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2007年3月18日 (日)

第61回 7年目9月 SPZ秋爽シリーズ

前回までのあらすじ

横浜のお嬢様プロレス団体「SPZ」は創立7年目を迎え、新日本ドーム大会を敢行するなど、世界でも指折りの女子プロレス団体に成長した。人気、実力、美貌をかねそなえた選手たちの織りなすドラマ、7年目9月シリーズ「秋爽シリーズ2015」が開幕。

シリーズ初戦高知大会、初戦のメインは南利美・ハイブリッド南の南姉妹がチョチョカラス、ジョーカーウーマン組と対戦するカード。だがファンが眼にしたのは残酷な光景。あの南利美がチョチョカラスやジョーカーウーマン相手に防戦一方なのだ。逆にハイブリッドのほうがチョチョカラスをサザンクロスロックで攻めるがカットに阻まれる。最後はハイブリッドがつかまってしまい、ジョーカーアタック(変形フェイスクラッシャー)の前に無念の3カウント。30分の好勝負だったが、このくらいの相手なら関節技でなんとか故郷に錦を飾ってくれるだろうという思いでマッチメークした今野社長も頭を抱え込んだ。

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シリーズ2戦は宮崎大会。当然メインは伊達遥で、秋山沢崎とトリオを組んで、チョチョカラス、ジョーカーウーマン、ミレーヌシウバと激突。さすがに秋山沢崎伊達は一期生トリオなので連係も流れるよう。目と目で3人が通じ合って合体攻撃を繰り出すのだから凄い。最後は沢崎がジャーマンでシウバを仕留めた。

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今シリーズは数千人規模の体育館を回る地方興行が多いので、メインのカード編成もわかりやすい6人タッグを中心に据えた。第4戦の石川金沢大会も、メインは南姉妹プラス小川の「関節地獄連合軍」に、秋山伊達沢崎「一期生トリオ」がぶつかるカード。実力ではもう姉に並んだのではないかとファンの間でうわさされているハイブリッドが奮闘するも、さすがに伊達には歯が立たない。とはいえ関節連合軍が小川が司令塔となって早いタッチワークで戦い、的を絞らせない。地方会場では珍しいロングマッチになった。

だが伊達の牙城は崩せない。小川の動きがやや落ちてきたところへ殺人ヒザ魚雷炸裂。

「がは・・・っ」

小川は軽量なので膝蹴りで吹っ飛ばされる。

それでも小川が奮起してバックドロップで反撃し、南利美にスイッチ。しかしここで伊達のSPZキック炸裂。

「うっ・・・・」

頭に大ダメージを負った南はハイブリッドにタッチせざるを得ない。リング下で一期生二人がのびている中、若いハイブリッドは奮闘したが、最後は秋山のDDTに力尽きた。

勝負タイム32分58秒。意気揚々と引き揚げる一期生トリオ、そのあとのびていた小川と南姉妹がふらふらと起き上がって、3人並んでリング上で一礼。盛大な拍手が送られた。

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第7戦、宇都宮大会のメインは草薙みこと・小川ひかるのSPZタッグベルトに、EWAのドリュークライ、マリアクロフォードが挑むタイトル戦。例によって小川が序盤つかまり、適度にやられてから草薙にスイッチ。このあとは毎度おなじみの草薙劇場投げまくり。クロフォードは波状攻撃に耐えられずにタイガードライバーでフォール負け。小川もキッチリとドリューのカットを阻止。王者組が3度目の防衛に成功。

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最終戦さいたま大会、3万人収容の会場は超満員札止めとなった。

第1試合は少し趣向を変えて、保科優希対ミレーヌ・シウバのカード。旗揚げシリーズでも見られた組み合わせのカード。終盤よく粘った保科だったが、22分3秒、シウバのローリングソバットに力尽きた。

第2試合は富沢レイ、渡辺智美組対ドリュークライ、マリア・クロフォード。この実力差あるカードにプライドを傷つけられたドリュー、富沢を掌底で流血に追い込んで、最後は9分50秒、ロー・ミドル・ハイキックの連打で富沢を撃沈。クロフォード出番なし。

第3試合は小川ひかる対ハイブリッド南。場内ため息。極め技、絞め技の差し手争いで小川がついていけないのだ。執拗なスリーパーで動きの鈍った小川をハイブリッドがいいように痛めつける。

「覚悟して」

最後は裏投げで小川を動けなくしてカウント3奪取。静まり返る場内。12分47秒、ハイブリッドの完勝といっていい内容だった。ここで休憩。

「はぁ・・・・」

ハイブリッド南に一方的にやられた小川はさすがにショックを隠せなかった。

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休憩後の第4試合、吉田龍子対南利美のシングルマッチ。

パッシーン!

吉田のラリアット連発などパワフルな攻撃を受けてゆく。館内に南ファンの悲鳴。

ーワンチャンスの腕ひしぎに賭ける。

もうこういう闘い方しかできないのを南は自覚していた。苦しみながらも必死にスリーパーや脇固めで手数を返し、試合中盤、ニーリフトを食らってこれ以上は受けられないなと感じたところで、

「この技でマットに眠りなさい!」

飛びつき腕ひしぎ一閃。

「ぐわぁぁぁぁぁぁぁ」吉田の悲鳴。館内は異様な興奮。

「決めて、南さん・・・」涙ながらに声援を送るファンも。

だが吉田もかなりのダメージを負ったが、力任せにふりほどいた。

「いいかげんに倒れろ!」吉田は南を左のグーで殴って倒したあと、痛む腕を少し気にしながらコーナー最上段に登りムーンサルト炸裂。天から降ってくる吉田。

「がは・・・っ」

ワン、ツゥ・・・

「返せぇぇぇぇぇぇぇ!」ハイブリッド南が絶叫。

カウント2.8でフォールを返す南、ドドドドドド。(重低音ストンピング)

館内はメインイベントのような大盛り上がり。

時間をかけて起き上がった南、必死に吉田に組み付く。吉田が力で押していって場所はリング中央・・・

今しかない。南はすばやく吉田の身体に飛びついて、この日2度目の飛びつき腕ひしぎ。

「ぐぁあああああー」

ウォオオオオオ!

館内は再びものすごい歓声に包まれた。

今度は完全に決まった。振りほどこうにも右腕に力が入らない。

―マイッタしなさい!、本当に折るわよ!。

これ以上は我慢できないと判断した吉田は井上レフェリーの手を叩きギブアップの意思表示。

「18分31秒、飛びつき腕ひしぎ逆十字で南利美の勝ち」

今野リングアナのアナウンスも大声援にかき消された。

先に起き上がったのは吉田龍子。右腕は動かせないが、体はまだまだ動ける状態。なのに負けてしまった。「過去の人」に負けてしまって、これで草薙さんのベルト挑戦の優先順位も下がってしまう・・・吉田は一礼して、憮然とした表情で右腕を押さえながら退場した。

ものすごいミナミコールの中、ゆっくりと起き上がった南が井上レフェリーに手を上げてもらう。さいたまスペシャルホールが爆発した。実力では追い越された5期生に食らいついて、まずかな可能性に賭けて、そして勝ってしまった南の戦いぶりに観衆は大声援を送った。この日のベストバウト。

「あーしんどかったわ。」

南は控室に戻ってくるや畳の上にぶっ倒れた。ハイブリッドがシューズの紐を解く。

―完璧な試合じゃないけど、お客さんの声援は嬉しかった、泣いてる人も何人かいた・・・もう少しだけ頑張ってみようかしら。

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セミ前は伊達遥、沢崎光対ジョーカーウーマン、チョチョカラスのタッグマッチ。4人の持ち味がよく出た熱戦が展開されたが、伊達の殺人ヒザ魚雷でチョチョカラスの動きが落ち、最後は沢崎がジャーマンでチョチョカラスを仕留めた。勝負タイム20分27秒。

そのころ医務室では、吉田がリングドクター羽山海の診察を受けていた。

「はい、どうしましたぁ?右腕がズキズキする。それは重い、重―い、靱帯損傷かもしれませんねぇ、すぐにお手当てしないと大変です。ではそこに横になってください、ふふ、もっとリラックスしてください・・」

ブスーッ。

「あ、うくっ」容赦のない注射。

「はい、痛み止め~。あとはサポーター巻いときますから、とりあえず今夜は右腕使わないで安静にしてて下さい~。明日になっても痛みが引かないようでしたらびょーいん行って下さいね~」

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セミは永沢舞 対 秋山美姫のシングルマッチ。永沢が終始優勢に試合を進め、最後は12分45秒、タイミングよく決まった脇固めで秋山からギブアップを奪う意外な結末となった。

そしてメイン、草薙みことのSPZ選手権に挑むのは上原今日子。SPZクライマックスは不本意な結果だったが草薙に最終戦で勝ったので挑戦者に名前が挙がった。だが先月はハードなリーグ戦の最終戦でボロボロの状態で足元をすくわれたのに対して、今回は草薙もきっちり対策を立ててきて、フロントスープレックスなどの投げ技で適当に押し込んでからサソリ固めで痛めつける。で、上原は絞め技極め技の対応が・・・

「う、ぐっ・・・」

振りほどくのに失敗した上原、あっけなくギブアップ。草薙がハードな投げ技を連発する前に終わったので場内はため息に包まれた。勝負タイム20分51秒。王者が3度目の防衛に成功。

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SPZ世界選手権

草薙みこと(20分51秒、サソリ固め)上原今日子

13代王者が3度目の防衛に成功。

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ファンは怪獣同士の激突、壮絶な試合を期待していたのに・・・

ふがいない試合をしたと感じた上原はメイン終了後控室で少し泣いた。

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全試合終了後選手たちはバスで横浜へ戻った。吉田龍子は右手が使えなかったので、

「社長、今日打ち上げ出られない、右手使えないからメシ・・・」

「じゃあ打ち上げは二手に分かれてやろう。みんなは井上さんと『よこ川』で食べてもらって、年少組(酒の飲めない3期生の19歳以下)は寿司食いに行こう。」

「寿司ですかっ」

「いや、南さんに腕やられた選手がいるときは寿司って前例があってね、左手でもつまめるでしょ」

「ぷっ」

過去にも犠牲者がいたのか・・・

こうして上原永沢吉田渡辺ハイブリッド、プラス小川の6選手は社長に連れられ、横浜某所の寿司店「能登」で高級寿司を食いまくった。「よこ川」は身内同然なのでけっこう安く上がるのだが、ここはそうはいかない。しかも年少組の選手は「ウニとイクラ!」などと高級なネタを乱発。社長の顔は青ざめた。

小川は社長の横でゆったりとホタテをつまんでいる。

「この団体に6年いて、社長に全国のいろんなとこ連れてかれて、いっぱしの食通になってしまったみたい」

「ふふふふ」左手でエビの握りをつまんでいた吉田が笑ってしまう。3人でうまい食い物談義となった。

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