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2007年5月22日 (火)

第123回 小川ひかるの長旅

これまでのあらすじ

横浜のお嬢様プロレス団体SPZは2009年4月、わずか3人の選手で旗揚げした。そして10年目に入り、団体はドームを満員にするまで成長したが、8月、最後の旗揚げメンバー 小川ひかるが引退を表明した。

ーご搭乗の皆様、当機はまもなく新千歳空港に着陸いたします。座席のベルトをいまいちどご確認ください。なお、新千歳空港の気温は22度、天候は曇りです・・

羽田から千歳へ向かうスカイマークエアラインズの機内。小川ひかるは読んでいた「税理士対策問題集」を膝の上において、飛行機の外を見た。

ー北海道には良く来たけど、仕事で行くのはこれが最後。

SPZは今野社長が「食通」ということもあって、4ヶ月に1回のペースで北海道大会が開催される。

「小川さん、最後の北海道だね」

隣に座っている今野社長が小川に声をかける。

「・・ええ」

飛行機は新千歳へなめらかにランディング。駐機場までのろのろと走り、そのあと乗客が誘導される。SPZご一行も席を立って出口が向かう。空港ビルへの渡り廊下の隙間から北海道の風がそよと入ってきた。

小川ひかる引退シリーズ初戦は札幌どさんこドーム大会。

満員にはならなかったが、メインにSPZ戦を組んだこともあって4万5千の観衆をあつめた。

小川ひかるは第2試合で富沢レイと組んで9期生のガイア小早川、10期生のビーナス麗子と対戦。SPZが頻繁に興行に来る札幌のファンは小川に大声援を送る。さすがにこのクラスの若手相手だと小川のスリーパー、脇固めといったじっくりとしたレスリングが展開される。そして富沢レイにタッチ。ビーナスにダメージを与えたあと、

「小川さーん!」

1・2期生の連係攻撃、小川と富沢のダブルラリアットがビーナス麗子に決まり終了。勝負タイム11分17秒。いつものように小川はリング上で一礼して引き上げた。

札幌大会メインは新咲祐希子(王者)対永沢舞(挑戦者)のSPZ選手権。中盤までは永沢の投げ技と新咲の飛び技の一進一退の攻防となったが、先に切り札を出してきたのは永沢。驚異のJOサイクロン炸裂。

「ああーっ」

一度はカウント2.5で返した新咲だったが、続けて2発目のJOサイクロンをもらってしまいカウント3を聞いた。これで永沢舞が2年ぶりに23代目のSPZ王者に返り咲いた。

「やったね!」

コーナーに駆け上がって勝利をアピールする永沢。4期生の永沢、実力では吉田やハイブリッドに追い越されたが、大技JOサイクロンの切れ味、一発勝負での勝負強さは健在。そのあとベルトの授与。富沢レイが永沢の腰にベルトを巻いた。

____________________

SPZ世界選手権試合

永沢舞(20分くらい JOサイクロン)新咲祐希子

第22代王者が初防衛に失敗、永沢舞が第23代王者となる

____________________

全試合終了後、今野社長は小川ひかると草薙みことを誘って最後の札幌に出かけ、北海道の海鮮炉端焼きを堪能した。宗八カレイやコマイ、ジャガイモの焼いたのをほおばる。SPZのレスラーは良く食べる人が多い。

張り込んでいた写真週刊誌の記者が編集部に携帯で。引退シリーズなので今野社長と小川ひかるの「札幌お泊まり」の決定的瞬間を撮ろうと待ち伏せしていたのである。

「だめです。2時間もあいつら炉端焼き食ってます。草薙選手も一緒なのでデートっぽくないです。絵が撮れません」

「どうもご馳走様でした」「おいしかったです」

炉端焼き「3万円分」を平らげた社長と草薙小川は宿舎へ向かった。

***************************

その翌日は釧路大会。札幌を午前中に出る特急列車「スーパーおおぞら号」で釧路を目指す。長距離移動のときはリングや荷物は前夜に運んでおいて選手は列車で移動というケースがよくある。ほとんどの選手が眠りながら釧路へ向かった。

第2戦釧路大会。小川ひかる対10期生のギムレット美月が第2試合で組まれた。ギムレットのデビュー戦と同じカード。ギムレット美月も4ヶ月の成長を見せ、良く攻めたが、小川は終始余裕で技を受けていた。そしてギムレットが攻め疲れを見せてきたころ・・

「もう、逃げられないわよ!」

リング中央でSTF、3分ほど決まってギムレットはぐったりしていった。

ー痛い。でも小川さんとやるのはこれが最後、絶対、ギブアップはしないっ・・

ギムレット、懸命にもがいて足のフックを外し、そのまま匍匐前進でロープに逃れた。

「ゼェ、ゼェ・・・」

ギムレットが弱っているのを見た小川は走りこんで・・・

ジャンプしてのショルダータックル。これでギムレットを倒しがっちりと片エビで押さえ込む。これでカウント3が入った。小川が手堅く勝利。勝負タイム14分14秒。

「みなさん、応援ありがとうございます」

**********************

その翌日はオフ。SPZ選手は気の合う仲間同士で分かれて北海道観光。小川ひかると伊達遥は上原今日子の運転するレンタカーで阿寒湖を観光した。

翌々日は一気に飛行機で大阪へ飛んで、なにわパワフルドームでの第3戦。満員にはならなかったが8割の入り。

セミファイナルは小川ひかる・草薙みこと・伊達遥対吉田龍子・新咲祐希子・渡辺智美の6人タッグ。大歓声のオガワコールに応えて小川は先発を買って出た。それを見た青コーナー側。

「・・・あたしが出るよ。」

「団体内最強」吉田龍子と相対。場内どええええの声。いくらなんでも相手にならないのではないか。

カンッ。

「うりゃああああ」「せいっ」

ゴングと同時にラリアットを狙って突っ込んできた吉田を良く見て小川、脇固めに切り返す。

ドオオオオオオオオ!

これだけで館内大盛り上がり。そして深追いせずすぐさま伊達にタッチ。これが小川クオリティ。10分過ぎに続いて新咲も小川と対決。吉田も新咲も最初に苦しんだ壁が小川ひかるだった。新咲のキャプチュードが小川に炸裂。

「ううっ・・・」

それでも脇固めで懸命に反撃して草薙にタッチ。

しかし吉田龍子は相変わらず強い。この日も草薙を蹴散らし、残るは伊達の状況を作っておいて、キャプチュード2連発で伊達を追い込んでから、

「ゆっこー」

新咲を呼び込んでの合体パワーボム!

カットに入るべき草薙小川は場外でのびている。当然カウント3が入った。勝負タイム16分23秒。

大阪大会のメインは「集客のために組んだ」ハイブリッド南対永沢舞のノンタイトル戦特別試合。ハイブリッド南がなんとSPZ王者の永沢をネオ・サザンクロスロックで仕留めた。ノンタイトル戦なのでベルトは移動しないが、ハイブリッドの強さが印象に残った。

「大阪はふぐが美味しいのですよ」

全試合終了後、今野社長は小川、草薙、新人のギムレット美月を誘って梅田のふぐ料理店。ふく刺しを大量に摂取した。

*********************

第4戦、広島は若鯉球場。選手一行は午前中の新幹線で広島へ移動。

3万人収容の若鯉球場。テレビCMと「SPZフィーバー広島店店長」沢崎光が前売りチケットを売りまくった効果で、はじめてこの会場が超満員札止めになった。

小川ひかるはセミ前で草薙みこと、伊達遥と組んで永沢舞、上原今日子、富沢レイと対戦。先発を買って出た小川だったが永沢のフロントスープレックス、ノーザンを立て続けに食らってしまい、たまらず伊達にスイッチ。

そのあとは伊達草薙が踏んばり、熱戦が展開されたが、終盤は伊達が捕まってしまい、永沢のJOサイクロンを食らったあとに上原にキャプチュード、フェイスクラッシャーと畳み込まれて3カウントを奪われた。

この大会のセミは吉田龍子対ナターシャ・ハン。

「うりゃあああああ!」

吉田が手堅く攻めて、最後は豪快にスプラッシュマウンテンで勝利。

メインはシングルマッチ特別試合、ハイブリッド南対新咲祐希子。2日連続のハードな試合となったハイブリッドだが、リング中央でネオ・サザンクロスロックをがっちり決めて勝利。先シリーズベルトを奪われたリベンジを果たした。

その翌日、第5戦は九州ドーム。SPZ選手一行は早い時間の新幹線で博多入り。

九州ドーム、55000名収容の会場は40708名、7割強の入り。小川、きょう明日は草薙みこと、小川ひかるの名タッグ「ザイテングラート」での登場である。このコンビはSPZタッグを何度も奪取した名コンビ。しかも小川がつかまって草薙が決めるというドラマチックな勝ち方の出来るコンビであった。

セミ前で小川ひかる、草薙みこと対ハイブリッド南、マイトス香澄戦。だが小川の出番は冒頭のちょっとだけで、空気を読まないサイボーグ、ハイブリッド南があっさりネオ・サザンクロスロックで草薙からギブアップを奪った。勝負タイム7分。マイトス香澄、出番なし。

九州ドーム、セミは吉田龍子対ドリュー・クライ(吉田が暴れて完勝)メインはナターシャ・ハン対スイレン草薙のEWAタイトル戦。スイレン草薙も進境著しいものがあるのだが、この日は必殺STFでナターシャがベルトを守った。

その夜。

「博多といえば中州でしょう」

今野社長と小川ひかる、草薙みことの3人は中州で九州ラーメンをすすった。

*****************

その翌日は移動日。名古屋まで新幹線で4時間かけて移動。

いよいよラスト3。名古屋しゃちほこドーム大会は超満員の観衆で埋まった。横スペのチケットが早い段階で完売してしまったので、首都圏からの観戦組もけっこういたらしい。

セミ前で小川ひかる、草薙みこと対伊達遥、スイレン草薙。

「勝たせて頂きます」

スイレンの草薙流兜落としが草薙に決まる。もうスイレンの方が実力が上であるかに思われる。そして出てきた小川には、伊達が殺人ヒザ魚雷!同期だろうと容赦なし。

「ぐあああっ!」

それでもピンチと見るやパートナーにタッチする、細かいタッチワークで的を絞らせなかった草薙小川だが、22分過ぎー

「ぐふっ!」

小川が伊達のこの日3発目の殺人ヒザ魚雷をもらってしまい悶絶。動けないまま3カウントを聞いた。勝負タイム22分56秒。

「うっ、くーっ」

小川が腹を押さえながら若手の肩を借りて退場。控室の床にぶっ倒れた。

名古屋大会セミは永沢舞対上原今日子。実力者同士の対決となったが永沢がSPZ王者の意地を見せてキャプチュードで勝利。

メインは吉田龍子対新咲祐希子。SPZ選手権の前王者と元王者の激突となったがスプラッシュマウンテンで吉田が勝利した。

翌日カウントダウン2。SPZ一行は移動バスに乗って中央高速を北へ。中津川から恵那山トンネルを抜けて長野県に入る。伊那谷のなかを中央アルプスの山々を望みながら移動バスは快走し、岡谷のジャンクションを過ぎてまた長いトンネルを抜けると、小川ひかるの故郷、松本盆地へと入ってゆく。

シリーズ第7戦の松本大会。3000人規模の会場なのでチケットはあっという間に予約段階で完売。小川はセミファイナルでタッグパートナー、草薙みこととシングルマッチで対戦。

・・・今できるすべてを、小川さんにぶつけます・・・

長年タッグを組んできた両者の対戦。ジワジワとグラウンドで攻め込んだのは草薙のほうであった。最後はスタミナ切れを起こした小川をサソリ固めを長々かけて弱らせて・・・

小川がふらふらと起き上がってくるところをー

「バシッ!」

草薙、強烈な逆水平チョップ一撃で3カウントを奪取した。10分少々のあまりいい試合ではなかったが、それでも松本のファンは暖かい拍手を送った。

のこり、あとひとつ・・・

小川ひかるは控え室でシューズの紐を解いた。

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