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2007年3月26日 (月)

第68回 7年目2月 横浜決闘(後編)

前回のあらすじ

横浜に本拠地を持つお嬢様プロレス団体「SPZ」は7年目を迎え、多くのスター選手を擁する日本有数の女子プロレス団体に成長した。トップ争いは混沌としてきて天下は回りもち状態。そして3期生の上原今日子がついにSPZベルトを永沢舞から奪取したが、上原は大胆にも初防衛戦の相手に先輩の伊達遥を希望した。7年目2月、横浜スペシャルホールで決戦のカードが組まれ、セミファイナルが終わり、そしてメインイベントを迎える~

メインの上原今日子VS伊達遥のSPZ選手権。

まず挑戦者の伊達遥が青コーナー側から入場。今回は気合いが入ってたのか、鳳凰ガウンを身に纏わずTシャツだけ羽織って入場。

「ハルカ!ハルカ!ハルカ!ハルカ!」

場内ものすごいハルカコール。一期生のエース、団体の顔である。いつもどおりクールな表情でリングイン。

そして「disintegration」がかかり、赤コーナー側から上原今日子がベルトを肩にかけて入場。

「ウエハラ!ウエハラ!ウエハラ!ウエハラ!」

きょうはセミまでの6試合が長かったのでウォーミングアップも万全。身体が温まっていたので上原もTシャツだけ羽織ってリングイン。

「えー、この試合はスーパースターズプロレスリング・ゼットが認定する、えーSPZ世界ヘビー級選手権のタイトルマッチであることを、えー宣言する。えー2016年2月26日、SPZコミッショナー今野和弘、えー代読、京スポ新聞、若林太郎」      

認定証の読み上げのあと、

「青コーナー、宮崎県都城市出身、だてー、はるーかー」

ドワァァァァァァ!

紫の紙テープが乱舞。

「赤コーナー、SPZ世界選手権チャンピオン、上原ー、きょーこー」

ドォォォォォ!

赤の紙テープ乱舞。

「レフェリー、ピンクシューズ阪口」

午後21時31分、運命のゴング。

上原が勝って新時代の扉が開くのか、それとも伊達が1期生の意地を見せるのか、1万5千の観衆は固唾を呑んで見守った。

しかしー

上原の攻撃は散発的で、伊達の「耐久バリア」を崩せるレベルではなかった。逆に伊達の方がアームホイップやエルボーの連打で手数に勝り、優位に試合を進める。

ごすっ!

伊達は普段はあまりやらないヘッドバットまで繰り出して勝利への執念を見せ、15分過ぎに最初の殺人ヒザ魚雷発射。ドボドボと上原の腹部に膝が突き立てられる。

「ぐうう・・」

その場に立ち竦む上原、こんどは伊達、コーナーに素早く駆け上がってミサイルキックで空襲。

そしてふらふらと起き上がった上原に組み付いて2度目の殺人ヒザ魚雷。

「がはっ・・・」

腹筋の装甲を貫き、上原の戦意を根こそぎ砕いていく。マットに這いつくばり、のたうち回る上原。会場からは歓声と悲鳴が交錯する!

上原は長い時間をかけて起き上がりフラフラと伊達に組み付き、スリーパー。そのあとドロップキックで反撃するが、それまでだった。

受けきった伊達が、

3度目の殺人ヒザ魚雷。

「ぐふっ!・・・」

これで上原は吹っ飛んだ。もう痛いなんてもんじゃない。

試合を見ていた新咲や秋山沢崎といったセコンド陣も、うわ今日の伊達さんは怖い。と引きつった顔。

これで上原は動けなくなったが、なお、続くフォールをレスラーの本能だけでカウント2.9で返す。しかしー

伊達が上原に組み付いて、ヒザ魚雷に行くと見せかけてのブレーンバスター。

バァンッ!

昔のネズミ捕り器のバネを思わせるような、力のこもった高速での一撃。続くフォール、上原今日子、こんどは返せず試合終了。

「29分56秒、ブレーンバスターからの片エビ固めで、伊達遥の勝ち・・・」

22時1分、両者の決闘は幕を閉じた。

上原は「またしても」伊達に完膚なきまで叩きのめされてしまった。セコンドの新咲に背負われて退場する上原に大声援が送られた。

SPZ初代王者の伊達遥が16代王者に返り咲いた。このベルト、創設されてから4年弱なのにもう16代王者誕生という足腰の定まらないベルトである。

それだけトップグループ各人の力が拮抗していると言うことなのだろうか・・・今野社長はひとり慨嘆した。

歴代王者は以下の通り。(名前横の数字は防衛回数)

初代 伊達遥    0

2代目 草薙みこと 0

3代目 南利美   0

4代目 伊達遥  10

5代目 草薙みこと 1

6代目 伊達遥   1

7代目 南利美   0

8代目 吉田龍子  1

9代目 伊達遥   1

10代目 永沢舞  0

11代目 吉田龍子 0

12代目 伊達遥  0

13代目 草薙みこと4

14代目 永沢舞  0

15代目 上原今日子0

16代目 伊達遥

    ************************

試合後の控室。上原今日子は床の上に横たわっていた。

殺人ヒザ魚雷の乱発を受けた腹部が痛々しい。

「どうすりゃ、いいんだよ・・・」

若手のころから伊達さんとタッグを組んでいるうちに、伊達さんの強さに憧れ、そしていつしかその壁を越えてみたいとおもうようになった。幾年も練習を重ね、実力ではSPZのトップグループに入り「マットの覇者」とまで称されるに至った。それでもなお、伊達さんの壁は高い。

「勝てないよ、あの人には・・・」

「入るぞ・・・」

今野社長と小川ひかる、井上秘書が入ってきた。

「あ、小川さん、社長」

「あーまだ着替えてないのか、上原さん、さっさと着替えて『よこ川』行くぞ、はんせい会だ」

***************************

その30分後、戸塚の日本料理店「よこ川」で「はんせい会」が行われた。まじめな話し合いの様相を帯びていたので酒類は出ない。

「私は、もう限界なんでしょうか」

やっとベルトに手が届き、自分に自信が持てるようになった。しかしその自信は1ヶ月で打ち砕かれてしまった。

「伊達さんに、勝てそうにありません」

社長はノートパソコンを取り出して先ほどの試合映像を流した。序盤は基本技の攻防、手数に勝った伊達が頃合いを見て殺人ヒザ魚雷を繰り出している。あとは上原沈没へ一直線。

「小川さん、ぼく素人なので何かアドバイスでも」

「えっと・・・その前に、」

小川ひかるが珍しく上原の頭をごく軽くチョップで一撃。

「負けて悔しいのは分かりますけど、先輩の前で限界だなって言っちゃダメですよ。あなたにやられて泣いた人は何人もいるんですから」

そのあと小川はカバンから週刊ハッスルのバックナンバーを取り出した。SPZ横浜決戦の事前特集記事でSPZ歴代王者一覧が掲載されている。

「・・・これは」

「伊達さん、きょうでベルト巻いたのは6回目。ということは5回は負けて王座から転落してる。伊達さんの次のチャンピオンを見てみたら」

「草薙さん、草薙さん、南さん、永沢、草薙さん・・・」

「・・・見て何か気づきませんか?」

「・・・あっ」

「南さんのは関節が極まっちゃったから別として、投げ技を何も考えずにポンポン出してくる選手に分が良くないと思いますよ。伊達さんとやる場合、考える前にとにかく動かないと」

「そうですか・・・次、頑張ります」

こうして上原今日子の「1ヶ月だけの頂点」は終わった。

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コメント

 む、伊達の勝利か。
やはり・・・という気はします。

 それにしても王座移動多いですね。
伊達は圧倒的な強さを発揮する反面、やたらと脆い時がありますから。

 

N様こんばんわ。
しかしこれで上原さんに「元SPZ王者」という肩書きをなんとかつけることができました。
しかし王座移動多いと信頼度80キープのために会話しないといかんので・・・

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