第53回 はじめてのすいどうばし(後編)
前回のあらすじ
「横浜の明るく楽しいお嬢様プロレス団体」SPZは、旗揚げ7年目にして初めて新日本ドームで興行を行うところまで来た。前半3試合はそれぞれ個性的なカードが組まれ、会場のボルテージは徐々に高まっていった・・・
休憩明けの第4試合、前SPZ王者の永沢舞が一期生の沢崎光とタッグを組んで、スミルノフ、ジョーカーウーマンと激突。永沢は先シリーズのSPZ戦で右手首を負傷したが、今シリーズは最終戦ドーム大会のみ強行出場した。もっとも社長もシングルマッチはきついと判断し、休憩後の比較的楽な場面で沢崎とのタッグでの登場とカード的に配慮した。試合は先輩、沢崎の指示で永沢がリング上を暴れまわる展開。頃合いを見てー
「みんなー必殺技だよ、必・殺・技」とアピールしたあと
JOサイクロン発動。イロモノ路線と見られがちな永沢だが、必殺技が出たときのどよめきは団体で一二を争う。JOサイクロンという高難易度の技をやすやすとやってのける足腰の強さ。たまらずジョーカーウーマンは3カウントを喫した。勝負タイム14分14秒。館内に深夜アニメの主題歌が響き渡る。
「いやー、今日は舞ちゃんが良くやってくれた、腕怪我してるそぶりも見せずによくやった」
「いやー実は試合前にリングドクターさんに注射打ってもらったんですよ、でもバッチリ決まりました、完璧、カンペキ」
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第5試合、セミ前は上原今日子(3期生)対ハイブリッド南(6期生)のカード。上原のテーマはギターサウンドが主体のオリジナル曲。ハイブリッドのテーマは南と同じ。パワーでは圧倒的にハイブリッドの上を行く上原。かかと落とし、フェイスクラッシャーとつないで完勝。ハイブリッドは得意の関節地獄に持ち込めなかった。勝負タイム10分35秒。
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そしてセミファイナル。なんと選手は各人のテーマに乗ってひとりずつ入場。
青コーナーからまずチョチョカラスのテーマに乗って、仮面の貴婦人、チョチョカラスが入場。ドーム仕様なのか、ド派手なロングガウンを着用している。
そのあと一昔前の映画の主題歌に乗って秋山美姫が入場。秋山はシンプルな一般グッズのパーカーを着て入場。
最後はオリエンタルムードあふれる曲に載って白衣を着込んだ草薙が入場。これだけで館内ヒートアップ。
こんどは赤コーナー側。「トップガン」テーマ曲で小川ひかる入場。いつものように社長から送られた銀青のガウンを着込んでいる。
そのあと「ワルキューレの騎行」でナスターシャハンが黒いコートを羽織って入場。
赤コーナーのトリは南利美。スピード感あふれる映画音楽で入場。旗揚げ直後からずっとこの団体の屋台骨を支えてきた南は「M」と銀色にプリントされた紫色のガウンを羽織って入場。ある意味試合より入場シーンの方が盛り上がった。
リング上に6人が揃った時点で今野社長のコール。青や白、水色、紫、ものすごい量の紙テープが乱舞。片付けるのに少し時間を要した。
先発を買って出たのは南と草薙だった。草薙がダッシュして間合いをつめドロップキックを叩き込む。南が劣勢に立ったので小川が出てくる。タッグパートナー同士だが容赦はしない。小川も草薙の攻めを受け切れず、ナスターシャにタッチ。
そのあとは次々にタッチが進み百花繚乱の6人タッグとなった。チョチョカラスが派手な飛び技を惜しげもなく繰り出せば、ナスターシャはメモリアル気分を吹き飛ばす関節技で壊しにかかる。
しかし、結末はあっけなくついた。ナスターシャの後を受けて出てきた南がチョチョカラスと激突。ひとしきり攻防をやった後、飛びつき腕ひしぎを早めに繰り出した。何回も食らっているのでチョチョカラスもポイントをずらして逃げるだろうと思われたが・・・
「ギャヤヤアアア」
なんと腕ひしぎが極まってしまい、あわてて草薙と秋山がカットに入ろうとしたときにはチョチョカラスはギブアップしていた。館内ポカーン。あとの4人もぼうぜんと立ちすくむ。とくに秋山と小川は本当に顔見世程度のファイトしかしていない。このメンツにしては10分31秒と短めの勝負タイム。が、それも一瞬のことで、小川とナスターシャが南の手を上げると館内は関節のヴィーナスの変わらぬ技のキレに拍手を送った。
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このあとメイン。挑戦者の伊達遥がテーマ曲「宇宙の皇女」で入場。そのあとSPZヘビー級のベルトを巻いた吉田裕子が攻撃的な「赤い破片」のテーマに乗って入場。若林太郎氏の認定証読み上げ。8時40分、いよいよゴング。
伊達遥は吉田攻略に自信を持っているのか、普段どおりにエルボーやチョップ、ドロップキックでじわじわと序盤は組み立ててゆく。そしてえ中盤、頃合いを見て殺人ヒザ魚雷が2回続けて炸裂。ブレーンバスターのあとまた殺人ヒザ魚雷。
これで吉田は動けなくなった。そのあと伊達がラリアット、ブレーンバスターと猛攻。ブレーンバスターからのフォールを吉田は返せなかった。勝負タイムは22分3秒だったが、吉田は大技らしい大技はまったく出せぬまま終わった。12代王者となった伊達の腰に2ヶ月ぶりベルトが戻ってきた。
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SPZ世界選手権
伊達遥(22分3秒、ブレーンバスターからの片エビ固め)吉田龍子
第11代王者が初防衛に失敗、伊達遥が第12代王者となる。
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こうしてドーム大会は盛況のうちに幕を閉じた。
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