第50回 自社ビル建設
6年目の3月
「ファンクラブ?私の!?感動、カンドー!」
SPZ新王者となった永沢舞のファンクラブが設立。
ベルトを失い、失意の伊達遥に映画出演依頼。借金完済のため受ける。保科にも映画出演依頼。アイドルレスラーなので受ける。
「ウァハハハハ、ついに自社ビルを設立したぞ」
今野社長が高笑い。戸塚駅近くについに5階建ての自社ビルを建設した。建設資金に5億かかったが、大半は自己資金でまかなった。入口には「SPZビル」の看板がはめ込まれ、1階が弁当屋チェーン、2階がグッズショップ予定スペース(資金不足で開店は先延ばし)と社長の趣味でメイド喫茶のテナントを格安家賃で入れた。3階が受付、会議室兼記者会見スペースや応接室など。廊下には歴代SPZ王者の写真が並べられた。したがって戴冠回数の多い伊達は4枚。4階がオフィスと社長室。といっても経理や営業のスタッフは4人しかいないので全然広い。5階はとりあえず倉庫にした。
3月シリーズ「2016春の香シリーズ」開幕戦大阪大会、メインは秋山沢崎対南姉妹のSPZタッグ戦。
「南姉妹が勝つんやろか」
「いや、妹の方がまだデビュー1年足らずだし、姉の方も最近はSPZベルト戦線にも絡んでない状態やから」
「でも姉妹ならではのタッチワークがあるかもわからんで」
「それをいうたら秋山沢崎は1期生で入門も同じテスト組や、長年のつきあいいうもんがある、連係は秋山沢崎の方が上や」
「でも南は関節技があるで」
「秋山も表には出しとらんが関節技がごっつ強いらしいで」
ファンの間でも興味津々のカードのようだ。
試合は切り込んでいくべき南が沢崎のタイガースープレックスで大ダメージを負い、孤立したハイブリッドが長時間奮闘したものの最後は沢崎のタイガードライバーに沈み、姉妹でのSPZタッグ王座戴冠は果たせなかった。それでも54分37秒の死闘にファンは酔いしれた。
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SPZタッグ選手権
秋山美姫、○沢崎光(54分37秒、タイガードライバーからのエビ固め)南利美、ハイブリッド南×
初代王者が初防衛に成功。
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「南の妹、強くなりましたな~、来年あたり姉越すとちゃうんか」
秋山沢崎の王者組は初防衛に成功。
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翌日は京都大会。
「・・・まったく、社長は営業のことしか考えてないんだから、あたし達より強い人間はいっぱいいるのに、2日続けて同じ人間にメインでタイトル戦やらせるなんて、・・・いい、ハイブリッド、昨日54分やって疲れてるなんてのは言い訳にならないからね」
「・・・大丈夫、このくらいハンデよ」
メインは南姉妹にチョチョカラス、ドリュークライの強力外人タッグが挑戦。どうみてもEWA王座を手放させるカード編成だ。試合の方はハイブリッドがつかまってしまい、チョチョカラスのムーンサルト2連発でフォール負け。南姉妹は無冠となった。
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シリーズ第4戦の静岡大会。このへんで移動中の模様なども交えながら全試合の詳報。
朝8時、選手は前日試合のあった岐阜市内ホテルの前に集合。ほとんどの選手は6時頃早起きして軽く散歩やジョギングしていた。今野社長は仕事のしすぎ、井上秘書は飲みすぎで眠い目をこすりながらバスに乗り込んだ。名神高速、東名高速をバスは快調に走る。浜名湖のサービスエリアで食事休憩した後、今日の試合会場ジャンボシップ静岡には13時頃会場入り。
みんなで寄ってたかってリング設営。そのあと各自で体を動かす。17時半に開場。日本人選手は二つの控室に分かれる。部屋割りは対戦カードによっても異なるが、吉田上原富沢永沢渡辺の若手組とそれ以外が基本らしい。例によって今野社長は売店で「増収」に励む。新商品の永沢舞Tシャツが「バカ売れ」してい社長の頬も緩んだ。
第1試合はこのシリーズの定番、ターニャ・カルロス対渡辺智美、地力に勝るターニャが手堅く渡辺をドロップキックで仕留めた。
第2試合は小川ひかる対ユーリ・スミルノフ。典型的なベビーフェース対ヒールのカード編成だが、なにしろ相手は元EWAタッグチャンプなので小川の方がどうみても分が悪い。しかも試合開始早々小川がアクシデントで流血。あっという間に中盤フロントスープレックス2連発、バックドロップ、ラリアットの猛攻を浴びて劣勢。小川もSTFで反撃するがニアロープ。最後はスミルノフが裏拳2連発で小川を沈めた。勝負タイム15分7秒、会場に響く悲鳴。
「百年たったらまた来いよ!」とリング上で小川を踏みつけながら客席を挑発。小川もスミルノフが退場したあと起き上がり、客席に頭を下げてからしんどそうに退場。その試合が終わると休憩。
「すみません、負けちゃいました・・・」
「いや、いい試合だったよ、お客さん沸いてたし」
後半休憩明けの一戦は永沢舞対ドリュークライ。しかしこの試合で大波乱、クライが格上相手に一発狙っていって、試合中盤から蹴りがヒットしだし、永沢はペースを乱されて、最後は強烈なハイキック2連発を浴びてまさかのフォール負け。
「あーもうなにやってんだ永沢、SPZチャンピオンだろう」
控室で上原がモニターを見ながらひとりごちる。
セミファイナルは秋山沢崎がチョチョカラス、ウィン・ミラー組を手堅く破った。
メインは草薙プラス南姉妹の「元チーム関節地獄」対吉田上原富沢の若手混成軍。21分の熱戦が展開され、最後はハイブリッドと草薙が合体パワーボムを富沢に決めて試合は終わった。全試合終了が21時少しまえ、そのあと全員でリング撤収。バスで会場をあとにしたのが22時過ぎ、
「おー、飯食ってこう」
社長が小川ひかると南姉妹を誘い、井上秘書を含めた5人で静岡名産おでんの食事。23時ごろお開きとなり宿舎のホテルへ戻り寝る。翌日も長野で興行なので早起きである。
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「埋まったー」
3万人のさいたまスペシャルホールが辛うじて満員になった。メインは吉田対永沢、セミには草薙対上原の強力カードをぶつけた甲斐があった。
さいたま大会セミファイナルは草薙対上原。次期SPZ挑戦者の優先順位を決めるカードとファンの間では解釈された。最近は草薙相手でも力負けしなくなった上原だが、絞め技極め技の防御が伊達と並んで下手だという弱点があり、そこをうまく突いた草薙がサソリ固めで勝利。
メインは永沢対吉田のSPZ選手権、中盤までは永沢の投げ技がポンポン決まっていて優勢だったのだが、吉田のスプラッシュマウンテンで一気に形勢逆転。デンジャラスキックの乱打で永沢がマットに崩れ落ちる。
「フィニュッシュはこれだっ!」
吉田が拳を掲げてコーナー最上段へ。大柄な吉田らしからぬ軽快な身のこなしで、重爆ムーンサルトが降って来た。これを永沢は返せず、5ヶ月ぶりに吉田の腰にベルトが戻ってきた。勝負タイム25分9秒。
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SPZ世界選手権
○吉田龍子(25分9秒、ムーンサルトプレスからの体固め)永沢舞×
第10代王者永沢が初防衛に失敗、吉田龍子が11代目王者となる。
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