第72回 8年目5月 永沢舞「やったね!」
8年目5月。
今野社長の胸に「引退後の選手の働き口を確保しておきたいから」という思いがあり、大阪阿部野橋にグッズショップ「SPZフィーバー」3号店を出店。あとは延び延びになっていたAACの引き抜き返しを1億2千万円をつぎ込んで行った。
5月シリーズはSPZ所属選手フルメンバーが巡業参加、そして外国人も6名参戦とあって、22名での大所帯サーキットとなった。カードを考えるのも一苦労。地方大会はメインやセミで、軍団構成をもとにタッグマッチや6人タッグマッチを並べてゆけばよいが、1万人規模以上の大会場では「ひねり」を利かせたカード編成をしなければ常連ファンが来てくれない。
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第4戦名古屋大会、第4試合でハイブリッド南対チョチョカラス。激戦の末、ハイブリッドがネオ・サザンクロスロックでAACのトップにギブアップ勝ち。わずか2年でトップレスラーと肩を並べるに至った。
「まだまだ、膝蹴り女とみこみこを倒さないと・・・」
で、セミ前が永沢舞対「膝蹴り女」伊達遥の対決。こまかいことを何も考えずに投げ技を乱発した永沢が優位に進め、伊達はヒザ魚雷を発射するどころでなく防戦一方。
「くっ!SPZキックだ!」
がすっ!
伊達の渾身のハイキックが永沢の頭を直撃。
「いったーい。じゃあこっちも、ネコキーック、とぉー!」
ばきっ!
重さはないがスピードのあるハイキックが伊達の顔面を直撃。伊達は鼻から血を滴らせながら吹っ飛んだ。
・ ・・このコ、こんなことができた・・・の・・?
自分の得意技をやり返された伊達は呆然。
「いまがチャ-ンス!」
背後から腕をとってクロスさせてJOサイクロン!伊達はなすすべなくカウント3を聞いた。
セミファイナルは「ドリームカード」吉田龍子、上原今日子対草薙みこと、南利美のタッグマッチ。大物選手4人の激突に場内は盛り上がった。
「リミさん!そっち!」
草薙と南のダブルラリアットが吉田を捕える。代わった上原にも投げまくりの草薙劇場を展開。しかし長時間、強者2人と渡り合って疲れた草薙が南にスイッチすると攻守ところを変える。しかし南も飛びつき腕ひしぎで再度流れを変える。最後は草薙と吉田が一騎打ちの様相を呈してきた。
「うりゃああああっ」
吉田のプラズマサンダーボムが草薙をマットにたたきつける。カウント2.8で返す草薙。ここで30分時間切れのゴング。
メインはナスターシャ・ハン対新咲祐希子のEWA選手権。どうみても「集客ねらいと、トップまであと一歩の若手に経験をつませる」カード。
新咲も良く攻めたのだが、
「骨がきしむ音を聞かせてちょうだい・・・」
STFが長時間決まり、新咲の体力をごっそり奪ってゆく。しかし新咲もフェイスクラッシャーで持ち直すが、最後は相手の動きを良く見ていたナスターシャが背面トペで押しつぶしてのフォール勝ちをスコア。EWA王者が防衛に成功。
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翌日の大阪城大会、メインは吉田、新咲のSPZタッグ王座にナスターシャ・ハン、ドリュー・クライのEWAトップ2が挑むカード。
「ゆっこ、きょうは本当に負けらんないよ、まけたらうちのタッグベルトが海外流出だから」
「はいっ、頑張ります」
自団体選手同士での奪い合いとは別の緊張感がある。
「いくぞっ!フィニッシュはこれだっ!」
吉田の「殺人」スプラッシュマウンテンがドリュークライの意識を闇に落とす。続くフォールはナスターシャのカットに阻まれた。
「ユキコ!おまえが決めろ!先輩命令だ!」
新咲とタッチして吉田はナスターシャを「ぶちかまし」で場外に落として、さらに追撃。教科書どおりの分断作戦。
あとは新咲がリング上に転がった状態のマグロ・・・いや、ドリュー・クライをフェイスクラッシャーで料理するだけだった。王者組が4回目の防衛に成功。
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SPZタッグ選手権(60分1本勝負)
吉田龍子、○新咲祐希子(30分くらい、フェイスクラッシャーからの片エビ固め)ナスターシャ・ハン、ドリュー・クライ×
王者組が4度目の防衛に成功
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その翌日、広島の若鯉球場大会。
「埋まらなかった・・・沢崎さんどうしてくれるのよ」冗談交じりに落胆する今野社長。3万人収容のスタジアム、観衆23000人、8割弱の入り。採算ラインはクリアしたが外野席に空席が見られるのはやはり寂しい。メインは吉田龍子対永沢舞のSPZ選手権が組まれた。
電波ソング「Change my style」に乗って永沢が長い花道を入場。そのあと攻撃的な「赤い破片」が流れ、吉田が入場。一見イロモノレスラーに見える永沢だが、吉田の破天荒パワーに対抗するのは永沢の無神経、いや、無心で闘うスタイルが有効だと社長は考えた。
試合の方はやはり、永沢がノーザンやフロントスープレックスの乱打乱打で追い込み、吉田に波状攻撃をさせなかった。勢いに乗る永沢はあまり見せないムーンサルトプレスまでを繰り出した。
「ぐはっ・・・」
吉田のような重さはないが、身軽さゆえのスピードがある。これはカウント2.8でクリアした吉田、
「うぉあーー」
最後の力を振り絞ってラリアット。しかし食らった永沢は吹っ飛ばされながらも冷静だった。
・・・龍子さんかなり弱ってる、よし勝てる。
体勢を立て直して、回り込んで、とどめのJOサイクロン炸裂。吉田は返す事ができなかった。
「やったね!!」
勝負タイム22分38秒、第17代王者吉田龍子が2回目の防衛に失敗、永沢舞が18代王者に輝く。くどいようだがこのベルト、創設してからまだ4年2ヶ月である。伊達のV10のあとは各トップ選手の腰を行ったり来たりである。永沢も10代、14代と続いて3度目の戴冠である。
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SPZ世界選手権(60分1本勝負)
○永沢舞(22分38秒、JOサイクロン)吉田龍子×
第17代王者が2度目の防衛に失敗、永沢舞が第18代王者となる
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第7戦福岡ボートメッセ大会、メインはナスターシャ・ハン対チョチョカラスのAAC選手権。外人同士のタイトル戦となった。ふだんはトップ外人として吉田永沢草薙といった日本人選手と戦うことの多い両者だが、こんかいは最強外人の座とAACベルトをかけてぶつかりあった。ナスターシャがネチネチとサンボの秘術でチョチョカラスを追い込めば、チョチョカラスも見事なフォームのムーンサルトを炸裂させる。しかし最後は
「ウフフフ・・・これで終わり・・」
ナスターシャが必殺のSTFでチョチョカラスを下し防衛に成功。
そしてシリーズ最終戦はSPZの本拠地、新横浜の横スペ大会へ。なんとこの大会ではメモリアルマッチが4連発という豪華編成である。
(長くなるので続きます)
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コメント
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永沢再戴冠!
うむむ・・・確かに移動が激しい。
フォローは大変ですが、面白さはありますね。
うちはなぜか絶対王者が誕生しがちです。
投稿: N | 2007年3月30日 (金) 00時39分
N様こんにちは。
WASは8年目くらいがいちばん面白いです。
メンツが充実してきて。
うちの団体は絶対王者が出てくるまで
あともう少しかかります・・・・
投稿: konno | 2007年3月30日 (金) 11時03分