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2007年4月30日 (月)

第102回 主力軒並み欠場

9年目9月

過酷なリーグ戦の影響か、バタバタと伊達遥、永沢舞、ハイブリッド南が負傷。伊達には同時に写真集のオファーが来たので受ける。久々の伊達遥サード写真集「SONIC」が発売された。

さらに富沢レイにも写真集のオファーが来たので受ける。かくて富沢レイのサード写真集「SHIOSAI」が発売された。

そして絶対王者・吉田龍子にも写真集のオファー。今野社長は笑うしかなかった。

「写真集?んー、まあ、いいよ・・・でも、売れなくても知らないよ」

かくて吉田龍子ファースト写真集「HAYABUSA」が発売。ファンの間では騒然となったらしい。リング上では容赦なく相手を叩き潰すあの吉田龍子が写真集。

「どしよっか、主力選手全滅やん。バカンスにでも行きましょか」

「今いる選手たちで興行を打つのがよいかと存じます。若手には実戦経験をつませるのが(以下略)」井上秘書の的確なアドヴァイスが。

9月シリーズ「Like a melody」がスタート。主力選手が軒並み欠場しているので外国人選手豪華参戦でカバーした。会場の入口にはこんな貼り紙が。

「今シリーズ、吉田龍子選手、伊達遥選手、富沢レイ選手は写真集撮影のため、またハイブリッド南選手は右足首負傷のため、永沢舞選手は右肘負傷のため欠場いたします。各選手のファイトを期待されていたファンの皆様には大変申し訳ございませんが何卒御諒承のほどお願い申し上げます SPZ社長 今野和弘」

初戦鹿児島大会のメインで組まれたのがナスターシャ・ハン対スイレン草薙のEWA選手権。スイレン草薙に世界トップレベルの選手を当てる試練。やはり一方的に攻められて、スイレンは一度も投げることすらできずに、頃合いを見たナスターシャがドラゴンスリーパー。スイレンの身体からぐったりと力が抜けてゆく。

「本堂さん、ギブアップした方がいいと思うんだけど」

レフェリー井上霧子が耳打ちする。

「あ・・・が・・・・っ」

この試合はテレビ収録されていて数日後には全国のお茶の間に流れる。シングルタイトル戦でこんなにあっさり負けたくない。スイレンは砕けそうな意識を保とうとしたが意識が漂白されてしまった。

「ナスターシャ、ストップするわよ、いいわね」

「マアイイカラ」そういってナスターシャは自らドラゴンスリーパーを解いて、意識のないスイレンを軽くキャプチュードで投げつけてカウント3を奪った。リング上に横たわったまま、人形のように動かないスイレン。場内は騒然となった。

大分大会(満員にできなかった)のメインはEWAタッグ戦。ロレン・ニールセン、ドリュークライの王者組に挑むのはチョチョカラス、デスピナ・リブレ組のAAC勢。自前の選手がメインに出ない、恥知らずなカード編成。主力選手を当ててもし自前の選手がEWAタッグのベルトを取ってしまうと、あとあと防衛戦に呼ばれたりとかで厄介だと今野社長は考えた。試合は25分の激戦の末チョチョカラスがムーンサルトでロレンを撃破し、デスピナとともにEWAタッグ王者となった。

九州シリーズは毎度の事ながら動員に苦戦する。SPZの知名度が業界最大手の新日本女子に比べて低いエリアで、いいカードを組んでも5000人の会場が埋まるかどうかは分からない。

********************************

最終戦はさいたまドーム大会だが、主力が軒並み欠場した影響で9割弱の入りで満員にもならなかった。

「うぉーーー」

収支への影響を危惧してうめき声を上げる今野社長、そのあと立ち直り、

「小川さん、さいたまドームのメインだよメイン、頑張ってね」と小川ひかるに声をかけた。

第1試合はガイア小早川対スターライト相羽。新人同士の対戦。デビューはガイアが3ヵ月先だが、勝率はスターライトのほうが高い。しかしきょうはガイアのソバットがスターライトのみぞおちに入ってしまい怯んだところをチョップで倒して強引に3カウントを奪ってガイア小早川が勝利。

第2試合はマイトス香澄対EWAの新星、アンナ・クロフォード。やはり力の差は歴然で、鋭い蹴りで押したアンナがマイトス香澄を6分強で一蹴。

第3試合はEWA勢同士の外人対決。ロレン・ニールセン対ドリュークライ。それなりのレスリングが展開されるのだが、ファンがあまり感情移入しないため歓声はあまり起こらない。主力が抜けるとこんなところにも粗さが出て、ひねりをきかせたカード編成ができない・・・今野社長は歯噛みした。試合は12分くらいでドリューが蹴りで快勝した。ここで休憩。

休憩後は秋山沢崎がデスピナ、チョチョカラスと対戦。一期生タッグもかなり動きが落ちているが、それでもAAC勢と26分52秒の熱い戦いを展開。最後はチョチョカラスの裏拳に秋山が沈んだ。

セミファイナルはスイレン草薙、上原今日子のタッグがナスターシャ・ハン、ユーリスミルノフのEWA勢と激突。きょうはナスターシャ・ハン大暴れ。最後は上原をカカト落としからキャプチュードで沈めた。

メインはSPZタッグ選手権、草薙みこと、小川ひかるの王者組に挑むのは新咲祐希子、渡辺智美の即席チーム。王者組はともかく挑戦者組は「いかにも適当に残り物の中から組み合わせました」色が濃い。だが今日の新咲カレー女は異様に強かった。草薙相手でも一歩も引かない戦いぶりを見せる。くるしまぎれに小川にスイッチしたら新咲にただやられるだけ。

しかし草薙も試合巧者、試合後半に再度リングインしてからはコブラツイスト、ドラゴンスリーパーで新咲をぐったりさせてから、必殺の草薙流兜落とし一閃。新咲からカウント3を奪った。勝負タイム30分32秒。王者組が3回目の防衛に成功。

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SPZタッグ選手権

○草薙みこと 小川ひかる(30分32秒、草薙流兜落としからの片エビ固め)新咲祐希子× 渡辺智美

王者組が3度目の防衛に成功

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2007年4月29日 (日)

第101回 SPZを見に行こうよ

れんさい100回目記念

SPZを見に行こうよ

「渕崎さん渕崎さん、あしたの横スペ、プロレスのチケットが2枚手に入ったんだけど」

横浜某所の印刷会社に務めるサラリーマン、久保勝彦は先輩の女主任、渕崎泉をプロレス観戦に誘った。渕崎は色見本のDICをめくりながら問うた。

「えー、どこの団体」

「SPZ」

「あー、あの伊達草薙の団体ねえ、うーん、忙しいしな~、あたしカスポンのファンなんだけど。」

渕崎もプロレスファンだがどちらかといえば特定の男子レスラーを応援しているのでSPZには行ったことがない。

「行きましょうよ、レキドさんの校正は月曜日に大残業すればいいですし」

「そうね、行ってみようかしら、プロレス見るの久しぶりだし」

こうして翌日の土曜日、久保と渕崎はプロレスを見に横スペへ向かった。プロレス観戦の第一歩は会場の最寄り駅から始まる。新横浜の駅で落ち合って、5分ほど歩くと横浜スペシャルホール。きょうは5時試合開始なので4時過ぎに正面入口をくぐり、パンフレットを受け取る。この団体はプログラムは売らずに無料配布する。

「へえ、プログラムってたいてい1000円が相場なのにね、サービスいいんだねえ」

チケットに指定されたセンター席へ行く前に、グッズ売り場を瞥見した。

「小川ひかるTシャツ、小川ひかるTシャツ、サマーバージョンが2000円、お色はホワイトとブルーの2色あります。どうぞご利用くださーい」

「この団体グッズ販売すごいんですよ、あそこで声を張り上げてるの社長です。」

「ふーん、そうなの~」渕崎も非日常の雰囲気に心躍っていた。結局、久保は「上原今日子パーカー(3,500円)」を一着購入した。

売店でウーロン茶を買って、指定されたセンター席に向かう。入口で再度チケットのチェックを受け、ホール内に入る。試合開始まで40分ほど間があったのでまだ館内は半分程度しか埋まっていない。

「どれどれ、SPZってどんな団体なのかな」

渕崎はプログラムの表紙をめくる。

本日はご来場いただきましてまことにありがとうございます。おかげさまでSPZはファンの皆様から格別なるご支援を賜り、旗揚げ9年目を迎えることができました。心より御礼申し上げます。さて、「2017SPZクライマックス」では恒例の団体所属の人気選手8名によるシングル総当りリーグ戦を開催いたします。人気実力を兼ね備えた8選手がおりなす戦い、今回も本気とまごころのプロレスを皆様にお届けできるものと思います。また、惜しくもリーグ戦に出られなかった選手および若手選手、外国人選手も、リーグ戦に勝るとも劣らない充実したプロレスをお届けしてゆく所存です。どうぞ最後まで暖かいご声援のほど宜しくお願い申し上げます。

株式会社 スーパースターズプロレスリング・ゼット

代表取締役社長 今野和弘

___________________________

本日はSPZプロレスにご来場いただきまして、まことにありがとうございます。早いもので、私が旗揚げ戦でプロレスの世界に足を踏み入れてから8年の歳月が流れました。

 本日ご来場のお客様の中には、旗揚げ直後からSPZを応援してくださった方もいらっしゃるでしょうし、もしかしたら反対に私どものファイトを一度もご覧になったこともないという方もいらっしゃるのではないでしょうか。

そんなすべてのお客様の心に、プロレスの素晴らしさが伝わる大会になることを祈りつつ、私も精一杯のファイトをしてまいりたいと思っておりますので、きょうは最後までお楽しみいただければ幸いです。

スーパースターズプロレスリング・ゼット 選手会長 小川ひかる

渕崎泉はその後のプログラムの選手紹介のページを丹念に見ていった。そのあと選手の移動中のショット集、今野社長のSPZ舞台裏情報コラムをはさんで、あとは10ページほど広告。プログラムの制作費はこれでまかなっているらしい「問題解決に最適なビジネスソリューション エスピーコンピュータテクノロジー」といったグループ会社の宣伝から「和食処 よこ川」「Maid Cafe あばしり」といったSPZと関係の深い会社が広告に名を連ねている。

ここまで読み終わったところで、場内が暗転し・・・

「カン、カン、カン、カン・・・」

今野社長がリングに上がり、本日のカードを読み上げる。リーグ戦の行方は決したもののそれでもシングルの好カードが4試合読み上げられたので沸いた。

「久保ちゃん、この団体でいま一番強いのって誰」

「うーんそうだね、吉田龍子さんだと思いますよ、去年までは伊達さん草薙さんだったんだけど、吉田さんがベルト取ってエースになったみたい」

第1試合の小川ひかる対渡辺智美。

館内に小川のテーマ「マイティ・ウイング」が流れるや大声援。

「第1試合から沸くんだね、この団体」

「ええ、いつもなら淡々と始まるんですけど、きょうは1期生の小川さんが最初に出るから沸いたみたいです。小川さんは地味なレスラーだけど、人当たりがいいから人気あるし、社長の愛人って噂も流れてますから」

「あの選手が、社長とデキてるの?」

「旗揚げの頃から社長が小川さんにゾッコンってうわさです。でも写真週刊誌とかには決定的な場面を押さえられてないですから、うまくやってるのかもしれないし、噂だけなのかも知れないです」

そうこう裏話をしているうちに

    ・20分経過、20分経過。

「凄いね、第1試合から20分越えたよ」

「小川さん、やられるのが売りだから、同じレベルの相手だと長くなる試合が多いみたいです」

24分4秒の激闘。最後は小川がSTFで痛めつけたあと、ネックブリーカーで仕留めた。第1試合からいきなり濃密なプロレスに場内拍手。

「いいね、この団体。第1試合ですっかりプロレス会場って雰囲気をちゃんとつくってるよ」

第2試合は富沢レイ、ガイア小早川対マイトス香澄、スターライト相羽。

このメンツではひとり大先輩の富沢が試合をリード。最後はダブルラリアットでマイトスを撃沈。勝負タイム12分23秒。

「やっぱり第2試合ではイキのいい若手選手を使うんだね。男女問わずできるところは違うね~」

第3試合は秋山沢崎の1期生タッグにEWAの新鋭、アンナ・クロフォードとおなじみのユーリ・スミルノフが対決。

「あの二人、元タッグチャンピオンだから人気が凄いんですよ、今は後輩に追い抜かれて、きょうは前半での出番だけど、相手の外人も強いからどっち勝つかわかんないと思います」

「そうなんだ」

8回連続で出ていたSPZクライマックスに出られなかった悔しさをぶつける秋山沢崎。EWA勢のパワーに苦しんだ2人だったが、合体パイルドライバーでアンナの動きを止めて、最後は17分59秒、秋山が伝家の宝刀ドラゴンカベルナリアでギブアップ勝ち。1期生タッグの奮闘に場内は大歓声。この試合後休憩。

「ふあー、面白かった。お客さんのノリが凄いねえ」

「長くやってる選手には固定ファンがついてますから。」

「ふー、久々にいいプロレス見た。まだ後4試合、ボリュームある大会だねえ」

「きょうは後半シングルマッチ4試合ですから重たいですよ、カクゴして見てください」

15分の休憩後、ふたたびゴングが叩かれ後半が開始。新咲のテーマがかかるや館内は盛り上がった。

草薙○(8点、ノーザンライトスープレックス22.07)新咲(6点)

休憩後にリーグ戦最終日4試合が組まれている。草薙対新咲、手数が勝ったのは新咲。草薙が激闘続きのリーグ戦でもうボロボロなのか、いつもの草薙劇場に持ち込めない。館内は悲痛なまでのミコトコール。

「みこと、みこと、みこと、みこと・・・」

「あの草薙って選手、ただの巫女さんギミックじゃないんだねえ。」

「古武術を小さい頃からやっていたから、去年あたりまではこの団体で一番強かったんですよ」

しかし草薙、勝負をかけた新咲のフェイスクラッシャーを食らいながらも場外へ逃げて追撃してきた新咲にドラゴンスリーパーというなりふりかまわない手を使い、リング内へ戻るや渾身のノーザンで新咲からフォール勝ちをスコア。

「最後のノーザンはキレイに入ってたねえ。試合時間も20分越えたし内容がいいね、この団体」

「まあ、元チャンピオンの草薙さんですから盛り上がりますよ、次のセミ前も因縁の対決だから熱くなりますよ、フフフフフ」

上原○(2点、フェイスクラッシャーからの片エビ固め 23.37)伊達(6点)

disintegration」が館内に流れ、Tシャツを着た上原が走って入場。

「キョーコ!勝てよ~!」久保がそれまではおとなしく観戦していたのだがここで声援を送る。上原今日子のファンらしい。

ついで「宇宙の皇女」がかかり、伊達遥入場。

「伊達さ~ん!」伊達ファンは女性の支持者が多い。

全敗だけは避けたいと考えたのか、上原は伊達のバリアを崩さんと襲い掛かっていった。

「上原さんは伊達さんの2期後輩なんですけど、以前はタッグを組んでいたんですよ。だけど上原さんが「組むより闘いたい」と言い出して、コンビ解消して闘うようになったんですけど、伊達さんもめちゃくちゃ強いから上原さんはまだ勝ったことがないんですよ」

「・・・そうなの」

場内はウエハラコールが沸き起こる。

無心で攻めた上原、23分の激闘の末、3度目のフェイスクラッシャーでついに伊達から初勝利をもぎとった。場内は大熱狂。

「・・・泣いてる人もいるよ、この団体すごいねえ、あれ、久保ちゃん?」

「いやああー、今日来れて良かった。上原さんが伊達さんにようやく勝ったの生で見れた。もーう満足です。後の2試合はおまけみたいなものです」

セミファイナルはハイブリッド南が登場。

「スイレンって選手も巫女さんスタイルなのねえ」

「山形県の奥地にそういう古武術やってるシューキョーがあるみたいで、草薙みことを追って去年入門した有望な若手らしいです」

ハイブリッド○(10点、踵落としからの片エビ固め 12.24)スイレン(2点)

ハイブリッドが手堅く攻めていって、最後は強烈な踵落としで3カウント奪取。これでハイブリッドの準優勝が確定。「横浜中華街お食事券」をゲット。スイレンは全敗こそしなかったが、先輩たちの厚い壁にはじき返された。

「お、メインイベント。なにあの選手、ボディスーツにネコミミしっぽ?」

「いや、外見に惑わされてはいけないです。投げ技なら日本でも女子の中では一番だと思います。あとはこの選手、何も考えずに試合をするタイプですからあの吉田さんに勝てる可能性があるとしたら永沢さんしかいないでしょう」

吉田○(14点、スプラッシュマウンテン 13.06)永沢(8点)

永沢もJOサイクロンを繰り出すなど健闘したが、吉田のデンジャラスキックで動きが止まってしまい、最後はスプラッシュマウンテンで永沢の意識を断ち切ってカウント3奪取。全勝優勝で有終の美。堂々の2連覇。

「短いけど、おもしろかったよねえ、JOサイクロンなんて久々に見たよ、最後のスプラッシュマウンテンは見ごたえあったねえ」

そしてリング上では表彰式。優勝した吉田には賞状と金一封、副賞としてDVDレコーダーが贈られた。去年は優勝決定戦がもつれた影響で表彰式は省略されたが吉田、今年はにっこりトロフィーを抱いた。

「いやー、久々にプロレスを生で見たけど、おもしろかったよねえ。前座からメインまでいい試合が続いて、次も見に行きたいと思うよ」

全試合が終わったのが午後8時過ぎ、久保と渕崎は飲み屋に流れ、夜遅くまでプロレスについて語り合ったのであった。

2007年4月27日 (金)

第100回 9年目SPZクライマックス後半戦

これまでのあらすじ

横浜戸塚に本拠地を持つお嬢様プロレス団体「SPZ」は毎年8月にスター選手揃い踏みのシングルリーグ戦「SPZクライマックス」を開催する。ファンやマスコミの注目度の高いこのシリーズ、リーグ戦3試合を終えて全勝をキープしたのはSPZチャンピオンの吉田龍子と、あの関節のヴィーナス南利美の妹、ハイブリッド南の2名であった・・・

第5戦、大阪大会。お暑い中さらに熱い死闘が。

伊達○(4点、殺人ヒザ魚雷からの片エビ固め、19.51)草薙(2点)

「きょうは伊達さんですか・・・怖いけど楽しみです。」

控室に貼られた手書きの星取表を見て草薙は呟いた。

SPZ選手権やSPZクライマックスで過去幾度も死闘を演じ続けてきた両者の激突。まさにSPZの歴史そのものといった激闘が展開される。

しかし最近の伊達は積極的に仕掛ける。15分過ぎにラッシュをかける。

「この試合勝たせてもらいます」

がすっ!

SPZキックが草薙の側頭部をとらえる。ダウンさせられ、フラフラと起き上がって来たところを組み付いていってー

「ぐ・・・ごほっ」

殺人ヒザ魚雷!

腹を押さえてもがき苦しむ草薙、ようやく立ち上がってきたところに伊達がダッシュして一気に間合いを詰めてきた。

ラリアット! そして吹っ飛ばされる草薙。伊達にとってもこの技は南を破って初代SPZ王者に輝いた思い出の技である。まさに勝機と見るやすさまじい波状攻撃。

これはカウント2.5で返した草薙だったが、伊達は素早く組み付いて、再度

殺人ヒザ魚雷。

「がはああ・・・っ」

草薙は過去何度もこの技でマットに這いつくばってきたが、きょうもこれで悶絶し3カウントを奪われた。夏女、早くも3敗目を喫し、優勝どころか負け越しの危機。

小川の肩を借りて控室に転がり込んだ草薙、試合後のコメントはさっぱりとしていた。

「うう・・やっぱり伊達さんは凄いです。」

スイレン○(2点、ドラゴンスリーパー 18.44)上原(0点)

このリーグ戦、白星配給係かと思われたスイレン、しかし今日は上原に蹴られて投げられても最後まで諦めなかった。草薙流兜落としを2発決めて上原がぐらついたところに、リング中央でドラゴンスリーパーを決めた。たまらず上原ギブアップ。

「上原さんも、伊達さんと同様に絞め技極め技の対応がアレですからスイレンさんが勝てる可能性はゼロじゃないですよ~」テレビ解説者保科の指摘どおり。そのわずかな可能性に賭けたスイレンがリーグ戦初勝利。8期生にも負けて4連敗を喫した上原は呆然。

永沢○(6点、背面トペからの体固め14.54)新咲(4点)

投げる永沢、飛び回る新咲、しかし絶対的な大技を持っている永沢がJOサイクロンで大ダメージを与え、最後はロープに振られたところをうまく返し技の背面トペで押しつぶして3カウント奪取。うまく3勝目をゲットした。

吉田○(8点、ステップキックからの片エビ固め10.43)ハイブリッド(6点)

全勝同士の対決。

「極め技には気をつけるよ」昨年負けた相手なので吉田は序盤からエルボーで流血させ、ダウンさせた後早々とムーンサルトを放つなどエンジン全開。

そのあともラリアット、重爆ニーリフト、ギロチンドロップ、ステップキックと怒涛の猛攻でハイブリッドを一気に仕留めた。シバキアイを期待していたファンは唖然としたが、それでも吉田の強さに拍手を送った。

*************************

第6戦は博多大会。

草薙○(4点、タイガードライバー 14.48)上原(0点)

思うように星が上がっていない両者の対戦。草薙が投げ技を乱発して追い込むが上原もニールキックで応戦。最後はどうにか草薙が上原をタイガードライバーで振り切って2勝目。上原5連敗で予選会決定。

ハイブリッド○(8点、ヒップアタックらの片エビ固め 16.21)新咲(4点)

6期生同士の対決。グラウンドで圧倒し、終始押したハイブリッド。しかし後半は新咲がみごとなジャーマンで猛反撃。しかし最後はハイブリッドが「意外性の技」ヒップアタックで新咲をどうにか振り切った。

伊達○(6点、殺人ヒザ魚雷からの片エビ固め15.20)永沢(6点)

1期生VS4期生の実力者同士の対戦。地元凱旋の永沢が張り切って入場。試合のほうは、なかなか伊達の「バリア」を突き崩せなかった永沢だが中盤のノーザン2連発。これで流れに乗るかと思いきや、伊達、組み付いて殺人ヒザ魚雷。

「がはっ・・・」

悪魔的破壊力にのたうち苦しむ永沢。しかし今シリーズの伊達は勝機と見るや容赦がない。

「この試合勝たせてもらいます」

ここでSPZキック炸裂。どうにかサードロープへ足を延ばしてフォールを防いだ永沢だったが、起き上がったところを再度の殺人ヒザ魚雷。

「あ、がっ・・・」

これで永沢は悶絶、3カウントを聞いた。伊達は数年前のような圧倒的な力はなくなってきたが、最近は機を見るや敏。試合運びが剣の達人のような円熟味を帯びてきた。

吉田○(10点、スプラッシュマウンテン 11.51)スイレン(2点)

吉田の貫録勝ち。スイレンも草薙流兜落としを放つなど健闘したが・・・吉田龍子が全勝をキープ。ハイブリッド南が1敗で追う展開。

************************

第7戦は名古屋大会。

新咲○(6点、キャプチュード 17.37)上原(0点)

「きょうは何が何でも勝つ!」

歯車が狂ったまま修正のきかない上原。必死で後輩の新咲に向かっていき、1勝をもぎとろうとするが、それが空回り。かえって新咲のほうが的確に技を決める。逆転をかけたニールキックもカウント2.5でクリアされ、新咲のキャプチュードでフォール負け。

「なぜなんだ、ちくしょう」上原は控室でガックリ。

永沢○(8点、パワースラム 10.15)スイレン(2点)

スープレックスマスター永沢が貫録勝ち。スイレンも予選会行きが決定。

草薙○(6点、タイガースープレックス 15.32)ハイブリッド(8点)

ーここは何としても勝って、あしたの横浜に望みをつなげるしかないわ。

優勝の可能性を残すためには負けられないハイブリッド南、しかし草薙もいままでSPZを背負ってきた意地とプライドでハイブリッドを投げまくる。

「全力で行きます」

最後は渾身のタイガースープレックスが決まり、ハイブリッドの優勝可能性をほぼ消した。

吉田○(12点、スプラッシュマウンテン 14.06)伊達(6点)

メインイベント開始前の花道奥、

「伊達さ~ん、どんな手を使ってもいいから勝って~、千秋楽待たずに優勝決まるだなんて、勘弁して、勝ったら手羽先でも味噌煮込みでも甘口抹茶スパでもおごるから」

社長が激励。あしたの横スペ大会の「盛り上がりと当日券の売れ行き」を心配しての言動である。この試合で吉田が勝つか引き分ければその時点で吉田の優勝が決まってしまう。

「最後のは・・・勘弁して・・・」

こういい残して伊達は花道へ向かった。

だが、伊達でも絶対王者吉田を崩せない。終始パワーで圧倒した吉田がスプラッシュマウンテンで伊達を退けた。

「やれやれ、優勝したよ」最終戦を待たずして吉田が2連覇を決めた。

***************************

最終戦はSPZの本拠地、横スペ大会。リーグ戦が消化試合でも超満員の盛況となった。

(筆者より:きょうで100回目の連載です。疲れました。だがまだまだ続きます)

2007年4月26日 (木)

第99回 9年目夏・SPZクライマックス 草薙みことの挑戦

これまでのあらすじ:横浜に本拠地自社ビルを構えるお嬢様プロレス団体「SPZ」は創立9年目を迎え、世界でも有数の人気団体となったが、団体の苦しい時期を支えた一期生二期生は選手としての峠を越え、引退する者も出始めた。いまやタイトル戦線の主役は吉田龍子をはじめとする若手にとってかわり、1期生と一緒に椅子ならべをしたこともある今野社長は頭を抱える日々が続く。

しかし、何があろうと月日は流れてく。9年目8月、今年もSPZの熱い夏のシングルリーグ戦「SPZクライマックス」が始まる。

8月3日の夜9時、閉店後のメイド喫茶「あばしり」を借り切って記者会見が行われた。出場者は以下の8名。

★最強巫女伝説 元SPZ王者★

草薙みこと(22) 第7回・第6回・第5回大会優勝、7年連続7回目の出場

(キッと記者陣を見据えて)「全力で行きます」

★殺人ヒザ魚雷 前SPZ王者★

伊達遥(23)第4回大会優勝 4年連続8回目の出場

 (オレンジジュースをずずっ・・・とすすった後)「えっと・・あの・・・その・・・がんばります」

★赤い破壊神 現SPZ王者★

吉田龍子(19)前回(第8回大会)優勝、4年連続4回目の出場

 (レモンティーをすすりながらいつものぶっきら棒な口調で)「全員倒して、優勝する、それだけ。」

★福岡が生んだスープレックスマスター 元SPZ王者★

永沢舞(20)4年連続4回目の出場

 (にこやかな表情で)「応援していただいているファンの皆さんの期待に応えられるよう、頑張ります」

★マットの覇者 元SPZ王者★

上原今日子(21)5年連続5回目の出場

(他の選手が話しているときはアイスティーをすすっていたが、振られると一転マジな口調で)「伊達さんを潰す。それしか考えてない」

★キラーマシーン★

ハイブリッド南(18)2年連続2回目の出場。

(ぼそりと興味なさそうに)「完璧な闘いを見せるわ」

以下は予選会勝ち上がり組。

★若手一番星★

新咲祐希子(18)初出場

「ケガで出られなかった去年の悔しさをぶつけます。目標は優勝。賞金でおいしいものを食べに行きます」

★超新星★

スイレン草薙(16)初出場

「優勝するつもりで行きます。」

そして例によってマスコミ各社が予想記事。

今年は吉田龍子が実力面で頭一つ抜きん出ているので去年のようなもつれることはなく、吉田が全勝で優勝するだろうというものであった。

で、京スポ新聞はいつものように草薙みことの直前合宿に同行。特訓というより尊の里帰りを兼ねたネタ作りの様相が濃い。

最強巫女伝説、超龍神に挑む 草薙みこと最終調整 

「SPZクライマックスまであと1週間と迫った8月上旬、第5回大会から3回連続でSPZクライマックス優勝を続けたが、前回は新鋭の吉田龍子に優勝をさらわれ3位に終わった「夏女」草薙みことが例年通りに山形県の奥地、古寺温泉で最終調整を行った。

パートナーの小川ひかると朝4時に起きて山中を6時間ゆっくり「もう無理がきかなくなっているので」歩きながら体を動かし、仕上げは河原で瞑想。死闘が連続するSPZクライマックスを勝ち抜くために精神統一を図っているのか。記者は見た。能力に翳りが見え出したというものの草薙は今年も本気で優勝を狙っている。実力では吉田に水をあけられたが、少しの可能性がある以上は全力を賭けて闘う。ことしは草薙みことの違った一面が見られそうだ。(若林)」

さすがに草薙小川の「3年連続入浴シーン写真」掲載は「私もう年齢的にアレなので勘弁してください」と若林記者に小川が申し入れたので、今年は草薙みことが河原で「瞑想」しているシーンが京スポの一面を飾った。もっとも熱狂的なファンからは「このほうが草薙さん神秘的な感じがする」と評判だったらしい。

帰途、草薙みことと小川ひかるは山形市内に開店したSPZグッズショップ「16号店」のオープニングイベントに参加。この団体は今野社長が小売業出身者だからか、最近資金的余裕ができてからグッズショップを続々開店させる方針を採っている。

そして8月シリーズ「SPZクライマックス」開幕。初戦は千葉幕張での「前夜祭マッチ」そのあと2戦目の「札幌どさんこドーム大会」からリーグ戦が始まる。

「あう~んん」

今野社長が空席の目立つ館内を見てうめき声。2度目のどさんこドーム興行、5万収容のどさんこドームは36106名、7割の入りだった。収支ギリギリの興行といったところだろう。気を取り直した今野社長は小川ひかるに一声。

行けっ小川さん!SPZのプロレスを3万6千のファンに見せてくるのじゃあ!」

第1試合は小川ひかる対マイトス香澄。SPZタッグ王者の小川が落ち着いた試合運びでマイトスを投げて、ステップキックで動きを止めてからのSTF。1度目はこらえたマイトスだったが2度目はリング中央で決まりギブアップ。

「勝てました、社長、見てくれましたか?」

「ありがとう、これで第1試合からしまったいい試合を提供できた」

休憩後の第4試合から地獄のリーグ戦がスタート。

伊達○(2点、ラリアットからの片エビ固め、17.25)スイレン(0点)

「かいせつの小川さん、この試合の見所は」「そうですね。スイレン選手がどこまで伊達さんの打撃技についていけるかだと思います」

試合中盤、草薙流兜落としで勝負に出たスイレンだったが、

「本家は・・・もっと痛かった・・・」

平然と伊達は起き上がってラリアットで逆襲。それでも諦めずフロントスープレックスで投げまくるスイレン、しかしー

2発目のラリアットでふらついたのを見た伊達、素早く組み付いてー

殺人ヒザ魚雷。

「がは・・・っ」ものすごい痛み。

のたうち回るスイレンをカバー。しかしカウント3直前でスイレンは肩を上げた。ドドドドドド。

しかしスイレンのがんばりはここまでだった。続くこの日3発目のラリアットを返せず試合終了。

ハイブリッド○(2点、ネオ・サザンクロスロック、26.31)上原(0点)

ハイブリッド、去年は優勝戦線から外れさせられる痛い星を落とした上原相手に猛然と攻めてゆく。しかし上原も先輩の意地を見せ反撃。白熱する戦いは踵落とし2連発、ニールキックの猛攻をカウント2.9でしのいだハイブリッドが勝負をかけたネオ・サザンクロスロック。

「ぐぅああああああー!」

1分ほど耐えた上原だったがついにギブアップ。ハイブリッドが26分の激戦を制した。

永沢○(2点、JOサイクロン 17.54)草薙(0点)

前半はこのカード独特のノーガードの投げ合い。館内沸く。後半に入りダメージ蓄積狙いなのか、永沢がドラゴンカベルを出せば草薙もサソリ固め。しかしここで仕掛けた永沢がJOサイクロン一発で草薙の意識を刈り取って3カウント奪取。館内あ然。

「そんな・・・っ」

3カウントを初戦で奪われた草薙は呆然と引き揚げた・・・

吉田○(2点、スプラッシュマウンテン 12.58)新咲(0点)

普段はタッグを組んでいる両者だが、相対すれば熱い戦いを展開。しかし絶対王者吉田が落ち着いた試合運び。新咲もジャーマンで意地を見せるがそこまで。王者が無難に白星発進。

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第3戦は1日のオフをおいて宇都宮大会。

新咲○(2点、フロントスープレックスからの片エビ固め 12.47)スイレン(0点)

前日のオフ、札幌での自由行動時に「スープカレー」を食べてパワー補給した新咲が危なげなくスイレンを下した。

ハイブリッド南○(4点、ネオ・サザンクロスロック 20.54)伊達(2点)

伊達はSPZ一期生のレッテル的存在なのか、後輩たちが「伊達さんに勝ちたい」と口をそろえて言う。静かな立ち上がりのまま続くかに思われたが、先に仕掛けたのは伊達のほうだった。

SPZキック!

「今野社長が命名した」側頭部への蹴り。しかしこれを耐えたハイブリッドはグラウンドに持ち込んで、

ネオ・サザンクロスロック!

「ギブアップ・・・」伊達は極め技の防御というか痛みに耐えるのがアレな面もあってあっさり降参。

「やっと・・・膝蹴り女に勝てたわ・・・」

デビューして3年余、ようやく伊達越えに成功。

永沢○(4点、パワースラム17.06)上原(0点)

永沢のスープレックスと上原の飛び技が交錯する好勝負は、熱戦の末、永沢がパワースラムでものにした。

吉田○(4点、スプラッシュマウンテン 13.21)草薙(0点)

ー いまの吉田選手に私の技は通用するんだろうか・・・

控室でひとり精神統一する草薙だったが、内心は不安だった。なにしろ吉田龍子には昨夏のリーグ戦公式戦以来勝てていない。

ー 昨日永沢さんに負けて、きょう負けたらその時点で私の夏は終わってしまう。だからやるしかない。草薙流兜落としを何度もぶつけるしかない。

草薙みこと、迷いを振り切ってメインイベントのリングへ向かった。だがー

現時点では両者の力関係は逆転してしまった。草薙が吉田のパワー殺法に懸命についていって、頃合いを見て草薙流兜落としで勝負をかけるが、受けきった吉田がスプラッシュマウンテンで草薙を屠った。横綱相撲か。草薙みこと連敗発進。

第4戦は京都大会。

新咲○(4点、ラリアットからの片エビ固め 25.05)伊達(2点)

「伊達さんはそこそこの攻撃なら受けきってしまうバリアがあるから休まないでガンガン攻めまくるしか勝つ道はない」

この言葉をそのまま実践する新咲も凄い。試合の9割は新咲が攻めていた。伊達25分の堅忍空しく6期生に2連敗。かつての絶対王者が・・

草薙○(2点、タイガードライバーからのエビ固め 9.58)スイレン(0点)

永沢吉田に連敗を喫した草薙。この日は同じ草薙神社のスイレン相手だったので、落ち着いていた。手堅く投げて手堅くリーグ戦初勝利。

ハイブリッド○(6点、アキレス腱固め 27.20)永沢(4点)

2勝同士の対戦。寝かせればハイブリッド、立ち技では永沢の投げまくり。試合は一進一退の好勝負となった。しかし関節技にはロープ際以外では試合を一気に終わらせる力がある。ハイブリッドが激戦の末、「意外な」ヒップアタックで転ばせてからのアキレス腱固め。

耐えた永沢だったが、もがけばもがくほど極まってしまうのがハイブリッドのおそろしいところ。永沢の左足は釘でも打ち込まれたような痛みが走る。

「アーーーッ!!」

絶叫して永沢はギブアップの意思表示をした。

吉田○(6点、ステップキックからの片エビ固め 15.47)上原(0点)

力押しで優勢に進めた吉田が危なげなく勝って3連勝。

「昨年のような目にはあいたくないからね。勝てる試合は勝っておかないと」

試合後の控室は軽口も飛び出す。昨年の最終戦は永沢草薙伊達と悪夢の3連戦を行い、勝ちはしたが死ぬかと思った経験がある。この選手あんがい根に持つタイプのようだ。

リーグ戦3試合を終えて全勝は吉田龍子とハイブリッド南。はたして吉田が連覇へ突っ走るのか、ハイブリッドが追走するのか。

2007年4月25日 (水)

第98回 スターライト相羽プロ入り初勝利

9年目7月(続き)

第7戦神戸大会でスターライト相羽がプロ入り初勝利。

デビューは3ヵ月早いガイア小早川のぎこちないローリングソバットをなんとか受けきったスターライト相羽。

「ハァー、ハァー」

ガイア小早川は攻め疲れを隠せない。

今なら、勝てるかも・・・

スターライト相羽がダッシュしてタックルというより「たいあたり」。

これで吹っ飛んだガイア小早川がふらふらと起き上がってくることころを狙って

「うわあーっ!」

叫びながらドロップキックを打っていった。そのまま無我夢中で小早川に覆いかぶさる。

ワーン、ツーウ、スリ~! カウント3が入ってしまった。

「ボク・・・勝てた・・・?」

保科レフェリーに思わず確認する相羽。プロ入り初勝利を挙げた。

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7月シリーズ最終戦は新日本ドーム大会。今回も超満員札止めの盛況。

第1試合はマイトス香澄がガイア小早川相手に小気味よい投げを連発して5分弱で撃破。

第2試合は富沢レイ対渡辺智美。アイドルレスラー同士のシングルマッチだが、試合内容は地味な関節技絞め技の応酬。最後は16分3秒、富沢がストレッチプラムで粘る渡辺を振り切った。

うわ、きょうの相手は秋山さん沢崎さんだ・・・

スターライト相羽の目の前にテレビで何度も見た名タッグチームが。

第3試合は1期生の元SPZタッグ王者チーム秋山沢崎にスイレン草薙がデビューしたばかりのスターライト相羽と組んで対戦するタッグマッチ。序盤に狙われたスターライトはあっという間に戦線離脱。しかしスイレン草薙もずいぶん逞しくなり、ひとりで秋山沢崎の2人をフロンとスープレックスやノーザンで投げまくる。しかし最後は秋山沢崎のチームワークの前に、ローンバトルを強いられたスイレンが追い込まれ、苦し紛れにスターライトにタッチしたところで、

「そろそろ決めちゃいます」

合体パワーボムでスターライト相羽、目の前が真っ黒になり3カウントを聞いた。

休憩後の第4試合は上原今日子、ハイブリッド南がユーリ・スミルノフ、カレン・ニールセンのEWA勢と対戦。そこそこ味のある攻防を展開した後、ハイブリッドのネオサザンクロスロックがカレンを粉砕した。

セミファイナルはドリームマッチ。永沢舞、新咲祐希子、ドリュー・クライ対草薙みこと、小川ひかる、チョチョカラスといったファンサービス度満点の6人タッグマッチ。

さすがにこのメンツの中では小川ひかるは相手チームの攻撃を受けて草薙につなぐだけしかできない。しかし草薙がいつもの投げまくりで流れを引き寄せ、最後はドリューをうまく捕まえてのサソリ固めでギブアップを奪った。

メインイベントは1月のドーム決戦と同じカード。吉田龍子対伊達遥のSPZタイトル戦。しかしー

伊達、まったくいいところなく攻め込まれて、中盤にスプラッシュマウンテン2連発を食らってしまって・・・

吉田がフラフラの伊達をタックルで倒して、そのあとギロチンドロップ連発で処刑にかかる。3発目のギロチンからのフォールを伊達は返せなかった。19分21秒、王者が8回目の防衛に成功。伊達遥の持つ連続防衛記録10回に「あと2」と迫った。

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SPZ世界選手権試合

吉田龍子(19分21秒、ギロチンドロップからの片エビ固め)伊達遥

第20代王者が8度目の防衛に成功

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そして今年もSPZの熱い夏「SPZクライマックス」が始まる・・・

2007年4月24日 (火)

第97回 星明りの少女伝説&小川ひかるベストバウト

9年目7月。

「社長」SPZの裏番長である井上霧子秘書が提案する。この秘書はかつて「氷のヤクザキック」と言われた元レスラーで、畑違いのIT業界から転進してきた今野社長に業界のツボやルールを指南してくれる得がたい存在である。

「保科選手が引退し、わがSPZはまだ選手15人を擁しておりますが、今年から来年にかけて1期生2期生の大量引退が予想されます。社長もお気づきだとは思いますが小川、秋山、沢崎、伊達、草薙、富沢6選手にすでに能力減退の兆しが出てきております。この状況で9期生がガイア小早川ひとりというのは心もとないので、将来を見据えてもうひとり新人を採用しておくべきかと思います。幸い石川県に有望な新人の卵がおります、新女にとられるまえにぜひ引っ張っておくべきかと存じます」

ということで今野社長と井上秘書は新幹線と特急列車を乗り継いで石川県は金沢へ出かけた。少女の名は相羽明子。中学時代は陸上とアマレスでそれなりに身体を鍛えていたらしい。車内で今野社長は井上秘書の用意したプロフィルに目を通す。

「負けん気が強そうだね、顔見た限りでは」

「これはカンですけど、ああいうタイプは強くなりますよ」

相羽家で両親同席の元面談。SPZの威光は定期的に興行を行う北陸地方にも届いていたので、相羽はこの誘いを「ボク、前からやってみたいと思ってたんですっ」と快諾した。

ほどなく相羽明子~リングネームは「スターライト相羽」と命名された~が戸塚のSPZ合宿所に入寮し、初日から寮長新咲の「カレー超大盛り」の歓迎を受けた。

しかし翌日からは練習につぐ練習。この団体は「やられることから覚えさせる」方針。ハイブリッド南がスリーパーやアームホイップで投げて受け身を覚えさせる。やはりボディスラムを数発受けて相羽は起き上がれなくなった。

「はう・・っ」

「立って。試合ではそんなに寝てられないわ」

「うう・・・・」

「姉さんが言ってたわ。うちの団体は社長、ゼニゲバだから。あなた今月のシリーズにはデビューさせられるわよ。それまでに受けだけは覚えて。あとは適当でいいから。」

「で、デビュー?ボクが?」

「そうよ、早く立ち上がりなさい」

フラフラと立ち上がる相羽。

「行くわよ」

バァンツ!。

組み付くやいなや強烈なボディスラム。

「・・・がっ」

男子団体のように1年くらい練習生でみっちりしごく余裕はSPZにはない。とりあえず5分ほど持つ体力と最低限の受け身だけ覚えたら即デビューというのがこの団体の掟らしい。1期生はこのやり方で大成したので悪しき伝統?がそのまま続いている。

ハイブリッド南の「指導」は相羽が動けなくなるまで続いた。

・・・ボク、こんなんでデビューできるのかな。

「相羽ちゃーん」井上霧子がにこやかに寮に現れて、相羽に紙袋を手渡す。

「はい、コスチュームとシューズできたわよ。今度の巡業に持って行ってね」

デビューの話はマジだったのか。相羽は紙袋を手に呆然としていた。

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阪口正吉レフェリーが持病の不整脈を理由にレフェリー業から引退。レフェリーが井上霧子ひとりになってしまうので、急場しのぎで引退したばかりの保科優希を前座試合のレフェリーに起用して対応した。

そして7月シリーズ「サマースターナイツシリーズ」開幕。

初戦の山口・宇部大会。8期生以降の若手選手がリング上で受け身の練習をしているところへ今野社長がにこやかに現れた。

「相羽さんきょう、デビュー戦です。頑張ってください」今野社長が広げた「プログラム」の2ページ目には本日のカードがスタンプされており、一番上に

1.マイトス香澄  30分1本 スターライト相羽

スタンプが押されていた。

 スターライト相羽は驚きの表情で答えた。

「は、はいっ、頑張ります」

6時半の試合開始、

「ぼ、ボク、緊張してきた・・っ」

「まあ相手は2年目の香澄ちゃんだから殺されることはないわ多分。頑張ってきなさい」

ハイブリッド南がアドバイス。

今野社長がリング上で来場のお礼と本日のカードを読み上げて、そのあと第1試合を裁く保科レフェリーがリングに上がった。

「はい、行ってきなさい」

スターライト相羽が花道を走って入場。そしてリングイン。いきなりのデビュー戦なのでテーマ曲はない。そのあと赤コーナー側からマイトス香澄が「恋はピンポン」のテーマに乗って入場。

「青コーナー、石川県金沢市出身、スターライトー、あいーばー!」

「赤コーナー、東京都江戸川区出身、マイトスー、かすーみー」

「レフェリー保科優希、なおスターライト相羽選手は本日がデビュー戦となります」

「ファイ~ッ」試合開始。保科優希が手を上げて本部席の今野社長が木槌でゴングを一打。スターライト相羽の最初の戦いが始まった。

「ウワーーーーーーッ!」

スターライト相羽は緊張を振り切るかのようにゴングと同時に、まっさき駆けて突進し、マイトス香澄に体当たり。先輩を吹っ飛ばす。

「あっ、イタ、やったなーー」

マイトスがアームホイップ、フロントスープレックスそしてジャーマン。得意技の投げを乱発される。しかしスターライト相羽はジャーマンをどうにかカウント2.9で返す。

「そんな、ボクのジャーマンが・・・」

すかさず起き上がったスターライトがチョップで反撃するが、すぐにドロップキックで倒される。このフォールもカウント2.9でクリア。デビュー戦新人の粘りに館内から拍手が。しかしマイトス香澄、休まず攻めて2発目のジャーマン。これは返せなかった。

「8分26秒、ジャーマンスープレックスで、マイトス香澄の勝ち」

こうしてスターライト相羽のデビュー戦は終わった。ふらつく足で控室に戻ると先輩レスラー全員が相羽を祝福した。

「デビューおめでとう、これで相羽さんもきょうからプロレスラーの仲間入りだ!」

「1回目のジャーマンを返したところは何人かお客さんが手を叩いてたわ。ああいう粘りは大事だからこれからも頑張って」

「は、はいっ!」

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山口大会のメインは草薙みこと、小川ひかるのSPZタッグ王者組にドリュー・クライ、ユーリ・スミルノフのEWA勢が挑むタッグ選手権。試合は草薙がスミルノフのバックドロップで大ダメージを負ったせいもあって、王者組のいつものペースが乱れた。後半は草薙流兜落としや小川のSTFで決定的チャンスを作るが、ことごとく相手チームのカットに阻まれるいや~な展開。そして試合終盤、4人の中でもっとも実力がない(といわれている)小川がつかまってしまう。

EWA勢の殺人級合体攻撃、ダブルインパクト炸裂。ドリューが軽量の小川をあっさり肩車してスミルノフがラリアット。

「うわーっ!」場内からは草薙ファン小川ファンの悲鳴が沸き起こる。

小川はどうにか受け身をとったが、頭を打って、目の前がぼうっとかすんでいた。フォールを返そうにも手も足も動かせない。

―もうダメだ、返せない・・・っ

小川は動けないままスミルノフにカバーされた。

ワン、トゥ・・・

しかし、草薙みことがスライディングキックでなんとかカットに成功。やられた本人があきらめてもまだ試合が続く。これがタッグマッチの魅力でもあり恐ろしさ。

この流れを見ていたドリュー・クライがすかさず草薙を場外に蹴り落として、リング上に横たわる小川を引きずり起こして、再び肩車して、スミルノフも懸命にトップロープに登り、2度目のダブルインパクトが決まってしまった。

ズドーン!。

軽量の小川は一回転してリングに叩きつけられた。

「キャーーーーー」

悲鳴が響く場内。実力微妙の小川にそこまでやるか。小川さんが殺されてしまう!宇部体育館は凍りついた。リング下で試合を見ていたスターライト相羽も慄然としていた。

・・・ここまで、受けるのか・・・

2発もこんな大技を食らってはいくら受けに定評のある小川ひかるでももうダメだ。草薙はまだ場外で起き上がれない。会場のファンはああSPZタッグベルト流出か・・・と思ったが、小川の意識は辛うじて残っており、運のいいことにニアロープだったので、どうにか右足をサードロープにかけてロープブレイク。

パートナーの草薙も場外でもうダメかと思っていたが、まだ試合は続く。スミルノフは距離をとって小川が起き上がるのを待って、小川が立ち上がると同時にダッシュ。ラリアットか何かを狙っていたか。

しかし小川は反射的に切り返す。その場で踏み込んで跳躍し、カウンター気味にネックブリーカードロップを決めた。

「ぐああー」

もう小川に反撃する力はないと思っていて虚を突かれたスミルノフはまともにネックブリーカーを食らってしまった。倒れこむように小川カバー。ここで草薙もリング下からドリュークライの足をつかんで逆カット。

ワン、トゥ、スリー。

ユーリ・スミルノフは無念の3カウントを聞いた・・・

ドォォォォォ!

王者組が2度目の防衛に成功。45分48秒の死闘に場内は沸いた。響き渡るオガワコール。泣いているファンも散見された。

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SPZ世界タッグ選手権(60分1本勝負)

草薙みこと、○小川ひかる(45分48秒、ネックブリーカードロップからの体固め)ドリュー・クライ、ユーリ・スミルノフ×

第10代王者組が2度目の防衛に成功

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ものすごい、歓声だ・・・

セコンドのスターライト相羽も背筋がぞくぞくする様な大歓声。

・・相手の技を受けて、反撃するだけでここまでお客さんは熱狂するんだ・・・

「ナイスファイト・・でした・・・」

いつものようにリング上でお辞儀をする小川だったが、直後にバッタリ倒れた。外人組のダブルインパクトを2発も貰ったのではいくらやられ慣れている小川でもただで済むはずがない。よって試合後のベルトを巻いての・・・といったお決まりのセレモニーは省略。保科レフェリーと吉田龍子の肩を借りて引き揚げた小川にものすごい拍手が送られた。

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終了後のくーるびゅーちー軍控室はちょっとした騒ぎに。ハイブリッド南が若手に指示を出す。

「香澄ちゃん、毛布かけたげて。相羽さん、シューズ脱がせて、ガイア、枕。」

「大丈夫か、小川さん」

血相を変えて今野社長兼リングアナが控室に飛び込んできた。パートナーの草薙も心配そうな表情。

小川ひかるは控室の床に横たわりながら言葉を紡いだ。

「ハァ、ハァ・・・やられる・・・のは、慣れて・・・ますから。」

「・・・無理しないでよ、1発目のインパクト、素人目にも落ち方やばかったよ」

「受けてますよ・・・ダテに15のころからこの仕事やってません・・・よ・・・でもきょうは、怖かった・・・頭・・・痛い」

今野社長はしばらく震える小川の手を握っていた。

2007年4月23日 (月)

第96回 保科優希最終試合

これまでのあらすじ

横浜戸塚に本拠地自社ビルを構えるお嬢様プロレス団体「スーパースターズプロレスリングゼット」は創立9年目を迎え、6月に旗揚げメンバー、保科優希が体力気力の限界を理由に引退を申し出た。

そして最終戦さいたまドーム大会。試合開始前に保科優希の過去の名勝負の映像が流れる。

「SPZは2009年4月21日、横浜赤レンガ大会から始まった。SPZの第1回新人テストに合格し、旗揚げ戦第2試合でデビューした保科優希、以来ずっとSPZで闘ってきた・・・」

今野社長のヘタクソなナレーションが入る。

「長年にわたって前座を務め、若手の壁として立ちふさがった保科優希。いつしか6時半の女と呼ばれるようになった。いまの看板選手、永沢舞も吉田龍子も新咲祐希子も、最初は保科に連敗を喫する中で、プロレスを覚えていった・・・」

場内は人気選手の引退でしんみりとした雰囲気。この選手、実力はともかく人気は相当高かったので、第1試合の盛り上げ役のアイドルレスラーとして長年活躍し、写真集も8冊出して会社の資金繰りにも貢献した。引退後は引き続き「まったりテレビ解説者」としてSPZに留まることが決まっている。

きょうの保科の出番は休憩前の第3試合。

「次の試合に出場する保科優希選手は本日が最後の試合となります。ファンの皆様、より一層のご声援をおねがいいたします。」

ラヴェルの「ボレロ」に乗って、大会場用の赤いロングコートを着た保科がいつものように手を振りながら長い花道を入場。

「赤コーナー、滋賀県大津市出身、ほしなー、ゆーきー!」

今野社長兼リングアナの最後のコール。ものすごい量のエメラルドグリーンとオレンジの紙テープが投げ込まれる。

ー最後の試合だからといって花を持たせたら、大先輩の保科さんにかえって失礼。全力で戦って保科さんに引導を渡すっ・・・

相手は保科と200回近く対戦したと思われる5期生の渡辺智美。数々の会場でオープニングマッチの大役を担ってきた前座の名物カードである。最初のうちは保科のグラウンドさばきに手も足も出なかった渡辺だったが、最近はキャリアを積んだ渡辺のほうから積極的に技を仕掛け試合をリードすることが多くなった。

きょうも渡辺が積極的に攻めていって、最後はリング中央で逆片エビ固め。

「ぐああああっ・・・」

懸命に絞る渡辺、懸命に堪えた保科だったが、ついに

長年のレスラー生活で腰に爆弾を抱える保科はレスラー人生の終焉を意味する言葉を自ら発した。

「ギブアップです・・・」

勝負タイム14分49秒。SPZがここまで大きくなったのは保科優希の力に負うところが大きい。場内からは大きな拍手が沸き起こった。

「これから、よろしくお願いしますね~」

闘いすんで両者握手。保科の第1試合盛り上げ役はそのまま渡辺が主に担うことになるだろうか。そのあと井上秘書と今野社長、京スポ新聞の若林記者がリングに上がり金一封と花束の贈呈。

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さいたまドーム大会のメインは吉田龍子対草薙みことのSPZ選手権。パワーで押す吉田が攻めまくり一方的な試合展開。草薙みことは終盤に草薙流兜落としで意地を見せるのが精一杯。そしてー

「おりゃぁあああっ!」

力まかせのDDTで草薙沈没。勝負タイム18分50秒。こんな痛め技でフィニッシュになってしまう。もう誰も吉田を止められないのか。王者が7回目の防衛に成功。

SPZ世界選手権

吉田龍子(18分50秒、DDTからの片エビ固め)草薙みこと

第20代王者が7度目の防衛

メイン終了後、保科優希の引退式。

「みなさん、さよならです~」

最後は笑って保科はリングを降りた。

その夜はバスで「よこ川」に直行。保科選手の引退記念パーティーとなった。5期生以降を夜0時に帰らせてからは、酒類が供され、えんかいは大いに盛り上がった。

「まあ、大ケガもなく無事に現役を終えられて良かったです~」

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保科優希(1期生 第1回新人テスト合格、選手No.003)

2009年4月21日横浜赤レンガ大会 対 アリシア・サンチェス戦でデビュー、2017年6月25日さいたまドーム大会、対 渡辺智美戦で引退。稼動月数99ヶ月、通算出場試合数(概算)656試合。

タイトル歴 なし 

写真集発売冊数 8冊(最多記録)

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2007年4月22日 (日)

第95回 6時半の女 保科優希 引退ロード

9年目6月

「ごめんなさ~い、私そろそろ限界のようですわ~」

1期生の旗揚げメンバー、保科優希が引退。

年齢的には南利美と同じだが、2年目以降はずーっとタイトル戦線とは無縁の前座要員として闘って来たので、これまではインサイドワークでどうにか能力の衰えをカバーできたが、「長年の戦いで身体がいうことをきかなくなって来ました」ので引退を決意した。

本社2階のメイド喫茶「あばしり」で面談。

「寂しくなるな、保科さんのファイトが見られなくなるなんて、小川さんと8年前に旗揚げ戦でデビューしたときからずっと・・・」

「あの時は参りましたわ~、来る日もAACの選手に叩きのめされ続けましたから」

そう、7年前、2009年の4月21日、あの旗揚げ戦では所属選手はミミさんと小川、保科の3人だけで立ち上げて、みんなでリングを設営して、みんなで椅子を並べてという苦しい時代があった。

「いまでは当たり前のように年4回新日本ドームやってますからね~、驚きですよ~」

「長年前座ばっかりで大変つらい思いをさせて・・・」

「いや~、第1試合も何百回もやってみると面白いですよ、お客さんの顔がだんだん変わっていくのが見えますから~」

ひとしきり昔話が続いた後。

「最終試合の相手は誰か希望はありますか」

「最後は・・・うん、いちばんたくさん闘った、渡辺さんとやって終わりたいと思います」

「引退後・・・しばらくは残ってもらえませんか。テレビ解説者として、保科さんの解説を楽しみにしているファンが多いので」

「わかりました~、引き続きお世話になります」

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6月シリーズは例年通りSPZクライマックスの予選会。保科優希の引退ロードと同時進行で行う。今回の出場者は下記の通り。

秋山美姫、沢崎光、(前回本大会で大きく負け越したため)

小川ひかる(一期生中堅どころ、3度目の出場なるか)

富沢レイ(二期生中堅どころ、初出場を狙う)

新咲祐希子(6期生で前回出場権を手に入れながら負傷で棒に振った)

スイレン草薙(進境著しい8期生)

この6人でリーグ戦を行い、上位2名が本戦の出場権を得る形式。

初戦の青森大会、予選会リーグ緒戦。

秋山(2点 ギロチンドロップからの片エビ固め 28.46)小川

小川対秋山が28分46秒のロングマッチをやってのけた。能力に翳りが見える一期生のふたりだが、前半はグラウンドの地味な攻防でリングサイドのファンをうならせた。単純な腕の取り合い、バックの取り合いに観客が引き込まれてゆく。最後は秋山がスタミナの尽きた小川にギロチンドロップを決めて勝利。

次の試合でサプライズ。

富沢(2点 ストレッチプラム 26.20)沢崎

リング中央で富沢レイのストレッチプラムが決まる。すでに25分も闘って集中力が切れかけていた沢崎光、根負けして富沢相手に初めてギブアップの言葉を吐いた。

ーようやく沢崎さんに勝てた。でもこれは自分が強くなったからじゃない・・・

複雑な表情で富沢は引き揚げた。その次の試合は新咲対スイレン。

新咲(2点、10分くらい 片エビ固め)S草薙

新咲がやや手こずったものの10分ほどで勝利。

青森大会第5試合で保科優希の引退カウントダウン8、一期生の伊達遥と組んで永沢舞、渡辺智美と対戦。伊達が試合を作った後10分頃リングイン、しかし永沢の容赦のないジャンピングニーに吹っ飛ぶ保科。

―これは真正面からやっても勝てないですわね。。

―伊達さん!

伊達を呼び込んでダブルドロップキック。そのあと伊達にタッチ。同期の引退ロードということで伊達が今日は燃えていて、容赦のない殺人ヒザ魚雷で永沢からフォール勝ちを収めた。

2戦目は岩手大会。

沢崎(2点、ジャーマン 15分くらい)小川(0点)

新咲(4点、ムーンサルトプレスからの体固め 10分くらい)富沢(2点)

S草薙(2点、草薙流兜落とし 15分くらい)秋山(2点)

小川対沢崎の予選会リーグ戦、沢崎が投げまくって、ジャーマン2連発で快勝。

冨沢対新咲は実力差の通り新咲が攻め込み、最後はムーンサルトで完勝。

そして次の試合でサプライズ。スイレン草薙が秋山のドラゴンカベルナリアをしのいで、最後は草薙流兜落としでフォール勝ち。

場内ええええ!の声。1期生でずっと伊達沢崎とともにメイン戦線を盛り上げてきた秋山が8期生のスイレンにフォール負け。これが時代の流れなのか。

ガックリと肩を落として引き揚げる秋山。

保科優希引退カウントダウン7は上原今日子と組んで伊達遥、渡辺智美と対戦。しかし保科は伊達の猛攻についていけず、殺人ヒザ魚雷からのミサイルキック、合体ラリアットを浴びて万事休すかと思われたがロープに足をかけて試合が続く。

保科の粘りに上原も触発されたのか、踵落としからの合体パイルドライバーで伊達に大ダメージを与え、かわって出てきた渡辺にも合体パワーボムを決め逆転勝利。

第3戦秋田大会、保科は定位置の第1試合に戻って、若手のマイトス香澄とシングル戦。なんとマイトスが一方的に投げまくって、バックドロップ、ノーザンで追い込んで、再びバックドロップ。これで保科は3カウントを奪われた。

予選会リーグ戦3戦め、

新咲(6点、15分くらい片エビ固め)小川(0点)

富沢(4点、延髄斬りからの片エビ固め30.00)秋山(2点)

S草薙(4点、草薙流兜落とし 10分くらい)沢崎(2点)

新咲は小川を問題にせず3連勝、富沢レイはなんと秋山も30分0秒の激戦の末延髄斬りで撃破。その次のスイレン対沢崎、草薙流兜落とし2発で沢崎を撃沈。これで秋山沢崎の本大会出場は厳しくなった。

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第4戦山形大会。保科は第1試合でデスピナ相手にシングルマッチ。デスピナがミサイルキックで勝利。予選会リーグ戦は2試合が組まれた。

S草薙(6点、10分くらい、片エビ固め)小川(0点)

新咲(8点、ムーンサルトからの片エビ固め)沢崎(2点)

小川対スイレンは危なげなくスイレン快勝。新咲は落ち着いてムーンサルトで沢崎を撃破。

第5戦福島大会。

S草薙(8点、草薙流兜落とし 10分くらい)富沢(4点)

沢崎(4点、タイガーSH、15分くらい)秋山(2点)

スイレンは富沢も兜落としで撃破して予選会突破を決めた。これで新咲も予選会通過が決定。後のリーグ戦はは消化試合だが、秋山対沢崎の一期生タッグパートナー対決は沢崎に軍配。

保科優希はあと4戦。この日は一期生同時デビューの小川ひかると最後のシングルマッチ。お互いの思いをぶつけあった試合は11分36秒、ストレッチプラムで小川が勝った。

第6戦カシマ大会。保科カウントダウン3の相手はスイレン草薙。スイレンが投げまくって保科を8分で潰した。

予選会リーグ戦残り2試合。新咲が1位通過で有終の美。

小川(2点、STF、15分くらい)富沢(4点)

新咲(10点、フェイスクラッシャーからの片エビ固め)秋山(2点)

第7戦は保科の地元、大津で最後の凱旋興行。保科優希は沢崎と組んで小川、秋山との1期生4人でのタッグマッチ。ふだんはタッグを組まない小川と秋山が意外といい連係で、最後は26分55秒の熱戦の末ダブルパワーボムで沢崎が沈んだ。

そして最終戦、さいたまドーム大会・・・・

2007年4月21日 (土)

第94回 9年目5月 横スペ3大シングルマッチ

9年目5月

5月シリーズ「ナチュラルバトルシリーズ」が開幕。秋山美姫が首の痛みで欠場。

開幕戦はハイブリッド南の地元、高知大会。

メインはいまのSPZで考えられる最高の6人タッグマッチ、

吉田永沢新咲対草薙上原ハイブリッド。6人が6人ともSPZタイトルマッチを闘える実力者なので白熱した。草薙がタイガースープレックスで新咲を追い込めば、新咲もジャーマンでお返し。永沢も「とおー」の投げまくり永沢劇場を見せれば上原も強烈なキック。ハイブリッドがニーリフトで永沢を追い込むも、永沢もJOサイクロンでハイブリッドを戦闘不能に追いやる。会場を埋め尽くしたファンは6人の激闘に酔った。

最後はなんと絶対王者の吉田が上原のフェイスクラッシャーで流血し、これが響いたか続くフライングニールキックにフォール負けを喫した。

2戦目の愛媛大会。メインに組まれたのはEWAタッグ戦。王者の伊達、スイレン草薙組が最強外人連合のチョチョカラス、ナスターシャ・ハン組に敗北。チョチョカラスのムーンサルトがスイレンの戦意を絶った。これでEWAベルトが外人勢の手に戻った。

そして5戦目の岡山大会、SPZタッグ王者の草薙、小川組に挑むのはEWAタッグを失ったばかりの伊達遥、スイレン草薙組。伊達のSPZキック、スイレンの草薙流兜落としをカウント2.5でしのぐ小川。

―私がやられて、草薙さんが決める。これがいつものパターン。

小川ひかるは作戦通りに伊達の打撃とスイレンの投げを受け続けて、頃合いを見て草薙にタッチ。試合は長期戦になった。まずスイレンが草薙のノーザン、アキレス腱固めの前にこの闘いについていけなくなった。孤立した伊達が殺人ヒザ魚雷2連発を草薙に叩き込むもー

「勝たせて頂きますっ」

リング中央で「忘れた頃に出してくる」ミミ吉原直伝のドラゴンスリーパー。コーナー下でうずくまっていたスイレンがいけないと思い、フラフラとリングインするも小川が「抱きつき」でカット阻止。

「うわあああ・・・」

伊達の手足から力が抜けてゆく。これ以上我慢したら落ちると判断した伊達はたまらずギブアップ。王者組が初防衛に成功。45分23秒の激闘。草薙以外の3人は大の字状態。

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SPZタッグ選手権試合 60分1本勝負

○草薙みこと、小川ひかる(45分23秒、ドラゴンスリーパー)伊達遥×、スイレン草薙

王者組が2度目の防衛に成功

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第7戦、仙台大会のメインはナスターシャ・ハンの所持するEWA世界選手権ベルトにスイレン草薙が挑むタイトルマッチ。どうみても集客とスイレン育成を狙った試合。

「頑張ってきなさい」

草薙みことが珍しくスイレンに声をかける。しかしー

「フン、久々にサンボの技を見せるときネ」

怖いナスターシャが久々に。6分過ぎにハンが繰り出したドラゴンスリーパーが一瞬で決まってしまい、スイレンはあっという間に失神。グッタリとしたスイレンを見て、阪口レフェリーがあわてて試合を止めた。

「6分16秒、ドラゴンスリーパーで、スイレン草薙の勝ち」

目を覚まさないスイレン。試合を見ていたセコンド陣や今野社長、井上秘書がわらわらとリングに上がる。悪いことにきょうは仙台での興行なので羽山リングドクターはいない。担架出動。場内は騒然となった。

控室で目を覚ましたスイレン。

「あ、みことさん、試合・・・は・・・」

「6分16秒、スイレンの負けです」

「・・・・何も、できなかった・・・」

「ハン選手も狙ってたフシがありました。今日は仕方ないと思います。次は頑張ってお客さんを沸かせてください」

「・・・はい」

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最終戦は本拠地に戻って横スペ大会。

第1試合、マイトス香澄対ガイア小早川。マイトスもSPZの荒波に1年もまれたので、まだ素人同然のガイア小早川を問題にせず、フロントスープレックス、バックドロップとスピードのある投げ技を繰り出し、3分39秒でガイアを仕留めた。ガイア小早川、これで16連敗。

第2試合は渡辺智美対保科優希、もうこのカードは5年目の夏から足掛け4年、200回近く組まれているのではないかと思われる前座の名物抗争カード。渡辺が保科を押し切ってギロチンドロップで勝利。

第3試合は小川ひかる対カレン・ニールセン。カレンの打撃や投げ技が一方的に出る展開、小川はエルボーを食らって鼻から流血。

「オガワ、オガワ、オガワ・・・」

1期生の小川にもうかつてのような軽快な動きはない。ただ小川がやられ続け、耐えるだけの展開に会場には悲鳴とオガワコールが。今野社長も本部席で顔をしかめていた。

    ・・小川さん、この声援が聞こえるなら、もうひと頑張りしてよ。

祈るような社長の視線に気づいた小川、調子に乗って攻めるカレンをリング中央へおびき寄せてーカニバサミで転倒させ、

「これで、決めますっ!」

伝家の宝刀STF発動。

―これで、勝つしかない。

懸命に絞り上げる小川。ここまで一方的な展開だっただけに場内はウォオオオと声にならない声が。

「ギ、ギブアップ・・・」

顔面を襲う痛みに耐えかね、カレンはギブアップ。

「15分26秒、STFで小川ひかるの勝ち」

ウォォォォォ!

最後の最後での大逆転に横スペが揺れた。これだから小川ひかるの試合からは目が離せないと社長は感じた。

「はぁ、はぁ、はぁ・・・」

鼻から流れる血をタオルで抑えながらふらつく足で花道を引き揚げてきた小川、控室にバッタリ倒れこむ。

「お客さんの声援は、嬉しいけど・・・」

小川も能力の翳りに苦しむ日々を送り、格上の相手と当たるときは「やる前はいつも震えています」状態。

その試合が終わると休憩。きょうは後半戦が5試合もあるカード編成。

休憩明けは沢崎光、富沢レイのタッグにチョチョカラス、ウェイン・ミラーが激突するタッグマッチ。試合はチョチョカラスがムーンサルトで沢崎を仕留めた。このメキシコの国民的英雄は衰えを知らない。

第5試合は永沢舞、新咲祐希子のタッグにナスターシャ・ハン、ユーリ・スミルノフのタッグ戦。新咲が外人チーム相手にとことん奮闘し、EWAの2人が疲れ切ったところで永沢が満を持して登場という「ずっこい」展開。

「とおー」

永沢、余裕をもってのラリアットでナスターシャからフォール勝ち。

セミ前は伊達遥対上原今日子。上原が決して勝つことのできない名勝負数え歌。この日も先に仕掛けた伊達が・・・

がすっ!

SPZキックで大ダメージを与え、ラリアット、ジャーマンと大技をつないで・・殺人ヒザ魚雷!。

「ううぅう・・」

カウント2.8でクリアしたが、腹を押さえてもがき苦しむ上原。もう何度もSPZマットで見たシーンである。

そして伊達がとどめのブレーンバスター。上原はまたしても3カウントを聞いた。

セミファイナルは草薙みこと対スイレン草薙。スタンド席上部からだと両者の見分けがつかない。

「勝たせて頂きます!」

スイレンが先に草薙流兜落としを繰り出した。しかし草薙は落ち着いて体勢を立て直し、コブラツイスト、サソリ固めと「痛め技」でスイレンをじわじわと確実に追い込んでゆく。ダメージの深いスイレンが一発逆転を狙って2度目の草薙流兜落とし、しかし草薙みことはー

何事もなかったかのように起き上がって、タックルでスイレンを転ばせるや素早くコーナー最上段に登ってふわっと飛んでボディプレス。スイレンはたまらず3カウントを聞いた。

―そんな、2回も草薙流兜落としがはいったのに・・・

3カウントが入った後、カバーから離れる際に一言ささやく。

「まだまだ修行が足りませんね」

そして勝ち名乗りを受けた後、さっさと退場。控室へ着くや倒れこんだ。

「あー、頭痛いです。あのコ、真剣につぶしに来るのですから・・・少しは駆け引きを覚えないと上では・・・うう・・」

「似てますね、南さんを倒そうとしてた頃の草薙さんに」

小川が声をかける。ようやくダメージから回復して先ほどジャージに着替えたばかりだ。

「・・・・そうですか」

草薙みことは微笑んだ。

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横スペ大会・メインイベントは吉田龍子のSPZ王座にハイブリッド南が挑む。吉田の「防衛ロード」ももう2巡目である。実力では吉田が一枚も二枚も上だが、ハイブリッドには試合を一気にひっくり返す極め技があるので油断できない。

だが、吉田のパワーあふれる攻撃がハイブリッドを確実に追い込んでゆく。ハイブリッドはなかなか攻めさせてもらえず、プラズマサンダーボムでグロッギー状態に。続くブレーンバスターで3カウント。勝負タイム17分57秒、吉田が磐石のV6達成。場内は称賛の吉田コールに包まれた。

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SPZ世界選手権試合

吉田龍子(17分57秒、ブレーンバスターからの片エビ固め)ハイブリッド南

第20代王者が6度目の防衛に成功

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2007年4月20日 (金)

第93回 草薙みことデビュー7周年記念試合

レッスルエンジェルスサバイバー 

プレイ日誌のようなもの

「輝くエッセンシャル」

(むちゃくちゃ脳内妄想はいってます)

9年目4月。

横浜戸塚に本拠地自社ビルを構える往生様プロレス団体「SPZ」は将来を担う新人を発掘すべく、新人テストを行った。前年同様、丹沢山脈登山競争で100名以上の応募者をさばき、最終選考に残ったのは小早川桃子という15歳の少女。負けず嫌いなところがありここまで残った。

「運動神経はそれなりみたいですが、採用しますか?」

社長秘書兼レフェリーの井上霧子が進言する。

「よし、採用しよう。」

今野社長は採用を決めた。資質はあまりなさそうだが、熱いファイトができそうな感じがしたので、きっと活躍してくれるだろうと考えた。

1週間後、小早川が入寮。リングネームは「ガイア小早川」とつけられた。吉田に代わって寮長になった6期生の新咲祐希子が「カレー大盛り」で歓迎した。

そして「旗揚げ8周年記念 バトルカデンツァ2017」が開幕。比較的大きな会場を回る豪華シリーズ。小川ひかるが左ひざ負傷で欠場。

1戦目の釧路大会でいきなりガイア小早川のデビュー戦。

「え、あたし、まだ何も・・・」

「だいじょぶだいじょぶ、保科さんがうまくリードしてくれるから」

新咲がガイアを落ち着かせる。

「青コーナー、福島県郡山市出身、がいあー、こばやかわー」

場内申し訳程度にぱらぱらっと拍手。

「赤コーナー、滋賀県大津市出身、保科―、優希―!」

デビュー8周年の人徳か、大歓声が飛ぶ。

「レフェリー井上霧子、なおガイア小早川選手は本日がデビュー戦となります。」

・・・これが、プロのリング・・・

ガチガチに緊張していたガイア小早川。出せた技は覚えたてのドロップキック1回だけ。それも保科がわざと打たせたフシがあった。あとは一方的に保科がいつものおっとりとしたペースでダメージを与え、最後は小早川がスタミナ切れを起こしたスキを突いてコーナーに登り、年齢を感じさせないダイビングショルダーで勝利。

「9分19秒、ダイビングショルダーからの片エビ固めで保科優希の勝ち」

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第4戦は広島若鯉球場大会。例によって七割の入り。メインは集客のために組んだ伊達遥対上原今日子のシングル戦。

どうしても伊達に勝てない上原。手数は出してるのだが、伊達のバリアを突き崩せぬまま30分過ぎに殺人ヒザ魚雷をもらってしまう。

「ぐふっ・・・・」

これで決定的ダメージを負った上原、最後は高さのあるブレーンバスターで撃沈。

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最終戦は東京新日本ドーム興行。

第1試合がマイトス香澄対ガイア小早川。後輩ができたマイトス、小早川を一方的に押し切って6分ほどで勝利。

それぞれ手に汗握る4試合をはさんで、セミファイナルは「草薙みことデビュー7周年記念試合」

★★★ MIKOTO 7 ★★★

ドームの電光掲示板に上記の文字がデカデカと映り、「オリエンタルクラッシュ」が流れる中、白衣を着た草薙がいつも通りクールな表情で入場。新日本ドームは大ものすごい歓声に包まれた。

2期生で入門したこの選手の華々しい活躍ぶりはいまさら語る必要もない。本人いわく「南さんの関節、伊達さんの蹴りに対抗するために」投げ技を前面に出すファイトスタイルで、そのちぎっては投げ、ちぎっては投げという派手な闘いぶりは「草薙劇場」と呼ばれるに至った。そして投げ技だけでなく、プロレスをしっかり研究し、サソリ固めなどの極め技、ボディプレスなどの飛び技でもフィニッシュが取れる引き出しの多さでSPZのエースとして一時代を築いた。真夏の祭典SPZクライマックスでは3連覇という偉業もやってのけた安定感も持つ。

試合前のセレモニー。京スポ新聞から記念の盾、今野社長から金一封が贈られた。

「ただいまより草薙みことデビュー7周年記念試合シングルマッチ30分1本勝負を行います。青コーナー、オランダ・アムステルダム出身、ドリュー、クラーイー!」

「赤コーナー、山形県朝日町出身、くさなぎー、みこーとー!」

ドォォォォォォ!!

白い紙テープが乱舞乱舞乱舞。記念試合の対戦相手はEWAのドリュー・クライ。蹴りは要警戒だが、草薙が負ける可能性は低いマッチメイクだ。

「全力で行きます」

容赦なく投げまくった草薙、10分30秒、タイガースープレックスで完勝。場内はものすごいミコトコールに包まれた。

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新日本ドーム大会メインは吉田龍子対上原今日子のSPZ選手権。

ハイブリッド草薙伊達永沢と実力者相手にV4を達成した王者吉田、上原にも勝てばトップグループ相手に5連破ということになる。

序盤は小技の攻防。吉田がラリアットを軸に組み立てれば、上原も軽快なドロップキックを連発。中盤、さきに吉田が仕掛け、

ドゴォォォン!

スプラッシュマウンテン発動。もうろうとする上原も必死にローリングソバットなどで反撃するが、吉田がデンジャラスキックでさらに大ダメージを与える。最後はギロチンドロップでフラフラになった上原に2発目のスプラッシュマウンテンをお見舞いして決着。勝負タイム26分48秒、吉田が5度目の防衛に成功。

SPZ世界選手権試合

吉田龍子(26分48秒 スプラッシュマウンテン)上原今日子

第20代王者が5回目の防衛に成功

これで吉田龍子はSPZのトップグループを5人連続で退けた。しかも内容も危なげない。当分この選手の天下は続くのかと満員のファンは感じた。

2007年4月19日 (木)

第92回 8年目2・3月 マリア・クロフォード最終試合

2月シリーズ「ウルトラオレンジシリーズ」、吉田龍子が右足首負傷で、保科優希が腰痛で、マイトス香澄が左手首負傷で欠場。

「うまらねえよ~」鹿児島さくらじまアリーナ大会。社長のうめき声が響く。首都圏では抜群の人気と知名度を誇るSPZも地方ではまだまだ苦しい。メインの永沢富沢対伊達スイレンのSPZ世界タッグ戦では埋まらなかった。

伊達と永沢がいつも通りの息詰まる攻防。スイレンもタッチを受けたが永沢相手にただやられるだけ。この流れを見た伊達が先に仕掛けて、永沢にSPZキックと殺人ヒザ魚雷のコンボ。弱った永沢は苦し紛れで富沢にタッチ。

「レイさん!しばらくお願い」

だがここをチャンスとみた伊達――

「悪く・・思わないで」

がつん。

SPZキックのハードヒットが富沢の戦闘力を不稼動に追い込む。これはカウント2.5で返した富沢レイ、しかし続く「昔のネズミ捕り器」ブレーンバスターで万事休す。なんとスイレン草薙は伊達の力が大きいとはいえ、デビュー1年足らずでSPZタッグベルトを腰に巻いてしまうという「快挙」。しかもEWAタッグとあわせて伊達スイレンはタッグ2冠王。

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SPZタッグ選手権

○伊達遥、スイレン草薙(20分くらい、ブレーンバスターからの片エビ固め)永沢舞 富沢レイ×

第8代王者が初防衛に失敗、伊達組が第9代王者となる

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「本堂さん」伊達が控室でボソッと。

スイレン草薙の本名は本堂ななか。

「これからが大変だと思う・・・SPZベルトの重みが・・・」

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4戦目の大分大会。

「EWAタッグベルトは長い歴史を誇るうちの宝だ!日本人にとられっぱなしでたまるか!しかも片方はド新人のグリーンガールだ!タタキノメシテこい!」

EWAのエージェント、トム・クリステン氏が激励する。ということで伊達スイレンのEWAタッグ王座に挑戦するのはEWAの女帝、ナスターシャ・ハンそしてユーリ・スミルノフのロシアンコンビ。試合は伊達が出ずっぱりの展開。伊達の打撃を警戒して徹底して距離を取らずレスリング勝負に出て伊達を消耗させる。後半、スイレンに的を絞るが、スミルノフのジャーマンをうまく逃れて伊達にスイッチ。そしてタッチを受けた伊達がラッシュ。スミルノフをSPZキック2連発で葬り、39分23秒の激戦を制した。防衛成功。なんてこったいと頭を抱えるEWAのトム氏。

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第5戦長崎大会。

第2試合は小川ひかる対スイレン草薙。

―伊達さんと組むようになって、プロレスの戦い方が少し分かってきた。きょうは小川さんを潰す。

ちぎっては投げで、草薙みことのような休まない攻めを展開するスイレン。小川も脇固めなどで反撃するが単発。小川が徐々に追い込まれていった。

リング中央、目で位置を測った小川が一瞬の隙をついてスイレンをカニばさみで倒してSTF。

    ・・しまった、小川さんにはこれがあった・・・

いったん決まったらそこそこのレスラーは外すことは困難なSTF。スイレンは鼻を潰されて悲鳴を上げるしかなかった。長時間耐えたのだがギブアップ。

「14分25秒、STFで小川ひかるの勝ち」

ガックリと肩を落として引き揚げるスイレン。

ータッグ2冠王になったけどシングルではまだ小川さんにも勝てない。

控室で伊達に声をかけられる。

「攻め方は・・・悪くなかった。次・・・頑張って」

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最終戦は横スペ大会。タイトル戦は組まれなかったが、超満員まで集客に成功。

「次の試合に出場するマリア・クロフォード選手は本日が最後の試合となります。皆様より一層のご声援をおねがい致します」

第1試合、「ちょい悪外人」マリア・クロフォードが日本ラストマッチ。もとはイギリスの酒場を主戦場にしていた彼女だが、フリー時代にSPZに参戦するようになり、その悪どいキャラクターと関節技テクニックで常連外人となり、若手選手の高い壁となった。しかしクロフォードも24歳、ハードなファイトができなくなっているので日本遠征を今回限りでやめることにした。この日は渡辺智美をアキレス腱固めで一蹴。

******マリア・クロフォード日本最終試合********

マリア・クロフォード(10分くらい、アキレス腱固め)渡辺智美

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「グッバイ!ジャパン!エスピーゼット!」

セミファイナルは草薙みこと対ハイブリッド南。12分1秒、脇固めが決まってしまい草薙ギブアップ。こういう結末はフロックなのか実力なのか判断に迷う。

メインは上原今日子対永沢舞。いちおう「次期SPZ選手権挑戦者決定戦」時に異様な力を発揮する永沢と、マットの覇者で男性女性を問わず熱心なファンも多い上原の激突。しかし何も考えず?投げ技をドカドカ出す永沢が優勢に試合を運び、最後はJOサイクロンで決着。

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9年目3月。長野県にSPZフィーバー11号店出店。そして3月シリーズ「ファイヤーソウルシリーズ」開幕。富沢レイが右肩の負傷で欠場。

初戦の新潟大会。EWAがなにがなんでもタッグ王座奪還ということでトップ2のナスターシャとドリューにコンビを組ませた。ヨーロッパでは死闘を繰り広げている選手同士だがこの際仕方がなかった。だがー

伊達強い。スイレンがきっちりフォローに徹したが、ダメージを2人に与え、最後は殺人ヒザ魚雷でナスターシャが悶絶したところをスイレンが担いでダブルインパクト。これで試合は終わった。

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第3戦石川大会の第3試合、スイレンがついに小川越え。フロントスープレックスを何回も叩き込んで優位に立ち、そのあとはロープ近くで闘い、逆転を狙った小川のSTFをうまく逃げて、最後はダメージを負った小川に草薙流兜落とし炸裂。1期生の小川からフォール勝ちを収めた。勝負タイム23分39秒。

いくら草薙流で格闘の素養があるとはいえ、デビュー1年でまだ16歳のコに負けるとは・・・小川はしばらく控室で座り込んだ。

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第5戦京都大会、伊達・スイレンのSPZタッグ王者組に挑むのは草薙みこと、小川ひかるの元王者チーム。

しかしこの日は草薙が怖かった。ひとしきり相手チームの技を受けた小川が草薙につなぐと投げまくりの草薙劇場展開。伊達を投げ、スイレンにも、同じ草薙神社の人間だろうと容赦しないどころか叩き潰しにかかる。

伊達が草薙小川の合体パイルドライバーで頭を打ったのか、スイレンにスイッチ。ここを先途と草薙の猛攻。フロントスープレックスでたたきつけ、サソリ固めでさんざん苦しめておいて、強烈なDDT。

・・・これが、返せますか。

頭を打ち付けられたスイレンはフォールを返す事ができず3カウントを聞いた。勝負タイム30分45秒、王座移動。草薙小川が3度目のSPZベルト戴冠。

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SPZタッグ選手権

○草薙みこと 小川ひかる(30分45秒 DDTからの片エビ固め)伊達遥 スイレン草薙×

第9代王者が初防衛に失敗、草薙組が第10代王者となる

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ハイブリッド南は南利美とタッグを組むことで関節技や試合運びをを覚え、成長をとげたが、草薙みことはスイレンと闘うことで成長させようという考えのようだ。ともあれ草薙小川にベルトが戻ってきた。ビールで乾杯。

最終戦はさいたまドーム大会。セミは先月の横スペと同様草薙みこと対ハイブリッド。2連敗を回避したい草薙が猛然と攻め、最後はタイガードライバーで3カウント奪取。

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メインは吉田対永沢のSPZ選手権。草薙伊達を連破した吉田に勝てそうなのはもう永沢しかいない。しかし試合内容は一方的に吉田のパワー殺法が火を噴き、最後はデンジャラスキックで永沢をたたきのめした。勝負タイム17分37秒。吉田が4度目の防衛に成功。

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SPZ世界選手権

吉田龍子(17分37秒、デンジャラスキックからの片エビ固め)永沢舞

第20代王者が4度目の防衛に成功

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「つ、強い・・・」

満場のファンやセコンド陣、今野社長や井上秘書までがそう思った。はたしてこの選手を止める者はでてくるのであろうか、こうしてSPZは9年目を迎える・・・

2007年4月18日 (水)

第91回 8年目1月ドーム決戦 吉田龍子×伊達遥

2017年の年が明けた。

「さあみんな食え!あたしがファン感謝デーで体を張って儲けたから、ことしはなんとタラバガニだ!」

年末のファン感謝デーであがった利益はすべてSPZ選手会経由で寮の「高級食材購入費」に化ける。後輩思い?の吉田寮長と新咲、マイトスは12月30日、アメ横へ出かけ「タラバガニ、中トロ、いくら、カズノコ」をごっそり仕入れてきたのである。5期生以降の選手は正月早々、一心不乱に飲食した。

19歳以上の選手、1期生から4期生までは社宅扱いのマンションからの通い待遇なので、年末年始は帰省する選手が多い。規制したのは「正月なので初詣対応に呼び出された」草薙みこと、そして実家が近い小川、富沢レイ、保科。上原と伊達は正月返上で道場に通ってトレーニング。

8年目1月。「新春ロケットシリーズ」開幕。

2017年のSPZは1月4日、首都圏常打ち会場の幕張コンベンションホール、保科優希対マイトス香澄戦から始まった。

「6時半+8冊の女」保科優希が新人、マイトス香澄の勢いを巧みに受け流して、最後はスタミナが切れた頃合いを見てショルダータックルをかまして勝利。

そのあとリングに今野社長と井上秘書、小川選手会長とリングドクター羽山、SPZ王者吉田の5人が上がって年始のご挨拶。最初は今野社長がマイクを持った。

「あけましておめでとうございます。本年もSPZは「本気、まごころ、手作り感」をモットーに、いいファイトを提供していきたいと思います、応援よろしくお願いいたします」

吉田の挨拶は「応援よろしく」と短めで、小川選手会長も「いつも応援ありがとうございます。これからも精一杯努力してまいりますのでよろしくお願いいたします」といったものだったが、井上秘書は「SPZも8年目になり、1日5試合もさばくのがしんどくなってきましたので、1期生がそろそろ引退すると思うので誰かをレフェリーに引き込みます」と衝撃発言をかまし、羽山女医にいたっては「負けて動けなくなった選手やケガをした選手にはどんどん注射しますので、どんどん応援して選手を乗せてあげてくださ~い!」などと言って爆笑を誘った。

新春第1戦のメインは吉田永沢富沢の「新世代連合」に伊達沢崎+スイレン草薙という未来を感じさせるカードが組まれた。吉田組には富沢、伊達組にはスイレンという「大穴」があるチーム同士の対戦は・・・いつものように吉田が暴れ回って優位に立つ。さすがの伊達遥もDDT2連発からのプラズマサンダーボム2連発を食らってしまいグロッギー状態に追い込まれ、スイレンが出てきたところをー

「とおー」

永沢富沢の合体パワーボムでスイレン撃沈。それでも新しい風を感じさせる19分18秒の激闘だった。

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第3戦山口周南大会。メインは草薙みこと、小川ひかるに永沢舞・富沢レイが挑むSPZタッグ選手権。小川と富沢のどちらが先に沈むかがポイントの試合。だが、試合の大部分を占める永沢対草薙の攻防で永沢が優位に立ってしまい、小川もただ永沢の攻撃を食らい続けるだけ。

―このままではいけない。

草薙が流れを変えんと草薙流兜落とし、続くフォールは富沢がカット。

「―うう、痛いですう、仕返しーー!!」

ドォオン!

永沢がここでJOサイクロンをぶっぱなしてきた。何とかカウント2.8で返した草薙だったが、目がうつろな状態で立っているのがやっとの状態。

「もーらったー!」

タッチを受けて出てきた富沢が草薙に延髄斬り一撃。頭がくらくらしているところへこの攻撃はきつい。これで草薙は3カウントを奪われてしまった。王座移動。永沢富沢が8代目SPZタッグ王者に輝いた。

「やーりーーー!」富沢レイがコーナーに上がって右手人差し指を突き上げる。同期で実力差が『天地の差』といわれ続けてきた草薙みことから、いくら永沢が大ダメージを与えた後といえども、自分が延髄斬りでフォールした。デビューから7年になろうとするが、ようやく富沢もチャンピオンベルトを巻くことができた。

「舞ちゃんありがとー」

そしてリング上で抱き合う永沢舞と富沢レイ。実力はそんなにないので、会社からは「アイドルレスラー」のくくりに入れられて、いつもは前座要員で闘っているが、それでもタッグを組み続けてくれた後輩に富沢は感謝した。

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SPZ世界タッグ選手権試合 60分1本勝負

永沢舞、○富沢レイ(30分くらい、延髄斬りからの片エビ固め)草薙みこと×、小川ひかる

7代目王者が初防衛に失敗、永沢・富沢が8代目王者となる

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6戦目は岡山大会。

メインは集客とスイレン育成のために組んだEWAタッグ戦、ドリュー・クライ、マリア・クロフォードに伊達遥、新人のスイレン草薙が挑むカード。スイレンがどこまでついていけるかがポイントだったがー

伊達がひとりで外人2人をやっつけてしまった。ドリューとマリアは伊達のバリアを突き破れないままズルズルとダメージを重ねてしまう。スイレンがやったことは伊達の指示を受けて合体技をいくつか出しただけ。タッチは1度もなかったので、試合権利は最後までなかった。ファンもスイレンも拍子抜け。いまいち締まりのないメインであった。ともあれスイレン草薙がデビュー10ヶ月で初めてベルトを巻いた。

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EWAタッグ選手権 60分1本勝負

○伊達遥 スイレン草薙(30分くらい、SPZキックからの片エビ固め)ドリュークライ、マリアクロフォード×

伊達組が新王者となる。

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そして最終戦は1・15新日本ドーム決戦。いつものように超満員のファンで埋まった。

第3試合はドリュー・クライ、マリア・クロフォード対デスピナ・リブレ、ミレーユ・シウバの外人同士のタッグ戦。しかし試合前のアナウンスで場内ええっの声。

「次の試合に出場いたしますミレーユ・シウバ選手は本日が最後の試合となります、皆様より一層のご声援をよろしくお願いいたします」

古くからのファンは忘れていない。

SPZがまだ1年目で小会場を回っていたとき、AACジュニア王者として、鋭い打撃で南利美の最初の壁として立ちはだかったミレーユ・シウバを。あれから8年の月日が流れ、南は引退し、ミレーユ・シウバも24歳になり、激しいファイトの代償で「満身創痍」の状態。

「アリガト、社長サン、ブラジル帰ッテ農業デモヤル」

現役はブラジルでの小規模なスポットショーでもうしばらく続けるらしいが、日本への遠征はこれが最後と決めたようだ。ゴングが鳴るや先発を買って出たミレーユはいつものような小気味いい打撃技でクロフォードを攻めてゆく。しかし、地力に勝るEWA軍が盛り返してゆく。

最後はドリューの強烈なハイキックがミレーユ・シウバの意識を断ち切って3カウント奪取。勝負タイム13分25秒。

******ミレーユ・シウバ日本最終試合******

○ドリュー・クライ マリア・クロフォード(13分25秒、ハイキックからの片エビ固め)デスピナ・リブレ、ミレーユ・シウバ×

試合後、井上霧子レフェリーとAACのエージェント、ハヤトール氏が花束贈呈。またひとりSPZを支えた「恩人」がリングを去った。

休憩後の第4試合は永沢舞対新咲祐希子のシングル。キャプチュードで永沢が手堅く勝利。選手会興行ラダーマッチの雪辱を果たした。

セミ前は上原今日子対ナスターシャ・ハン。ナスターシャのアキレス腱固めに苦しんだが、最後はフライングニールキックでEWA最強外人のナスターシャを撃破。

セミファイナルは「正月なんで騒々しい、もとい百花繚乱の6人タッグでもやりますか」ということで草薙小川ハイブリッド南対秋山沢崎スイレン草薙。EWAタッグベルトをタナボタで獲ってしまったスイレンにハイブリッドがサソリ固めで制裁。そしてハイブリッドは秋山にもネオ・サザンクロスロック。

「この技に耐えられるかしら?」

姉の決めぜりふを流用したあと、リング中央で変形STFが決まる。沢崎のカットは草薙に阻まれ、スイレンは場外でのびている。秋山たまらずギブアップ。くーるびゅーちー軍が快勝を収めた。

そしてメインは吉田龍子対伊達遥のSPZ選手権。挑戦者は上原、永沢も社長は考えたが、ドームのメインということで、一期生で男性女性ファンともに人気の高い前王者の伊達遥を起用した。時計の針は逆戻りするのか、それとも本格的なエース吉田時代が幕を開けるのか、ファンの注目度も高かった。

だがー

試合は完全な吉田ペース、ラリアットの乱発で伊達のバリアを突き破り、フランケンシュタイナーを連発してスタミナを奪い取っていってー、

「遊びじゃないんだよ!」

スプラッシュマウンテン。どうにか伊達はカウント2.8で返したが、なんと吉田は休まずもう一度同じ技。

ドゴォオオン!

伊達さんが殺される!場内からは悲鳴が響き渡る。

しかし伊達、辛うじて意識は残っていて、ロープ際だったので足をサードロープにかけた。しかしもう伊達には起き上がって反撃する力は残っておらず、察した吉田がステップキックでとどめを刺して試合終了。30分47秒の試合だったが、殺人ヒザ魚雷が火を噴くことはなかった。王者が3度目の防衛に成功。

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SPZ選手権試合 60分1本勝負

吉田龍子(30分47秒 ステップキックからの片エビ固め)伊達遥

第20代王者が3度目の防衛に成功

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「・・・・・・・・・・・・・・・」

敗れた伊達は悔しさをこらえながら控室へ戻った。

2007年4月17日 (火)

第90回 8年目クリスマスイブ悪夢の選手会興行

2016年、12月24日横浜体育館で年末恒例の選手会主催興行が行われる。さすがに3回目なので小川選手会長はネタ出しに悩んだ。

「困りました・・・なにか選手会興行のネタはないでしょうか、明るく楽しいプロレス・・・うーん」

小川ひかるは過去数年分の週刊ハッスルのバックナンバー。パラパラとめくってみたがいい事例がない。

「あった・・・これ面白そう」

そして本番、クリスマスイブの選手会主催興行。ロビーにはクリスマスツリーが飾られ、めでたさいっぱいのなかでの選手会興行となった。

「めりーくりすまぁーす!」司会の沢崎光、伊達遥がクラッカーを客席に放つ。

「今日は・・・クリスマスイブなのに・・・来ていただいてありがとうございます・・・ええと・・その・・・面白いプロレスを・・・見てってください・・・笑えない場合は・・・引いちゃって下さい・・・」

1.        移動中の秘蔵ショット公開。

沢崎光と草薙みこと、上原今日子のトークショー形式で進んで行く。スクリーンには次々と「秘蔵ショット」が晒される。小川ひかるが資格取得ハウツー本を読んでいたり、渡辺智美と井上秘書がお菓子を食べているのはともかく、南利美がこくりこくり眠っているスライドが出たりして館内笑った。

2.        ラッキーナンバー抽選会。

例年通り選手からの提供品が抽選でプレゼントされる。永沢舞から「虎のぬいぐるみ」提供。富沢レイからは「深夜アニメのDVD」が。

3.ストリートファイト&ラダーマッチ30分1本勝負 永沢舞VS新咲祐希子

この試合、3カウントやギブアップではなく、リング上に高く吊るされた賞品(横浜中華街のお食事券)を先に奪取したほうが勝ち。で、賞品奪取のためにリング上には脚立がひとつ用意された。

「よーし、北京ダック食べちゃうよ~、杏仁豆腐も~」

ジーンズ姿の新咲が対戦相手の永沢(これもかわいい私服姿だった)に目もくれず、脚立を運んで賞品を奪取しようとするが、永沢が脚立に蹴りを入れて横転させ、新咲は派手に転落する。これが3回続いたので館内爆笑。

賞品を手に入れるためにはまず永沢を叩きのめさないといけないと考えた新咲がこんどは永沢に「ふつうのプロレス」を仕掛けるが、永沢も実力者なので逆にフロントスープレックスで投げまくる。

バァンッ。

続いてノーザンで投げつけて、そのままフォールの体勢だがラダーマッチなので井上レフェリーはカウントをとらない。

「アレ、井上さん、カウント、フォール・・・」

ルールを忘れて素で闘った永沢、ノーザンでフォールの体制が30秒も続いて、場内また爆笑。

気を取り直した永沢、ロープに走って

パッシーン。ラリアットが命中。吹っ飛ばされ、起き上がってもよろめく新咲。しかしこれは罠だった。永沢がチャンスとばかりもう一度走ってきたところに、そばにあった脚立を放り投げた。

「ぎゃっ・・・」

脚立と激突して派手にスッ転ぶ永沢。そして新咲は脚立をダウンした永沢の上にかぶせて、自らはそのままコーナーに登りダイビングボディプレス!

「きゃう・・・」

SPZではあまり見られないハードコアな展開に沸いた。脚立越しにボディプレスを食らった永沢、痛みでもがき苦しむ。新咲は永沢を場外に落として、そのスキに脚立を立てて賞品を奪取。横浜中華街のお食事券を手に入れた。勝負タイム7分33秒。

「やったー、勝ったーっ!」

新咲の喜びようといったらまるでベルトを奪取したとき以上であった。

3.        富沢レイ アニメソング2曲熱唱。

これは時間調整の意味合いが強かった。場内それなりに沸いた。

4.メインイベント SPZ王者吉田龍子10人がかり

本部席で京スポ新聞、若林記者がナレーション。

「数々の強豪選手を撃破し、SPZ世界王者に輝いた吉田龍子、今夜また伝説に挑む。空手や柔道で10人組み手というのがあるが、プロレスでいっぺんに10連勝はできるのか、あまりにも無謀ともいえたが本人は「ほっといてくれ、自分をもっと高めたいんだ」などといっております。さてこの世紀の、いや世紀末の一戦、どうなるんでしょうか

「赤い破片」が響いて、コスチューム姿の吉田龍子が入場。そして反対側コーナーからサングラスをかけた渡辺智美が入場。そしてマイク。

アーハハハハハハ。吉田龍子。同期のお前がチャンピオンになって、悔しいからお前を再起不能にしてやる。生きて年を越せると思うなよ、ウェーッハハハァ」

渡辺の棒読み口調のセリフに館内ドン引き。そのあとスタッフがリング上に担架を運んできた。

「見ろ、これは担架だ、おまえをここに沈めてやる、ウァハハハハ」

吉田は無言。

「いまからあたしが買収した9人の刺客とたたかってもらうわ。何人倒せるかしら、ウァーッハハハハ」

いくらお強い吉田龍子といっても9人の刺客プラス渡辺を含めた10人を倒すのは厳しいだろう、だが吉田龍子ならひょっとしたらやるかもしれない。なにしろ永沢草薙伊達を連破した8月の戦いは記憶に新しい。館内はざわついた。

そして場内に響く「恋はピンポン」、トップバッターのマイトス香澄入場。

「行け、マイトス!先輩命令よ。あの小生意気なチャンピオンをギッタンギッタンにしてやりなさい」

「ひ、ひええ・・・」

そしてゴング、ある意味SPZ選手権より過酷な戦いが幕を開けた。

とりゃー!」

マイトスは果敢にチョップを打っていくが、吉田はウンともスンとも言わない。

悪いけど、後がつかえてるんで

吉田龍子ラリアット。これでマイトスは吹っ飛んだ。すかさずフォール。阪口レフェリーがマットを3つ叩いた。

1:吉田(2分20秒、ラリアットからの体固め)M香澄

なかなかやるわね。じゃ2人目、いっくよー

場内に響き渡る「オリエンタルクラッシュ」吉田の顔が一瞬凍りつく。まさか草薙みことかと思わせたが出てきたのは新人のスイレン草薙だった。

行け!シュイレン、先輩命令よ、あの思い上がり者を草薙流奥義で殺害してやるのだあ」

「全力で行きます」

普段の興行ではまずシングル対戦であたることのないスイレンが5分ほどアームホイップやフロントスープレックスで奮闘したが、それまでで、最後は吉田のパイルドライバーにカウント3を喫した。

2:吉田(7分57秒、パイルドライバーからの片エビ固め)S草薙

「まだまだ、これはほんの小手調べよ、いでよ!秘密兵器その1!」

吉田の顔が険しいものに変わる。

メキシコ音楽が流れだす。まさか、AACの選手はとっくに帰国したはずだ。

「エル・オガワ・メンドーサ!」

銀色の覆面を被ったレスラーが花道に姿を現した。やたら露出の多いコスチュームと線の細さで正体はバレバレである。

お、小川さん・・・」

「行け!メンドーサ!あの生意気女を再起不能にしてやるのだ」

小川ひかる、いやエル・オガワ・メンドーサが普段は見せないナックルパートで吉田を殴りつけていく。吉田もチョップで応戦してこれに付き合う。

5分ほどそんな攻防をやった後、メンドーサがバックドロップで勝負をかけるが、カウント2で返して、

パッシーン。

ラリアットで反撃。

―大先輩だし、まだ派手な技は使えないよね。

ここで、意表をつくスモールパッケージホールド。虚を突かれたメンドーサはあっさりと3カウントを聞いた。

3:吉田(13分7秒、首固め)E・O・メンドーサ

「な、なんてことなの、め、メンドーサがやられるなんて。まあいいわ。4番バッターはすごいのいくわよ

館内に一時大ブレイクしたアニメのテーマ曲が流れ、全身タイツに特殊メイクを施した怪人が現れた。こんなコスプレができるのは富沢レイしかいない。館内は沸いた。

第13使途、カムエクエル!」

「フシュルルルル、ウガァー」

カムエクエルは物凄いハンマーブローで吉田を追い込む。そして掌底、調子に乗って噛み付き攻撃を狙ったところで吉田が切れた。

組み付いてプラズマサンダーボム一撃。使徒は完全に沈黙した。

4:吉田(17分2秒、プラズマサンダーボム)カムエクエル

「ハァハァ、はい、次は誰?」

「こ、このくらい想定の範囲内よ。5人目はすごいんだから、元KJW王者、井上霧子!」

場内ええええ!の声。

井上霧子がいつものようにスーツ姿でリングイン。

「い、井上さん・・・どうして」

「悪く思わないでね。きょうはファン感謝デーみたいなんで何やってもいいみたいだから」

ハンデのつもりなのか、なんと井上秘書の右拳にはメリケンサックが装着されている。あんなので殴られたら吉田といえどもただではすまない。

井上のパンチをうまくかわす吉田。

ふっ!」

井上の右フックを身をかがめてかわし、そのまま組み付いてサイドスープレックスで投げる。

バァンッ!

「やってくれるわね・・青春の血がたぎってきたわ」

井上がスリーパーで吉田を攻める。懸命にロープに逃げる吉田。

そして立ち上がった吉田にー

「ヤクザキック!」

叫んで井上が往年の必殺技、ヤクザキックを撃ち込んだ。現役時代を知るファンは狂喜。そのままフォール。

ワン、トゥ・・・ドドドドドド。

カウント2.5で返した吉田、今度は組み付いてブレーンバスター。すかさずフォール。久々の実戦でカンの鈍っている井上はフォールを返せなかった。

5:吉田(23分11秒、ブレーンバスターからの体固め)井上霧子

ど、どうやら私も悪魔の力を借りるときがきたようね、いでよ、秘密兵器、SPZの社長!」

「デンジャーゾーン」がかかり、花道から黒スーツ、黒サングラス姿の今野社長が現れていた。右手には日本刀が握られている。

―まじかよ。

「これも渡世の義理、死んでもらいやす、おりゃぁぁぁ」

社長が日本刀をぶんぶん振り回す。かわした吉田がスライディングキック一閃。これで転倒した社長に逆片エビ固め。

「うぎゃああああああ」

たちまち社長はギブアップ。場内、素人の登場に呆れて声も出ず。

6:吉田(25分2秒、逆片エビ固め)今野社長

「あと4人!」

「くっ!なんてことなの!だがまだまだこちらにはサプライズがあるんだから!いでよ!秘密兵器。」

リングサイド本部席からいきなり京スポ新聞の若林記者が背広姿のままリングインし、吉田に不意打ちのスライディングキック。転倒した吉田に新聞紙をかぶせてその上からストンピング攻撃。渡辺の人脈恐るべし。マスコミ記者さんまで味方に引き入れ吉田抹殺の一味に引き入れる。

どうにか起き上がった吉田の背後に組み付いて、なんとバックドロップ。この記者、プロレス記者歴15年なのであらゆるプロレス技を一応知っている。

ダウンする吉田。さすがに体固めのフォールはやりかねたのか、若林記者、踏みつけフォール。しかしカウント2で返した吉田。

―遊びじゃないんだよ、若林さん!

DDT一閃。そのあと踏みつけフォール。悶絶した若林記者はカウント3を聞いた。この攻防は当事者同士で昨日話し合って決めたらしい。

7:吉田(29分0秒、DDTからの体固め)若林記者

「あと3人!」吼える吉田龍子。

そしてかかったテーマ曲は秋山のテーマ「DETECT」吉田の表情が険しいものに変わる。

「ウワハハハハ、素人2人を相手にして油断しているところへ強力レスラーをぶつける、これは対応できないだろう、さあこんどこそ貴様の最期だ」

「ごめんねー、吉田さん。面白そうだから、智美ちゃんの誘いに乗っちゃった」

ここからは普通のシングルマッチが展開。秋山もコブラツイストなどで攻めるが、吉田もラリアット、DDTで反撃して、最後は必殺スプラッシュマウンテン、秋山をも退けた。

8:吉田(42分2秒、スプラッシュマウンテンからの体固め)秋山

「ゼェ、ゼェ、ゼェ」

さすがに8人、そのなかには小川富沢秋山といったそこそこの相手も混ざっているので吉田の息は上がっていた。

「ふふふふ、ボロボロね吉田さん。9人目の相手はあたしよ。覚悟してね」

それまでリングサイドで悪役を演じていた渡辺がグラサンを外してリングイン。

「なめるな!」

吉田が懸命に殴りかかる。渡辺もアキレス腱固めで応戦。その後、渡辺が上から組み付いてパワーボムを狙う。

「バカにするなぁ!」

いくらなんでもパワーの差がありすぎる。リバースで返してそのまま上から押さえ込む。渡辺は返そうとせず、あっさり3カウントを聞いた。

9.吉田(47分3秒、リバーススープレックスからの体固め)渡辺智美

敗れた渡辺だが、吉田にしがみついたまま離さない。

「な、何だよ、離せよ」

せ、先生―、先生、お願いします」

リング下に潜んでいた白衣を着た羽山リングドクターがすばやくリングイン。ポケットから怪しいハンカチを取り出して吉田の口元にあてた。

「は、はうううん・・・」

気が遠くなった吉田。羽山リングドクター、すかさず内ポケットから注射器を取り出して

ブスーッ。

これで吉田の意識は闇に落ちた。

巨象をも眠らせる麻酔よ、正月まで眠っていなさい!」勝ち誇る渡辺。

羽山リングドクターが吉田の上に覆いかぶさってフォール。吉田は無反応のままカウント3を奪われた。

10:羽山海(47分33秒、注射からの体固め)吉田龍子

館内むちゃくちゃな結末に唖然。

「ウハハハ、ついに吉田龍子を仕留めたぞ、みんな上がって来~い!」

吉田にやられた8人―秋山美姫若林記者今野社長井上霧子カムエクエル、E・O・メンドーサ、スイレン草薙マイトス香澄―がリングに上がる。

そして羽山リングドクターと渡辺智美を加えた悪の10人組で手上げ。場内呆れて声も出ず。

保科、上原の運ぶ担架に乗せられて運ばれる吉田龍子。けっきょく吉田龍子の無謀な10人抜き挑戦はあと一歩で達成できなかった。締めのナレーションは沢崎光。

「10人抜きという日本プロレス史に残る伝説を打ちたてようとした吉田龍子だったが、最後に力尽きてしまった。だが、彼女の無謀とも思える挑戦は、我々の心に深い感動を与えた。頑張れ吉田龍子、われらがSPZチャンピオン」

こうしてクリスマス選手会興行は終わった。

そしてプロレス大賞。最優秀選手は吉田龍子。最優秀新人はスイレン草薙。ベストバウトはSPZクライマックス公式戦の吉田龍子対永沢舞。ベストバウトのタッグはどこかの地方会場で組んだ、吉田龍子、永沢舞対ハイブリッド南、草薙みことのカードが選ばれた。

こうしてSPZの2016年は幕を閉じた。

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2007年4月16日 (月)

第89回 8年目12月さいたまドーム5大シングルマッチ

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ここまでのあらすじ

横浜戸塚に本拠地自社ビルを構えるお嬢様プロレス団体「SPZ」は旗揚げ8年めを迎え、日本でも有数のプロレス団体に成長した。そして2016年最終戦、さいたまドーム大会を迎える。

最終戦はさいたまドーム大会。今年最後の興行なので今野社長が思い切った企画「5大シングルマッチ」を出してきた。当然場内は超満員の観客で膨れ上がった。

第1試合は保科優希対マイトス香澄。保科が旗揚げメンバーの意地で勝利。

第2試合は富沢レイ対渡辺智美。ストレッチプラムをしつこくかけ続けた富沢が勝利。

第3試合はスイレン草薙対小川ひかる。

まず小川さんに勝つ。そして上へ行く。そう決めて小川に挑みかかっていって、みことを思わせるようなアームホイップやフロントスープレックスの連打。

小川の脳裏を草薙みことに追い抜かれた6年前の記憶がかすめる。

―いや、今回は勝つ。これで決める。

リング中央でSTF。スイレン草薙の悲鳴が。場内一気にヒートアップ。しかしスイレンは1度目のSTFを耐え切った。そしてー

「勝たせていただきますっ!」草薙流兜落とし発動。

小川の目の前が一瞬ぼうっとかすむ。

カウント2.5で返す小川。休まずスイレンがショルダータックル。これでは小川も本気にならざるを得ない。

素早く起き上がってスイレンをアームホイップで転ばせてこの試合2度目のSTF,手首のフックでしっかりと鼻を潰す。こうなってはスイレンはギブアップするしかなかった。勝負タイム14分38秒。小川はしばらく頭を押さえていた・・・

第4試合は秋山美姫、沢崎光にデスピナ・リブレ、ユーリスミルノフの外人軍が激突するタッグ。なんとユーリが沢崎をバックドロップで仕留めてしまった。

休憩後、いよいよ5大シングルマッチ。

まずは上原今日子対新咲祐希子。なんと6期生の新咲が3期生で元SPZ王者の上原をシャイニングウィザードで撃破してしまった。驚きの展開。

第6試合は永沢舞対ドリュークライ。終始良く攻めた永沢がドラゴンカベルナリアでギブアップ勝ち。

セミ前はチョチョカラス対ナスターシャ・ハンの最強外人対決。激戦の末ナスターシャがSTOでチョチョカラスを下した。

セミファイナルは伊達遥対ハイブリッド南。8月のSPZクライマックスでは30分ドローだったのでその決着戦的な意味合いで組まれたのだが、ハイブリッドが伊達の「バリア」(ファンの間ではATフィールド?とも呼ばれているようです)を崩せず、ズルズルとやられてしまい、最後はSTOで3カウント。

そしてメインは吉田龍子対草薙みことのSPZタイトルマッチ。

SPZクライマックスでは本割りでは草薙、決定戦では吉田が勝っている。最近は吉田も一発で眠らせるパワー技と、重爆の飛び技、そしてなにより負けない試合運びを覚えてきており、井上秘書が言うところの「化け物、怪物」の域に到達している。今回も吉田がパワーで押しまくる。

ギロチンドロップ、フランケンシュタイナーで中押ししてからスプラッシュマウンテン。カウント2.8でクリアした草薙があとがないと感じたのか、草薙流兜落とし発動。そしてサソリ固め、しかしあまりにもロープに近い。

―これからはあたしの時代だ。いつまでも先輩方とベルトのキャッチボールをするつもりはない。以前の伊達さんのような絶対王者になる。

草薙のDDTを受けきった吉田が、草薙を組みとめて高々と担ぎ上げる。場内に響く草薙ファンの悲鳴。

―しばらく眠ってください。

ドゴオンッ!

2発目のスプラッシュマウンテン炸裂。172cmの高さからまっさかさまに叩きつけられて、草薙の意識は闇に落ちた。カウント3、第20代王者吉田が2度目の防衛に成功。勝負タイム21分26秒。

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SPZ世界選手権試合

吉田龍子(21分26秒、スプラッシュマウンテンからのエビ固め)草薙みこと

第20代王者が初防衛に成功

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「落ち方がやばかったわよ~」リングドクター羽山海がリングに駆け上がる。草薙みことは意識を失ったまま起き上がれない。リング上で草薙の様子を見て脳震盪かなと判断した羽山女医、しかし念のためセコンド陣にはこう告げた。

「あ、動かすと良くないかもしれないので、担架用意してくださいね~」

小川、スイレン、マイトスらが持つ担架で運ばれて退場する草薙。みことのこんなシーンも珍しい。ファンの悲鳴が交錯する中草薙は横たわったまま控室へ戻った。草薙一族の誇りだったみことがここまで叩きのめされてしまい、スイレンの胸中も忸怩たるものがあった。

ブスーッ。

控室でマッド女医、羽山が気付けの注射。

「あっ・・・羽山さん・・・私どうしてここに」

周りには今野社長やタッグパートナーの小川、セコンド陣が取り囲んでいる。

「21分26秒、スプラッシュマウンテンで草薙さんの負け。」

小川が試合結果を告げる。

「・・・まだまだ・・・修行が・・・足りませんね・・・」

自嘲気味につぶやく草薙。こうしてSPZの2016年の戦いは幕を閉じたが、今年も例年通り「クリスマス選手会興行」が行われる。

2007年4月15日 (日)

第88回 8年目12月・奈良大会

12月シリーズ、第6戦の奈良大会。

SPZは8年目の今まで奈良で興行を打ったことがない。「稼げるエリアで稼ぐ」方針なので今まであえて回らなかったし、関西地区は大阪と神戸で事足りると考えていたフシもあったが、テレビ局サイドからの要請もあって、今回ついに奈良で初興行を打った。

前日は和歌山興行だったので、移動距離が少なく12時過ぎに奈良到着。しばらく奈良公園で昼食をかねて休憩し、永沢舞は当然鹿と遊んだ。

14時過ぎに会場入りしてみんなでリング設営。そのあと各自で練習。リング上では若手のスイレン草薙とマイトス香澄が真剣なスパーリング。昨日メインでタッグ選手権のロングマッチを闘った秋山沢崎草薙小川の4人は疲れが抜けないのか、ストレッチなどで軽めの調整。

17時半開場。観客動員が心配されたが3000人収容の会場は超満員のファンで埋まった。

「ヤレヤレ」今野社長は安堵し、いつものようにグッズ売り場に向かって「増収」に励んだ。

「小川ひかるTシャツ2000円!どうぞご利用ください~」

18時半試合開始、きょうは地方興行でハコも小さいのでそれなりのカード編成。それでも初めての奈良興行なので、カードを発表するたびに拍手が。「SPZはマジな潰しあいをやる大会場より地方の方が面白い」と主張するファンもいるし、「地方会場のほうがリングサイドのいい券がとりやすく、臨場感ある戦いが見られる」といって遠距離をいとわず密航するファンも多い。なんでも「関節技の攻防は小さい会場のほうが沸く」そうである。

第1試合は「写真集8冊・超アイドルレスラー」保科優希と、新人のマイトス香澄。のシングルマッチ。マイトスはデビューしたての頃、ド新人同士の対決でスイレンにまぐれ勝ちして以来シングルマッチでの白星がない。この日も保科を覚えたてのノーザンライトやギロチンドロップで追い込むも、まだ耐久力に難があり、保科のタックルに3カウントを喫した。それでも元気のいい新人のファイトに会場からは拍手が送られた。

第2試合は渡辺智美対スイレン草薙。スイレンは先シリーズで伊達のパートナーに起用されるほど将来有望な新人。しかしシングルマッチではまだ試合運びに粗さが。試合中盤に渡辺の逆エビ固めで痛めつけられてスタミナ切れを起こし、そこへ強烈?なチョップを食らってフォール負け。花道奥から見ていた草薙みこと、「まだまだ修行が足りませんね」と一言。

第3試合は新咲祐希子対ナスターシャ・ハン。地方会場の前半に組んでいいのかと思わせるほど掘り出し物の一戦。良く攻めた新咲だが、終盤はナスターシャの関節地獄。コマンドサンボ仕込みのアキレス腱固めで新咲の足を破壊。

「うあーっ!」

新咲が悲鳴を上げながらタップ。勝負タイム12分8秒。場内静まり返ったあと拍手。新咲は永沢の肩を借りながら退場。

ここで15分の休憩。それぞれ趣向の違うシングルマッチ3試合、会場はすっかりできあがっていた。

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後半の試合開始、ハイブリッド南のテーマはかつての南利美と同じなので、会場一気にヒートアップ。きょうはタッグ王者になったばかりの小川ひかると組んで、チョチョカラス、デスピナ・リブレのAAC軍と激突。小川とデスピナが「やられ役」を務めたので両方とも試合後半は脱落して自軍コーナー下でのびてしまった。最後はハイブリッドとチョチョカラスの一騎打ちの様相。運の悪いことにチョチョカラスの延髄斬りがまともに入ってしまい、ハイブリッドがフォール負け。それでも23分25秒の好試合に会場は沸いた。

セミファイナルは草薙みこと、上原今日子(上原が強くなってからこのコンビは初めてかもしれない)のタッグにEWA勢のユーリ・スミルノフ、ドリュー・クライが激突。終盤、上原が捕まってしまい、流血させられた上に合体攻撃のダブルインパクト、スミルノフの裏投げと食らってダメかと思われたが上原うまく場外エスケープで難を逃れ、どうにかスキを見て草薙にタッチ。代わった草薙もドリューのニーリフトにあわやと思われたが、最後は草薙流兜落とし発動。25分16秒の激闘を制した。

大熱狂のままメインの6人タッグ戦。吉田龍子、永沢舞、富沢レイの3人に対するは秋山沢崎伊達の一期生連合軍。SPZ王者の吉田が現時点の団体エース。迫力あふれる攻撃で一期生をなぎ倒しまくり、代わった永沢もフロントスープレックスやノーザンで投げて投げての「永沢劇場」を展開。メインに抜擢された富沢も吉田とのサンドイッチラリアットを伊達や沢崎に決めて見せるなど大ハッスル。

沢崎も一期生の意地を見せ吉田をタイガースープレックスで投げる。伊達もSPZキックやめったに見せないSTOで永沢を追い込み、代わった吉田にも殺人ヒザ魚雷を撃ち込んで悶絶させる。

「うが・・・っ」

永沢吉田に大ダメージを与え、20分過ぎについに富沢レイの引きずり出しに成功。一期生連合がひとり格落ちの富沢を袋叩き。最後は沢崎のミサイルキックが富沢の顔面を捉えて試合終了。館内は22分35秒の迫力ある攻防に沸き、ラストは一期生が意地を見せる結末に拍手。伊達秋山沢崎の3人で手上げ。

全試合が終わったのが21時。そのあと動ける選手およびスタッフでリング撤収。選手たちは22時ころ会場を後にして、宿泊先のビジネスホテルへ移動。仲のよい選手同士で連れ立って食事に行くのだが、今回は札幌あたりと違って、初めての奈良泊まりなので誰も「グルメ情報」を知らない。また後半3試合が20分を超すハードな試合だったので、探索する気力もない選手が多く、結局若手選手はファミレス、20歳以上の選手はみんなでチェーン居酒屋という仕儀になった。

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2007年4月14日 (土)

第87回 SPZタッグ選手権 秋山 沢崎×草薙 小川

8年目12月。

広島にグッズショップ7号店「SPZフィーバー」出店。これで沢崎の引退後の職場が決定?した。

12月シリーズはEWAからナスターシャ・ハン、ユーリスミルノフ、ドリュークライの3強が来日したので豪華なカード編成となり、これまでまったく興行を打ったことのない香川徳島愛媛でも超満員が出た。

「ハイブリッドさん、リーグ戦優勝の勢いで上原さんと組んでSPZタイトル戦に出てみませんか」

「・・・今回はパス。3ヶ月前に姉さんと獲ったばかりだから。まだ思い出が残っている・・から」

ハイブリッド南は今野社長の依頼を断った。ということで第5戦和歌山大会、メインで秋山美姫・沢崎光のタッグ王者に挑戦するのは先月のタッグリーグ戦で準優勝した草薙小川にチャンスが回ってきた。

―これがタッグタイトル戦、最後かも知れない。

一期生の小川ひかるも23歳の誕生日を迎え、最近は能力に翳りが出てきて、かつてのような動きのすばしっこさが見られなくなり、時折顔を出すメインの6人タッグマッチでも相手の技を受け切ってパートナーにつなぐ前に沈んでしまうケースが見られだした。とはいえ能力減衰に苦しむ点では一期生コンビである秋山沢崎の方がずっと深刻。なにしろ先月のタッグリーグ戦では1勝しかできなかったのである。挑戦者チーム有利というのが京スポ新聞の予想であった。

和歌山市民体育館、青コーナー側から草薙のテーマ曲「オリエンタルクラッシュ」が流れ、草薙みことと小川ひかるが入場。人気選手同士のタッグだけに館内は盛り上がる。そのあと赤コーナー側から「DETECT」がかかり、秋山・沢崎が入場。こちらも長いことタッグを組んでいる2人だけに大声援。

ー草薙さんをつぶせば勝ち目はある。

秋山沢崎は長年培ってきた連携でとにかく草薙の勢いを止めようとする。そして沢崎がタイガースープレックスで小川に大ダメージを与え、草薙にローンバトルを強要。しかし草薙もノーザンライトを乱発し、秋山沢崎と真っ向から渡り合う。

―さぁ、この技に耐えられる?

秋山が勝負をかけたドラゴンカベルナリア!草薙の身体が弓なりにきしんで行く。

「させません!」コーナーでうずくまっていた小川がふらつきながらもリングインして絞めている秋山の肩口にストンピング。カットプレーでブーイングが起こらないのは小川くらいだろう。

秋山が沢崎にタッチ。そのあと草薙が満を持してー

「勝たせて頂きます」

草薙流兜落とし発動。頭から落ちてグッタリした沢崎に覆いかぶさってカバー。小川はカットに入った秋山に抱きついて離れない。

「ワン、トゥ・・・」

しかし沢崎、レスラーの本能だけで2.9で返す。

ドドドドドド。和歌山県体育館にも重低音ストンピング。

―そんな、返された?

最大の必殺技を返された草薙はここで小川にタッチ。

「小川さん、決めてっ!」

小川はフラフラと立ち上がった沢崎に組み付いてバックに回ってー

バァンッ!

バックドロップ炸裂。高さはないがスピードがある。

そのままフォール。

いくら小川の「ヘボバックドロップ」といえどもこの状態で食らったら危険だと判断した秋山がカットに入ったが草薙が落ち着いて捕まえて、場外へ放り投げた。

「ワン、トゥ、スリッ!」

阪口レフェリーの手がマットを3つ叩く。草薙小川が42分20秒の激闘を制して、SPZタッグ王者に返り咲いた。

ワァァァァァァ・・・

和歌山のファンは4選手の激闘に拍手を送った。

社「溺愛」している小川ひかるのタッグ王座戴冠に感極まった今野社長がリングに駆け上がり、草薙と小川の手を上げた。

控室でビールで乾杯。「タイトル奪取時の定番儀式」である。とはいってもこっちの控室でビールが飲めるのは上原保科と新王者組の4名だけ。未成年組はスポーツドリンク。

「いやー、名タッグだね。このチーム、最後小川さんが決めるとは思わなかったよ」社長がべた褒め。

「あ、その前の草薙さんの兜落としでほぼ決まってましたから、でも、社長・・・ありがとう、本当に」

後輩が続々台頭し、シングル戦では追い越されまくっているが、タッグ戦ではまだまだトップで使ってもらっている。今日の試合も全国放送されるので、またひとついい思い出ができた・・・

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SPZタッグ選手権試合(60分1本勝負)

草薙みこと ○小川ひかる(42分20秒、バックドロップからの片エビ固め)秋山美姫 沢崎光×

第6代王者が初防衛に失敗、草薙組が7代目王者となる

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2007年4月13日 (金)

第86回 8年目SPZタッグリーグ戦(後編)

前回までのあらすじ

横浜に本拠地を持つ女子プロレス団体「SPZ]は創立8年目の秋を迎え、ついに一期生南利美が引退。そんななか恒例のタッグリーグ戦が始まった。

関東地方に戻っての、第6戦宇都宮大会

草薙○、小川(8点、草薙流兜落としからの片エビ固め22.13)永沢、富沢×(4点)

「普通に闘ったんじゃ勝てないから、いきなり必殺技~」試合開始早々JOサイクロンぶっ放しでペースを握る永沢。しかし草薙小川も長年の連携で耐えて耐えて、永沢が疲れて富沢が出てきたところを袋叩き。最後は「本家」草薙流兜落とし発動、富沢の意識を断ち切り3カウント奪取。

秋山○沢崎(2点、DDTからの片エビ固め15.45)ドリュー、ユーリ×(4点)

「何で勝てないんだろね」昨年まで3年連続準優勝チームがまさかの4連敗。やはり個々の力が全盛期を下回ってきて、それが結果にも出ているのだろうか。それでも今日は連携が冴えてEWA軍を撃破して初勝利。

上原、H南○(10点、ジャーマンSH,17.38)チョチョカラス、デスピナ×(2点)

ハイブリッド強い。AAC軍の連携にも屈せず、最後もジャーマンで締めた。

吉田○新咲(8点、スプラッシュマウンテン13.12)伊達×スイレン(4点)

「ワン、ツゥ・・・」ドドドドド。

スイレンが吉田のプラズマサンダーボムを2.8で返したのが最大の見せ場だった。

「なかなかやるね。」しかしスイレンは伊達にスイッチするや動けなくなってしまった。あとは孤立した伊達を袋叩き。いかに伊達でもスプラッシュマウンテン2発ではどうしようもない。

「伊達さん、すいません・・・」最後、カットにすら入れなかったスイレンが謝る。

「いいの・・・つぎ頑張ればいいから・・・」

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第7戦は群馬大会。

永沢○富沢(6点、キャプチュード、19.38)沢崎×秋山(2点)

永沢の投げ技乱打にタッグ王者組がズルズルと。最後はJOサイクロンを2.9で返す粘りを見せたが続くキャプチュードを返せず。

上原、H南○(12点ネオ・サザンクロスロック16.02)伊達、スイレン×(4点)

スイレンの草薙流兜落とし。しかし上原は頭を押さえながら平気な顔を装って起き上がってくる。

―そんな、上原さんには効いていない?

これ以上の攻め手が見つからなかったスイレンは伊達にタッチ。しかし伊達も2人にかわるがわる攻められ、苦し紛れにスイレンに再びタッチしたところを決めにかかられ、最後はネオサザンにスイレンがギブアップ負け。

ドリュー○、スミルノフ(6点、前方回転エビ固め26.15)草薙×、小川(8点)

EWA組が立てた作戦は明快で「要するにクサナギを蹴り潰せば負けることはない」というものであった。試合中盤ドリューのハリケーンラッシュ(蹴り乱打)が草薙のペースを大きく乱す。終盤は乱戦の中、ドリューのハイキックが「まともに入って何がなんだかわかんなくなった」草薙、ふらつく中で飛んだボディプレスは自爆、逆転を狙って仕掛けたタイガースープレックスは前方回転エビに切り返され敗戦。草薙組はこれで優勝の可能性が消えた。

吉田、新咲○(10点、フェイスクラッシャーからの片エビ固め、15.14)チョチョカラス、デスピナ×(2点)

メインは吉田組がひとり格落ちのデスピナに的を絞って手堅く勝利。

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最終戦は本拠地に戻ってきての横スペ大会。

草薙○小川(10点、タイガードライバー、23.26)沢崎×秋山(2点)

長年タッグを組んでいるチーム同士の対戦。草薙組はいつものように「小川が捕まり草薙が決める」パターン。兜落としは食らった直後場外に逃げてフォールを逃れた沢崎だが、リングに戻った直後にタイガードライバーを食らって万事休す。タッグ王者組は1勝6敗と「屈辱的な」成績に終わった。

永沢、○富沢(8点、ストレッチプラム16.22)チョチョカラス、デスピナ×(2点)

チョチョカラスが飛べば永沢がJOサイクロン、双方大ダメージを負って、代わった富沢とデスピナが決着戦の様相。リング中央でストレッチプラムを決めた富沢がギブアップ勝ち。

ドリュー○、ユーリ・スミルノフ(8点、ハリケーンラッシュからの片エビ固め26.41)伊達×、スイレン(4点)

ドリュー強い。最後は伊達と一騎打ちの様相を呈したが、なんと伊達との蹴り合いを制してしまった。最後は伊達が棒立ちになったところをハリケーンラッシュで撃沈。EWA軍、この顔ぶれの中で堂々の勝ち越し。

上原○ H南(14点、ダブルインパクトからの片エビ固め、19.00)吉田、新咲×(10点)

吉田組が勝った場合は決定戦になる。勝たなければあとがない吉田が猛然と攻め、プラズマサンダーボムなどで押し込むが上原はなんとかしのいで、新咲が出たところで上原猛チャージ。キャプチュードでフラつかせておいてー

「ハイブリッド!」呼び込んでダブルインパクト。即席チームがこんな技をやってしまうのだから凄い。これで動けなくなった新咲がフォール負け。

「もっと技に磨きをかけて、次も優勝目指します」

「厳しい戦いでした・・・優勝で来て本当によかったです」

優勝した上原、ハイブリッド組には賞状と金一封、副賞として「20型液晶テレビ」が贈られ、準優勝は10点で草薙組と吉田組が並んだが、直接対決で勝っている草薙組が準優勝となり、賞状と副賞の「ももかん詰め合わせ」が贈られた。

2007年4月12日 (木)

第85回 8年目SPZタッグリーグ戦(前編)

8年目11月

そして11月シリーズ「SPZタッグリーグ戦」が開幕。

出場チームは下記の8チーム。

前回優勝:吉田龍子、新咲祐希子 組

SPZタッグ王者:秋山美姫、沢崎光 組

「ザイテングラート」:草薙みこと、小川ひかる 組

明るく楽しいプロレス:永沢舞、富沢レイ 組

エースと新人のタッグ:伊達遥、スイレン草薙 組

反伊達連合?:上原今日子、ハイブリッド南 組

 (決してあまり物どうしをくっつけたわけでは)

AAC代表:チョチョカラス、デスピナ・リブレ 組

EWA代表:ドリュー・クライ、ユーリ・スミルノフ 組

開幕戦は福岡ボートメッセ大会。上原今日子が今シリーズから「3期生以降の若手連合」を離れ、「くーるびゅーちー(草薙さんチーム)」に社長の指示で寝返った。「南さん引退でパワーバランスの問題が出てきてメインの6人タッグが盛り上がらなくなってきたので・・・」との事。

さて、2戦目の広島大会からタッグリーグ戦がスタート。

伊達○、スイレン(2点、殺人ヒザ魚雷からの片エビ固め、19.11)チョチョカラス、デスピナ×(0点)

新人のスイレン草薙がどこまでこの闘いについていけるかがポイントだったのだが、スイレン草薙が序盤にチョチョカラスから大ダメージを受けて、そのあとは伊達が奮戦。1対2の状況なのだが伊達には「バリア」と「殺人ヒザ魚雷」がある。AACの二人を追い込んで、最後は殺人ヒザ魚雷でデスピナを撃沈。

永沢○富沢(2点、JOサイクロン、22.00)ドリュー×、ユーリ・スミルノフ(0点)

意外にも富沢がこの激闘にしっかりついていって、ストレッチプラムをしっかり外人に決める。最後は永沢が伝家の宝刀、JOサイクロンで勝利。

上原、H南○(2点、ネオ・サザンクロスロック24.40)草薙×、小川(0点)

「ううっ・・・」中盤やはり小川がつかまってしまう。大声援を受けながら上原にステップキックを返して、草薙にスイッチ。草薙はいつものちぎっては投げでハイブリッドを追い詰めるが、逆転のネオサザンクロスロック発動。カットに入ろうとした小川は上原が場外へ蹴り落とした。草薙ギブアップ負け。場内えええ!の声。

吉田、新咲○(2点、フェイスクラッシャーからの片エビ固め15.54)沢崎×秋山(0点)

優勝候補の筆頭、吉田新咲。危なげなくタッグ王者組を撃破。

第3戦は大阪城大会。

伊達○スイレン(4点、殺人ヒザ魚雷からの片エビ固め22.09)沢崎×秋山(0点)

SPZキックを受けて弱った秋山へスイレンが「草薙流兜落とし」!!みことにいわせると「まだまだ形が似ているだけ」と手厳しいが、秋山はこれで戦闘不能。孤立した沢崎は伊達のSPZキック、そして殺人ヒザ魚雷で撃沈。

ドリュー○、ユーリ(2点、ハリケーンラッシュからの片エビ固め、13.30)チョチョカラス、デスピナ×(0点)

上原、H南○(4点、サソリ固め26.39)永沢、富沢×(2点)

「タッグマッチでは弱い方を集中して狙いなさい」南が残した教えをその通り実践したハイブリッド。永沢の投げ技に苦戦するも富沢が出てくるや捕まえて、サソリ固めで処刑。

草薙○、小川(2点、サソリ固め18.36)吉田、新咲×(2点)

終盤、新咲が草薙の投げまくりに捕まってしまう。草薙流兜落としからのタイガースープレックスはカウント2.9でクリアした新咲だが、動けなくなったところへサソリ固め。吉田がカットに入ろうとするが、小川が「抱きつき」で阻止。こうなっては新咲はギブアップするしかなかった。

第4戦は名古屋大会。

チョチョカラス○、デスピナ(2点、ムーンサルトプレスからの体固め22.45)沢崎、秋山×(0点)

タッグ王者組まさかの3連敗スタート。華麗に飛ぶ飛ぶチョチョカラスワールドが展開されて・・・

草薙○小川(4点、フランケンシュタイナー、13.01)伊達、スイレン(4点)

リーグ戦ということでみこととスイレン草薙の初対決。素早いタッチワークと長年培ってきた連携で伊達スイレンを翻弄する草薙小川、最後はスイレンに的を絞り・・・

    ・・スイレンさん、これが「プロレス」です・・・

草薙が跳躍して、両足でスイレンの頭を捉えて、そのまま上半身のバネでスイレンを頭からマットに打ち付けて、そのままフォール。

「うぐうっ・・・」

スイレン、返せず3カウントを聞いた。

上原、○H南(6点、ミサイルキックからの片エビ固め、17.56)ドリュー、スミルノフ×(4点)

即席タッグが3連勝。個々の実力は素晴らしいものがあるので、落ち着いて戦えば負ける確率は低い。この日もEWA軍を徐々に追い込んで勝利。

吉田○、新咲(4点、DDTからの片エビ固め、13.56)永沢、富沢×(2点)

富沢が吉田の猛攻の前にあっさり沈没。

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第5戦は北海道へ一気に移動して、キターアリーナ大会。

草薙○小川(6点、草薙流兜落としからの片エビ固め、15.16)チョチョカラス×、デスピナ(2点)

実はこのリーグ戦開始前、社長から「スイレン草薙とみこみこ☆ツインズというチーム名で出場しないか」という打診を草薙は受けたが、草薙は「タッグチームとはそんなに底の浅いものではないと思います。相方とは一蓮托生です。どちらかが引退するまで私は小川さんと組みたいと思います」と言われ、このコンビ続行となった。試合は相変わらずの「小川がやられて、どうにかつないで草薙が決める」パターン。最後は「本家」草薙流兜落としが炸裂し、チョチョカラスからフォール勝ち。

永沢○富沢(4点、ドラゴンカベルナリア11.04)伊達、スイレン×(4点)

スイレンがドラゴンカベルナリアの痛みに耐えられずギブアップ負け。

上原、H南○(8点、サソリ固め23.24)沢崎、秋山×(0点)

即席タッグ4連勝。ハイブリッドの格闘マシーンっぷりがますます磨きがかかってきた。投げればジャーマン、寝技ではアキレス腱固め、打撃はニーリフト。・・・姉とのファイトスタイルの違いが歴然としてきた。秋山も終盤ドラゴンカベルを繰り出すなど大健闘したが、最後はサソリ固めに屈した。

吉田、新咲○(6点、フェイスクラッシャーからの片エビ固め、13.02)ドリュー×、スミルノフ(4点)

ドリューの蹴りに吉田が手こずったが、新咲がうまく挽回し、最後はフェイスクラッシャーで勝利。

リーグ戦4試合を消化して、即席タッグの上原今日子・ハイブリッド南組が全勝トップとなった。

(長くなるので続きます)

2007年4月11日 (水)

第84回 そういえば南さんがいなかったな・・・

これまでのあらすじ

横浜のお嬢様プロレス団体「スーパースターズプロレスリング・ゼット」は8年目の9月、ついに旗揚げの苦しい時期を支えてきた、関節のヴィーナス南利美が引退するに至った。最終試合はさいたまドーム、南利美は小川ひかると対戦、熱戦の末ショルダータックルで最終戦を飾った。以下は当日の京スポ新聞の記事。

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南引退 関節のヴィーナス 有終の美

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SPZさいたま大会9月26日 観衆42,100名(超満員札止め:主催者発表)

△30分1本勝負

S草薙(9分35秒片エビ固め)保科優希

フロントスープレックスで保科越え

△30分1本勝負

渡辺智美(6分25秒逆片エビ固め)M香澄

アイドルレスラーが新人一蹴

△30分1本勝負

○新咲祐希子 富沢レイ(12分10秒片エビ固め)D・リブレ M・シウバ×

フェイスクラッシャーで豪快に決めた

△30分1本勝負

○草薙みこと 永沢舞(16分11秒エビ固め)N・ハン チョチョカラス×

久々タッグ結成も合体パワーボム炸裂

△南利美最終試合 30分1本勝負

南利美(24分31秒片エビ固め)小川ひかる

最後は身体ごとぶつかって勝利

△特別試合30分1本勝負

上原今日子 ○ハイブリッド南(18分9秒ジャーマン)秋山美姫 沢崎光×

ジャーマンで熱戦にケリつけた

△SPZ世界選手権60分1本勝負

〔挑戦者〕          〔王者〕

吉田龍子(28分19秒片エビ固め)伊達遥

パワーで押し込んでステップキックでトドメ

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---最後はタックルで小川を倒す---

南利美、最後の試合。対戦相手は「チーム関節地獄」の盟友、小川ひかる。15分過ぎに勝負をかけた逆片エビ固め。鬼気迫る表情で長々と絞る南、懸命にこらえる小川。SPZプロレスを彩ってきた名シーンにさいたまドームが爆発した。南は関節技のスペシャリストというイメージが強いが、何でもない技で数万人の観衆を惹きつけるアーティストでもある。その輝きは最終戦でもいかんなく発揮された。これで小川は決定的ダメージを負い、立ち上がるのがやっとの状態。フィニッシュに南が選んだのは、走りこんでのショルダータックル。あえて関節技で決めなかったところがプロレスラー南の自己主張だったか。これでカウント3が。場内には涙ぐんでいるファンが男女問わず多数。ファンに愛された名レスラーがリングを去った。[若林太郎]

■■吉田が新王者に輝く■■

さいたま大会メーンは吉田龍子が伊達遥を下してSPZチャンプに返り咲いた。伊達は先シリーズの負傷が完治しておらず、殺人ヒザ魚雷を撃つことができない。手負いの戦艦に吉田重戦車が容赦のない攻撃を浴びせ、最後は強烈なステップキックで伊達からカウント3を奪った。敗れた伊達は「南さんの引退試合なので勝ちたかったのですが・・・まあ次頑張ります」と肩を落とした。

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9・26さいたまドーム大会終了後、「よこ川」を借り切って南利美の慰労会が開かれ、午前0時に4期生以降の「未成年組」が帰らされた後はビールが供され、飲み会は大いに盛り上がった。酔ってしまった南は小川ひかるのアパートで泊まり、翌日、道場にとめてあったバイクにまたがり、旅立っていった。

「じゃあな、リミさん、これを眺めながら俺のことも少しは思い出してくれよ」

今野社長は腕時計をプレゼントした。

「ありがとうね、社長・・・」

「とっとと失せやがれ!」

今野社長の顔は今にも泣き崩れそうに見えた。

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8年目10月

保科優希が「8冊目」の写真集「HAKUCHO」の撮影で不在。草薙みことも左肘の負傷で欠場。こうして南利美のいない興行が始まった。だが各選手がそれぞれの持ち味を生かした熱いファイトを展開し、南引退の影を吹き飛ばした。

第4戦仙台大会、南の引退で空位となっていたSPZタッグ王者決定戦。

前王者の秋山沢崎とEWAのナスターシャ・ハン、クロフォードとの間で争われる。能力に翳りが出始めた一期生テスト入門組の秋山沢崎だが、持ち前の連係でEWA軍を徐々に追い込んでゆく。

「これが私のとっておきです!」

沢崎のタイガースープレックス炸裂。EWAのエース、ナスターシャから3カウントを奪取して、タッグ王座を取り戻した。

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SPZタッグ王者決定戦

秋山美姫 ○沢崎光(20分くらい、タイガースープレックス)ナスターシャ・ハン×、マリア・クロフォード

秋山沢崎が第6代王者となる

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10月シリーズ最終戦は新日本ドーム大会。首都圏でのSPZ人気は健在で、5万人以上のファンが詰めかけた。

第3試合はスイレン草薙対小川ひかる。

試合中盤から攻め疲れの見えてきたスイレン、最後は強烈なステップキックを食らってひるんだところを逆片エビ固め。小川が教科書どおりにグイグイグイと腰を落として絞り上げる。

「う、うわぁ・・・」

スイレン草薙はあっという間にギブアップ。その試合が終わると休憩。

休憩明けは秋山沢崎対新咲祐希子、富沢レイのタッグ戦。富沢が脱落し、ローンバトルを強いられた新咲がひとり大活躍したのだが、最後は秋山の関節地獄にはまってしまい、ストレッチプラムにギブアップ負け。タッグ王者組が意地を見せた。

ここから「3大スペシャルマッチ」が始まる。

セミ前は永沢舞対ナスターシャ・ハン。終盤にナスターシャの「脱出不可能」STFが決まってしまい、永沢は無念のギブアップ負け。

セミファイナルは伊達遥対上原今日子。延々と続いている因縁の対決。だが相性が悪いのか、上原の攻撃はどうしても伊達の「バリア」を突き破れず。先に伊達の殺人ヒザ魚雷が炸裂。しかも2連発。

「あ、ぐっ・・・」

もう何回も見慣れた光景だが、上原がマット上に這いつくばって痛みに耐える。

―これ以上は受けられない。

そう考えた上原は立ち上がり、走りこんでニールキック。そのあとうずくまった伊達の腕をとって脇固め!関節技に弱い伊達にギブアップを迫ったが、落ち着いてエスケープした伊達が、

「手加減はしません」そういって上原に組み付き、

フィッシャーマンバスター炸裂。これで試合が終わった。勝負タイム22分58秒。

「くっ、また伊達さんに・・・勝てなかった・・・」

肩を落として引き揚げる上原。

メインは吉田龍子のSPZ王座にハイブリッド南が挑むタイトルマッチ。先々月のSPZクライマックスでは吉田が苦杯を喫しているだけに油断のならないカード。

「オラァー!!」

いきなりタックルでハイブリッドを転倒させた吉田、いきなりコーナーに登り先手必勝を狙ったのか、ムーンサルトプレス。しかしさすがにこれはかわされた。しかし吉田は自爆でもさほど痛がるそぶりを見せず、再度タックルで倒すや、2度目のトライでムーンサルト。今度は成功。吉田のガタイが天空から降ってくるのだからたまらない。

序盤から大ダメージを負ったハイブリッドは吉田のパワーあふれる攻撃の前に防戦一方となり、DDT,プラズマサンダーボムで動きが止まってしまい、最後はスプラッシュマウンテンに敗北。吉田の作戦勝ちといえる試合展開だった。王者が初防衛に成功。

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SPZ世界選手権試合

吉田龍子(18分20秒、スプラッシュマウンテンからのエビ固め)ハイブリッド南

20代王者が初防衛に成功

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2007年4月10日 (火)

第83回 南利美・ラストファイト

ついに最終戦、さいたまドーム大会。

午前11時、南利美は宿泊先のホテルからバイクでSPZ道場へ向かった。すでにアパートは引き払って大きな荷物は高知の実家に送り返してある。道場でバイクを降りて、しばらく同期の選手と話しこんだ後、団体のサロンバスが横付けになった。選手たちを乗せたバスはさいたまドームへ向かう。

午後2時少し前に会場入り。巨大会場なのでリングは朝のうちに若手選手とスタッフで設営してある。そのあと南はいつもどおり柔軟体操やランニングでウォーミングアップ。5時半に開場。南利美は赤コーナー側日本人選手控室に戻った。南利美の最終試合ということで場内は4万人の大観衆で膨れ上がった。

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試合開始時間の6時半、場内オーロラビジョンにまず流れたのは南利美のこれまでのレスラー人生を振り返って・・・ということで過去の映像が流れる。

「SPZプロレスは2009年、横浜赤レンガ大会から始まった。主力選手のミミ吉原以外は全員新人という貧弱な選手層の中、最初に頭角を現し、初期のSPZを引っ張ったのが南利美であった」

今野社長が吹き込んだ下手なナレーションをもとに進行。

「南利美の最大の必殺技は関節技。脇固めで腕を痛めつけて飛びつき腕ひしぎでギブアップを奪うファイトスタイル。「この技に耐えられるかしら?」はあまりにも有名。また3カウントを奪うより相手にギブアップと言わせることを好むとんでもない性格で、多くの選手が犠牲者となり、さらに選手の治療費がかさんで社長をも恐怖におとしいれた」

館内どわははははと笑い。

ここで映像はSPZ事務所内に切り替わり、マイクを持った今野社長が話し続ける。

「そして小川ひかる、ミミ吉原とのトリオは『チーム関節地獄』と呼ばれ、相手を対戦前から恐怖のどん底におとしいれるようになった。パートナーのミミさんや小川選手が温和な性格なのに対して、南利美だけが凶暴で残忍・・・」

ここで画面に南利美が現れ、

「社長、辞めるからといって、好き勝手言ってくれるわね。関節の悲鳴を聞きなさい!」

某選手のモノマネをして南が社長に飛びつき腕ひしぎの刑。

「あ、あぎゃあ~~」

今野社長の絶叫、映像はここで途切れてザーという音だけが。

館内爆笑。

「引退試合といってもあまりしめっぽい雰囲気のなかでやりたくないわ」ということで考え付いた試合前の「つかみはOK映像」を撮影しておいたのである。

カン、カン、カン、カン・・・

「大変長らくお待たせいたしました、本日のカードを申し上げます、第1試合保科優希対スイレン草薙、第2試合渡辺智美対マイトス香澄、第3試合、新咲祐希子、富沢レイ対デスピナリブレ、ミレーユシウバ。第4試合特別試合、草薙みこと、永沢舞対ナスターシャハン、チョチョカラス。」

今野社長、ここまで読み上げてから、ひといきおいて

「第5試合、南利美最終試合、南利美対小川ひかる。」

ウァオオオオオオ!!

館内ものすごい歓声。

「セミファイナル、ハイブリッド南、上原今日子対秋山美姫、沢崎光、メインイベントSPZ選手権試合、チャンピオン伊達遥対チャレンジャー吉田龍子」このあたりはかき消された。

第1試合、スイレン草薙が「6時半+7冊の女」保科の関節技攻勢を耐え切って、フロントスープレックスを愚直なまでに連発し、最後はショルダータックルで保科越えに成功。

第2試合は渡辺智美が執拗な逆片エビでマイトス香澄を6分で仕留めた。

そして第3試合、新咲祐希子が暴れまわってシウバをフェイスクラッシャーで仕留めた。ここで休憩。南利美は最後となる紫紺のリングコスチュームに着替え、シューズに紐を通し終えた。

これを履くのも今日で最後か・・・

休憩明けの特別試合、草薙永沢が久々のタッグ。終始投げ技で押しまくった草薙永沢が合体パワーボムでチョチョカラスをたたきつけて勝利。

その試合が終わり、今野社長兼リングアナのマイク。

「次の試合に登場する南利美選手は、本日が最後の試合となります。ファンの皆様、よりいっそうのご声援をお願いいたします」

今野社長のマッチメイク、最後の相手を誰にするか迷ったが、伊達や上原といったトップどころを当てたのでは今の南の実力からして10分程度でやられてしまうだろう。それよりはファイトスタイルが似ていて手の合うチーム関節地獄の盟友、小川を当てた方が、1分1秒でも長く、ファンが南の最後の姿を見ることができるだろう。そう考えてこのカードを組んだ。デビュー戦の相手と引退試合の相手が一緒というのも他に例がないと思われる。

青コーナー側から「マイティ・ウィング」に乗って小川入場。きょうは懐かしの「チーム関節地獄」のブルーのパーカーを羽織っての登場。

そして南利美のテーマ曲「スピード」がかかるがたちまちファンの大声援にかき消された。ハイブリッド南の先導で南利美が最後のリングへ。白いロングガウンを羽織っての登場。

リングへ続く階段を上がる。

「青コーナー、長野県松本市出身、おがわー、ひかーるー」

さすがにきょうは青い紙テープは数本しか飛ばない。

「赤コーナー、SPZ世界タッグ選手権者、高知県高知市出身、みなみー、としーみーーー」

「レフェリー、井上霧子」

紫色の紙テープが、ものすごい量投げ込まれる。セコンド陣総出で片付けた。

ゴングが鳴った直後、2人はリング中央で握手。序盤はじっくりとしたグラウンドの攻防。地味な攻防なのだが、さすがにきょうは南の一挙手一投足に歓声が起こる。南がスリーパーで攻めれば小川もスリーパーでやり返す。ほどなく南が脇固めで小川の腕に照準を絞る。小川もドロップキックなどの飛び技を軸に反撃を試みるが、どことなく硬さが残る小川の闘いぶりに対して、南は吹っ切れていた。

目一杯レスリングを楽しもう。

15分過ぎ、リング中央で南の逆片エビ固めが長時間決まる。グイグイ絞り上げられ、やっとの思いでふりほどいた小川だが、もはやフラフラ状態。

南が距離をとって、走り込んでのフライングショルダータックル。

カウント2.9で返す小川。そして小川が最後の力を振り絞ってSTF。

ウワアアアアアア・・・・

館内悲鳴。しかし南は落ち着いていた。

ーかなり疲れているわね。これなら外せる。

南利美はある程度の時間受けて、そのあと落ち着いて顔のフックを外す。横たわる両者、館内はものすごい歓声が轟き渡る!

先に立ち上がったのは南。小川との距離を取る。

小川がフラフラと起き上がろうとする。

南は一瞬だけ観客席に目をやった。

―これが最後の技。

小川が起き上がったタイミングでダッシュして、飛び、

2発目のフライングショルダータックル。身体全体でぶつかっていって小川を倒した。そのままフォール。小川には返す力は残っていなかった。

「ワン、ツゥ、スリー!」

ドワアアアアアア!

井上レフェリーの手がマットを3つ叩くと同時に大量の紫の紙テープがまた舞う。SPZ戦のとき以上の館内の興奮状態。

「24分31秒、フライングショルダータックルからの片エビ固めで、南利美の勝ち」

今野社長が涙をこらえながら結果をアナウンス。

このあと所属全選手がリング上に駆け上がり、南を胴上げ。本人には知らされていなかったサプライズ。(南が勝った場合限定であったが)選手たちの手により3度宙を舞った。そのあと「特別ゲスト」のミミ吉原がリングに上がり、南に花束を手渡した。

「お疲れさま。良く頑張ったね。」

コーナーにうずくまっていた小川が起き上がり南と握手し、チーム関節地獄の3人で記念撮影。そのあと南はリング上で一礼してから引き揚げた。館内ものすごい歓声。

「ふぅ、終わった・・・のね・・」

控室に戻り、奥の椅子に腰掛け水を飲む。

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ざわついた雰囲気のまま始まったセミファイナルはハイブリッド南が上原と組んで秋山沢崎と対戦。18分9秒、ハイブリッドがジャーマンで沢崎からカウント3奪取。

メインは伊達対吉田のSPZ選手権。足首の負傷が完治していない伊達は苦しい展開。吉田のパワー技に一方的に攻め込まれて、終盤に気力だけでSPZキックを放つもそれまでで、最後はダメージの深い伊達をステップキックで倒し、カウント3を奪った。勝負タイム28分19秒。吉田が20代王者に返り咲いた。

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SPZ世界選手権試合

○吉田龍子(28分19秒、ステップキックからの片エビ固め)伊達遥×

19代王者が初防衛に失敗、吉田が20代王者となる。

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メイン終了後、南利美の引退セレモニー。どことなく物寂しげなピアノ曲が流れる中、ジャージに着替えた南がリングへ。

「え、えーと・・・私は不器用なので、うまく言えないけど、今まで応援ありがとう」

そして10カウントゴング。

こうして南利美のレスラー生活は幕を閉じた。

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南利美 

2009年5月15日名古屋大会、小川ひかる戦でデビュー、2016年9月26日さいたまドーム大会、小川ひかる戦で引退。稼動月数89ヶ月、通算出場試合数(推定)612試合。

タイトル歴:SPZ世界王者(3代目、7代目)

SPZタッグ王者(5代目 パートナーはハイブリッド南)

AACタッグ王者(パートナーはミミ吉原、小川ひかる)

EWAタッグ王者(パートナーはハイブリッド南)

AACジュニア王者

第3回SPZクライマックス優勝

写真集 4冊

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2007年4月 9日 (月)

第82回 南利美引退シリーズ

これまでのあらすじ

横浜に本拠地を持つ人気のお嬢様プロレス団体「SPZ」は旗揚げ8年目に入り、水道橋の新日本ドームを年4回興行できるまでになったが、初期のSPZを支えた「関節のヴィーナス」南利美が、「体力、気力の限界」を理由に引退を表明した。そして南の引退シリーズ、ラストファイトが始まる・・・

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初戦は幕張コンベンションホール大会。

南利美、ハイブリッド南対秋山美姫、沢崎光。

この一戦にはなんとSPZタッグベルトがかけられた。引退を表明した選手がタイトルマッチなどありえないのだが、秋山沢崎の「強い希望」があってタイトルマッチとなった。幕張のメイン。場内は異様な大歓声に包まれた。

試合中盤から姉妹ならではのコンビプレーと一期生同期入門のアイコンタクト連係攻撃が真っ向から激突。

「ハイブリッド!」

合体ラリアットが炸裂。続いて合体パイルドライバー。秋山に狙いを絞り集中攻撃。そして、ハイブリッドが。

―姉さんと一緒にSPZタッグを獲る!

どぉんっ!

みごとなジャーマンスープレックスを秋山に決める。南利美が沢崎の前でお約束の通せんぼポーズ。これでカウント3が入ってしまった。王座移動。場内ええええ!の声、ついでウォォォの大歓声。勝負タイム25分48秒。ハイブリッドが矢面に立って秋山沢崎の攻撃を受け続けて、最後は決める力をつけてきた。

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SPZタッグ選手権試合

南利美、○ハイブリッド南(25分48秒、ジャーマンスープレックスホールド)秋山美姫×、沢崎光

4代王者が初防衛に失敗、南姉妹が5代目王者となる

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「あーあ、やっちゃった。叩き潰すつもりだったのに。まあ、いいや!」試合後の秋山沢崎はサバサバしていた。南姉妹が最後の最後でタッグの頂点、SPZタッグ5代目王者に輝いた。

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第2戦山梨カイメッセ大会。

首都圏から近いせいか数多くの東京からの「密航」観戦者がかけつけた。メインは南姉妹プラス草薙みことにチョチョカラス、デスピナ・リブレ、ミレーユ・シウバのAAC勢。いずれもSPZの草創期に南の前に、最初の壁として立ちふさがった連中。彼女たちもいまだ現役でリングに上がり続けている

「ミナミ、引退だと?、じゃあついでに入院させてやろう」

AAC勢3人が向かっていったが、ハイブリッドと草薙が暴れ回り、南の出番は少なかった。最後は16分10秒、草薙がフランケンシュタイナーでシウバを下した。

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第3戦は長野大会。東京から新幹線で1時間ちょいとあってこの日も多くの南ファンが首都圏から駆けつけた。

「フン、最後ニ南トタッグを組ンデミタカッタ」

メインは南姉妹とナスターシャ・ハンが組んで、上原今日子、吉田龍子、新咲祐希子と激突するドリーム6人タッグ。吉田龍子は南が先発を買って出たのを見るや自分も先発に出て、いきなりボディスラムをかましてコーナー最上段に駆け上がりムーンサルトプレス、そしてDDT。これでふらついた南はいいところなくハイブリッドにタッチ。10分過ぎに再度登場したときはー

「バシッ!」

新咲の豪腕ラリアット2連発。これで南の意識が飛んで、最後は相手コーナーに捕まって合体パワーボム。これで南は3カウントを奪われた。新世代軍3人と当たるのはこれが最後。試合後は吉田、新咲、上原が最敬礼をして南と握手を交わした。

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4戦目の浜松大会、

ハイブリッド南と組んでメインでナスターシャ・ハン、マリア・クロフォードのEWA勢と対戦。南は前日のダメージが残っていたのでハイブリッドのフォローに徹し、期待に応えてハイブリッドがネオ・サザンクロスロックでクロフォードを仕留めた。

「メイン4連戦お疲れ様でした。明日あさっては南さんのレスリングをじっくり見せてください」

今野社長が南をねぎらう。

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第5戦京都大会。

南の出番は前座の第2試合、一期生同い年の保科優希と組んで、スイレン草薙、マイトス香澄の新人2人と伝承マッチ。

「うわああああっ!」

南利美がスイレンに容赦のない飛びつき腕ひしぎ。これはマイトスのカットに救われた。

タッチを受けてでてきたマイトスには軽量をいいことにアームホイップやフロントスープレックスで投げまくって戦闘不能に追い込む。そして保科とタッチしてコーナーで息を整えたあと、再度出てきてスイレン草薙と相対。ショルダータックルやアームホイップを軽く受けたあと、突進してくるスイレンのスキをついて脇固め。

「うわああああっ!」

スイレン草薙の腕に走る激痛。たまらずギブアップ。勝負タイム10分23秒。

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翌日は神戸ワールド記念会館大会。

南の試合は休憩後の第3試合で小川ひかる、スイレン草薙と組んで富沢レイ、保科優希、渡辺智美の「アイドルレスラー連合軍」と対決。保科も旗揚げメンバーの意地を見せ、南にしつこくスリーパー。南と最後のタッグを組む小川が奮闘し、めったに見せない逆さ押さえ込みまで繰り出し保科を追い込む。つかまると思われたスイレンもみことを思わせる投げ技攻勢。

しかし、連係攻撃を繰り出すアイドルレスラー軍が徐々に挽回。試合終盤まずスイレンが合体パイルドライバーを食らって脱落。そのあと小川も富沢のストレッチプラムを食らって戦線離脱。

孤立した南は保科に

「この技に耐えられるかしら?」飛びつき腕ひしぎを放ったが良く見ていた富沢がストンピングでカット。最後は富沢と渡辺の合体パワーボムで南がカウント3を喫した。23分7秒の激戦の末、タッグながら富沢が「元祖関節のヴィーナス」から3カウント奪取。

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第7戦高知大会。南利美最後の地元凱旋。

「来ただよ。」

足首負傷で戦列を離れていた伊達遥が復帰。

「足、大丈夫なの?」

「最後に・・・相手したくて・・・羽山さんに注射打ってもらった」

メインで南利美、ハイブリッド南対伊達遥、永沢舞のスペシャルマッチ。伊達永沢はおそらくこれが初タッグ。

「覚悟して」

試合冒頭いきなり脇固めを南が仕掛ける。SPZマットで数年前まで繰り広げられた数々の激闘がフラッシュバックする。

しかし試合中盤は永沢が南姉妹と互角以上の戦いを繰り広げて試合を作り、終盤あまりダメージのない伊達が決めにかかる展開。

まず伊達がジャーマン。カウント2.8で返した南が飛びつき腕ひしぎ。しかしロープに近い。これで南はあとはハイブリッドに託さざるを得なかった。

ダメージの深いハイブリッドに、伊達が殺人ヒザ魚雷。

「あ、ぐうううっ」

続くフォールは南利美がカットしたが、ここで流れを読んだ永沢が分断にかかり南を場外に蹴落として、自らも場外に降りて南と殴り合いを演じる。タッグマッチ終盤でよくあるベタな展開である。

「とおー」バシッ!

「はっ!」バシッ!

永沢がナックルパートを見舞えば南もエルボー。殴り合いに没頭する両者。リング上ではハイブリッドが倒れている。ああこれは決まるなという雰囲気。

かなりの時間をかけてハイブリッドが起き上がってきたところへー

がすっ!

SPZキック炸裂。

前のめりに倒れるハイブリッド。伊達がカバーして3カウント奪取。勝負タイム30分13秒。闘い終わってノーサイド。4人で手上げ。こうして南と伊達の最後の戦いは終わった。

翌日移動日をはさんでー

ついに最終戦、さいたまドーム大会。

2007年4月 8日 (日)

第81回 衝撃

8年目9月。

全国の女子プロレスファンを熱狂させたSPZクライマックスが終わり、9月1日、今野社長はいつものように取引先にメールを打ちまくってきた。そこへ南利美がやってきた。

「どうしたの?、リミさん」

「大事な・・・話があるわ・・・」

本社3階の会議室。

「引退・・・ですか・・・」

「考えて結論を出したわ。昔を知っているお客さんにこれ以上ファイトを見せていく自信がなくなったわ」

南利美23歳の決断。

「それにあのコも、もう私がいなくてもやっていける。」

「後悔は、しないですか・・・」

「社長には悪いけど、これ以上の努力はできなかった。できなかったの・・よ」

南が今にも涙をこぼしそうだったのを見て社長は、

「場所変えようか」とひとこと。

―お帰りなさいませ、旦那様、お嬢様~

本社ビル2階にあるメイド喫茶「あばしり」

「・・・巨大メロンフロートをお願い」

「ショコラパルフェで」

ほどなく花瓶のような特大グラスにメロンソーダがなみなみと注がれた物体と、ごてごてと盛られたショコラパルフェが運ばれてきた。

「・・・いつから考えてたのですか」

「7年目の初ドームの頃から。あのあたりから感覚がおかしくなってきて、そのあとお客さんの声援の中身が変わってきた。あれはつらかったわ。そしてあのコに負けて、SPZクライマックスに出られなくなった。あのあたりでもういいか、って」

「・・そうか、残念だけど、リミさんが出した答えだから、-うん、わかりました。で、9月は引退シリーズにするけど、最後に、やりたい相手の希望とかは」

「・・・社長に任せるわ」

南はじゅずずずずと緑色の液体をすする。

社長もショコラパルフェのてっぺんの山を片付ける。

「・・・辞めたあと、アテはあるの?コーチでもレフェリーでもハイブリッド南のマネージャーでも、SPZに残って・・」

「バカ言わないで。気持ちは嬉しいけど、しばらくはリングの匂いから離れて、ふつうのお姉さんとしてゆっくりするつもり」

「・・・そうか、寂しくなるな。最初の頃はうちの団体、貧しくて貧しくて、リミさんとミミさんに頼りっぱなしだった」

「ふふ、マイクロバスに押し込められて下道6時間とかね」

それから1年目の頃、まだ団体が小さかった頃の思い出話。

「社長、小川さんにきちんと言葉で伝えなさいよ。もうバレバレなんだから。香澄ちゃんにまで気づかれてるわよ。『社長、よくめしくってこーって言っておいしいもの食べさせてくれるけど、小川さんが必ずついてくる。ボクをだしに使ってるのかな』って」

「うう・・・」今野社長はパルフェのグラスを両手で握った。

「ミミさんにも同じこと言われた。でも、いまのところ社長と選手だから。一線は越えられまへんよ」

「逃げてるのね、意気地なし。」

「悪かったな」

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「南利美引退!」

翌々日の京スポ新聞に発表された。その次の日の朝刊スポーツ紙に南利美インタビューが掲載された。ファンの反応は「やめないで!まだできる」と「寂しいけど、お疲れ様でした」とで二分された。そして興行先の体育館やグッズショップに「南利美 引退シリーズ」のポスターが貼られた。

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「~関節のヴィーナス ラストファイト~」

南利美 最終試合

2016.9.26 さいたまドーム

■主催:SPZプロレスリング

■後援:大日本テレビ、京スポ新聞社

~試合カード(予定)~

■南利美最終試合(対戦相手は後日発表します)

■SPZ選手権試合 王者 伊達遥× 挑戦者 吉田龍子

他、数試合

~参戦外国人選手(予定)~

ナスターシャ・ハン、チョチョカラス、デスピナ・リブレ、ミレーユ・シウバ

18時30分試合開始

特別リングサイド10,000円 アリーナ席7,000円 スタンド席5,000円 外野席3,000円

※お問い合わせ、チケットのご購入は各種プレイガイドまたはSPZフィーバーまで。

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2007年4月 7日 (土)

第80回 SPZクライマックス8後編・死闘の果てに

前回前々回のあらすじ

横浜に本拠地を構えるお嬢様プロレス団体「スーパースターズ・プロレスリング・ゼット(通称SPZ)」は創立8年目に入り、数多くのスター選手を擁する世界でも有数の人気プロレス団体にのし上がった。そして8年目8月、そのスター選手たちのプライドが正面からぶつかり合うシングルリーグ戦「SPZクライマックス」が開催された。過去3年連続でこのリーグ戦を制し「夏女」の異名を持つ団体エースの草薙みこと、驚異の4連覇をなしとげることはできるのだろうか・・・

そして最終決戦横スペ大会。ここまでの星勘定は

伊達9点 永沢草薙吉田ハイブリッド8点

数字の上では5人に優勝の可能性が残るが、第4試合で伊達がハイブリッドに勝ってしまえばその時点で伊達の優勝が決まる。ハイブリッドが初めてのリーグ戦で失速気味なので伊達優勝の可能性が高いというのが京スポ新聞の予想だった。

ファンの間でも優勝の行方をめぐって激論?が交わされた。

「伊達さんが勝って終わりだと思うよ」

「いや、ハイブリッド南の関節技が極まって決定戦になるよ、伊達さん痛め技にはアレだから」

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横スペ大会、前座の3試合は若手選手やリーグ戦に出られなかった中堅選手、外国人選手による試合。

第1試合、スイレン草薙対渡辺智美。

3階席からだと草薙みことと見分けがつかない。コスチュームの色合いが違うのだが。スイレンはプロレス技、とくにグラウンドの対応がまだうまくできていないらしく、渡辺智美に12分30秒、逆片エビ固めで敗北。

第2試合はデスピナ・リブレ、ミレーユ・シウバ対マリア・クロフォード、ドリュー・クライの対決。地力に勝るEWAチームが勝利。

第3試合は南利美が新人のマイトス香澄とタッグを組んで、小川ひかる、富沢レイと対戦。意外と試合がかみあった。南利美がうまくマイトスをフォローしてゆく。

最後は小川の執拗なSTFで南が戦線離脱。これで孤立してしまったマイトスを富沢が落ち着いてローリングソバットで仕留めた。23分18秒の長い試合はマイトス香澄にとっていい経験になったはず。休憩後、さてリーグ戦の山場。ハイブリッド南の登場に館内沸く。

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第4試合

伊達△(10点、時間切れ引き分け)ハイブリッド△(9点)

「膝蹴り女に復しゅうする」

そういい残してリングへ向かったハイブリッドだったが、伊達の壁は厚い。ハイブリッドの攻撃が伊達の「バリア」を突き崩せないのだ。しかも伊達はハイブリッドの関節技を警戒してか、ロープ際で闘う巧さを見せる。ハイブリッドのしつこい脇固めに苦しんだものの決定的チャンスを作らせない。

「ハァ、ハァ、ハァ・・・・」

25分ごろハイブリッドのスタミナが切れ、動きが鈍くなった頃合いを見計らって、殺人ヒザ魚雷!

「がはーっ」

リング上をのたうち回るハイブリッド南。場内は例によって悲鳴と、優勝まであとちょっとの伊達遥への歓声が交錯する!

「来るわよ!気をつけて」

セコンドの南が叫ぶ。

ハイブリッドが立ち上がるやー

がすっ!

何人もの強敵を屠ってきた伊達の必殺技、SPZキックが顔面に入って、ハイブリッドの意識が飛んでしまう。

すかさず伊達フォール、ワン、トゥ・・・カウント2.8!

ドドドドドドドドドドドドド。

・・・そんな、返された?

動揺する伊達。

スキをついたハイブリッドが体を入れ替え、鼻から鮮血を滴らせながら、持っている中で最高の技―、ネオ・サザンクロスロックを繰り出してきた。

「うぁああああああっ!」

ハイブリッドが叫びながら絞り上げる。今度は伊達ファンの悲鳴が。1分近く耐えた伊達がようやくロープに手を伸ばす。ここで時間切れのゴングが鳴った。

この瞬間ハイブリッド南の初出場即優勝の望みは消えた。

南利美が泣いていた。デビュー以来2年4ヶ月、つきっきりでタッグを組んで育ててきたハイブリッド南が、吉田永沢を破り伊達と引き分けるまで成長した。血まみれのハイブリッドの顔にタオルを当てる。

「あ、私・・・試合は・・・どうなった・・の?」

「30分、時間切れドロー。よくやったわ」

場内大歓声。これでメインイベント後の優勝決定戦実施が決まった。3人による巴戦の可能性もある。

「くっ、あの膝蹴り女に・・・復しゅうできなかった・・・」

「あなたには・・・また次があるわ」

南利美がハイブリッドに肩を貸して引き揚げる。館内ものすごい拍手に包まれた。

第5試合

上原○(6点、ニールキックからの片エビ固め11.39)沢崎(3点)

ざわついた雰囲気の中、上原VS沢崎戦。地力に勝る上原が落ち着いて攻め、10分経過とともに大技ラッシュ。フィニッシュはフライングニールキックだった。優勝候補の一角に名を連ねていた上原だったが3勝4敗でリーグ戦終了。前年と同じ戦績に、無言で控室に引き揚げた。沢崎は秋山とともに予選会行き。

セミファイナル

草薙○(10点、サソリ固め13.19)秋山(0点)

勝てば優勝決定戦にコマを進められる草薙、しかし相手が0点の秋山なのである程度結果は見えていた。草薙が優位に試合を進め、決定戦を見越して殺人級の投げ技を温存したか、手堅くサソリ固めで勝利。

メインイベント

吉田○(10点 キャプチュード13.05)永沢(8点)

セミと違って可能性を残す両者の対戦。負けたほうが優勝戦線から脱落する。吉田がスプラッシュマウンテンをきっかけに大技の猛ラッシュ。キャプチュードで粘る永沢を仕留めた。

「はあ、残念、ザンネン・・・」肩を落として引き揚げる永沢。

大変なことになった。

今野社長は頭を抱え込んだ。10点で吉田龍子・草薙みこと・伊達遥が並ぶ異常事態。こんなこともあろうかときょうは試合開始を繰り上げて午後5時30分開始としたが、メインが終わったのが8時5分。巴戦は1人の選手が2連勝するまで試合が続くという試合形式。終わりの時間が見えないのだ。

15分のインターバル(井上秘書と小川ひかるの急造トークショーをやった。当然館内はダレた。)を置いて優勝決定巴戦、抽選の結果まず吉田対草薙。

―これまでのどの戦いより厳しい、でもやるしかないですね。

草薙みことは4連覇の望みをかけて優勝決定巴戦のリングに上がった。

だがー

10分過ぎに放った吉田のスプラッシュマウンテンで草薙の意識が飛んだ。そのあと草薙流兜落としを放っていたのだが本人はその間の記憶がないらしい。2発目のスプラッシュマウンテンで万事休す。勝負タイム12分10秒。草薙の4連覇の夢はほぼ、ついえた。

悲鳴が飛び交う中、泣いているファンもいる中で、若手に抱えられて退場する草薙、ダメージが深く、コメントが出せる状態ではなかった。

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第8試合 SPZクライマックス優勝決定巴戦

○吉田龍子(スプラッシュマウンテンからのエビ固め12.10)草薙みこと

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ゼェ、ゼェ、ゼェ・・・ッ。

控室に戻った吉田龍子も消耗しきっていた。メインの永沢舞戦、そのあとに草薙みこと戦。ひとりでも難敵なのを2人も連続で相手にして、足がこきざみにふるえていた。

「まじかよ・・・」

吉田龍子はひとりごちた。このあとさらに伊達遥との一戦が控えている。

一方、青コーナー側控室の伊達も深刻な表情。ハイブリッドにネオ・サザンクロスロックを仕掛けられたさい左足首を痛めたらしい。とりあえずテーピングを巻いて応急処置。

    ・・まあ、やるだけやるしかない・・か・・・

そして再度15分のインターバルを置いて(場もたせに富沢レイのアニメソング2曲熱唱があった。館内はまずますダレた。)午後9時ちょうど、優勝決定巴戦2試合目開始。

吉田龍子対伊達遥。

序盤はじっくりとしたレスリングを展開する両者、隙をうかがいあう展開。

長期戦は不利だと判断した吉田が早めのスプラッシュマウンテン!しかし伊達も体勢を立て直しSPZキック!しかし痛めた左足を軸足にしているので吉田の意識を奪い取るまでに至らない。

しかしここで吉田が奥の手、本邦初公開の技を出してきた。

「ふんっ!」

力任せのパイルドライバーで伊達をマットに寝かせてから、コーナーに登り、飛んで、空中でバック宙返りをしたのち、

バーーーーン!。

伊達の上に落下。シューティングスタープレス発動!上背のある吉田がこんなジュニア戦士の使う飛び技をやってのけたので館内はえええええ!の驚きの声。伊達はフォールを返せなかった。勝負タイム20分39秒、吉田が永沢草薙伊達の3強を連破してSPZクライマックス優勝をさらっていった。

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第9試合 SPZクライマックス優勝決定巴戦

○吉田龍子(シューティングスタープレスからの体固め20.39)伊達遥

吉田龍子がSPZクライマックス初優勝。

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両者しばらくリング上で大の字。そのまま、この日6度目となる吉田のテーマ曲「赤い破片」がフルコーラスかかってしまう。両者ダメージが深く、表彰式も何もあったものではなく、SPZコールの沸き起こる中、吉田はスイレン草薙とマイトス香澄に抱えられて退場。控室に入るなりぶっ倒れた。

「うーーーー、きつかったーーーー」

吉田龍子のこんな格好も珍しい。けっきょくコスチュームの上からジャージを羽織らされてバスに放り込まれて、そのまま寮へと運ばれた。

・・・はぁ・・・

敗れた伊達は控室に座り込んでため息をついた。

・・足が痛い。来月出られるかな・・・

得点の上では10点で、同点の草薙とはリーグ戦での直接対決で勝っているので「3年連続の準優勝」となり「横浜中華街のお食事券」を後日もらった。伊達は「ハイブリッド選手に30分粘られた時点で正直優勝は厳しいと思っていた。3試合戦い抜いた吉田選手が素晴らしかった」とのコメントを残した。

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2007年4月 6日 (金)

第78回 第8回SPZクライマックス(中編)

ここまでのあらすじ

横浜戸塚に本拠地自社ビルを構えるお嬢様プロレス団体「SPZ」の年間最大のイベントが毎年8月に開催されるシングルリーグ戦「SPZクライマックス」である。はたして団体エースの草薙みこと、4連覇をなしとげることはできるのであろうか・・・

SPZクライマックス第4戦は大阪城大会

休憩前の第3試合は南利美、小川ひかる、富沢レイ対ドリュークライ、マリア・クロフォード、ミレーヌ・シウバの6人タッグ。リーグ戦に出られなかった南が休憩前の6人タッグ・・・時代の流れにファンはため息。しかもドリューのパワーの前に日本人組が押し込まれて、最後はドリューの裏投げ、ハリケーンラッシュ(コンビネーションキック)が小川を沈めた。それでも26分32秒の激闘となった。

休憩後にリーグ戦4試合。

ハイブリッド南○(6点、アキレス腱固め22.14)沢崎(2点)

ハイブリッドがジワジワと沢崎を追い込んでゆく。沢崎もタイガースープレックスを繰り出すなど粘りを見せたが、最後はアキレス腱固めに無念のタップ。初出場のハイブリッドが3連勝。

伊達○(4点、フィッシャーマンバスター 20.48)秋山(0点)

序盤はじっくりとした攻防。15分ごろ、だんだん集中力が切れていった秋山。場内「来るぞ、来るぞ」のささやき。

伊達遥、頃合いを見計らったような殺人ヒザ魚雷!もがき苦しむ秋山。そのあとSTO、フィッシャーマンバスターとたたみかけてカウント3奪取。

試合後伊達は「・・・昨日は・・・もう済んだ事、今日からまた・・・頑張ります」とコメント。

永沢○(4点、Jネックブリーカーからの片エビ固め16.40)草薙(4点)

投げ技を得意とする両者がノーガードの投げ合い。フロントスープレックスやノーザンが乱れ飛ぶド派手な試合に館内盛り上がる。押し気味に進めたのは若い永沢のほう。追い込まれた草薙が兜落としを発動するも、カウント2でクリアした永沢がなおも押しまくり、

「チャンス到来、むぁってましたぁー!」

JOサイクロン発動。これはカウント2.9で返した草薙だったが、続くネックブリーカーからのフォールを返す力は残っていなかった。これで草薙にも土がついた。

吉田○(4点、ニーリフトから片エビ固め13.36)上原(0点)

吉田龍子がパワーで押し切って連勝。優勝候補の一角に名を連ねていた上原さんまさかの3連敗、人気の高い選手の不振に場内から悲鳴が。

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第5戦は福岡ボートメッセ大会。

伊達△(5点、時間切れ引き分け)△沢崎(3点)

一期生同士の対決は大熱戦。先手先手と投げまくる沢崎、なかなかペースがつかめない伊達。終盤は沢崎がタイガースープレックス3発を放つなどものすごいラッシュをかけたが、伊達、SPZ王者の魂か、カウント2.9やロープブレイクで負けない。逆に殺人ヒザ魚雷で這わせたあと、沢崎が起き上がるのを待って

SPZキックを放つ、が、この動きを読んでいた沢崎が水面蹴りでうまく切り返す。沢崎、這うようにカバーしたが2.9。ここでタイムアップ。場内からはものすごい拍手。

上原○(2点、踵落としから片エビ固め、22.22)秋山(0点)

勝った方が初勝利という対決。全敗回避のため秋山が「関節防御の甘い上原には勝つ」とカサにかかって攻めるが、最後は上原がニールキック、そして踵落としと自慢の足で仕留めた。

ハイブリッド○(8点、ネオ・サザンクロスロック15.29)永沢(4点)

スープレックスマスター・永沢でもハイブリッド特急を止められない。永沢、後半からちぎっては投げのいつもの勝ちパターンで、観客や試合を見ていたほかの選手がああこれで決まるなと思っていたが、最後にスペシャルどんでん返し。

「この技でマットに眠りなさい!」

大逆転のネオサザンクロスロック!永沢、顔面の激痛に耐えられずついにギブアップ。ハイブリッド南、初出場で破竹の4連勝。

「ひょっとしたらひょっとするかもしれませんよ~」

解説の保科さんが不気味な予言。

草薙○(6点、サソリ固め 24.12)吉田(4点)

1敗同士の実力者決戦。吉田がパワーで押し込みプラズマサンダーボムを炸裂させれば4連覇を狙う草薙がノーザン乱発の猛攻。SPZ選手権並みの激闘に場内は大盛り上がり。最後は極め技に活路を見出した草薙がドラゴンスリーパーで追い込んでのサソリ固めでギブアップを奪った。このシリーズ草薙はサソリ固めをフィニッシュに多用。

「あークソ!」吉田龍子控室で叫ぶ。壁に貼られた星取表。現時点で3勝2敗。優勝は厳しくなってきた・・・

**********************

6戦目、広島若鯉球場。3万収容に対して2万しか入らず、今野社長の「うまらねえよ~」といううめき声が響く。

伊達○(7点、フィッシャーマンバスター19.50)上原(2点)

どうしても伊達に勝てない上原。試合中盤SPZキックが炸裂し上原の動きを鈍らせる。そして殺人ヒザ魚雷で上原を中破。あとはジャーマン、ネックブリーカーとつないで最後はフィッシャーマンバスター。大技を的確に決めた伊達が勝ち点2をプラス。

草薙○(8点、草薙流兜落としからの片エビ固め18.40)ハイブリッド(8点)

ハイブリッド特急ついに止まる。投げまくった草薙がタイガースープレックス2連発。そしてこのシリーズ多用しているサソリ固めで決めに入るが耐え切ったハイブリッドが逆にネオ・サザンクロスロック!あわや2夜れんぞくの大逆転かと思わせたが、草薙耐え切って懸命にロープに逃げた草薙が組みついて、

バァーン!

草薙流兜落とし発動。ハイブリッド、草薙越えはならず。

永沢○(6点、JOサイクロン12.41)沢崎(3点)

新旧スープレックスマスター対決は永沢に軍配。何も考えずに投げまくった永沢、最後はJOサイクロンで手堅く勝ち点2をプラス。

吉田○(6点、スプラッシュマウンテン12.37)秋山(0点)

ドラゴンカベルナリア一振りにかけた秋山。しかしそれを力任せに振りほどいてしまう吉田。場内どよめき。あとはパワーで押し切った吉田の完勝。

残り2戦の時点で勝ちっ放しがいなくなった。優勝の行方はますますわからなくなってきた。

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第7戦は名古屋大会。

上原○(4点、パワーボムからのエビ固め 11.41)ハイブリッド(8点)

「ハァ、ハァ・・・」

さすがにハードなシングルマッチの連戦でハイブリッド南の動きにキレがなくなってきたか、上原を攻められない。逆に大技を的確に決めた上原がパワーボムで勝利。ハイブリッド、ここで痛すぎるブレーキ。

永沢○(8点、キャプチュード14.33)秋山(0点)

永沢が落ち着いていつもの投げ技乱発で秋山を退け、優勝の可能性を残し最終戦に望みをつないだ。

伊達○(9点、SPZキックからの片エビ固め、29.25)草薙(8点)

前年の優勝決定戦のカードで、過去5年以上にわたりSPZトップの座を争ってきた「2大怪獣」の激突。投げの草薙、打撃の伊達がSPZ選手権並みの激闘を繰り広げる。しかし後半、勝負をかけた伊達が、

がすっ!                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                  SPZキックからのドラゴンスリーパーのコンボで草薙フラフラ状態に追い込まれる。

「うぁぁっ!」

草薙みこと、逆転を狙って草薙流兜落とし発動も、伊達はカウント2.5でクリアして逆に

がすっ!

2発目のSPZキックが草薙の頭を的確に捉える。

「う・・・っ」

前のめりにバッタリと倒れる草薙。フォールを返せず、痛すぎる2敗目を喫した。小川・渡辺の肩を借りて引き揚げる草薙みこと、目がうつろな状況。4連覇へ赤信号が灯った。

吉田○(8点、スプラッシュマウンテン10.11)沢崎(3点)

名古屋大会メインイベントはパワーで圧倒的に上を行く吉田が完勝。

**********************

そして最終決戦横スペ大会。ここまでの星勘定は

伊達9点 永沢草薙吉田ハイブリッド8点

1期生でSPZ王者の伊達が単独トップ。8点の永沢以下4名も優勝の可能性が残っているが、第4試合で伊達がハイブリッドに勝ってしまえばその時点で伊達の優勝が決まる。伊達の相手のハイブリッド南が初めてのリーグ戦で失速気味なので伊達優勝の可能性が強いというのが「京スポ新聞若林記者」の予測であった。

(長くなるので続きます)

2007年4月 5日 (木)

第78回 第8回SPZクライマックス(前編)

レッスルエンジェルスサバイバー リプレイ日誌のようなもの

「輝くエッセンシャル」(そうとう脳内妄想はいってます)

8年目8月

新咲祐希子が右足首負傷。本人はSPZクライマックスに出たがっていたようだったが、今野社長と井上秘書が「タダでさえむちゃくちゃきついシリーズなのに怪我人が出場したら入院に追い込まれますよ」と説得して止めたので、予選会3位の一期生、沢崎光に出場権が転がり込んできた。

8月1日、SPZ本社会議室で出場者の8名が記者会見。以下のようなコメントを残した。

「最強巫女伝説」草薙みこと(21)

 前回・第6回・第5回大会優勝、6年連続6回目の出場

「全力で行きます」

「殺人ヒザ魚雷」伊達遥(22)SPZ王者

第4回大会優勝 3年連続7回目の出場

 「えっと・・あの・・・その・・・がんばります」

「人間戦車」吉田龍子(18)

3年連続3回目の出場

 「全員倒して、優勝する」

「スープレックスマスター」永沢舞(19)

3年連続3回目の出場

 「応援していただいているファンの皆さんの期待に応えられるよう、頑張ります」

「マットの覇者」上原今日子(20)

4年連続4回目の出場

「伊達さんを潰す。それしか考えてない」

「輝くヒロイン」秋山美姫(22)SPZタッグ王者

第4回大会準優勝 8年連続8回目の出場

「このリーグ戦に出るのも8回目なのですが、今年が一番胸がドキドキしています。まだ後輩たちには負けたくありません。賞金目当てに優勝狙います」

_________________

以下は予選会勝ち上がり組。

「格闘ヴィーナス」ハイブリッド南(17)

初出場

「南選手の分まで、完璧な闘いを見せるわ」

「脳天クラッシャー」沢崎光(23)

 第2回大会優勝 8年連続8回目の出場

 「今年は出られないと思ってましたが、またチャンスを貰いましたので、完全燃焼してきますッ!」

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そして例によって特訓同行ルポ。

「最強巫女伝説、金字塔V4へ『敵は己自身』草薙みことが最終調整 」

SPZクライマックスまであと1週間と迫った8月上旬、第5回大会から3回連続でSPZクライマックス優勝を続け、「夏女」の異名をもつ草薙みことが例年通りに山形県の奥地、古寺温泉で最終調整を行った。パートナーの小川ひかると朝4時に起きて山中を6時間ゆっくり「もうオーバーワークはできないので」走りながら体を動かし、仕上げは河原で投げ技の特訓。最大の持ち味である投げ技の威力を極限まで研ぎ澄ます。記者は見た。草薙が無心でフロントスープレックス、アームホイップで小川を投げまくる。そして最後に繰り出したノーザンライトで小川ひかるは動けなくなった。

特訓のあとは温泉に漬かって身体をメンテナンス。『昨年と顔ぶれはほぼ同じなので、敵は己自身です、全力で行きます』力強く彼女はコメントした。」

またも京スポ新聞が特訓後の草薙小川の「入浴シーン写真」を一面トップで掲載したので、発売日の京スポ新聞は「瞬く間に完売」した。

さて悪魔のリーグ戦開始。

初戦は北海道は釧路での前夜祭マッチ。メインとセミはSPZクライマックス出場者を混ぜた6人タッグ。

2戦目の札幌キターアリーナから壮絶な星のつぶし合いが。

沢崎○(2点、ジャーマンSH、13.20)秋山(0点)

オープニングは1期生同時入門コンビの対決。沢崎の投げ技攻勢の前に秋山だんだん追い込まれていって最後はジャーマンで決着。

草薙○(2点、サソリ固め13.13)上原(0点)

去年はこのカードで苦杯を喫している草薙。先手必勝とばかりに序盤からちぎっては投げの草薙劇場展開。終盤は動きの鈍った上原をリング中央で延々サソリ固めの刑。痛め技に弱い上原、根負けしてギブアップ。草薙V4へ向け白星発進。

伊達(2点、ミサイルキックからの片エビ固め17.46)永沢(0点)

先月のSPZ選手権の再戦がいきなり実現。序盤はスリーパーや逆片エビなどの地味な技で伊達の「バリア」を破り、フロントスープレックスでペースをつかみかけたが、15分経過と同時に伊達が早めの勝負に出て・・

がすっ!

SPZキック、これでぐらついた永沢に組み付いていって

殺人ヒザ魚雷!

1ヶ月前と同じように腹を押さえてもがき苦しむ永沢、容赦なく伊達遥か、永沢を引きずり起こしてもう一度・・・

殺人ヒザ魚雷!

凍りつく場内。

「あーっと、永沢が殺されるーーー」

大日本テレビ実況の森アナウンサーが上記の迷台詞。

これで大ダメージを受けた永沢。トドメはミサイルキックだった。早めの仕掛け、一期生はさすがにこのシリーズの闘い方を心得ている。

ハイブリッド南○(2点、サソリ固め 12.47)吉田(0点)

ハイブリッドのセコンドには南利美がついた。妹の戦いぶりをじっと見守る。吉田がラリアット乱発でペースを掴む。しかし10分過ぎ、吉田のニーリフトを食らったハイブリッドが怒りの反撃。ネオ・サザンクロスロックで足にダメージを与え、続くサソリ固めで絞り上げると、あっけなく吉田ギブアップ。場内ええええの声。初参戦のハイブリッド南が初戦で大物食い。

「まずパワー女に復しゅうしたわっ」胸を張るハイブリッド。

「なかなかやるわね」南利美はその夜ハイブリッドに「北海特上寿司」をおごったのだから嬉しかったのだろう。

***********************

1日の移動日をおいて新潟へ。

ハイブリッド南○(4点、サソリ固め 13.45)秋山(0点)

サブミッションマスター同士の対決はハイブリッドがサソリ固めで大ダメージを与え、秋山の投げ技をいくつか受けきったあとでトドメのサソリ固め。もうそこには「南利美の妹」の面影などなかった。完成されたファイター「ハイブリッド南」がそこにいた。

草薙○(4点、サソリ固め10.02)沢崎(2点)

似たようなファイトスタイルの両者だが、地力ではやはり草薙が数枚上手。投げまくった草薙が最後は、前のカードと同じ「サソリ固め」でギブアップを奪った。ハイブリッドに神経戦をしかけているのか。

永沢○(2点、キャプチュード 19.11)上原(0点)

終始押し気味に永沢が試合を進める。絞め技を随所に挟みながら投げ技攻勢。終盤上原もフライングニールキック、パワーボム2連発で永沢をカウント2.8まで追い込むが、最後はドラゴンカベルナリアで動きを完全に止めた永沢がキャプチュードで激闘に終止符。

吉田○(2点、スプラッシュマウンテン20.13)伊達(2点)

15分過ぎまでは互角の攻防。なかなか伊達のバリアを突き崩せない吉田が、昨日負けてあとがないという思いもあったか、怒涛の大技攻勢。強引に伊達を担ぎ上げて

スプラッシュマウンテン。

そして伊達を引きずり起こして、再度高々と抱えて

プラズマサンダーボム。

叩きつけた伊達にさらにギロチンドロップで追い打ち。

これで半失神に追い込まれた伊達、吉田は容赦せず、伊達を引きずり起こして高々と担いで・・・

2発目のスプラッシュマウンテンを決めてカウント3。敗れた伊達は起き上がれず、セコンド陣に担がれて退場。

1期生最強、現SPZ王者の伊達遥が潰されてしまった。場内声も出ず。

********************

リーグ2試合ずつを消化して負けていないのは草薙みこととハイブリッド南だけ。早くも混戦の予感がした。

(長くなるので続きます)

2007年4月 4日 (水)

第77回 ここまでのようね・・・

あらすじ

横浜に本拠地を構える「お嬢様女子プロレス団体 スーパースターズ・プロレスリング・ゼット(SPZ)」は創立8年目を迎え、所属人気選手を次々に水着写真集を発売させる腹黒い今野社長の経営方針もあって、団体の人気は急上昇し、水道橋の新日本ドームを常時満員にできるほどの集客力をもつに至った

7月シリーズ最終戦は新日本ドーム興行草薙不在でも会場は超満員。駅ばりポスターでは「SPZ選手権 スープレックスマスター 永沢舞VS殺人キック 伊達遥 水道橋決戦2016」という宣伝文句。

第1試合は定番カード、保科優希対渡辺智美。

保科がSPZの伝統?であるアキレス腱固めなどの関節地獄で渡辺を追い込むが、渡辺も耐え切って、第1試合なのにロングマッチになった。最後は渡辺がネックブリーカー2連発でラッシュをかけ出した所で30分時間切れ引き分け。リング上にバッタリ倒れこむ両者。アイドルレスラー同士の対戦とは思えない内容に暖かい拍手が沸き起こった。

第2試合はマイトス香澄対デスピナ・リブレ。

「ナメラレタカードネ・・・」

プライドを傷つけられたデスピナ。

SPZ旗揚げメインで闘って勝ったのは、この私なんだぞ!それをこんなヒヨっ子の相手をしろだと?

怒りのエルボーがマイトスの意識をはいでゆく。

マイトス香澄がふらふらと立ち上がったときにはデスピナがコーナー最上段にいた。

iTe cogi!」(スペイン語で「もらった」の意)

ダイナミックなフォームでミサイルキックが決まり、昏倒したマイトスをフォールして試合終了。勝負タイム3分53秒。おそらくSPZ史上最短試合・・・

第3試合はマニア受けを狙った小川ひかる対南利美。かつてのチーム関節地獄の同門対決。

序盤は南ペースで、エルボーで鼻から流血させるなど押し気味だったのだが、意外に小川が抵抗してきて、(というより南にかつての一気に持っていく力がなくなった)試合は長期化した。

関節技でも互角とまではいかないものの小川はストレッチプラムをしっかり決めて南のペースを乱し、逆に南の脇固めや飛びつき腕ひしぎはことごとくニアロープという運の悪さ。

―勝てるかも、しれない?

7年以上南利美と組んだり闘ったりした中、初めての感覚を小川は感じた。

バァンッ!

普段は決めさせてもらえない小川のバックドロップ炸裂。

そして組み付いてニーリフト。伊達ほどの威力はないが、ヒザマシンガンが南の腹部に炸裂する。

「ぐうっ・・・」

続くフォールをカウント2.8で返す南。

場内は意外な展開に大盛り上がり。オガワコールと南ファンの悲鳴が交錯する異様な雰囲気。

―そんな、小川さんにまで追い詰められるなんて?

南も最後の力を振り絞って小川にジャーマン。しかし小川はどうにかカウント2.8で返す。

そしてー

小川の反撃、ローリングソバット炸裂。すかさずフォール。南利美は肩を上げることができなかった。

「ワン、ツゥ、スリー」

「ウォオオオオオオ」「ええええええ?」

言葉にならない歓声とも悲鳴ともうめき声ともつかぬ音がドームを揺るがす。元SPZ王者がこのクラスの選手にフォール負けを喫してしまう現実。

「26分15秒、ローリングソバットからの片エビ固めで、小川ひかるの勝ち」今野社長が上ずった声でアナウンス。

激闘後のリング上、大の字の両者。まるでSPZ選手権試合の後のようである。今野社長が駆け上がる。

「勝てました・・・社長・・・見てくれましたか?」

「ああ、小川さんが勝った、よく頑張った、泣けたよ」

旗揚げのころから南さんを追いかけ続けていて、ようやく、ようやく勝てた。でもこれは私が強くなったからじゃない。南さんのショックは激しいだろう。心の底からは喜べなかったが、小川の目から熱い粒がこぼれ落ちた。

「・・・・・・・・」

南利美は呆然とした表情。チーム関節地獄の頃からの盟友とはいえ、格下だと思っていた相手に敗れたショック。起き上がって小川と握手をしたあとはフラフラとリングを降り、長い花道を引き揚げた。

社長と小川ひかる、井上レフェリーの3人で手上げ、今野社長も泣いていた。

その試合が終わると休憩。館内は南敗戦の影響でざわついたままだった。

南利美は呆然とした表情で一塁側ダグアウト奥の控室へ入り、呆然とした表情でシューズの紐を解いた。

「姉さん・・?」

ハイブリッドが見た南利美の表情はいまだかつてない弱々しいものであった。

「何でもないわ、・・・何でもないのよ、ちょっと一人にさせて」

着替え終わるや南は報道陣を振り切って、メットを被りドームの地下駐車場へ向かい、愛車のバイクにまたがり、ドゥルルルルと発進させ、どこかへ消えてしまった。

*********************

後半に入り第4試合、SPZタッグ王者になった秋山沢崎対ハイブリッド南、富沢レイのタッグマッチ。タッグチームとしての完成度の差がはっきりしていて、またハイブリッドも前の試合後のバタバタで試合に集中できず、秋山沢崎にうまく分断させられて合体パワーボムに沈んだ。勝負タイム14分45秒。

セミファイナルは超豪華、上原今日子・吉田龍子・新咲祐希子のトリオがチョチョカラス、ナスターシャ・ハン、マリア・クロフォードの外人組と激突。6人の個性がぶつかりあう好勝負となり、ひとり格落ちの「ちょい悪外人」クロフォードも激しい戦いについていったが、最後はスタミナが尽きたところを狙われ、17分29秒、新咲のシャイニングウィザードに涙をのんだ。

メインは永沢舞対伊達遥のSPZ選手権。場内はハイテンション状態。まず伊達が「宇宙の皇女」に乗って颯爽と入場。鳳凰があしらわれた銀色のガウンを着ている、そしてチャンピオン永沢舞が入場。

―世代交代か?それとも殺人ヒザ魚雷が火を噴くのか、

ファンは固唾をのんでゴングを待った。

21時10分、運命のゴング。序盤は伊達ペース。永沢が伊達の耐久範囲を超える攻撃をなかなか繰り出せなかった。

「うぁーっ!」

逆に早めに「殺人ヒザ魚雷」を繰り出した伊達が優位に進める。しかし、永沢が中盤に放ったJOサイクロンで形勢逆転。カウント2で伊達が返したあと

永沢が奥の手、ドラゴンカベルナリアを出してきた。

こんな技、使えるようになったの・・・?

ドームは異様な雰囲気に包まれたが、なんとか伊達はロープに逃げた。

そのあと永沢のノーザンライト。カウント2.8でかろうじて返す伊達、そのあとトドメのムーンサルトを狙おうと永沢がコーナーへ。そして月面宙返りー

しかし伊達がゴロンと転がって逃げた。そーぜつな自爆。

腹を押さえてバタバタともがき苦しむ永沢舞。場内、永沢ファンの悲鳴と伊達ファンの歓声が・・・・

腹を強打した永沢を伊達が引きずり起こしてー

2度目の殺人ヒザ魚雷炸裂。

「ぐふっ!」

腹を押さえてもがき苦しむ永沢、立ち上がったところへSPZキック一撃。

がすっ!

―この蹴りがあるかぎり、団体の看板は渡さない。

これはカウント2.5、ふらふらと起き上がったところへ伊達がランニングネックブリーカードロップ。

レスラーの本能だけでカウント2.9で返す永沢。しかし次の一手―

がすっ!

2度目のSPZキック炸裂。この一撃が永沢の戦闘力を不稼動に追いやった。

バッタリと崩れ落ちる永沢。その上に覆いかぶさった伊達、

ワン、トゥ、スリッ!

阪口レフェリーの手がマットを3つ叩く。勝負タイム28分3秒。

__________________

SPZ世界選手権試合(60分1本勝負)

○伊達遥(28分3秒 SPZキックからの片エビ固め)永沢舞

18代王者が2度目の防衛に失敗、伊達遥が19代王者となる。

___________________

SPZ初代王者の伊達はこれで7回目の戴冠。一気に攻められるともろい弱点があるが、接戦になると問答無用のSPZキックと殺人ヒザ魚雷で勝利をたぐり寄せる強さ。館内は割れんばかりのハルカコール。

その頃、横浜港のある埠頭。南利美がひとり夜の海を見ながら佇んでいた。

・・・トップを張れなくなって、お客さんの声援におだてられながらやってきたけど・・・ここまでのようね・・・

そして、8年目の夏、ことしもSPZクライマックスが始まる。

    **********************

2007年4月 3日 (火)

第76回 草薙みこと写真集ついに発売

8年目7月。

「写真集とはどのようなものかと・・・・」

草薙みことに写真集のオファー。今までは主力中の主力なので断ってきたが、下の世代がだいぶ揃ってきたので「ファンサービス」で出してもいいだろうと今野社長は判断した。

「ああ、アイドルの水着の写真集みたいなやつです」

「あの・・・アイドルの写真集とはどのようなものなのでしょうか」

今野社長は顔を赤くして指示した。

「いいから行けーーっ。小川さんも3冊、南さんも4冊出していて同じクールビューチー路線の草薙さんは出さないんですかというメールが事務所にそこそこ来ておるのじゃ。お客様に尽くす。それがうちの会社の方針じゃー」

「はあ・・・」

かくして草薙みこと(21)のファースト写真集「YAMABATO」が発売となった。SPZのトップレスラー、あの草薙みことが水着写真集を出す。ファンの間では騒然となったらしい。

「写真集は・・・あの、誰がどういう目的で買うのでしょう?」

机の上に突っ伏す社長。

「負けたよ、オレの負けだ草薙さん。今の質問の答えは小川さんにでも聞いてみてよ・・・」

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草薙みこと不在、スイレン草薙が負傷欠場で7月シリーズ「バーニングレッスル」開幕。大日本テレビサイドの要請で「今まであまり巡業で回っていない西日本を回って欲しい」というのがあり、観客動員の苦戦を覚悟で鹿児島からスタートした。いちおう4000人規模の会場を満員にできた。

セミファイナルの試合前、リング上に巨大な吊り看板が降りてきた。地方会場なのでオーロラビジョンではない。

伊 達 遥 デ ビ ュ ー 7 周 年 記 念 試 合

伊達対チョチョカラスのスペシャルマッチ。

「宇宙の皇女」のテーマ曲に乗って、伊達が入場。館内大歓声。きょうは故郷の宮崎と近いこともあって伊達遥の家族友人が大挙してメモリアルマッチに駆けつけた。そして今野社長から表彰状と記念品、金一封が贈呈された。

試合の方はチョチョカラスがなかなか伊達の「バリア」を突き崩せないまま進む。伊達遥の強さは悪魔的破壊力の打撃技、それ以上にそこそこの攻撃ならダメージを吸収する耐久力が大きい。ようやく終盤にチョチョカラスがムーンサルト、フランケンシュタイナーでラッシュを仕掛けたが、最後はー

がすっ!

伊達遥の必殺技、SPZキックが18分21秒の激闘に終止符を打った。

一期生がタイトル戦線から遠ざかる中、伊達の力量はまだまだ衰える兆しがない。SPZキックや悪魔的破壊力の殺人ヒザ魚雷の威力は健在。これからも若手選手のカベとして立ちふさがることだろう。

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伊達遥デビュー7周年記念試合

○伊達遥(18分21秒、SPZキックからの片エビ固め)チョチョカラス

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だが続く大分、長崎大会は埋まらなかった。とくに長崎大会はセミで上原今日子対新咲祐希子(6期生の新咲が勝ってしまった)、メインでナスターシャ・ハン対秋山美姫のAACタイトル戦(秋山、25分の激闘の末力尽きる)というかなりいいラインナップを組んだのだが、満員にすらならなかった。

第4戦の佐賀大会は超満員。社長はほっと胸をなでおろした。とはいえセミで吉田龍子対チョチョカラス、メインでナスターシャ対新咲のEWA選手権を組むなど「出し惜しみのない」カード編成である。

新咲祐希子はメインでナスターシャと激突する大役を任され、持てる技を出し尽くしてナスターシャを追い込んだが、25分過ぎにナスターシャがアキレス腱固め。

「ああああああああーっ!」

コマンドサンボ仕込みなのでただの痛め技ではなく、一瞬で足を壊す威力がある。新咲はたまらずギブアップ。

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第7戦の岡山大会は会場が5千人規模ということもあり埋まらなかった。メインでは「集客のためにとりあえず組んだ」SPZタッグ戦、吉田、新咲組に秋山沢崎のコンビが挑むカード。しかしこの日は一期生タッグが意地を見せた。

秋山沢崎が懸命のタッチワークで王者組に的を絞らせない。そして20分になろうとするころ、秋山と新咲の攻防で、隙を突いた秋山がドラゴンカベルナリアを仕掛けた。沢崎がスッとコーナーを飛び出し控えの吉田にタックル。

―カットはさせない、秋山さん決めてっ・・・

そのまま場外に転落した吉田に抱きついて離れない。

「は、はなせぇ、うわーっ」

吉田がぽかぽかと殴るが沢崎は離さない。

リング上では秋山のドラゴンカベルナリアが完璧に決まり、新咲の身体が弓なりになってゆく・・・

「ギブアップ・・・」新咲はこの言葉を発するしかなかった。

SPZタッグ王座が移動。王者が6回目の防衛に失敗。秋山沢崎が4代目王者に返り咲いた。

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SPZタッグ選手権試合

○秋山美姫、沢崎光(22分53秒、ドラゴンカベルナリア)吉田龍子、新咲祐希子×

第3代王者が6度目の防衛に失敗、秋山沢崎が第4代王者となる

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「あー、きつかったぁ、光ありがと」

「また秋山さんと獲れて嬉しい」

22歳の秋山と23歳になった沢崎、レスラーとしての峠は越えた二人だが、1期生の誇りでタッグベルトを奪取した。

その翌日は東京に戻ってきて、新日本ドーム興行。草薙不在でも会場は超満員となった。しかしここで大事件が・・・・

2007年4月 2日 (月)

第75回 さいたま決戦 永沢舞×上原今日子

これまでのあらすじ

エキゾチックな街、横浜は戸塚に本拠地を構える女子プロレス団体「スーパースターズ・プロレスリング・ゼット」は旗揚げ8年目に入り、数多くのスター選手を擁する、世界有数のプロレス団体に成長した。団体最強の称号「SPZ世界選手権」をめぐって、今月も激闘が展開されるのであります。

8年目6月シリーズ、最終戦はさいたまドーム大会。4万人収容の会場は超満員札止めの盛況となった。

第1試合は渡辺智美対マイトス香澄。

マイトス香澄が新人らしく、テーマ曲の「恋はピンポン」がかかるや花道を全力疾走してリングイン。しかし試合開始のゴングが鳴るや、渡辺が終始絞め技極め技で攻めて、7分33秒、ドラゴンスリーパーで完勝。

第2試合は富沢レイ対スイレン草薙。

スイレン草薙のテーマはみことと同じ「オリエンタルクラッシュ」。2期生でキャリアに勝る富沢が一方的に攻めて4分53秒、ギロチンドロップでフォール勝ち。

第3試合は秋山美姫、ハイブリッド南が即席コンビを組んでマリア・クロフォード、ユーリ・スミルノフのEWA勢と激突。テクニックには定評のある二人がじわじわとEWA勢を追い込んでゆく。スミルノフもパワー、クロフォードもせこい反則を織り交ぜた動きで抵抗する。最後は意外と息のあった合体パワーボムを決めて勝利。17分41秒の闘いを制した。

「・・あ、ありがとうございました」

「ルミちゃん、グッジョブ」

その試合が終わると休憩になる。

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休憩明けは伊達遥、沢崎光の1期生コンビにAACのチョチョカラス、デスピナ・リブレ組が激突。旗揚げ当初はSPZ1期生のカベとして君臨したデスピナも健在を印象付けるように、ミサイルキックを連発して場内を沸かせる。最後はスタミナの尽きたデスピナを沢崎が落ち着いてネックブリーカーで仕留めた。

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セミファイナルは吉田龍子、新咲祐希子のSPZタッグ王者組に草薙みこと、南利美の1・2期生が激突するノンタイトル戦。吉田がラリアットを乱発して草薙を痛めつける展開。そして新咲も加担して、合体技の連発で草薙を追い込む。しかしこれで草薙の闘志に火がつき、草薙流兜落とし発動。新咲はたまらず吉田にスイッチ。

終盤は南利美が吉田につかまり、パワー殺法でフラフラになりながらどうにか草薙に再スイッチ。しかし南はそのままエプロンサイドでぶっ倒れてしまった。草薙が孤立したことを見た吉田。ここで仕上げのラストスパート。力のこもったパイルドライバーで草薙の動きを封じてから、

「そろそろ派手に決めようか!」

スプラッシュマウンテン炸裂。吉田の上背の高さから垂直落下させられた草薙は半失神に追い込まれ、カウント3を喫した。23分44秒の激闘に館内は沸いたが。南、草薙のかつての2強が叩きのめされて転がっている姿が時代を感じさせた。

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そしてメインイベント。館内にバリバリのテクノサウンド「disintegration」がかかり、青コーナー側から3期生、「マットの覇者」上原今日子が入場してくる。セコンドの渡辺智美とマイトス香澄が先導する。黒いフードつきロングガウンを羽織っているので表情は見えない。

そして赤コーナー側から「Change my style」に乗って、チャンピオン永沢舞がにこやかに手を振りながら入場。セコンドは富沢レイがついた。

「青コーナー、沖縄県那覇市出身、上原―、きょーこー」

「赤コーナー、福岡県二日市市出身、ながさわー、まーいー」

過去のシングルでは永沢はまだ一度も上原に勝ったことがない。でも永沢は気にせずいつもどおり何も考えず上原にぶつかっていった。今回は永沢のフロントスープレックス、ノーザンが的確に決まり、上原を徐々に追い込んでいった。最後は上原を抱えた永沢がロープの反動を利して走り、

バアンッ!

パワースラムでたたきつけた。これでカウント3が入り、王者が初防衛に成功した。勝負タイム30分22秒。

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SPZ世界選手権試合(60分1本勝負)

○永沢舞(30分22秒、パワースラムからの片エビ固め)上原今日子

第18代王者が初防衛に成功

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「やったー!!」

永沢舞がようやくSPZベルト「防衛」に成功。コーナーに駆け上がり両手を高く掲げ、ファンの声援に応える永沢舞。

そして今年も、SPZの熱い夏が始まる・・・

2007年4月 1日 (日)

第74回 富沢レイ・ベルト初挑戦

8年目6月

「お帰りなさいませ、旦那さま、お嬢様」

横浜戸塚のSPZ本社ビルの2階、グッズショップの隣にはメイド喫茶「あばしり」がテナントとして入っている。きょうはここで「幹部会議」を行う。とはいっても一期生プラス社長の7人での話し合いだが。

伊達遥は「あ、ダージリン・・・・下さい」

今野社長は「ショコラパルフェお願い」

「あ、伊達さんは今月だけど、メモリアルマッチお疲れ様でした。やはり一期生は思い入れあるのかお客さん沸くね」

社長はパルフェのてっぺんをロングスプーンで片付けてから、

「あ、で、連絡事項、今月から大日本テレビで放映始まります。月曜の深夜1時からの30分枠で、番組名は『SPZハイパーバトル』です。契約金に1億5千万円かかりました。これで全国のお茶の間に南さんの関節技が流れると思いますので、頑張ってファイトしてください、あとテレビ解説はいつものように小川さんか保科さんでお願いします」

「おおー、ぜ、全国放映ですか、社長やりますねぇ」

「驚きです~」

この団体は地方出身の選手が多いので、ようやく彼女たちの故郷でもSPZの戦いが放映されるようになった。

「あと今月のサイン会当番は小川さんと南姉妹、今月グッズショップ4号店がオープンする名古屋で頑張ってください」

「連絡事項は以上です、で、本日の話し合いの本題ですが・・」

1期生の顔が全員曇る。

「秋山さん、先月あたりから動きが微妙に落ちてるでしょう」

秋山はコーヒーをすすったあと、一呼吸置いて

「あーあ、ばれちゃったぁ」と返す。秋山も22歳、ヤングライオネスなどと呼ばれた頃の面影はない。

そう、能力減衰、伊達を除く一期生全員にこの問題がふりかかってきたー。沢崎もトップに近い位置にいたが、先月は新咲にいいところなく敗れたりしている。

「南さん、何かアドバイスでも」

最年長でメイン戦線で活躍した南はこの問題に1年以上悩まされている。南はオレンジジュースをすすりながらこう応えた。

「別にやりようはないわ。こっちが聞きたいぐらいよ。いまできることをやるだけ。それでも負けたら仕方ないわ」

「で、引退問題なのですが」

社長が本題の口火を切る、一期生に緊張が走る

「うちの団体は戦力外通告はしません。SPZをここまで育ててくれたのは1期生のみんなの力が大きいと思っています。ただ、ミミさんも言ってましたが、プロレスラーとしてみなさん大成しているわけですので、出処進退は各人で判断してください。あ、私に相談しても素人で金儲け主義者なので元気を出せうちの団体にはおまえが必要なんだと言うだけです」

ぶっちゃけた話に一同苦笑する。

「でも、引退後の再就職先は着々と用意してますので。小売業も面白いですよ、私も10年やってましたけど」

「社長は、どうして小売業をやめて、プロレス団体経営に?」

小川ひかるが問いかける。

「あーあれは2007年位かな、ある小売業の会社で販売促進をやっていたんだけど、ふっと疲れちゃって、会社へ来るのが苦痛になって、夜眠れなくなったんで引退を決めた。やっぱり仕事は楽しくやらないと」

「仕事は楽しく・・・」秋山が呟く。

「で、生活のために手塚オーナーの会社でプログラマーみたいな仕事をしているうちに、手塚オーナーの思いつきでプロレス団体旗揚げの話が出てきて、でぼくプロレスオタクだったから社長になっちゃった。でも今の仕事はゲキムだけど楽しいよ。若い娘に囲まれて」

「アハハハハハ」

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そして6月シリーズ「エキサイティングバトル2016」のサーキットが始まった。小川ひかると保科優希は負傷欠場。6月といえば恒例のSPZクライマックス予選会である。今回の出場者は下記の通り。

前回の本大会で2勝以下だった

南利美、沢崎光

6期生

ハイブリッド南、新咲祐希子、

常連外国人選手

デスピナ・リブレ、マリア・クロフォード

この6名で争われ、上位2名にSPZクライマックス出場権が与えられる。

初戦は高知大会。

クロフォード○(2点)―デスピナ(0点)

常連外人対決はクロフォードに軍配。

ハイブリッド南○(2点)―南(0点)

休憩明けの第4試合、1年ぶりの姉妹対決「南利美対ハイブリッド南」実現。今野社長の配慮で姉妹が対戦するカードは組まないのだが、リーグ戦ではしかたがない。ファンの間では「姉を越えた」(姉が衰えた)と噂されているが、それが実証されてしまう日が来た。

強くなったわね・・・・

南は攻め手が見つからない。伊達や草薙のような超一流の選手のオーラをいつのまにかハイブリッドは纏っていた。一方的にハイブリッドの脇固めやスリーパーといった攻撃を受け続け、南は対応するのが精一杯だった。7分過ぎ、ハイブリッドの強引なぶっこ抜きジャーマンが南を頭からマットへ叩きつける。

「うっ・・・」

意識が砕けそうだが、なんとか南はカウント2.5で右肩を上げた。

― つ、強い・・・・

そこにいるのは南利美の妹ではなかった。デビュー2年で超一流にのし上がり、落ち目のレスラーに力の差を見せ付けて叩き潰そうとするハイブリッド南だった。

ハイブリッドが南の頭をつかんで引きずり起こし、バックに回って同じ技をもう一度。会場に響き渡る南ファンの悲鳴!

「ワン、ツゥ、スリー」井上霧子の手がマットを3つ叩く。

会場に巻き起こる歓声とそれ以上の悲鳴。

―姉さんに、勝てた・・・

勝負タイム8分3秒、ハイブリッドの完勝である。井上レフェリーに右手をあげてもらうハイブリッド、南は動けずマットに横たわっていた・・・・残酷な光景にファンは息をのんだ。

新咲○(2点)―沢崎(0点)

先月のメモリアルマッチと同じ組み合わせ。新咲が粘る沢崎をジャーマンで振り切った。

翌日は宮崎大会。

新咲○(4点)―デスピナ(0点)

ハイブリッド南○(4点)―クロフォード(2点)

沢崎○(2点)―南(0点)

ジャーマン2連発はなんとか返した南だったが、そのあとのタイガースープレックスは返せなかった。

これでペースが狂ったのか、南は第3戦熊本大会では新咲に敗北、第4戦の滋賀大会ではデスピナに新人のとき以来の敗北。あっさりと予選会戦線から脱落。沢崎もハイブリッドに敗れて2敗目を喫し、これで通過者2名―ハイブリッド南と新咲―が決まってしまった。

第5戦の福井大会は全勝同士の両者の激突。22分の激戦の末、ハイブリッドが返し技の背面トペで新咲を押しつぶしてカウント3を奪った。

予選会が全日程終了し、第6戦石川大会のメインはー

吉田、新咲のSPZタッグに永沢、富沢が挑むタイトルマッチ。大方の予想は1人格落ちの富沢が捕まって終わりだろうというものであった。2期生の富沢レイは意外にもこれが初めてのタイトルマッチ。

「ゆっこ、富沢さんを狙うけど、油断だけはするなよ。永沢さんは得体の知れない力を持ってるから」

「はいッ、頑張ります」

―さあSPZプロレス、今週は金沢からお送りいたします。SPZタッグ戦、吉田新咲の若手タッグに挑むのは、永沢舞、富沢レイの人気コンビ、解説の小川さん、この試合の見所は

「そうですね、やはり富沢選手の頑張りだと思います。その・・・実力では追い抜かれた後輩相手にどこまで意地を見せて、舞ちゃんにつなぐことができるかだと思います」

試合開始2分、永沢のタッチを受けて出てきた富沢にいきなり吉田が仕掛ける。エルボーで倒したあとコーナー最上段に登り、いきなりムーンサルト。

カウント2で返した富沢に、続いてスプラッシュマウンテンの体勢。

―秒殺か?

しかしすんでのところでローリングクラッチホールドに切り返した富沢が永沢にタッチ。永沢がいつものように「とおー」で奮闘するが、吉田新咲の2人を相手にしたローンバトルではペースも何もあったものではなく、やられ続けて、苦し紛れに富沢にタッチしたところで新咲がラッシュ。フィニッシュはフェイスクラシャーだった。王者組が5回目の防衛に成功。

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SPZ世界タッグ選手権

吉田龍子、○新咲祐希子(20分くらい、フェイスクラッシャーからの片エビ固め)永沢舞、富沢レイ×

王者組が5度目の防衛に成功

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「解説の小川さん、やはり富沢選手がやられてしまいましたね」

「はい。最初に大技を仕掛けて富沢選手の動きを封じて、永沢選手を孤立させる吉田選手の作戦がうまくいったと思います。」

「ありがとうございました。石川県立体育館から、解説は小川ひかる選手、実況は私、高原がお送りいたしました」

このあと、セコンドの富沢と渡辺に抱えられて半失神の南が控室に担ぎ込まれた。ダメージが深くコメントを出せる状態ではなかった。

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