、適度にやられてから草薙にスイッチ。このあとは毎度おなじみの草薙劇場投げまくり。クロフォードは波状攻撃に耐えられずにタイガードライバーでフォール負け。小川もキッチリとドリューのカットを阻止。王者組が3度目の防衛に成功。

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最終戦さいたま大会、3万人収容の会場は超満員札止めとなった。

第1試合は少し趣向を変えて、保科優希対ミレーヌ・シウバのカード。旗揚げシリーズでも見られた組み合わせのカード。終盤よく粘った保科だったが、22分3秒、シウバのローリングソバットに力尽きた。

第2試合は富沢レイ、渡辺智美組対ドリュークライ、マリア・クロフォード。この実力差あるカードにプライドを傷つけられたドリュー、富沢を掌底で流血に追い込んで、最後は9分50秒、ロー・ミドル・ハイキックの連打で富沢を撃沈。クロフォード出番なし。

第3試合は小川ひかる対ハイブリッド南。場内ため息。極め技、絞め技の差し手争いで小川がついていけないのだ。執拗なスリーパーで動きの鈍った小川をハイブリッドがいいように痛めつける。

「覚悟して」

最後は裏投げで小川を動けなくしてカウント3奪取。静まり返る場内。12分47秒、ハイブリッドの完勝といっていい内容だった。ここで休憩。

「はぁ・・・・」

ハイブリッド南に一方的にやられた小川はさすがにショックを隠せなかった。

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休憩後の第4試合、吉田龍子対南利美のシングルマッチ。

パッシーン!

吉田のラリアット連発などパワフルな攻撃を受けてゆく。館内に南ファンの悲鳴。

ーワンチャンスの腕ひしぎに賭ける。

もうこういう闘い方しかできないのを南は自覚していた。苦しみながらも必死にスリーパーや脇固めで手数を返し、試合中盤、ニーリフトを食らってこれ以上は受けられないなと感じたところで、

「この技でマットに眠りなさい!」

飛びつき腕ひしぎ一閃。

「ぐわぁぁぁぁぁぁぁ」吉田の悲鳴。館内は異様な興奮。

「決めて、南さん・・・」涙ながらに声援を送るファンも。

だが吉田もかなりのダメージを負ったが、力任せにふりほどいた。

「いいかげんに倒れろ!」吉田は南を左のグーで殴って倒したあと、痛む腕を少し気にしながらコーナー最上段に登りムーンサルト炸裂。天から降ってくる吉田。

「がは・・・っ」

ワン、ツゥ・・・

「返せぇぇぇぇぇぇぇ!」ハイブリッド南が絶叫。

カウント2.8でフォールを返す南、ドドドドドド。(重低音ストンピング)

館内はメインイベントのような大盛り上がり。

時間をかけて起き上がった南、必死に吉田に組み付く。吉田が力で押していって場所はリング中央・・・

今しかない。南はすばやく吉田の身体に飛びついて、この日2度目の飛びつき腕ひしぎ。

「ぐぁあああああー」

ウォオオオオオ!

館内は再びものすごい歓声に包まれた。

今度は完全に決まった。振りほどこうにも右腕に力が入らない。

―マイッタしなさい!、本当に折るわよ!。

これ以上は我慢できないと判断した吉田は井上レフェリーの手を叩きギブアップの意思表示。

「18分31秒、飛びつき腕ひしぎ逆十字で南利美の勝ち」

今野リングアナのアナウンスも大声援にかき消された。

先に起き上がったのは吉田龍子。右腕は動かせないが、体はまだまだ動ける状態。なのに負けてしまった。「過去の人」に負けてしまって、これで草薙さんのベルト挑戦の優先順位も下がってしまう・・・吉田は一礼して、憮然とした表情で右腕を押さえながら退場した。

ものすごいミナミコールの中、ゆっくりと起き上がった南が井上レフェリーに手を上げてもらう。さいたまスペシャルホールが爆発した。実力では追い越された5期生に食らいついて、まずかな可能性に賭けて、そして勝ってしまった南の戦いぶりに観衆は大声援を送った。この日のベストバウト。

「あーしんどかったわ。」

南は控室に戻ってくるや畳の上にぶっ倒れた。ハイブリッドがシューズの紐を解く。

―完璧な試合じゃないけど、お客さんの声援は嬉しかった、泣いてる人も何人かいた・・・もう少しだけ頑張ってみようかしら。

****************

セミ前は伊達遥、沢崎光対ジョーカーウーマン、チョチョカラスのタッグマッチ。4人の持ち味がよく出た熱戦が展開されたが、伊達の殺人ヒザ魚雷でチョチョカラスの動きが落ち、最後は沢崎がジャーマンでチョチョカラスを仕留めた。勝負タイム20分27秒。

そのころ医務室では、吉田がリングドクター羽山海の診察を受けていた。

「はい、どうしましたぁ?右腕がズキズキする。それは重い、重―い、靱帯損傷かもしれませんねぇ、すぐにお手当てしないと大変です。ではそこに横になってください、ふふ、もっとリラックスしてください・・」

ブスーッ。

「あ、うくっ」容赦のない注射。

「はい、痛み止め~。あとはサポーター巻いときますから、とりあえず今夜は右腕使わないで安静にしてて下さい~。明日になっても痛みが引かないようでしたらびょーいん行って下さいね~」

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セミは永沢舞 対 秋山美姫のシングルマッチ。永沢が終始優勢に試合を進め、最後は12分45秒、タイミングよく決まった脇固めで秋山からギブアップを奪う意外な結末となった。

そしてメイン、草薙みことのSPZ選手権に挑むのは上原今日子。SPZクライマックスは不本意な結果だったが草薙に最終戦で勝ったので挑戦者に名前が挙がった。だが先月はハードなリーグ戦の最終戦でボロボロの状態で足元をすくわれたのに対して、今回は草薙もきっちり対策を立ててきて、フロントスープレックスなどの投げ技で適当に押し込んでからサソリ固めで痛めつける。で、上原は絞め技極め技の対応が・・・

「う、ぐっ・・・」

振りほどくのに失敗した上原、あっけなくギブアップ。草薙がハードな投げ技を連発する前に終わったので場内はため息に包まれた。勝負タイム20分51秒。王者が3度目の防衛に成功。

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SPZ世界選手権

草薙みこと(20分51秒、サソリ固め)上原今日子

13代王者が3度目の防衛に成功。

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ファンは怪獣同士の激突、壮絶な試合を期待していたのに・・・

ふがいない試合をしたと感じた上原はメイン終了後控室で少し泣いた。

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全試合終了後選手たちはバスで横浜へ戻った。吉田龍子は右手が使えなかったので、

「社長、今日打ち上げ出られない、右手使えないからメシ・・・」

「じゃあ打ち上げは二手に分かれてやろう。みんなは井上さんと『よこ川』で食べてもらって、年少組(酒の飲めない3期生の19歳以下)は寿司食いに行こう。」

「寿司ですかっ」

「いや、南さんに腕やられた選手がいるときは寿司って前例があってね、左手でもつまめるでしょ」

「ぷっ」

過去にも犠牲者がいたのか・・・

こうして上原永沢吉田渡辺ハイブリッド、プラス小川の6選手は社長に連れられ、横浜某所の寿司店「能登」で高級寿司を食いまくった。「よこ川」は身内同然なのでけっこう安く上がるのだが、ここはそうはいかない。しかも年少組の選手は「ウニとイクラ!」などと高級なネタを乱発。社長の顔は青ざめた。

小川は社長の横でゆったりとホタテをつまんでいる。

「この団体に6年いて、社長に全国のいろんなとこ連れてかれて、いっぱしの食通になってしまったみたい」

「ふふふふ」左手でエビの握りをつまんでいた吉田が笑ってしまう。3人でうまい食い物談義となった。

2007年3月17日 (土)

第60回 7年目9月時点の「プログラム」から

7年目9月

9月シリーズ「秋爽シリーズ2015」サーキット前、今野社長は深夜自社ビル4階の社長室でプログラムにいれる選手紹介の文章のメンテナンスを行っていた。この団体ではプログラムは売らずに、来場者に無償配布するが、それでも選手への愛を込めて文案を練った。

関節のヴィーナス 南 利美

1993年3月1日、高知県高知市出身、SPZの一期生として旗揚げ直後に入門し、2009年5月15日、名古屋市体育館での小川ひかる戦でデビュー。デビュー戦を勝利で飾る。関節技の切れ味は世界でもトップクラスで、一瞬の隙を突いてギブアップを奪うことも珍しくない。そして関節技を警戒する相手には裏投げで痛打を与える立ち技もこなせるファイター。1年目からタイトル戦線に抜擢され、SPZジュニア、AACタッグ、SPZシングルのベルトを奪取。フォール勝ちよりも相手にギブアップといわせる方を好み、腕ひしぎ発動時決め台詞の「この技に耐えられるかしら?」はあまりにも有名。最近は妹のハイブリッド南とのコンビでEWAタッグ王座を奪取するなどタッグ戦線で活躍。得意技は飛びつき腕ひしぎ逆十字固め、裏投げ。

テーマ曲「スピード」(映画サントラ)

不屈の大和撫子 保科優希

1992年9月3日、滋賀県大津市出身。中学時代は合気道で身体を鍛える。SPZ一期生として第1回新人テストに合格し、2009年4月21日横浜赤レンガアリーナ大会で、アリッサ・サンチェス戦でデビュー。温和な性格で選手たちの信頼も厚く、合宿所の初代寮長を務め、団体の草創期を陰から支える。現在はおもに第1試合で若手選手の壁として熱いファイトを展開。「6時半の女」と呼ばれるに至った。ファンの人気もかなり高く、映画にも多数出演している。得意技はアキレス腱固め。

テーマ曲「ボレロ」(ラヴェル)

完全燃焼娘 沢崎光

1993年6月17日、広島県尾道市出身。SPZの一期生として第2回新人テストに秋山と同時合格し、2009年5月15日、名古屋市体育館でのジュリア・カーチス戦でデビュー。練習熱心でプロレスにかける情熱は人一倍。努力を積み重ねてAACジュニア、AACタッグ王座、SPZタッグ王座などを戴冠。得意技はタイガースープレックス。

テーマ曲「エクスプロージョン」(洋楽)

万能ファイター 秋山美姫

1993年10月8日、鳥取県米子市出身。SPZの一期生として第2回新人テストに沢崎と同時合格し、2009年5月15日、名古屋市体育館でのアリッサ・サンチェス戦でデビュー。投げ技も関節技もバランスよくこなす器用なファイトを見せ、AACジュニア、AACタッグ、SPZタッグ王座を戴冠。最近では同時入門の沢崎光とのタッグで活躍。得意技はDDT、ドラゴンカベルナリア。

テーマ曲:「DETECT」(C.G mix)

静かなる不死鳥 伊達遥

1993年10月23日、宮崎県都城市出身。SPZの一期生として旗揚げ直後から参加し、2009年6月20日根室市体育館、アリッサ・サンチェス戦でデビュー。長身を生かした蹴り技の威力はすさまじく、とくに長い足を生かした膝蹴りは多くの選手が「身体を剣で串刺しにされるようだ」と評され、ついには「殺人ヒザ魚雷」と呼ばれるに至った。人見知りが激しく無口な性格だが、リング上では熱い戦いを繰り広げる。秋山、上原とのタッグでAACタッグを戴冠し、団体最強の称号SPZ王者には通算5回輝く。得意技は殺人ヒザ魚雷、SPZキック。

テーマ曲「宇宙の皇女」(オリジナル)

SPZの闘うヒロイン 小川ひかる

 1993年11月30日、長野県松本市出身。中学時代からアマレス、柔道などで体を鍛える。井上霧子に見込まれ、SPZプロレスにスカウトされ入門第1号となる。2009年4月21日、横浜赤レンガアリーナ大会で、対 ジュリア・カーチス戦でデビューし、SPZ草創期から団体を支える。

小柄な身体で連日奮闘し、やられてもやられても立ち上がるその姿にファンは共感、いつしか大声援が飛ぶようになった。デビューからシングル戦15連敗を喫するなど素質はなかったが、連日の猛特訓でタイトル戦線にも食い込める実力をつけ、2011年5月には南利美とのタッグでAACタッグ、12月にはAACジュニアを戴冠。最近でも草薙みこととのタッグでAACタッグ、SPZタッグ王座を戴冠。必殺技発動時の「もう逃げられないわよ!」が出ると会場は盛り上がる。得意技はSTF。

テーマ曲:「マイティ・ウイング」(トップガン・サントラ)

最強巫女伝説 草薙みこと

1994年9月21日、山形県朝日町出身。幼い頃から草薙神社の巫女として修行を積み、その傍ら古武術に通じる草薙流体術を伝承体得した。この素質が井上霧子の目にとまり、SPZにスカウトされ2期生として入団。2010年4月27日、富山市体育館で小川ひかる戦でデビューし、プロ初戦を勝利で飾る。物静かなタイプだが、リング上では強力な投げ技を次々と繰り出す派手なファイトスタイル。また、ミミ吉原から関節技を教わるなど研究熱心な一面もある。瞬く間に一期生に追いつきトップ争いに食い込み、SPZ王者にも3度輝く。小川ひかるとのタッグでSPZタッグ王者も戴冠し、SPZクライマックスでは3連覇を達成するなど目下SPZの女帝として君臨。得意技は変形裏投げの草薙流兜落とし、タイガースープレックス。

テーマ曲:オリエンタル・クラッシュ(オリジナル)

ファイヤーソウル 富沢レイ

1994年5月10日、千葉県八千代市出身。柔道などで身体を鍛える。SPZには二期生としてスカウトされ、2010年8月8日、新潟・柿崎アリーナ大会の草薙みこと戦でデビュー。主に前座戦線で会場の盛り上げ役を担うが、永沢舞と組んで時折セミやメインにも顔を出す。オフの日は秋葉原、年末には有明に出没することで有名。得意技はストレッチプラム。

テーマ曲:「ムーンリベンジ」(アニメ映画サントラ)

マットの覇者 上原今日子

1995年12月31日、沖縄県那覇市出身、第3回新人テストに合格しSPZ三期生となる。2011年5月11日、青森スポツァルト黒石大会の保科優希戦でデビュー。琉球空手の経験を生かしたローリングソバットなどの蹴り技を武器に着々とのし上がり、トップグループの一角に食い込み、AACタッグ、AACジュニア王座を戴冠。練習熱心な性格で、打倒伊達遥に執念を燃やす。得意技はフライングニールキック、フェイスクラッシャー。

テーマ曲:「disintegration」(I’ve sound)

規格外ファイター 永沢舞

1997年3月29日、福岡県二日市市出身。2012年4月16日、大阪舞州アリーナ大会での保科優希戦でデビュー。猫ミミ&しっぽをつけたコスチュームでイロモノと見られがちだが、リング上では投げ技を次々と繰り出すファイトを展開。難易度の高いJOサイクロンまで使いこなす。勢いに乗ったときは手がつけられない強さで、伊達遥を一方的に仕留めてSPZベルト初挑戦で王者になってしまった事件はファンの間でも語り草になっている。守勢に回った時の頑張りが今後の課題。得意技はJOサイクロン。

テーマ曲は「Change my style」(KOTOKO)

王者の魂 吉田龍子

1997年11月13日、熊本県八代市出身。2013年4月11日、札幌キターアリーナ大会での富沢レイ戦でデビュー。長身と規格外のパワーを生かした攻撃的な戦いぶりで先輩レスラーを次々に撃破し、デビュー2年目で南利美を破り、SPZ王者に輝くなど驚異のスピード出世でトップグループの一角に食い込む。勢いに乗ったときは手のつけられない強さだが、あっさり負けてしまうこともあるなど好不調の波がやや激しい。得意技はスプラッシュマウンテン、ムーンサルトプレス。

テーマ曲は「赤い破片」(邦楽女性アーティスト)

リングの元気娘 渡辺智美

1998年3月23日、香川県多度津市出身。2013年7月17日、岐阜市体育館のミミ吉原戦でデビュー。軽快な飛び技と関節技で、前座戦線を盛り上げる。得意技はドラゴンスリーパー。

テーマ曲:第一級恋愛罪(バナナラマ)

関節キラー ハイブリッド南

1999年3月1日、高知県高知市出身。関節のヴィーナス南利美の妹。本人いわく「姉をいたぶる連中に復讐するため」SPZ入り、2014年4月10日、釧路アリーナ大会の対ミシェール滝戦でデビュー。姉譲りの関節技で実力は急上昇中。ついには南利美とのタッグでEWAタッグベルトを戴冠。得意技はネオ・サザンクロスロック(変形STF)

テーマ曲:スピード(映画サントラ)

超新星 新咲祐希子

1999年3月2日、山口県下関市出身、2014年5月7日、高知市体育館の対渡辺智美戦でデビュー。デビュー戦を白星で飾る。現在はAACへ長期遠征修行中。

テーマ曲:G・T・O(シニータ)

レフェリー ピンクシューズ阪口

1957年8月8日、静岡県浜松市出身。1974年6月20日、徳島市佐古駐車場特設大会の粕谷純戦でプロレスデビューを果たすが、故障もあって1982年に現役引退し、レフェリーに転向。フリーの名レフェリーとして国内海外を問わずさまざまな試合を裁く。2010年にSPZにレフェリー兼コーチとして入団。

レフェリー 井上霧子

1980年9月15日、神奈川県川崎市出身。1995年5月1日、関東女子プロレス・後楽園プラザ大会のユリシーズ島宮戦でプロレスデビュー。2004年11月に現役引退。SPZには旗揚げ前から社長秘書兼レフェリーとして参加。選手のまとめ役として貢献。試合数が選手の負傷等で減ったときのトークショー(暴露話)は好評。

リングアナウンサー 今野和弘

1974年7月31日、山梨県塩山市出身。特にプロレスとの接点もなく会社員をしていた。SPZには2009年3月の設立時から社長兼リングアナウンサーとして団体を陰から支える。

リングドクター 羽山海

1987年6月21日、鹿児島県上屋久町出身。帝王大学医学部を卒業後、蝦天堂大学病院で外科医として勤務。プロレス観戦好きが高じ、「タダでプロレスが見られる」という今野社長の甘言に乗り、SPZにリングドクターとして随時参戦。得意技は注射で、選手全員から恐れられている。

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2007年3月16日 (金)

第59回 第7回SPZクライマックス(後編)

前回のあらすじ

横浜に本拠地をもつお嬢様プロレス団体「SPZ」はが毎年8月に開催するシングルリーグ戦「SPZクライマックス」、第7回大会の今年は団体のスーパースターたちが名勝負を繰り広げ、連日星のつぶしあい、意地のぶつかり合いが展開された。が、今年も前半戦を終えた時点で全勝をキープしたのは3連覇を狙う「最強巫女伝説」草薙みことであった。はたしてこの投げ技怪人を止める選手は出てくるのか・・・

第5戦は神戸大会。8000人超満員札止め。

伊達○(6点、殺人ヒザ魚雷からの片エビ固め、18.07)秋山(4点

伊達が危なげなく秋山を仕留めた。

永沢○(2点、JOサイクロン、10.46)南(0点)

いまだ白星がない両者の闘い。南いいところなく永沢のJOサイクロンに敗退。館内悲鳴とため息。

上原○(4点、フィッシャーマンバスター 20.39)沢崎(4点)

沢崎のスープレックス攻勢に上原大苦戦。タイガースープレックスをカウント2.9で返し、フィッシャーマンバスターでなんとか勝利。

草薙○(8点、ダイビングボディプレス 15.23)吉田(4点)

吉田でも草薙を止められず。スープレックス攻勢でズルズルとダメージを重ねてしまい、最後はコーナー最上段からのダイビング・ボディプレスにフォール負け。

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第6戦は名古屋大会。12000名超満員札止め。

伊達○(8点、ミサイルキックから片エビ固め15.10)永沢(2点)

伊達が中盤、殺人ヒザ魚雷とSPZキックで永沢に大ダメージ。最後はミサイルキックで永沢を仕留めた。4敗目を喫した永沢、シード権確保は難しくなってきた・・・。

吉田○(6点、スプラッシュマウンテン14.32)沢崎(4点)

吉田がパワーで圧倒。最後はスプラッシュマウンテンでカッコよく決めた。

秋山○(6点、コブラツイスト 16.09)上原(4点)

秋山は最後まで勝負を捨てなかった。「上原さんは極め技の対応がヘタだから立ち技以外でなら勝機はある」大ダメージを負いながらも、試合終盤、リング中央でコブラツイスト。だんだん上半身が変な方向に曲がり、上原は無念のギブアップ。

草薙○(10点、ダイビングボディプレス 12.24)南(0点)

南はまったく草薙に歯が立たず敗戦。かつてのエースの没落を印象付けた。このまま全敗なのか。フィニッシュはこのシリーズ草薙が多用しているダイビングボディプレスだった。南の予選会行きが決定。

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第7戦は群馬大会。

永沢○(4点、JOサイクロン 13.59)沢崎(4点)

永沢が終始攻勢を保ち、沢崎を危なげなく下した。

南○(2点、脇固め 18.40)上原(4点)

ここまで全敗の南利美、場内南ファンの悲鳴と歓声が轟きわたる。

「意地を見せてくれ関節のヴィーナス!」の声も。

15分過ぎ、会場の大声援に後押しされて脇固めが決まる。上原、懸命に振りほどく、しかし南、再び鬼の表情で脇固め。

「ぐあああああ・・・っ」

こんどは上原抜けられず、痛みに耐えかねギブアップ。南のリーグ戦初勝利に群馬のファンは爆発、ものすごい南コール。泣いているファンも散見された。

伊達○(10点、SPZキックからの片エビ固め 26.46)吉田(6点)

吉田は伊達にどうしても勝てない。スプラッシュマウンテンなどで追い込むも、伊達のSPZキック3連発に撃沈。26分46秒の好勝負に館内拍手。

草薙○(12点、ドラゴンスリーパー 18.35)秋山(6点)

秋山がコブラツイスト、ドラゴンカベルであと一歩まで追い込むも、草薙も「奥の手」ドラゴンスリーパーで秋山からギブアップを奪って全勝をキープ。

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最終戦は地元横浜に戻っての横スペ大会。メインで草薙が勝つか引き分ければ草薙の優勝だが、伊達にも優勝の可能性が残っている。

伊達○(12点、SPZキックからの片エビ固め23.08)沢崎(4点)

伊達が追いすがる沢崎を殺人ヒザ魚雷、SPZキックで振り切った。沢崎も予選会行きが決定。

永沢○(6点、ムーンサルトプレス 20.05)秋山(6点)

永沢が初公開のムーンサルトで秋山を下した。

吉田○(8点、ステップキックからの片エビ固め 12.11)南(2点)

吉田がパワーで南を圧倒。プラズマサンダーボム、スプラッシュマウンテンの猛攻で半失神に追い込んで、最後はグロッギー状態の南に強烈なステップキックをみまってフォール勝ち。南は1勝6敗でリーグ戦を終了。

「これが現実よね」と自嘲気味に語った。

上原○(6点、フライングニールキックから片エビ固め 14.03)草薙(12点)

千秋楽結びの一番。勝つか引き分ければ優勝の草薙。ここまで2勝4敗と不本意な結果の上原は草薙相手に一発狙ってきたが、投げ技極め技をバランスよく繰り出してくる草薙の前に防戦一方。しかし上原、中盤にニールキック、パワーボムでまさかと思わせる。しかし草薙もサソリ固め、ノーザン、タイガースープレックスの猛反撃。しかし上原のかかと落としが終盤になって炸裂。これで草薙、額から出血。チャンスと見た上原、フライングニールキックを叩き込んで、草薙からカウント3奪取!最後に意地を見せた。

リーグ戦の結果は下記の通りとなった。

1位:草薙、伊達 12点

3位:吉田8点

4位:上原、永沢、秋山(6点)

7位:沢崎(4点) 8位:南(2点)

シード権は上位4名なのだが、4位に上原永沢秋山が6点で並び、当該者同士の対戦成績も三すくみのため、翌月以降に順位決定戦を行うことにした。

そして1位は草薙と伊達が12点並んだので優勝決定戦。とはいえ伊達は第4試合に登場して休養十分なのに対して、草薙はメインで上原にやられてすぐなので、「15分間」の短いインターバルが取られた。リング上では小川ひかると井上霧子の急造トークショーで場もたせ。

南、草薙連合軍控室。

「自業自得ですね、最後の詰めが甘かったです」

草薙が息を整えながら、額の傷口の手当てをリングドクター羽山女医にしてもらっている。額に張られた肌色のテープをうまく髪で隠す。

「相手は伊達さんか・・・きついけどやるしかない・・」

一方の伊達は第4試合で沢崎を退けたあと、コスチューム姿で待っていてメインの結果に望みを託していたが、上原が草薙に勝ってしまったのをモニターで見ると、黙々と体を動かし始めた。

SPZクライマックスの優勝が決定戦にもつれ込んだのは初めてのことである。午後9時5分、伊達が入場、そのあと草薙が入場。15分のインターバルではダメージは回復しきっておらず、足取りもどこか重い。そして優勝決定戦のゴング。

―長期戦は無理、とにかく飛ばして飛ばすしかないですね。

そう考えて草薙は試合開始直後から猛ラッシュをかけてちぎっては投げの草薙劇場を展開。伊達は草薙の気迫にのまれたのか防戦一方。タイガースープレックス2連発はカウント2.8でクリアした伊達だったが、タイガードライバーをはさんでもう一度タイガースープレックス炸裂。これを伊達は返せなかった。

勝負タイム18分32秒、草薙みことがSPZクライマックス3連覇を達成。3年続けて団体最強の称号を得てしまうのだから凄い。

第7回 SPZクライマックス優勝決定戦

○草薙みこと(18分32秒、タイガースープレックスホールド)伊達遥×

「最後、ちょっともたついちゃってすみませんでした。これからも修行に励みます」

優勝した草薙みことには賞状と金一封、副賞として「ブランドバッグ」が贈られ、準優勝の伊達遥にも賞状と「横浜中華街お食事券」が贈られた。

2007年3月15日 (木)

第58回 7年目8月 第7回SPZクライマックス前編

7年目8月

「ファンクラブ?アイドルじゃあるまいし・・・」

ハイブリッド南のファンクラブ結成。姉の南利美との姉妹タッグ人気のほか、最近は姉に迫る実力をつけてきたのでファンクラブがついに結成された。

さて8月。SPZが世界に誇るリーグ戦「第7回SPZクライマックス」の季節がやってきた。出場者は以下の8名。コメントは開幕前に行われた記者会見時のもの。

草薙みこと(20) 前回・第5回大会優勝、5年連続5回目の出場「全力で行きます」

伊達遥21)第4回大会優勝 2年連続6回目の出場

 「えっと・・あの・・・その・・・がんばります」

吉田龍子(17)2年連続2回目の出場、SPZ世界王者

 「全力を出し切って優勝する」

永沢舞(18)2年連続2回目の出場

 「ファンの皆さんの期待に応えられるよう、頑張ります」

以下は予選会勝ち上がり組。

南利美(22) 第3回大会優勝 7年連続7回目の出場

 「出るからにはベストを尽くすわ」

上原今日子(19)3年連続3回目の出場

「全員潰して優勝して、SPZベルトに挑戦します」

沢崎光(22) 第2回大会優勝 7年連続7回目の出場

 「完全燃焼してきますッ!」

秋山美姫(21)第4回大会準優勝 7年連続7回目の出場

「まだ後輩たちには負けたくありません。賞金目当てに優勝狙います」

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「V3へ『敵は己自身』草薙みことが最終調整 

SPZクライマックスまであと1週間と迫った8月上旬、草薙みことが例年どおり山形県の奥地、古寺温泉で最終調整を行った。パートナーの小川ひかると朝4時に起きて山中を5時間走りながら体を動かし、仕上げは河原で投げ技の特訓。最大の持ち味である投げ技の威力を極限まで研ぎ澄ます。記者は見た。草薙が無心でフロントスープレックス、アームホイップで小川を投げまくる。今回も『草薙劇場』と呼ばれる投げ技の猛威が見られることだろう。そして最後に繰り出したノーザンライトで小川ひかるは失神。特訓のあとは温泉で身体をメンテナンス。『昨年と顔ぶれは同じなので、敵は己自身です、全力で行きます』力強く彼女はコメントした。」

京スポ新聞が例によって一面トップで草薙の特訓を載せた。しかも一面トップを飾ったのは温泉に漬かっている草薙、小川の入浴写真だったから発売日の京スポ新聞は「瞬く間に完売」してしまったらしい。

同じ日の朝刊スポーツ紙「日刊ブルース」には上原の特訓記事が。

「自分には努力しかない 上原今日子が最終調整 8日開幕のSPZクライマックスに向けて上原今日子が横浜のSPZ道場で最終特訓を行った。早朝からひたすらマシンで身体を苛め抜く。大量の汗が上原から滴り落ちる。去年は優勝を狙ったが3勝4敗でシード権すら取れなかったうえに4期生の永沢、5期生の吉田にまでSPZベルト戴冠で先を越され、上原の胸中にも期する物があるようだ。特訓の合間、上原は『伊達さん、草薙さんはもう人間じゃありません。伊達さんの膝蹴りは凄いし草薙さんの投げ技のペースは驚異です。そんなのに勝つにはただ努力、努力しかないと思います』とコメントした」

一方でスポーツ報連では

「永沢舞 根拠のない優勝宣言 いよいよ来週から始まる女子プロレス界最悪のシリーズ『SPZクライマックス』を前に永沢舞はあっけからんと、オフを利用して渡辺智美と東京都日野市の多摩動物公園に息抜きに出かけた、同行した記者の質問に『特訓?そんなの人に見せるものじゃありませんし、やったら疲れて本番動けなくなりますう。みんな強いんですけどお、テキトーに投げ飛ばして優勝して、賞金でアザラシ見に行きますう』と語り、コアラを見つめていた。」

といった記事が載った。

前夜祭は幕張大会。メインの6人タッグは吉田永沢上原対秋山沢崎伊達の組み合わせ、何と上原がフェイスクラッシャーで伊達をフォール。波乱の開幕となった。

第2戦はなんと札幌「どさんこドーム」初進出。「今野社長は気がふれた」と業界内でも話題の北海道でのドーム初進出だったが、結果は26659名と、約半分の入りであった。

「うわーやばいー」

は今野社長のコメント。だがリーグ戦が始まるや館内は熱くなった。

秋山○(2点、ドラゴンカベルナリア 17.57)南(0点)

勝負をかけた南の腕ひしぎをポイントをずらして防いだ秋山、最後はドラゴンカベルナリアで延々絞り上げ、ついにあの南から「ギブアップ」の言葉を吐かせることに成功。南、ぼう然として引き上げる。

吉田○(2点、スプラッシュマウンテン14.04)永沢(0点)

吉田がパワーで押して攻勢。永沢もJOサイクロンで転換を図ろうとするもうまくいかず、最後は重爆ムーンサルト→スプラッシュマウンテンのコンボで永沢を粉砕。

伊達○(2点、フィッシャーマンバスター 24.57)上原(0点)

ひたすら伊達の首を狙う上原、因縁の対戦が初戦の札幌でいきなり激突。上原も良く攻めるのだが伊達の耐久範囲を突き崩すに至らない。小技を効果的に積み上げて優位に立った伊達、満を持して「殺人ヒザ魚雷」炸裂。上原もニールキックやバックドロップで反撃するが、最後は伊達のフィッシャーマンバスターにカウント3を聞いた。

「なぜ勝てないんだ・・・」

控室で涙を流した上原。

草薙○(2点、ダイビングボディプレス 11.56)沢崎(0点)

初戦のメインは草薙が横綱相撲で沢崎を仕留め、白星発進。

全試合終了後札幌の寿司屋。今野社長と南利美が頭を抱えていた。南利美は秋山相手によりによってギブアップを喫してしまった屈辱感、今野社長はどさんこドームが半分しか埋まらなかったショックで頭を抱えていた。元気付ける小川と井上秘書。

「しゃ、社長、テレビが流れない札幌で2万5千も集められたんならまずまずだと思いますよ、次はもっと埋める手を考えましょう、元気出してください」

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翌日は1日オフ、その次の日飛行機で福岡へ飛んでボートメッセでの試合。1万5千人超満員札止め。

沢崎○(2点、ジャーマンスープレックス 17.47)南(0点)

予選会では南が勝ったカードだが今回はスープレックスを効果的に決めた沢崎に軍配。

秋山○(4点、ドラゴンカベルナリア 23.07)吉田(2点)

中盤からラッシュをかけた吉田、ラリアット、ニーリフト、プラズマサンダーボムで追い込むも秋山大逆転、リング中央でドラゴンカベルナリア発動。吉田は全身を絞り上げられ無念のギブアップ負け。

上原○(2点、パワーボムからエビ固め 14.06)永沢(0点)

終始押した上原がパワーボムで勝利。

草薙○(4点、ノーザンライトスープレックス 23.23)伊達(2点)

福岡で「怪獣決戦」実現。中盤のノーザン2連発で草薙が優位に立ったかと思えば伊達も殺人ヒザ魚雷で反撃、しかしそのあと草薙が勝負の草薙流兜落とし。これは返した伊達、ネックブリーカーで逆襲するも最後は3発目のノーザンで無念の3カウントを聞いた。

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4戦目の広島大会はなんと「若鯉球場」での実施、3万人収容のスタジアムで18752名の入り。社長落胆。

沢崎○(4点、パイルドライバーからの片エビ固め 14.13)秋山(4点)

1期生の同期テスト入門対決は沢崎がジャーマン2連発→パイルドライバーの波状攻撃を決めて秋山からフォール勝ち。「地元なので燃えました」との事。

伊達○(4点、ミサイルキックからの片エビ固め13.11)南(0点)

1期生同士の対戦だが、両者の力関係はかなり開いてしまった。伊達に殴られ蹴られながらも関節技一発にかける南。3分頃飛びつき腕ひひしぎを繰り出すも、落ち着いて伊達はポイントをずらし脱出。南は徐々に追い込まれ、殺人ヒザ魚雷、ミサイルキック3連発の猛攻を受けついに沈没。

吉田○(4点、スプラッシュマウンテン 18.09)上原(2点)

お互いの持ち味がぶつかる好勝負。最後は両者フラフラの状態、吉田が最後の力を振り絞ってスプラッシュマウンテンで上原を仕留めた。

草薙○(6点、逆水平チョップからの片エビ固め 14.53)永沢(0点)

永沢、またも草薙の牙城を崩せず。草薙流兜落としを食らって動きが悪くなり、そしてサソリ固めを延々かけ続けられグッタリ。最後は強烈なチョップ一発でカウント3を奪った。

リーグ戦3試合を終えて本命の草薙だけが全勝。最強巫女伝説がこのまま突っ走るのかと記者たちは予測した。

(長くなるので 続く・・・)

2007年3月14日 (水)

7年目7月 SPZ選手権 草薙みこと×吉田龍子

7年目7月、「サマースターナイツシリーズ」開幕。

第2戦長野大会のメインは、南、草薙、小川の「クールビューティー」トリオにチョチョカラス、ドリュークライ、カレンニールセンの外人トリオが激突するカード。6人タッグならではの百花繚乱、華麗なゲームに客席は沸いた。

「たぁっ!」

小川ひかるのニーリフトがカレン・ニールセンの腹に命中。伊達ほどの破壊力はないがそれでも痛い。そのあと

「リミさん!」タッチを受けた南が裏投げ一閃!

「草薙さん!」タッチを受けた草薙がすばやくコーナー最上段に駆け上がりフライングボディプレス。あわててチョチョカラスがカットに入るが、戦況を見ていた小川がチョチョカラスにがっちり抱きついて離れない。そのままカウント3が入り日本人トリオの勝利。3人で手を上げて勝ち名乗りを受ける。小川の地元なのでファンの反応も上々。

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4戦目の大阪城大会。

「ハイブリッド・・・なんとしても今日はタッグベルト獲るわよ。小川さんを壊すつもりでやって、私は草薙さんを何とかするから」

「わかったわ」

草薙小川組はとらえどころのないチーム。小川ひかるが穴なのでそこを突けば勝てそうなのだが、小川がたいていはうまくしのいで草薙にスイッチし、あとは草薙劇場、投げまくりで勝ってしまう展開。つなぎ役と決め役の分担がしっかりしているのだ。しかし今回はハイブリッドがネオ・サザンクロスロックで草薙に大ダメージを与えてたまらず小川が再登場。ここを南姉妹が突いて総攻撃。

アキレス腱固めや逆片エビで小川をフラフラ状態にする。

―負けられない、せめてつながないと。

小川が南にニーリフトを叩き込んで、倒れこむように草薙にスイッチ。散々小川がいたぶられ続けたので草薙の体力もある程度回復している。南も草薙を逆片エビで追い込んだが、草薙もドラゴンスリーパーで南をぐったりとさせてー

「小川さん!」

小川を呼び込む。何をやるかはアイコンタクトで分かった。小川は南を肩車して、その間に草薙がコーナー最上段に登ってー草薙のラリアット。

ダブルインパクト炸裂。高いところでラリアットを食らって受け身もろくに取れない状態で落とされた南。あわててハイブリッドがカットに入るが小川の「抱きつき」が決まって救出できない。南は無念の3カウントを聞いた。勝負タイム42分33秒。王者組が2度目の防衛に成功。

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SPZ世界タッグ選手権

草薙みこと○、小川ひかる(42分33秒、ダブルインパクトからの片エビ固め)南利美×、ハイブリッド南

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「やられたわ、あんな技が出てくるとは思いもよらなかった」

第6戦岐阜大会メインは、草薙、小川、南の3人が永沢、上原、吉田の3-5期生連合軍と激突する世代闘争カード。この日は永沢の動きが快調で「とおー」の掛け声とともに南や小川を投げまくって主導権を握る。草薙が奮闘したが、上原の飛び技と互角で双方大ダメージを負い、体力がただひとり残っていた吉田が落ち着いて南をパワーボム、ムーンサルトで追い込み!

「おりゃああ!」

掛け声とともに南の顔面をステップキック。これでカウント3が入った。

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最終戦は武闘館大会。伊達遥がケガで欠場したが、超満員札止めの大盛況。休憩明けの第4試合、秋山沢崎のタッグチームに永沢、上原が激突するカード。23分をこえる激闘の末、最後は秋山が孤立してしまい。永沢上原が即席タッグとは思えない連係でダブルインパクトまで出してきて、秋山はフォール負けを喫した。

セミは南姉妹プラス小川の人気トリオにドリュー・クライ、マリア・クロフォード、カレン・ニールセンの外人3名が激突するカード。6人の持ち味が交錯する面白い試合になった。終盤は南姉妹が怒涛の関節技の競演。

「この技に耐えられるかしら?」

ハイブリッドがネオ・サザンクロスロックでドリュー・クライに大ダメージを与え、出てきたカレンには南がー

「この技に耐えられるかしら?」

飛びつき腕ひしぎ逆十字。クロフォードの救援は戦況を良く見ていた小川が「抱きつき」で阻止。こうなってはカレンニールセンはギブアップするしかなかった。23分42秒の熱闘にファンは拍手で応えた。

そしてメインイベントのSPZ戦。王者草薙の相手は、前王者の伊達が負傷欠場ということもあって、直近のシングルで相性が良くない吉田が選ばれた。

青コーナー側からテーマ曲「赤い破片」に乗って、黒いロングガウンをまとった吉田龍子登場。そして赤コーナー側からオリジナル曲「オリエンタルクラッシュ」に乗って、白衣に身を包んだ草薙入場。

試合の方は草薙が王者の意地を見せた。序盤から積極的に吉田を投げて投げてまた投げてダメージを蓄積させてゆく。吉田もスプラッシュマウンテンで反撃するも単発に終わり、最後は草薙がタイガースープレックス2連発で勝利。王者が2度目の防衛に成功した。

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SPZ世界選手権試合

○草薙みこと(25分くらい、タイガースープレックスホールド)吉田龍子

第13代王者が2度目の防衛に成功
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2007年3月13日 (火)

第56回 プロレスの楽しみ方

5月シリーズ最終戦はさいたまスペシャルホール大会。3万人収容の会場は超満員札止め。メインに組まれたカードは草薙対南利美のSPZ選手権。今野社長も南の退勢の兆候をつかんでおり、最後のSPZ王座挑戦のチャンスのつもりで組んだ。

さいたま大会のセミは上原今日子対伊達遥のシングルマッチ。伊達の首を狙う上原、今度こそ勝つと気合いを入れて臨んだ上原だったが、序盤に貰ったエルボーで流血。そして中盤にニールキックで伊達を追い込んだがそこから伊達が猛チャージ。まず殺人ヒザ魚雷で上原の動きを止めて、SPZキック2連発。頭に強い衝撃を受けた上原はフォールを返せなかった。

若手に抱えられて控室に戻った上原。頭がクラクラしたので念のためリングドクターの診察を受けた。SPZと契約したリングドクターは東京のとある大学病院に勤める羽山さんという女医さんである。彼女はかなりのプロレス好きなので、首都圏ビッグマッチのときだけスタンバイする契約を結んだ。

「はい、どうしましたぁ、・・・頭がズキズキする。それは、重い、重―い、脳震盪かもしれませんねぇ、すぐにお手当てしなければ大変です。ではそこに横になってください、ふふ、もっとリラックスして下さい。そう、身体の力を抜いて・・・」

ブスーッ。

「あ・・・・っ」

「はい、痛み止め打っておきましたからきょうは安静にしててくださいね~」

羽山女医の得意技は「注射」である。

さてメイン。

「南さん、頑張って来てよ、応援するから。お客さんに関節のヴィーナス健在ってのを見せつけてよ」

「・・・・ま、相手あっての事だから思い通りには行かないと思うけど頑張るわ」

開場前に南は社長に声をかけられた。

あーもう、社長にまで気遣われてるのね。まあいいわ、一撃にかける。でも手の内は読まれている・・・

数年前は団体のエースで4番バッター的な存在感だったのが、一振りにかける代打の切り札みたいになってしまった南。今日の相手は草薙である。

-勝つとしたら腕折りしかない。

愚直なまでに脇固めで草薙の右腕を攻めにかかるが、早めに繰り出した腕ひしぎはニアロープ。そしていつもの草薙劇場。フロントスープレックス、タイガードライバー、タイガースープレックス2連発。怒涛の投げまくり攻勢。

「南さん、返せー」

ハイブリッドの叫びももはや届かない。南は薄れた意識の中3カウントを聞いた・・・

「24分16秒、タイガースープレックスで草薙みことの勝ち」場内歓声とため息が相半ば。第13代王者が初防衛に成功。

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SPZ世界選手権

○草薙みこと(24分16秒 タイガースープレックスホールド)南利美

第13代王者が初防衛に成功

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その夜、道場近くの日本料理店「よこ川」で南選手の残念会。同席したのは「飲めるメンバー限定」で小川ひかると井上秘書。

「はー、負けたのは悔しいけど内容も納得いかないわ」

「いや、お客さんは、沸いてたと思いますよ」

「いや、思いすぎかもしれないけど、何年か前は驚きとか、賞賛のような拍手だった。そうね、怪獣同士のげきとつみたいな感じがあったんだけど、今回は「南がんばれ、がんばれ」みたいな雰囲気だったわ・・・若手の頃を思い出した」

「でもお客さんが手を叩いてくれることには変わりはないと思いますけど・・・」

「いや、一度トップを取った人間が・・・ああいう応援をされると・・・胸が痛いわ」

よこ川マスター提供の「刺身盛り合わせ」をつまみ、適度にお酒も入ったプロレス談義が続く。

社長も語りだす。

「プロレスの楽しみ方って、2通りあると思います。常識はずれって云うか、規格外の力や技術を持った選手たちが激突して、試合展開どうなるんだろう、結末はどうなるんだろうってお客さんが想像力をふくらませるおもしろさと・・」

「ていうか、プロレスの面白さってそこでしょ。お客さんはそれを見にきていると思うわ」

「いや、もう一つある。一人のレスラーに肩入れして、それに自分の生き方を重ねて見てしまう方ね。弱くても負けても、そのファイトスタイルに胸打たれて、つい応援しちゃう。オレなんかそっちの方だよ」

「それって、判官びいきなんじゃないの」

「いや、うちの団体も小川さんとか保科さんとか渡辺さんとか、実力は、あ、小川さん本人の前で言うのもなんだけど、微妙な選手なのに人気の高い選手がゴロゴロいる。弱いけど戦いぶりを通じて何かを感じ取ってくれるお客さんも多いよ」

南利美はビールを飲んでいる。

「でも社長、南さんはいままでずっとシュートスタイルって言うか、相手からギブアップを取り続けてトップを張ってきた選手。それが正面切って戦って負けたらショックだと思いますよ」

井上秘書が南の気持ちを思いやってフォローする。

「安心して、まだ関節技の切れは落ちてないと思ってるし、草薙さんや伊達さんのような化け物に勝てなくなっただけなんでまだ引退するつもりはないわ。あのコに教えることもまだ多いし」

とはいえこの日、南利美はビール生ジョッキを4杯飲んで、ふらつきながら寮へ戻った。

「化け物」から「一流レスラー」へのランクダウンをはっきり認識して、それを受け入れざるを得ない状況。リミさんには屈辱だったのだろうか。小川はそう感じた。

2007年3月12日 (月)

7年目6月 SPZクライマックス予選会(南姉妹初対決)

7年目6月

横浜某所のイタリア料理店「アレグロ」

南利美とミミ吉原がスパゲッティとピザをつまみながら雑談まじりの深刻な話をしていた。

「最近、先月あたりからか、思った通りの動きが出来なくなってきた気がするんです。この間も吉田のラリアットをかわせると思ったらまともに食らっちゃって・・」

「あー、リミちゃんにも来ちゃったの、はー、時のたつのは早いわね」

ミミ吉原は彼女の経験―たいていの女子レスラーは22歳~23歳ごろから能力に翳りが見えはじめ、それまでは易々とできていたムーブがどんどんできなくなってくる、格下と思っていたレスラーに勝てなくなる、といった現象が起こりだす。前にいた団体でもそうだったと話した。

「あたしも最後の一年くらいは悩まされたわ。そして、今だから言うけど、リングに上がるのが怖くなって・・・・」

「それで、引退・・・・」

南利美は衝撃を受けた。あたしのレスラー生命はあと1年。

いまの南のポジションはSPZ王座をめぐる激闘戦線からは一歩引いて、ハイブリッドとの姉妹タッグや、地方では草薙と組んでメインに出ることもあるが、どちらかといえば脇役になりつつある。それすらももう守れなくなる。

「ミミさん、私はどうすれば・・・」

「今できることを、その日その日で納得できることをやったほうがいいわ。でも、リングに上がることが怖くなったり、もうだめだと思ったら、そのときは・・・・」

「はぁ・・・」

「ま、あたしが最終的に引退を決意したのはひかるちゃんにシングルで負けたからなんだけどね。上原さんに負けたときはショックでホテルで一晩飲み明かしたけど、ほら、ひかるちゃんはモロあたしの教え子で実力そんなでもないと思ってたから、ショックどころじゃなかったな、で、同じシリーズの最終戦でリベンジしたんだけど、試合のビデオ後から見て、ああこれはあたしの試合じゃないって思ったのが止めになったね」

「・・・社長になんていえばいいんでしょうか」

「いや、社長は話の分かる人よ。ストレートに『思うように動けなくなったから辞めます』って言えば分かってくれるわよ。ひかるちゃんのときはそうも行かないけど、あの人ひかるちゃんにゾッコンだから」

「ぷっ」

「ははははは・・・」

「でもね」ミミ吉原が続ける。

「ハイブリッド南がトップに立つまでは現役を続けた方がいいと思うわ」

「いや、あれはまだまだ、技術や素質はいいもの持ってるんだけど根性が・・・」

「ぷっ、リミちゃんに似たのね。一期生の中ではあなたは根性とは縁遠かったものね、負けるときはあっさり負けるみたいな」

「あのままじゃ伊達さんや草薙さんのカベは越えられないわ」

「いや、伊達ちゃんは関節防御ヘタだからそのうち勝てるわ、その日までは現役であの子のサポートをしてあげた方がいいわ」

「・・・そうね、がんばってみるわ」

「予選会頑張ってね、ハイブリッドさんとも当たるでしょ」

「あ、そうか・・・そうだったわね・・・」

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ある意味SPZクライマックス本編よりも面白いと言われているのが6月に行われるSPZクライマックス予選会。今回出場するのは前回の本大会で5位以下だった上原、南、沢崎、秋山に実力中堅どころの小川ひかる、富沢レイ、EWA代表の常連外人マリア・クロフォード、そして6期生で進境著しいハイブリッド南、の8名で争われ、上位4名に本大会の出場権が与えられる。

初戦は青森大会。

上原○(2点)―ハイブリッド(0点)

予選会は全勝して当たり前だ。上原今日子はそう考えてハイブリッド南に襲い掛かって、ほとんど何もさせずに一蹴した。フィニッシュはフェイスクラッシャーだった。

南○(2点)-小川(0点)

元チーム関節地獄同門対決。

「いくら動きが鈍り始めているとはいっても小川さんに負けるはずがないわよね・・・」脇固め腕ひしぎで着実にダメージを与え、最後は延髄斬り3連発で小川からキッチリフォール勝ち。それでも16分40秒を要したあたり、小川の頑張りというか南の圧倒力がなくなってきたというか・・・

沢崎○(2点)-富沢(0点)

ジャーマンで沢崎完勝。

秋山○(2点)-クロフォード(0点)

秋山の順当勝ち。

2戦目は岩手友愛ドーム大会。

上原○(4点)-小川(0点

いまさら小川さんに負けるわけがない。でも関節技には気をつけよう、上原はそう考えて小川を潰しにかかった。

「ふんっ!」試合中盤、パワフルな上原のフランケンシュタイナーが決まる。女子団体では相手の協力を得て辛うじて決めるフランケンシュタイナーが多いのだが、上原は自らのバネだけで小川の脳天をモロにマットに串刺し。これで小川は意識が飛んで、続くパワーボム、フェイスクラッシャーの大技波状攻撃の前にフォール負け。場内の半数は上原のカッコいいファイトに拍手喝采。敗れて渡辺の肩を借りて引き上げる小川にもけっこうな拍手が送られた。

南○(4点)―富沢(0点)

一瞬の脇固めでギブアップ勝ち。

沢崎○(4点)-クロフォード(0点)

ネックブリーカーで沢崎快勝。

秋山○(4点)-ハイブリッド(0点)

秋山もまだまだ実力者。ハイブリッドをストレッチプラムで痛めつけ、最後はDDTでキッチリフォール勝ち、一期生の貫禄を見せた。

第3戦は秋田大会。

上原○(6点)-富沢(0点)

上原がフェイスクラッシャーで完勝。

南○(6点)-クロフォード(0点)

ジャーマンで南の快勝。

沢崎○(6点)-ハイブリッド(0点)

ハイブリッドもSTFを出すなど健闘したが、いかんせん手数が少なすぎた。フィニッシュはネックブリーカー。

秋山○(6点)-小川(0点)

試合中盤小川がSTFで勝負に出たが秋山もきっちり振りほどく。これで闘志に火がついた秋山、力の入ったコブラツイストをガッチリ決めて、みるみる小川の上半身が変形・・・

「ギブアップ、します・・・」

第4戦は仙台大会。もう2度と見られないかもしれないシングルマッチが組まれたので東京近辺からわざわざ来た人もいたようだ。

上原○(8点)-クロフォード(0点)

上原が予選会通過を決めた。フィニッシュはかかと落とし。

南利美○(8点)-ハイブリッド南(0点)

仙台でついに姉妹対決実現。ふだんは姉妹タッグを組んでいるのだが、予選会リーグ戦でついに激突。ある意味で夢のカード。

「いい、リングに上がったら先輩も後輩も師匠も弟子も関係ないのよ、潰しにかかってきなさい」

かつてミミ吉原に言われた言葉をそのまま妹に投げた。

試合は地味なスリーパーや脇固めの応酬で始まった。中盤、ハイブリッドがSTF―ネオ・サザンクロスロック―を出してきた。

「それで勝とうと考えているの?」

腕のフックをあっさりと切って脱出した南。そのあと南がアキレス腱固めでハイブリッドを攻め続けて動けなくしておきてからー

「覚悟しなさい!」

何人ものレスラーを葬ってきた飛びつき腕ひしぎ逆十字。たちどころにハイブリッドの腕関節が曲がってゆく。

―とっとと参ったしなさい、折るわよ。

南利美の目を見てうわ折る気だと察したハイブリッド、しかたなくギブアップの意思表示をした。それでも23分27秒の好勝負となった。

―なんとか勝てたわ。

安堵の表情で引き上げた南。

沢崎○(8点)-小川(0点)

タイガースープレックスで沢崎も予選会突破。

秋山○(8点)-富沢(0点)

DDTで秋山も通過。これで予選会は実質的に終わり、通過者と敗退者の4人ずつが確定した。とはいえ敗退組は2年前の小川のように出場者負傷による繰上げ出場の可能性も考えられるので、一つでも順位を上げておきたいところである。

第5戦山形大会。

富沢○(2点)-クロフォード(0点)

富沢がやっと初日。

ハイブリッド△(1点)-小川△(1点)

30分時間切れ引き分け、ハイブリッドがアキレス腱固めやサソリ固めで小川をグロッギー状態に追い込むも、小川も懸命に粘ってSTFでお返し、30分時間切れドローに持ち込む。決して派手ではないが両者の激闘に会場のファンは惜しみない拍手を送った。

試合後の南・草薙連合軍控室。

「ハァ、ハァ、ハァ、ハァ・・・」

まるで敗者のような足取りで控室にたどり着き、床の上にぶっ倒れる小川。若手の頃は連日だったが、最近はこういうシーンは珍しい。

そこへハイブリッドが戻ってきた。次の試合に出る南が厳しいアドバイス。

「確かにお客さんも沸いたいい試合だったわ、でも厳しいこと言うようだけど、これから頂点を目指すんだったらあんな試合しててはダメよ。あれを見なさい。小川さんは本当にギリギリ逃げ切った感じ、あの状態になった人にとどめをさせないようでは一流とはいえないわ」

「リミさん」横たわったまま小川が一声かける。

「私も・・全敗だけはしたくなかっただけ。少しはいいカッコ、させてくださいよ・・・」

秋山○(10点)-沢崎(8点)

タッグパートナー同士の対決は秋山に軍配。フィニッシュはネックブリーカー。

南○(10点)-上原(8点)

中盤までは南が劣勢。上原のローリングソバットやシャイニングウィザードに押され気味。しかし必死に手数を返していってリング中央、不用意に上原が組み付いてきたところを脇固め一閃。これが極まってしまった。

「う、あ、あぎゃあ~」

ふん、脇固めか。→

あれ、おかしいな感覚がちがう→

何だ凄く痛いっ→

ダメだっ!。ギブアップ。

上原の表情がたちまちのうちに変化し、南が勝利を収めた。こんな勝ち方は南しかできない。劇的な幕切れに場内大盛り上がり。

第6戦はいわき大会。

クロフォード○(2点)-小川(1点)

クロフォード初勝利。

ハイブリッド○(3点)―富沢(2点)

ハイブリッドも初勝利。

南○(12点)―秋山(10点

28分58秒の激戦の末、南が延髄斬りで秋山を下して全勝を守る。

上原○(10点)-沢崎(8点

上原が終盤大技攻勢。最後は粘る沢崎をシャイニングウィザードで振り切った。

第7戦リーグ戦最終日は滋賀大会。

小川○(3点)―富沢(2点)

最終戦でようやく小川が初白星。

ハイブリッド○(5点)-クロフォード(2点)

ハイブリッドの5位が確定。小川6位富沢7位クロフォード8位。

沢崎○(10点)-南(12点)沢崎が終盤怒涛のスープレックス攻勢で南を下した。

秋山○(12点)―上原(10点

秋山の関節技が冴え渡りドラゴンカベルナリアで大ダメージを与える。上原もニールキック連発で猛反撃するも、最後は2度目のドラゴンカベルに無念のギブアップ。この結果予選会の通過順位は1位通過南、2位通過秋山、3位通過上原、4位通過沢崎の4名となった。

2007年3月11日 (日)

100の質問(後編)

仕事が大変なので100の質問の続きでも。

**********************

51.永原「今日もジャーマンで決めちゃうよ♪永原ちづるでーす
ずばり、あたしのジャーマン、一度体験してみたくない?」
いや体験は。ジャンヌ永原さんをファーストプレイで採用しましたが
新女に引き抜かれました。はい。

52.富沢「はいはいはーい、レイちゃんでーす!あたしにも一言ちょうだいよね
それとね、次のコスを考えてるんだけど、何かアイデア無いかなぁ?」
足がキレーなので坂上智代(CLANNAD)のコスでも。
2期生で草薙さんと同時採用すると資質の違いに・・・唖然とします。
でも放っておいても6年目に小川さんを越えてくれる・・・

53.金井「金井でーす、QTにも応援お願いしまーす
自分の事QTって言うのダメですか?」
「い、いた~い!ふ、ふえ~ん」負傷時は強気の選手が多い中萌えました。

54.武藤「どうも、武藤です…何か言ったら?
え?ツンツンしすぎだって?あたしは元々…じゃあ、あなたはどう思うのかしら?」
まだ採用したことがありません。ジーニアス選手の方をファーストプレイ末期に
獲りましたが、一期生大量引退のショックで海外に置きっぱでした。

55.結城「めぐみったら仕方ないなぁ~、ありがとうございます、結城千種です
私今回恵まれてないって言われてますけど、どう思います?」
ファーストプレイ末期で評価が高かったのでファイナルシリーズ要員で
獲りましたが、すべて非観戦でしたので

56.金森「金森麗子だよー、えーっ別にぶりっ娘してないってばぁ
強さよりも可愛さを獲ったとか言われちゃったんですけど、そんな事有りませんよねぇ?」
まだ採用したことがありません。あ、ビーナス麗子はセカンドプレイで獲りましたが、「社長見た見たー?勝ったよー!」にやられました。

57.神田「神田です、何か一言有りましたら
笑わないという設定が消えて、吠えるようになった私ですが、どうでしょう?」
ハリケーン神田選手は採用したことがありますが印象はいまいち。

58.小縞「いらっしゃいませー、小縞聡美へようこそ♪
見かけに寄らず強いと評判のあたしですが、あなたはモデルレスラーの事を反映したりします?」
まだ採用したことがないのでなんとも。モデルレスラーに取得技を
あわせることはしますね

59.渡辺「きょうも行っちゃおー、渡辺智美でーす、一言お願いっ
あたし『ジュリアナ智美』とも言われるんだけど、ジュリアナって知ってる?」
知ってますよ。32ですから。永遠の第1試合要員・・・

60.斎藤「押忍、斎藤彰子です
プロレスには向かないんじゃないかと時に悩む私ですが、私との一戦はやはり異種格闘技戦でしょうか?」
いや、モデルレスラーの斎藤選手もNOAHであそこまで
かつやくしているので・・・ぜひ採用してみたいですね。

61.相羽「相羽です、よろしくお願いしますっ
あの…ボクが主役のストーリーって見たいですか?」
ふぁいなるシリーズのジュニアトーナメントで2回戦負け・・

62.ノエル「………ノエル………何をすればいいの?……
あなたも……わたしの事……わからない?………」
社長の立場からしたらいちばん管理面で大変そうです。
でもけっこう強いんですよね・・・

63.杉浦「杉浦美月です、あなた、眼鏡っ娘萌えですか?
いえ、何でもありません、データを活かし切れていないですって?そんな事は…」
眼鏡っ娘は好きです。とらハ3でも美由希ちゃんが一番好きでした。
そのうち採用してみたいです

64.近藤「どうも、近藤真琴です、この拳で頂点に立ってみせます
そんなあたしに何か有れば、一言お願いします」
・あ、ファーストプレイ時にサイクロン選手
採用しましたが生かしきれないまま・
・・

65.カンナ「カンナ神威です…あなた、マスクウーマン好きですか?」
声が久川さんなのでぜひ採用したい・・・

66.ライラ「はーっはっはっ、ライラだ、何か有んのか?あーん
こんな典型ヒールはどうだ?良いもんだろ?ギャハハハ」
まだ悪役レスラーを採用したことがないのでそのうちぜひ・
・・

67.藤原「とーっ、正義のヒロイン藤原和美ですっ!
ヒーローショーのイベントとか有った方が良いと思いますよねっ?ねっ?」
 ファーストプレイ時では長年草薙さんの抗争相手お疲れ様でした。
 正義って言うのも・・・そんなレスラーいまどきどこに・・・

68.橘「真の正義はここにあり、橘みずきですっ!
私はコスも存在もどこからか借りてきた感じと言われますが、そんな事有りませんよね?」
 すいませんそのうち採用します

69.成瀬「成瀬や、保科ちゃんとも言うてんのやけど、早熟やのにゲーム開始時16歳って酷ない?
あんたはそう思わん?思うんやったらあたしと保科ちゃんに一言宜しゅう」
 保科さんはいい選手です。穏やかそうで。万年前座でしたけどいい選手でした。

70.フォクシー「真帆だ、真帆はおバカちゃんとか言われるが、そんな事はないよな?」
永沢「舞です、狐仲間ですね、一緒、イッショ」
 永沢さんほど外見と実力のギャップがある選手も・・・絶好調の伊達さんを
 20分でやってしまったときはポカーンでしたよ。

71.早瀬「ドルフィン早瀬です、一言お願いします
私のように、家族の設定って大事ですよね?」
 ファーストプレイ時はずーっと前座要員。でもそういうバックストーリーが
 あるのはいいことだと思います

72.千春「千春だ、まったく千秋と共にどうでも良いだとぉ?」
千秋「千秋だ、アタイ等のようなコピーキャラはいらねぇってのかよっ!」
 そのうち採用しますよ。

73.伊達「……伊達…遥です…私にも何か…
私には『極め防御』という穴があるんですけど…そんな選手…お嫌いですか?」
 いや、伊達さん強いよ。あの膝蹴りでベルトV10、むちゃくちゃな強さ。
 最初にチョチョカラスを下した一期生ですから。

74.鏡「フレイア鏡よ、私に一言…あなたに言えるのかしら?
この世界には私のようなセクシーキャラが少ないのだけれど、あなたは好きかしら?」
 近いうちにぜひ採用したいですね

75.みこと「草薙みことです、このような電脳空間…私には戸惑うばかりです
あなたは私のような和風はお好きですか?」
 フロントスープレックス、ノーザンライト、タイガースープレックス、このループで
 いつの間にか勝ってしまう。とんでもない選手です。まさに最強巫女伝説。

76.真田「うぉぉぉぉ、気合いMAX真田美幸っす、自分にも一言お願いしまっす
え?暑苦しいっすか、プロレスは熱血でしょう、熱血ですよね?」
 まだ採用したことがないので・・・

77.マッキー「っしゃ、マッキーだ、おいおい、ジューシーペアで一つかよっ」
ラッキー「ラッキーよ、仕方ないでしょう、私たちにも一言もらえるかしら?
それと、こういう固定タッグキャラってどう思います?」
 まだ採用したことがないので・・・

78.氷室「私で質問が終わりなのも運命、そしてあなたが質問に答えるのも運命
私にイベントがないのも運命なの?」
 まだ採用したことがないので・・・

79.カラス「『仮面の貴婦人』チョチョカラスです、私を含めて外国人選手に一言お願いします」
 味のある選手が多いのですが、2Pキャラの名前をもう少し混同しにくくしてほしかった
 ウィン・ミラーが出てきた翌年に平気にウェイン・ミラーが出てきたときには
 どうしようかと思った

80.最新作『SURVIVOR』の秘書である井上霧子さん、彼女に対する感想は?
 励みになります。私のお給料・・・ 笑えます。赤字になるとBGM変わるんですね・・・

81.今までのレッスルエンジェルスのキャラデザをした方の中で、誰の絵が一番好きですか?
 Halさんですね。

82.『愛』でソニック・キャットが参戦しました、あなたが参戦して欲しい他作品のキャラは?
 分かりません

83.『愛』などの展開を見せていますが、『SURVIVOR』の続編を希望しますか?それは団体経営?ストーリーもの?
 団体経営より選手育成色が強いとなおいいと思います

84.続編が出るとして、絶対に復活または、継続して出て欲しいキャラは?
 小川ひかるさん。

85.最新作『SURVIVOR』、主題歌『Starry Eyes』感想をどうぞ
 50回ぐらい聴くうちにええ歌やナと思うようになりました。

86.レッスルエンジェルスのドラマCDを聴いた事が有れば感想をどうぞ
 まだ聞いたことがありません

87.レッスルエンジェルスの小説を読んだ事が有れば感想をどうぞ
 デスピナさん強い。

88.レッスルエンジェルスのコミック(徳間版、メディアックス版)読んだ事が有れば感想をどうぞ
 読んだことはありません

89.以上のようなメディアミックス的展開、せっかく復活したのでまた展開して欲しいですか?
 ぜひ展開して欲しいです

90.レッスルエンジェルスが好きで得した事、良かった事ってなんでしょう?
 個々のレスラーの生き様が見られて励まされます。

91.レッスルエンジェルスが好きで損した事、困った事はありますか?
 睡眠時間が・・・

92.レッスルエンジェルスで2次創作をした事がありますか?無ければ興味はありますか?
 執筆中です。

93.リプレイやSS、イラストなどで、扱いやすいなぁと思うキャラは誰ですか?
 ミミ吉原さん

94.逆に描きにくい、扱いにくい、掴みにくいっていうキャラは誰でしょう?
 伊達遥。強すぎて挫折シーンがなかなかない

95.あなたがいつも巡回しているレッスル系のサイトを差し支えなければ教えてください
 すぅぱぁすたぁ列伝、N’s GAME

96.レッスル以外でお薦めのプロレスゲームがありますか?
 ランブルローズ

97.レッスル以外でお薦めの女子プロレス、または闘う少女の作品がありますか?
 智代ファイター

98.レッスルで一句作ってみましょう

体育館 天井見上げる 南さん

99.ご苦労様です、ご協力ありがとうございました、後少しです、この100の質問に対して一言どうぞ

疲れました・・・

100.最後にあなたにとって『レッスルエンジェルス』とはなんですか?レッスル愛を言葉でどーぞ

燃えと萌えのダイヤモンドコース。

***********************

作成者 螢野光さん(萌え出処の天使)

2007年3月10日 (土)

レッスルエンジェルス100の質問(前半)

仕事が大変なので、今日は100の質問(蛍野光さんの)でカンベンしてください。

**************************

1.まずはお決まりのハンドルネーム、誕生日、出身地を教えてください
konnopro、7月23日、山梨県塩山市

2.レッスルエンジェルスと知り合ったのはいつですか?
10年くらい前、菊池さんが主人公のノベライズ版

3.今までレッスルエンジェルスシリーズ、マイベストはどの作品?
ゲームではサバイバーから入りました。

4.ストーリーを追うアドベンチャー型と、団体経営のシミュレーション型、どちらが好みですか?
シミュレーション型のほうですね

5.あえてレジェンドとは言いません、サバイバーより前の旧作で一番好きなキャラは?そしてそのキャラについて存分に語ってください
ボンバー来島さん、小説版で菊池のデビュー戦でのシーンが印象に残ってます。

6.最新作『SURVIVOR』サバイバーで一番好きなキャラは?そのキャラの魅力を存分に語ってください
小川ひかるさん。オート観戦で見ると試合展開が感動。あまり強くないのに
関節技で逆転勝利するときは泣いてしまいます。しかしあまり強くないので
資質の高い若手にあっさり越えられてしまう。ハイブリッド南にギブアップ負け
したときは泣いた。

7.レッスル世界の登場人物、お嫁さんにしたいのは誰?
小川ひかるさん。サバイバーファーストプレイで惚れた。

8.では、友達になって欲しいのは誰?
ミミ吉原さん。あの人当たりのよさにやられました。

9.さらに、お姉さんになって欲しいのは?
吉田龍子さん。

10.もちろん次は、妹になって欲しいのは?
永沢舞さん。

11実際に団体を経営出来るとしたら、エースにしたいのは誰?
草薙みことさん。試合観戦でいちばん頼りになって、魅せる勝ち方の
できる選手と感じ、全幅の信頼を置いています。大会場で興行するときは
必ずメインに持ってきますね。

12.そのエースと自分(社長)が恋愛関係になるのは有りだと思いますか?
現役の間は手を出すのはまずいと思います

13.答えにくい質問、レッスル世界で嫌いなキャラっています?
越後しのぶさん。新女が殴りこんできたとき小川さんとシングル対決の
カード組んで、小川さんが負けたときのセリフ「お前、レスラー辞めた方が
いいんじゃないか?」実際のプロレスでもここまで云う選手はいません。

14.では、いるのかいないのか…ついつい忘れてしまうキャラって…
2回のリプレイで採用した選手の中では・・・テディキャット堀さんかな。
奇数でマッチメイクしたときはついカードから外してしまう。

15.逆に好きでも嫌いでもないけど、このキャラはいてもらわないと困るっていうキャラは?
ウィン・ミラー。この人はいい仕事します。メインで外人トリオに
加えてよし、中堅どころとシングル対決させてもよし・・・

16.最新作『SURVIVOR』もちろん買いましたよね?何本買いました?
1本ですよ・・・

17.予約して特典付きですか?どこの特典でしょう?
いえ、評判がまずまずなので11月頃ヨドバシの店頭で発見して買いました

18.特典などのイラストはギャルゲー色がかなり強いセクシーなものでしたけど、どう思いました?
どうもありがとうございました。

19.ずばり、水着剥ぎデスマッチの復活を希望します?
いやそこまでは。

20.超豪華声優陣も『SURVIVOR』の魅力の一つ、あなたがベストマッチだと思うキャラは?
雪野さんのミミ吉原さん。「悪く思わないでね」ツボ。

21.タイトルマッチで流れる入場曲、誰が雰囲気に合っていて一番好きですか?
けっこう使い回しされていて(南&小川VS伊達&秋山で4人中3人が同じ
テーマだったときは萎えた)微妙なのだが、しいていえば永沢舞のテーマ。

22.あなたの中のレッスル世界で、最強だと思うキャラは?
伊達遥さん。悪魔のニーリフト。シングル王座を10連続防衛されたときは
どうしようかと思った。

23.あなたが一番好きな技は、誰のどんな技?
南利美さんの飛びつき腕ひしぎ逆十字。トップ戦線から外れてもリング中央でこの技が
決まれば「勝てるかも、あっ勝てるかも・・・」て思わせるところが凄い。

24.技名変更もレッスルの魅力、今までで最高だと思うネーミング、やってもたー!と嘆いたネーミングが有れば
伊達さんのニーリフトを「殺人ヒザ魚雷」に変更。草薙さんや南さんが何度も
沈没させられたので・・・

25.あなたが一番好きなタッグチームは?(固定タッグに拘らなくて良いです)
草薙みこと&小川ひかる。耐えてつなぐ小川、問答無用で決める草薙。
大昔のアンドレ&レネ・グレイ組を思わせます。

26.あなたが一番好きな6人タッグチーム、またはトリオは?(固定トリオに拘らなくて良いです)
ミミ吉原&南利美&小川ひかる。1年目後半~3年目に「チーム関節地獄」と称して
地方大会のメインでガンガン組ませて楽しみました。

27.実は仲良しさん、レッスル世界で仲が良さそうだなぁと思うのは誰と誰?
ミミ吉原さんと南利美さん。内に秘めたる闘志どうしでけっこう移動中とかも
仲がよさそう。

28.逆にもの凄く相性が悪そう、一触即発って感じなのは誰と誰?
吉田龍子と永沢舞。4期生と5期生でタッグ組ませることが多いのですが
永沢さんはイロモノに見られがちですから。負けちゃったらあっさり仲間割れしそう

29.あなたが考える、レッスル世界でのベストマッチメイクをしてみます、
レッスルエンジェルスに関わったキャラなら登場資格有りです、まずは前座の第一試合は?
保科優希VS渡辺智美 前座は保科さんに会場を温めてもらいましょう。

30.休憩前に一試合、未来を見越して第2試合?
小川ひかるVSウィン・ミラー。お互い実力微妙なのに関節技の応酬で
30分のロングマッチをたまにやってくれる。プロレスの面白さが
存分に味わえるカード。

31.お客さんを引きつけなくては、第3試合?
秋山美姫&沢崎光VS南利美、ハイブリッド南
かたや一期生叩き上げタッグチーム、もう片方は姉妹タッグ?。
この組み合わせは面白いし結末が読めない。

32.いよいよセミファイナルです、ここに持ってくるカードは?
上原今日子、永沢舞、チョチョカラスVS吉田龍子、新咲祐希子、ナスターシャ・ハン
メインが死闘になってしまうので、百花繚乱、個性強烈な6人に存分に
暴れてもらいましょう。(決してあまり物をつっこんだわけでは))

33.さぁ、締めのメインイベント、泣いても笑っても最終試合はどんなカードで?
草薙みことVS伊達遥
草薙さんの投げ技乱発、伊達さんのヒザ。両方とも「こいつら化け物だ」
と思いました。ゾウとクマの対決です。ええ。

34.もしあなたが女子プロレスラーになったとして、入団してみたい団体はどこでしょう?
WARS・・・ですねぇ

35.あなたがリングに上がったとしたら、必殺技を使う時に決め台詞はどんな感じで?
「遊びはもう終わりだ」

36.レッスルエンジェルスの世界の登場人物になれるとしたら、誰になって何をしてみたいですか?
会場のグッズ販売人

37.ここからはレッスル各キャラにお題を出してもらいましょう
祐希子「エヘヘッ、マイティ祐希子だよ、まずは私に対して一言どうぞ、
それから恵理も菊池もみんな逃げちゃうんだけど、私にカレーおごってよと言われたらあなたならどう答える?」
まだ採用したことないのですが、新咲さんにはおごらないといけないよなぁ

38.市ヶ谷「オーッホッホッホッ、全世界600億人のファンに皆様、まずは私に対して惜しみない賞賛をどうぞ
そして、何故かこの私にゴミを捨てさせようとする動きがございますが、当然貴方なら代わりに捨てて頂けますわね?」
まだ採用したことがないので・・

39.来島「うっす、ボンバー来島だ、当然みんなホークスファンだよな?
何故か俺ってバカにされる事が多いんだけど、あんたならそんな事はないよなぁ?」
いえベイスターズファンです。まだ採用したことがないので・・

40.南「南よ、こういうのあまり得意ではないのだけれど…私に対して一言どうぞ
サブミッションの神髄…あなたにわかるかしら?『極』技使いってどう思うかしら?」
2-3年目でメイン張ってて「強いっ!」と感じたときも好きでしたが、
6年目あたりでトップグループから落ちてからは「関節一本大逆転にかける代打女」って
感じが大好きでした。(上原さんや伊達さんがやすやすとマイッタしちゃうんだ・・)

41.龍子「サンダー龍子です、私に対して一言どうぞ
壊し屋としてギラギラした私と、姉御肌のWARS総帥としての私、どちらが好みでしょう?」
吉田さんの方の「一割でもあたしのファンになってくれたら~」あれはサスガで。

42石川「石川涼美です~私に対して一言どうぞ~
あなたは私のようなNo.2のバイプレイヤーってどう思うかな?」
ファーストプレイ時にちょっとだけ一期生大量引退の穴埋めにフリー採用した
ことがありましたが(採用時25歳)あまり印象が・・・

43.理沙子「パンサー理沙子です、私に対して一言どうぞ
私ってV3の時にファウルチップさんと結婚したんですが…あなたは許せました?」
まだ採用したことがないので・・・

44.上原「ブレード上原です、私に対しても一言もらおうかな
私って師匠として経営者としてはどうなのかしら?」
上原今日子さんは素敵です。小川さんの次に思い入れが強い。評価が高いのに
伊達さんに勝てない勝てない・・・

45.吉原「ミミ吉原です、『ミミ吉原の伝説』読んで頂けました?
空手王者としての私、そして関節の魔術師としての私、あなたはどちらが好みでしょうか?」
サバイバーから入ったのですが、セカンドプレイ時では旗揚げのときに
大変お世話になりました。気がついたら関節技使いだらけの団体になってました。

46.堀「にゃん、テディキャット堀にゃん、ママさんレスラーとしての経歴も持つ私だけれど、
今回のこの猫にゃんモードはどう思うにゃん?」
ファーストプレイで採用しましたが・・・前座要員、ゴメンナサイ

47.菊池「いつでも元気一番星、菊池でーっす、まずはお約束の私に対して一言どーぞ
即断即決、元気が一番の私だけど、今までと比べてどうかなぁ?」
サバイバーでは新女に最初からいるのでまだ採用に至っていません。転生時に
採用してみたいと思いますが・・・

48.藤島「みんなのアイドル藤島瞳だよ~私に惜しみない声援をよろしくっ
で、このサイトでは関西弁を喋ってる訳なんやけど、方言を使うのってどうなんかなぁ?」
ファーストプレイ時、あっさり新女に引き抜かれたハニービーさん・・・
あなたのおかげで信頼度管理の重要性に

49.小川「小川ひかるです、私に対しても一言くださいますか?
私は新女だったりJWIだったりWARSだったり、作品毎に所属団体が違いますけど、あなたのイメージは?」
サバイバーから入ったのですが、「もう逃げられないわよ!」鳥肌が立ちました。
6人タッグの3人目でも、シングルでも味があります。メインも第1試合も
写真集も(笑)こなせる選手で重宝しました。たまに出す「逆さ押さえ込み」が最高です

50.越後「越後です、私にも一言お願いします
私もイメージが固定していないのですが、あなたのイメージはどうですか?」
新女殴りこみ時悪役・・・

後半に・続く

2007年3月 9日 (金)

第54回 7年目5月「バトルスプラッシュ2015」

7年目(2015年)5月

「こんばんは、グローバルビジネスマイナーの時間です。今日の特集はいま女子プロレスが熱い!創立6年で新日本ドームを超満員にしてしまったSPZ、急成長の要因はどのへんにあるのでしょうか、ドーム大会の直前、密着取材を試みました」

5月頭の夜11時、テレビ関東の経済番組にまで取り上げられてしまった。オンエアにあわせて特訓で道場に残っていた小川ひかる、吉田龍子、南姉妹を誘って特集を見た。

まずはドーム大会に来たファンへのインタビューが流れた。

「2年目くらいから見てるけど、南さんカッコよすぎ。関節技にこだわった戦いぶりがたまらない」

「草薙みこと選手のファンです。あの凛とした感じがスキです」

「旗揚げの頃から見てますけど、小川選手の戦いぶりが印象に残りますね。あんまり強くないんだけど勝っても負けても感動する」

そのあとSPZ社長インタビュー。

「こちらがSPZの社長、IT業界から転進した今野社長です、社長、この団体がここまで大きくなった要因は何だと思われますか?」

「うーん、大きくなったって実感はないですねぇ、資金繰りがかつかつなのは変わらないし。しいて言えば、お客様に尽くすことを実践してきたのと、選手みんなの頑張りだとおもいます。私はそれをサポートしただけで」

にやけながらインタビューに応じる社長。そのあと取材はドーム大会直前のサーキット中、バス車内の映像になった。和気あいあいなシーンが流れる。

「SPZは自前での選手育成にこだわり、旗揚げ時を除いて他団体選手の引き抜きやフリー選手の獲得を一切行っていない。そういったなかで選手同士の縦の信頼関係が強く、それが激しい試合内容に反映されているようです」

「社長も興行に同行し、営業の第一線に立って選手の人気をチェック、このあたりにも人気の秘密がありそうです」

「午後3時、会場に到着。社長は黙々と売店スペースにグッズを並べています。社長、どうして自らグッズ売りの陣頭に」

「常連のお客さんは見るところは見ていて、旗揚げ以来私がグッズ販売をやっているのを知っているから、常連のお客さんに尽くすためにもグッズの販売の先頭に立つ。あとはグッズの売り上げは選手の人気のバロメーターなのでカード編成の判断材料になる。あとは少しでも多くの売り上げを稼いで、選手やスタッフに多くギャラを払ってあげたいから・・・かな」

「そして開場。物販コーナーに長蛇の列。『小川ひかるTシャツ2000円!~どうぞご利用くださ~い』ああ、社長が声だしてますねえ」

映像を見ていた南がボソッと笑う。

「社長、いまのはつくってるわね」

「午後6時半試合開始、内容は激しさ全開の投げ合い殴りあい極めあいが続きます。」

「あの・・・えっと・・・別に・・・いつもやってる事だから」

「チャンピオンの伊達選手は多くを語りません、しかし、SPZがここまで大きくなったのは、人を大事にする企業風土、それによって培われた選手同士の信頼関係の要素が大きいのではないでしょうか、今日の特集はいま女子プロレスが熱い!SPZ急成長の理由 でした」

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そしてドーム大会のバタバタも終わったが、今年は資金不足で「世界プロレスリングコミッション」に申請する選手定員、ライセンス数の拡張ができず、新人選手獲得は見送りとなった。もっとも選手寮「ニューはまかぜ寮」は3期生の上原今日子が退寮を許されたので、4期生の永沢舞、5期生の吉田と渡辺、6期生のハイブリッド(新咲はメキシコ修行中)の4人と、「電化製品が使えない2期生」草薙みことの計5人が暮らすのみとなった。上原が退寮したので、4代目の寮長には吉田が任命された。

5月シリーズ「バトルスプラッシュ2015」開幕戦は千葉幕張大会。メインは吉田、上原対伊達、沢崎の実力者4名のタッグマッチ。42分39秒の妥協なき死闘が展開。伊達の首を狙う吉田上原の猛攻をしのいだ伊達が沢崎にスイッチし、最後は沢崎がタイガースープレックスで吉田をフォール。1期生が意地を見せた。

第3戦の石川大会、ハイブリッド南対小川ひかるのシングルマッチ。終始ハイブリッドが圧倒し、小川も終盤よく粘ったが22分48秒、ギロチンドロップに力尽きた。

そして5戦目名古屋大会。セミファイナルは伊達遥対ナスターシャハンの「SPZ王者対EWA/AAC王者」のノンタイトル戦。伊達が手堅く打撃技で押していって勝利。

メインは草薙、小川のSPZタッグ王者に南姉妹が挑む。序盤5分くらい小川が南のスリーパーや腕ひしぎの猛攻をしのいだ後、草薙にタッチ。あとはちぎっては投げの草薙劇場。最後はハイブリッド南が草薙につかまってしまい、タイガードライバーで3カウントを聞いた。勝負タイム27分10秒。王者組が初防衛に成功。

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SPZタッグ選手権

○草薙みこと 小川ひかる(27分10秒 タイガードライバーからのエビ固め)南利美 ハイブリッド南×

第2代王者が初防衛に成功

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第7戦広島大会のメインはナスターシャハンのEWA王座にハイブリッド南が挑む「集客のために組んだ」タイトル戦。シングルのベルト初挑戦となったハイブリッド、ナスターシャにいたぶられて19分6秒、最後はネックブリーカーに破れた。

最終戦横スペ大会は「3大シングルマッチ」が組まれた。

セミ前は南対ナスターシャ・ハンの「関節技世界一決定戦」南が8分過ぎに繰り出したアキレス腱固めが極まってしまい、ナスターシャ屈辱のギブアップ負け。一昨日敗れた妹の仇を討った。関節のヴィーナス健在に沸く館内。

セミは上原対吉田の若手実力者同士の激突。負けたほうがSPZ次期挑戦の優先順位が下がってしまうのでお互い負けられない。SPZベルトをすでに2度巻いている吉田に経歴の上で遅れを取っている上原が猛攻。吉田もスプラッシュマウンテンやパイルドライバーで反撃するが単発。そして・・・

    ・・きょうの上原さん、気合いがいつもに増してすごい・・・

ジャーマン狙いは切り返したが、続いて上原が出してきたのは

ローキックでぐらつかせてから、上原の右足が高々と上がり、吉田の脳天にかかと落とし炸裂。

「ぐわぁーー」

吉田の視界がブラックアウトし、その場に崩れ落ちる。そのままカウント3を奪い上原が勝利。先輩の意地を見せた。

メインは伊達対草薙のSPZタイトル戦。もう何度目かわからないふたりの対戦だが、それでもファンの関心は尽きなかった。中盤までは基本技を小出しにしながらお互い手の内の読みあい。先に勝負をかけたのは伊達。

げしっ!

いきなり草薙の頭にSPZキック一撃。崩れ落ちる草薙、カウントは2.5。

しかしこれで草薙の闘争本能に火がついてしまった。

無心でフランケンシュタイナー、DDT2連発、そしてノーザンライト2連発。怒涛の波状攻撃が続く。最後のノーザン、草薙の肩が伊達のみぞおちに入ってしまい、伊達はノーザンを返す事ができなかった。勝負タイム36分39秒。草薙が13代王者に返り咲いた。

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2015年5月30日 横浜スペシャルホール SPZ世界選手権試合

草薙みこと(36分39秒、ノーザンライトスープレックスホールド)伊達遥

第12代王者が初防衛に失敗、草薙みことが第13代王者となる

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2007年3月 8日 (木)

第53回 はじめてのすいどうばし(後編)

前回のあらすじ

「横浜の明るく楽しいお嬢様プロレス団体」SPZは、旗揚げ7年目にして初めて新日本ドームで興行を行うところまで来た。前半3試合はそれぞれ個性的なカードが組まれ、会場のボルテージは徐々に高まっていった・・・

休憩明けの第4試合、前SPZ王者の永沢舞が一期生の沢崎光とタッグを組んで、スミルノフ、ジョーカーウーマンと激突。永沢は先シリーズのSPZ戦で右手首を負傷したが、今シリーズは最終戦ドーム大会のみ強行出場した。もっとも社長もシングルマッチはきついと判断し、休憩後の比較的楽な場面で沢崎とのタッグでの登場とカード的に配慮した。試合は先輩、沢崎の指示で永沢がリング上を暴れまわる展開。頃合いを見てー

「みんなー必殺技だよ、必・殺・技」とアピールしたあと

JOサイクロン発動。イロモノ路線と見られがちな永沢だが、必殺技が出たときのどよめきは団体で一二を争う。JOサイクロンという高難易度の技をやすやすとやってのける足腰の強さ。たまらずジョーカーウーマンは3カウントを喫した。勝負タイム14分14秒。館内に深夜アニメの主題歌が響き渡る。

「いやー、今日は舞ちゃんが良くやってくれた、腕怪我してるそぶりも見せずによくやった」

「いやー実は試合前にリングドクターさんに注射打ってもらったんですよ、でもバッチリ決まりました、完璧、カンペキ」

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第5試合、セミ前は上原今日子(3期生)対ハイブリッド南(6期生)のカード。上原のテーマはギターサウンドが主体のオリジナル曲。ハイブリッドのテーマは南と同じ。パワーでは圧倒的にハイブリッドの上を行く上原。かかと落とし、フェイスクラッシャーとつないで完勝。ハイブリッドは得意の関節地獄に持ち込めなかった。勝負タイム10分35秒。

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そしてセミファイナル。なんと選手は各人のテーマに乗ってひとりずつ入場。

青コーナーからまずチョチョカラスのテーマに乗って、仮面の貴婦人、チョチョカラスが入場。ドーム仕様なのか、ド派手なロングガウンを着用している。

そのあと一昔前の映画の主題歌に乗って秋山美姫が入場。秋山はシンプルな一般グッズのパーカーを着て入場。

最後はオリエンタルムードあふれる曲に載って白衣を着込んだ草薙が入場。これだけで館内ヒートアップ。

こんどは赤コーナー側。「トップガン」テーマ曲で小川ひかる入場。いつものように社長から送られた銀青のガウンを着込んでいる。

そのあと「ワルキューレの騎行」でナスターシャハンが黒いコートを羽織って入場。

赤コーナーのトリは南利美。スピード感あふれる映画音楽で入場。旗揚げ直後からずっとこの団体の屋台骨を支えてきた南は「M」と銀色にプリントされた紫色のガウンを羽織って入場。ある意味試合より入場シーンの方が盛り上がった。

リング上に6人が揃った時点で今野社長のコール。青や白、水色、紫、ものすごい量の紙テープが乱舞。片付けるのに少し時間を要した。

先発を買って出たのは南と草薙だった。草薙がダッシュして間合いをつめドロップキックを叩き込む。南が劣勢に立ったので小川が出てくる。タッグパートナー同士だが容赦はしない。小川も草薙の攻めを受け切れず、ナスターシャにタッチ。

そのあとは次々にタッチが進み百花繚乱の6人タッグとなった。チョチョカラスが派手な飛び技を惜しげもなく繰り出せば、ナスターシャはメモリアル気分を吹き飛ばす関節技で壊しにかかる。

しかし、結末はあっけなくついた。ナスターシャの後を受けて出てきた南がチョチョカラスと激突。ひとしきり攻防をやった後、飛びつき腕ひしぎを早めに繰り出した。何回も食らっているのでチョチョカラスもポイントをずらして逃げるだろうと思われたが・・・

「ギャヤヤアアア」

なんと腕ひしぎが極まってしまい、あわてて草薙と秋山がカットに入ろうとしたときにはチョチョカラスはギブアップしていた。館内ポカーン。あとの4人もぼうぜんと立ちすくむ。とくに秋山と小川は本当に顔見世程度のファイトしかしていない。このメンツにしては10分31秒と短めの勝負タイム。が、それも一瞬のことで、小川とナスターシャが南の手を上げると館内は関節のヴィーナスの変わらぬ技のキレに拍手を送った。

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このあとメイン。挑戦者の伊達遥がテーマ曲「宇宙の皇女」で入場。そのあとSPZヘビー級のベルトを巻いた吉田裕子が攻撃的な「赤い破片」のテーマに乗って入場。若林太郎氏の認定証読み上げ。8時40分、いよいよゴング。

伊達遥は吉田攻略に自信を持っているのか、普段どおりにエルボーやチョップ、ドロップキックでじわじわと序盤は組み立ててゆく。そしてえ中盤、頃合いを見て殺人ヒザ魚雷が2回続けて炸裂。ブレーンバスターのあとまた殺人ヒザ魚雷。

これで吉田は動けなくなった。そのあと伊達がラリアット、ブレーンバスターと猛攻。ブレーンバスターからのフォールを吉田は返せなかった。勝負タイムは22分3秒だったが、吉田は大技らしい大技はまったく出せぬまま終わった。12代王者となった伊達の腰に2ヶ月ぶりベルトが戻ってきた。

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SPZ世界選手権

伊達遥(22分3秒、ブレーンバスターからの片エビ固め)吉田龍子

第11代王者が初防衛に失敗、伊達遥が第12代王者となる

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こうしてドーム大会は盛況のうちに幕を閉じた。

2007年3月 7日 (水)

第52回 はじめてのすいどうばし(前編)

前回のあらすじ

お嬢様プロレス団体「SPZ」は7年目を迎え、ついに首都圏最大の会場、新日本ドームで興行を打つことになった。観客動員はどうなるかわからないが、今考えられるベストなカードをぶつけた。

そして最終戦、新日本ドーム

リング搬入が午前中というスケジュールなので、スタッフ総出で朝から水道橋にある新日本ドームへ向かった。今野社長は例によって旗揚げメンバーの保科優希、小川ひかるを連れて湘南新宿ラインの「グリーン車」で新宿。そこから黄色い電車で水道橋。正面入口の「SPZ TOKYO DOME -a will-」の大看板を見て社長フラッと立ちくらみ。その場にフラフラとうずくまってしまう。

「だ、だだ大丈夫ですか社長?」

「いや、小川しゃん、ちょと興奮してくらってしただけ。6年前から考えたら信じられないんだけど」

「凄いです~」

二塁ベース後方にリング設営。今野社長と小川、保科、渡辺のほかに井上秘書、会場スタッフが手伝ってリング設営が終わったのが10時頃。このあと照明やら音響やら花道設営なんぞで会場スタッフはてんてこ舞いが続く。

「じゃあ本番まで8時間もあることなんで控室でまったりとお茶でも・・・」

モニターを見ながら3人はこれまでの思い出話をしながら過ごした。そのあと昼食。支給されたスタッフ弁当をパクつく。

「小川さん、カメラテストやるからリング来て」

オーロラビジョンに大写しになるのだが、今回は初のドーム興行でクレーンカメラとかの設置テストも時間がかかっている。

「もう逃げられないわよ!」ジャージ姿の小川がにこやかに。

カメラテストのやられ役は社長。STFを手加減状態でかけられる。

「うぉ、痛い、痛い、痛いーーギブアップ」

14時、当日券の発売開始。前売りではけっこう売れたそうだが当日券が伸びるかどうか。社長は気を揉んだ。しかし選手が集合する頃にはー

51967名(超満員札止め)。

「えうおえう」

「社長、言葉になってません」

井上秘書の鋭い突っ込みにも社長はものがいえない状態。

「みんなありがとう。あとは内容で今日来たお客さんを喜ばせてください!よろしくお願いします」

ひとしきりリングでみんなが練習したあと、17時半の開場。控室のモニターを選手は吉田永沢上原の3人は食い入るように見ていた。

「すげえ・・・」

「やるしかないね、チャンピオン」

「がんばれ、ガンバレ!」

一期生は言葉にできない感動。1000人を埋めるのがやっとだった旗揚げの頃からは信じられない光景が目の前。涙を流す選手もいた。

「みんなで・・・・力をあわせると、こんな事が・・・出来るんやね・・・ぐすっ」

さて公演開始の18時半。よくわからない機械質の音楽が数分流れ、ついでオーロラビジョンにSPZの旗揚げからのダイジェスト映像が流れる。そしてファンファーレ。バックスクリーン横に現れたのは格闘技中継でおなじみ、呼び込みの外人おばさん、ルナー・シャンテ女史。

「レディイイイス、エンド、ジェントルメェェェン!エス、ピーゼット!エスピーゼット!エスピーーゼーット!」

ほどなく満場のファンも応えて「SPZ」コール。そして

「エスピーゼット!イン シンニホンーーーードームゥゥゥ!!421-アアアアアアアーウィルゥゥゥ!!」

「クリエイター、キーリーコーイーノーウーエ!」

なんと花道に登場したのはスーツ姿の井上霧子。客席に投げキッスを送りながらリングへ。

「SPZプレジデントォォォ、カーズーヒーローコンンノォォォ!」

「イタリー製スーツ」姿の社長が花道をリングへ。そのあと挨拶は井上秘書が。

「本日はこんなにたくさんのお客様が起こし頂き、まことにありがとうございます。思い起こせば6年前、わずか3人の選手と私どもスタッフで植えたSPZプロレスの種が、今日こんなに大きな花を咲かせることができました。咲いた・・・ぐすっ・・・この・・・花を、ぐすっ、未来へ、・・・」

あとは詰まって言葉にならなかった。社長も興奮気味に7試合のカードを読み上げる。そのあと社長が、

カン、カン、カン、カン・・・ゴングを鳴らし

「大変長らくお待たせいたしました、ただいまより第1試合を行います」

第1試合はあえて定番カード、保科優希対渡辺智美をもってきた。まずドームに響いたのは少し昔のディスコ音楽。渡辺智美のテーマ。次にラヴェルの「ボレロ」で保科優希が入場。

「ファイッ!」井上霧子レフェリーが試合開始を宣する。地方では何十回も行ったカードだが、今日の保科は珍しく緊張というか感慨に震えていた。いつもは保科ペースの試合が序盤はむしろ渡辺がドロップキックやヒップアタックでのびのびと攻める意外な展開。ようやく体制をたてなおし、ステップキックやタックルで攻めに転じ、最後はロープに振られたところを背面トペで押しつぶして渡辺から3カウントを奪った。勝負タイム15分37秒。ここで特別ゲスト、ミミ吉原さん登場。勝った保科の手を上げて花束を渡す。

「よくここまで頑張ったね」

「ありがとうございます~」

満員の観衆から喝采を送られながら、花束を持った保科が退場。

続く第2試合はミレーヌ・シウバ対カレン・ニールセン。ミレーヌ・シウバも草創期のSPZに南利美の最初のカベとして立ちふさがった人であり、古くからのファンの間でもなじみが深い。裁くレフェリーはAACのJ・ハヤトール氏。シウバの打撃とカレンのレスリングセンスがまっこうから激突する好勝負。最後はカレンがエルボーでシウバを下した。

そして再び井上レフェリーが裁く第3試合。90年代に大流行したテレビアニメのテーマ曲に乗って富沢レイが入場。対戦相手はSPZの常連外人、「ちょい悪」マリア・クロフォード。実力では同期の草薙みことに遠く及ばないが、人気は互角以上(と本人が主張している)の富沢、フェイスクラッシャーなどでクロフォードを追い込んだが、最後はリング中央でクロフォードのアキレス腱固めが長時間決まってしまう。

「いやあああああーっ!」

悲鳴を上げながらも粘った富沢だったが無念のギブアップ。勝負タイム19分56秒。リング上で一礼して、渡辺の肩を借りて引き上げる。ここで15分の休憩。

「やっぱりSPZはガチな団体だ。レイちゃん最後、足完全にやられちゃったもんなぁ」ざわつく館内。

(続く)

2007年3月 6日 (火)

第51回 7年目4月 初ドームっついカード編成会議

レッスルエンジェルスサバイバー プレイ日誌のようなもの

「輝くエッセンシャル」

(かなり脳内妄想はいってます)

7年目 春 

「本気、まごころ、手作り感」を標榜する女子プロレス団体SPZも旗揚げから6周年となり、そこそこ人気も出てきたので、今野社長は本拠地の横浜戸塚に自社ビルである「SPZビル」の建設を断行し、その2階の一隅にグッズショップ「SPZフィーバー」を開店した。

4月1日の開店イベントには秋山美姫、渡辺智美、保科優希の3人によるサイン会を行い、商品構成は人気選手のTシャツ、パーカー、写真集や過去の名勝負を収めたDVDのほか、ここでしか買えない選手ポスターやら扇子、マグカップなどバラエティに富んでいた。なかでも人気の商品は「オープン記念限定発売」の南利美のヴォイス目覚まし時計であった。あのクールな声で「さっさと起きなさい!」と言われるのは濃いファンにはたまらない。開店日にはWEB上での告知のみだったが、熱心なファンが多数詰めかけ、今野社長自らレジを打って来店客をさばいた。ちなみにサッカー(袋詰め)は井上秘書と小川ひかるが担当した。

「社長、レジ打つの速いですね」

「ふ、以前コンビニで『夜の帝王』と呼ばれていたことがあってね」

ようやく閉店時間の19時を過ぎ、今野社長はカード会議のため一・二期生選手たちに予め集合をかけてあった本社会議室へ向かった。

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話は2ヶ月前にさかのぼる。朝の合同練習前、道場で

「みんな揃ってるね、じゃあ結論から言うよ、ドームやるべ」

「ドームっ?」

「4月21日、新日本ドームを押さえました。埋まらないと会社がつぶれるので頑張ってください、以上」

で、きょうはそのドーム大会の戦略会議だったりする。

「3月シリーズお疲れ様でした。そろそろ旗揚げ6周年記念シリーズ最終戦、421ドーム決戦「a will」の作戦を練りたいと思います、いままでうちの団体の最大動員数は埼玉スペシャルの3万人が最高です。足りない2万人をどう集客するか、知恵の出しどころです。まずは皆さんの意見を聞いてカードを決めたいと思います。普段はカードは私と井上さんとで相談して決めるのですが今回は失敗が許されないので皆さんの意見を聞きたいと思います」

「やっぱりメインはうちの団体の看板、SPZ選手権で勝負した方がいいと思います」

小川ひかるが最初に発言。異論はなかった。

「じゃあ現チャンプの吉田さんの相手はどうしましょうか、草薙さんやる?」

「いえ、私は・・・最近吉田さんに2連敗してますから、もちろんやるときはベストをつくしますが、吉田さんがまだ勝ったことのない人を当てた方がお客さんの興味を引くと思います」

「うーん、そうかもしれない、じゃあ、メインは吉田さん対伊達さんのSPZ選手権だ、いいね伊達さん」

伊達の拳に力が入る。

「あ・・・・はい・・・がんばります」

「じゃあ、セミはどうする?」

一同沈黙、2期生の富沢レイが発言。

「メインはすごいカードなので、セミはあっと驚く・・ていうか、もうここでしか見られないカードにしたほうがいいと思います」

「その意見には賛成、ただ、いままで私たちのカベとしてSPZを支えてくれたAACやEWAの選手をメインにもセミにも入れないのはおかしいので、外国人選手を入れたほうがいいと思う」

井上秘書が発言。

「じゃ、こんなのはどうかな」

今野社長がホワイトカードに書き入れる。

「南利美、小川ひかる、ナスターシャ・ハン VS草薙みこと、秋山美姫、チョチョカラス」

「アハハハハハ、おもしろーい!」

「なんてカードなの、メチャクチャで整理がつかないわ」

「そう、賛否両論。話題になるよこれは」

と言う具合でカード編成が進んでいった。

「それではこれで行きたいと思います。あとはシリーズ開始前まで営業活動をみんな少しでいいので手伝ってください」

その翌週の月曜日、

東京のスポーツ新聞社を手分けして襲撃。

日刊ブルース新聞社へは伊達遥と保科優希が襲撃。

「えっと・・・あの・・・その・・・」

「えーっと~、この人がメインで吉田選手と戦います。膝蹴りがすごいので見に来てください~」

スポーツジャパン新聞社へは南姉妹が襲撃。

「興味があれば来て。・・・待ってるわ」

サンズイスポーツ新聞社へは秋山沢崎が襲撃。

「完全燃焼しますっ!ぜひ宣伝してくださいっ!」

「初ドームです。秋山さんからのお願いっ!」

スポーツ報連新聞社には草薙みことと上原が襲撃。

「日ごろの修行の成果をぜひご覧になってください」

東京中部スポーツには富沢レイと永沢舞が襲撃。

「すごいのが見れるよ~。、来てキテ~」

エブリデースポーツ社には井上霧子秘書と吉田龍子が襲撃。

「伊達さんを今度こそ越えてみせるっ!」

あとは身内同然なのだけど京スポ新聞には今野社長と小川ひかるが挨拶に。身内同然の若林太郎記者が応対。

「メインはすごいことになりそうなカードだね、怪獣の激突みたいな。でも一期生の伊達選手に意地を見せて欲しいな、・・・あとは小川選手セミ!?このメンツで!?社長ヒイキなんじゃない、小川さんやられ役!?」

「ま、がんばります」

そしてあっという間に4月シリーズが始まった。まだ寒さの厳しい北海道釧路からスタート。年に3回も札幌興行があるのは単に今野社長が北海道のうまいもの好きだからという説が根強い。

札幌キターアリーナ大会のメインは秋山沢崎のSPZタッグ王座に草薙小川の「ザイテングラート」が挑むカード。試合は草薙が前面に立って秋山沢崎を投げまくって圧倒する展開。小川もうまくつないだり合体攻撃で草薙をよくサポート。最後は39分23秒、合体パワーボムで秋山を仕留めた。草薙小川が2代目のSPZタッグ王者に輝いた。

ベルトを獲った草薙や小川より社長の喜びようが半端ではなく。その夜は南姉妹、井上秘書を交えた6人で「北海寿司食べ放題」を敢行した。

「小川さんと、ベルトをまた獲れて、嬉しいです」

「ありがとう、草薙さん」

5戦目高知大会のメインでは南姉妹プラス小川の「関節地獄トリオ」にジョーカーウーマン、クロフォード、スミルノフのあくの外国人選手軍団が激突。パワーで押す外国人軍と技のキレで立ち向かう南姉妹他1名の激闘は見どころ満載。最後はハイブリッドがジョーカーウーマンの裏投げに沈んだが、館内からは大きな拍手が。

そして最終戦、新日本ドーム。

2007年3月 5日 (月)

第50回 自社ビル建設

6年目の3月

「ファンクラブ?私の!?感動、カンドー!」

SPZ新王者となった永沢舞のファンクラブが設立。

ベルトを失い、失意の伊達遥に映画出演依頼。借金完済のため受ける。保科にも映画出演依頼。アイドルレスラーなので受ける。

「ウァハハハハ、ついに自社ビルを設立したぞ」

今野社長が高笑い。戸塚駅近くについに5階建ての自社ビルを建設した。建設資金に5億かかったが、大半は自己資金でまかなった。入口には「SPZビル」の看板がはめ込まれ、1階が弁当屋チェーン、2階がグッズショップ予定スペース(資金不足で開店は先延ばし)と社長の趣味でメイド喫茶のテナントを格安家賃で入れた。3階が受付、会議室兼記者会見スペースや応接室など。廊下には歴代SPZ王者の写真が並べられた。したがって戴冠回数の多い伊達は4枚。4階がオフィスと社長室。といっても経理や営業のスタッフは4人しかいないので全然広い。5階はとりあえず倉庫にした。

3月シリーズ「2016春の香シリーズ」開幕戦大阪大会、メインは秋山沢崎対南姉妹のSPZタッグ戦。

「南姉妹が勝つんやろか」

「いや、妹の方がまだデビュー1年足らずだし、姉の方も最近はSPZベルト戦線にも絡んでない状態やから」

「でも姉妹ならではのタッチワークがあるかもわからんで」

「それをいうたら秋山沢崎は1期生で入門も同じテスト組や、長年のつきあいいうもんがある、連係は秋山沢崎の方が上や」

「でも南は関節技があるで」

「秋山も表には出しとらんが関節技がごっつ強いらしいで」

ファンの間でも興味津々のカードのようだ。

試合は切り込んでいくべき南が沢崎のタイガースープレックスで大ダメージを負い、孤立したハイブリッドが長時間奮闘したものの最後は沢崎のタイガードライバーに沈み、姉妹でのSPZタッグ王座戴冠は果たせなかった。それでも54分37秒の死闘にファンは酔いしれた。

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SPZタッグ選手権

秋山美姫、○沢崎光(54分37秒、タイガードライバーからのエビ固め)南利美、ハイブリッド南×

初代王者が初防衛に成功

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「南の妹、強くなりましたな~、来年あたり姉越すとちゃうんか」

秋山沢崎の王者組は初防衛に成功。

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翌日は京都大会。

「・・・まったく、社長は営業のことしか考えてないんだから、あたし達より強い人間はいっぱいいるのに、2日続けて同じ人間にメインでタイトル戦やらせるなんて、・・・いい、ハイブリッド、昨日54分やって疲れてるなんてのは言い訳にならないからね」

「・・・大丈夫、このくらいハンデよ」

メインは南姉妹にチョチョカラス、ドリュークライの強力外人タッグが挑戦。どうみてもEWA王座を手放させるカード編成だ。試合の方はハイブリッドがつかまってしまい、チョチョカラスのムーンサルト2連発でフォール負け。南姉妹は無冠となった。

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シリーズ第4戦の静岡大会。このへんで移動中の模様なども交えながら全試合の詳報。

朝8時、選手は前日試合のあった岐阜市内ホテルの前に集合。ほとんどの選手は6時頃早起きして軽く散歩やジョギングしていた。今野社長は仕事のしすぎ、井上秘書は飲みすぎで眠い目をこすりながらバスに乗り込んだ。名神高速、東名高速をバスは快調に走る。浜名湖のサービスエリアで食事休憩した後、今日の試合会場ジャンボシップ静岡には13時頃会場入り。

みんなで寄ってたかってリング設営。そのあと各自で体を動かす。17時半に開場。日本人選手は二つの控室に分かれる。部屋割りは対戦カードによっても異なるが、吉田上原富沢永沢渡辺の若手組とそれ以外が基本らしい。例によって今野社長は売店で「増収」に励む。新商品の永沢舞Tシャツが「バカ売れ」してい社長の頬も緩んだ。

第1試合はこのシリーズの定番、ターニャ・カルロス対渡辺智美、地力に勝るターニャが手堅く渡辺をドロップキックで仕留めた。

第2試合は小川ひかる対ユーリ・スミルノフ。典型的なベビーフェース対ヒールのカード編成だが、なにしろ相手は元EWAタッグチャンプなので小川の方がどうみても分が悪い。しかも試合開始早々小川がアクシデントで流血。あっという間に中盤フロントスープレックス2連発、バックドロップ、ラリアットの猛攻を浴びて劣勢。小川もSTFで反撃するがニアロープ。最後はスミルノフが裏拳2連発で小川を沈めた。勝負タイム15分7秒、会場に響く悲鳴。

「百年たったらまた来いよ!」とリング上で小川を踏みつけながら客席を挑発。小川もスミルノフが退場したあと起き上がり、客席に頭を下げてからしんどそうに退場。その試合が終わると休憩。

「すみません、負けちゃいました・・・」

「いや、いい試合だったよ、お客さん沸いてたし」

後半休憩明けの一戦は永沢舞対ドリュークライ。しかしこの試合で大波乱、クライが格上相手に一発狙っていって、試合中盤から蹴りがヒットしだし、永沢はペースを乱されて、最後は強烈なハイキック2連発を浴びてまさかのフォール負け。

「あーもうなにやってんだ永沢、SPZチャンピオンだろう」

控室で上原がモニターを見ながらひとりごちる。

セミファイナルは秋山沢崎がチョチョカラス、ウィン・ミラー組を手堅く破った。

メインは草薙プラス南姉妹の「元チーム関節地獄」対吉田上原富沢の若手混成軍。21分の熱戦が展開され、最後はハイブリッドと草薙が合体パワーボムを富沢に決めて試合は終わった。全試合終了が21時少しまえ、そのあと全員でリング撤収。バスで会場をあとにしたのが22時過ぎ、

「おー、飯食ってこう」

社長が小川ひかると南姉妹を誘い、井上秘書を含めた5人で静岡名産おでんの食事。23時ごろお開きとなり宿舎のホテルへ戻り寝る。翌日も長野で興行なので早起きである。

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「埋まったー」

3万人のさいたまスペシャルホールが辛うじて満員になった。メインは吉田対永沢、セミには草薙対上原の強力カードをぶつけた甲斐があった。

さいたま大会セミファイナルは草薙対上原。次期SPZ挑戦者の優先順位を決めるカードとファンの間では解釈された。最近は草薙相手でも力負けしなくなった上原だが、絞め技極め技の防御が伊達と並んで下手だという弱点があり、そこをうまく突いた草薙がサソリ固めで勝利。

メインは永沢対吉田のSPZ選手権、中盤までは永沢の投げ技がポンポン決まっていて優勢だったのだが、吉田のスプラッシュマウンテンで一気に形勢逆転。デンジャラスキックの乱打で永沢がマットに崩れ落ちる。

「フィニュッシュはこれだっ!」

吉田が拳を掲げてコーナー最上段へ。大柄な吉田らしからぬ軽快な身のこなしで、重爆ムーンサルトが降って来た。これを永沢は返せず、5ヶ月ぶりに吉田の腰にベルトが戻ってきた。勝負タイム25分9秒。

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SPZ世界選手権

○吉田龍子(25分9秒、ムーンサルトプレスからの体固め)永沢舞×

第10代王者永沢が初防衛に失敗、吉田龍子が11代目王者となる。

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2007年3月 4日 (日)

第49回 SPZ選手権 伊達遥×永沢舞

6年目2月

「ハイブリッドさん、STFは・・・ここ、手首を頬の部分に当てるのがポイントです。」

小川がハイブリッドにSTFの手ほどきを伝授。南利美は腕関節破壊技が大好きなのでSTFは習得していない。

「小川さん、ありがとうございます。でもどうして、小川さんの・・・必殺技を簡単に教えてくれるのですか、小川さんに使うかもしれないのに」

「あら、私は社長からも実力微妙だって言われてるけど、ハイブリッドさんはこれからリミさんを越えなきゃいけないんだから、これからのSPZのためにも。私の勝ち負けよりも会社の将来よ。でも、私も簡単にはやられないから、次のシリーズでもし当たっても全力でかかってきてね」

「・・・ありがとうございます」

小川さんて、見かけより大人だ。ハイブリッドはそう感じた。

「あ、それと社長からの指示で、技の名前は変えといてだって、私もSTFを必殺技にしてるから、かぶるのはよくないって」

「・・・わかりました、適当に考えときます」

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「SPZウインタースプラッシュ2015」開幕。比較的SPZの営業力が強い東北地方を回って利益を手堅く稼ぐシリーズ。沢崎光は映画出演のため欠場。

「先シリーズはよくもEWAタッグのベルトをうばいとってくれたな、したがって今回はハンとスミルノフのコンビで挑戦させてもらう」EWAのエージェント、クリステン氏が要望する。なんでも「ベルトが自分の団体にないと本国での興行に影響する」らしい。

そして仙台大会でEWAタッグ戦。南姉妹対ナスターシャ・ハン、ユーリ・スミルノフ。ハイブリッドがやはり狙われて、ギリギリのところまで追い込まれたが、ハンのキャプチュードやスミルノフのラリアットなどで生じた危ない場面をことごとく南がカットし、最後は48分23秒の激闘の末にハイブリッドがサソリ固めでスミルノフからギブアップを奪う殊勲。

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そして最終戦は幕張大会。第3試合でハイブリッド南対小川ひかるの好カード。序盤、ハイブリッドのエルボーが南の鼻に入って小川が流血。これが影響したのか小川の動きに精彩がなくなり、ハイブリッド優勢のまま試合が進む。アキレス腱固めやネオ・サザンクロスロックはニアロープだったが、最後は18分16秒、渾身のエルボーで小川を沈めカウント3を奪取した。

小川さんに、勝てた。さあ次はもっと上だ。

今回は3大シングルマッチが呼び物で、セミ前は次期SPZ挑戦権をかけた吉田龍子対草薙みことの一戦。草薙の投げの切れと吉田の力が真っ向からぶつかり合う好勝負。試合中盤、

オリャアアッ!

吉田が草薙を肩の上まで高く担ぎ上げて垂直落下させた。スプラッシュマウンテン炸裂。衝撃に耐えた草薙。しかし次にプラズマサンダーボム。

「ぐうううっ」

吉田さんも最近は試合の作り方を覚えてきたようですね・・・

フラフラと起き上がった草薙。必死にフロントスープレックスなどで反撃するも、最後はローミドルハイのデンジャラスキック連打に沈んだ。

セミはまたも南利美対ナスターシャ・ハンの関節地獄対決。今度は南がジャーマンで先月の雪辱を果たした。

メインは伊達遥対永沢舞のSPZ選手権。上原がダメだったから永沢でも当てようかと考えてぶつけたカード。だが、集まった6000人余のファンは信じられない光景を見た。

ー作戦を考えても相手は伊達さんだから思い通りにはいかない。だから何も考えずに思いついた技で投げるしかない。

永沢舞のフロントスープレックス、ノーザンの猛攻。それにローリングソバットなどの飛び技を織り交ぜてきて伊達はズルズルとダメージを重ねてゆく。いくら伊達でもこの流れはまずいだろうと会場のファンは伊達に声援を送るが悪い流れは止まらない。追い込まれた伊達はSPZキックを繰り出し、永沢を口から流血に追い込んだが、永沢はそれまでにダメージの蓄積がないので決定打にならない。

逆に永沢が最後のラッシュをかけてきてタイガードライバー2連発。これを伊達は返せなかった。場内ウォォォと沸き立つ。勝負タイム27分16秒。

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SPZ世界選手権 60分1本勝負

○永沢舞(27分16秒、タイガードライバーからのエビ固め)伊達遥×

9代目王者が2度目の防衛に失敗、永沢舞が第10代王者となる。

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SPZ王座初挑戦でチャンスをものにした4期生の永沢舞、今野社長からベルトを受け取り、富沢レイが永沢の腰にベルトを巻いた。

あれ、なんでだろう、涙が・・・止まんないや・・

リング上を快活に飛び回る永沢の目から涙が零れ落ちた。4期生で入ってきたときはデビューから21連敗を喫するなど決して順風な若手時代を送ってきたわけではなく、メインへの出世も吉田に先を越され、小川クラスに並びかけたあたりでイギリスに1年間修行に出された。しかし異国の地で投げ技のレスリング才能を花開かせ、凱旋帰国から7ヶ月でSPZのベルトを巻き、団体最強の地位を手にするに至ったのだから・・・

「か、かいせつの小川さん、歴史がまた動きましたね・・・」

「い、いや驚きました。永沢選手にチャンスが回ってきたんですが一発でチャンピオンになってしまいましたね。休まず先手先手と攻めて、伊達さんの膝蹴りを最後まで出させなかったのが大きいと思います。ですけど永沢選手、まだ17歳なんですが、これから皆がベルトを狙ってきますから大変ですよ。でも今日は彼女におめでとう、良くやりましたと言ってあげたいです」

「ありがとうございました。それでは幕張コンベンションホールからお別れいたします。解説は小川ひかる選手、実況は私、森がお送りいたしました」

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2007年3月 3日 (土)

第48回 6年目1月 新春バトル・カデンツァ

年が明けて2015年、今年の新春バトルカデンツァは例年に比べ早いスケジュール、1月3日の後楽園プラザから始まる。沢崎光と小川ひかるはそれぞれ負傷のため欠場。

井上霧子レフェリーがリング上から挨拶。

「あけましておめでとうございます。本年もSPZを宜しくお願いいたします。本日はまだ正月なので、おとそ気分の入ったヌルいバトルを展開いたしますので最後までご観戦ください」

もちろんこれは「お正月のあいさつ」なので第1試合の保科対渡辺戦から熱い試合が展開。メインは草薙みこと+南姉妹に、ナスターシャ・ハン、ユーリ・スミルノフ、ドリュー・クライのEWA軍がぶつかる6人タッグマッチ。

いまのSPZの日本人選手は、南姉妹プラス草薙小川の「関節地獄プラス草薙連合」と秋山伊達沢崎の「一期生連合」吉田永沢富沢の「若手軍団」の3つに大別される。その中でも最も人気が高いチームが今日はメインを担当。最後は南と草薙のダブルラリアットが決まりスミルノフにフォール勝ち。

「社長、1回くらい沖縄で興行やってくださいよ」

上原今日子に何回か言われていたのだが、沖縄はバスでは行けないので興行を打ったことはなかった。しかし、トップの一角にまで成長した上原選手の地元凱旋がないのも可哀想な話なので、1月6日、ついに沖縄興行を断行した。テレビ放映もなく知名度が低いエリアなので観客動員を心配したが、4000人収容の会場は満員になった。しかしメインは上原対ナスターシャ・ハンのシングル戦。前月5分で失神させられた因縁の相手だ。前回の恐怖を振り払うように挑んでいった上原、しかし19分46秒、またもリング中央でドラゴンスリーパー。

やばい意識が薄れてゆく・・・

上原はギブアップするしかなかった。

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5戦目の神戸大会。メインで組まれたのはスミルノフ、クライのEWAタッグ王者に南姉妹が挑むタイトルマッチ。ハイブリッドも一流のレスラー相手ならともかく、それなりのレスラーとは対等に渡り合えるようになってきた。

試合終盤、ハイブリッドがドリュークライを場外乱闘にうまく誘い、そのすきに南が裏投げから飛びつき腕ひしぎと決めてスミルノフからギブアップを奪った。南姉妹がベルト戴冠。

「南さん、姉妹でベルトを巻いた感想を聞かせてください」

南姉妹の周りに記者が群がる。

「あ、まあ、悪くはないわ。つぎはSPZタッグのベルトを狙いに行くわ」

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第7戦名古屋大会は集客のためだけにメインで「ナスターシャ・ハン対秋山美姫」のEWA選手権が組まれた。いちおう「SPZのベルトを巻いたことのある人は海外団体のベルトには挑戦させない」不文律があるので、こんかいは秋山が挑戦。24分のいい試合の末、ハンがまたもジャンピングニーで防衛に成功。

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最終戦は横スペ(横浜スペシャルホール)大会。本拠地大会なので超満員札止めの盛況。

3試合目からテレビ用のカメラが回り始めた。

「解説は小川ひかる選手です。小川さん、今シリーズは欠場となりましたが、足の故障はどうですか?」

「軽傷ですから、翌月には復帰できます」

「さてリング上はハイブリッド南対ウィン・ミラーのシングル戦。あー南がアキレス腱固めを仕掛けた、足を攻めようという作戦でしょうか」

「森さん、ちょっと待ってください、ミラー選手の様子が」

小川ひかるがテレビ関東の森アナに異変を指摘する。

「ウ、グアアアアアア・・・」

アキレス腱固めが入ってしまったのか、突然痛がり出すミラー。

「あーっと、ウィン・ミラーが痛がり出した。アアこれは入ってしまったか、あーここでミラーギブアップした。試合終了」

「小川さん、ハイブリッド選手も成長していますね~」

「・・ええ、あのアキレス腱の決めかたはもう一流レスラーのそれです。やはりあの南選手の指導を連日、受けてますから」

「そ、それは強くなりますね、」

森アナウンサーが苦笑。ここで休憩。

・・・うわー、ハイブリッドさん、姉の南さんみたいなワザ師のオーラが出てきた感じ。

放送席で小川は感じた。

休憩明けの試合は草薙対ユーリ・スミルノフのシングル戦。草薙が終始おちついてスミルノフにダメージを与え、10分ほど、最後はボディプレスで完勝。

セミ前は吉田、永沢対チョチョカラス、ドリュークライの対戦。永沢がひとり格落ちのクライをJOサイクロンで仕留めた。

セミは久々実現の南対ナスターシャ・ハンの関節世界一決戦。南が腕を狙えば、ナスターシャは足を狙ってくる。壮絶な極めあいを制したのはナスターシャ・ハン。アキレス腱固めで南からギブアップの言葉を吐かせた。

メインは伊達のSPZ王座に上原が挑む。控室のモニターで上原はずっとセミの試合を見ていたが、南がギブアップするや軽くストレッチを始めた。

相手は伊達さんだ。勝ったことはないけど、力尽きるまでやる。

「・・・シャ、いくぞっ!」気合いを入れてから上原は控室のドアを開けた。

序盤から中盤は絞め技を中心とした互角の攻防。しかし先に勝負に出たのは伊達。前触れもなく上原の頭にSPZキック。上原が頭を押さえて立ち上がったところへ組み付いて腹に殺人ヒザ魚雷。

    ・・まだだ、まだやれる・・

上原も必死の思いで脇固めで反撃、しかし続くフランケンシュタイナーが腹に力が入っていないせいかパワーボムで返される。ブレーンバスター2連発で追い込むもそこまでで、伊達が隠し技のSTO。直後のフォールはカウント2.8で返した上原だが、フラフラと立ち上がったときー、

再度の殺人ヒザ魚雷炸裂。衝撃で上原の身体が浮き上がってしまう。腹筋の装甲をものともせず、魚雷は上原の戦意を根こそぎ奪い去った。すかさず押さえ込んでカウント3。伊達強い。

「51分37秒、殺人ヒザ魚雷からの片エビ固めで、伊達遥の勝ち」

館内に響き渡る上原ファンのため息と伊達ファンの声援。ベルトを巻いてファンの声援に応える伊達。ぐったりとした上原は渡辺と保科に抱えられながら控室へ戻った。

「うっ、くーっ、勝て・・・なかった」

上原は控室で涙を流した。

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SPZ世界選手権試合

○伊達遥(51分37秒、殺人ヒザ魚雷からの片エビ固め)上原今日子×

第9代王者が初防衛に成功

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2007年3月 2日 (金)

第47回 6年目12月 歳末特別選手会興行

クリスマス特別 選手会興行(リプレイではありません)

「選手会興行をやりたい?」

11月、今野社長のもとへ小川選手会長が要望を持ってきた。

要望書には「SPZファンへの感謝を込めて選手会興行を行い、上がった収益で道場住まいの若手選手に正月用の高級食材を提供する」などと書かれていた。

さて12月25日東京後楽園プラザ。

「第1回選手会主催興行」の内容は以下の通りであった。

1.アームレスリング大会「ぷちSPZクライマックス」

SPZの精鋭8選手がアームレスリングでうでっぷしの強さを競うベタな企画。小川草薙富沢上原永沢吉田渡辺ハイブリッドの8選手が出場。トーナメント組み合わせは選手会長の小川が「厳正なる抽選」で決めたというが自分の有利なように組んだことは言うまでもない。1回戦で渡辺を撃破。草薙対吉田は吉田の勝利、上原対永沢は上原、富沢対ハイブリッドは富沢が勝利。準決勝、小川対富沢は富沢の勝利、吉田対上原は上原が速攻で勝利。決勝は富沢対上原。本気になったのは富沢の方で、上原に勝って優勝。2期生の意地を見せた。

「あまい、あまーい!」

だが最下位もキッチリ決めるのがSPZクオリティ、渡辺とハイブリッドの最下位決定戦、合宿所の力関係からか?ハイブリッド南が負けてしまい、ハイブリッドには「罰ゲーム」として「演歌1曲歌唱の刑」が課された。負けることを考えていなかったハイブリッド、まともに歌えず会場の笑いを買った。

2.クリスマス抽選会。

各選手が1個ずつ提供した愛用品、提供品が当たる。小川ひかるのリストバンドや、南利美の移動用サンダルなど、妥当な賞品を出した選手もいたが、「猫の着ぐるみ」や、「深夜アニメのDVD全10巻」といった豪華?賞品に出した選手がいた。入場時に渡されたラッキーナンバーの当選番号が読みあげられるたびに会場からはどよめきが。

3.トークショー。一期生の伊達沢崎秋山保科の4名が京スポ新聞若林氏のMCでまったりと。

このあと15分の休憩。

4.普通のシングルマッチ 渡辺智美 対 ハイブリッド南

休憩明けは普通のシングルマッチ。渡辺がポカポカとエルボーで攻めるが、7分ごろ南が脇固めを決めて勝利。

5.秘蔵映像上映

2期生の草薙みこと、富沢レイの新人時代の映像や移動中の秘蔵ショットが晒されるイベント。

6.メインイベント 「ストリートファイトマッチ」20分1本勝負

これだけ事前告知されていた。カードは 小川ひかる 今野社長 VS 井上霧子 X という無茶苦茶な一戦。なおハンデとして今野社長には「特に危険と認めたもの以外、あらゆる凶器の使用」が許可された。

「何で私がこんなことを・・・」控室でぶつぶつと文句をたれる社長。

「いや、サプライズですから、皆で考えたんですよ」

小川ひかるのテーマに乗って入場。今野社長はスーツ姿で凶器入りと思われるアタッシェケースを持参。、小川ひかるもグレーのスーツ姿。対する井上秘書はパンツにセーターのカジュアルスタイル。そして井上秘書がマイクを握り「トーキョー、メリークリスマス!アンド、カモーン、マイパートナー、ライダー!」

ライダースーツに身を包みヘルメットを被った謎の選手が花道を走ってリングイン。正体バレバレの入場にファンはあきれ返って笑うしかなかった。

レフェリーは上原今日子、リングアナは永沢舞が代行。

「リングに立つなんて何年ぶりかしら・・・」

井上秘書がひとりつぶやく。そしてゴング。やはり普通の試合にはならず、小川が井上秘書にコブラツイストをかけたり、井上秘書がケンカキックなどを披露した後社長登場。今野社長はジャンク品のノートパソコン、袋叩きにするつもりなのかビニール袋、バット等で凶器攻撃を仕掛けるが井上秘書は楽にかわして逆に社長にアキレス腱固め。これは小川がカットに入った。

社長がオーバーアクションで痛がりながら小川にタッチ。そして井上秘書も謎のライダー女にタッチ。ライダー女はヘルメットを用いたヘッドバットで小川に大ダメージを与える。そのあと普通の逆片エビ固め。ここは社長がライダー女をはりせん攻撃でカット。しかしここで試合が動き、井上秘書が小川をリング外に連れ出してベタな乱闘をするなか、ライダー女がメットごしに一言。

「この技に耐えられるかしら?」

もう自分から正体をばらしたようなもので場内爆笑。

出てきたのは関節技ではなく

「ライダーキック」

と称して軽く社長にミドルキック。ダウンした社長を見てコーナー最上段に上がってダイビング・メットバット。いちおう肩口に命中。これで社長は悶絶し、ライダー女は踏みつけフォールで社長から3カウントを奪い、社長が担架で運ばれて試合終了。

全試合終了後、選手総出でリング撤収。控室でダイビングメットを食らった後遺症で座り込んでいるところへ小川選手会長と伊達副会長が。

「あの・・・これ、今日の社長のギャラです」

あくまで選手会としての興行なので、社長と井上秘書にはギャラが出る。封筒の中には1万円が入っていた。

選手会興行の利益は入場料を普段より安めの3000円に設定したことや、来場者全員に非売品DVDなどの「お土産」が渡されたこと、会場経費のほかに選手以外のスタッフに別途ギャラが発生したこともあって数万円程度だったが、それでも年明けの寮の食事におせち料理とカニを追加することができた。

年末恒例のプロレス大賞

最優秀選手は3年連続で草薙みこと。相変わらずのタイトル戦線での活躍、2年連続のSPZクライマックス・SPZタッグリーグ優勝が評価された。最優秀新人はハイブリッド南。南の妹で話題先行型だが、シングルでもデビュー8ヶ月で小川や富沢の中堅クラスに並びかけるところまで来た。ベストバウトは前年に引き続き伊達対草薙のSPZ選手権の一戦が選ばれ、タッグのベストバウトはどこかの地方会場で組んだ南利美、草薙対伊達、上原の一戦が選ばれた。

2007年3月 1日 (木)

第46回 ハイブリッド南×小川ひかる

「ハイブリッド」南利美が告げる。

「あなた、私とのタッグではどこか依存している所があるから、シングルマッチを何試合かやってみなさい」

ということで山梨大会の第3試合で組まれた小川ひかる対ハイブリッド南。小川はやられながら試合を作るタイプで、しかも昨日54分もメインで戦った疲れが残っているのでハイブリッドもそこそこ攻めて、ねちっこい技の攻防が続く好勝負となった。20分過ぎにそろそろかなと小川がリング中央で「もう逃げられないわよ」と決め台詞の後、STF。

痛い、けど絶対ギブアップするかっ・・・

花道奥から今日はメインに草薙と組んで出る予定の南利美が、気になるのか妹の戦いぶりを見ている。

小川がハイブリッドの頬骨にこめた力をさらに強くする。

「アアアアアアー!」

しかし悲鳴を上げながらもハイブリッドはギブアップしない。

長時間締め続けて疲れてきたので小川はいったんSTFを解いて、距離をとった。ふらふらと起き上がってきたところをネックブリーカー。誰もがこれで終わった、でもハイブリッド南はよくやったと思った・・・が、ハイブリッドはカウント2.9でクリア。

―小川さんを越えられないようじゃ、上の人には絶対勝てない。こんなところで負けるもんかー

立ち上がってアキレス腱固めで反撃、しかしロープに近い。いつのまにか場内ミナミコール。小川が悪者になってしまう試合も珍しい。そのあと小川がうまく組み付いてバックに回って、鋭いバックドロップ。今度こそもうだめだろうと誰もが思ったがハイブリッドはこれもカウント2.9でクリア。館内は大盛り上がりで重低音ストンピング(フォールを返した際に観客が足を踏み鳴らす音)まで出た。

「負ける・・・もん・・・か・・・」

花道奥から南利美がリング下までやってきた。

あやまる。ハイブリッドさん。あなたを勝てる相手と見ていたことを・・

小川は気合いを込めて、起き上がってきたハイブリッドをタックルで倒しそのまま上に乗ってSTFで再度締め上げた。今度は小川の右手首はハイブリッドの鼻をつぶす感じで締めていた。

あまりの痛みに悲鳴すら上げられないハイブリッド。井上レフェリーが意思確認。

「参ったしなさい!鼻折れるわよ」南利美がリング下から叫ぶ。手には白いタオルが握られている。

ハイブリッドが砕けそうな意識の中、井上レフェリーの手を叩いて意思表示をするのと南がエプロンに上がったのが同時だった。

「26分59秒、STFで小川ひかるの勝ち」しばし両者大の字。そのあとふらつきながら立ち上がった両者、小川がハイブリッドの手を上げて健闘を讃えた。

「肩貸そうか?」

「いえ、歩けます・・・」

引き上げるハイブリッドに大きな拍手が送られた。

小川も控室で荒い息をはずませていた。

「最後危なかった・・・あれでデビュー8ヶ月、さすがリミさんの妹、次やったらわかんないな・・」

そこへハイブリッドが南利美に付き添われて戻ってきた。

「小川さん、今日はありがとうございました」

「ナイスファイトでした。あとはリミさんの腕ひしぎのような自信のある技が一つあれば、私に勝てると思います。」

「ごめんね小川さん、出来の悪い妹で」

「いえ、すごい新人だと思いますよ」

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第7戦福岡ボートメッセ大会、メインはナスターシャ・ハン対上原のEWA選手権。トップに立つためには伊達さんや草薙さんに勝つほかにも外人トップのハンさんにも勝つという結果が必要だ、と感じた上原は積極的に攻めたが、試合開始5分、不用意に組み付いた上原へ瞬時に体を入れ替えてドラゴンスリーパー。

「う・・ぐふっ」

特殊部隊の暗殺術?にも採用されているロシアの格闘術コマンドサンボの流れをくんだ絞め技で、入り具合が正確だったか、上原の鍛え上げられた肉体から瞬時に力が抜け落ち、あっさり落ちてしまったので阪口レフェリーが試合を止めた。5分6秒の短期決着に場内唖然。

「あら、ごめんなさいね、壊れちゃったかしら?」

失神したままリング上に横たわる上原。男性ファン女性ファン(上原には性別を問わず熱狂的なファンが多い)の悲鳴が。異常事態に小川、草薙、南といったセコンド陣や井上秘書までリングに上がり、阪口レフェリーが上原に活を入れた。

「あ・・・あれ・・・私・・・試合は・・・」

まだ上原は何が起こったのかを認識できていないようだ。

「担架だ担架!」南、草薙、小川に運ぶ担架に乗せられて退場する上原。レスラーは鍛えられているので担架で運ばれるほどのダメージを負うのはよほどの事態である。そのまま控室の畳の上に寝かされる。小川がシューズの紐を解く。

ドラゴンスリーパーは自分や草薙さんも使うが、あんな切れ味ははじめて見た・・・あれがコマンドサンボの秘術か・・・どれよりも5分でやられてメインの役割を果たせなかったことが悔しい・・・

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シリーズ最終戦は広島大会。

第2試合でハイブリッド南が2期生の富沢レイに初めてアキレス腱固めで勝利。

「・・・・まだまだ。こんな試合じゃ喜んでいられないわ」

セミファイナル、昨日失神した上原が沢崎と組んで出場。

「あのくらいでビビってたらレスラーやってられませんよ」

対戦相手のチョチョカラス、ウィン・ミラーを蹴散らし、最後はシャイニングウィザードでミラーから3カウント。

広島大会メインは王者:吉田龍子(17)対伊達遥(21)のSPZ世界選手権。今年最後のSPZ選手権、「ベルトを持って年を越すのはどっちだ!吉田の規格外のパワーか、それとも伊達の殺人ヒザ魚雷か!メガトン級大一番!!」

「解説の小川さん、この試合どちらが有利でしょうか」

「わからないですね、直近の対戦成績はSPZクライマックス予選会で吉田選手、リーグ戦では伊達さんが勝ってますから、ただ、安定感と言う点を考えると伊達さんが少し有利だと思います。ニーリフトの威力は誰もが認めてますから」

SPZプロレス中継の解説者は保科優希か小川ひかるが務めている。人気選手で人当たりが良く。まったりとした解説の保科と、理路整然とした分かりやすい解説の小川。

試合は序盤からエルボーの連打で伊達が有利な流れ、しかし吉田もすぐに早めのスプラッシュマウンテンでペースを手繰り寄せ、ラリアットやDDTで伊達を追い詰め、プラズマサンダーボムを繰り出すが返された。

―けっきょく蹴り倒すしかない。

吉田の側頭部にSPZキック一撃。

「伊達さんの蹴りは団体を背負って立つ技だからSPZキックと呼ぼう」と社長が言ったのが命名の由来。吉田も必死に立ち上がりパイルドライバーなどで手数を返すが、このあと伊達が2発目のSPZキック。これが吉田の意識を断ち切り、マットに前のめりに崩れ落ちた。そのまま上からフォールしてカウント3。勝負タイム24分42秒とそこそこの長さだったが、見ごたえのある攻防だった。

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SPZ世界選手権試合

伊達遥○(24分42秒、SPZキックからの片エビ固め)吉田龍子×

第8代王者が2度目の防衛に失敗、伊達遥が第9代王者となる

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伊達遥が9代目王者に返り咲き。7ヶ月ぶりにベルトが伊達の腰に巻かれた。敗れた吉田はダメージが深くノーコメント。

2014年の激闘が終わった。

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