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2007年5月31日 (木)

第132回 10年目12月「スノーエンジェルシリーズ」

10年目12月

団体エース吉田龍子負傷欠場で「スノーエンジェルシリーズ」開幕。初戦はキターアリーナ大会。ビッグマッチを仕掛けられないのでどさんこドームに手を出せなかった。

第5試合で草薙みことが激戦の末、草薙流兜落としノーザンを決めてEWA最強のナターシャ・ハンを撃破。

セミ前はハイブリッド南対ドリュー・クライ。ここでドリューが元SPZ王者のハイブリッドに一発狙ってきて、強烈なハイキックでハイブリッドの意識を闇に落とし3カウント。

セミファイナルはスイレン草薙対ハイサスカラス。ハイサスカラスの空中殺法に押し込まれたスイレンだったが、草薙流兜落としで打開し、あっという間にデスバレーボム、バックドロップとたたみかけて勝利。

札幌大会メインは、永沢舞、新咲祐希子対上原今日子、伊達遥のスペシャルタッグマッチ。伊達が捕まって終わりだろうというのが大方の予想だったが、パートナーの上原が奮闘。ニールキックで永沢をフラフラに追い込み、JOサイクロンを食らったもののどうにか2.8で返して伊達にタッチ。伊達も新咲の猛攻を受けるが、シャイニングウィザードをカウント2.8で返したあとー

    ・・この試合勝たせてもらいます。

SPZキック!

団体の歴史そのものとも言える蹴りが新咲の頭に命中。バッタリと前のめりに倒れこむ新咲、フォールこそカウント2.8で返したものの、

「上原さんっ!」

ここで始末を上原に任せた。意気に感じた上原はめったに見せないフィッシャーマンバスターで新咲の意識を断ち切りカウント3を奪取。伊達は永沢の前で通せんぼ。34分17秒の激闘に札幌のファンは大声援を送った。

********************

第4戦は大阪城大会。セミファイナルはスイレン草薙対ハイブリッド南。スイレンもトップグループに迫る実力をつけてきているのだが、吉田永沢新咲H南の4強の下というのがファンや関係者の評価。

この日も草薙流兜落としやストレッチプラムなどでハイブリッドをあと一歩まで追い込んだが、ハイブリッドがネオ・サザンクロスロック。これでスイレン草薙、痛みのあまり半失神。ロープブレイクのあと辛うじて立ち上がったが首が据わっていない。

―これまでね。

これを見て取ったハイブリッドが走りこんでランニングショルダータックル。スイレンに返す力は残っていなかった。

大阪大会メインはナターシャ・ハン対ハイサスカラスのEWA選手権試合。自前の選手がメインに出ないのだが、スイレンあたりをぶつけると、下手すると勝ってベルトを獲ってしまうと防衛戦云々で呼び出されてしまう。それを考えると「ドリーム外人トップ対決」をやったほうがええわなと考えた今野社長。試合はナターシャがベルトを守るべく気迫のこもった闘いを見せ、最後はアキレス腱固めで勝利。

********************

第6戦福岡ボートメッセ大会、2年目のガイア小早川にチャンスが与えられ、スイレン草薙と組んでハイブリッド南・マイトス香澄組とセミ前で対戦。だがあっさりマイトスに投げられまくって戦線離脱。試合のほうはハイブリッドがジャーマンでスイレンを退けた。

福岡大会セミは永沢舞、新咲祐希子、富沢レイ対伊達遥、草薙みこと、上原今日子の6人タッグマッチ。永沢組は富沢レイが「穴」なので、草薙がラッシュをかけるが、富沢も掌底で反撃して新咲にスイッチ。

「この技にすべてをかける!」

新咲の高速ジャーマン炸裂。しかし上原もカウント2.8で返して、フライングニールキックで逆襲。草薙も永沢の投げ攻勢を耐えて、ふたたび富沢が出てきたとき・・・

伊達登場。問答無用のSPZキック。富沢倒れて試合終了。まさに勝機を逃さない。

福岡大会メインはハイサスカラス対ドリュー・クライのAAC選手権。またも外人同士のタイトル戦。ドリューはEWAのナンバー2だが、日本のファンにはその蹴り技でおなじみであり、今シリーズもハイブリッド南を倒すなどその実力はあなどれない。試合は意外と熱戦になった。ドリューが思いのほかニーリフトなど打撃主体で攻めまくり、ハイサスカラスもムーンサルトやフランケンシュタイナーで応戦し勝負は白熱した。

最後はドリュー・クライがパイルドライバーでハイサスカラスを昏倒させフォール勝ち。AACベルトを奪った。

******************

シリーズ最終戦はさいたまスペシャルホール大会。

「あー、今年最後の興行なので、うー、頑張って行きましょうー」この社長、小川ひかるの引退以来めっきり元気がなくなった。

第1試合は新人同士の激突、ギムレット美月対ビーナス麗子。ビーナス麗子があっさりと6分でエルボーで勝利。

第2試合は渡辺智美対エレン・ニールセン。地力に勝るエレンが渡辺を攻めこむ、渡辺もネックブリーカー2連発を返したが、続くラリアットで万事休す。第2試合なのに24分の熱闘。

第3試合はマイトス香澄対ドスカナ・リブレ。革命軍に入りSPZ世界タッグのベルトも巻いたマイトス香澄だが、シングルマッチではまだまだ強豪選手相手に分が悪い。この日もドスカナリブレにいいように叩きのめされてしまった。フィニッシュはローリングソバット。この試合後休憩。

休憩後第4試合、永沢舞・富沢レイ対上原今日子・ガイア小早川。来年以降を見据えた若手育成カードだ。ひとしきり上原が永沢と攻防を繰り広げたあと、ガイア小早川登場。永沢舞とやるのは初めてだ。

―うわ、永沢さんだ。どうやったらいいんだろう・・・

永沢がやすやすと組み付いてアームホイップ。起き上がって小早川、無我夢中でドロップキック。

「代われ、ガイア!」上原の指示で再度タッチ。

このあとも上原と永沢がシバきあいを延々と繰り広げたが、終盤ふらついた上原が小早川にタッチ。こうなるともう終わりで、ノーザンライトからムーンサルトで永沢がガイアを仕留めた。

セミ前はハイブリッド南対ハイサスカラス。ハイブリッドが8分でハイサスカラスをかかと落としで倒した。

セミファイナルは伊達遥、草薙みことの古参チームにウェイン・ミラー、ドリュークライ組EWA軍。先シリーズの幕張大会での公式リーグ戦では26分の好勝負だったのでまたも組まれた。伊達が奮闘し、SPZキックでドリューを、殺人ヒザ魚雷でウェインを追い込むが、EWA軍は巧みなタッチワークで的を絞らせず、終盤はドリューが怒涛の蹴り技攻勢。

ハイキック→伊達ダウン→ハイキック→伊達ダウン、カウント2.8→ハリケーンラッシュでカウント3.

あの伊達遥が蹴り倒されてしまった。場内重苦しい雰囲気に。伊達はダメージが深くセコンドに背負われて退場。

メインイベントはナターシャ・ハン、アンナ・クロフォードに新咲祐希子、スイレン草薙が挑むSPZタッグ戦。今野社長の言によれば「タッグベルトが流出したままだと営業に差し支える」らしいので、強者同士を組ませないという不文律を破って、タッグリーグ戦優勝チームをそのまま挑戦させた。

新咲強い。ナターシャ・ハンに付け入る隙を与えない。的確に飛び技投げ技でダメージを与え、最後はフェイスクラッシャーでナターシャを仕留めた。勝負タイム17分32秒、SPZにタッグベルトが戻ってきた。

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SPZタッグ選手権試合

新咲祐希子、スイレン草薙(17分32秒、フェイスクラッシャーからの片エビ固め)ナターシャ・ハン×、アンナ・クロフォード

第15代王者が初防衛に失敗、新咲組が第16代王者となる。

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年末のプロレス大賞、最優秀選手は2年連続で吉田龍子。SPZ選手権防衛ロードでの活躍が評価された。ベストバウトは吉田龍子対ハイブリッド南の一戦(このカードも2年連続)、ベストバウトのタッグはどこかの地方開場で組んだ吉田新咲対ハイブリッド南、ナターシャ・ハンの一戦が選ばれた。

2007年5月30日 (水)

第131回 10年目SPZタッグリーグ後編

10年目11月 SPZタッグリーグ戦続き。

リーグ戦5戦目は群馬大会。

H・南○ M・香澄(6点、サソリ固め17.08)伊達、草薙×(4点)

ハイブリッドのシビアな攻めを懸命にこらえる古参コンビ。代わったマイトスを攻め込もうとするがするりとかわされ、再度出てきたハイブリッドのサソリ固めに草薙、悶絶。場内ええええの声。昔はこの程度の技で沈む選手ではなかっただけにショックも大きい。本人はいかばかりか。

ドリュー○、ウェイン(4点、DDTからの片エビ固め 15.52)永沢、富沢×(4点)

永沢とドリューの壮絶シバキ合いプロレスが展開された。

永沢がJOサイクロンで追い込めば、ドリューもハリケーンラッシュ、ものすごい蹴り乱打で永沢大ダメージ。代わった富沢が案の定捕まる。裏投げで投げ飛ばされ、最後は強烈なDDTにカウント3を奪われた。

吉田○、渡辺(8点、ノーザンライトSH、13.22)ハイサス、ドスカナ×(4点)

吉田のパワーがAAC軍を蹴散らす。渡辺もうまくつなぐ。最後は吉田がきれいなノーザンを決めて勝利。

新咲、スイレン○(10点、DDTからの片エビ固め 12.29)エレン、ロレン(0点)

新咲スイレンが危なげなく勝利。

翌日は幕張コンベンションホール大会。

永沢○、富沢(6点、パワースラムからの体固め12.21)H・南、M・香澄×(6点)

永沢組がうまく分断作戦に成功。マイトス香澄を永沢が投げまくって終了。

吉田○、渡辺(10点、キャプチュード14.05)エレン×、ロレン(0点)

なんとか1勝したいニールセン組。しかしそのためにはあの吉田龍子にある程度ダメージを与えて渡辺を引きずり出さないといけない。しかし吉田強い。14分間ひとりで戦い、エレンロレンをのしてしまう。

伊達、草薙○(6点、タイガーSH、26.13)ドリュー、ウェイン×(4点)

「今できることを、全力で行きます」

そういってリングに上がった草薙。しかし一介の中堅外人のウェイン・ミラーにまでいいように攻め込まれる。2~3年前までは考えられなかった光景。ドリューの裏拳でぐらつく草薙。場内ミコトコールの嵐、ようやくウェインを捕まえてタイガースープレックスに捕らえる。ドリューがカットに入ろうとするが、伊達も懸命にスライディングキックで逆カット。これで3カウント。古参コンビが26分の激闘を制した。

新咲○、スイレン(12点、フェイスクラッシャーから片エビ固め11.14)ハイサス、ドスカナ×(4点)

ハイサスカラスはAACのトップだけあって、新咲やスイレンとも少しは渡り合うことができる。しかしスイレンのストレッチプラムでダメージを負い、出てきたドスカナがあっという間につかまってしまい終了。これでリーグ戦優勝の行方は最終日メインに持ち越された。全勝の新咲スイレンを吉田渡辺が追う展開。しかし吉田組が優勝するには本割り・決定戦の2連勝が必要・・・

「ま、まあ可能性はアレだけど、やるしかないよね」

吉田龍子はこうコメントを残した。

年内最後の本拠地である横スペ興行。いつものように超満員のファンで埋まった。

第1試合はビーナス麗子対ギムレット美月。麗子がエルボーの積み重ねでダメージを与え最後はアームホイップで3カウントを奪った。勝負タイム7分0秒。

第2試合はガイア小早川対アリッサ・サンチェス。小早川が最後はふわっと溜めを作ったみごとなミサイルキックでアリッサを仕留めた。勝負タイム8分31秒。

第3試合からタッグリーグ戦最終日。

伊達、草薙○(8点、草薙流兜落としからの片エビ固め23.43)永沢、富沢×(6点)

伊達、懸命に永沢の投げまくり攻勢を受ける。耐えて耐えてSPZキック。ふらついた永沢が富沢にタッチ。

ここを逃すと勝てない。草薙は猛然と同期の富沢に襲い掛かっていった。ドラゴンスリーパーで動けなくしておいて、

「勝たせて頂きます」

草薙流兜落とし発動。これで富沢から3カウントを奪った。休憩前なのに23分の死闘に館内喝采。古参コンビ、執念のリーグ戦勝ち越し。ここで休憩。

○ハイサス、ドスカナ(6点、フランケンシュタイナー11.08)H・南、M・香澄×(6点)

マイトス香澄が捕まってしまい、ハイサスカラスのフランケンシュタイナーにフォール負け。革命軍チームは3勝どまり。

ドリュー、ウェイン○(6点、合体パイルドライバーからの体固め 13.39)エレン、ロレン(0点)

EWA軍同士の対決はドリュー組に凱歌。ニールセン組みは全敗でリーグ戦を終えた。

新咲、スイレン○(14点、ノーザンライトSH 16.59)吉田、渡辺×(10点)

適当なパートナーがいないという理由で組ませた新咲スイレンがここまで全勝の快進撃。一方の吉田渡辺は吉田のワンマンチームながらここまで5勝1敗。スイレン草薙も吉田に圧倒されなくなってきた。実力者2人に攻め込まれ吉田の息は徐々に上がっていった。吉田が強引なスプラッシュマウンテンで新咲を垂直落下、しかし新咲もこのくらいでは動きが止まらない。ネックブリーカーで反撃。そして吉田が苦し紛れに渡辺にタッチしたところを見逃す二人ではない。

渡辺をあっという間にボコボコにのした後、スイレン草薙がトドメのノーザン。吉田がドタドタとカットに入るが、新咲が通せんぼポーズ。これで新咲・スイレン組の全勝優勝。

優勝した新咲スイレン組には賞状と金一封、副賞として「DVDレコーダー」が贈られた。

「あー今年も『ももかん』かよー!」

メイン終了後、表彰式でもらった斜め包みされた「準優勝の副賞箱」を乱暴に開けた吉田龍子。中には「山形県産・桃の缶詰」が1ダース入っていた。

「この団体どこまでせこいんだか・・・寮の新人にでもくれてやるか」

渡辺智美はダメージが深く、控室で横たわっていた。

吉田龍子は12個のももかんをボストンに詰め、着替えるために奥に向かったところで、

「あ・痛っ・・・」

先ほどの試合でスプラッシュマウンテンを放った際に右足首をひねったようだ。

    **************

2007年5月29日 (火)

第130回 10年目11月ついに伊達・草薙組結成

10年目11月、

恒例のSPZタッグリーグ戦。

今年の出場チームは以下の通り(上原今日子は右足首の負傷で欠場)

SPZ伝説チーム:伊達遥&草薙みこと

元SPZタッグ王者:永沢舞&富沢レイ

かくめー軍:ハイブリッド南&マイトス香澄

5期生タッグ:吉田龍子&渡辺智美

若手有望株タッグ:新咲祐希子&スイレン草薙

ニールセン一族:エレン&ロレンニールセン

EWA代表:ドリュー・クライ&ウェイン・ミラー

AAC代表:ハイサスカラス&ドスカナ・リブレ

2戦目の岩手大会からリーグ戦がスタート。

ハイサス、ドスカナ○(2点、ミサイルキックからの体固め14.47)エレン、ロレン×(0点)

H南○、M香澄(2点、合体パワーボム19.41)ドリュー、ウェイン

「ウラ!」

ドリュー・クライのニーリフトがハイブリッドに大ダメージ。代わって出てきたマイトスがドリューの攻撃を耐えて耐えてハイブリッドにスイッチ。このあとハイブリッドが関節地獄で痛めつけてのダブルパワーボムで終了。

吉田○、渡辺(2点、ダブルラリアットからの片エビ固め)伊達×、草薙

長い間SPZのトップ争いを繰り広げ数多の死闘を行って来た両者がついにタッグ結成してリーグ戦参戦。これには場内熱狂。試合の方は吉田が伊達草薙相手に容赦のない攻め。草薙をスプラッシュマウンテン2発で殺して、伊達を孤立させて集中砲火。しかし伊達も伝家の宝刀SPZキックで吉田の突進力を鈍らせる。しかし余力を残す渡辺を呼び込んでのダブルラリアットで終了。吉田の牙城に今持てる力を懸命に出し尽くした古参2人の踏ん張りに場内は拍手。

新咲○スイレン(2点、ネックブリーカーからの片エビ固め18.34)永沢富沢×

穴がないので優勝候補筆頭は新咲スイレン。初戦はセオリーどおりひとり格落ちの富沢を潰して白星発進。

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リーグ2戦目は盛岡大会。

第1試合ではアリッサ・サンチェスが新人のギムレット美月をあっさりローリングソバットで沈め、第2試合ではガイア小早川がビーナス麗子をエルボーで倒した。

第3試合からはリーグ戦。

永沢○富沢(2点、ジャンピングニーからの片エビ固め12.05)エレン×、ロレン(0点)

永沢がほとんど一人でやっつけた。

ドリュー、ウェイン○(2点、合体パイルからの片エビ固め13.37)ハイサス、ドスカナ(2点)

EWA代表対AAC代表の一戦はEWA軍が勝利。

吉田、渡辺○(4点、ヒップアタックからの片エビ固め23.43)H南、M香澄×(2点)

吉田とハイブリッドはSPZ選手権並みの熱い攻防。両者が大ダメージを負って終盤は渡辺対マイトスの一騎打ち状態に。渡辺が先輩の意地を見せヒップアタックでフォール勝ち。

新咲、スイレン(4点、シャイニングウィザードからの片エビ固め 15.12)伊達、草薙×(0点)

個々の力で上回る新咲スイレンが古参コンビを蹴散らし2勝目をゲット。

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リーグ戦3戦目は茨城カシマ体育会館。

ハイサスカラス○、ドスカナ(4点、フランケンシュタイナー16.23)永沢、富沢×(2点)

富沢がハイサスカラスに捕まってしまった。

伊達、草薙○(2点、サソリ固め13.13)エレン、ロレン×(0点)

勝つには勝ったが草薙みことは不満そうな表情。試合終盤はロレンの投げ技をけっこうもらい、ノーザン2連発まで受けてしまった。頭で思っていた動きが出来ないもどかしさ。最後はなりふりかまわないサソリ固めでどうにか勝ったが・・・

吉田○、渡辺(6点、パイルドライバーからの片エビ固め)ドリュー×、ウェイン(2点)

ドリューのハリケーンラッシュ。さすがの吉田も吹っ飛んで渡辺にタッチ。しかし渡辺も外人組の攻撃をひとしきり耐えて吉田にスイッチ。最後は吉田とドリューのシバき合い。

「ウラッ!」

ドリューの強烈なハイキックが吉田をダウンさせる。しかし吉田はしぶとくカウント2で返して、組み付いていって

「遊びじゃないんだよ!」

強烈なパイルドライバー。これでカウント3を奪った。

どうにか3連勝。ひょっとしたらこのまま突っ走るか・・

新咲○スイレン(6点、ハイキックからの片エビ固め18.40)H南、M香澄×(2点)

いくら格闘サイボーグのハイブリッド南といえど新咲、スイレンといった実力者2人を相手にするのは無理があって、非力なマイトス香澄が出て来たところを新咲、パワーボム、ハイキックとたたみかけて3連勝。

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翌日は宇都宮大会。

伊達、草薙○(4点、合体パワーボムからのエビ固め 15.43)ハイサスカラス、ドスカナ×(4点)

AACチームのスピードに押されたが、伊達のSPZキックがドスカナの動きを止める。出てきた草薙がノーザン。これはカッとに阻まれたがー

「伊達さん!」

すっと伊達が入ってきて、ドスカナを引きずり起こして肩車。そして草薙がコーナー最上段に登ってダイビングラリアット!ダブルインパクト発動!

しかしドスカナ、一回転して頭から落ちなかったのが幸いしたか、カウント2.9で返す。しかし古参コンビはここが勝負どころと考え、合体パワーボムを決めて2勝目をゲット。館内ヤンヤの歓声。

H・南○、M・香澄(4点 ネオ・サザンクロスロック 7.59) エレン、ロレン×(0点)

ハイブリッド南がひとりでニールセン一族を片付けた。マイトス香澄「またボクの出番がぁ~」

永沢○富沢(4点、キャプチュード13.02)吉田、渡辺×(6点)

まず吉田と永沢がひとしきりやりあった。吉田が押し気味だったので永沢ひとまず富沢にタッチ。ここを先途と吉田が富沢を潰しにかかる。ラリアット、キャプチュードの猛攻。「タッグマッチは弱いほうを狙いなさい」これがSPZで南さんが言い続けてきた必勝法。どうにかすリーパーで反撃して、永沢にタッチ。永沢は形勢打開のため吉田にJOサイクロン!頭を打った吉田は渡辺に「・・・悪い。しばらく頼む」今度は逆のパターン。永沢が渡辺を投げまくりの刑。

「タッグマッチでは弱いほうを狙いなさい」一期生は去ってもその教えは生きている。あっという間に渡辺フラフラ。そしてキャプチュード、渡辺が頭からマットに突き刺さった。ふだんは前座要員の渡辺、こんなえぐい技を受けることはあまりない。これでカウント3が入った。吉田組初黒星。

新咲、スイレン○(8点、ノーザン14.24)ドリュー、ウェイン×(2点)

即席タッグが危なげなく分断に成功し、最後はスイレンが危なげなくノーザンでウェイン・ミラーを仕留めた。

(長くなるので続きます)

2007年5月28日 (月)

第129回 スターライト相羽海外修行中

10年目10月。

そのころー

メキシコシティーの体育館。第3試合。

場内のボロスピーカーから軍歌が流れ出す。

「わが大君に 召されたる

 命栄えある 朝ぼらけ

 たたえて送る 一億の

 歓呼は高く 天を突く

 いざ行け つわもの 日本男児」

(超訳:いよいよあなたにも召集令状が来て戦争に行くことになりました。天皇陛下のために呼ばれて戦うとはなんと光栄なことなのでしょう。戦いに行く兵士を見送る人々の歓声はものすごく、天を突くようです。さあ、お国のために頑張って戦ってきなさい!)

花道からスターライト相羽、ではなかった、神風相羽が入場。日の丸ハチマキには「必勝」、白いガウンの背中には「八紘一宇」などと書かれている。

カミカゼ!カミカゼ!カミカゼ!カミカゼ!

「花と咲く身の 感激を

 戒衣の胸に 引きしめて

正義の戦 行くところ

たれか阻まん その歩武を

いざ行け つわもの 日本男児」

 (超訳:お国のために戦える、感激を、軍服を着込んだ胸に抱いて、威風堂々と進むあなたをどんな敵が止められるでしょうか。さあ、お国のために頑張って戦ってきなさい!)

カミカゼ相羽はリングインするなりコーナーに登り叫ぶ。

「大日本帝国!バンザイッ!」

関内の熱狂はピークに達する。要するにAACのプロモーターに「日本軍国主義キャラ」を演じるよう「要請」されたのである。

―故郷の母さんごめんなさい、ボクは今メキシコでこんなことやってます。

「青コーナー、カミカゼ、アイバー!」

「赤コーナー、エル・ウトンベリノ~!」

相手はAACの若手覆面レスラー。きょうは楽な相手と組まれた。

「せぇやああああ」

ボディスラム、フロントスープレックスで追い込む。

「ウォォォォォ」

ウトンベリノのラリアットをうまくかわして、そのままバックに回ってバックドロップ!

そして相羽、コーナーに登って相手が起き上がってくるのを待つ。

ころあいを見て、

「大日本帝国、バンザイッ!」

常連ファンは一緒に唱和する。こうやって日本の誤ったイメージが植えつけられていくのだが。

そしてコーナー最上段からダイビングショルダー「カミカゼ特攻たいあたり」が決まる。そのままフォール。

ワン、トゥ、スリー。カミカゼ相羽勝利。

勝利した相羽、お約束のバンザイ三唱。ファンも一緒にバンザイ。そしてまた「出征兵士を送る歌」が流れて意気揚々と神風相羽が引き上げる。

「ナイスファイト!アイバサン」

メキシコで軍国主義キャラが大うけで、相羽へのファイトマネーもだんだん増えていった。

夜12時ころ、仲間レスラーの車で送られて、ひとり滞在先のアパートに戻る。

日本から荷物が届いていた。差出人は「SPZ選手会 吉田龍子」となっていた。

「頑張って強くなって、戻って来い」

簡単な手紙と一緒に入っていたのは、大量のポッキーだった。異国の地では日本の食い物が恋しくなる。永沢や新咲も同じ思いをしてきたのだ。

「ありがとう、吉田さん・・・」

スターライト相羽はポッキーをほおばった。

**************

10月シリーズ「ファイヤーソウルシリーズ」開幕。小川ひかるのいない通常シリーズ。前月はSPZクライマックスの熱狂で小川不在の影を感じなかったが、さすがに今月は社長は少し落ち込んだ。

「ベストを尽くしてきます・・・」

初戦山口大会で、SPZタッグタイトル戦が組まれた。王者のナターシャ・ハン、アンナ・クロフォード組に挑むのは伊達遥、草薙みことの「SPZ伝説」コンビ。SPZの歴史をつくってきたベテラン2人が最後の輝きを見せるのか、ファンの注目は高まった。

だが、伊達草薙の衰えは明らかで、アンナ・クロフォードにも攻め込まれる草薙。じっくりと脇固めでいたぶられる。それでも合体ドロップキックでアンナを蹴散らすも、ナターシャが伊達を攻め込み、アキレス腱固めであっさりギブアップを奪った。勝負タイム27分17秒、ベテランコンビ本領発揮できずに敗戦。

_________________

SPZタッグ選手権

○ナターシャ・ハン、アンナクロフォード(27分17秒、アキレス腱固め)伊達遥×、草薙みこと

第15代王者組が初防衛に成功。

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伊達の極め技防御が穴なのは今に始まったことではないが、いままでは圧倒的な破壊力でカバーしてきて、それがなくなってしまうと弱点を突かれてしまう・・・

「もう、私たちの時代ではないのかもしれませんね・・」

控室で嘆く草薙。

*******************

最終戦は新日本ドーム大会。相変わらずの人気で5万2千の大観衆で埋まった。

第1試合は渡辺智美対ギムレット美月。渡辺が8分44秒、ヒップアタックで快勝。

第2試合はビーナス麗子対ガイア小早川。ガイアがミサイルキックで追い込んだが、2発目を自爆させられ、ビーナス麗子が強烈なエルボーでカウント3を奪った。

第3試合はスイレン草薙対マイトス香澄。いちおう8期生の同期対決。スイレンが投げまくりの草薙劇場。デスバレーボムからバックドロップとつないで6分10秒で完勝。

その試合が終わると休憩。休憩明けは新咲、富沢レイ対ハイサスカラス、ドスカナ・リブレのAAC勢。いまやSPZの4強の1角にまで地位を上げた新咲がハイサスカラスを追い込む。苦し紛れにドスカナにタッチしてからも容赦のない攻めを見せ最後はフェイスクラッシャーでカウント3奪取。

セミ前は伊達遥、草薙みこと、上原今日子の1-3期生トリオにロレン・エレン・アンナクロフォードのEWA勢。草薙流兜落としが炸裂しアンナから3カウントを奪った。

セミファイナルはハイブリッド南対ナターシャ・ハンの関節最強対決。しかしハイブリッドの完勝。わずか7分45秒、ジャーマンで葬った。ハイブリッド南、実力は完全に全盛期の南利美をはるかに超えている。

そしてメイン

「そろそろSPZベルトを返してもらおうか」

6月にハイブリッドに敗れて手放したベルトをいよいよ吉田が取り返しにきた。SPZクライマックスでは吉田が全勝優勝しているので、王者永沢の防衛は厳しいと見られていた。だが、何も考えずフロントスープレックスをタタキこんでいったのは永沢、しかし吉田も挽回のためにスプラッシュマウンテンを出し、どちらが勝ってもおかしくない死闘になっていった。

永沢キャプチュードからネックブリーカーで吉田をカウント2.8まで追い込む。

しかしここで吉田が「奥の手」シューティングスタープレス。

これをなんと永沢、カウント2.9でクリア。

ドドドドドド。

永沢がドラゴンカベルナリア。しかしあまりにもロープに近い。

そして吉田が最後の力を振り絞って永沢にパイルドライバー。頭をモロに打った永沢はフォールを返す事ができなかった・・・

___________________

SPZ選手権

吉田龍子(36分25秒 パイルドライバーからの片エビ固め)永沢舞

第23代王者が初防衛に失敗、吉田龍子が第24代王者となる。

__________________

36分25秒の死闘の末、吉田がSPZベルトを取り返した。吉田龍子は5度目のベルト戴冠である。試合後は両者ダメージが深く起き上がれず、SPZコールが会場にこだました。

「はっきりいって、あぶなかったよね、勝ててよかったよ。永沢さんとは差がない。そういう相手に勝てて嬉しい」

2007年5月27日 (日)

第128回 第10回SPZクライマックス(後編)

これまでのあらすじ

10年目9月

「できることなら今すぐ小川さんをかっさらって駆け落ちしたい」そうこぼす今野社長。溺愛していた選手の小川ひかるが引退して、落ち込む社長。しかしSPZ最大のイベント「SPZクライマックス」が今年も開催される。今年の注目はなんといっても吉田龍子のV3(達成すれば草薙みことと並ぶ記録)がなるかどうか。そしてリーグ戦がはじまり、吉田は落ち着いて開幕3連勝。強敵・永沢舞を7分6秒で始末するなど好調。

第5戦は岡山大会。

上原○(5点、ニールキックからの片エビ固め 13.08)草薙(2点)

根強いファンを持つ両者の戦い。さきに集中力が切れたのは草薙で、上原の踵落としを食らってフラフラに。しかし草薙も残る力を振り絞って草薙流兜落とし、DDT.しかしこの攻めを受けきった上原がー

「かわいそうだけどこれで終わりっ」

ダイナミックなフォームでニールキック炸裂。吹っ飛んだ草薙は3カウントを奪われた。

永沢○(2点、JOサイクロン、20.41)伊達(3点)

「最後の1期生」伊達が懸命にエルボーで食らいついていくも、永沢が休まずフロントスープレックスで投げまくる。後半は伊達、サンドバッグ状態。ジャンピングニーからネコキック。最後は永沢、伊達に礼を尽くしたのか、JOサイクロンで投げきって3カウント奪取。リーグ戦初白星を挙げた。

スイレン○(4点、草薙流兜落としからの片エビ固め 20.06)ハイブリッド(4点)

意外にもスイレンがキレイな投げ技をドカドカ繰り出し優位に立つ。ならばとハイブリッドもサソリ固めやアキレス腱固めでスイレンをキリキリ舞いさせるが、運の悪いことにことごとくロープ際。ハイブリッドの極め技攻勢をしのいだスイレン

「これで決めますっ!」

草薙流兜落とし炸裂。この後のフォールをハイブリッド南返せず。

えええええええええええ!

館内のリアクションは上記の感じ。新鋭のスイレン草薙、デビュー2年半でトップグループに追いついた。

吉田○(8点、スプラッシュマウンテン 15.31)新咲(4点)

「今日勝てば優勝はまあ固いね」

控室に貼られた手書きの星取表を眺めて、ペットボトルの水を飲みながら吉田がひとこと。

「でもまあ、ゆっこも強くなってきたから気合い入れていくよ」セミで対抗馬のハイブリッドが負けて、ますます有利になった吉田。

試合は中盤まではパワーに勝る吉田が押していたが、

「はああー、いっくよーっ」

高速ジャーマン。カウント2で返す吉田。これで少しは本気になったのか、プラズマサンダーボム2連発からスプラッシュマウンテンという怒涛の大技攻勢で新咲を破壊。

リーグ戦4試合を消化して吉田龍子が4戦全勝。そのほかの選手は潰しあいを展開して、2勝1敗1分けで上原が追う。吉田の残る相手は伊達草薙ハイブリッド。最終戦のハイブリッドはともかく後の2人はいまの吉田が負ける相手ではない。

*******************

第6戦は奈良大会。

永沢○(4点、JOサイクロン 15.20)上原(5点)

永沢がSPZ王者の意地を見せて終始優勢に試合を進める。中盤にJOサイクロンを食らってからは上原の動きがめっきり鈍くなり、そこを突いて永沢が猛攻。最後はラリアット、2発目のJOサイクロン。これでカウント3。永沢、2勝目を挙げた。

新咲○(6点、シャイニングウィザードからの片エビ固め 15.52)スイレン(4点)

スイレンも懸命に新咲を投げつけていったが、持てる技の引き出しの多い新咲が優位に立ち、フェイスクラッシャー2連発からシャイニングウィザードで危なげなく勝利。

ハイブリッド○(6点、ヒップアタックからの片エビ固め 10.20)草薙(2点)

かつては「夏女」と言われた草薙もここ1年で地力は相当下がっており、終盤はハイブリッドの攻めの前にサンドバッグ状態。最後は踵落とし2連発に意識が飛んでしまい、ヒップアタックで3カウントを奪われた。

吉田(10点、パイルドライバーからの片エビ固め 11.19)伊達(3点)

新旧絶対王者対決。吉田のパワーの前に伊達なすすべなし。吉田も大先輩に敬意を表したのか、早めのスプラッシュマウンテンで沈めにかかる。これはカウント2.5で返した伊達、SPZキックで反撃するがあとが続かず、ギロチンドロップからのパイルドライバーに沈んだ。吉田全勝キープ。ニヤリと笑った。

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第7戦は新潟大会

永沢○(6点、JOサイクロン、24.32)スイレン(4点)

似たようなファイトスタイルの両者、しかし投げ技では永沢に一日の長がある。終始安定した試合運びでスイレンを追い込み、最後はJOサイクロンで粘るスイレンを仕留めた。

ハイブリッド○(8点、ネオ・サザンクロスロック 7.49)伊達(3点)

ハイブリッドが伊達とひとしきりやりあった後、ネオサザンを決めて完勝。7分49秒であっさりやられた伊達、内容の悪すぎる敗戦に呆然と引き揚げた。

新咲○(8点、キャプチュード24.51)上原(5点)

上原が追い越された後輩、新咲相手に奮闘し、ジャーマンでカウント2.9まで追い込む。しかしここで決めきれないのが上原のもろさ、ハイキックからキャプチュードの逆襲で3カウントを奪われた。

吉田○(12点、ギロチンドロップからの片エビ固め、10.13)草薙(2点)

負けなければ優勝の吉田。きょうの相手は往年の力がなく、まだ1勝しか挙げていない草薙みこと。誰の目から見ても力の差は明らかで、吉田のエルボー乱打に防戦一方、さらに口の中を切り流血。これでもうあとは一方的な吉田ペース。草薙、シューティングスタープレスはヒザで迎撃したものの、パイルドライバー、ギロチンの攻めに沈んだ。これで吉田龍子、SPZクライマックス3連覇達成。草薙みことの大記録に並んだ。

「記録は破られるためにあります。まあ・・仕方ないですね、吉田選手がすごかっただけです。」

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最終戦はさいたまドーム大会。消化試合にもかかわらず4万人超のファンで埋まった。

上原○(7点、フライングニールキックからの片エビ固め25.43)スイレン(4点)

去年このカードで負けている上原が猛然と攻める。スイレンも長丁場のリーグ戦、最後に来て疲れが隠せない。上原のフェイスクラッシャーからのニールキック、カウント2.9やロープブレイクで返し続けたスイレンだが、3発目のニールキックでついに撃沈。

「ハァ、ハァ・・・・」

25分の激闘を上原が制し、先輩の意地を見せた。スイレン、2勝に終わり、予選会落ち決定。

永沢○(8点、ムーンサルトプレス10.16)草薙(2点)

SPZ王者の永沢、3連敗の後4連勝。この日も草薙相手に危なげない戦いを見せ、最後はムーンサルトでカッコよく締めた。格下相手には取りこぼさない永沢、しかしチャンピオンでありながら吉田ハイブリッド新咲の実力者3人に負けたのはあまりにも痛い。

かつての夏女、草薙みことは伊達に勝っただけの1勝6敗で終了、長年のシード権を失った。「もう潮時かも知れませんね」弱気なコメントも出した。

新咲○(10点、ジャーマン26.41)伊達(3点)

新咲の猛攻に1期生の伊達、ついていくのがやっと。SPZキックで打開を図るが、受けきった新咲が一歩一歩追い詰めてゆく。伊達もひさかたぶりのSTOまで繰り出して、新咲をあわてさせたが、

「はぁぁー、いっくよーっ」

高速ジャーマン炸裂。伊達の長身が頭からマットに沈む。伊達はもはや身体に力が入らず、3カウントを聞いた。敗れたとはいえ伊達、前SPZ王者の新咲相手に26分も粘ったのだからたいしたものである。リーグ戦はスイレンに勝って上原に引き分けただけの3点に終わり、シード権を失った。

吉田(14点、スプラッシュマウンテン 11.41)ハイブリッド(8点)

「負けて表彰式なんて恥ずかしいよ。勝って賞金を受け取りたいね、それに先月横浜でやられたときのお返しをしないと」

試合前のコメントどおり序盤からムーンサルトを放つなどエンジン全開吉田龍子。あとはラリアットをガンガンに叩き込んで最後はスプラッシュマウンテンでハイブリッドを退けた。2年連続全勝優勝。吉田強い・・・

ホッとした表情で表彰式に臨む吉田龍子。笑顔で今野社長から賞状と金一封、トロフィーを受け取る。副賞として「イタリー製コート」が贈られた。準優勝の新咲には賞状と「横浜中華街お食事券」、3位のハイブリッド南には「スポーツドリンク1ケース」が贈られた。

こうしてリーグ戦は幕を閉じた。

********************

「カンパーイ♪」

「龍子ちゃん3連覇おめでとう~」

「よこ川」で祝杯を挙げる吉田龍子と井上霧子、今野社長、あと同期の渡辺智美。

「龍子ちゃんおめでとー」

目の前には鯛の尾頭付きが3匹。

吉田も20歳になり、飲めることは飲めるが、レスラーなのでもっぱら食べるほう。井上霧子が日本酒をがぱがぱ飲んでいた。

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関内某所の高級焼き肉店。草薙みことと伊達が黙々と焼き肉を食べていた。

・・・もぐもぐ

草薙はショックを隠せなかった。けっきょく後輩相手からは1勝もできなかった。

「今の位置はスイレンに任せて、引退したいと思います。もうプロレスでやるべきことはやったと思います」

伊達はロースを一皿平らげて、

「もうちょっと・・・頑張ってみたら。私が引退するまでは辞めないで・・・11月、タッグリーグで組んで賞金もらってから考えよう・・・」

「・・・・・・・・・」

二人は焼き肉を3万円分平らげた。

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10年目10月。

2007年5月26日 (土)

第127回 第10回SPZクライマックス(前編)

10年目9月

小川ひかる引退シリーズで「ボロ儲け」して、手持ちのキャッシュが多くなってきたので今野社長は10億円を投じ、2番目の自社ビル「SPZトレーニングセンター」を戸塚にオープンした。本社ビルとは歩いて数分の距離。

1階はテナントのスーパー、2階はイタリアンレストラン「アレグロ」の支店が入り、3階はSPZの道場。最新式のトレーニングマシンを備えた。4階が選手ミーティング室、食堂、ロビーや大浴場で、5階が選手寮。

したがって8期生以降の寮生は「ニューまつかぜ寮」から全員引越し。ニューまつかぜ寮は照明や音響関係の倉庫に改造した。

「あ、吉田さん。小川選手引退したんで選手会長やってください。姉御肌だから、会社への要望があったらお願いします」

「うん・・わかった」

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そして、1ヶ月遅れになっていたSPZクライマックス、第10回記念大会が開催。9月3日の夜9時、閉店後のメイド喫茶「あばしり」を借り切って記者会見が行われた。

「最強巫女伝説」草薙みこと(23) 

第7回・第6回・第5回大会優勝、8年連続8回目の出場「全力で行きます」

殺人ヒザ魚雷」伊達遥(24)

第4回大会優勝 5年連続9回目の出場

(オレンジジュースをすすった後一呼吸おいて) 「えっと・・あの・・・その・・・がんばります」

「超龍伝説」吉田龍子(20)

第8回・第9回大会優勝、5年連続5回目の出場

 「全員倒して、優勝する、それだけ。」

「七色のスープレックス」永沢舞(21)

SPZ世界王者 5年連続5回目の出場

 「SPZチャンピオンとして、応援していただいているファンの皆さんの期待に応えられるよう、頑張ります」

「南風GOGO」上原今日子(22)

6年連続6回目の出場

「優勝するつもりで闘う。まだトップを取るのを諦めたわけじゃない」

「最強戦士」ハイブリッド南(19)

3年連続3回目の出場。

「完璧な闘いを見せるわ」

大食い女」新咲祐希子(19)

前SPZ王者 2年連続2回目の出場

「目標は優勝。賞金でおいしいものを食べに行きます」

「新・最強巫女伝説」スイレン草薙(17)

2年連続2回目の出場

「修行の成果を見せないといけませんね」

そして例によってマスコミ各社が予想記事。

今年はSPZ四天王―「吉田龍子・永沢舞・新咲祐希子・ハイブリッド南」の誰が優勝してもおかしくないと思われるが、強力な必殺技を持っている吉田龍子が一歩リードし3連覇するのではないかといったものであった。で、京スポ新聞はいつものように草薙みことの直前合宿に同行・・・

最強巫女伝説、超龍神に挑む 

草薙みことが最終調整 SPZクライマックスまであと1週間と迫った8月上旬、第5回大会から3回連続でSPZクライマックス優勝を続けたが前回は後輩の勢いに押されて4位に終わった「夏女」草薙みことが例年通りに山形県の奥地、古寺温泉で最終調整を行った。パートナーの小川ひかるは引退したので、ひとり朝4時に起きて山中を6時間ゆっくり「もう無理がきかなくなっているので」歩きながら体を動かし、仕上げは河原で瞑想。死闘が連続するSPZクライマックスを勝ち抜くために精神統一を図っているのか。もはやかつての輝きはなく、トップグループからも脱落した草薙が、どういった戦いを見せてくれるのか。ことしは草薙みこと、覚悟を決めて臨む。」

そのあと温泉でインタビュー。和室でどてらを着てくつろいでいる写真が一面を飾った。「リーグ戦に出られるのも今年が最後だと思うので、精一杯自分のプロレスをやります」

そして「SPZクライマックス」開幕。初戦は高知大会での「前夜祭マッチ」そのあと2戦目の愛媛大会から地獄のリーグ戦が始まる。

草薙○(2点、水面蹴りからの片エビ固め 2848)伊達

かつてSPZベルトを巡って死闘を繰り広げた両者、草薙が投げれば伊達が殴る、数多の名勝負がフラッシュバックする。

伊達さんは、痛め技に難があるから・・・

後半、サソリ固めやドラゴンスリーパーといった痛め技をしつこくしつこく繰り出し、タイガードライバー、タイガースープレックス2連発で勝負、しかしロープに救われた伊達、渾身のSPZキックが草薙を捉える。

ガスッ。

場内に響く鈍い音。

フラフラと草薙が起き上がって来たところを2発目のSPZキックを伊達狙う、しかし草薙、視界から消えて水面蹴り。長年闘っている相手だけに狙っていた。

あっ・・・

キックの軸足を刈られてすっ転ぶ伊達、上にのしかかった草薙がフォールを強引に奪った。28分48秒の激闘に館内ものすごい拍手。

新咲○(2点、ネックブリーカーからの片エビ固め 1849)永沢

先月札幌でのSPZタイトルマッチの再戦。新咲が高速ジャーマンを繰り出せば永沢はJOサイクロン。互いの意地がぶつかりあう好勝負。さいごはハイキックをもらって動きの止まった永沢にネックブリーカー2連発で新咲が勝利。札幌大会の雪辱を果たした。

上原○(2点、ブレーンバスターからの片エビ固め 19.35)ハイブリッド

SPZベルトを巻いたことのある上原だが、絶対的な必殺技がなく、痛め技に弱いこともあり「四天王」からは外れている。それでも「剛脚」ニールキック、ローリングソバットでハイブリッドを追い込む。ハイブリッドのネオサザンはロープ際だったので不発。最後は力比べの末、ブレーンバスターを決めた上原がハイブリッドから3カウント奪取。先輩の意地を見せて逆転勝利。場内、ウエハラコールが爆発した。

「油断したら全敗しちゃうからね。勝てる試合は拾っとかないと」上原はホッとした表情でコメント。

本命吉田対抗ハイブリッドと見られていただけに痛い星を初戦から落としたハイブリッドは「くっ、納得いかないわ・・」

吉田○(2点、ギロチンドロップからの片エビ固め)スイレン

愛媛大会メインはこのカード。SPZクライマックスは横浜名古屋大阪といった大会場を回るのだが、今年は小川引退の影響で1ヶ月ずれたので地方のファンも超絶シングル戦の激闘を多数見られることになった。3連覇を狙う吉田、初戦の相手は新鋭のスイレン草薙。相撲で言えば横綱と平幕の対戦。吉田がラリアットを重ねてペースを握り、ニーリフトで動きを止めプラズマサンダーボム。

カウント2.8で返すスイレン。場内大歓声。

「負けるもんか・・・っ」

吉田はスイレンのダメージが深いのを察知し、あっさり組み付いてボディスラムで投げてから、重爆ギロチンドロップ。本人はつなぎ技で多用していると言っているが、相手が深手を負った終盤だとフィニッシュにもなりえる。これでカウント3奪取。万全のプロレスで白星発進。

    *****************

翌日は徳島鳴門大会。

伊達○(2点、SPZキックからの片エビ固め)スイレン(0点)

バックドロップ、ノーザンで伊達のバリアを崩したスイレン。伊達、投げ技の波状攻撃で防戦一方に追い込まれる。しかし伊達は一発逆転を狙っていた。

「勝機、見逃すわけにはいかない」

SPZキック!

顔面に鋭い蹴りがまともに入ってしまう。滴り落ちる鮮血がスイレンの白いコスチュームを染める。

一瞬たじろいだスイレン。そこを逃さず、

殺人ヒザ魚雷!

ドボドボと鋭い膝蹴りがスイレンの腹部に命中。その破壊力は健在だ。ふらふらと起き上がってきたスイレンを逃さず、この日2度目の、

SPZキック!

文字通りこの団体を支えて来た意地と気迫のこもった蹴りが、スイレン草薙の戦意を不稼動状態に追い込んだ。往年の輝きがよみがえったか。伊達遥の奮闘に涙を流すファンもいた。これでカウント3奪取。

試合内容ではスイレンが圧倒的に押していただけに、劇的な勝ち方に場内は爆発した。保科レフェリーの肩につかまりながら伊達は苦しそうな表情で、引き揚げた。

一方的に投げて、油断したのだろうか・・・

スイレンは悔しそうな表情で、鼻から流れる血を押さえながら引き揚げた。

新咲○(4点、パワーボム13.19)草薙(2点)

「夏女」登場にものすごいミコトコール。しかし時の流れは残酷。前SPZ王者の新咲が終始優勢に試合を展開。草薙ただじっと受け続けるサンドバッグ状態。追い詰められた草薙は場外で草薙流兜落としを繰り出すが試合の流れを変えるには至らず、最後は新咲がパワーボムで3カウント奪取。新咲が完勝。

ハイブリッド南○(2点、ハイキックからの片エビ固め)永沢(0点)

ファイトスタイルが全然違う両者の対戦なので試合展開が読みづらいカード。押していたのはハイブリッドだったが、試合中盤永沢がJOサイクロン、ノーザンの猛攻。しかしこの攻めをしのぎきったハイブリッドがぶっこ抜きジャーマン、そしてハイキックでSPZ王者を半失神に追い込みカウント3奪取。SPZ王者が開幕2連敗。

吉田○(4点、スプラッシュマウンテン 15.41)上原(2点)

上原のドロップキックは団体内で随一の美しいフォーム。これを序盤、何発も叩き込んだので会場は沸いた。しかし「重戦車」吉田がだんだん持ち前のパワーで盛り返して行って、鋭いDDT、重いステップキックで上原を追い込む。上原もローリングソバット、フランケンシュタイナーを出すなど健闘したが、最後は吉田がキャプチュードからスプラッシュマウンテンと大技をたたみかけて勝利。こういうのを横綱相撲と言うのだろうか。

リーグ戦2試合を消化した時点で全勝は吉田と新咲のみとなった。

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第4戦高松大会。会場入り前、草薙みことと伊達遥は「本場のさぬきうどん」をすすった。

スイレン○(2点、ヒップアタックからの片エビ固め12.57)草薙(2点)

実力では草薙みことを追い抜いたと言われているスイレン、その評価を実証するように草薙を投げまくって追い込んでゆく。草薙が挽回のため早めの勝負。

「勝たせて頂きます」

草薙流兜落とし発動。カウント2で返すスイレン、っしてサッと立ち上がり草薙に組み付き、

「修行の成果、お見せします」

草薙流兜落としでお返し。自分の必殺技でフォール負けだけはしたくなかったのか、カウント2.9で返す。しかし、草薙の意地はそこまでで、続くヒップアタックからのフォールを返せなかった。

上原(3点、時間切れ引き分け)伊達(3点)

序盤は静かなスリーパーの攻防。伊達は上原の足を狙ってしつこくアキレス腱固め。上原は伊達の突進力を鈍らそうと考え、パイルドライバーで頭を集中攻撃。3発食らって頭を押さえて場外に転落する伊達、上原容赦せず場外でフランケンシュタイナーの追い打ち。フラフラとリングに戻った伊達、上原がトドメのジャーマンを狙うが回転エビに切り返されて、ここで30分タイムアップ。上原は伊達のバリアを切り崩すのが遅すぎた。

ハイブリッド南○(4点、ネオ・サザンクロスロック 22.11)新咲(4点)

試合を7割がた攻めていた新咲だったが、終盤盛り返され、ハイブリッドが逆転のネオ・サザンクロスロック。

吉田○(6点、プラズマサンダーボム 7.06)永沢(0点)

開幕2連敗を喫しあとがない永沢。しかし吉田龍子は短期決戦を狙ってきて、いきなりラリアット、スプラッシュマウンテン、フランケンシュタイナーの猛攻で潰しにかかる。予想外の展開にあわてた永沢、JOサイクロンで反撃するもあとが続かず、プラズマサンダーボムに3カウントを聞いた。勝負タイムわずか7分6秒・・・吉田龍子が開幕3連勝。

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2007年5月25日 (金)

第126回 小川ひかるの絶叫

「第6試合、シングルマッチ30分1本勝負を行います。青コーナー、

東京都江戸川区

出身、マイトスー、かすーみー」

マイトス香澄はきちんと一礼。

一呼吸置いて今野社長が、

「赤コーナー、

長野県松本市

出身、おがわー、ひかーるー」

泣きそうな表情で、万感の思いを込めてコール。

ものすごい量の青い紙テープが投げ込まれた。小川とマイトス、リングアナ今野社長、レフェリー井上霧子は青い雪崩に埋まった。セコンド陣総出で片付け。そのあと井上レフェリーのチェック、そして井上霧子は本部席の今野社長にゴング要請のサインを送った。

ファイッ!

今野社長がゴングを一打。午後8時20分、小川ひかるの最後の戦いが始まった。

「うぐぐぐ・・」

いつも通りじっくりとしたレスリングを展開する小川、マイトスのほうがかなり緊張していたのか、小川のスリーパーにつかまってしまう。

小川がスリーパーや脇固めでじっくりと攻めていったので、マイトスはなかなか攻勢に転じられない。そして試合中盤から小川がステップキックやローリングソバットでだんだん立ち技を混ぜてくる。このあたりの組み立てはさすが。

「ヤー!」

ペースを取り戻そうと、マイトスのフロントスープレックスが決まる。ここで小川が早くも勝負に出た。

「もう逃げられないわよ!」

ロープに近かったがSTF。何人もの強敵からこの技でギブアップを奪ってきた。しかしこれは位置が悪く、すぐロープブレイク。

小川、起き上がったマイトスを捉えてニーリフト。伊達の殺人ヒザ魚雷ほどの威力はないがそれでもかなり痛い。

マイトスも熱くなり、

「受けてみろーっ!」

ノーザンライトで小川を投げた。

ワン、トゥ・・・

しかしこれは小川カウント2でクリア。すばやく起き上がった小川がマイトスに絡みついて、

2度目のSTF。

「うが・・・っ」

ドワアアアアアア!

ーかけがえのない仲間、そしてたくさんのファン。

やっぱりプロレスは楽しい。

終わりたくない、いつまでも続けていたいのに・・・

「うあああーっ!」

小川が万感の思いを込めて、気合いを発しながら右手首をマイトスの鼻に当ててつぶすように絞り上げる。

ドワアアアアアア!

場内ものすごい歓声に包まれた。

こんどはロープは遠く、マイトス香澄はギブアップするしかなかった。井上レフェリーの手を叩いて参ったの意思表示。

井上レフェリーはスッと立ち上がり、本部席にゴングを要請した。

カンカンカン・・・

「13分0秒、STFで、小川ひかるの・・・勝ち。」

今野社長は涙をこらえて試合結果をコール。小川ひかるの最後の戦いが終わった。青い紙テープがまた投げ込まれる。

これで、終わった・・・

小川ひかるはSTFを解いて起き上がり、井上レフェリーに手を上げてもらう。そしてマイトス香澄と握手。

    ・・雰囲気にのまれちゃったか・・・

悄然として引き揚げるマイトス。先々月の予選会では勝っている相手なのに負けてしまった。

ここで全選手がリングに上がり、小川ひかるを胴上げ。小川ひかるは3回宙に舞った。

そして、チーム関節地獄の盟友の南利美、師匠のミミ吉原がリングに上がり、花束を渡す。

「お疲れ様」

「ヒカル、お疲れ様、良く頑張ったね」

そしてこの日2度目の「マイティ・ウイング」がかかり、両手に花束を持った小川ひかるが花道をゆっくりと後にした。

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セミに出る4選手がスタンバイするまでの場もたせがわりに場内オーロラビジョンに歌が流れた。元アイドルの歌手、向山志穂が熱唱。

―私はあきらめない (小川ひかる イメージソング)―

世の中は世紀末 いくつもの夢、胸に描いてきた明日が消されてきた。

 明日になれば何かが変わると思っても 変わらない明日があった。

 今日を生きるため 危ない橋を渡り 何度も思う だめだ もう おかしくなる

 それでも 今日まで 歩いて来れたのは 胸の奥 あなたが いたから

 たとえ どんなに 高い壁だって 目の前 一歩一歩 上へ登って行けば 

 いつかきっと越えて進める

 私はあきらめない。キセキを信じて。

 積み上げられた 重いタスクの山 見上げてため息 ただゾーと思う

 それでも 明日を 思っていられるのは あなたの 声が 聞こえるから

 たとえ どんなに 遠い場所だって あせらず 一歩一歩 前と進んでいけば

 いつかきっと たどりつける

 私はあきらめない。ミライを信じて。

 私はあきらめない。私の進む道は、いつだって前しか、ないだろうが!

 たとえ どんなに 悲しい時だって 目の前 その日その日を なんとか 丸め込んで行けば

 いつかきっと 越えて進める

 私はあきらめない。次の世界、信じて

向山志穂の熱唱が終わり、最後に「作詞・作曲、今野和弘」とテロップが流れるや場内はあきれ返った。この社長どこまでバカなんだ。

そしてセミファイナル。リングコスチュームに着替えた4人がリングへ。

伊達遥・草薙みこと対永沢舞、新咲祐希子のタッグマッチ。伊達は1期生の意地、草薙は小川のタッグパートナーの意地でぶつかっていったが、草薙伊達の力の衰えは隠せず、だんだん劣勢になっていく。

―これで決めます!

伊達のSPZキックが永沢の頭を捉えるが、永沢はさほど痛がるそぶりも見せず、すばやく起き上がって組み付いてバックに回り、JOサイクロン。これで伊達は沈んでしまった。勝負タイム20分16秒。

メインは吉田龍子対ハイブリッド南。

ノンタイトル戦だがいまのSPZで考えられる最高のカード。6月にハイブリッドに負けて王座転落した恨みを晴らすかのように吉田が持ち前のパワーで攻めかかるが、ハイブリッドも要所要所で反撃しペースを握らせない。そして勝負を分けたのはハイブリッドの執拗なまでのサソリ固め。これで動きが鈍った吉田の脳天へ、

がすっ!

強烈な踵落とし。崩れ落ちた吉田に覆いかぶさってカウント3奪取。24分38秒の熱闘を制した。

メイン終了後、小川ひかるの引退式。クレイダーマンのピアノ曲「レディ・ディ」が流れる中、ジャージ姿に着替えた小川ひかるが入場。

引退式は簡素で、リング上で10カウントゴングのセレモニー。

そのあと小川ひかるの挨拶。

いつも応援ありがとうございます。SPZの旗揚げから9年ちょっと、社長、井上さん、そして皆さんのためにファイトしてきましたが、腰を痛め、自分らしいプロレスをお見せすることが、できなく、なりましたので、引退を・・・決めました。」

このあたりで小川ひかる、涙が止まらなくなって来た。

「みなさん、今日まで・・・本当にありがとうございました・・・」

もらい泣きのファン多数。こうしてSPZを旗揚げから懸命に支えてきたレスラーが去った。

********************

その夜は「よこ川」で打ち上げ。その翌日、小川ひかるはSPZ本社へ別れの挨拶。しばらくは腰痛の治療をかねて松本の実家でゆっくりするらしい。営業、経理スタッフひとりひとりに「長い間お世話になりました」と挨拶するところが小川らしい。

井上レフェリー兼社長秘書に挨拶した後、営業フロア奥の社長に挨拶。

今野社長はスタッフの前なので鷹揚に切り出した。

「小川さんにはほんとうに長い間世話になったね。これからは健康に気をつけてください。・・あと、これは私が今さきまで使っていたノートパソコンだが、今日の記念に持ち帰ってもらいたい」

まだ温かみを残すノートパソコンを社長はパソコンバッグに入れて、小川ひかるに手渡した。

「はい、今まで・・・ありがとうございました」

小川ひかるは本社の階段の踊り場でパソコンを持ったまま、声を殺して泣いた。

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小川ひかる

2009年4月21日、横浜赤レンガアリーナ大会のジュリア・カーチス戦でデビュー、2018年8月21日、横浜スペシャルホール大会のマイトス香澄戦で引退。稼動月数113ヶ月。出場試合数(推定)816試合

タイトル歴

AACジュニア王座、

AACタッグ王座(パートナーは南利美、草薙みこと)

SPZタッグ王座(第2代、第7代、第10代、パートナーは草薙みこと)

第5回・第6回SPZタッグリーグ戦 優勝(パートナーは草薙みこと)

写真集 3冊

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8月シリーズ、巨大会場をそこそこ埋めたこともあり、SPZの1ヶ月の利益額は過去最高の2億6千万円となった。

2007年5月24日 (木)

第125回 小川ひかるの最終

あらすじ

横浜戸塚に本拠地自社ビルを構えるお嬢様プロレス団体「SPZ」は旗揚げ10年目を迎え、団体の苦しい時期を支えた名選手がぞくぞくと引退。そしてついに、SPZの今野社長が「溺愛」していた小川ひかるが引退を申し出た。実力はともかく人気の高い選手だったので、ドーム級の会場をまわった引退シリーズは大盛況。そしていよいよ最終戦、横浜スペシャルホール大会。

オープニングマッチ、リック・アストリーの「Together Forever」がかかり、新人のビーナス麗子がリングへ。そのあとバナナラマの「第一級恋愛罪」が流れ、渡辺智美がリングイン。序盤はビーナス麗子も打撃技でよく攻めたが、受けきった渡辺が盛り返し、

「はああーっ!」

気合いのこもったヘッドバット。可愛い顔してこんな技を出してくるところが彼女の魅力である。これで大ダメージを負ったビーナス麗子。最後はアームホイップで投げ飛ばされてカウント3が入った。

続く第2試合、「oblivion」が流れる中、新人のギムレット美月が入場。そして「sky was g-ray」が流れる中、ガイア小早川が入場。序盤、一方的にガイア小早川が押して、フェイスクラシャー2連発でカウント2.9までギムレットは追い込まれたが、じわじわとスリーパーで盛り返し、最後はタックルで逆襲して、先輩のガイア小早川から初白星を挙げた。勝負タイム8分2秒。

第3試合、「ムーンリベンジ」に乗って富沢レイ入場。2期生で固定ファンが多いので場内は大歓声。相手はAACの新鋭、ドスカナ・リブレ。富沢もスリーパーを軸に攻めていったが、ドスカナが若さあふれる跳躍力とスピードで攻めていって、最後は強烈なヘッドバットでカウント3を奪った。勝負タイム15分16秒。頭を押さえて引き揚げる富沢。ここで15分の休憩。

小川ひかるは控室奥の更衣スペースでリングコスチュームに着替えた。そのあとリングシューズを履き、紐を通す。

ふぅ、これを履くのも、きょうで最後なのね・・・

ここで今野社長が控室までやってきた。

「小川さん、ちょっとだけいい?」

関係者通路の奥で社長が二言三言、声をかける。

「最後の試合、まあ楽しんでください。で、またガウン作ったから着てって。あと、・・・うーん、まーそのなんだ、私もあと1年くらいしたら社長辞めるから。お互い『ただの人』に・・・なったら・・・会いに行くよ。」

「・・・はいっ、わかりました。頑張りますっ!」

そして社長が後半のアナウンスのため本部席へ取って返す。

小川ひかるは笑顔で社長を見送った。

*******************

休憩明けの第4試合は外人選手同士のタッグマッチ。ウェインミラー、ジョーカーウーマン対エレン・ロレンのニールセン一族。実力が拮抗している中堅外人の対決に場内は沸いた。最後は19分17秒、ジョーカーがニーリフトでロレンを仕留めた。

次の試合、ナターシャ・ハン、ドリュークライのEWAトップ2と対戦するのが上原今日子、スイレン草薙組。上原今日子のテーマ「Disintegration」に乗って入場する上原スイレン。試合の方はまた好勝負。ドリューがものすごい掌底のラッシュ。スイレン草薙、たまらず上原にタッチ。上原がいつも以上の身のこなしで外人組にフランケンシュタイナーを繰り出す熱いファイト。最後はスイレン草薙にタッチし、ドリュークライを捕まえて、

合体パワーボム!これでドリューから3カウント。18分11秒の熱戦。コーナーに上がって勝利をアピールする上原今日子。

「小川さん、第5試合終わりました」

セコンドのギムレット美月が告げる。

「はい、わかりました」

小川ひかるがきょう、社長から貰った「最終戦限定ガウン」を羽織る。青いロングガウンだが、背中には穂高連峰をバックにした上高地の油絵がプリントされている。

小川ひかるが花道奥へ移動。

「上原さん、スイレンさん、ナイスファイト」すれ違う上原とスイレンに声をかける。

「小川さん、頑張ってください」

    ****************

「つ、次の試合に登場する、小川ひかる選手は、この試合が最後の、試合となります。ファンのみなさま、より一層のご声援を、お願いいたしますっ。」

今野社長が震える声でアナウンス。

場内またもウォーと沸く。

まずはクレイダーマンの「恋はピンポン」がかかり、マイトス香澄が入場。8期生のマイトスは小川より7つ年下の17歳。

マイトスが長い花道を走ってリングイン。もうこの段階で満員のファンは出来上がっていた。

そして、この9年間、小川ひかるの入場時にかかっていたトップガンの映画音楽、「マイティ・ウイング」がかかる。赤コーナー側花道にロングガウンを着た小川の姿が。多くのファンに愛された名レスラーが花道を最後のリングへ向かう。

館内ものすごいオガワコール。

小川ひかる、表情は平静を装っているが、内心はどうやってきょうの相手と渡り合おうかと考えていた。

マイトス香澄さんは革命軍に入ってからメキメキと力をつけていて、投げ技いっぱいもらったら勝てないから、自分のプロレスを信じてやるしかないか・・・

ものすごいオガワコールでテーマ曲もかき消された。長い花道を歩き、階段を上がり、セカンドロープをまたいでリングイン。

第6試合、シングルマッチ30分1本勝負を行います。青コーナー、

東京都江戸川区

出身、マイトスー、かすーみー」

マイトス香澄はきちんと一礼。

一呼吸置いて今野社長が、

赤コーナー、

長野県松本市

出身、おがわー、ひかーるー」

泣きそうな表情で、万感の思いを込めてコール。

ワアアアアアア!

ものすごい量の青い紙テープが投げ込まれた。小川とマイトス、リングアナ今野社長、レフェリー井上霧子は青い雪崩に埋まった。セコンド陣総出で片付け。

そのあと井上レフェリーのチェック、そして井上霧子は本部席の今野社長にゴング要請のサインを送った。

「ファイッ!」

今野社長がゴングを一打。午後8時20分、小川ひかるの最後の戦いが始まった。

2007年5月23日 (水)

第124回 小川ひかるの歴史

のこり、あとひとつ・・・

そして、最終戦は本拠地に帰っての横スペ大会。

新横浜駅には1週間前から引退試合の駅張りポスターが貼られていた。なぜか小川ひかるがワンピース姿で湘南の海で物憂げに空を見上げている写真が。チケットは前売り段階で完売。多くのファンが横スペへ足を運んだ。

小 川 ひ か る 引 退 試 合 

会場入口には大看板が設置された。

午後1時、SPZ選手の社宅と化している寮近くのアパートから小川ひかるはコスチュームやシューズといった試合道具を持って出て、上原今日子の運転するサニーで横スペへ向かった。

午後2時少し前、会場入り。若手選手がリング設営の最中だった。

「おはようございます」

今野社長はロープ張りのチェックをしながら小川に

「きょう、頑張ってね」と言葉を返した。

そのあとトレーナーとTシャツに着替えて軽くウォーミングアップ。3期生までのベテラン勢は軽めの調整。富沢レイと入念にストレッチ。

開場前なのに多くのファンが横スペに集まった。入口前の特設テントでグッズ販売が行われる。全国のグッズショップから小川ひかる関連商品の全在庫が集められ、「50%引き、在庫一掃叩き売りセール」が開催されるのである。

テントセールでは会場スタッフのほか、今野社長、井上霧子レフェリー、そして広島から沢崎店長が来て、「増収と在庫処分」に励んだ。

「小川ひかるTシャツ私服バージョン、1000円です。どうぞご利用くださ~い」と声を張り上げる今野社長。午後4時には在庫のほとんどが売れてしまった。

そのころ小川ひかるは医務室で。

ブスーッ。

「あっ・・・」

マッド女医、羽山海に痛み止めの注射を打ってもらっていた。今シリーズ、腰痛を抱えながらのファイト、タッグマッチのときはだましだましやっていたが、おとといの草薙戦で延々とサソリ固めをかけられて、ついに爆発してしまった。

「もう1本いっとく?」

「いえ、これで大丈夫だと思います」

「なーんだ、つまんなーい。ヒカルちゃん、きょう頑張ってね~」

午後5時半、開場。会場入口で入場者全員に、小川の過去の名勝負やバス移動風景、本人からのメッセージなどを収録した「小川ひかるファイナルDVD」が本人の希望もあって無料配布された。ロビーには小川ひかるの過去のファイトを写したパネルがマスコミ各社の提供で展示された。SPZの歴史を支えてきた名シーンの数々に古くからのファンは見入った。

横浜スペシャルホールにはスポーツ新聞、専門誌以外にテレビや一般雑誌の記者まで来たので、急きょ控室前の廊下に机を置いての記者会見が行われた。

「今のお気持ちは」

 「ああ、きょうで最後か・・・って感じです」

「思い出の試合は」

 「旗揚げのときのデビュー戦・・・ですね。私がプロレスやるなんて思ってもみなくて、あのときは緊張して、しかも何もできずに終わりましたから」

「今後のご予定は」

 「資格を取得しながら勉強して、再就職先を探します」

「今野社長とはどういった関係ですか」

週刊ポトフから無粋な質問が飛ぶ。しかし小川は嫌な顔一つ見せず、

 「いまのところ、最高の上司です。」

プロレスマスコミの間では今野社長の小川ひかるへの溺愛っぷりは今に始まったことではないので、最後のドーム興行乱発は呆れながらも納得していた。

***************

そして試合開始の6時半、会場はいつものように超満員札止め。

6時半きっかりに場内暗転。

ほどなく自然発生的に

「・・・オガワ、オガワ、オガワ・・・」

「オガワ、オガワ、オガワ!」

「オガワ!オガワ!オガワ!」

オガワコールが横スペに響く。

「小川さん、ファンに好かれてたんだねえ」

控え室のモニターで見ていた上原今日子がぼそりと。

「すごいね。ああいうふうに惜しまれて辞めたい」

吉田龍子もため息をついた。

「みんな・・・ありがとう」

小川は早くも涙腺がゆるんできた。

会場数箇所に設置された大型ビジョンでビデオの上映。

SPZの入門第1号は小川ひかるでした。2009年4月、今野社長がスカウトし、4月21日のSPZ旗揚げ戦第1試合、対ジュリア・カーチス戦でデビューしました。このときのSPZは所属選手がミミ吉原、保科優希、小川ひかるの3名しかいませんでした」

今回のナレーションは井上霧子が吹き込んだ。今野社長は「だめ、どうしても涙なしには言えない」と言って辞退した。

「しかし、レスラーの素質があるとはいえなかった小川ひかるは来る日も来る日も、AACの外国人選手に叩きのめされました」

リング上で大の字になったり控室で転がっている小川の若かりし頃の映像。

「しかし、小川ひかるはめげずに戦い続け、道場では特訓につぐ特訓。ハードな特訓についていけず動けなくなることもありました」

「そんな彼女の、やられてもやられても起き上がる、めいっぱいのファイトを見たファンから、いつしか大声援が飛ぶようになりました。実力では南利美や伊達遥に大きく水をあけられたものの、人気は団体内でトップクラスとなりました」

この時点で涙をこぼすファンもいた。

「人一倍の努力を重ねて、ようやくいっぱしのレスラーになり、AACジュニアのベルトを巻くなど、SPZになくてはならないスター選手になり、南利美、ミミ吉原と『チーム関節地獄』を結成し、その一方で草薙みこととタッグを組んで、AACタッグやSPZタッグのベルトを巻くに至りました。タッグマッチでは弱いほうが狙われるので、小川ひかるはいつも相手チームの標的にされましたが、懸命に受けてから草薙につなぐ戦い方が受けて、SPZを代表する名タッグチームとなりました」

タッグリーグ戦で優勝賞金の小切手を掲げ、草薙とにっこり微笑む小川ひかるの映像。

「リングを降りれば、その誰からも好かれる穏やかな人柄で、後輩を指導し、選手のまとめ役としてSPZを引っ張り、弱小団体だったSPZを武闘館、ドームへと飛躍する中で中心人物となりました」

「しかし、長年にわたって身体を張ったファイトを続け、世界の強豪選手と渡り合い、最近は台頭してくる若手との激闘で、小川ひかるの身体は次第に・・・・」

控室でリングドクター羽山の治療を受ける小川の映像。

腰痛が激しくなり、このままでは普通の生活もできなくなると宣告された小川ひかるは引退を決意。そして、きょう、最後のリングへ向かいます

さすがに今回はオチがない映像となった。

さらに映像は続き、各選手のメッセージと言うか思い出話が。

「入門したての頃、小川さんがあそこまで頑張ってるのを見て、自分も頑張らなきゃっていう気持ちになりました」(吉田龍子)

「最高のタッグパートナーでした。小川さんが懸命に相手の技を受けてつないでくれるので、シングル戦のとき以上に気合いが入りました。長い間ありがとうございました」(草薙みこと)

「小川さんが・・・いたから・・・私も・・・ここまでやってこれました・・・・」(伊達遥)

「ボクが・・・最後の相手になっちゃったんですけど。新人の頃、何もできなかったボクにいろいろ教えてくれて・・・きょうは・・・潰すつもりで闘います」(マイトス香澄)

場内はえらく湿っぽくなってしまった。鼻水をすする音があちこちで聞こえた。

ここでビデオ上映が終わり、リング上にスポットライトが。なんとリング状には電子キーボードが設置され、今野社長がバッハの「トッカータとフーガ」を演奏。荘厳なパイプオルガンの音が場内に響き渡る。

「社長、ピアノなんて弾けたっけ?」

放送席ゲストの沢崎光がいぶかしげに見る。

今野社長が鬼気迫る表情でキーボードに指を這わせる。

ジャジャーン、ジャーン。

しかしキーボードの上にはなぜかカセットテープレコーダーが置かれており、オーロラビジョンにそれが映し出される。

「えっ・・・」

実際はキーボードはアンプに接続されておらず、今野社長は弾く真似をしているだけで、テレコの再生がアンプにつながっているだけであった。

ジャジャーン。

さいごまで弾き切ったあと、今野社長がテレコに手を伸ばし「停止ボタン」をカチと押す。オーロラビジョンに映ったので、これには場内笑い転げた。

どわははははは・・・

今野社長、一発芸の後、キーボードから離れてカードを読み上げる。

「本日はSPZの横浜スペシャルホール大会にご来場いただきましてまことにありがとうございます。本日のカードを申し上げます。

第1試合、シングルマッチ30分1本勝負、渡辺智美対ビーナス麗子、

第2試合、シングルマッチ30分1本勝負、ギムレット美月対ガイア小早川、

第3試合、シングルマッチ30分1本勝負、富沢レイ対ドスカナ・リブレ、

第4試合、タッグマッチ30分1本勝負、ウェイン・ミラー、ジョーカーウーマン対エレン・ニールセン、ロレン・ニールセン。

第5試合、タッグマッチ30分1本勝負、上原今日子、スイレン草薙対ドリュー・クライ、ナターシャ・ハン」

ここまで一息に読み上げたあと、一呼吸おいて

「第6試合、シングルマッチ30分1本勝負、小川ひかる対マイトス香澄」

ウアアアアアアアアアア・・・・・

場内大歓声。それが収まるのを待ってから今野社長はカードの読みあげを続ける。

「セミファイナル、タッグマッチ特別試合30分1本勝負、伊達遥、草薙みこと対永沢舞、新咲祐希子。メインイベント、特別試合シングルマッチ60分1本勝負、吉田龍子対ハイブリッド南。」

そのころ小川ひかるは控室で上原今日子、草薙みこと達と「焼き肉談義」に花を咲かせていた。きょうは第6試合なので出番はだいぶ先だ。

「関内に炭火焼き肉の美味しいお店ができたんですよ。あの店のロースは絶品ですよ」

「・・・今度行ってみたいですね」山奥の寺育ちの草薙はSPZで今野社長に(小川とセットで)いろんな店に連れて行かれ、高級焼き肉には目がない。

そしていよいよ小川ひかる引退興行が始まる。

(長くなるので続きます)

2007年5月22日 (火)

第123回 小川ひかるの長旅

これまでのあらすじ

横浜のお嬢様プロレス団体SPZは2009年4月、わずか3人の選手で旗揚げした。そして10年目に入り、団体はドームを満員にするまで成長したが、8月、最後の旗揚げメンバー 小川ひかるが引退を表明した。

ーご搭乗の皆様、当機はまもなく新千歳空港に着陸いたします。座席のベルトをいまいちどご確認ください。なお、新千歳空港の気温は22度、天候は曇りです・・

羽田から千歳へ向かうスカイマークエアラインズの機内。小川ひかるは読んでいた「税理士対策問題集」を膝の上において、飛行機の外を見た。

ー北海道には良く来たけど、仕事で行くのはこれが最後。

SPZは今野社長が「食通」ということもあって、4ヶ月に1回のペースで北海道大会が開催される。

「小川さん、最後の北海道だね」

隣に座っている今野社長が小川に声をかける。

「・・ええ」

飛行機は新千歳へなめらかにランディング。駐機場までのろのろと走り、そのあと乗客が誘導される。SPZご一行も席を立って出口が向かう。空港ビルへの渡り廊下の隙間から北海道の風がそよと入ってきた。

小川ひかる引退シリーズ初戦は札幌どさんこドーム大会。

満員にはならなかったが、メインにSPZ戦を組んだこともあって4万5千の観衆をあつめた。

小川ひかるは第2試合で富沢レイと組んで9期生のガイア小早川、10期生のビーナス麗子と対戦。SPZが頻繁に興行に来る札幌のファンは小川に大声援を送る。さすがにこのクラスの若手相手だと小川のスリーパー、脇固めといったじっくりとしたレスリングが展開される。そして富沢レイにタッチ。ビーナスにダメージを与えたあと、

「小川さーん!」

1・2期生の連係攻撃、小川と富沢のダブルラリアットがビーナス麗子に決まり終了。勝負タイム11分17秒。いつものように小川はリング上で一礼して引き上げた。

札幌大会メインは新咲祐希子(王者)対永沢舞(挑戦者)のSPZ選手権。中盤までは永沢の投げ技と新咲の飛び技の一進一退の攻防となったが、先に切り札を出してきたのは永沢。驚異のJOサイクロン炸裂。

「ああーっ」

一度はカウント2.5で返した新咲だったが、続けて2発目のJOサイクロンをもらってしまいカウント3を聞いた。これで永沢舞が2年ぶりに23代目のSPZ王者に返り咲いた。

「やったね!」

コーナーに駆け上がって勝利をアピールする永沢。4期生の永沢、実力では吉田やハイブリッドに追い越されたが、大技JOサイクロンの切れ味、一発勝負での勝負強さは健在。そのあとベルトの授与。富沢レイが永沢の腰にベルトを巻いた。

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SPZ世界選手権試合

永沢舞(20分くらい JOサイクロン)新咲祐希子

第22代王者が初防衛に失敗、永沢舞が第23代王者となる

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全試合終了後、今野社長は小川ひかると草薙みことを誘って最後の札幌に出かけ、北海道の海鮮炉端焼きを堪能した。宗八カレイやコマイ、ジャガイモの焼いたのをほおばる。SPZのレスラーは良く食べる人が多い。

張り込んでいた写真週刊誌の記者が編集部に携帯で。引退シリーズなので今野社長と小川ひかるの「札幌お泊まり」の決定的瞬間を撮ろうと待ち伏せしていたのである。

「だめです。2時間もあいつら炉端焼き食ってます。草薙選手も一緒なのでデートっぽくないです。絵が撮れません」

「どうもご馳走様でした」「おいしかったです」

炉端焼き「3万円分」を平らげた社長と草薙小川は宿舎へ向かった。

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その翌日は釧路大会。札幌を午前中に出る特急列車「スーパーおおぞら号」で釧路を目指す。長距離移動のときはリングや荷物は前夜に運んでおいて選手は列車で移動というケースがよくある。ほとんどの選手が眠りながら釧路へ向かった。

第2戦釧路大会。小川ひかる対10期生のギムレット美月が第2試合で組まれた。ギムレットのデビュー戦と同じカード。ギムレット美月も4ヶ月の成長を見せ、良く攻めたが、小川は終始余裕で技を受けていた。そしてギムレットが攻め疲れを見せてきたころ・・

「もう、逃げられないわよ!」

リング中央でSTF、3分ほど決まってギムレットはぐったりしていった。

ー痛い。でも小川さんとやるのはこれが最後、絶対、ギブアップはしないっ・・

ギムレット、懸命にもがいて足のフックを外し、そのまま匍匐前進でロープに逃れた。

「ゼェ、ゼェ・・・」

ギムレットが弱っているのを見た小川は走りこんで・・・

ジャンプしてのショルダータックル。これでギムレットを倒しがっちりと片エビで押さえ込む。これでカウント3が入った。小川が手堅く勝利。勝負タイム14分14秒。

「みなさん、応援ありがとうございます」

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その翌日はオフ。SPZ選手は気の合う仲間同士で分かれて北海道観光。小川ひかると伊達遥は上原今日子の運転するレンタカーで阿寒湖を観光した。

翌々日は一気に飛行機で大阪へ飛んで、なにわパワフルドームでの第3戦。満員にはならなかったが8割の入り。

セミファイナルは小川ひかる・草薙みこと・伊達遥対吉田龍子・新咲祐希子・渡辺智美の6人タッグ。大歓声のオガワコールに応えて小川は先発を買って出た。それを見た青コーナー側。

「・・・あたしが出るよ。」

「団体内最強」吉田龍子と相対。場内どええええの声。いくらなんでも相手にならないのではないか。

カンッ。

「うりゃああああ」「せいっ」

ゴングと同時にラリアットを狙って突っ込んできた吉田を良く見て小川、脇固めに切り返す。

ドオオオオオオオオ!

これだけで館内大盛り上がり。そして深追いせずすぐさま伊達にタッチ。これが小川クオリティ。10分過ぎに続いて新咲も小川と対決。吉田も新咲も最初に苦しんだ壁が小川ひかるだった。新咲のキャプチュードが小川に炸裂。

「ううっ・・・」

それでも脇固めで懸命に反撃して草薙にタッチ。

しかし吉田龍子は相変わらず強い。この日も草薙を蹴散らし、残るは伊達の状況を作っておいて、キャプチュード2連発で伊達を追い込んでから、

「ゆっこー」

新咲を呼び込んでの合体パワーボム!

カットに入るべき草薙小川は場外でのびている。当然カウント3が入った。勝負タイム16分23秒。

大阪大会のメインは「集客のために組んだ」ハイブリッド南対永沢舞のノンタイトル戦特別試合。ハイブリッド南がなんとSPZ王者の永沢をネオ・サザンクロスロックで仕留めた。ノンタイトル戦なのでベルトは移動しないが、ハイブリッドの強さが印象に残った。

「大阪はふぐが美味しいのですよ」

全試合終了後、今野社長は小川、草薙、新人のギムレット美月を誘って梅田のふぐ料理店。ふく刺しを大量に摂取した。

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第4戦、広島は若鯉球場。選手一行は午前中の新幹線で広島へ移動。

3万人収容の若鯉球場。テレビCMと「SPZフィーバー広島店店長」沢崎光が前売りチケットを売りまくった効果で、はじめてこの会場が超満員札止めになった。

小川ひかるはセミ前で草薙みこと、伊達遥と組んで永沢舞、上原今日子、富沢レイと対戦。先発を買って出た小川だったが永沢のフロントスープレックス、ノーザンを立て続けに食らってしまい、たまらず伊達にスイッチ。

そのあとは伊達草薙が踏んばり、熱戦が展開されたが、終盤は伊達が捕まってしまい、永沢のJOサイクロンを食らったあとに上原にキャプチュード、フェイスクラッシャーと畳み込まれて3カウントを奪われた。

この大会のセミは吉田龍子対ナターシャ・ハン。

「うりゃあああああ!」

吉田が手堅く攻めて、最後は豪快にスプラッシュマウンテンで勝利。

メインはシングルマッチ特別試合、ハイブリッド南対新咲祐希子。2日連続のハードな試合となったハイブリッドだが、リング中央でネオ・サザンクロスロックをがっちり決めて勝利。先シリーズベルトを奪われたリベンジを果たした。

その翌日、第5戦は九州ドーム。SPZ選手一行は早い時間の新幹線で博多入り。

九州ドーム、55000名収容の会場は40708名、7割強の入り。小川、きょう明日は草薙みこと、小川ひかるの名タッグ「ザイテングラート」での登場である。このコンビはSPZタッグを何度も奪取した名コンビ。しかも小川がつかまって草薙が決めるというドラマチックな勝ち方の出来るコンビであった。

セミ前で小川ひかる、草薙みこと対ハイブリッド南、マイトス香澄戦。だが小川の出番は冒頭のちょっとだけで、空気を読まないサイボーグ、ハイブリッド南があっさりネオ・サザンクロスロックで草薙からギブアップを奪った。勝負タイム7分。マイトス香澄、出番なし。

九州ドーム、セミは吉田龍子対ドリュー・クライ(吉田が暴れて完勝)メインはナターシャ・ハン対スイレン草薙のEWAタイトル戦。スイレン草薙も進境著しいものがあるのだが、この日は必殺STFでナターシャがベルトを守った。

その夜。

「博多といえば中州でしょう」

今野社長と小川ひかる、草薙みことの3人は中州で九州ラーメンをすすった。

*****************

その翌日は移動日。名古屋まで新幹線で4時間かけて移動。

いよいよラスト3。名古屋しゃちほこドーム大会は超満員の観衆で埋まった。横スペのチケットが早い段階で完売してしまったので、首都圏からの観戦組もけっこういたらしい。

セミ前で小川ひかる、草薙みこと対伊達遥、スイレン草薙。

「勝たせて頂きます」

スイレンの草薙流兜落としが草薙に決まる。もうスイレンの方が実力が上であるかに思われる。そして出てきた小川には、伊達が殺人ヒザ魚雷!同期だろうと容赦なし。

「ぐあああっ!」

それでもピンチと見るやパートナーにタッチする、細かいタッチワークで的を絞らせなかった草薙小川だが、22分過ぎー

「ぐふっ!」

小川が伊達のこの日3発目の殺人ヒザ魚雷をもらってしまい悶絶。動けないまま3カウントを聞いた。勝負タイム22分56秒。

「うっ、くーっ」

小川が腹を押さえながら若手の肩を借りて退場。控室の床にぶっ倒れた。

名古屋大会セミは永沢舞対上原今日子。実力者同士の対決となったが永沢がSPZ王者の意地を見せてキャプチュードで勝利。

メインは吉田龍子対新咲祐希子。SPZ選手権の前王者と元王者の激突となったがスプラッシュマウンテンで吉田が勝利した。

翌日カウントダウン2。SPZ一行は移動バスに乗って中央高速を北へ。中津川から恵那山トンネルを抜けて長野県に入る。伊那谷のなかを中央アルプスの山々を望みながら移動バスは快走し、岡谷のジャンクションを過ぎてまた長いトンネルを抜けると、小川ひかるの故郷、松本盆地へと入ってゆく。

シリーズ第7戦の松本大会。3000人規模の会場なのでチケットはあっという間に予約段階で完売。小川はセミファイナルでタッグパートナー、草薙みこととシングルマッチで対戦。

・・・今できるすべてを、小川さんにぶつけます・・・

長年タッグを組んできた両者の対戦。ジワジワとグラウンドで攻め込んだのは草薙のほうであった。最後はスタミナ切れを起こした小川をサソリ固めを長々かけて弱らせて・・・

小川がふらふらと起き上がってくるところをー

「バシッ!」

草薙、強烈な逆水平チョップ一撃で3カウントを奪取した。10分少々のあまりいい試合ではなかったが、それでも松本のファンは暖かい拍手を送った。

のこり、あとひとつ・・・

小川ひかるは控え室でシューズの紐を解いた。

2007年5月21日 (月)

第122回 小川ひかるの決断

10年目8月。

小川ひかる引退を表明

「社長、ちょっと・・・いいですか?」

7月末の夜、今野社長が本社4階の営業フロアでメールを取引先に打ちまくっていたとき、スーツ姿の小川ひかるが現れた。

「あ、小川さん、どうしたの・・・」

「社長、大事な・・・話が・・」

今野社長はピーンときた。

「よこ川、行こうか」

10分後、団体事務所近くの日本料理店「よこ川」で今野社長と小川ひかるはシーザーサラダをつまんでいた。

「きょう、病院に行きました。このままプロレスを続けると、普通の生活にも差し障りが出るかもしれませんと先生に言われました、あとは、精神的にも・・・後半の試合に出るときは正直怖くなってきました。ですので、もう・・・潮時・・・だと」

今野社長は小川の目を見て一言。

「後悔・・・しませんか?」

「ありません。プロレスをこの9年ちょっとの間、堪能しました。まさかこんなに長く続けられるとは思ってもいませんでした」

「・・・わかりました。これで旗揚げメンバー3人がみんないなくなっちゃったか、あア・・・」

今野社長が言葉にならない慨嘆。

「でも、今まで本当にありがとう。SPZがここまで大きくなってきたのは、小川さんの人柄が大きかった」

「いえ、私は・・・あまり強くなかったですし」

「そうじゃなくって・・・組織がね。みんなが一つの方向を向いてたって言うか。あの苦しかった頃でもみんなついて来てくれた」

そのあとしばらく昔話。小川ひかるが一言。

「どうして、私を・・・最初にスカウトしたんですか」

今野社長はウーロン茶をすすってから。

「顔で選んだ」

「ぶっ」

「いや、あのとき井上さんがね、『有望な人リスト』ってのを作ってくれて、南さんや伊達さんもそれで取ったんだけど、そのリストをパラパラとめくってみて、顔を見て獲ろうって決めた。」

「顔・・・ですか」

「いや、僕は小売業を15年くらいやってたけど、人の性格は顔に出るんですよ。穏やかな人はそういう顔をしているんですよ、で、組織には優しい人が絶対に必要だなと思って、獲った」

「そうなん・・ですか」

「で、獲ってみて思っていた以上にいい人だった。たぶん、私は・・・」

ここで長い沈黙。

「小川さんのことが、好きなんだと思う」

またスリーカウントが入るくらいの沈黙。

「でも、社長のうちはアプローチできないと思ってるし、週刊誌にも書かれちゃってるし、新女の陰謀だと思うけど」

「・・・そう・・・ですね・・・」

一時期SPZの今野社長に週刊誌のカメラマンの尾行がついたことがあって、「手羽先デート」「寿司屋デート」の記事が面白おかしく載ったことがある。

今野社長も話が変な方向に行ったと感じたのか、話題を引退後に変えた。

「で、最後、誰とやりたいですか?」

「社長にお任せします」

「そうだなー、草薙さんや伊達さんとぶつけちゃうと10分持たないと思うから、やっぱり渡辺さんかマイトス香澄さんあたりかなぁ、ま、ちょっと考えます」

「引退後、再就職先は・・・なんでしたら、SPZにいても・・・」

「気持ちは嬉しいんですが、遠慮・・・します。しばらくリングからは距離をおきたいと考えていますし、少しやりたいこともありますので」

これで話が一区切りついたので、飲みに入った。もっとも両者ともそんなに飲めるほうではないので、ビール大瓶を2人で分け合って飲んだ。

「ひかるちゃん、引退しちゃうの~、おじさん寂しくなるよ~」

「よこ川」のマスターが天ぷらを運んできた。今野社長の「おー飯食ってこう」が横浜で発動するのはたいてい「よこ川」なので、小川ひかるは600回以上ここの暖簾をくぐっている。

23時過ぎにお開き。小川ひかるは19歳の頃から住んでいる社宅扱いのアパートに戻り、ミミ吉原に電話を入れた。

「いま・・・引退するって・・・社長に言いました」

「社長と・・・何かあった?」

ミミ吉原がいたずらっぽく訊く。

「別に何も、・・・・いつもの社長でした」

「ふふっ、あの人もそうとう臆病だねぇ」

「・・・・・・・」

今野社長は本社に戻り、ホームページに掲載した。

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小川ひかる選手引退に伴うカード変更のお知らせ

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いつもSPZをご愛顧いただきましてありがとうございます。当団体所属の小川ひかる選手は8月シリーズ最終戦をもって引退することが決定いたしました。つきましては、8月に予定していました「SPZクライマックス」は9月に延期し、「小川ひかる引退シリーズ」にて運営させて頂きます。・・・

翌日朝からSPZの電話がジャンジャン鳴って、本社業務はストップしてしまった。本数は南や秋山のときより遥かに多い。

次期シリーズ日程、「今野社長は小川ひかるの引退でついにおかしくなった」と業界内で話題になった。

初戦、北海道どさんこドーム

2戦目:

釧路市

体育館

3戦目:なにわパワフルドーム

4戦目:若鯉球場

5戦目:九州ドーム

6戦目:名古屋しゃちほこドーム

7戦目:

松本市

体育館

8戦目:横浜スペシャルホール

ドーム興行が4戦も。今野社長は「一人でも多くのファンに小川ひかるのラストファイトを見てもらいたいから」などといっていたが、過去最大級規模のシリーズである。なおテレビCMもSPZ始まって以来のことだが投入した。

SPZプロレス、小川ひかる引退シリーズ開催。」各選手の闘っているシーンが流れた後、小川ひかるが「今までありがとうございました」とにこやかに話すテレビCMが、深夜時間帯中心だったが相当流された。

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「輝くエッセンシャル・最終章」

小川ひかる最終試合

2018.8.21 横浜スペシャルホール 午後6時30分試合開始

主催:スーパースターズプロレスリング・ゼット

後援:大日本テレビ

   京スポ新聞

試合カード:

メインイベント特別試合:ハイブリッド南 VS 吉田龍子

小川ひかる最終試合:小川ひかる VS (対戦相手未定)

他、数試合予定

参加外国人選手:ナターシャ・ハン、ドリュー・クライ、ドスカナ・リブレ、ジョーカーウーマン、ウェイン・ミラー、ロレン・ニールセン、エレン・ニールセン

特別リングサイド 10,000円

アリーナ席:7,000円 

スタンド席A 5,000円

スタンド席B:4,000円

チケットはSPZフィーバー各店、各種プレイガイドにて発売

(続く)

2007年5月20日 (日)

第121回 心も身体も全部熱くってたまらないの!

10年目7月シリーズ後半

翌日の仙台大会、セミファイナルは伊達草薙小川の「SPZ古参三銃士」対吉田新咲渡辺の「5・6期生タッグ」の激突。伊達がハッスルして、SPZキックを新咲に叩き込む。

しかしこの日は吉田が怖い。エルボーで小川を流血に追い込み、草薙には遠慮なしにラリアットを叩き込む。試合中盤、古参トリオは渡辺を捕まえかけたが結局逃げられてしまう。

草薙も吉田の攻撃の前にスタミナ切れを起こし、伊達登場。小川を呼び込んでサンドイッチラリアット。

―さすが、伊達さんだ。

吉田は目先を変えるため新咲にタッチ。新咲は伊達をシャイニングウィザードなどで追い詰め、出てきた小川も攻めてから再度吉田にタッチ。

「関節の悲鳴を聞きなさい!」

小川のSTFが吉田を捕らえる,しかし新咲が落ち着いてカット。そして伊達が再び出てくるが、吉田は落ち着いて伊達をタックルで倒すと素早くコーナーに駆け上がり、めったに出さない大技、シューティングスタープレスを繰り出した。

あのガタイがバック転して降って来るのだからたまらない。吉田なりに大先輩へのリスペクトを込めたつもりのシューティングスタープレスが決まり、これでカウント3.20分14秒の激闘は5・6期生チームに凱歌が上がった。

仙台大会メインは永沢舞、富沢レイ対ナターシャ・ハン、アンナ・クロフォードのSPZタッグ戦。富沢を狙えばベルトを取れると考えたEWA軍、ナターシャが永沢とバチバチのしばき合いレスリングを展開。永沢が投げればナターシャが極める展開が続き、苦し紛れに永沢が富沢にタッチしたとたんー

「今ナラ勝テル!」

挑戦者組が猛攻。ナターシャが富沢をSTFで半失神に追い込み、パイルドライバーでフォール勝ち。勝負タイム28分35秒、王座移動。SPZの歴史の中ではじめて海外団体の選手に、自団体のベルトが流出してしまった。

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SPZタッグ選手権試合

○ナターシャ・ハン、アンナクロフォード(28分35秒、パイルドライバーからの片エビ固め)永沢舞、富沢レイ×

第14代王者が初防衛に失敗、ナターシャ・ハン、A・クロフォード組が第15代王者となる

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「社長、ごめんなさいっ・・・」

控室で謝る富沢レイ。

「あ、富沢さん、まあいいから、そんな自分を責めないで、ベルトが流出といっても取り返せるわけだし」

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そしてシリーズ最終戦、新日本ドーム大会。

第1試合は渡辺智美対ギムレット美月。渡辺が頭を使って、といってもヘッドバット攻め。頭突きの連打を食らったギムレット、フォールを返せなかった。

第2試合は富沢レイ対ビーナス麗子。新人のビーナス麗子は耐久力がない。さして重くない富沢の技が決まるたびに大きくよろめく。最後は走りこんでのタックルで3カウントを聞いた。新人相手の勝利なのに「勝ったーッ!」と喜ぶ富沢。

第3試合は伊達遥、草薙みこと、小川ひかるの古参トリオがロレンニールセン、エレンニールセン、アンナクロフォードのEWA軍と激突する6人タッグ戦。休憩前にこの3人が出てくるというのも時代を感じさせる。場内は歴史と個性のある3人への声援であふれた。

「ああっ」

小川が例によって外人組の攻撃に晒されてしまう。場内にこだまするオガワコール。どうにか振り切って草薙にタッチ。EWAの中堅外人相手ならまだまだ投げまくりの草薙劇場。

終盤、小川がロレンと相対、ロレンの攻勢をひとしきり耐えた小川が

「もう、逃げられないわよ」

STFが決まる。その瞬間ドームが大声援で揺れた。

最後は伊達登場。変わらぬ威力の殺人ヒザ魚雷でエレンを悶絶させ、フラフラと起き上がったところを・・・

「これで・・決めます」

走りこんでのラリアット一撃で3カウントを奪って勝利。そして3人で手上げ。ドームは古参3人の奮闘に拍手で応えた。

休憩明けはマイトス香澄対ドスカナ・リブレ。マイトスがメキシコの新星ドスカナをバックドロップなどで追い込むが、ドスカナも強烈なミサイルキックを叩き込んでマイトスの動きを止め、逆にバックドロップで3カウントを奪った。

セミ前は上原今日子対スイレン草薙。スイレンも終盤草薙流兜落としなどで粘ったが、最後は上原のジャーマンに3カウントを聞いた。

セミファイナルは吉田龍子、永沢舞組がナターシャ・ハン、ジョーカーウーマン組を一蹴。吉田のパワーと永沢の異様な力が合わさると、どんな相手であれ、もう手がつけられない。

メインはハイブリッド南のSPZ王座に新咲祐希子が挑むタイトル戦。前王者の吉田のリターンマッチも考えられたが吉田が「もう少し時間を置いてから再チャレンジしたい」と申し出たため、新咲にチャンスが回ってきた。

新咲がローリングソバットなどでペースを握る。そしてシャイニングウィザード。ものすごい衝撃でハイブリッド吹っ飛ぶ。そのあとフロントスープレックスでカウント2.5まで追い込む。追い込まれたハイブリッド南、ネオサザンクロスロック、サソリ固めで逆転を図るが、耐え切った新咲が猛攻。フェイスクラッシャー2連発からのキャプチュードはカウント2.9で返されたがー、

心も身体も全部熱くってたまらないの!

消える魔橋、高速ジャーマン発動。受け身が取りきれなかったハイブリッド南は無念の3カウントを聞いた。

「30分58秒、ジャーマンスープレックスで新咲祐希子の勝ち」

こうして6期生の新咲祐希子がSPZベルト初戴冠、22代王者に輝いた。

「やったーッ!」

リング上で勝利の、初戴冠の喜びを爆発させる新咲。山口県下関から上京して4年余、ようやく団体トップの座に登りつめた。

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SPZ世界選手権

新咲祐希子(30分58秒、高速ジャーマン)ハイブリッド南

第21代王者が初防衛に失敗。新咲が22代王者となる

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(次回予告)

10年目8月。SPZに、社長に大激震が走ります。

2007年5月19日 (土)

第120回 怒りの吉田龍子 10倍返し

10年目7月

この団体の社長はかなりの小心者である。ハイブリッド南に破れSPZチャンピオンの座から転落した吉田龍子、練習にもいつもの気迫が見られないようだったので今野社長は声をかけた。

「よ、吉田さん、ちょと話があるんだけど、ベルトを手放したからといって・・・」

「いやだなあ、社長、ぜ、全~然おちこんでないよ。相手あってのプロレスだから思い通りに行かないときもあることはわかってる、気にしないで下さいよ」

「す、寿司でも食べに行かない?」

「誘うんなら小川さんを誘いなよ。ほんと落ち込んでないから、気にしないで、じゃあね」

ああ・・やはり15回も防衛してきたベルトを失って、ショックとまではいかないまでも、少しは落ち込んだんだろうなーと社長は推察した。

「社長、」入れ違いに井上霧子が入ってきた。

「新日本女子さんがまたSPZに引き抜き工作をかけて来ています。先月までは小川ひかるが標的のようでしたがマイトス香澄に狙いを変えて・・・」

「テポイアマタール!」

「えっ?」

「テポイアマタール!頭にきた。新日本女子の田中のヤローにガツンといってやらないと。」

そういって今野社長は電話機をつかんで、名刺ファイルをめくってから番号を押し、先方につながったのを確認するや・・

「田中さん、うちの選手にちょっかい出しまくるのやめてくれませんかねえ。これまでは同業者ということで、女子プロ発展のためにうちは引き抜きはやってませんでしたけど、申し訳ないけどおたくのレスラーに声かけちゃいますし、同じエリアで同時期に興行ぶつけるかもしれませんよ。申し訳ない言い方だけど、おたくの会社がその気ならうちもそれ相応の覚悟がありますよ。テポイアマタール!ムェレェ!」

がちゃん。

「ふう、やっぱり罵詈雑言は異国語で言うに限る」

7月シリーズ「サマースターナイツシリーズ」前半3戦はSPZクライマックス出場者を決める予選会の第2ステージ。小川ひかる・富沢レイ・マイトス香澄が前回の本大会で大負けした上原今日子、スイレン草薙とシングルマッチを闘い、一つでも勝てばSPZクライマックス出場。と言う内容。

初戦の青森大会、第4試合で小川ひかる対上原今日子。だが小川の力のおとろえは明らかで、上原の投げ技飛び技にサンドバッグ状態。

関節の悲鳴を聞きなさい!」

小川も得意のSTFで一発逆転を狙うも、落ち着いて振りほどいた上原。

「かわいそうだけど、これで終わり!」

伸びのあるフライングニールキック一撃。小川は3カウントを聞いた。勝負タイム11分0秒。

次の試合は富沢レイ対スイレン草薙。SPZタッグ王者の富沢レイだが、シングルマッチではどうにも苦しい。試合の9割がたはスイレンが攻めまくった。ノーザンで動きを止めてDDT、ヒップアタックの波状攻撃で終了。勝負タイム9分39秒。

青森大会のメインで異常事態発生。吉田龍子・渡辺智美 組対ハイブリッド南、マイトス香澄 組のタッグマッチ。ゴングが鳴った後、渡辺とマイトスが軽く手合わせしたあとタッチを受けてハイブリッド南登場。その直後にハイブリッドいきなり勝負に出て、渡辺をタックルで倒してアキレス腱固め。

「いやぁぁぁー!」

瞬時に決まってしまい、渡辺の表情がたちまち激痛に顔をゆがめギブアップ。吉田はカットに入る前に終了。メインイベントなのに勝負タイム3分51秒。館内どよめき。

この結末に吉田龍子は怒った。

リング上で勝ち名乗りを受けるハイブリッドにズカズカと近づき

「コノヤロウ!」

グーパンチ一撃。なにしろ彼女はリングインする前に試合が終わってしまったのだ。

カンカンカンカンカン!

ゴングが乱打されるが吉田は崩れ落ちたハイブリッドの上に乗って殴りまくる。

―あたしの暴れっぷりを期待してチケットを買ってくれたお客さんに申し訳ないと思わないのか!。

「いかん、止めろ!」

今野社長の指示で試合を見ていたセコンド陣が止めに入るが、

「邪魔するな!」

なんと吉田、ビーナス麗子やギムレット、富沢レイあたりをラリアットでぶん殴って行く。

カンカンカンカンカン!

「お嬢様プロレス団体」SPZではありえない殺伐とした展開に場内は驚愕。

異変を察知して控室からジャージ姿の伊達遥と草薙みことが出てきた。先輩を前にして吉田、少しはたじろいだが、勢いで草薙にも殴りかかろうとした。が、草薙はサッとかわしてフロントスープレックスで投げつけた。スッと立ち上がった吉田、しかし伊達が問答無用の、

「・・・・・・・・・・・・!!」

SPZキック一撃。これにはさすがの吉田も吹っ飛んだ。乱闘が数分続いてまあ暴れたなと判断した吉田はリング下に降りてマイクを握り、

ハイブリッド南!草薙!伊達!あたしを怒らせたな。来月SPZクライマックスでぶっ潰してやる!」

そういい残して花道を後にした。

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その翌日は盛岡大会。第4試合で小川ひかる対スイレン草薙。だが両者の力の差はそうとう開いており、スイレンが投げまくったあげく、ヒップアタックでフォール勝ち。勝負タイム9分48秒。これで小川のSPZクライマックス出場はなくなった。

その次はマイトス香澄対上原今日子。上原が一方的に攻めてフェイスクラッシャー2連発で棒立ちにさせてから、力の差を見せ付けるように脇固めでギブアップを奪った。勝負タイム6分22秒。

その次のセミファイナルではハイブリッド南がアンナ・クロフォードと組んで今シリーズからタッグを組むようになった草薙みこと、伊達遥と対戦。ハイブリッド南とアンナの即席タッグ、その連係の粗さを突いて百戦錬磨の草薙・伊達が攻め込む。最後も分断作戦に成功し、草薙がアンナを草薙流兜落としで仕留めた。

盛岡大会メインは吉田龍子、新咲祐希子対ナターシャ・ハン、ジョーカーウーマン組。さすがにナターシャのテクニックと吉田のパワーの対決は見ごたえがあったが、最後は新咲が分断作戦に成功しジョーカーウーマンをフェイスクラッシャーで仕留めた。

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第3戦秋田大会。

第4試合はマイトス香澄対スイレン草薙。いちおう同期対決なのだがスイレンが攻めまくり、わずか6分0秒、ミサイルキックでマイトスを沈め本大会出場を決めた。

第5試合は富沢レイ対上原今日子。年季の入った選手同士の対戦は地力に勝る上原が攻めかかり、バックドロップ、パイルドライバーとたたみかけて勝利。勝負タイム8分5秒。上原もSPZクライマックス本大会出場を決めた。

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第4戦山形大会、草薙みこととスイレン草薙の地元凱旋。スイレンはセミ前のタッグ戦に上原今日子と組んで新咲祐希子・永沢舞組と対戦したが、パートナーの上原が永沢のキャプチュードに沈んだ。

山形大会のセミはハイブリッド南、マイトス香澄対吉田龍子、富沢レイ。今回は吉田が先発を買って出た。

吉田がものすごい目でハイブリッド南をにらみつけ、そしてゴング。

「てめぇこのやろう!」

ハイブリッド南にラリアット、またラリアット、ラリアットと猛烈に攻める。代わって出てきたマイトス香澄にもラリアット、ギロチンドロップ、パイルドライバーの猛攻で軽量のマイトス香澄を半失神に追い込む。マイトスがパワーボム狙いをどうにかリバースで切り返してハイブリッドにつなぐも怒りの吉田は強い。

「これでどうだ!」

プラズマサンダーボムでグロッギー状態に追い込み、最後はスプラッシュマウンテン!1度目は切り返されたが2度目はハイブリッドを高々と担ぎ上げて垂直落下。

ドォォォォン!

ハイブリッド南は薄れゆく意識の中3カウントを聞いた。

「・・・あら」

吉田のパートナー、富沢レイはカットプレーと合体攻撃以外、試合出場権利が回ってこなかった・・・・

ーお前なんかこの程度のものだ。

革命軍二人がリング上に横たわる中、開幕戦青森大会そして先シリーズSPZ戦のリベンジを果たした吉田が厳しい表情のまま引き揚げる。怖い吉田龍子に場内は静まり返ってしまった。

山形大会メインは伊達遥・草薙みこと・小川ひかるの1・2期生ベテランの3人が、EWAのナターシャ・ハン、ロレンニールセン、エレンニールセンの3人を迎え撃つタッグマッチ。さすがにこの3人が同じコーナーに立つと会場の盛り上がりが違う。ましてや草薙みことの地元である。

SPZを長いあいだ支え続けてきた3人がメインイベントでいまだかわらぬ輝きを放つ。小川はナターシャの猛攻を必死に耐え、裏投げを食らってフラフラになりながらも逆片エビ固めで反撃して、伊達につなぐ。

伊達は自らの代名詞、殺人ヒザ魚雷とSPZキックをナターシャに叩き込んで戦闘不能に追い込む。試合はロレンニールセンが粘り、ノーザンまで繰り出して伊達を追い込み、ダメージの深い小川ひかるを引きずりだしたが、小川もうまくロレンを逆さ押さえ込みにとらえる!SPZマットではめったに見られない技だ。

「アーッ!」今野社長がリング下で絶叫。

カウント2.8で返すロレンニールセン。小川は深追いせずトドメを草薙に任せる。ロレンも最後の力を振り絞って草薙にニーリフトを叩き込むが、

「小川さん!」

草薙小川の合体パイルドライバー。これで頭を打ったロレンの動きが鈍くなり、最後は、

「これで決めます!」

草薙みことの代名詞、草薙流兜落とし発動。これで試合は終わった。22分46秒の激闘。SPZをここまで大きくした古参3人の奮闘に山形のファンは熱い声援を送った。もうこの3人が揃った姿が見られるのもあとわずか。そう考えた社長がこのマッチメイクを行った。

〔長くなるので続きます〕

次回予告:10年目7月シリーズ最終戦ドーム大会。新王者ハイブリッド南に挑むのは同期のあの選手。はたして初のベルト奪取なるか。

2007年5月18日 (金)

第119回 絶対王者が止まる時

10年目6月

6月は恒例のSPZクライマックス予選会。だが、今年は団体内実力ベスト8(吉田H南永沢新咲スイレン上原伊達草薙)とそれ以下のグループとの間(小川富沢マイトス渡辺・・・)で実力差が開きすぎているので、予選会をやっても結果が見えているので今野社長は予選会を実施しないことも考えたが、若手中堅選手にチャンスを与えなくてはならないのというのと、8月の本大会出場権を確保している伊達草薙が「引退するかも知れない」予感があったので、小川ひかる・マイトス香澄・富沢レイ・渡辺智美の4人で「中堅選手リーグ戦」を行い、上位2名を来月7月に、シード権のないスイレン草薙と上原今日子にシングルマッチで当てて、勝ったほうを本大会出場という変則的な形にした。

そして6月シリーズ「エキサイティングSPZシリーズ」開幕。初戦の沖縄大会。

第2試合が小川ひかる対富沢レイの予選会リーグ戦。すでに両者ベテランの域に入っており能力減衰が著しい。試合はのっけからスリーパーホールドの応酬という地味な展開。小川のエルボーで富沢、鼻から出血。しかし1期若い富沢がローリングソバット連発で小川を追い込んでゆく。しかし・・

「これは、どう?」

早めに勝負に出た小川が逆片エビ固め、ストレッチプラムとたたみかけて富沢からギブアップを奪い1勝。

次の試合も予選会、渡辺智美対マイトス香澄の一戦。渡辺がグラウンドでねちっこく攻めるが、マイトス香澄が投げ技に活路を見出し、最後は見事なジャーマンでカウント3を奪った。

沖縄大会の後半に「3大シングルマッチ」が組まれた。上原の地元とはいえSPZの人気がそれほどでもない地区はテコ入れでシビアなカードが組まれる。

セミ前は草薙みこと対ハイブリッド南。草薙ただやられるだけ。ミサイルキックやジャーマンなど、ハイブリッドの技が面白いように決まっていく。草薙も最後の力を振りしぼって草薙流兜落としを決めたがそこまでで、続くボディプレスを自爆。起き上がったところにミサイルキックが飛んできて3カウントを奪われた。この程度の技であの草薙みことが沈むとは・・・

セミは吉田龍子対新咲祐希子。ここで大波乱。試合後半、新咲の必殺ぶん投げジャーマン炸裂。これで動きの鈍った吉田、プラズマサンダーボム2連発で反撃するも決め手にならず、最後は新咲がシャイニングウィザード、キャプチュードとたたみかけて、絶対王者・吉田からカウント3奪取。

えええええええ!

館内騒然。ノンタイトル戦だったからベルトの移動はないが、吉田の「シングル戦でのフォール負け」は一昨年の8月以来の出来事である・・・

メインは地元凱旋の上原今日子がEWAの超新星、ナターシャ・ハンと対戦。

ナターシャはあのナスターシャ・ハンと同じロシア・キーロフの出身で、コマンドサンボをかじった事があり、目をつけたEWAがナスターシャの後継者にしてしまったという将来性ある16歳。しかしこの日は地元凱旋で燃えている上原、ドラゴンスリーパーで弱らせてからのニールキックで激勝。

第2戦は浜松大会。第2試合で小川ひかる対マイトス香澄の予選会。マイトスが革命軍の誇りとSPZタッグ王者になった自信を胸に、小川をガンガン投げ飛ばしてゆく。

「はぁっ!」

マイトスのノーザンライトが決まる。カウント2.5で返す小川。

「たぁっ!」

マイトスのバックドロップが小川の頭をマットに激突させる。カウント2.8で返す小川。懸命に小川もステップキックで反撃するが、続くマイトスの体当たり気味のタックルでカウント3を聞いた・・・・

    ・・小川さんに、勝てた!!

リング上で喜びを爆発させるマイトス香澄。ハイブリッドさんに誘われて革命軍に入ってから、いい事が続いている・・

がっくりと肩を落とし引き上げる小川。

次の試合は渡辺智美対富沢レイ。両者ともに極め技を得意とするので地味な攻防が続き、22分34秒の熱闘の末、富沢がストレッチプラムでギブアップ勝ち。富沢が1勝1敗、渡辺は2敗。

浜松大会のセミ前、今野社長がマイクでひと声。

「ただいまより伊達遥デビュー9周年記念試合を行います!」

野外会場なので電光掲示板によるど派手な演出はないが、場内は沸いた。

短命の女子レスラーが9年も選手生活を続けられるというのは僥倖である。「宇宙の皇女」のテーマ曲が響く中、伊達遥が入場。リングインした後、京スポ新聞若林記者から賞状と金一封の贈呈。

対戦相手はAACのドスカナ・リブレなので、伊達がまず勝てるマッチメイクだ。

「赤コーナー、

宮崎県都城市

出身、だてー、はるーかー」

伊達遥、さすがに往年の凄みはないが、それでもスキのない戦いでドスカナを追い込み、最後は「伊達の代名詞」殺人ヒザ魚雷が炸裂しドスカナを撃沈。

第3戦は四日市大会。第2試合で小川ひかる対渡辺智美の予選会リーグ戦。ロングマッチになったがやはり関節技絞め技なら小川のほうが2・3枚上手で、24分30秒、伝家の宝刀STFで勝利。2勝1敗で予選会を終えた。

続くマイトス香澄対富沢レイはマイトスの動きについていった富沢がタックルで勝利。小川、マイトス、富沢の3人が2勝1敗で並んだ。

第6戦滋賀大会、メインは吉田龍子対新咲祐希子。沖縄大会で不覚をとった吉田は叩き潰して、先日のの敗北はまぐれだったと実証しておきたいところであった。

しかし中盤までは互角の戦いをやってのけた新咲、フェイスクラッシャーであと一歩まで追い込むが、ここで吉田が底力。スプラッシュマウンテンで意識を持っていって、さらにパイルドライバー2連発で新咲を完全に沈黙させる。これで試合は終わった。24分36秒の激闘。

「ゆっこも・・・強くなってきたね」

第7戦和歌山大会のメインはハイブリッド南・マイトス香澄対富沢レイ・永沢舞のSPZタッグ選手権。ハイブリッドがサイボーグっぷりを見せつけ永沢を追い込むが、攻め疲れたのかマイトスにタッチするなり状況が一変。

「香澄には悪いけど、ベルト貰っちゃうよ~」

永沢怒涛の投げ技攻め。1~2分でマイトスが叩きのめされてしまう。最後はカッコよくムーンサルトでカウント3。これで王座移動。

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SPZタッグ選手権試合(60分1本勝負)

○永沢舞、富沢レイ(20分くらい、ムーンサルトプレスからの体固め)ハイブリッド南、マイトス香澄×

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富沢レイは泣いていた。もう「残り少ないレスラー生活」だと本人も自覚しているのだが、きょうはハイブリッドとうまくやりあっただけでタッグベルトが転がり込んできた。

「舞ちゃん、ありがとーう!」

泣きながら永沢と抱き合った。

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最終戦はさいたまドーム大会。

第4試合は草薙みこと、上原今日子、小川ひかる対伊達遥、スイレン草薙、富沢レイの6人タッグマッチ。この試合、伊達がハッスルして上原をSPZキック、草薙を殺人ヒザ魚雷で潰しにかかる。残ったのが小川ではもうどうにもならない、と思われたが、小川が自信満々でタッチを受けて出てきた富沢をSTFで延々痛めつけて、上原にスイッチし、上原草薙の合体パワーボムで勝利。

こんかいのさいたまドーム大会も3大シングルマッチ。

セミ前はハイサスカラス対ナターシャ・ハンの強豪外国人対決。ハイサスカラスがミサイルキックでナスターシャを沈めた。

セミファイナルは永沢舞対新咲祐希子、良く攻めた新咲だったが、最後は永沢が先輩の意地を見せ、JOサイクロン→ムーンサルト→キャプチュードと怒涛の猛攻を見せて新咲を振り切った。

そしてメイン、吉田龍子対ハイブリッド南のSPZ選手権。

青コーナー側から紫のロングガウンに身を包んだハイブリッド南が入場。そのあと花道に赤いスポットライトが。館内ウォォォの大歓声。

吉田龍子、16度目の防衛なるか。いつものように吉田龍子、黒いロングガウンを羽織って入場。腰にはSPZのベルトが巻かれている。一昨年、8年目の秋から彼女はこのベルトを他人に渡していない。

「えー、この試合は、スーパースターズ、プロレスリング、ゼットがえー、認定する世界選手権であることを、えー、認定する。2018年6月22日、えー、SPZコミッショナー今野和弘、代読、京スポ新聞、若林太郎。

「続きましてチャンピオンベルトの返還です」

「ほいよ。」吉田は自分でベルトを外して若林立会人に渡す。若林はベルトを高く掲げて四方の観客席に見せてから、リングを降りて本部席に陣取った。シリーズ最終戦の日常風景だ。

しかし今回はハイブリッド南が王座奪取へ内なる炎を燃やしていた。

ーなんとしても、姉さんの巻いたベルトを獲る。吉田さんのパワーをうまくやり過ごしていけば必ず勝機はある・・・

20分くらいまでは両者ほぼ互角の展開。焦れた吉田がラリアットの乱打で試合の流れを引き寄せようとするが、ハイブリッドも冷静に関節技ベースで試合を組み立て、試合後半はリング中央でサソリ固めを何度も執拗にかけつづけて吉田に大ダメージを与える。

懸命にロープに逃れる吉田龍子。館内は異様な興奮にざわめく。2ヶ月前はあっさりと勝った吉田龍子、今回は同じ相手に大苦戦している。でもまさか吉田がタイトル戦の大舞台で敗れることはないだろう。いやでもひょっとしたら・・・

そしてついに、記録が途切れるときが・・・

「おうりゃぁああ!」

吉田龍子、力のこもったブレーンバスター、そのあと続けざまにギロチンドロップ懸命に流れを引き戻そうとする吉田だった。が、

ハイブリッド南はサソリ固めを延々かけ続けられた吉田が足を少し引きずっていたのを見逃さなかった。タックルで倒すやそこを突いてのアキレス腱固め!

「あ、ぐああっ!」吉田の痛がり方は尋常ではない。

これで決まるのかー

館内ワアアアという大歓声とウワアーという悲鳴とオオオオとどよめきがとどろき渡る。井上レフェリーがマットに這って、吉田に「ギブアップする?」と確認する。しばらくこらえた吉田だったがー

「ギブアップ」

右足を完全に極められ、激しい痛みに耐えかねた吉田はここで負けを認める言葉を吐かざるをえなかった。

「48分48秒、アキレス腱固めでハイブリッド南の勝ち」

館内大歓声。紫色の紙テープが乱舞。

「あー、吉田龍子がついに止まった~!」大日本テレビ高原アナウンサーが絶叫。

ーデビューしてから4年すこし、やっと頂点に立てた・・・・

アキレス腱固めを解いてリング上で大の字。まだ紙テープが飛んでくる。セコンド陣が上がってくる。羽山リングドクターがはじめて吉田のほうへ行って足の様子を確かめている。

ーあたし、勝ったんだ。

伊達さんや草薙さんを越えても、吉田龍子という存在が高い壁となっていてトップを張れなかったが、ようやく、やっとたどりついた・・・ハイブリッドの目から涙が零れ落ちた。場内はものすごいミナミコール。

マイトス香澄がベルトをハイブリッドの腰に巻く。打倒吉田を掲げて革命軍を結成してから半年での壮挙であった。

敗れた吉田龍子。「羽山さん、あたし、痛がりだからギブアップしただけ、足はなんともないよ」セコンドが肩を貸そうとするのをやんわり断って、ハイブリッド南にいっせいにフラッシュがたかれる中、痛む足を引きながら足早にサバサバとした表情で花道を引き揚げた。

敗れたとはいえ一昨年9月から21ヶ月にわたってベルトを保持し続け15回の防衛を成し遂げた。その間、彼女なりにトップの重圧、ベルトの重みに耐えてきたが、今回手放して変な話ホッとしていた。前半は伊達草薙上原といったもう一花咲かせようとしてくる先輩方を振り切り磐石の態勢を築いたが、後輩の6期生がひたひたと迫ってきて今回はやられてしまった。

ーまあいいや。ハイブリッド南、次やる時は叩き潰してやる。

そう思いながら吉田は控室でシューズの紐を解いた。

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SPZ世界選手権試合(60分1本勝負)

ハイブリッド南(48分48秒、アキレス腱固め)吉田龍子

第20代王者が16回目の防衛に失敗、ハイブリッド南が21代王者となる。

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2007年5月17日 (木)

第118回 マイトス香澄、ボクだって、革命軍だ・・・

10年目5月。

小川ひかるが腰痛のため欠場。本人いわく「長年のツケが回りました」との事。

「え、ボクが、海外遠征ですか?」

スターライト相羽が社長に呼ばれてメキシコ行きを告げられた。

「そうです、次代のSPZを担ってもらうためにも、相羽さんにはAACで鍛えていただいて、一回り大きくなって帰って来てください」

「はいっ、頑張りますっ!」

新日本女子がまた小川ひかるに接触。やり手の新女・田中専務が小川さんは礼を尽くせば・・・と思ったのかもしれない。引退後は新女のフロント入り、役員待遇という好条件まで出してきたが、小川はこの話を断った。

「何度も申し上げますが、私は今野に恩義を感じています。今野を裏切ることは致しかねます。もう私の残りのプロレス人生はさして長くないので、最後までSPZで現役をまっとうしたいのです」

そして5月シリーズ「スプリングデラックスシリーズ」が開幕。

観客動員の苦戦が予想される九州シリーズなので、今野社長は比較的いいカードを多く組んだ。

初戦鹿児島大会、伊達遥・スイレン草薙のSPZタッグ王者に挑むのは、ハイブリッド南・マイトス香澄の「革命軍」。大方の予想はひとり格落ちのマイトスが捕まって終わりだろうというものであった。

「香澄、革命軍の意地を見せるわよ」

「はいっ!」

試合の方はハイブリッド南がサイボーグじみた攻めっぷりを見せて伊達、スイレンを追い込んでゆく。マイトスもこの激闘にくらいついていって試合は盛り上がった。

ハイブリッド南が伊達に本家のお株を奪うニーリフト2連発、そしてブレーンバスター2連発で伊達をグロッギー状態にする。そして合体パワーボム炸裂!

しかし伊達カウント2.9で返す。

伊達さん、やはりしぶとい・・・・

そして伊達が反撃の殺人ヒザ魚雷!この技で何人ものレスラーを屠ってきた。

「ぐうううっ」

ハイブリッド南、たまらずマイトスにタッチ、ここを先途と王者組の集中砲火。タッグマッチでは弱いほうを狙えというのが洋の東西男女を問わず鉄則。スイレンのデスバレーボム、そして合体技ダブルインパクト。会場のファンはああこれで終わったかと思ったが、マイトス香澄がカウント2.9で返す。

ドドドドドドド!

ーボクだって、革命軍だ!

続くスイレンのミサイルキックを良く見て自爆させハイブリッドにタッチ。

しかしここを勝負どころと見たスイレンの草薙流兜落とし。そしてタッチを受けて出てきた伊達がー

がすっ!

SPZキック、ハイブリッドの意識を飛ばしたが、ここはマイトスが素早くカットに入る。館内大盛り上がり。

4人が入り乱れる激戦の中、息を吹き返したハイブリッド南が伊達を捕まえてヒップアタック、踵落としとつないでカウント3奪取。

かくて革命軍タッグにベルトが移動した。マイトス香澄ははじめてベルトを巻いた。

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SPZタッグ選手権 60分1本勝負

○ハイブリッド南、マイトス香澄(30分くらい、カカト落としからの片エビ固め)伊達遥×、スイレン草薙

第12代王者が初防衛に失敗、ハイブリッド南組が第13代王者となる

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第3戦、熊本大会。吉田龍子の地元凱旋だがメインで組まれたのはなんとハイブリッド南とのシングルマッチ。先シリーズ、ドームのメインで一方的に叩きのめされた復讐を果たそうとハイブリッドは挑みかかっていったが、頼みのネオ・サザンクロスロックがニアロープ。逆に地元で燃えた吉田龍子がー

「そろそろ派手に決めようか!」

スプラッシュマウンテンでハイブリッドを沈めた。勝負タイム14分10秒。

翌日の大分大会、吉田龍子対上原今日子がセミで組まれた。序盤は上原も良く攻めたのだが、吉田がニーリフトでうまく流れを変え、最後はプラズマサンダーボム2連発で上原を動けなくしてギロチンドロップで快勝。館内は吉田龍子の圧倒的強さに喝采を送った。

第6戦長崎大会、SPZの人気があまり高くない地域なのでセミとメインは「客寄せ」のために強豪同士のシングル戦が組まれた。セミは草薙みこと対スイレン草薙。

最近はスイレンも力をつけてきて、草薙みことと互角以上に渡り合えるようになった。そしてー

―戦いが長引いたら引き出しの多いみことさんが有利、先に勝負をかけて潰す。

草薙流兜落とし炸裂。そのフォーム、威力はかつての草薙みことを思わせた。

頭からマットに落ちて草薙の目の前が真っ黒になる。

弱った草薙をのがさず・・・

ストレッチプラムでしめあげる。目の前が真っ黒にされた直後に顔面を思い切り絞められて草薙は気分が悪くなってきた。

「ギブアップ・・・」

館内ええええの声。あの草薙みことがスイレンにも破れた。呆然とした表情で引き揚げる草薙みこと。控室に戻り頭を抱え込んだ。

ーもう、私の技は、通用しないのだろうか・・・

メインはハイブリッド南対上原今日子。序盤、上原が見事なフォームのドロップキック4連発。走りこんで、ドロップキック→その場でニップ・アップしてもう一度走りこんでドロップキック。この繰り返しにファンは大盛り上がり。しかし最後はハイブリッドが狙いすましたアキレス腱固め。上原からギブアップを奪った。

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最終戦は地元に戻っての横スペ大会。

第1試合はビーナス麗子対ギムレット美月。新人同士の対決はようやく攻防がさまになってきた。先にスタミナ切れを起こしたのはギムレットの方で、ビーナス麗子がショルダータックルで勝利。

「社長、見た、見た?勝ったよーッ!」

このアピールは小川ひかるのパクリではないかとファンの間では言われている。

第2試合は渡辺智美(5期)、ガイア小早川組(9期)がAACのドスカナ・リブレ、アリッサ・サンチェスと激突するタッグマッチ。2回目の来日となるAACの超新星:ドスカナがスピード感あふれるファイトで会場を魅了する。しかしガイア小早川は打たれ弱い。

iTe cogi!」(もらった!)

ミサイルキック1発で派手に吹っ飛んでしまう。このあとのフォールは渡辺がカットしたが、これで小早川が戦闘不能→渡辺が孤立してしまい、最後はドスカナが強烈なエルボーを渡辺に叩き込んで終了。

休憩前の第3試合は元SPZ王者同士の一騎打ち、草薙みこと対上原今日子。

こんなカードが「休憩前」に組まれるのだから時代は変わった。投げ技を乱発していた往年の凄みはないが、投げ技と絞め技のコンビネーションで上原をうまく攻めてゆく。しかし上原も落ち目の選手に敗れるわけには行かないと奮起し懸命に食らいついてゆく。しかしー

痛め技の対応に弱い上原の弱点を突いて草薙がサソリ固め。これをさんざんかけ続けられた上原が大ダメージ。ここを逃さず草薙流兜落とし。これでカウント3。草薙みこと、いまだ死なず。

休憩明けの試合は新咲祐希子、富沢レイ対ハイブリッド南、マイトス香澄。先日晴れてタッグベルトを獲得した革命軍。この日もマイトスが懸命に新咲の攻勢をしのいでハイブリッドにタッチ。しかしー

この日の新咲は強かった。

「心も身体も全部熱くってたまらないの!」

戦慄の必殺ジャーマン。普通のジャーマンより投げるスピードが速くて受け身が取りづらいのだ。これで頭を打ったハイブリッド、動きが止まってしまい、富沢レイを呼び込んで合体パワーボム。ハイブリッドはこれでカウント3を聞いた。タッグ王者組がノンタイトルながら負けてしまった。

セミファイナルは前タッグ王者の伊達遥、スイレン草薙がジョーカーウーマン、ウェイン・ミラーの外人タッグと対戦。地力に勝る伊達スイレンが良く攻めたが、肝心なところでカットプレーに阻まれチャンスをことごとく逃す。最後はスイレンが捕まってしまい、ジョーカーアタックを3発食らってしまいフォール負け。

そしてメインのSPZ選手権。吉田龍子対永沢舞。

いまの「絶対王者」吉田龍子に勝てる可能性がわずかながらあるのが、ハイブリッド南か永沢舞。永沢はツボにはまれば異様な力を発揮することがあり、前回の挑戦でも吉田をあと一歩まで追い込んだ。しかし今回は、吉田が先手必勝とばかりに永沢を潰しにかかった。パワーあふれる投げ技、そしてフランケンシュタイナー2連発で永沢を追い込む。

永沢も終盤JOサイクロン、ジャンピングニー、ノーザンライトと大技の反撃で意地を見せるが、吉田が逆襲のデンジャラスキック、これで棒立ちになった永沢、スプラッシュマウンテン狙いはどうにか切り返したが、続く強烈なステップキックに昏倒。そのままカウント3を奪われてしまった。勝負タイム18分24秒。王者がなんと15回目の防衛に成功。最長不倒政権は続く・・・

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SPZ世界選手権試合(60分1本勝負)

吉田龍子(18分24秒、ステップキックからの片エビ固め)永沢舞

第20代王者が15度目の防衛に成功

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かいせつの小川さん、こんかいも吉田選手が防衛しましたね」

「うーん、ハイブリッド選手も永沢選手もそれぞれの得意技ではいいものを持っていますので、吉田選手に勝てる可能性はゼロではないと思いますが、総合的な力、あとはあたしがチャンピオンなんだという気迫ですね、吉田選手のほうが何枚か上手ですね。まあでも吉田選手も人間ですから、何回も戦えば一回や二回は勝てると思いますので、永沢選手もめげずにがんばってほしいです」

ありがとうございました。それではこの辺で横浜スペシャルホールから失礼いたします。かいせつはSPZの小川ひかる選手、実況はわたくし、タカハラがお送りいたしました。それではこのへんで、また来週」

「ありがとうございました。」

2007年5月16日 (水)

第117回 10年目4月・吉田龍子 どとーのV14

これまでのあらすじ

横浜のお嬢様プロレス団体「スーパースターズ・プロレスリング・ゼット」(略称SPZ)はいよいよ旗揚げ10年目に突入した。10期生としてビーナス麗子とギムレット美月が入門。トップ戦線は草薙みこと・伊達遥の能力減退がはっきりしてきて、5期生の吉田龍子が最長不倒政権をつくりつつある状況であった。

そして4月シリーズ最終戦、新日本ドーム。館内は52000人の大観衆で埋まった。

第1試合は新人同士の対戦、ビーナス麗子対ギムレット美月。

ビーナス麗子は打撃のセンスがあり、今シリーズも先輩のガイア小早川から2勝を上げている。この日もギムレットをエルボーで流血に追い込んだが、これで奮起したギムレットが逆にエルボーで倒しカウント3奪取、プロ初勝利を挙げた。

第2試合は小川ひかる対マイトス香澄。いちおうドームのバックスクリーンには以下のテロップが流れた。

「小川ひかるデビュー9周年記念試合」

試合のほうはマイトスも手数は返すのだが、小川のほうが一つひとつの技にキレがある。ローリングソバットやネックブリーカーで追い込み、最後はニーリフトで勝利。勝負タイム10分38秒。日本人選手対外国人選手の2試合を挟んで、セミ前から3大シングルマッチ。

セミ前は草薙みこと対伊達遥。

ともに実力的にはピークを過ぎた選手同士の一戦。かつてはSPZ選手権を賭けて何度も死闘を繰り広げた両者の対決にファンは沸いた。絞め技でダメージを与えた草薙が懸命に動いて試合を支配しようとする。あまり見せないローリングソバットまで繰り出し、フライングボディプレスでカウント2.5まで追い込む。しかし・・・

「これで決めます」

SPZキックが草薙の頭に命中。

「ああっ」

そして伊達STO。しかしこれで草薙も闘志に火がついたのかノーザンライトスープレックス2連発、そしてドラゴンスリーパーで意識をもうろうとさせての、3発目のノーザンライト。これでカウント3が入った。勝負タイム22分12秒。

「何とか・・・勝てたようですね」

セミファイナルは上原今日子対永沢舞。

先月吉田龍子に惜敗した永沢、早期にリベンジするためには上原を倒して挑戦権の順位を上げておきたいところ。

「とおー」

永沢がいつものように投げまくって、最後はJOサイクロン炸裂。上原から完勝を収めた。

そしてメインイベント。吉田龍子対ハイブリッド南のSPZタイトル戦。1月のドームでは吉田の勝ち、2月の山口大会ではノンタイトル戦ながらハイブリッドの勝ち。さて今回はどうなるか。吉田龍子の防衛記録は伸びるかどうか。

―長引くと関節技が出てきてやばい。最初からガンガン行く。

この戦法で吉田龍子、ラリアット2連発、フランケンシュタイナーで早々と優位に立つ。そのあともDDT。ハイブリッドの頭がマットにぐさり。

「くっ・・・この技でマットに眠りなさいっ!」

焦ったハイブリッドがネオ・サザンクロスロックを強引に仕掛ける、しかしダメージのない吉田龍子、力任せに外してしまい、そのあとフランケンシュタイナー、キャプチュード、スプラッシュマウンテンと悪魔的な猛攻を仕掛け、ハイブリッド南をわずか14分22秒で沈めてしまった。

「・・・・・・・・・・・・・・・・」

場内「強い吉田龍子」にどよめき。ため息。そして賞賛の拍手。14回目の防衛に成功。2016年の9月から1年半以上の長期政権である。

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SPZ選手権試合(60分1本勝負)

吉田龍子(14分22秒、スプラッシュマウンテンからのエビ固め)ハイブリッド南

第20代王者が14回目の防衛に成功

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2007年5月15日 (火)

第116回 上原今日子デビュー7周年記念試合

そして4月シリーズ「旗揚げ9周年エッセンシャル・シリーズ」が始まった。スイレン草薙は右肩痛で無念の欠場。

緒戦は札幌キターアリーナ大会。

八重樫美月は「ギムレット美月」、愛野麗子は「ビーナス麗子」のリングネームを与えられ、それぞれデビュー戦に臨んだ。

「青コーナー、

広島県広島市

出身、ビーナスー、れいーこー」

今野社長のリングアナコール。今野社長も体調はいまいちだが、「ホッカイドーは行く、絶対にいく、寿司―っ」と叫んで巡業に帯同となった。

「赤コーナー、

福島県郡山市

出身、ガイアー、小早川」

「レフェリー保科優希、なおビーナス麗子選手は本日がデビュー戦となります」

カンッ。

本部席へ戻った今野社長がゴングを叩いた。

ガイア小早川がチョップを打って試合を作ってゆく。しかしー5分ごろ、麗子が打ったエルボーが・・・

このーっ!

バシッ!

これがガイア小早川のアゴに入って、がくりと崩れ落ちるガイア。ふらふらと立ち上がって来たところをチョップで一撃して倒して、上に乗ってフォールしたらカウント3が入ってしまった。

「6分23秒、逆水平チョップからの体固めで、ビーナス麗子の勝ち」

「社長、見た?見たー、勝ったよー」

リング上で喜びを爆発させるビーナス麗子。ラッキーな形で打撃が入ってしまったとはいえ、デビュー戦で白星を収めたのは南利美草薙みこと新咲祐希子についで4人目の快挙。ガイア小早川はガックリとした表情で引き揚げた。

自分はこの1年、真剣に練習してきたつもりだったのに、素人同然の新人に負けてしまうとは・・・

続く第2試合、

「青コーナー、

岐阜県垂井町

出身、ギムレットー、みつきー」

新人なので拍手はほとんどない。

「赤コーナー、

長野県松本市

出身、おがわー、ひかーるー」

ワアアアアーーーー!館内拍手。

「レフェリー保科優希、なお、ギムレット美月選手は本日がデビュー戦となります」

カンッ。

小川がスリーパー、脇固め、アームホイップと流れるような攻め。ギムレットもエルボーやドロップキックで反撃。しかしー

ギムレットを捕まえて上から頭を押さえつけ、顔面へ軽くステップキック一撃。

―痛いッ。

続くフォールをギムレットは返せなかった。

「8分18秒、ステップキックからの片エビ固めで、小川ひかるの勝ち」

顔を押さえて引き揚げるギムレット美月。控え室で先輩レスラーに祝福の言葉をかけられた。

「デビューおめでとう!」

―すべて、小川さんの手の平の上だった・・・

SPZの札幌ではいいカードが組まれる。今野社長は北海道スキーだから。今回も「3大シングルマッチ」が。

セミ前は伊達遥対新咲祐希子。

投げ技や飛び技の手数を多く出した新咲が伊達の「バリア」を破り優位に試合を展開。しかし伊達も終盤、逆転を狙ったSPZキック、しかし新咲もパワーボム!

カウント2.5で返した伊達、ここを勝負どころと見て、2発目のSPZキック!

ウァアァァァと伊達ファンの歓声が。涙ながらに声援を送る女性ファンも散見された。

    ・・これで・・・勝てる

ワン、トゥ・・・カウント2.9で右肩を上げた新咲、

ドドドドドド。場内は大爆発。

そんな?SPZキック2発でも倒せない?

新咲が逆襲のネックブリーカー、そしてキャプチュード。これで伊達はカウント3を聞いた。勝負タイム24分16秒。やはり時計の針は逆戻りしなかったか・・・ファンのため息、そのあと拍手の中、小川に抱えられた伊達が引き揚げる。

・・上段蹴り2発入れて倒せなかった・・・

伊達はショックの色をありありと浮かべていた。

セミファイナルは草薙みこと対永沢舞。ファイトスタイルが似通っている上に両者の実力差が開いているので、まあ永沢の勝ちだろうとファンはみていた。

防戦一方の草薙。かつての「草薙劇場」の面影はなく、永沢のノーザンやらフロントスープレックスにただ投げられまくるだけ。一方的に攻め込んだ永沢、JOサイクロン、これはカウント2.9で返したが、続くキャプチュードで意識を持っていかれフォール負けを喫した。館内は残酷な時代の移り変わりにため息。ただため息。勝負タイム12分9秒、一方的に草薙がやられるなんてのはここ数年なかったシーンである。

メインイベントは「上原今日子デビュー7周年記念試合」ということで、上原今日子対メキシコAACの新外国人ハイサスカラス。ハイサスカラスはメキシコに現れた天才少女という触れ込みで、昨年あのチョチョカラスに勝ってAACチャンピオンの座についた覆面選手である。

オーロラビジョンに

「KYOKO 7」

という文字が流れる中、銀色のガウンに身を包んだ上原今日子がリングに向かう。沖縄から単身上京し、SPZ第2回新人テストに合格してプロレスデビュー。伊達や吉田や永沢のような絶対的な必殺技はないものの、努力に努力を重ねてトップグループの仲間入りを果たし、混沌の間隙を突いて1回だけSPZ世界王者にも輝いた。その強さと美しさを兼ね備えたファイトで、いつしか「マットの覇者」と呼ばれるようになった。

試合の方は上原とハイサスカラスの意地の張り合い、熱戦が展開された。双方ともに飛び技に自信を持っているので、リングを縦横無尽に動き回る戦いが展開され、最後は上原がフライングニールキックでハイサスカラスからフォール勝ちをスコア。勝負タイム18分26秒。

第4戦大阪大会、

第4試合で組まれたのは1期生同士の対決、伊達遥対小川ひかる。小川もスリーパーやドロップキックなどで攻めるのだが、いかんせん伊達の「バリア」を破ることはできない。したがって小川がじわじわと不利になってゆく展開。伊達が強烈なラリアット。初めてSPZ王者になったときの思い出の技だ。そしてブレーンバスター。これでフラフラになった小川にー

殺人ヒザ魚雷。

往年と変わらぬ威力に小川悶絶。続くフォールを返せなかった。それでも小川を仕留めるのに15分23秒もかかるあたり伊達の力に翳りがみてとれた。

大阪大会メインは草薙みこと対新咲祐希子。しかし一方的に草薙がやられる展開に場内悲鳴。

「どうしたんだ草薙さん!」

館内からこんな声も上がる。この日も新咲のフェイスクラッシャーに敗北。勝負タイム15分38秒だが、内容が悪すぎる敗戦。ファンは草薙の豪快な投げ技乱発を期待していたのに、一回も投げられなかった。

そして最終戦、新日本ドーム。

2007年5月14日 (月)

第115回 社長倒れる

10年目4月

いまどきのIT企業、エスピーソリューショングループの総帥・手塚社長が思いつきで3億円を出資して始めたプロレスビジネスーSPZも旗揚げ10年目を迎えた。

旗揚げ当初の苦闘を思えば良くここまでこぎつけたなと今野社長は思ったが、利益を溜め込まず規模拡大や選手への還元に振り向けたため社長はいつもいつも資金繰りに追われて大変な状態であった。しかも最近は苦楽をともにした一期生が次々と引退し、社長はガックリ来ていた。社長が「個人的に応援、(業界筋ではいや溺愛している・・といわれている)小川ひかるは社長の思いを察したのか、まだ現役で踏みとどまっているが、もう引退は時間の問題であろうと周囲は思っていた。

「小川選手会長~、あした日帰りで岐阜行くから同行して」

「え、私が?」

「新人スカウトに行きます、未来のうちを支える人材をとらないとあかん、じつは最近疲労で頭が回らんのじゃ、新人を口説く要員が2人必要なのじゃ・・・」

こうして今野社長と井上秘書、小川ひかるは朝7時の新幹線で名古屋へ向かった。名古屋から新快速で大垣、そこから一駅、垂井駅からタクシーですぐのところに今回のスカウト対象者の家があった。

「八重樫美月15歳、体力はそれほどでもありませんが、そこそこの運動神経があるそうです」

井上霧子がファイルを見ながら説明する。

「そう・・・」

今野社長は疲れていた。要するに3月末の決算期、数字の確定やら全国22店舗のグッズショップの実地棚卸やらで泊り込み続きであり、損益計算書の作成に選手である小川ひかるの手まで借りた。会社の規模が急激に大きくなってくるとえてしてこういうことになる。

「SPZを日本一のプロレス団体にするため、力を貸してください」

今野社長がスカウト対象者を熱心に口説く。

「私には、自信が・・・身体も小さいし、力もありません・・」

美月はSPZ入りを渋ったが、

「八重樫さん、チャンスだと思って、やってみませんか?私もはっきり言って力もありませんし上背もないです。それでもけっこうこの9年、いい思いをさせてもらいました、正直言って身体はボロボロですけど、やってよかったと思いますよ」

小川ひかるも美月に声をかけた。

―そうかだから小川選手を連れてきたのか。この間見たネット掲示板に「SPZの小川ひかるは社長とただならぬ仲!?、こんどは寿司屋でデート」とあったが、そんなに社長べったりでもなく信用できるかも・・・

瞬時に美月は考えて、

「分かりました、お受けしましょう」と答えた。

そのあと条件提示とかもあって夕方5時ごろ八重樫美月のSPZ入りの契約がまとまった。

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異変が起こったのはその夜。

「じゃあ飯食ってきますか、大垣駅前におでんのおいしい店がありまして」

小川井上今野社長の3人は大垣駅前の食堂「緒方屋」で「おでん定食」の夕食。店の奥の大なべで煮込まれたおでんは飴色に煮染まっている。ここの赤だしはおいしいと今野社長が覚えていた。

「新人取れて、良かったですね」

「・・・うん、そうだね、あとは練習見てあげて」

「社長、顔色悪いんじゃないですか」

「うん、ちょっと疲れてるのと、ほら、あれ、ベイスターズがいきなり10点取られている・・」

食堂のテレビは中日×横浜の試合を流していた。

そして帰り道、名古屋駅で新幹線ホームまで移動しようとした際に今野社長が立ちくらみ。

「うっ・・・」

「しゃ、社長!」井上秘書と小川ひかるがうずくまった社長に駆け寄る。

「あー、目の前が黄色い・・・」

「救急車呼ぶ?」

「そんな・・恥ずかしいこと・・・できますか」

機転を利かせた井上秘書が名古屋ステーションホテルの部屋を押さえ、今野社長は2人に両脇を支えられながら運ばれた。

「悪い・・・」

スーツ姿のままベッドに横にさせられた。小川ひかるが社長のネクタイを解く。

「飲み物買ってくるから、小川さん社長見てて」

「はい」

名古屋ステーションホテルの部屋の中、社長がぽつりと。

「もう歳なのかもしれない」

「まだ45じゃないですか、老け込むには・・早いです」

「でも・・社長業は、ゲキムだ。小川さんや南さんがリング上で苦しむのとは別な苦しみかもしれない」

「もっと社長らしく、したらどうですか、社長がグッズ販売したりリングアナやってるなんてほかの大きな団体ではありえない話ですよ」

「あかこーなー、

長野県松本市

出身、おがわー、ひかーるー。・・・このコールをするのが私の生きがいだよ」

「・・・バカ」

「うん、私はバカだよ・・・でも、一期生・・・全員・・引退したら、社長・・・辞めても・・・いいかな」

「後任は?、どうするつもりですか」

「井上さんで・・・いいんじゃないの」

「人をまとめてゆくのと、資金繰りをどうするかが問題点になってきますね」

「うー・・・まあ良く考えよう」

そのときドアが開いて井上秘書が戻ってきた。

「ポカリスエットとピーチネクター、どっちがいい?」

「あ・・聖水、聖水の方で」

今野社長はポカリスエットのことを「聖水」と呼んでいる。

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その翌日は新人テスト、またまた100人を超える応募者が殺到したが、例によって「丹沢山岳耐久力テスト」と「腕立てスクワット」を課したところ、ギリギリで1人の少女が残っただけだった。

「ふあー、きつかったー。ここまでやったんだから、もちろん合格ですよね?」

その名は愛野麗子、広島県出身。

富沢レイ4th写真集「AYAME」発売。団体に1000万円の現金収入をもたらした。

「まつかぜ寮」では6期生のハイブリッド南と新咲祐希子が晴れて退寮しアパート住まい。8期生のスイレン草薙が寮長となった。

そして4月シリーズ「旗揚げ9周年エッセンシャル・シリーズ」が始まった。

2007年5月13日 (日)

第114回 永沢舞・あと一歩・・・

そして3月シリーズ「バトルアトランティス2018」開幕。

シリーズ前のオフ、上原今日子にまたも新女の接触。新女も最近は実力のSPZ人気の新女などといわれて、実力派選手を引き抜きでいいから獲りたいのだろう。

「お断りします、SPZでもう一度天下を取りたいという夢はあきらめていません」

さらに新女は提携先団体、EWAを横取り。SPZの人気の要因が海外団体と長い付き合いをして、ファンに愛される常連外人を作っていることに気づき、妨害工作をかけてきたと言うのが業界筋の見方であった。

「井上さん」今野社長は半切れでつぶやいた。

「お金積んでいいから、来月EWA抜き返して。売られたケンカは買います。」

そのうえに先月、吉田のシングル連勝記録を止めて次期SPZ選手権トップコンテンダーと目されていたハイブリッド南が特訓中に左ひざを負傷したというバッドニュース。

「ああ、社長業は、ゲキムだ・・・」

当然ハイブリッドは欠場、したがって3月シリーズに予定していたタイトル戦の挑戦者は永沢舞をあてることにした。

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3月シリーズは青森で開幕。セミファイナルは永沢舞対スイレン草薙。SPZタイトル挑戦の決まった永沢がスイレンをほいほいと投げまくって、最後はJOサイクロンでスイレンを退治。

青森大会メインは「スペシャルタッグマッチ」吉田・新咲対草薙・上原の実力者4名によるタッグマッチ。4人が4人とも相当の力量とウタレ強さを持っているので試合は長期化した。しかし、最後までスタミナが尽きなかったのは吉田龍子。

「どうだっ!」

吉田のプラズマサンダーボム2連発が上原を追い込む。

カウント2.8、しかし吉田は攻撃の手を緩めることなく

スプラッシュマウンテン!

終わったかと場内の誰もが思ったが、上原の意識は残っておりサードロープに手を伸ばしていた。

「ウアーッ!」

上原もものすごい形相で、フランケンシュタイナーで反撃。

吉田が上原をつなぎの逆片エビで痛めつけるが、上原も飛んでフランケンシュタイナーで逆襲、だが飛びついた上原を受け止めると、そのままパワーボムで切り返した。

ズドーン。

これでカウント3が入った。勝負タイム36分42秒の激闘にファンは拍手で応えた。

翌日の岩手友愛ドーム大会でもメインは吉田・新咲・富沢対草薙・上原・小川の6人タッグ戦。

しかし吉田のパワーを誰も止められない。「クールビューチー連合」は一期生の小川ひかるが司令塔になって、不利になったら即タッチという戦法で対応するのだが、相手チームに吉田が出てきたときは防戦一方。最後は体力を温存していた新咲が上原をキャプチュード、シャイニングウィザードとたたみかけてカウント3を奪い終了。勝負タイム30分10秒の激戦。

第7戦幕張大会のメインは永沢舞・富沢レイのSPZタッグに伊達遥、スイレン草薙が挑むタッグ選手権。試合中盤、挑戦者組の攻勢をローンバトルでしのぎきった富沢が永沢にスイッチして、永沢がいつものようにスイレンを投げまくる。しかし、代わった伊達が・・・

SPZキック!

文字通り団体を支えてきた蹴りを食らって崩れる永沢、ピンチと見て出てきた富沢には・・・

殺人ヒザ魚雷!

そのあと再度出てきた永沢は合体パワーボムで動きを止めて、富沢を孤立させて、最後は伊達が富沢に長身を生かしたブレーンバスター。これでカウント3が入った。勝負タイム51分28秒の死闘。

伊達遥、9年目3月にしてタッグ王座奪還。全盛期の力はないが、試合の流れを読むところはさすが。若いスイレンをうまくリードしてベルトを手に入れた。館内はハルカコールの嵐。

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最終戦はさいたまドーム大会。

第3試合は伊達遥対マイトス香澄。マイトスの攻撃は伊達の「バリア」を崩せず、頃合いを見てジャーマン、ラリアットとそこそこの痛め技を出した伊達が7分39秒、完勝。殺人系の技を出すまでもなかった。

休憩後の第4試合、草薙、小川、上原の「くーるびゅーちー連合」がジョーカーウーマン、ユーリスミルノフ、トーニャカルロスの外人軍と激突。

外国人軍が思わぬ連係の良さを見せ、最後は草薙上原が大ダメージを受け、小川が孤立。ここでジョーカーウーマンがジョーカーアタック(変形フェイスクラッシャー)乱打。小川は食らうなり場外エスケープというずる賢い手を2回も使ったが、ジョーカーは場外でもジョーカーアタックの追い打ち。6発目のジョーカーアタックで小川が動けなくなりカウント3。外国人チームが29分13秒の熱闘を制した。ファンは、敗れはしたが頑張った小川に拍手を送った。

「くっ、ハア、ハア・・・」

耐えてしのいでタッグパートナーにつなぐことも・・・できなくなってきたっ・・・

小川ひかるはセコンド陣の肩を借りて戻ってくるなり、控室の床にぶっ倒れた。新人の頃は良く見られた光景だが、要領を覚えてからはあまり見られなくなったシーンだが・・・・

セミファイナルは新咲祐希子対スイレン草薙、次期SPZ選手権挑戦の事を考えると両者ともに負けられない一戦。しかし新咲が先輩の意地を見せ、14分24秒、ハイキックでスイレンを仕留めた。

メインはSPZ選手権、王者の吉田龍子に対するは4期生で元SPZ王者の永沢舞。

「吉田さんは確かにすっごく強いですう。でも、やる前から負けることは考えません。適当に投げ飛ばしてきます~」

大日本テレビのインタビューにこう答えて、永沢はリングへ向かった。昨年12月の同じさいたまドーム以来3ヵ月ぶりの王座挑戦である。

いつものように永沢は何も考えずに、目の前の相手を投げ飛ばしにかかった。吉田もラリアットで反撃するが、今回は序盤戦、永沢の手数が上回っていた。

「とおー」

間の抜けた掛け声でフロントスープレックス、ノーザンを決める。そしてパワースラム。

「これはひょっとしたらひょっとするかもしれませんよ~」

解説の保科優希が不気味な予言。

追い込まれた吉田はスプラッシュマウンテン!永沢を高々と担ぎ上げてから落とす。

カウント2で返した永沢はノーザン、カウント2.5、吉田ステップキック、永沢またノーザン。カウント2.8まで吉田を追い込む。

絶対王者がついに止まってしまう?ざわつきだす館内。

「ウォオオーーッ!」

しかし吉田も王者の意地を見せてプラズマサンダーボム、パイルドライバーの猛攻でカウント2.8、

しかし永沢、先に立ち上がって、吉田が起き上がるのを待って、

「ネコキーック!」

普段はあまり見せない変形ハイキックで吉田を倒しにかかったが、吉田がスッと身を沈めて水面蹴り。軸足を払われてバタッと倒れる永沢。そこを片エビで上から押さえつけるようにしたフォールした吉田、永沢ははね返せずカウント3を聞いた。

「30分43秒、水面蹴りからの片エビ固めで吉田龍子の勝ち」

「はあ・・・勝てませんでしたあ・・」

「なかなか・・・やりますね、永沢さん」

勝負タイム30分43秒の激闘を制した20代王者吉田龍子、これでなんと13度目の防衛成功。

「解説の保科さん、永沢選手、残念でしたね」

「ええ、JOサイクロンを出せなかったですね~。やはり吉田選手もタイトル戦の経験を積み重ねて、試合の組み立てがうまくなりましたね~。形勢を打開するのにスプラッシュマウンテンを使ってきますから~」

「ありがとうございました、解説はSPZレフェリーの保科優希さん、実況は私、高原がお送りいたしました」

「ど~も~」

2007年5月12日 (土)

第113回 ナスターシャ・ラストファイト

これまでのあらすじ

横浜のお嬢様プロレス団体「SPZ」は旗揚げ9周年を迎えようとし、団体がまだ小さかったころを支えた名レスラーが続々と第一線を離れつつあった・・・2月シリーズ最終戦、さいたまドーム大会でも、ファンに愛された常連外人が2名引退する・・・

第3試合が終わると、休憩

休憩後の第4試合は上原今日子対ドリュー・クライ。デスピナ引退でしんみりした会場の雰囲気を吹き飛ばす熱いファイトを展開。最後は上原が3発目のジャーマンでドリューを仕留めた。

そしてセミ前のタッグマッチ。

「次の試合に登場するナスターシャ・ハン選手は本日が日本で最後の試合となります。ファンの皆様、より一層の声援をお願いいたします」

館内ドワアアアの声援。

ロシア国旗を振り回しながら、ナスターシャ・ハンとユーリ・スミルノフが入場。横スペ館内は総立ち状態。

「青コーナー、ロシア、キーロフ出身、ナスターシャ、ハーンー!」

外国人選手にもかかわらず青い紙テープが乱舞する。

イギリスに本拠地を置くプロレス団体、EWAでトップを張っていたナスターシャだが、ロシア出身でシュートスタイルということもあって欧州でもヒール扱いだった。そして2013年春、日本行きのオファーを受け、日本には南利美や秋山美姫など関節技使いが多く、波長の合う闘いができた。しかしもう5年近くが経ち、身体も言うことをきかなくなってきたし、日本に40回以上来るうちに、かなりの日本通になり日本人の恋人もできた。

「引退後は東京でロシア料理店をやります」

今野社長は驚いた。「ナスターシャさん、料理やるの・・・」

「そのくらいできますよ、社長さん。私ね、日本に来る外人レスラーの居場所を作ってあげたい、そんな思いがあるの」

新しく日本に来る外国人レスラーは日本での移動、滞在になじめず、極端な話、夕食をハンバーガーで済ませるパターンもあって本来の力を発揮できないケースがある。デスピナあたりの常連外人になると大阪はこの店がうまい名古屋はこの店がうまいといった情報を覚えてくるのだが。

「わかりました、大変お疲れ様でした」

対戦相手はSPZ革命軍、ハイブリッド南とマイトス香澄。試合が始まるとナスターシャはじっくりとマイトス香澄をいたぶる。そのあとハイブリッドとシビアな攻防を繰り広げる・・・

ミナミの妹・・・ミナミより強クナッタ・・・

関節技だけでなく投げ技や打撃もこなすファイター相手の闘いにナスターシャは押されだし、苦し紛れにスミルノフにタッチ。やはりスミルノフはハイブリッドの敵ではなく、最後は合体パワーボムにスミルノフが沈んだ。

「14分29秒、合体パワーボムでハイブリッド南、マイトス香澄組の勝ち」

今野社長、そして南利美が久しぶりに公の場に姿を現し、花束贈呈。かつては関節の極め合いで沸かせた二人が久々に対面。

「ダスビダーニャ!」

こうしてSPZを支えた常連外人がまたひとり去った。もっともナスターシャの場合は日本に移住するらしいのでこれからも会えるだろうと社長は感じた。

セミファイナルは草薙みこと対スイレン草薙。メキメキと力をつけてきたスイレン草薙、きょうは草薙一門の大先輩、草薙みこととの対戦。実力は同程度だが、長年の経験と勝負勘で草薙みことが勝つんじゃないかというのが京スポはじめマスコミ各社の予想だった。

10分過ぎ、長期戦を嫌ったのか草薙みことが早くも仕掛けた。

「これで決めますッ!」

草薙みことが草薙流兜落とし。スイレンを頭から落とした。

しかしスイレンも起き上がると・・・

「これで決めますッ!」

同じ技で草薙みことの脳天をたたきつける。

しかし草薙みこと、ここは踏ん張りどころだと感じたのか、DDT,ノーザン2連発という怒涛の波状攻撃でスイレンをカウント2.8まで追い込んで、最後はサソリ固め。

「ぐぁああ・・・」

リング中央で決まってしまい、スイレンは痛みに耐えかね無念のギブアップ。勝負タイム12分51秒。

試合後の控室、やられた頭を押さえながらみことはコメント。

「はっきりいって危なかったです。勝ててよかったと思います」

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そしてメインイベント、絶対王者吉田の相手は「永沢欠場で挑戦権が転がり込んできた」新咲祐希子。SPZ王座には初挑戦となる。

初挑戦で硬さのあった新咲に対して、吉田は新咲とタッグを長い間組んでいたので手の内は分かっている。いつもどおりのパワーファイトを展開し、新咲をスタミナ切れに追い込んで・・・

「遊びじゃないんだよ!」

あまり見せない意外な技、ノーザンライトスープレックスで新咲からカウント3を奪った。勝負タイム27分54秒だが、吉田が落ち着いて闘ったためか危なげない試合内容だった。王者が12度目の防衛に成功。最強吉田伝説はどこまでも続く・・・

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SPZ世界選手権試合

吉田龍子(27分54秒、ノーザンライトスープレックス)新咲祐希子

第20代王者が12度目の防衛に成功

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2007年5月11日 (金)

第112回 デスピナリブレ最終戦

9年目2月

そして2月シリーズ「スノーエンジェルシリーズ」開幕。

SPZ王座の挑戦者に内定していた永沢舞が右足首負傷で無念の欠場となった。

中国地方北陸地方を回るシリーズ初戦の山口大会で客寄せのために「ドーム級」のカード、吉田龍子対ハイブリッド南のシングルマッチ(ノンタイトル戦)を組んだ。しかしここでハイブリッドの意地が爆発した。

手数では吉田のほうが上で、パワーでガンガン攻める。そして20分ころ満を持してスプラッシュマウンテン。ああ決まったかーという雰囲気。しかしハイブリッド、驚異のカウント2.9でクリア。

勝ちを急いだ吉田は2発目のスプラッシュマウンテン。しかしロープに近く、まだ意識の残っていたハイブリッドがカウント3直前で右手をサードロープに伸ばした。焦った吉田がリング中央で3度目のスプラッシュマウンテンを狙うがこれをハイブリッドローリングクラッチホールドで切り返した。そしてー

ハイブリッドがニーリフト。吉田がたまらずダウン。

い、今だ。

ハイブリッドのアキレス腱固め。これが極まってしまった。足の痛みに耐えかね吉田ギブアップ。絶対王者がシングルマッチで負けてしまったのは一昨年、8年目8月のSPZクライマックス以来1年半ぶりのことである。もしこの一戦にベルトがかかっていたら、王座移動になっていたところである。

「くっ・・・なんてことだ」

足を引きずりながら引き揚げる吉田。

近いうちに決着戦をやってその時は叩き潰してやる・・・

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そして2月シリーズ最終戦は横スペ大会。SPZが地元に帰ってきた。しかし今野社長は浮かない顔をしていた。常連外人が2人、引退を社長に告げてきたのだ。

第1試合はガイア小早川対アンナ・クロフォード。アンナが試合開始早々のアキレス腱固めでじっくりといたぶる。

「ウァアアアアー」

館内に響くガイア小早川の悲鳴。どうにかロープに逃れる。

ガイア小早川もローリングソバットやネックブリーカーを繰り出し、良く頑張ったが最後はアンナのスクラップバスターに力尽きた。

続く第2試合は富沢レイ、渡辺智美対伊達遥、スターライト相羽。いくらカード編成の都合とはいえ、かつての絶対王者、伊達が第2試合に回されるとは・・・古くからのファンは時代の流れに息をのんだ。

「伊達さんゴメン、今日は引退セレモニーやんなくちゃなんない選手が2人いて、本拠地で出番が第2試合だけどお願い。」

この扱いに奮起した伊達、富沢レイを殺人ヒザ魚雷2発で処刑。これでフォール勝ち。館内は強い伊達の姿に静まり返った。

そしてー

次の試合に登場するデスピナ・リブレ選手は本日が日本最後の試合となります。ファンの皆様より一層のご声援をお願いいたします」

館内ワアアア・・・と声援。

いまでこそ中堅外人のひとりだが、デスピナ・リブレはあのSPZ旗揚げ戦、2009年4月21日の横浜赤レンガ大会のメインイベントでミミ吉原と対戦して勝っている選手で、古くからのSPZファンになじみが深い。

あれから9年、デスピナは70回以上の来日を誇り、そのスピード感あふれるファイトはファンの印象に強く残っている。

「社長サン、モウ限界。アタシ3月にメキシコで引退スル。日本ニ来レル、コレガ最後。引退後は結婚シテ、ブティックでも始メル。イママデアリガト」

外国人選手はヒール(悪役)の役割を与えられることが多いのだが、デスピナは明るい人柄からか、日本のファンからも善玉として愛されていて、草薙や伊達あたりとぶつけるとデスピナコールが起こってしまう現象もあった。

異様な興奮の中、メキシコ音楽のほわーんとしたテーマ曲が流れ、デスピナ入場。そのあと「マイティ・ウイング」がかかって小川入場。

「青コーナー、メキシコ出身、デスピナー、リブーレー」

みんなありがとう。

デスピナはいつも通り、右手を突き上げた。メキシコの貧民街に育ち、幼い頃は苦しい生活だったが、その身のすばしっこさを買われて、14歳でプロレスの道に身を投じて闘ってきた。メキシコ本国ではスター選手が多くてトップ争いに食い込めなかったが、16歳のとき、AACのエージェントから「日本に新しい団体ができるから、行ってみてくれ」といわれて初めて太平洋を渡った。

前座の試合に出てきた選手は素人同然で、すぐつぶれるんじゃないかと心配したが、自分が叩きのめしてきたミナミやダテはぐんぐん力をつけてあっという間にスターにのし上がった。そしていつしかSPZはドームで数万人の観衆の中で試合をするまでになり、本国での試合よりも日本で戦うことのほうが多くなった。そしてついに、激しい試合に身体がついていかなくなった・・・・

デスピナ!デスピナ!デスピナ!デスピナ!

日本ノファンハ優シイ。外国人ナノニ懸命ニ闘エバ声援ヲ送ッテクレル・・・

デスピナは涙を懸命にこらえた。

「赤コーナー、

長野県松本市

出身、おがわー、ひかーるー」

この日ばかりは青い紙テープも数えるほどしか飛ばない。

「オラー!!」

掛け声とともにいつものダイナミックなフォームでドロップキックを打ち込む。しかし小川もスリーパーや脇固めでねちっこく反撃。ファイトスタイルが全然違う両者の激突にファンは沸いた。

しかしデスピナも日本最後の試合、なりふりかまわないヘッドバッド、ブレーンバスター、ローリングソバットの猛攻でペースをつかむ。

Matar!」(死んでしまえっ!)

デスピナは目に涙をためながらランニングエルボー。

バキッ!

続くフォールはカウント2.8。ドドドドドド。

ふらふらと立ち上がる小川。

iTe cogi!」 (もらった!)

デスピナは再度走ってエルボーを小川の顔面にぶち込んだ。

しかしこのフォールもカウント2.8、ドドドドドド

ハア、ハア・・・オガワ、ヤハリシブトイ・・・

SPZ旗揚げ以来、9年間戦い続けてきたのでお互い手の内はわかっている。実力も同程度なので両者のカードが組まれるケースも多かった。

小川ひかるは懸命に組み付いてスリーパーで弱らせると、

「もう逃げられないわよ!」

アピールしてからSTF。小川の必殺技だ。

「ウ、グアアアア~」

顔面を襲う痛みに耐えるデスピナ、しかし小川も泣きながら絞めてきた。デスピナは無念の思いで保科レフェリーに最後の言葉を発した。

「ギブアップ・・・」

デスピナの日本での戦いは終わった。

「19分59秒、STFで小川ひかるの勝ち」

終ワッタ・・・

満員のファンがデスピナコール。ここでゲストのミミ吉原登場、デスピナに花束を贈呈した。旗揚げシリーズでは同格の相手がいなかったのでシングル8連戦をやった間柄だ。

戦い終わってノーサイド。今野社長、井上秘書、保科レフェリー、ミミ吉原、小川ひかる、デスピナの6人、SPZ初期メンバーで手上げ。

「ミンナ、アリガトウゴザイマシタ!」

涙ながらにデスピナはファンに別れの言葉を告げたあと、花道を引き揚げた。

こうして、SPZを旗揚げから支えた名レスラーがまたひとり、リングを去った。

2007年5月10日 (木)

第110回 吉田龍子 V11達成

9年目1月シリーズ続き

長野大会のメインは永沢舞・富沢レイのSPZタッグ王座に草薙みこと・小川ひかるの前王者が挑むタイトルマッチ。ただでさえ人気選手の小川ひかるの地元なので場内は挑戦者組への声援でいっぱい。

しかし、草薙小川の攻めをしのいだ永沢組が合体パイルドライバーで草薙を痛めつけてから小川に猛攻。最後は永沢がパワースラムからハイキックとつないで小川を倒してカウント3奪取。初防衛に成功した。勝負タイム27分31秒。

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SPZ世界タッグ選手権(60分1本勝負)

○永沢舞 富沢レイ(27分31秒、ハイキックからの片エビ固め)草薙みこと 小川ひかる×

王者組が初防衛に成功

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頭を押さえながら痛々しい表情で、スターライト相羽の肩を借りて引き揚げてきた小川、バッタリと控室に倒れこんだ。

・・・・リングに上がるのが怖くなってきた。もう、潮時なのかな・・・

小川ひかるは控室天井の蛍光灯を見ながら呟いた。

1月シリーズは最終戦新日本ドーム大会。首都圏では強いSPZ、5万2千の大観衆を動員した。

休憩明けの試合。

「次の試合に出場するチョチョカラス選手はこれが日本で最後の試合となります、ファンの皆様より一層のご声援をお願いいたします」

館内ウァーの大声援。かつて南や秋山、沢崎、草薙の前に高い高い壁として立ちはだかったAACのトップ、チョチョカラスが引退する。覆面レスラーで年齢不詳の彼女も、メキシコでは正体は「公然の秘密」となっており当然その情報はネット経由で日本のコアなファンには伝わっており、先日25歳になったことは知る人ぞ知る状態。本国AACではもうトップの座を退き、引退して実業家になるらしいという噂は飛び交っていた。

チョチョカラス最後の試合はアンナ・クロフォードと組んで、上原今日子、小川ひかると激突。小川を攻め込み、上原と熱い戦いを展開したが、最後はパートナーのアンナ・クロフォードが捕まってしまい、合体パワーボムにフォール負け。それでも18分57秒の激しい試合となった。今野社長がリングに上がり、チョチョカラスに花束を贈呈。リング上でマイクを渡されたチョチョカラスは一言だけ発した。

「アディオス!」

こうして1年目からSPZを支えてきた名優がまたひとり姿を消した。

ドーム大会、セミ前は伊達遥対草薙みこと。

過去にSPZ選手権やSPZクライマックスで幾多もの名勝負を繰り広げてきた両者の対戦がセミ前の扱いというのも寂しさを感じさせるが、両者とも現時点の持てる力を出し尽くして闘った。一進一退の攻防は草薙がノーザンライト、タイガースープレックスで大ダメージを与えれば、伊達もSPZキック2連発で草薙をカウント2.8まで追い込みー

最後は伊達がフラフラと起き上がる草薙に組み付いていって

殺人ヒザ魚雷!。

数年前の迫力がよみがえった。草薙の腹に膝蹴りがドバドバと命中し、もがき苦しむ草薙にのしかかってフォール勝ち。23分3秒の死闘に会場は大盛り上がり。ハルカコールが響いた。

「最後に、いい膝蹴り、もらっちゃいましたね・・・」

腹部を押さえながら引き揚げた草薙、控室に戻るなり倒れこんだ。

セミファイナルは永沢舞対新咲祐希子。勝ったほうが次期SPZ選手権の挑戦者となることが濃厚な一戦。終盤新咲がジャーマン、パワーボム、ネックブリーカーと良く攻めたが最後は17分15秒、永沢のムーンサルトからのパワースラムに撃沈。

そしてメイン、SPZ選手権は吉田龍子(王者)対ハイブリッド南(挑戦者)吉田龍子、勝てばSPZ選手権連続防衛記録で伊達を抜いて単独トップになる。

「自分が、どうなっちゃってもいいから、勝ちたい」

そう言ってリングに向かったハイブリッドだったが、いざ試合になるや例によって吉田龍子の早めの仕掛けが展開された。5分過ぎにムーンサルトプレスを出してくるのだから恐れ入る。そしてDDT、プラズマサンダーボム、キャプチュードの波状攻撃にあっけなくハイブリッド撃沈。勝負タイム20分51秒、20代王者の吉田龍子が11連続防衛の新記録を打ち立てた。館内強い吉田にため息。そして拍手。

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SPZ世界選手権試合(60分1本勝負)

吉田龍子(20分51秒、キャプチュード)ハイブリッド南

第20代王者が11度目の防衛に成功

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2007年5月 9日 (水)

第110回 9年目1月 奈良大会

シリーズ第6戦は奈良大会。前の日は岡山に宿泊し、例によって10時集合、みんなでバス移動。高速で京都、そして奈良へ。バスの中で今野社長はノートパソコンを開きメールに目を通し、井上秘書はスナック菓子を食べ、小川ひかるは「社会保険労務士」の本などを読んでいる。吉田龍子は携帯型ゲーム機で遊び、若手選手は眠っていた。昼食はサービスエリアで適当に食べる。

14時過ぎに奈良到着。まず全員でリング設営。44歳の今野社長も「メタボリックシンドローム」防止のため鉄骨を運び、そのあとリング上で受け身などをとってみたりする。

「うん、いい音だ」

そのあとは売店の設営。といっても今日は地方会場なので会場隅に会議用テーブルを並べてその上にTシャツやDVDを並べるだけ。「SPZカレンダー カジュアル服バージョン、2000円→1000円 PRICE DOWN」というPOPを社長は手書き。昨年年末、カレンダーをこの団体は2種類作り、ひとつは試合中の模様を撮影したもの、もう一つは「普段着」の選手を撮影したもので、後者はSPZフィーバー各店(全国18店舗展開!)で在庫が余っていたので、なるべく新春シリーズで売りさばこうという社長のせこい魂胆であった。

この間選手は黙々と練習。ハイブリッド南は革命軍同士、マイトスとリング上でスパーリング、富沢レイと草薙みことはタッタッと場内をランニング。小川ひかるは伊達遥とストレッチで身体をほぐしていた。

そして17時半、保科優希レフェリーが「開場です~」と声をかける。いったん選手は控室へ。外国人選手控室、SPZ若手軍(吉田永沢連合)、クールビューチー軍と伊達さん(草薙上原小川スイレン伊達)、革命軍の4つの控室が用意された。

社長は井上秘書保科レフェリーを引き連れて売店で「増収」に没頭した。

「さ、SPZかじゅあるカレンダー、1月はなんと草薙みことの黒いレザーコート姿!いまならすぺしゃるぷらいす1000円!きょうご購入のお客様にはなんと、小川ひかるサイン色紙プレゼンとぉ!どぞご利用くださーい」

今野社長は以前ホームセンターで働いていたこともありこの手のセールストークはうまい方だ。

入場者数4101名(超満員札止め)そして6時30分の試合開始、今野社長は物販に熱中していたのであわててノートパソコンとゴングと木槌を持って本部席に向かう。いつものように木槌でゴングを5回叩いたあと、本日のカードを読み上げる。きょうは地方大会らしい顔見世のカードを5試合組んだだけなので反応はいまいちであった。

第1試合はスターライト相羽対富沢レイ。

タッグ王者の富沢が第1試合に出場、新人相羽に胸を出す。しばらく前座らしい地味な攻防が続いたが、5分過ぎに富沢がいきなりストレッチプラム。たまらずスターライト相羽ギブアップ。

「勝った~っ!やりました!」新人相手でもコーナーに上がって拳をつきあげる富沢レイ。場内は笑うしかなかった。

第2試合は新咲祐希子対アンナ・クロフォード。トップグループの一角がカード編成の都合でもう登場、いつものように快活に飛んだ新咲、最後はフェイスクラッシャーで完勝。勝負タイム10分47秒。ここで休憩。まだ19時少し前、進行が早すぎる。

このあと15分の休憩、休憩明けは伊達遥、スイレン草薙対チョチョカラス、ロレンニールセンのタッグマッチ。時間が余ってたので伊達とスイレンが先に入場してカラーボール投げをやって時間を稼ぐ。さて試合のほう、これはかみ合ったタッグマッチとなった。スイレンが外人チームの連携に苦戦しながらも、最後は14分18秒、AACトップのチョチョカラスをバックドロップで投げてフォール勝ちをスコア。

セミファイナルはハイブリッド南、マイトス香澄の「革命軍」がナスターシャ・ハン、ユーリ・スミルノフのロシアンコンビと激突。案の定マイトスが捕まり、ナスターシャの「殺人」STFが決まってしまう。といってもヤングガール相手なので手加減しているようだが。これはハイブリッドがカット。そしてハイブリッド対ナスターシャのねちっこい攻防が続く。そのあとスミルノフ登場。

「○×△□・・・!」(日本語訳にすると、「お前を焼き殺してやろう」などと言っているらしい)なにやらロシア語で叫んでから、

ナスターシャの危険な角度のバックドロップ。これで闘志に火をつけたハイブリッド、踵落とし2連発で勝利。勝負タイム14分35秒、

メインが始まったのが19時45分、吉田龍子・永沢舞・渡辺智美の4・5期生連合に草薙みこと・小川ひかる・上原今日子の「くーるびゅーちー」連合。試合は吉田永沢の猛攻を草薙小川上原が真正面から受け続ける白熱した展開になった。永沢のパワースラムでフラフラになった小川、永沢がハイキックでとどめを刺そうとしたところ視界からスッと消えて水面蹴りで切り返す。この動きに場内は沸いた。最後はどうにか渡辺を捕まえた上原が、小川を呼び込んで・・・

「小川さんっ!」

小川が渡辺を肩車で担いで、コーナー最上段に素早く登った上原が跳躍力を生かしたフライングラリアット、ダブルインパクト発動!

あまり見られないど派手な合体技に館内は沸いた。頭から落ちた渡辺は無念の3カウントを聞いた。永沢吉田のカットは草薙に阻まれた・・・こうして草薙組が30分45秒の激闘を制した。リング中央で3人で手を上げて歓声にこたえた。敗れた渡辺、ダブルインパクトのダメージが深く、吉田永沢に両側から支えられながら花道を後にした。

20時20分頃全試合が終了し、動ける選手・スタッフ総出でリング撤収。そのあと奈良市内のビジネスホテルに投宿。部屋に荷物を置いて仲のよい選手同士で食べに行く。今野社長は「おー、飯食ってこう」を発動させ、新人のスターライト相羽と選手会長の小川ひかるを誘って奈良市内の料理店へ。

「小川さん、明日タイトルマッチ頑張ってね」

「作戦通りに行けば勝機はありますけど、なにぶん相手あってのことですから」

小川ひかるはいつもの笑顔で唐揚げ定食を平らげた。

メインのダメージが深い渡辺と付き添いの吉田は部屋でほか弁で済ませた。明日は長野で試合なので23時には全員ホテルに戻って就寝。

2007年5月 8日 (火)

第109回 かくめい軍結成

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筆者より

9年目12月を終わり、本来なら楽しいクリスマス選手会興行書き下ろしの予定でしたが、記録係は

ピーポーピーポー

「ごめんなさい、やっちゃいました・・・」

風邪でダウンしてしまいましたので、そんな気力はなく、仕方がないのでWordに書き溜めてある本編を掲載します。

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年末のプロレス大賞、最優秀選手は吉田龍子。ベストバウトは吉田龍子対ハイブリッド南の一戦、ベストバウトのタッグはどこかの地方会場で組んだ吉田永沢対ハイブリッド南、草薙みことの一戦が選ばれた。

9年目1月。

マイトス香澄とスターライト相羽の間で遺恨が。

先シリーズ最終戦で組まれた試合(第1試合のボクっ娘対決)で、スターライトが「懸命なファイト」を展開して先輩に勝ってしまったことでマイトスが「ムッとした」らしい。遺恨発生はSPZ始まって以来のことである。

「どうして呼ばれたか分かるか?」

本社3階商談室。今野社長と小川ひかる選手会長の前にマイトス香澄が呼ばれた。

「ボク・・・後輩相手だから2つか3つくらいは受けてあげようと思っていたんです。そしたら相羽が本気で攻めかかってきてカーッとなっちゃって・・・」

「香澄ちゃん、後輩に負けたからっていって相手を恨んではダメですよ。仲直りしてきなさいね」

「はいっ」

さすがに大先輩の1期生に言われたら従うしかない。

「小川さん、この団体も・・・変わってきたね。」

一期生を中心とした選手の鉄の結束?は過去のものになってしまったかと社長は慨嘆した。

「まあ、あの子たちは・・・会社が大きくなってから入ってきましたから・・・」

そしてその数日後、ハイブリッド南が京スポ新聞上で「革命軍」結成を宣言した。社長は事前に知らされていない。京スポ若林記者が聞き手のインタビューの要約は次の通り。

「吉田龍子選手をなんとしても越えてSPZシングルのベルトを巻きたい。いまは会社の方針で草薙さん上原さん小川さんとタッグを組んでいるが、私は革命軍を結成して吉田選手をたたきのめす。しばらくは私とマイトスの2人でタッグを組む」

「何よこれ」京スポ(エロページはマネージャーにより抜かれている)を呼んでうろたえる社長。

SPZのいまの対立構造は「吉田永沢連合」と「クールビューチー連合(上原、ハイブリッド、草薙小川)」との2大派閥で運営している。ハイブリッドはあえて苦難の道を選び先輩方に頼らずトップ獲りを狙っているのか・・・

「まあ、瑠美さんの気持ちも分かりますよ」井上秘書が話す。

「先輩方が軒並み衰えたり引退しているのに、SPZのベルトを巻けなくて、なんとかしなければという焦りが出てきているのでしょう」

「そういうものですか・・・とりあえず来シリーズのカードは組みなおしだ」

そして1月シリーズ「新春バトル・カデンツァ」が始まった。

3戦目の香川・高松大会、セミで革命軍のハイブリッド南、マイトス香澄組が吉田龍子、富沢レイ組と激突。しかし試合は吉田対マイトスの場面になったとたん終わった。

「遊びじゃないんだよ。」

パイルドライバーが決まってマイトス、フォール負け。ハイブリッドのカットは富沢に阻まれた。勝負タイム8分52秒。

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第4戦徳島大会、第1試合は小川ひかる対マイトス香澄。革命軍の一員になって積極的に攻めたマイトスだったが、中盤から小川のジワジワと痛めつけるレスリングに捕まりスタミナ切れを起こしだす。

「む・・・これでどうだー!」

マイトス香澄のジャーマンが決まる。小川は体重が軽いので派手に投げられてしまう。しかしカウント2で返す小川、そしてこれ以上は受けられないと判断したのか、アームホイップでサッと倒してSTFで決めにかかる。懸命に耐えたマイトスだったが、痛みに耐えかね、ギブアップの言葉を吐いた。

第4試合でスイレン草薙が伊達遥を破るハプニングが。13分頃に繰り出したスイレンのドラゴンスリーパーが決まってしまい、伊達はギブアップ。場内ええええ!の声。普段はタッグを組んでいる両者がカード編成の都合上対戦(地方会場では良くあること)したのだが、このチャンスでスイレンが伊達越え。

その次の第5試合も草薙みこと対新咲祐希子。同じ草薙信徒であるスイレンの伊達越えに触発されたか、草薙みことが久々の投げまくり「草薙劇場」を展開。しかし新咲も成長しており、やられにくくなってきている。

「心も身体も全部熱くってたまらないの!」

新咲、ジャーマン炸裂。カウント2.5で返す草薙。しかし最後は草薙も意地を見せ、ノーザン炸裂。投げ終わりのさいに肩を腹にめり込ませるえぐいパターンだ。これで新咲はカウント3を聞いた。18分27秒の激闘。

徳島大会セミファイナルハイブリッド南対上原今日子のシングル戦。地方大会のわりには実力者同士のシングルマッチが3つ続くカード編成。前半はハイブリッドが良く攻めたのだが、後半上原が猛チャージ。ニールキック、フランケンシュタイナー、ニールキックで逆転勝利。

「はー、はー、はー、なかなかやるね。」

20分57秒の激闘を制し、3期生の意地を見せた。

徳島大会メインは吉田龍子 永沢舞の連合タッグと、ナスターシャ・ハン、チョチョカラスの外国人選手最強連合タッグ。豪華版である。4人が4人とも個性を出すド迫力の戦いが展開されたが、19分過ぎ、

「骨がきしむ音を聞かせてちょうだい・・・」

リング中央でナスターシャの必殺STFが!小川やハイブリッド南のとはワケが違う。なにしろロシアの特殊部隊訓練にも使用されているコマンドサンボ仕込みのSTFなので、その気になれば殺人も可能な技である。

「あ、いけない!」

永沢がカットに入る前に吉田の首が極まってしまい、吉田ギブアップ。場内またもええええ!の声。あの絶対王者、吉田がギブアップしてしまうとは・・・

憮然としたまま吉田引き揚げる。叩きのめされて負けたのでないだけにもやもやが残る。このあと控室で吉田は椅子を思い切り蹴飛ばしたのは言うまでもない。

(次回は久々のある日のSPZ地方興行です。)

2007年5月 6日 (日)

第108回 秋山美姫 最終試合

シリーズ最終戦は首都圏に戻ってさいたまドーム大会。

「秋 山 美 姫 引 退 試 合」と大看板が。

いつものように秋山は午後2時に会場入りして黙々とアップ。きょうは小川ひかるとのシングル戦でラストマッチ。そして17時半、開場。

「やたー、埋まったぞー」今野社長が快哉を叫ぶ。

メインは吉田対永沢のSPZ線が組まれていたせいもあって4万2千、超満員札止めの盛況。

試合前、例によって「おもしろビデオ」の上映。SPZの道場が映し出される。

「今では笑い話となったが、8年前SPZは旗揚げしたばかりで人気のない貧乏団体だった・・・」

マイクを持った今野社長のへたくそなナレーションが。

「ミミ吉原以外は全員新人という陣容で、SPZの一期生は連日AACの外国人選手に叩きのめされる毎日だった。」

「ううっ・・・いたぁーい」

控室に横たわってわざとらしくうめく秋山小川伊達の「再現映像」に場内爆笑。

「試合後の控室はいつも野戦病院。しかし秋山美姫はめげずに黙々と練習を繰り返した。どんなときも苦しい顔一つ見せずに一期生を引っ張っていった。クールな選手が多い中、快活な表情でリング上を飛びまわる秋山、いつしか大声援が飛ぶようになった」

「伊達遥、秋山美姫、沢崎光のトリオはバランスの取れた陣容でチームワークも抜群。社長はカード編成に迷うと、メインにこの3人を『コピー貼り付け』して組ませる癖がついてしまった・・・」内部事情暴露に場内また爆笑。

「またああ見えて研究熱心なところもあり、難易度の高い究極の関節技、ドラゴンカベルナリアを男子団体のビデオを見ながら、私は天才だから見よう見まねで習得してしまった。と本人は言っているが、実際は夜の道場で連日スプラッターな・・・」

「社長~」ここで秋山登場。

「黒歴史はしゃべっちゃダメなのよ。関節の悲鳴を聞きなさーい」

某選手のまねをした秋山が社長にドラゴンカベルナリア!

「やめて、痛い、死んじゃう、あ~れ~」

ザーッ。

ここで映像は途切れた。館内大爆笑。しめっぽい雰囲気の中で試合をさせたくないという会社側の配慮だった。

そのあと、カン、カン、カン、カン、カン・・・ゴングが鳴り今野社長がカードを読み上げる。セミ前の「第6試合、秋山美姫対小川ひかる」で館内沸いた。

第1試合はスターライト相羽対マイトス香澄。(ボクっ娘対決)

なんと新人のスターライト相羽が積極的に攻めて、ボディスラムでフォール勝ち。デビュー6ヶ月目で先輩のマイトス越えを果たした。

第2試合はガイア小早川対渡辺智美。

渡辺が手堅く逆片エビで勝利。

第3試合は富沢レイ対ユーリスミルノフ。

タッグ王者になった富沢だが、シングルではユーリのロシアンパワー炸裂であっという間に攻め込まれ、最後はバックドロップに敗北。その試合が終わると休憩。

休憩明けの第4試合は外国人同士のタッグ戦。チョチョカラス、アンナ・クロフォードがカレンロレンのニールセン姉妹を撃破。

第5試合は伊達、スイレン組対上原、ハイブリッドのタッグマッチ。なにげに先月の横スペ大会メインでドローに終わった試合の決着戦である。今回は膠着状態にならず、ハイブリッドのアキレス腱固めがスイレン草薙に決まり、スイレンは無念のギブアップ。

そして、第6試合。

「次の試合に出場する秋山美姫選手は本日が最後の試合となります。ファンの皆様より一層のご声援をお願いいたします」

館内ウォォォの大歓声。

まず青コーナー側から小川ひかる入場。そのあと赤コーナー側の花道を、「DETECT」に乗って秋山美姫入場。

「本日の第6試合シングルマッチ30分1本勝負を行います。青コーナー、長野県松本市出身、おがわー、ひかーるー」

「赤コーナー、鳥取県米子市出身、あきやまー、みーきー」

投げ込まれるものすごい量の水色紙テープ。

―小川さんの場合、長引くと関節技が出てきて危ないから。

試合は秋山が序盤から仕掛けた。ショルダータックル、エルボーの猛攻。そして6分過ぎ、コブラツイストが決まる。

「参ったしろ~」

秋山が声を張り上げて、ぎりぎりと絞り上げる。ここで小川がギブアップしたらそこで秋山のレスラー生活は終了する。館内異様な雰囲気。悲鳴と歓声とどよめきが入り混じる。

小川もこんな技でギブアップしてたまるかと腰投げで返す。しかし、秋山が小川を組みとめるともう一度同じ技を仕掛ける。

今度のほうが小川のダメージが深いせいか小川の上半身がえぐい曲がり方をしている。

「とっとと、参ったしろ・・・っ」

秋山が気迫のこもった表情で絞り上げ、小川のわき腹にするどい痛みが走る。もうこうなっては小川は最後の言葉を吐くしかなかった。

「ギブアップ、します」

「9分17秒、コブラツイストで、秋山美姫の勝ち」

秋山美姫、いつものように右手を挙げて勝利のポーズ。ここでサプライズ。全選手がリング上に駆け上がり秋山を胴上げ。3回秋山は宙に舞った。

セミは新咲が草薙みことを16分5秒、ジャーマンで下して世代交代を印象付ける。

そしてメイン。王者吉田龍子に永沢舞が挑むSPZタイトル戦。きょう勝てばV10となり、伊達遥の持つ「連続防衛記録」に並ぶので吉田がいつものように積極的に攻めた。永沢も投げで手数を返そうとするが、単発に終わる。

「みんなー必殺技だよ、必・殺・技」

しかし永沢が逆転を狙ってJOサイクロン、そのあとパワースラムで吉田を追い込む。しかし吉田もスプラッシュマウンテンでお返し。両者が必殺技を繰り出しフラフラ状態。永沢のジャンピングニーで吉田がぐらつく。しかし吉田がシューティングスタープレス!1回目は派手に自爆したが、痛がるそぶりも見せず、タックルで倒してから2度目のシューティングスタープレス。今度は命中。めったに見せない技を出したということはそれだけ追い込まれたということなのだろうか。カウント3がこれで入る。勝負タイム19分35秒。これで吉田龍子、怒涛の10連続防衛成功。

メイン終了後、秋山美姫の引退式。

「私は全力で戦ってきました!もう思い残すことはありませんっ!ありがとうございました!」

力強くファンに挨拶して秋山はリングを後にした。

秋山美姫

 2009年5月15日、名古屋市体育館でのアリシア・サンチェス戦でデビュー。2018年12月23日、さいたまドーム大会での小川ひかる戦で引退。稼動月数104ヶ月、出場試合数(推定)752試合。

タイトル歴:AACジュニア王座、AAC世界王座、

AACタッグ王座(パートナーは伊達遥、沢崎光)、

SPZタッグ王座(初代王者・第4代王者・第6代王者、パートナーは沢崎光)

2007年5月 5日 (土)

第107回 9年目12月 秋山美姫引退シリーズ

9年目12月、新咲祐希子のファンクラブが結成された。

だがSPZに激震は続く。先月の沢崎に続き、1期生の秋山美姫が引退表明。11月シリーズが終わり小川ひかるの「24歳誕生日祝い」を行った翌日、秋山が社長室に現れた。

「すみません・・・でもさすがに限界みたい・・」

今野社長は予想していたこととはいえ暗然とした。ここ1年の思うように身体が動かない苦しみは秋山も沢崎も小川も同じなのだ。彼女たちも葛藤があったのだろう。リングを離れてただの人になってしまうことへの。動けなくなっても、手を叩いてくれる人がいるかぎり、今できることをやって戦い続けるのも正解。かつての自分のイメージを壊さず身を引くのも正解。出処進退の判断は自分で決めるしかない。そして秋山も判断した。

「迷ってた・・・けど、沢崎さんに背中を押されたかな」

「寂しくなるな、一期生の中ではいちばんプロレスラーっぽかったから。闘うヒロインっぽくて。」

「アハハハハハ、濃い人が多かったですからね~」

「最後の相手、誰がいい?」

「社長に任せます、ひねくれたカード組むから」

「引退後の再就職のアテはあるの?」

「ん、ちょっとね。その辺はうまくやりましたから心配しないで」

こうして12月シリーズは「秋山美姫引退シリーズ」となった。一期生の中では何でもこなす万能型ファイトスタイルとその明るくさばけた人柄が受けて、大勢のファンが秋山の最後の姿を見ようと詰めかけた。

初戦は釧路大会。メインで秋山は伊達上原と組んで、吉田永沢新咲のトリオと激突。上原がまだ駆け出しだった頃、メインで伊達秋山にリードされながら、タッグマッチで揉まれて強くなったのである。最近は上原はハイブリッドや草薙と組むケースが多いので、このトリオは久々の結成。もう秋山の実力は6人の中でひとり格落ち状態だがそれでも必死についていって、新咲にドラゴンカベルナリアを決めた。試合は6人の意地と気迫がぶつかる好試合となったが、最後は新咲吉田の合体パワーボムが上原を沈め、24分46秒の激闘に終止符を打った。

なお、小川伊達秋山と今野社長は釧路の夜の街に出かけ、海鮮炉端焼きを食べまくって今野社長を青ざめさせたのは言うまでもない。

「は~、このパーラーのパフェも今日で最後かぁ」

札幌大会前日のオフ、4000円の「巨大パフェ」を今野社長、小川、伊達の4人でつつくという暴挙に出た。SPZが北海道興行を4ヶ月に1回のペースで開くのは社長と選手の「食い意地」のなせるわざである。

2戦目は札幌どさんこドーム大会。キターアリーナのほうが確実に札止めになるのだが、ひとりでも多くのファンに見てもらいたいということでドーム大会にした。33757名、7割弱の入り。うぉぉと呻く社長。

きょうの秋山はセミで伊達と組んで上原、ハイブリッドと激突するカード。秋山はもうハイブリッドにいいようにやられるだけといった状態。それでもコブラツイストを決めた。試合は伊達が捕まってしまい、ハイブリッドの踵落としを浴びて終了。それでも23分の激闘。

メインは草薙小川対永沢富沢のSPZタッグ選手権。

リーグ戦優勝のハイブリッドには南利美への義理立てなのかベルトを獲りに行く意図がなく、2位の吉田組は吉田がシングル絶対王者なのでタイトルホルダーが偏ってしまうということで、3位の永沢富沢が王者組に挑戦となった。試合は小川が永沢にただ投げられるだけ、草薙も永沢の前に防戦一方。富沢の出番がほとんどないまま追い込まれていく王者組。最後は永沢のネックブリーカードロップが小川を仕留めた。勝負タイム28分44秒。王者組が4度目の防衛に失敗、永沢富沢が11代目のSPZタッグ王者となった。

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SPZタッグ選手権試合

○永沢舞、富沢レイ(28分44秒、ネックブリーカードロップからの片エビ固め)草薙みこと、小川ひかる×

王者組が4度目の防衛に失敗、永沢組が11代目タッグ王者となる

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「永沢さんも・・・強くなりましたね」

試合後今野社長はベルトを失った草薙小川、そして秋山を連れて札幌行きつけの寿司屋へ向かった。3人が一心不乱に高級ネタを注文したため今野社長はまたも青ざめた。

また1日のオフをおいて第3戦は仙台大会。今日の秋山は第1試合で新人のガイア小早川と対戦。このクラスの相手ならまだまだ楽勝。

「やぁっ!」

秋山のDDTがガイアの脳天をマットに打ち付ける。本人は痛め技つなぎ技で使っているのだが、実力差のある相手だとフィニッシュにもなりえる。6分44秒であっさりフォール勝ち。

第4戦は大阪大会、メインは伊達秋山小川の「1期生残党」対スイレン、新咲、ハイブリッド南の「6・8期生連合」の激突。伊達のキックはかつては一撃で相手をたたきのめす戦慄すら漂わせたのだが、最近は痛め技の域に留まっている。こうなると若さと勢いのあるハイブリッド組が断然有利。秋山は新咲の豪快なラリアット、フェイスクラッシャーに防戦一方。伊達が出てきてSPZキックを叩き込むも決定打にならない。若手チームが押し気味のまま試合が進み、最後はスイレンが肩車した秋山に新咲がダイビングラリアット。ダブルインパクトで頭から落ちた秋山は無念の3カウントを聞いた。

第5戦は博多大会。秋山は第1試合で新人のスターライト相羽と対戦。秋山が落ち着いて相羽を攻める。最後はリング中央でコブラツイスト。スターライトの上半身が捻じ曲がって行く。

―これが団体を最初から支えてきた人の重さか・・

「ギブアップ・・・」

スターライトもよく耐えたが10分18秒、結局ギブアップ。

第6戦は秋山の地元、鳥取での興行。メインで伊達と組んでSPZタッグ前王者の草薙小川と対戦。試合は草薙小川の連係に秋山が捕まってしまう展開。代わった伊達も草薙に投げられまくる状態。タッチしたくても秋山がさんざん痛めつけられてダメージが深いので伊達出ずっぱり。そして伊達のローンバトルが続いたせいか、ついにスタミナ切れを起こしリング中央で小川のSTFが決まってしまう。あわてて秋山がカットに入ろうとしたが草薙が通せんぼ。小川のSTFが長時間決まり、伊達ついにギブアップ。小川が伊達から取ってしまうのは珍しい。場内ええええの声。勝負タイム36分38秒の激闘。

第7戦は名古屋大会。秋山は第3試合でマイトス香澄と対戦。一方的に攻め込んで6分15秒、DDTでフォール勝ち。

よし、あと1試合。

秋山はマイトスの手を上げて健闘を讃えた。

シリーズ最終戦は首都圏に戻ってさいたまドーム大会。

「秋 山 美 姫 引 退 試 合」と大看板が。

(続く)

2007年5月 4日 (金)

第106回 沢崎光 最終試合

引き続き沢崎光引退シリーズ。

そして最終戦は地元に戻っての横スペ大会。

「沢崎光引退試合」 

と横スペ会場正面には大書きされた看板。ロビーには沢崎の過去の名勝負を撮影した写真パネルが展示された。絶対王者だった頃の伊達と2回も60分フルタイムドローを闘った「諦めの悪い」沢崎のファイトスタイルの数々がマスコミ各社の協力で展示された。

「あれは5月の連休明けだったかな」

秋山沢崎がSPZの第2回新人テストを受験しに行った時。秋山はそのときから計算高かったのか、「選手層の薄いSPZなら早い段階から活躍できるし、ミミさんがきっちり教えてくれそうだ」と思ってSPZの門を叩いた。

「私、秋山美姫、鳥取から来た、あなたは?」

「私は・・・沢崎光。広島から」

テスト会場で沢崎と知り合い、井上霧子とミミ吉原の前でのテストに最後まで耐え切った。そのあと今野社長に面接されて、2人とも合格が決まった。入った団体とはプロレス団体の雰囲気とは程遠かった。ミミ吉原以外は全員新人。同じ月に「新人スカウト」で入ってきた南利美はセンスがありそうだったが、あとはド新人で、みんなで必死にプロレスを覚えた。特訓をして動けなくなった日もあったが、それでもみんなが強くなろうと努力していた。

あれから8年半、1000人を埋めるのがやっとだったSPZは新日本女子に勝るとも劣らない団体に成長した。秋山も沢崎も団体トップのSPZベルトに手はとどかなかったが、「二人のタッグは受けそうだから組んでみてよ」と社長に言われて、タッグ戦ではかなりの勝率を残せた。(SPZは超強力選手どうしのタッグチームは原則として組ませない方針だからといったせいもあるが)

第1試合はスターライト相羽対ガイア小早川。スターライトが押し切って最後は見事なドロップキックで勝利。

第2試合はデスピナ・リブレ対ウェイン・ミラー。デスピナもSPZ旗揚げ戦メインをミミ吉原と戦った選手で、もう「身体ボロボロ」状態だが、まだ頑張ってファイトしている。この選手もSPZ旗揚げ以来60回以上も太平洋を往復している常連外人だ。この日はウェインのねちっこい攻めに手こずったものの、最後はブレーンバスターで勝利。

ここで沢崎はリングコスチュームに着替え、シューズに紐を通し終えた。

―今日で最後ね。大きなケガもなくまあうまくやれた方かな。

第3試合からタッグリーグ戦最後の公式戦4試合。

吉田○渡辺(12点ギロチンドロップ、18.43)草薙小川×(6点)

ワンマンチームで6勝1敗なのだから吉田の力量恐るべしである。この日も草薙小川の好連係に苦しんだが、最後は草薙をスタミナ切れに追い込んでから孤立した小川にスプラッシュマウンテン!これは草薙がカットに入ったが、草薙を場外に蹴落としてから、渡辺を呼び込んでサンドイッチラリアット。小川も意地を見せこれをカウント2.9で返したが続くギロチンドロップで力尽きた。名タッグ草薙小川も負け越し。時代は確実に流れてゆく・・・

永沢○、富沢(8点、パワースラム)新咲、マイトス×(4点)

永沢が落ち着いて相手チームを分断してマイトスからフォール勝ちをスコア。

モニターでセミ前の試合が終わったのを見た沢崎はいつものように自身のグッズのTシャツを羽織って、

「さあ行くよ!」

沢崎光は最高のパートナーとともに最後のリングへ向かった。

「次の試合に出場する沢崎光選手は本日が最後の試合となります。ファンの皆様より一層のご声援をお願いいたします」

沢崎光のテーマが流れる中大歓声の中、秋山、そして沢崎が「エクスプロージョン」に乗って入場。リング中央で4選手が相対。

「本日のセミファイナル、SPZタッグリーグ公式戦、タッグマッチ30分1本勝負を行います」

「青コーナー、ロシア、ヤロスラブリ出身、ユーリー、スミルノフゥーーー」

「ロシア、キーロフ出身、ナスターシャ、ハンー」

常連外人ロシアンコンビなのでワアアアと歓声。

「赤コーナー、鳥取県米子市出身、秋山、みーきー」

「広島県尾道市出身、さわざきー、ひかーるー」

ピンクの紙テープが乱舞、乱舞、乱舞。セコンド陣が片付けるのにかなりの時間を要した。

沢崎がナスターシャにジワジワと攻め込まれてゆく。

―秋山さん!

最後の連係、ダブルドロップキック!そして

「これが私のとっておきです」

タイガースープレックス炸裂!

弱ったナスターシャはスミルノフにタッチ。スミルノフのパワーに押される沢崎。ひとしきり闘ったあとナスターシャが止めを刺すべく登場。ドラゴンスリーパーで沢崎、ギリギリまで追い込まれたが、ナスターシャのキャプチュードをうまくキックで切り返して秋山にタッチ。

ここでナスターシャ・ハンが勝負に出てSTF。沢崎が蹴りを入れてカット。ここでスミルノフにタッチ。

ー沢崎さんの最後の試合は何としても勝つ。

「うぉーっ!」

秋山のDDTがスミルノフに決まる、こんどはナスターシャがカット成功。ここでタイムアップのゴング・・・

ナスターシャ、ユーリ(5点 30分時間切れ引き分け) 秋山沢崎(1点)

4選手がリング上でしばらく大の字。ここでも紙テープが相当な量、投げ込まれた。

「終わっ・・・た・・・・」

秋山と沢崎は最後の最後で勝ち点1を獲得。実力では上と思われた外人チーム相手に引き分けに持ち込んだ。やはり諦めの悪さが最後まで光ったタッグだった。

秋山沢崎は肩を組んで、お互いに支えあいながら控室への花道を戻った。

上原、H南(13点、時間切れ引き分け)伊達、スイレン(7点)

ハイブリッドが黙々と攻めて伊達のバリアを突き崩し、サソリ固めで大ダメージを与える。ハイブリッドはスイレンにも容赦のない攻めを見せて、たまらず代わって出てきた伊達にも厳しい攻撃。しかしなかなかフィニッシュになる決め手がでてこないし、最後に出て来たスイレンも良く粘った。そして2試合連続の30分タイムアップドロー。負けなければ優勝という条件の上原・ハイブリッドがどうにか粘って2年連続の優勝を手にした。

メイン終了後まずSPZタッグリーグ戦の表彰式、優勝した上原、ハイブリッド組には賞状と金一封、副賞としてゲーム機が贈られた。準優勝の吉田渡辺にも賞状と、副賞として「ももかん詰め合わせ」が贈られた。

そのあと沢崎光の引退セレモニー。ピアノアレンジされた沢崎のテーマ曲が流れる中、ジャージに着替えた沢崎がリング上で挨拶。

「光は・・光は・・・・完全燃焼しました。応援ありがとうございました」

そのあと10カウントゴング。

沢崎光(1期生 第2回新人テスト合格)

2009年5月15日、名古屋市体育館でのジュリア・カーチス戦でデビュー。2018年11月29日、横浜スペシャルホールでの対ナスターシャ・ハン、ユーリ・スミルノフ戦で引退。(パートナーは秋山美姫)稼動月数103ヶ月、出場試合数(推定)744試合。

タイトル歴:AACジュニア王座、EWA世界王座、

AACタッグ王座(パートナーは草薙みこと、秋山美姫)

SPZタッグ王座(初代王者・第4代王者・第6代王者:パートナーは秋山美姫)

第2回SPZクライマックス優勝

2007年5月 3日 (木)

第105回 沢崎光引退シリーズ中編

4戦目は山形大会。

草薙○小川(4点、ノーザンライト 23.41)新咲、マイトス×(4点)

新咲が草薙を押し込む。しかしいくら勢いのある新咲でも草薙小川の2人を相手に戦うのは無理があって、徐々に押し込まれていってやむなくマイトスにタッチ。マイトスも小川をバックドロップでカウント2.8まで追い込むが、最後は草薙のノーザンが決まって終了。

吉田○、渡辺(4点、キャプチュード 11.33)秋山、沢崎×(0点)

秋山沢崎の二人を吉田がひとりで叩き潰してしまった。スプラッシュマウンテンでまず秋山が戦闘不能、沢崎もキャプチュード2発で力尽きた。渡辺智美はコーナーで置物状態・・・・

敗れた沢崎は控室でぽつりと「強いね・・・」と呟いた。

伊達○、スイレン(2点、SPZキックからの片エビ固め、20.57)ナスターシャ、ユーリ(2点)

伊達にかつての爆発力はないが、それでも最近は機を見るに敏なところが出てきて、ナスターシャの猛攻をうまくかいくぐってスミルノフが出て来たところを会心のSPZキック一撃を叩き込んで初白星。

上原○、H南(6点、フライングニールキックからの片エビ固め 23.38)永沢、富沢(2点)

序盤は上原と永沢がシバキ合い、そのあとハイブリッドと富沢。やはり富沢がネオサザンで大ダメージを食らう。なんとか永沢につないだものの永沢も上原ハイブリッド相手の2対1はキツイ。上原のニールキックとハイブリッドのニーリフトで大ダメージ。最後はスタミナが尽きて富沢にタッチしたところを上原がニールキックでトドメ。

第5戦は福島大会。

吉田○、渡辺(6点、デンジャラスキックからの片エビ固め)新咲、マイトス(4点)

新咲が吉田とそこそこいい攻防を見せるが、我慢しきれずにマイトスにタッチしてしまった。場内あ~あの声。苦しいのは分かるがこれは新咲、ミステイクを犯した。吉田とマイトスでは勝負も何もありません。あっという間に追い込まれて最後はデンジャラスキック(ローミドルハイの連打)で終了。今日の渡辺は序盤に少し出て新咲の猛攻を受ける出番あり。

永沢○富沢(4点、ムーンサルトプレスからの体固め 13.34)秋山沢崎×(0点)

秋山沢崎勝てず。ただやられるだけ。きょうは永沢オンステージ。富沢の出番ないまま終了。一期生凋落はここまできてしまったかとファンは息をのんだ。

草薙○小川(6点、草薙流兜落としからの片エビ固め 24.02)伊達、スイレン×(2点)

草薙のアームホイップと伊達のエルボーの応酬。SPZの歴史を感じさせる闘いに場内沸く。そして小川はスイレンの猛攻を耐えて耐えて耐えて、草薙にスイッチ。草薙がスイレンを投げる、変わった伊達も投げる!草薙がDDT2連発で伊達の動きを止めにかかるが、代わった小川に伊達の殺人ヒザ魚雷――

「アアーーッ」場内悲鳴。

これで小川の動きが止まる。

―ここはこらえて、なんとしても草薙さんにつながないと。

スイレンの猛攻をスリーパーで止めて、どうにか草薙にスイッチ。しかしー

「勝たせて頂きますっ」

スイレンが草薙に「草薙流兜落とし」狙っていたか!

場内ええええの声。

「ぐっ」

まさか自分がこの技をやられる日が来てしまうとは。スイレンも強くなった・・・草薙みことは頭を押さえて呻いた。

頭から落ちてふらつく草薙、スイレンは伊達を呼び込んでの合体パイル、ストレッチプラム、逆水平チョップなどで草薙をカウント2.8まで追い込むが。

―これが、本当の、草薙流兜落とし・・・

草薙は全力でスイレンを投げた。草薙流兜落としのお返し。

上原、H南○(8点、合体パワーボムからのエビ固め、11.03)ナスターシャ、ユーリ×(2点)

メインは上原ハイブリッドが快勝。ひとり格落ちのユーリスミルノフが出て来たところを集中砲火。やはりタッグマッチは弱い方を狙うのは古今東西男女を問わず鉄則。

第6戦は新潟大会。

吉田○渡辺(8点、サンドイッチラリアットからの片エビ固め13.53)永沢富沢×(4点)

永沢対吉田で先発。ハイレベルな攻防が続くが、先に我慢できず弱いほうにタッチしたのは永沢だった。やれやれと吉田は渡辺に富沢の相手を任せる。しかしこれは富沢の罠だった。ひとしきり相手をしたあと永沢にタッチ。場内、吉田を油断させるあまりの頭脳戦術に失笑。永沢が渡辺を投げまくりあわやと思わせるが、懸命に振り切って吉田にタッチ。怒った吉田は永沢を圧倒し、次いで出てきた富沢をサンドイッチラリアットで仕留めた。

ナスターシャ○、ユーリ(4点、ニーリフトからの片エビ固め20.34)草薙、小川×(6点)

ロシアンコンビが草薙小川を潰した。草薙がロシアンコンビを攻めきれず、逆にスミルノフのバックドロップ、ナスターシャのドラゴンスリーパーを食らい歯車が狂ってゆく。代わった小川は場外でナスターシャが「マットをはがしてのパイルドライバー」を食らって悶絶。

「ああっ」

場内ブーイングと悲鳴。これで小川の動きが止まってしまった。

場外にひとり横たわる小川、カウント19でリング内にかろうじて戻ったが、そのあとナスターシャがニーリフト2連発。これで小川撃沈。

伊達、スイレン○(4点、ノーザンライトSH 7.42)新咲、マイトス(4点)

マイトス香澄が出て来たところをスイレンがバックドロップ→ノーザンとつないで終了。

上原、H南○(10点、カカト落としからの片エビ固め14.16)秋山×沢崎(0点)

「セイヨー!」コンシリーズ限りで引退する沢崎、懸命にヘッドバッドで反撃。しかし試合の8割は上原ハイブリッドが攻めていた。最後は秋山が捕まってしまい、カカト落としで終了。秋山沢崎にもはや名タッグの面影は・・・

第7戦若鯉球場、沢崎最後の凱旋興行。結局最後までこの球場を満員にすることはできなかった。3万人収容の会場が2万5千人。今野社長はうめいた。

「沢崎さん、ホントゴメン。満員で送ってあげられなくって、最後の地元なのに」

「いいですよ、あと5千人、そのくらいなら来年あたしがチケットを売りさばいて満員にしますから、」

沢崎光の引退後はSPZフィーバー広島店店長に決まっている。

永沢富沢○(6点、掌底からの片エビ固め 25.08)草薙小川×(6点)

人気チーム同士の対戦。小川は永沢にはまったく歯が立たない。どうにかローリングソバットで反撃して草薙にタッチするも、草薙も永沢の投げに押し込まれる展開。やむなくふたたび出てきた小川は永沢の猛攻にさらされパワースラムでカウント2.8まで追い込まれる。ここで永沢がダメージの少ない富沢にタッチ。

あ、これで富沢さんに反撃すれば戻れる・・・

しかし、富沢レイの掌底で小川、吹っ飛ばされて3カウントを聞いた。それでも25分の激戦にファンは沸いた。

伊達○スイレン(6点、ブレーンバスターからの片エビ固め)秋山沢崎(0点)

沢崎引退カウントダウン2。伊達秋山沢崎は一期生でさんざんトリオを組んでメインイベントで南・草薙くーるびゅーちー連合やら吉田永沢の若手連合やら外人と激突してきた間柄。タッグパートナーに恵まれない伊達だったが、6人タッグでは伊達秋山沢崎というのがここ数年定番であった。赤コーナーのセンターに伊達の長身があって左右に秋山沢崎が控える姿は翼を広げた鳳凰のように絵になっていた。そしてついに片方の翼が去る・・・きょうはその3人が敵味方に別れ最後の対戦。

沢崎が地元最後のタイガースープレックス。しかしこれで闘志に火のついたスイレンが草薙流兜落としでお返し。大ダメージを負った二人が下がって、代わって伊達と秋山が対決。ねちっこく攻める秋山だが伊達も殺人ヒザ魚雷。悶絶した秋山が沢崎にタッチ。

「沢崎さん・・・」

伊達が涙をこらえながら沢崎をラリアットで吹っ飛ばす。

また代わって出てきた秋山には殺人ヒザ魚雷からブレーンバスター2連発、秋山もドラゴンカベルで必死に反撃。場内大盛り上がり。三たび沢崎登場。伊達に合体パイルドライバーを決める。しかし伊達もブレーンバスターで反撃、沢崎カウント2で返す。伊達またブレーンバスター、沢崎2.8で返す。伊達またまたブレーンバスター。

バゴォーン。

―頼むから、早く、こんな時間、過ぎて・・・・

ふだんはこんなワンパターンにブレーンバスターを繰り出す闘いなどやらないのだが、伊達もきょうばかりは冷静ではなかったのだろう。3度目のブレーンバスター、全身を強く打った沢崎はフォールを返せなかった。勝負タイム27分58秒の死闘。

場内に響くサワザキコール。伊達は秋山、そして沢崎と握手。涙を浮かべながら伊達は引き揚げた。沢崎はリング中央で一礼したあと、リング下でマイクを持って「今日は、たくさんのご来場ありがとうございます。沢崎光を最後まで応援して頂き本当にありがとうございました」と挨拶。

吉田○渡辺(10点、サンドイッチラリアット 10.42)ナスターシャ×、ユーリ(4点)

吉田がひとりでロシアンコンビをやっつけた。最後は渡辺を呼び込んでのサンドイッチラリアット。渡辺のムーブはこれだけ。

上原○、H南(12点、ジャーマン 13.42)新咲、マイトス×(4点)

マイトスが意地のジャーマンでハイブリッドを投げる。これに燃えた新咲がハイブリッドを追い込んで行くも、息切れしたときにダメージの少ない上原が。新咲、どうにか猛攻をしのいでマイトスにタッチしたが、上原が冷静にジャーマン一発で仕留めた。最終戦を残して上原ハイブリッドが全勝キープ。吉田組が1差で追走。

次回へ続く

2007年5月 2日 (水)

第104回 沢崎光引退シリーズ

9年目11月。

「社長、ちょっとお話がー・・・」

社長はいやな予感がした。3階の会議室で面談。

「完全に燃え尽きました・・・悔いはないです」

沢崎光が引退を表明。

一期生15歳入門組(秋山沢崎伊達小川)4人のうち最初に引退したのは沢崎だった。やはり投げ技ハイスパートレスリングが身上だったのでガタが来ると限界も早い・・・からなのか。今野社長はいよいよ来るものが来たと感じた。

「お疲れ様でした。最後にやりたい相手の希望はありますか?」

「あ、今月はタッグリーグだと思うので、例年通り秋山さんと組んで出たいと思います。それでみんなとお別れができますから」ふっきれた表情で沢崎は語った。

沢崎光引退シリーズ&第9回SPZタッグリーグ戦

参加チームは下記の8チーム。

ハイブリッド南 上原今日子(前回優勝)

草薙みこと 小川ひかる (前回準優勝)

永沢舞 富沢レイ  (元SPZタッグ王者)

秋山美姫 沢崎光 (元SPZタッグ王者)

伊達遥 スイレン草薙 (前SPZタッグ王者)

吉田龍子 渡辺智美(5期生同士)

新咲祐希子 マイトス香澄(元気者タッグ)

ナスターシャ・ハン ユーリ・スミルノフ(EWA軍)

初戦の青森大会は前夜祭、第2試合は特別試合、秋山、ガイア小早川、スターライト相羽対沢崎光、小川ひかる、デスピナリブレの6人タッグ戦。ゴングと同時に秋山と沢崎が組み合った。

ーひとしきり基本的な攻防をやったのち沢崎のスクラップバスターが決まる。

「くっ」秋山は顔をしかめた。

―投げ技の切れはまだまだすごい。

試合はデスピナが新人のガイア、スターライトを痛めつける展開になったので、秋山が再度登場。また沢崎と熱い戦いを展開。

「おらあっ!」

沢崎の鋭いバックドロップ。このあと小川にスイッチ。しかしこれで秋山の闘志に火がついたのか、小川からドラゴンカベルナリアで仕留めた。

秋山と沢崎は握手を交わしてから引き揚げた。明日からは引退試合の日までずっとタッグを組むことになる。

「明日からのリーグ戦、よろしく~」

試合終了後、今野社長は一期生の4人で飲みに行く。青森は魚がうまいので酒もうまい。話のネタは1年目、まだ何もなかったSPZ立ち上げ直後の話になった。みんなでイスを並べた。1円でも現金が欲しかったのでみんなでグッズ売り場に立った。1円でも出るカネは惜しかったのでみんなでリングを組み立てた。それがいまや新女と肩を並べるほどの団体になった。

「もう思い残すことはありませんよ~ハハハハ」

沢崎がビールを傾けつつマグロの刺身をほおばる。

「はー、沢崎さんはムードメーカーだし若手の鑑として得がたい存在だったからなぁー、寂しくなるなー」

「えー、社長、いなくなって困るのはこっちの『ひかるちゃん』のほうでしょ~」

「ごぶっ!」

社長がジョッキを取り落とす。

「き、キミねえ!社長さんは選手に手を出しちゃいけないのよ!京スポにスクープされたら会社つぶれますよ」

「あ、でも引退したらOKなんじゃないんですか~、『ただの人』になっちゃうわけだし~」

「ぶごっ!」

秋山沢崎がリング上同様の連係で社長を追い込みにかかる。今野社長は酔っ払ってごまかすしかなかった。小川ひかるはにこにこと笑っていた。

翌日は第2戦秋田大会。

新咲○マイトス(2点、ジャーマン 13.10)秋山沢崎×(0点)

「これが私のとっておきです」沢崎のタイガースープレックスが新咲に決まる。しかし新咲はさして効いたそぶりも見せずに戦い続ける。沢崎は試合中盤マイトスをジャーマンで追い込むも、最後は新咲の、

「はぁあー、いっくよーっ」

ハイブリッジで見事に投げた高速ジャーマン。この発で沢崎は3カウントを聞いた。

ナスターシャ○、ユーリ(2点、カカト落としからの片エビ固め15.29)永沢、富沢×(0点)

永沢が「とおー」の掛け声で投げまくり、ロシアンコンビを追い込むが、スミルノフ、掟破りの場外で殺人バックドロップ。これで大ダメージを食らった永沢、攻めきれないまま富沢にスイッチ。ここをのがさず冷静にナスターシャがカカト落としで富沢を仕留めた。

吉田○、渡辺(2点、キャプチュード25.30)伊達×、スイレン(0点)

「あたし一人で全勝する。なんだったらパートナーは井上さんや社長でも信楽焼のタヌキでもいい」吉田龍子が爆弾発言。さすがにこれは冗談の域を出ないので吉田のパートナーには渡辺智美が起用された。途中、渡辺が長いこと捕まってあわやと思われたがどうにかタッチし、最後は吉田の豪快なキャプチュードで伊達が沈んだ。

上原、H南○(合体パワーボム 14.09)草薙×、小川(0点)

小川の動きは相当落ちていた。とくにトップ選手を相手にしたときそれは顕著だ。反撃もほとんどできずただやられるだけ。やっとの事で代わった草薙みことにもかつての爆発力はみられない。格闘サイボーグと化したハイブリッドが草薙を追い込んで行く。最後は合体パワーボムで草薙が3カウントを奪われた。

3戦目は岩手大会。

草薙○小川(2点、ダブルインパクトからの片エビ固め24.31)秋山沢崎×(0点)

ピークを過ぎた選手の闘い。とはいえ固定ファンが各々ついているので館内は沸いた。引退する沢崎、草薙みこととは最後の手合わせとなるので積極的にタイガースープレクスで追い込むも小川がカット。最後は久々の

―小川さん!

―うん、やろう。

小川が秋山を肩車して、草薙がコーナー最上段からラリアット、ダブルインパクト!小川はスッと沢崎に抱きついてカット阻止。

まだ負けられない!

薄れる意識の中、続くカバーを秋山、カウント2.9で返す。ドドドドドド。

やっと沢崎にタッチ。

小川がSTFを沢崎に決める。必死にこらえる沢崎。

しかし、小川が草薙にタッチしてふたたびー

―小川さん、もう一度!

―うん、やろう。

ダブルインパクトが今度は沢崎に。頭から落ちた沢崎は無念の3カウントを聞いた。

新咲○、マイトス(4点、フェイスクラッシャーからの片エビ固め15.33)ナスターシャ×、ユーリ(2点)

マイトスが捕まる展開。「香澄かえってこい!」コーナーで腕を伸ばして叫ぶ新咲。ナスターシャの猛攻にもうダメかと思われたが、土壇場でマイトスのジャーマンがハンに決まり、ようやく新咲にタッチ。このジャーマンがかなり効いていたのかフェイスクラッシャーでカウント3奪取。

永沢、富沢○(2点、合体パワーボム 18.36)伊達×、スイレン(0点)

伊達と永沢の壮絶なシバキ合い。伊達のSPZキック!しかし永沢もJOサイクロンで大ダメージを与え、伊達がふらついたところに「千両役者」富沢が登場。後輩・永沢に指示を出して合体パワーボムで伊達を撃沈。金星・・・なのか?タッグながら2夜連続のフォール負け、かつての絶対王者が。

上原、H南○(4点、ハイキックからの片エビ固め、23.56)吉田、渡辺×(2点)

中盤渡辺が上原にやられまくるお約束の展開。脇固めで一矢報いてどうにか吉田にスイッチ。しかし吉田がいかに強くてもハイブリッド・上原の強豪2人を相手にするのは無理がある。上原のニールキックで大ダメージ。苦し紛れに代わったダメージの深い渡辺にハイブリッドがハイキック一撃でジ・エンド

4戦目は山形大会。

2007年5月 1日 (火)

第103回 9年目10月時点のプログラム

9年目10月。

「おう今ちゃん、SPZもうかってるみたいだねえ、実はオレ今度カー用品チェーン店やろうと思うんだ。出資して役員送り込むからさあ、ちょっと総資産の25%、1億3千でいいから出資してくれないかなあ、」

またSPZの手塚オーナーの資金要請が来て、今野社長は1億3千万を拠出した。

10月シリーズ「秋爽シリーズ2015」サーキット前、今野社長は深夜自社ビル4階の社長室でプログラムにいれる選手紹介の文章のメンテナンスを行っていた。この団体ではプログラムは売らずに、来場者に無償配布するが、それでも選手への愛を込めて文案を練った。

完全燃焼娘 沢崎光

1993年6月17日、広島県尾道市出身。SPZの一期生として第2回新人テストに秋山と同時合格し、2009年5月15日、名古屋市体育館でのジュリア・カーチス戦でデビュー。練習熱心でプロレスにかける情熱は人一倍。努力を積み重ねてAACジュニア、EWA世界王座、AACタッグ王座、SPZタッグ王座などを戴冠。最近はタイトル戦線から離れ若手の育成マッチに回る機会も多くなったが、伊達秋山と一期生トリオを組んだときの鉄の連係は健在。得意技はタイガースープレックス。

テーマ曲「エクスプロージョン」(洋楽)

万能ファイター 秋山美姫

1993年10月8日、鳥取県米子市出身。SPZの一期生として第2回新人テストに沢崎と同時合格し、2009年5月15日、名古屋市体育館でのアリシア・サンチェス戦でデビュー。投げ技も関節技もバランスよくこなす器用なファイトを見せ、AACジュニア、AAC世界王座、AACタッグ、SPZタッグ王座を戴冠。最近では同時入門の沢崎光とのタッグで活躍。得意技はDDT、ドラゴンカベルナリア。

テーマ曲:「DETECT」(C.G mix)

静かなる不死鳥 伊達遥

1993年10月23日、宮崎県都城市出身。SPZの一期生として旗揚げ直後から参加し、2009年6月20日根室市体育館、アリシア・サンチェス戦でデビュー。長身を生かした蹴り技の威力はすさまじく、とくに長い足を生かした膝蹴りは多くの選手が「身体を剣で串刺しにされるようだ」と評され、ついには「殺人ヒザ魚雷」と呼ばれるに至った。人見知りが激しく無口な性格だが、リング上では熱い戦いを繰り広げる。秋山、上原とのタッグでAACタッグを戴冠し、団体最強の称号SPZ王者には通算5回輝く。最近ではスイレン草薙と組んでSPZタッグ、EWAタッグ王者に輝く。得意技は殺人ヒザ魚雷、SPZキック。

テーマ曲「宇宙の皇女」(オリジナル)

SPZの闘うヒロイン 小川ひかる

 1993年11月30日、長野県松本市出身。中学時代からアマレス、柔道などで体を鍛える。井上霧子に見込まれ、SPZプロレスにスカウトされ入門第1号となる。2009年4月21日、横浜赤レンガアリーナ大会で、対 ジュリア・カーチス戦でデビュー。SPZ草創期から団体を支える。小柄な身体で連日奮闘し、やられてもやられても立ち上がるその姿にファンは共感、いつしか大声援が飛ぶようになった。デビューからシングル戦15連敗を喫するなど素質はなかったが、連日の猛特訓でタイトル戦線にも食い込める実力をつけ、2011年5月には南利美とのタッグでAACタッグ、12月にはAACジュニアを戴冠。最近でも草薙みこととのタッグでAACタッグ、SPZタッグ王座を戴冠。必殺技発動時の「もう逃げられないわよ!」が出ると会場は盛り上がる。得意技はSTF。

テーマ曲:「マイティ・ウイング」(トップガン・サントラ)

最強巫女伝説 草薙みこと

1994年9月21日、山形県朝日町出身。幼い頃から草薙神社の巫女として修行を積み、その傍ら古武術に通じる草薙流体術を伝承体得した。この素質が井上霧子の目にとまり、SPZにスカウトされ2期生として入団。2010年4月27日、富山市体育館で小川ひかる戦でデビューし、プロ初戦を勝利で飾る。物静かなタイプだが、リング上では強力な投げ技を次々と繰り出す派手なファイトスタイル。また、ミミ吉原から関節技を教わるなど研究熱心な一面もある。瞬く間に一期生に追いつきトップ争いに食い込み、SPZ王者にも3度輝く。小川ひかるとのタッグでSPZタッグ王者も戴冠し、SPZクライマックスでは3連覇を達成するなどSPZの女帝として君臨した。最近でもトップグループの一角を担いSPZ王座奪還を狙っている。得意技は変形裏投げの草薙流兜落とし、タイガースープレックス。

テーマ曲:オリエンタル・クラッシュ(オリジナル)

ファイヤーソウル 富沢レイ

1994年5月10日、千葉県八千代市出身。柔道などで身体を鍛える。SPZには二期生としてスカウトされ、2010年8月8日、新潟・柿崎アリーナ大会の草薙みこと戦でデビュー。主に前座戦線で会場の盛り上げ役を担うが、永沢舞のパートナーとして時折セミやメインにも顔を出し、SPZタッグ王者にも輝く。オフの日は秋葉原、年末には有明に出没することで有名。得意技はストレッチプラム。

テーマ曲:「ムーンリベンジ」(アニメ映画サントラ)

マットの覇者 上原今日子

1995年12月31日、沖縄県那覇市出身、第3回新人テストに合格しSPZ三期生となる。2011年5月11日、青森スポツァルト黒石大会の保科優希戦でデビュー。琉球空手の経験を生かしたローリングソバットなどの蹴り技を武器に着々とのし上がり、トップグループの一角に食い込み、AACタッグ、AACジュニア王座、そして団体最強のSPZ王座を戴冠。練習熱心な性格で、打倒伊達遥に執念を燃やし、8月のSPZクライマックスでついに伊達越えを果たす。得意技はフライングニールキック、フェイスクラッシャー。

テーマ曲:「disintegration」(I’ve sound)

規格外ファイター 永沢舞

1997年3月29日、福岡県二日市市出身。2012年4月16日、大阪舞州アリーナ大会での保科優希戦でデビュー。猫ミミ&しっぽをつけたコスチュームでイロモノと見られがちだが、リング上では投げ技を次々と繰り出すファイトを展開。難易度の高いJOサイクロンまで使いこなす。勢いに乗ったときは手がつけられない強さで、伊達遥を一方的に仕留めてSPZベルト初挑戦で王者になってしまった事件はファンの間でも語り草になっている。得意技はJOサイクロン。

テーマ曲は「Change my style」(KOTOKO)

王者の魂 吉田龍子

1997年11月13日、熊本県八代市出身。2013年4月11日、札幌キターアリーナ大会での富沢レイ戦でデビュー。長身と規格外のパワーを生かした攻撃的な戦いぶりで先輩レスラーを次々に撃破し、デビュー2年目で南利美を破り、SPZ王者に輝くなど驚異のスピード出世でトップグループの一角に食い込む。最近ではトップグループの中で頭一つ抜きん出て、SPZ世界王者として8連続防衛を果たすなどSPZ絶対王者として君臨。得意技はスプラッシュマウンテン、ムーンサルトプレス。

テーマ曲は「赤い破片」(邦楽女性アーティスト)

リングの元気娘 渡辺智美

1998年3月23日、香川県多度津市出身。2013年7月17日、岐阜市体育館のミミ吉原戦でデビュー。軽快な飛び技と関節技で、前座戦線を盛り上げ、保科優希とは200回近く対戦し名物カードとなる。最近は吉田や永沢と組んで、メインやセミにも顔を出す機会が増えてきた。得意技はドラゴンスリーパー。

テーマ曲:第一級恋愛罪(バナナラマ)

関節キラー ハイブリッド南

1999年3月1日、高知県高知市出身。関節のヴィーナス南利美の妹。本人いわく「姉をいたぶる連中に復讐するため」SPZ入り、2014年4月10日、釧路アリーナ大会の対ミシェール滝戦でデビュー。姉譲りの関節技で実力は急上昇。ついには南利美とのタッグでEWAタッグベルト、SPZタッグベルトを戴冠。南引退後はシングルプレーヤーとして目標をSPZ王座に据えており、第9回SPZクライマックスでは準優勝を果たす。得意技はネオ・サザンクロスロック(変形STF)

テーマ曲:スピード(映画サントラ)

格闘クイーン 新咲祐希子

1999年3月2日、山口県下関市出身、2014年5月7日、高知市体育館の対渡辺智美戦でデビュー。デビュー戦を白星で飾る。AACで海外武者修行を行い、2015年11月の凱旋帰国後は吉田龍子のパートナーとして活躍。SPZタッグ王者にも輝く。トップに立つためには絶対的な必殺技が欲しいところ。得意技はパワーボム、ジャーマンスープレックス。

テーマ曲:G・T・O(シニータ)

草薙流の守護者 スイレン草薙

本名:本堂ななか。2000年9月21日、山形県寒河江市出身。幼い頃から草薙流武術を伝承体得し、15歳で草薙流武術大会で優勝。この才能に目をつけた草薙みことがSPZプロレスにスカウトし、2016年4月14日、札幌キターアリーナ大会の渡辺智美戦でデビュー。持ち前の格闘センスと草薙流兜落としを武器にめきめきと実力をつけ、伊達遥とのタッグでEWAタッグ王者、SPZタッグ王者に輝く。初出場した第9回SPZクライマックスでは上原今日子に勝つなど実力は急上昇中。得意技は草薙流兜落とし。

テーマ曲:オリエンタルクラッシュ2

突貫少女 マイトス香澄

本名:秋山香澄 2000年10月10日、東京都江戸川区出身。2016年のSPZ新人テストに合格し、8期生として入門。2016年4月14日、札幌キターアリーナ大会での南利美戦でデビュー。まだまだ実力は発展途上だが、明日のSPZを担うべく前座戦線で奮闘中。小柄な体格を持ち前の精神力でカバー。得意技はバックドロップ。

テーマ曲「恋はピンポン」(リチャード・クレイダーマン)

期待の新人 ガイア小早川

本名:小早川桃子、2002年1月16日、福島県郡山市出身。2017年のSPZ新人テストに合格し、9期生として入門。2017年4月11日、釧路市体育館での保科優希戦でデビュー。勝気な性格を生かしたファイトで前座戦線を盛り上げる。得意技はローリングソバット。

テーマ曲:sky was g-ray(C.G mix)

超新星 スターライト相羽

本名:相羽明子。2001年7月12日、SPZに第9期生として入門し、2017年7月16日、山口宇部大会の対マイトス香澄戦でデビュー。まだまだ発展途上だが投げ技のセンスは将来性を感じさせる。得意技はボディスラム。

テーマ曲:スターライトシンフォニー KOTOKO

レフェリー 井上霧子

1980年9月15日、神奈川県川崎市出身。1995年5月1日、関東女子プロレス・後楽園プラザ大会のユリシーズ島宮戦でプロレスデビュー。2004年11月に現役引退。SPZには旗揚げ前から社長秘書兼レフェリーとして参加。選手のまとめ役として貢献。試合数が選手の負傷等で減ったときのトークショー(暴露話)は好評。

レフェリー 保科優希

1992年9月3日、滋賀県大津市出身。SPZ一期生として2009年4月21日横浜赤レンガアリーナ大会で、アリッサ・サンチェス戦でデビュー。SPZ草創期から団体を前座戦線で支え、「6時半の女」と呼ばれていた。2017年6月に現役引退。引退後はレフェリーに転向し、主に前半の試合を裁く。

リングアナウンサー 今野和弘

1974年7月31日、山梨県塩山市出身。特にプロレスとの接点もなく会社員をしていた。SPZには2009年3月の設立時から社長兼リングアナウンサーとして団体を陰から支える。

リングドクター 羽山海

1987年6月21日、鹿児島県上屋久町出身。帝王大学医学部を卒業後、蝦天堂大学病院で外科医として勤務。プロレス観戦好きが好じ、「タダでプロレスが見られる」という今野社長の甘言に乗り、SPZにリングドクターとして随時参戦。得意技は注射で、選手全員から恐れられている。

10月シリーズ開始前、小川ひかるが横浜市内の某ホテルで新日本女子の専務と接触していた。いまのSPZが好調な要因は一期生とフロントの間の一体感で、小川ひかるを引き抜けばその鉄の結束が崩れるだろうと判断したのだった。

「なぜ私を引き抜こうと・・・?他に凄い選手はたくさんいると思いますが」

「新日本女子も最近はSPZに押され、関東や東北では水をあけられています。ぜひ小川選手の頭脳で新人選手を育成していただいて、引退後も同額のギャラでフロント待遇を保証します」

「お言葉はたいへんありがたいのですが」小川が言葉を返す。

「私は今野に・・・その・・恩義を感じています。ちょっと運動神経がいいだけの女のコを、新日本ドームで試合させてもらえるくらいまでに輝かせてくれた社長を。その恩義は山よりも高く、海よりも深いと感じています。したがって今野を裏切ることはできません」

きっぱり断った。

東海近畿地区を回る10月シリーズ、最終戦は新日本ドーム大会。例によって5万2千の大観衆で埋まった。

ドームのセミは小川ひかる、上原今日子、チョチョカラス対草薙みこと、伊達遥、ナスターシャ・ハンといったドリームカードの6人タッグ。悪く言えば無茶苦茶な組み合わせ。でも6人が6人とも超人気選手なので会場は沸いた。まあこのメンツならひとり格落ちの小川さんが捕まって終わりだろうと社長は結末まで考えてカードを組んだのだが、大舞台では小川選手も時に意外な力を発揮する。終盤6人が入り乱れる混戦をうまく見ていた小川が、上原に痛めつけられたナスターシャが弱っているのを見てストレッチプラムで極めにかかった。

「ギブアップ・・・」

16分19秒、ナスターシャがストレッチプラムでギブアップ。館内えええええの大歓声。やはりプロレス、とくにタッグマッチは何が起こるかわからない。この快挙に今野社長がリングに上がって小川ひかるの手を上げた。

「勝てました。社長、見てくれましたか?」

メインは吉田龍子とハイブリッド南とのSPZタイトル戦。絶対王者の吉田を止められる可能性が一番高いのがハイブリッド南だと思ってぶつけたが、内容は吉田の完勝。最後はスプラッシュマウンテンでハイブリッドをマットに沈めた。これで王者吉田は9度目の防衛に成功。

SPZ世界選手権

吉田龍子(15分くらい スプラッシュマウンテン)ハイブリッド南

第20代王者が9度目の防衛に成功

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