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2007年6月30日 (土)

第151回 スイレン草薙、頂点へ

12年目7月、

サマースターナイツシリーズ最終戦は新日本ドーム大会。マイトス香澄と新咲祐希子は負傷欠場。
ドーム大会セミファイナルは吉田龍子、永沢舞のコンビにEWA最強タッグ、ナターシャ・ハン、ドリュークライ組。
館内のナガサワコールに乗せられた永沢、強引なJOサイクロンでナターシャを意識不明に追いやって・・・
「龍子さん、あとよろしくぅ!」
孤立したドリューを吉田が追い込み、最後は豪快なスプラッシュマウンテンでドリューを仕留めた。

ドーム大会メインイベントはハイブリッド南対スイレン草薙のSPZ選手権。ハイブリッドの長期政権が続いているが、吉田スイレン新咲のトップどころをあてていくしかないカード編成。

しかしこの試合はスイレンが攻めに攻めた。アームホイップ、フロントスープレックスと得意の投げ技乱発でハイブリッドにペースを握らせない。
しかしハイブリッドもニーリフト、踵落としといった打撃技で反撃に転じ、徐々にスイレンを追い込む。しかしスイレン、ハイブリッドがトドメを狙ったハイキックをうまく水面蹴りで切り返し、

―勝たせて頂きます!

スイレン草薙の草薙流兜落とし発動。
しかしハイブリッドも王者の意地か、カウント2.9、ギリギリで返す。しかしスイレンは落ち着いて、弱ったハイブリッドを捉えて、ノーザンライトスープレックス。

ワン、トゥ、スリー。井上レフェリーの手がマットを3つ叩く。

26分45秒、これで試合は終わった。
「やっと・・・ベルトを・・・獲れました」
スイレン草薙19歳、ようやく団体最高峰のSPZベルトを戴冠。

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SPZ世界選手権

スイレン草薙(26分45秒、ノーザンライトSH)ハイブリッド南

スイレン草薙が第29代王者となる

_____________________

「くっ・・・納得いかないわ」

ハイブリッド南の連続防衛は7で途絶えた。

そして今年も8月、真夏の地獄、SPZクライマックスが始まる・・・

**************************

12年目8月
恒例の「真夏の決戦」SPZクライマックスの季節。8月3日の夜9時、例年通りSPZ横浜本社2階にある閉店後のメイド喫茶「あばしり」を借り切って記者会見が行われた。

■「生ける格闘伝説」吉田龍子(22)▲

第8回・第9回・第10回、第11回大会優勝、7年連続7回目の出場
 「全員倒して、優勝する、それだけ。」

■「最強戦士・前SPZ世界王者」ハイブリッド南(21)○

5年連続5回目の出場。
「今年も完璧な闘いを見せるわ」

■「生ける大食い伝説」新咲祐希子(21)×

4年連続4回目の出場
「目標は優勝。賞金でおいしいものを食べに行きます」

■「新・最強巫女伝説 SPZ世界王者」スイレン草薙(19)◎

4年連続4回目の出場
「修行の成果を見せないといけませんね」
以下は予選会勝ち上がり組。

■「七色のスープレックス」永沢舞(23) 

7年連続7回目の出場(予選会1位通過)
 「応援していただいているファンの皆さんの期待に応えられるよう、頑張ります」

■「シューティングスター」スターライト相羽(18)

2年連続2回目の出場(予選会2位通過)
「特訓の成果を見せます」

■「一撃必殺」ビーナス麗子(17)

初出場 予選会3位通過
「初めてなんで緊張していますが、ひとりでも大物食いをしたいです」

■菊池理宇(16)初出場 予選会4位通過

「あ、う、えうおえ・・・」

今年の注目はなんといっても吉田龍子の金字塔5連覇がなるかどうかといったところ。かつての絶対王者・吉田も最近ではハイブリッド相手には分が悪くなってきており、京スポ新聞は本命スイレン、対抗ハイブリッド、大穴吉田龍子などと報じていた。

(怒った吉田龍子が京スポ新聞を引き裂き、若林記者に手加減してスリーパーを仕掛けたのは言うまでもない)

菊地理宇はガチガチに緊張していた。ギムレット美月が予選会欠場した影響もあって、予選会で4位に食い込んでしまった。

「あ、あたしが出ていいんですか???」
「あなたは出る権利を自力でつかんだのよ。だから覚悟して戦いなさい、適当に相手してあげるから」
ハイブリッド南が諭す。

「菊池ぃ、Sクラに出られないレスラーもいっぱいいるけどよ、2年目から出られるなんて運がいいヤローだ。正直言って結果は厳しいと思うけど、精一杯戦えるよう開幕まで毎日、特訓だ!!」

吉田コーチはもっと容赦がない。

初戦の沖縄大会、そのあと2戦目の九州ドームから地獄のリーグ戦が開始。

○V麗子(2点 ジャンピングニーからの片エビ固め12.33)菊池(0点)
「菊池、優勝だ!!」
心ない?ファンからの声援が飛ぶ。

やはり菊池がガチガチ。そこを突いてビーナス麗子が殴りかかる。顔面を狙っての掌底。これで菊池流血。やはりビーナス麗子は「表面上アイドルレスラーの体裁をとっているが内面はかなりのシューター」である。

「ガンガンいっちゃうぞー」
ビーナス麗子の裏投げ、カウント2.8で返す菊池、キャプチュード、菊池しつこくカウント2.9で返す。だが次のジャンピングニーで菊池は戦闘不能になってしまった。

○スイレン草薙(2点、バックドロップからの片エビ固め22.37)新咲(0点)
現在のSPZ4強、最初の直接対決が組まれた。やはり投げ技ならスイレンに一日の長がある。STOまで繰り出して、SPZ王者の風格が出てきたスイレンが新咲を追い込んでいって、2発目のバックドロップ、これでフラフラになった新咲、懸命にネックブリーカーなどで反撃するが、3発目のバックドロップで勝負あり。スイレンが手堅く白星発進。

○吉田(2点、スプラッシュマウンテン 16.53)S相羽(0点)
「行って来ます!」
気合を入れながら花道を走って入場したスターライト相羽だが、吉田の「いきなりラリアット」の洗礼。吉田の牙城に懸命に食らいついて行くが、強烈なラリアットを4発もらってS相羽の集中力が切れた。そこをすかさず突いた吉田龍子DDT。あとはスターライト相羽、いいようにアキレス腱固めでいたぶられて・・
「行くぞ、フィニッシュはこれだっ!」
スプラッシュマウンテン!
しかし吉田龍子の必殺ムーブをスターライト相羽カウント2,9で返す。場内大盛り上がり。しかし吉田はまったく容赦なく、
ガッ!
ステップキックで相羽の意識を断ち切ってもう一度、
「遊びじゃないんだよ!」
2度目のスプラッシュマウンテン!これで相羽は動けなくなってカウント3を聞いた。起き上がれないスターライト。担架で控室に運ばれた。

○H南(2点、サソリ固め14.17)永沢(0点)
地元でメインの永沢に大声援が送られた。この声援に乗せられた永沢がアームホイップ乱発するなど気持ちよくファイト。だがこれはハイブリッドの戦法。ある程度受けきった上でスリーパーで反撃。これで動きの鈍った永沢にジャンピングニー2連発。あっという間に形勢逆転。そしてリング中央でサソリ固め。それなりに耐えた永沢だったがついにギブアップ。

****************************

翌日はなにわパワフルドーム大会。5万人の大観衆で埋まった。

○永沢(2点、JOサイクロン 8.17)菊池(0点)
永沢がしばらく菊池とそれなりの攻防を展開して、菊池の息が切れたのを見計らってJOサイクロン。1発目はカウント2.5で返したのだが同じ技をもう一度食らって万事休す。永沢が菊池を潰した。

○スイレン草薙(4点、バックドロップからの片エビ固め 9.08)V麗子(2点)
落ち着いてファイトしたスイレン、最後はバックドロップで完勝。

○吉田(4点、シューティングスタープレスからの体固め 19.32)新咲(0点)
―龍子さんに勝つ。
すでに1敗してあとのない新咲がハッスルして吉田撃破を狙っていった。吉田もラリアットを放つのだが新咲も痛がるそぶりを見せずラリアットで逆襲。新咲のジャンピングニー、ネックブリーカー、吉田のキャプチュード、ノーザンともてる技を出し尽くす死闘が展開。最後は吉田がコーナー最上段から久々に飛んでバック転宙返り。
めったに見せない秘技、シューティングスタープレスに大阪のファンは驚き。これで試合は終わった。

H南(4点、踵落としからの片エビ固め 13.14)S相羽(0点)
ハイブリッド南のグラウンドテクニックに相羽きりきり舞い。しかし相羽もバックドロップやタイガースープレックスで見せ場を作る、しかしー
ハイブリッドのかかと落とし炸裂。これで相羽の視界がブラックアウト。気づいたときには控え室で転がっていた。

「・・・なんで、ボク、勝てないんだろう」

1日の移動日をおいて一行は北海道へわたり、釧路大会。

(長くなるので続きます)

2007年6月29日 (金)

第150回「大舞台を目指す者たち」

レッスルエンジェルスサバイバー 

プレイ日誌のようなもの

「輝くエッセンシャルR」

(そうとう脳内妄想はいってます)

第149回目までのあらすじ

時に西暦2009年、IT企業エスピーグループは女子プロレス団体経営をやろうと思いつき、横浜戸塚に「SPZ(スーパースターズプロレスリングゼット)」という名の新団体を立ち上げ、社長には今野和弘(35)が任命された。それから10年が過ぎ、SPZはドーム興行当たり前のビッグな団体へ成長したが、今野社長は「もう団体経営疲れた。タダの人になって小川さんと結婚して平和な生活がしたい」などと妄言を吐いて社長職を辞任した。

あとに残された井上霧子ほか数名。新日本女子プロレスとの興行戦争はまだまだ続くというのに、どうするどうなるSPZ。

12年目6月

ギムレット美月は右ひじの負傷で欠場。恒例の「SPZクライマックス予選会」が行われた。出場選手は以下の8名。

永沢舞(4期:前回本大会6点)

スターライト相羽(9期:前回本大会2点)

マイトス香澄(8期:前回本大会0点)

ガイア小早川(9期)

ビーナス麗子(10期)

菊池理宇(11期)

ボンバー来島(11期)

渡辺智美(5期)

初戦の若鯉球場からリーグ戦がスタート、上位4名に本大会の出場権が与えられる。

渡辺(2点、逆片エビ固め)菊池(0点)

渡辺がベテランらしい落ち着いた試合運び。最後は逆片エビ固めで菊池からギブアップを奪った。

V麗子(2点、キャプチュード)B来島(0点)

マスコミの間では予選通過4枠のうち2名は永沢舞と凱旋帰国のS相羽で固いだろうという読みであった。のこり2つの椅子を6人で争う図式らしい。最近頭角を現しつつあるビーナス麗子がボンバーを14分の熱戦の末、キャプチュードで退けた。

S相羽(2点、タイガードライバー)G小早川(0点)

スターライト相羽、EWAから戻ってきて2度目の凱旋試合。イギリスマットEWAでもまれてきただけあって投げ技のキレが昨年とは段違い。バックドロップ、キャプチュードで弱らせておいてのタイガードライバーで完勝。

「相羽ちゃん強くなってるわね、これなら次期エースを任せられるかも・・・」

永沢(2点、キャプチュード)マイトス香澄(0点)

永沢舞、表には出さないものの内心は忸怩たるものがあった。元SPZ王者が「予選会」で若手中堅選手と7連戦・・・

「む・・・これでどうだー!」

マイトスの必殺技「絶望2000」(変形ジャーマン)が決まる。が、永沢は余裕で返して、

「はーあ!」

キャプチュード、これで試合は終わった。

広島大会メインはハイブリッド南対吉田龍子のSPZ選手権。

「そろそろあたしのベルトを返してもらおうか」

吉田龍子がラリアットを乱発してハイブリッドを攻め込んでゆく。腕を振らずに軽く当てるのが吉田流のラリアットである。

ドゴン!

吉田のプラズマサンダーボムがハイブリッドに決まる。

カウント2.5で返すハイブリッド。

しかし、ハイブリッドは一発逆転を狙っていた。

「この技に耐えられるかしら?」

アームホイップで転ばせてからネオ・サザンクロスロック。

・・・抜けられないっ!

ロープはあまりにも遠く、もがけばもがくほど極まってゆく。

「ぐあああああ・・・」

しばらく堪えた吉田だったがついにギブアップ。最後に大どんでん返し。勝負タイム20分51秒。ハイブリッド南はこれで7度目の防衛に成功。いよいよ長期政権の様相を帯びてきた。

___________________

SPZ世界選手権(60分1本勝負)

ハイブリッド南(20分51秒、ネオ・サザンクロスロック)吉田龍子

第28代王者が7度目の防衛に成功

___________________

第2戦浜松大会、予選会リーグは続く。

V麗子(4点、ジャンピングニーからの片エビ固め)菊池(0点)

ビーナス麗子が得意の打撃を的確に決めて2勝目。

B来島(2点、ボディスラムからの片エビ固め)G小早川(0点)

体格、パワーに勝るボンバーが攻め立て、先輩のガイア小早川を破り初日を出した。

S相羽(4点、タイガードライバー)M香澄(0点)

スターライト相羽強い。海外で鍛えなおしてきただけあって動きにも自信があふれている。この日もSPZタッグ王者のマイトス香澄を9分弱で軽く一蹴。

「よしっ!ボク勝ちました!」

永沢(4点、ジャンピングニーからの片エビ固め)渡辺(2点)

トップ戦線をずっと突っ走ってきた4期生の永沢と、前座で観客を楽しませる役をずっと担ってきた5期生の渡辺。おそらくシングル対決は初めてではないかと思われる。だがまだまだ永沢の投げ技は健在。ガンガン投げ飛ばしたあとジャンピングニーで9分強で渡辺を退けた。

第3戦は三重大会。

菊池(2点、シャイニングウィザードからの片エビ固め)G小早川(0点)

菊池が先輩のガイア越え達成。ミサイルキックから一気の反撃であった。

M香澄(2点、絶望2000)B来島(2点)

「クライヤガレ!」

ボンバー来島の強烈な頭突きがマイトス香澄を弱らせてゆく。そして覚えたてのパワーボム。しかしマイトスも場外戦に誘い込んで、なんとマットをはがしての絶望2000を繰り出してボンバーを半失神に追い込む。最後は2発目の絶望2000がリング上で決まり、ボンバーは返す事ができなかった。

S相羽(6点、ニーリフトからの片エビ固め)渡辺(2点)

こう言っては何だが、戦う前から勝敗は見えていた。日の出の勢いのS相羽が渡辺を退けた。最後はニーリフト。相羽マットに仁王立ち。

永沢(6点、キャプチュード)V麗子(4点)

4期生の永沢が優勢に試合を運ぶ。終盤、ビーナス麗子もハイキックやギロチンドロップ、裏投げで見せ場を作ったがそれまでで、最後はドラゴンカベルで弱らせてのキャプチュードで勝利。

「バッチリ決まりました、完璧カンペキ」

それでもビーナスを仕留めるのに16分48秒もかかっているあたり、永沢に往年の力はないことが感じられた。

第4戦は岐阜大会。

菊池(4点、ミサイルキックからの片エビ固め)マイトス(2点)

なんと11期生の菊池がマイトスに勝ってしまった。最後のミサイルキックがモロに顔面に入ってしまったようだ。マイトス香澄3敗目。タッグ王者が予選敗退してしまうのか?

B来島(4点、ショルダータックルからの片エビ固め)渡辺(2点)

ボンバー来島がパワーを生かして優位に試合を進め、大先輩の渡辺を最後はタックルで吹っ飛ばして3カウント奪取。

S相羽(8点、タイガードライバー)V麗子(4点)

ビーナス麗子の掌底で流血するアクシデントはあったものの、落ち着いて相羽がビーナスを仕留めた。

永沢(8点、JOサイクロン)G小早川(0点)

永沢がいつも通り投げまくって、JOサイクロンで完勝。

翌日第5戦は滋賀大会。

マイトス(4点、右キックからの片エビ固め)渡辺(2点)

マイトス香澄が手堅く勝利。最後は渡辺のドラゴンスクリュー狙いを鮮やかなキックで切り返してカウント3.

G小早川(2点、裏拳からの片エビ固め)V麗子(4点)

ガイア小早川が耐えて耐えて、最後は強烈な裏拳2連発でリーグ戦初勝利をスコア。

S相羽(10点、キャプチュード)菊池(4点)

スターライト相羽が手堅く勝ち点2を加算。最後は怒涛のキャプチュード3連発。菊池の意識を闇に落とした。相羽がこれで予選会通過一番乗り。

永沢(10点、キャプチュード)B来島(4点)

さすがにこの対戦は戦いにおける年季が違う。永沢があっさり来島をキャプチュードで仕留めて予選会通過。

第6戦和歌山大会では残り2つの椅子をめぐって壮絶な星の潰し合いとなった・・・

M香澄(6点、フライングボディプレスからの体固め)G小早川(2点)

積極的に攻めたガイア小早川だったが、絶望2000一発で形勢逆転。頭を打ってマット上を転げまわる小早川。その上からボディプレスで圧殺。マイトスが3勝目をゲットした。

V麗子(6点、キャプチュード)渡辺(2点)

ビーナス麗子も3勝目。

S相羽(12点、タイガードライバー)B来島(4点)

スターライト相羽が完勝。

永沢(12点、ネックブリーカーからの片エビ固め)菊池(4点)

こちらも永沢舞がそこそこ菊池の技を受けきった上で快勝。これで6連勝。

第7戦は長野大会。

V麗子(8点、ハイキックからの片エビ固め)M香澄(6点)

ビーナス麗子予選会3位通過決定。最後はスピードあるハイキックでマイトスを仕留めた。

G小早川(4点、ミサイルキックからの片エビ固め)渡辺(2点)

ガイア小早川が渡辺に勝利。

菊池(6点、シャイニングウィザードからの片エビ固め)B来島(4点)

「はぁぁーっ!」

菊池が無我夢中でボンバー来島にシャイニングウィザード。これを来島返せず3カウントが入った。

菊池が15分の熱闘、同期対決を制して3勝目。これで本大会出場4人目の椅子は菊池理宇とマイトス香澄が6点で並んだが、両者間の直接対決で勝っている菊池が規定により予選会突破を決めた。菊池2年目で本大会出場権を得てしまう強運?実力?、

「えっ、あ、あたしで・・・いいんですか?」

永沢(14点、JOサイクロン)S相羽(12点)

全勝同士の対決。どちらが予選会1位通過という以前に、凱旋帰国した相羽がトップ戦線に絡むにはまず永沢に勝たないといけない。だが永沢にも元SPZ王者の意地がある。相羽も懸命にくらいついていったが、永沢には伝家の宝刀がある。

「みんなー、必殺技だよ、必・殺・技」

JOサイクロン発動。これで試合が終わった。それでも22分33秒の好勝負が展開された。

「くぁ・・勝てなかったか・・・」

スターライト相羽がトップにのし上がるにはまだまだ苦難の道のりが控えているのか。

    **********************

最終戦は埼玉ドーム大会。メインに組まれたのはSPZタッグ選手権。ハイブリッド南、マイトス香澄対永沢舞、スターライト相羽組。ハイブリッドのパートナーが微妙なので、挑戦者組にもチャンスがあると思われた。

だがー

ハイブリッド南がほとんど1人でやっつけた。以上。

____________________

SPZ世界タッグ選手権試合

ハイブリッド南○、マイトス香澄(39分53秒、ミサイルキックからの片エビ固め)永沢舞、スターライト相羽×

第18代王者が2度目の防衛に成功

_____________________

    ・・化け物だ、この人。

スターライト相羽はそう感じた。永沢と代わる代わる攻めても、やすやすと受けきって反撃してくる。最後は強烈なぶっこ抜きジャーマンで叩きつけられ、弱ったところをトドメのミサイルキックで終了。39分53秒の激闘の末敗れた。

2007年6月28日 (木)

SPZスター選手列伝 011 上原今日子

SPZスター選手列伝

従業員コード:011 「マットの覇者」 

上原今日子

1995年12月31日、沖縄県那覇市出身、第3回新人テストに合格しSPZ三期生となる。2011年5月11日、青森スポツァルト黒石大会の保科優希戦でデビュー。琉球空手の経験を生かしたローリングソバットなどの蹴り技を武器に着々とのし上がり、トップグループの一角に食い込み、AACタッグ、AACジュニア王座、そして団体最強のSPZ王座を戴冠。練習熱心な性格で、打倒伊達遥に執念を燃やし、2020年8月のSPZクライマックスでついに伊達越えを果たす。得意技はフライングニールキック、フェイスクラッシャー。

新日本ドーム大会でのビーナス麗子戦で引退。稼動月数108ヶ月、出場試合数(概算)784試合。

タイトル歴:SPZ世界選手権 第15代

SPZ世界タッグ選手権 第17代(パートナーは吉田龍子)

AAC世界ジュニア選手権

AAC世界タッグ選手権(パートナーは伊達遥)

第8回・第9回SPZタッグリーグ優勝(パートナーはハイブリッド南)

写真集 2冊

社長コメント:SPZのリング上を熱く駆け抜けた名選手だった。フェイスクラッシャーやパワーボム、キャプチュードと幅広いジャンルの大技を持っており、格下相手には完勝を収めるが、追い込まれるともろい面があり、草薙、伊達、南、吉田といった化け物的トップどころには勝率が極端に悪かった。それがファンのハートをつかんで人気面では団体ナンバーワンになったのだからこの商売はわからない。

上原対伊達戦は見るものの胸を打った。いくら上原が攻めても殺人ヒザ魚雷一発で流れを変えてしまう伊達。試合後はマットに倒れ伏す上原。けっきょく伊達が衰えだすまで上原は勝てなかった。それでも1回だけSPZベルトを戴冠したので満足いくレスラー生活が送れたのではないだろうか。引退後はボンバー来島のコーチ兼団体雑用係として忙しい日々を送っている。実力者だが挫折も数多く味わった人だけに、後進の育成もうまくやってくれるであろう。

2007年6月27日 (水)

SPZスター選手列伝 010 富沢レイ

SPZスター選手列伝

従業員コード:010 「ファイヤーソウル」

 富沢レイ

1994年5月10日、千葉県八千代市出身。柔道などで身体を鍛える。SPZには二期生としてスカウトされ、2010年8月8日、新潟・柿崎アリーナ大会の草薙みこと戦でデビュー。主に前座戦線で会場の盛り上げ役を担うが、永沢舞のパートナーとして時折セミやメインにも顔を出し、SPZタッグ王者にも輝く。

2019年7月20日、新日本ドーム大会でのマイトス香澄戦で引退。稼動月数108ヶ月、出場試合数(概算)760試合。

タイトル歴:SPZタッグ選手権(第8代、第11代、第14代王者、パートナーは永沢舞)

写真集 4冊

社長コメント:SPZクライマックスには一度も出られなかったあまり強い選手ではなかったが、抜群のルックスと濃いキャラクターで、初期のSPZを支えた名選手だった。永沢舞のタッグパートナーに直感で起用したが、バランスの取れたいいタッグチームだったと思う。やられる先輩を救おうと永沢がシングルのとき以上のファイトを展開するので沸いた。シングルマッチでは前座起用が多かったが、小川と並んでメインも第1試合もできる得がたい存在だった。引退後はSPZフィーバー(グッズショップ)千葉店店長として第二の人生を送っていて、首都圏ドーム興行のさいには販売の手伝いでよく見かける。

2007年6月26日 (火)

SPZスター選手列伝 009 草薙みこと

SPZスター選手列伝

従業員コード:009 「最強巫女伝説」

草薙みこと

1994年9月21日、山形県朝日町出身。幼い頃から草薙神社の巫女として修行を積み、その傍ら古武術に通じる草薙流体術を伝承体得した。この素質が井上霧子の目にとまり、SPZにスカウトされ2期生として入団。2010年4月27日、富山市体育館で小川ひかる戦でデビューし、プロ初戦を勝利で飾る。物静かなタイプだが、リング上では強力な投げ技を次々と繰り出す派手なファイトスタイル。また、ミミ吉原から関節技を教わるなど研究熱心な一面もあった。瞬く間に一期生に追いつきトップ争いに食い込み、SPZ王者にも3度輝く。小川ひかるとのタッグでSPZタッグ王者も戴冠し、SPZクライマックスでは3連覇を達成するなどSPZの女帝として君臨した。

2019年3月9日、さいたまドームでの吉田龍子戦で引退。稼動月数108ヶ月、推定出場試合数792試合。

タイトル歴:

SPZ世界選手権(第2代、5代、13代王者)

AAC世界選手権

SPZ世界タッグ(第2代、7代、10代王者、パートナーは小川ひかる)

AAC世界タッグ(パートナーは沢崎光、小川ひかる)

第5回・6回・7回 SPZクライマックス優勝

第3回SPZタッグリーグ戦優勝(パートナーは沢崎光)

第4回SPZタッグリーグ戦優勝(パートナーは永沢舞)

第5回・6回SPZタッグリーグ優勝(パートナーは小川ひかる)

写真集1冊

社長コメント:クールな表面からはうかがい知れないが、内面は相当情熱的な人であった。全盛期はシングルタッグ含めて勝率がものすごく高く、伊達遥・南を含めた3大化け物の中ではもっとも安定感があった。ある程度追い込まれても草薙流兜落としをはじめとする投げまくり攻勢で勝ってしまう。タッグマッチでもその強さは際立っていて、タッグリーグ4連覇という記録も持っている。小川ひかるとのタッグは名タッグだった。小川がやられて草薙が決めるという展開は見るものの胸を打ったと思う。

2007年6月25日 (月)

SPZスター選手列伝 008 ミシェール滝

SPZスター選手列伝

従業員コード:008 「戦う舞台女優」

ミシェール滝

本名、滝香津美。1990年7月15日、兵庫県神戸市出身、2006年5月15日、ワールド女子プロレスのリングで、対ミミ吉原戦でデビュー。ワールド女子崩壊後はフリーで各団体に参戦する傍ら舞台女優としても活躍。SPZにはミミ吉原に誘われて旗揚げ直後の2009年7月から参戦。スピーディーな動きと足腰のバネを利した飛び技が得意で、ムーンサルトプレスなども使いこなす。2014年4月21日、日本武闘館大会での保科優希戦で引退。

社長からコメント:新人だらけの団体がAACの外人相手に一方的に叩きのめされるのを見かねてミミさんのつてを頼りフリー選手を獲得した。若手の壁として一期生二期生を育てていただいた。SPZにムーンサルトを持ち込んだのはこの選手。永沢舞や吉田龍子はこの選手からムーンサルトを盗んだらしい。団体の発展に尽力し、ようやく九段下玉ねぎにまで進出したところでそれを見届けるように引退、舞台女優に専念することになった。

2007年6月24日 (日)

SPZスター選手列伝 007 伊達遥

SPZスター選手列伝

従業員コード:007 「殺人ヒザ魚雷」

伊達遥

1993年10月23日、宮崎県都城市出身。SPZの一期生として旗揚げ直後から参加し、2009年6月20日根室市体育館、アリッサ・サンチェス戦でデビュー。長身を生かした蹴り技の威力はすさまじく、とくに長い足を生かした膝蹴りは多くの選手が「身体を剣で串刺しにされるようだ」と評され、ついには「殺人ヒザ魚雷」と呼ばれるに至った。人見知りが激しく無口な性格だが、リング上では熱い戦いを繰り広げる。秋得意技は殺人ヒザ魚雷、SPZキック。

2019年2月26日、横浜スペシャルホール大会での上原今日子戦で引退。稼動月数:117ヶ月、出場試合数(概算):864試合

タイトル歴:

SPZ世界選手権: 初代,第4代,第6代,第9代,第12代,第16代王者

AAC世界選手権

SPZ世界タッグ:第9代、第12代王者(パートナーはスイレン草薙)

AAC世界タッグ:(パートナーは秋山美姫、上原今日子)

EWA世界タッグ:(パートナーはスイレン草薙)

第4回SPZクライマックス優勝

写真集3冊

社長コメント:

化け物だった。レスラーの凄みを味わわせてくれた選手。殺人ヒザ魚雷で多くの対戦相手を屠ってきた。苦悶する相手レスラーの姿、仁王立ちする伊達の姿に会場のファンは時に凍りつくこともあったほどの破壊力。そしてSPZキック。相手の頭を的確に打ちぬく。この2大必殺技でSPZ世界王者にはつごう6回も輝いた。4-5年目のSPZは南、伊達、草薙の3大怪獣がしのぎを削り、見ているほうもワクワクハラハラする凄い試合を提供できたと思う。それがSPZをドームへ進出できた原動力の一つだったと思う。

2007年6月23日 (土)

SPZスター選手列伝 006 秋山美姫

SPZスター選手列伝

従業員コード:006 「万能ファイター」

秋山美姫

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「とっとと、参ったしろ・・・っ」

秋山が気迫のこもった表情で絞り上げ、小川のわき腹にするどい痛みが走る。もうこうなっては小川は最後の言葉を吐くしかなかった。

「ギブアップ、します」

「9分17秒、コブラツイストで、秋山美姫選手の勝ち」

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 1993年10月8日、鳥取県米子市出身。SPZの一期生として第2回新人テストに沢崎と同時合格し、2009年5月15日、名古屋市体育館でのアリッサ・サンチェス戦でデビュー。投げ技も関節技もバランスよくこなす器用なファイトを見せ、AACジュニア、AAC世界王座、AACタッグ、SPZタッグ王座を戴冠。同時入門の沢崎光とのタッグで活躍。得意技はDDT、ドラゴンカベルナリア。2018年12月23日、さいたまドーム大会での小川ひかる戦で引退。稼動月数104ヶ月、出場試合数(推定)752試合。

タイトル歴:AACジュニア王座、AAC世界王座、

AACタッグ王座(パートナーは伊達遥、沢崎光)、

SPZタッグ王座(初代王者・第4代王者・第6代王者、パートナーは沢崎光)

社長から一言:旗揚げ戦が終わってすぐの新人テストで秋山さん沢崎さんの2名を採用したが、この2人がいなかったらSPZはどうなっていたかわからない。関節技絞め技の実力はかなりのものがあったが、南と差別化するためか飛び技立ち技も一通りこなしていた名選手だった

。秋山沢崎は秋山の試合の流れ作りと沢崎の粘りが相乗効果となって、1+1が10くらいになった名タッグチームだったと思う。ドラゴンカベルナリアを最初にSPZに持ち込んだのもこの選手だった。SPZシングルのベルトは巻けず、シングルでメインを張る機会はあまりなかったが、ファンのハートに残る素晴らしい選手だった。

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近日連載再開

レッスルエンジェルス超妄想プレイ日記「輝くエッセンシャルR」

「・・・・化け物だ、この人」

「やっと、ベルトを、獲れました・・・

「あとはあたしの身体に流れているレスラーの血を信じるだけだ。」

「ボク、また海外で鍛えなおしてきますっ!」

師匠と弟子、私怨のこもったライバル、追う後輩と追われる先輩、ますますこんとん状態の横浜のプロレス団体SPZ、そんななか、衰えを見せるエース吉田龍子の生きざま。団体の長を託された井上霧子の苦悩。そして今野前社長は・・・・

吉田の前に吉田なく、吉田の後に吉田なし・・・・

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2007年6月22日 (金)

SPZスター選手列伝 005 沢崎光

SPZスター選手列伝

従業員コード:005 「完全燃焼娘」

沢崎光

1993年6月17日、広島県尾道市出身。SPZの一期生として第2回新人テストに秋山と同時合格し、2009年5月15日、名古屋市体育館でのジュリア・カーチス戦でデビュー。練習熱心でプロレスにかける情熱は人一倍。努力を積み重ねてAACジュニア、EWA世界王座、AACタッグ王座、SPZタッグ王座などを戴冠。得意技はタイガースープレックス。

2018年11月29日、横浜スペシャルホールでの対ナスターシャ・ハン、ユーリ・スミルノフ戦で引退。(パートナーは秋山美姫)稼動月数103ヶ月、出場試合数(推定)744試合。

タイトル歴:

AACジュニア王座、EWA世界王座、

AACタッグ王座(パートナーは草薙みこと、秋山美姫)

SPZタッグ王座(初代王者・第4代王者・第6代王者:パートナーは秋山美姫)

第2回SPZクライマックス優勝

社長から一言:熱血肌であきらめの悪い選手だった。ファイトスタイルはスープレックス系を多用する普通のレスリングだが、感情を表に出すタイプなのでファンは沸いた。秋山とコンビを組ませたときは凄かった。南や草薙にも全力でぶつかってゆくファイトは胸を打った。地方のメインでは伊達秋山沢崎の3人を6人タッグで組ませたが、センターに伊達、左右に秋山沢崎を配したシーンはきっちり絵になっていた。SPZシングルのベルトには手が届かなかったが、全盛期の伊達と60分ドローを2回もやってのけたから実力は紙一重だったと思う。

2007年6月21日 (木)

SPZスター選手列伝 004 南利美

SPZスター選手列伝

従業員コード:004 「関節のヴィーナス」

南利美

1993年3月1日、高知県高知市出身、SPZの一期生として旗揚げ直後に入門し、2009年5月15日、名古屋市体育館での小川ひかる戦でデビュー。デビュー戦を勝利で飾る。

関節技の切れ味は世界でもトップクラスで、一瞬の隙を突いてギブアップを奪うことも珍しくない。そして関節技を警戒する相手には裏投げで痛打を与える立ち技もこなせるファイター。1年目からタイトル戦線に抜擢され、SPZジュニア、AACタッグ、SPZシングルのベルトを奪取。フォール勝ちよりも相手にギブアップといわせる方を好み、腕ひしぎ発動時決め台詞の「この技に耐えられるかしら?」はあまりにも有名。最近は妹のハイブリッド南とのコンビでEWAタッグ王座を奪取するなどタッグ戦線で活躍。得意技は飛びつき腕ひしぎ逆十字固め、裏投げ。

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ワンチャンスの腕ひしぎに賭ける。

もうこういう闘い方しかできないのを南は自覚していた。苦しみながらも必死にスリーパーや脇固めで手数を返し、試合中盤、ニーリフトを食らってこれ以上は受けられないなと感じたところで、

「この技でマットに眠りなさい!」

飛びつき腕ひしぎ一閃。

「ぐわぁぁぁぁぁぁぁ」吉田の悲鳴。館内は異様な興奮。

「決めて、南さん・・・」涙ながらに声援を送るファンも。

だが吉田もかなりのダメージを負ったが、力任せにふりほどいた。

「いいかげんに倒れろ!」吉田は南を左のグーで殴って倒したあと、痛む腕を少し気にしながらコーナー最上段に登りムーンサルト炸裂。天から降ってくる吉田。

「がは・・・っ」

ワン、ツゥ・・・

「返せぇぇぇぇぇぇぇ!」ハイブリッド南が絶叫。

カウント2.8でフォールを返す南、ドドドドドド。館内はメインイベントのような大盛り上がり。

時間をかけて起き上がった南、必死に吉田に組み付く。吉田が力で押していって場所はリング中央・・・

今しかない。南はすばやく吉田の身体に飛びついて、この日2度目の飛びつき腕ひしぎ。

「ぎぃやあああああー」

館内は再びものすごい歓声に包まれた。

今度は完全に決まった。振りほどこうにも右腕に力が入らない。

―マイッタしなさい!、本当に折るわよ!。

これ以上は我慢できないと判断した吉田は井上レフェリーの手を叩きギブアップの意思表示。

「18分31秒、飛びつき腕ひしぎ逆十字で南利美の勝ち」

今野リングアナのアナウンスも大声援にかき消された。

先に起き上がったのは吉田龍子。右腕は動かせないが、体はまだまだ動ける状態。なのに負けてしまった。「過去の人」に負けてしまって、これで草薙さんのベルトへ挑戦の順位も下がってしまう・・・吉田は一礼して、憮然とした表情で右腕を押さえながら退場した。

ものすごいミナミコールの中、ゆっくりと起き上がった南が井上レフェリーに手を上げてもらう。さいたまスペシャルホールが爆発した。実力では追い越された5期生に食らいついて、わずかな可能性に賭けて、そして勝ってしまった南の戦いぶりに観衆は大声援を送った。

「あーしんどかったわ。」

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2016年9月26日さいたまドーム大会、小川ひかる戦で引退。稼動月数89ヶ月、通算出場試合数(推定)612試合。

タイトル歴:SPZ世界王者(3代目、7代目)

SPZタッグ王者(5代目 パートナーはハイブリッド南)

AACタッグ王者(パートナーはミミ吉原、小川ひかる)

EWAタッグ王者(パートナーはハイブリッド南)

AACジュニア王者

第3回SPZクライマックス優勝

写真集発売4冊

社長から一言:とんでもない選手だった。フォール勝ちより相手にギブアップといわせることを好むひねくれ者で、飛びつき腕ひしぎに凄いこだわりを持っていた。相手も警戒しているのに「わかっていてはまるほうが何倍も悔しいでしょう」という発想をするあたりがただものではない。もっと、どこからでも勝てるように幅広い技を習得すればトップ争いにより長く食い込めたとは思うが、本人はそれを良しとしなかった職人肌。

それでも1期生の出世頭、チーム関節地獄の一員として、初期のSPZを引っ張ってくれた。SPZ初代王座決定戦では伊達に敗れたが、2度、女王の座に君臨した。後輩に追い越されてからは腕ひしぎ一振りにかける求道者の面影がより濃くなった。引退試合をデビュー戦の相手と同じにしたのは思いっきりレスリングを楽しんでもらいたかったから。最後の体当たりで小川を仕留めたシーンは今でも印象に強く残っている。

2007年6月20日 (水)

SPZスター選手列伝003 保科優希

SPZスター選手列伝

従業員コード:003 「6時半の女」

保科優希(1期生 第1回新人テスト合格)

1992年9月3日、滋賀県大津市出身。中学時代は合気道で身体を鍛える。SPZ一期生として第1回新人テストに合格し、2009年4月21日横浜赤レンガアリーナ大会SPZ旗揚げ戦の、アリッサ・サンチェス戦でデビュー。温和な性格で選手たちの信頼も厚く、合宿所の初代寮長を務め、団体の草創期を陰から支える。おもに第1試合で若手選手の壁として熱いファイトを展開。「6時半の女」と呼ばれるに至った。ファンの人気もかなり高く、映画にも多数出演している。得意技はアキレス腱固め。2017年6月25日さいたまドーム大会、対 渡辺智美戦で引退。稼動月数99ヶ月、通算出場試合数(概算)656試合。

タイトル歴 なし 

写真集発売冊数 8冊(最多記録)

社長から一言:旗揚げ当初でバタバタしていたとき、新人テストに無名の団体にもかかわらず応募していただいた。レスラーとしての素質はあまりなく、ベルトを巻くことはできなかったが、旗揚げから9年目まで第1試合要員として、新人選手の最初の壁として、プロレス会場の雰囲気をつくる仕事を果たしてくれた。上原さんも永沢さんも吉田さんも、最初は保科さんに長い連敗を喫する中でプロレスを覚えて、トップスターにのし上がっていった。

団体が大きくなってからは同じアイドルレスラーの渡辺さんと200回以上のシングルマッチを闘い、会場を大いに沸かせてくれた。渡辺さんの頭突きを食らってよろめいたり吹っ飛んだりで会場はなぜか盛り上がった。また写真集を8冊も出して、映画にも多数出演して、団体が発展していく上での貴重な資金源となった。その点でも本当にこの人には感謝している。

2007年6月19日 (火)

SPZスター選手列伝 002 小川ひかる

SPZスター選手列伝

従業員コード:002

小川ひかる

1993年11月30日、

長野県松本市

出身。中学時代からアマレス、柔道などで体を鍛える。井上霧子に見込まれ、SPZプロレスにスカウトされ入門第1号となる。

「私が・・・プロレスを・・・ですか?」

「わかりました、チャンスと思って、やってみます」

2009年4月21日、横浜赤レンガアリーナ大会のジュリア・カーチス戦でデビュー。

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控室でうなだれる小川ひかる。

勝てないことは分かっていたけど・・・何もできなかった。

「ヒカル、デビューおめでと、これでヒカルもあたしらの仲間入りだ」吉原が祝福の声をかける。

「吉原さん、私、何も・・何もできな・・・かった」

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全敗か・・・・

控室の隅でうなだれる小川ひかる。

私、こんなんでやっていけるのかな・・・

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「小川さん、16歳の誕生日おめでとう」

「社長、おぼえてたんですか?」

「覚えてるよ、最初にスカウトした上で手のかかる新人だもん、でも私は信じてるよ、いつか武道館のメインで1万人を感動させる試合をやってくれることを」

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「私の・・・ファンクラブ?」

「応援に負けないように頑張れよ」

「わかりました、全力をつくします」

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「お呼びですか、社長?」

「ああ、実は小川さんに写真集のオファーが来てるんだが」

「写真集?な、内容は?」

「み、水着の写真集だ。う、受けたいと思っているがやってくれるか?」

「そのような依頼なら他に適任の選手がいるのでは?」

「せ、先方は小川さんを指名してきて・・・」

「わかりました、先方が見込んでくださったのなら・・」

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リング上で動かない小川ひかる。富沢レイがペットボトルの水をかけるが反応がない。場内は悲鳴で騒然とする。

「担架だ、担架!」

前の試合に出た伊達遥が担架を持ってきた。「あ、社長・・・試合は・・・・」

やっと意識が戻ったらしい。

「13分52秒、小川さんの負け」

「動けるか」「ちょっと、まだ・・・」

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終盤は小川が関節技を出してきて、最後はストレッチプラムがガッチリ決まり。上原は無念のギブアップ。20分8秒の激闘。

「勝てました!社長、見てくれましたか?」

だが小川は控室に戻ると倒れこんだ。

「あっー、頭痛い、苦しかった・・・です。たぶん次の次ぐらいは勝てない・・・と思います」

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「しゃ、社長、気になさらないでください、上原さんに負けたことやベルトを失ったことは悔しいですけど、負けるのは、な、慣れてますから」

「いやほら、格上にぶつかって玉砕するのは見慣れてるけど、後輩相手でああいう獲られ方をしたから、気にしているかなと思って」

「・・・ごめんなさい、気を使わせて」

「いいよ小川さん、次のシリーズで再戦組むから、もう社長の横暴とかマッチメーク権の乱用といわれても組むから、そのときは『もう逃げられないわよ』って言ってよ、これは社長というか一ファンとしてのお願い」

「ぶっ」井上霧子が噴き出す。

「・・・分かりました、頑張りますっ・・」

小川ひかるはハンドタオルで目からこぼれたものをふいた。

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「舞ちゃん」小川がやさしく諭す。

「まあ、プロレスは、結果よりも、内容だから。舞ちゃんの戦いを見て、お客さんが次も来よう、誰かを誘って来ようって思ってもらうのが本当の勝ちだから、だから勝ち負けはあまり気にしないで頑張ってみたら」

「・・・はい、頑張ります!」

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小柄な身体で連日奮闘し、やられてもやられても立ち上がるその姿にファンは共感、いつしか大声援が飛ぶようになった。デビューからシングル戦15連敗を喫するなど素質はなかったが、連日の猛特訓でタイトル戦線にも食い込める実力をつけた。

「勝てました。社長、見てくれましたか?」

デビューしてから4年余り。ようやく師であるミミ吉原越えを果たした。

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「ミミさん、もうちょっと頑張って一緒にブトーカンを満員にしましょうよ!」

「いずれ、あなたたちにも、こういう日が・・・来るわ」

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「小川さん、20歳の誕生日おめでとう!」

「あ、ありがとうございます」

「いやー、一期生の頃は勝てない新人だったヒカルちゃんがタッグリーグ優勝するところまで来て・・・」

「ふふ、社長、小川さんと草薙さんを組ませたのはアンドレ、グレイ組にならったのかしら?」

「いや、みこっちゃんの方から小川さんと組みたいって言ってきたんだけど、こっちの狙いはそんなところもあった」

「アンドレって、草薙さんが・・・?」

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九段下の4番出口から皇居のお濠端を歩いて田安門をくぐり、現れたのは日本武闘館。

「はー、おっきいですね~」

「うわー」

3人とも目の前の巨大な建物に絶句。5年前は1000人規模の会場が精一杯だったことを考えると夢のようである。社長の目から涙が落ちてきた。

「や、やだ・・・社長・・・私まで・・・うっ・・く」

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逆さ押さえ込み。

あっけにとられる対戦相手のウィン・ミラーと満員の観衆。この団体は殴り極め投げが主流なので、こんなムーブをやるのは小川しかいないし、小川も裏技にしているので時々しか出さない。

ワン、トゥ、スリー。

「12分4秒、逆さ押さえ込みで小川ひかるの勝ち」

一瞬の静寂、そして歓声。まだ余力があったミラーだが今回はしてやられたぜといった感じで小川と握手をして退場。

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「SPZ TOKYO DOME -a will-

大看板を見て社長フラッと立ちくらみ。その場にフラフラとうずくまってしまう。

「だ、だだ大丈夫ですか社長?」

「いや、小川しゃん、ちょと興奮してくらってしただけ。6年前から考えたら信じられないんだけど」

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「ハイブリッド。確かにお客さんも沸いたいい試合だったわ、でも厳しいこと言うようだけど、これから頂点を目指すんだったらあんな試合しててはダメよ。あれを見なさい。小川さんは本当にギリギリ逃げ切った感じ、あの状態になった人にとどめをさせないようでは一流とはいえないわ」

「リミさん」横たわったまま小川が一声かける。

「私も・・全敗だけはしたくなかっただけ。少しはいいカッコ、させてくださいよ・・・」

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「小川さん小川さん」

「あ、社長・・・」

「デビュー7周年おめでと。記念試合頑張って、あとこれ着てって」

渡されたのはブルーのロングガウンだった。背中に「OGAWA 7」とプリントされている。

「あ、ありがとうございます」

そして休憩明けーバックスクリーンに映し出された文字は

「小 川 ひ か る デ ビ ュ ー 7 周 年 」

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―勝てるかも、しれない?

7年以上南利美と組んだり闘ったりした中、初めての感覚を小川は感じた。

南も最後の力を振り絞って小川にジャーマン。しかし小川はカウント2.8で返す。そしてー

小川のローリングソバット炸裂。すかさずフォール。

「ワン、ツゥ、スリー」

「26分15秒、ローリングソバットからの片エビ固めで、小川ひかるの勝ち」今野社長が上ずった声でアナウンス。

「勝てました・・・社長・・・見てくれましたか?」

「ああ、小川さんが勝った、よく頑張った、泣けたよ」

―旗揚げのころから南さんを追いかけ続けていて、ようやく、ようやく勝てた。でも・・これは私が強くなったからじゃない。

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タイトル歴

AACジュニア王座、

AACタッグ王座(パートナーは南利美、草薙みこと)

SPZタッグ王座(第2代、第7代、第10代、パートナーは草薙みこと)

第5回・第6回SPZタッグリーグ戦 優勝(パートナーは草薙みこと)

写真集 3冊

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―私がやられて、草薙さんが決める。これがいつものパターン。

パートナーの草薙も場外でもうダメかと思っていたが、まだ試合は続く。スミルノフは距離をとって小川が起き上がるのを待って、小川が立ち上がると同時にダッシュ。ラリアットか何かを狙っていたか。しかし小川はうまく切り返す。その場で踏み込んで跳躍し、カウンター気味にネックブリーカードロップ。

もう小川に反撃する力はないと思っていて虚を突かれたスミルノフはまともに食らって、無念の3カウントを聞いた・・・

王者組が2度目の防衛に成功。45分48秒の死闘に場内は沸いた。響き渡るオガワコール。

「ナイスファイト・・でした・・・」いつものようにリング上でお辞儀をする小川だったが、直後に倒れた。ダブルインパクトを2発も貰ったのではいくらやられ慣れている小川でもただで済むはずがない。

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「きょう、病院に行きました。このままプロレスを続けると、普通の生活にも差し障りが出るかもしれませんと先生に言われました、あとは、精神的にも・・・後半の試合に出るときは正直怖くなってきました。ですので、もう・・・潮時・・・だと」

「オガワ、オガワ、オガワ・・・」オガワコールが横スペに響く。

「次の試合に登場する、小川ひかる選手は、この試合が最後の試合となります。ファンのみなさま、より一層のご声援を、お願いいたしますっ。」

「13分0秒、STFで、小川ひかるの・・・勝ち。」

今野社長は涙をこらえて試合結果をコール。小川ひかるの最後の戦いが終わった。青い紙テープがまた投げ込まれる。

これで、終わった・・・

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2018年8月21日、横浜スペシャルホール大会のマイトス香澄戦で引退。稼動月数113ヶ月。出場試合数(推定)816試合。

チーム関節地獄の一員。得意技はSTF。

「もう、逃げられないわよ!」

2007年6月18日 (月)

SPZスター選手列伝 001 ミミ吉原

筆者は疲れた。旗揚げから12年目春まで、リプレイを149回。

第2部の新連載を始めるまで少しお休みをいただきたいので、今日から

しばらく、「SPZスター選手列伝」でお茶を濁すことにする。

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SPZスター選手列伝

従業員コード:001

ミミ吉原

本名:吉原瑞穂。1989年4月4日、

神奈川県横浜市

出身、元全日本空手王者の経歴をひっさげて、2005年9月30日、ワールド女子プロレスのリングで、対ブラック・ヘルバトラー戦でデビュー。ワールド女子崩壊後はフリーで各団体や海外団体で活躍。SPZには2009年4月21日の旗揚げ当初から参加。SPZでの最初の対戦相手はデスピナ・リブレ。草創期のSPZをエース兼若手選手の指導役として引っ張り、団体発展の原動力となる。

試合では空手の打撃技はあまり見せず、関節技や絞め技を主体としたレスリングを見せ、南利美、小川ひかると団体内ユニット「チーム関節地獄」を結成。2011年3月には南利美と組んでAACタッグ王者に輝く。決め台詞の「悪く思わないでね」はあまりにも有名。得意技はドラゴンスリーパー。1期生・2期生が成長し、次々とミミ吉原を打ち負かすようになり、「やるべきことは終わりました」と引退を決意。2014年7月23日、代々木体育館大会での南利美戦で引退。

タイトル歴:AACタッグ王座 2回 (パートナーは南利美)

第1回SPZクライマックス優勝

写真集 5冊

社長から一言:新団体を立ち上げるにあたり、エース格の選手が必要と考え、ミミ吉原さんに真っ先に声をかけた。若いのに穏やかな人柄で新人の指導にも熱心だった。初期のSPZは関節技使いが多かったのもこの人の影響が大きく、井上さんとの酒の上で出たアイデアで、悪ノリして「チーム関節地獄」ユニットまで結成しこれが大人気。まとめ役・吉原、アタッカー(殺し屋)南利美、やられ役・小川のトリオは見ていて楽しかったし、お客さんにも喜んでもらえたと思う。

3年目以降は、自らが育てた選手に次々と敗れるようになり、その姿は時に痛々しかったが、本人はほとんど悔しさを表に出さなかったのだからたいした人だった。さすがに3期生の上原さん、1期生でお世辞にも強いとはいえない小川さんに負けて引退を意識したのだと思う。SPZがドーム興行を連発できるまで大きくなったのはこの人のおかげだと思う。写真集や映画出演も快く引き受けて頂き、資金繰り面でも心強かった。

2007年6月17日 (日)

第149回 井上霧子の手紙

「次の試合に登場する上原今日子選手はこれが最後の試合となります。ファンの皆様、より一層の応援を宜しくお願いいたします」

青コーナー側からビーナス麗子入場、そして

disintegration」がかかり、黒いロングガウンに身を包んだ上原が入場。

「青コーナー、広島県、広島 市出身、ビーナスー、れいこー!」

「赤コーナー、沖縄県、那覇 市出身、うえはらー、きょーこー!」

ものすごい量の赤い紙テープが舞い、リングを埋め尽くした。

「レフェリー、伊達遥」

試合はビーナス麗子がよく攻め込んだため好勝負となった。打撃技でも互角に渡り合い、コーナー最上段からボディプレスまで決めて上原を追い込む。

―強くなったな。

上原今日子はここで必殺技を仕掛けに来た。

「かわいそうだけどこれで終わりっ!」

上原のニールキック。この技のキレは昔と変わらない。これがクリーンヒットし、フォールはカウント2.8で返したもののこれでがくんとビーナス麗子の動きが落ちた。

フラフラと起き上がってきたビーナス麗子に組み付いて、首筋に軽くチョップを叩き込んでから

「おりゃっ!」

パイルドライバーを的確に決めて3カウント奪取。勝負タイム13分42秒、これで上原今日子のレスラー生活は終わった。

「お疲れ様」

伊達レフェリーが上原の手を上げながら声をかける。そして花道からはセミに登場する永沢舞と吉田龍子が登場。上原に花束を手渡した。

「今まで・・・ありがとうございました」

上原はものすごい歓声を受けながら引き揚げた。

セミは永沢、吉田対ナターシャ・ハン、ドリュークライ。

ざわついた雰囲気のまま試合開始。吉田がケガを感じさせない重たい攻めを見せ、最後もナターシャをプラズマサンダーボム、重爆ギロチンとつないで沈めた。

メインはハイブリッド南対新咲祐希子のSPZ選手権。6期生同士のタイトルマッチ。新咲がドロップキックやローリングソバットで攻めればハイブリッドは執拗なスリーパーで動きを止めにかかる。一進一退の攻防が続いたが、新咲のネックブリーカー2連発で闘志に火がついたハイブリッド南。体勢を立て直して新咲を押し倒して、

「この技に耐えられるかしら?」

ネオ・サザンクロスロックがリング中央で決まった。新咲もがいても抜けられない。顔面をしつこいくらい絞め続けられて、新咲は痛みに耐えかねギブアップの言葉を発してしまった。勝負タイム25分12秒、王者が6度目の防衛に成功。

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SPZ世界選手権

ハイブリッド南(25分12秒、ネオ・サザンクロスロック)新咲祐希子

王者が6度目の防衛に成功

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メイン終了後、上原今日子の引退セレモニー。

「精一杯やってきました。応援ありがとうございました!」

10カウントゴングのあと、上原は胸を張って引き揚げた。こうしてSPZを支えた名選手がまたひとりリングを去った。

上原今日子

2011年5月11日、青森スポツァルト黒石大会の保科優希戦でデビュー。2020年4月21日、新日本ドーム大会でのビーナス麗子戦で引退。稼動月数108ヶ月、出場試合数(概算)784試合。

タイトル歴:SPZ世界選手権 第15代王者

SPZ世界タッグ選手権 第17代王者(パートナーは吉田龍子)

AAC世界ジュニア選手権

AAC世界タッグ選手権(パートナーは伊達遥)

第8回・第9回SPZタッグリーグ優勝(パートナーはハイブリッド南)

写真集 2冊

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最終回。

表向き、健康上の理由で女子プロレス団体SPZ社長の職を辞した今野和弘は新しい職場、エスピーデータセンターで情報システム運用管理の仕事をしていた。といっても実務は若いスタッフがやるので、管理職の仕事はお取引先との打ち合わせ同席、請求書の決裁と労務管理ぐらいであった。

夜9時ごろ、会社を出て川崎の自宅マンションへ帰宅の途につく。こんど47になるのだが、30代後半は女子プロレス団体の立ち上げに没頭していたためまだ一人暮らしである。自宅に帰りとりあえず赤ワインを飲む。

郵便受けにSPZ副社長、井上霧子から手紙が入っていた。

謹啓 日々ご清祥のこととお慶び申し上げます。さて、SPZではきたる5月21日に、春の横浜スペシャルホール大会を開催いたします。今大会は王者のハイブリッド南が負傷欠場のため選手権試合を組むことはできませんでしたが、特別試合としてメインイベントで吉田龍子対スイレン草薙のシングルマッチを行います。お忙しいこととは存じますが、アリーナ席のチケットを同封させて頂きますので、万障お繰り合わせの上ご観戦を賜りたくお願いいたします。

謹白

この内容の文章が打たれており、その余白に、

「小川さん来ますよ、だからみんなの顔を見に来いやー」

という井上霧子の手書きコメントが入っていた。

********************

「あのね、金井ちゃん、勝てなくてもいいの、プロレスは。お客さんが手を叩いてくれればいいから。」

「だって、あたし、全然強くないしぃ~」

「入門したての頃は、みんな不安だったのよ。1個上の理宇ちゃんも、来島さんも負けてばかりだった。金井ちゃんのファイトを見て、手を叩いてくれるお客さんがいるのも確かなのよ、だから、元気を出して。」

「・・はい、もうちょっと頑張ってみますぅ」

あー、

今野社長よくこんなことやっていたわね。

 プロレス団体経営者の最大の仕事は各選手のモチベーション維持だったりする。

あのヘタレバカを呼び戻さないとこっちの身がもたん・・・

井上副社長は社長室の机に突っ伏した。

5月シリーズ「バトルカデンツァ」開幕戦鹿児島大会で12期生の新人同士対決、芝田美紀対キューティー金井の第1試合。

「さぁ、これでトドメです!」

芝田の掌底炸裂、キューティー金井はこれであっさり敗北。

そしてシリーズは九州各地を回ったあと、首都圏に戻って山梨大会。

カイメッセ山梨大会第1試合は渡辺智美対芝田美紀。渡辺が新人相手に何もさせず、最後はヒップアタックで勝利。勝負タイム6分15秒。

第2試合は菊池理宇、キューティー金井対ボンバー来島、マイトス香澄のタッグマッチ。試合開始早々、ボンバーのヘッドバット、バックドロップでキューティー大ピンチ。何とか菊池につないだが、ボンバーの力押しファイト、マイトスの投げ連発についていけず、苦し紛れでキューティーにタッチしたところに、マイトスのドラゴンスリーパー。これで試合は終わった。勝負タイム10分34秒。

その試合が終わると休憩。

休憩明けの第3試合はビーナス麗子対ギムレット美月。10期生同志の激突。今回は序盤に放ったビーナス麗子のエルボーが入ってしまったのか、ギムレットが精彩を欠くファイト。最後はビーナス麗子がカッコよくハイキックを決めて3カウント。勝負タイム7分21秒。

「SPZも試合内容が一時ほどじゃなくなってきたな・・・」館内からはファンのひそひそ声。

第4試合セミファイナルはスイレン草薙、ガイア小早川対ハイサスカラス、エレン・ニールセンのタッグマッチ。序盤にエレンとガイア小早川が軽く手合わせしたあと、スイレン対ハイサスカラスの激闘。しかし、スイレンが投げで圧倒して追い込み、最後はストレッチプラムであっさり終了。勝負タイム9分58秒。

メインイベントは吉田龍子、永沢舞、新咲祐希子対ナターシャハン、ドリュークライ、アンナクロフォードの6人タッグマッチ。日本人組3人は死角がまるでない。

「とおー」永沢が投げまくれば、

「うらあっ!」吉田がラリアット連発で外人組を蹴散らす。新咲もローリングソバットでナターシャを追い込んで・・・

「この技にすべてをかける!」

高速ジャーマン発動。投げた次の瞬間にはナターシャがたたきつけられている。これで試合は終わった。勝負タイム13分38秒。

********************

最終戦横スペ大会。土曜日夜の興行だったので、今野前社長は「差し入れの菓子折り」を持って、新横浜へ出かけた。開場の1時間前、関係者入口から入る。いちおう取締役なのでオフィシャルカードは持っていた。

「あ、社長!」

吉田龍子はいまでも社長と呼ぶ。

選手に声をかけたり、井上霧子副社長と最近の集客について話したりしたあと、指定されたセンター席Bブロックへ社長は向かった。

そこに、グレーのスーツ姿の小川ひかるがいた。

小川ひかるはにこやかな笑顔で社長に話しかけた。

「もう、逃げられないわよ」

(第一部 完)

2007年6月16日 (土)

第148回 マットの覇者・上原ラストラン

レッスルエンジェルスサバイバー プレイ日記のようなもの

「輝くエッセンシャル」(救いようのないくらい脳内妄想はいってます)

12年目4月

「悔しいけど、ここが限界みたいです」

3期生、上原今日子が引退を表明。人気のある選手だっただけにファンの間に同様が走った。引退後しばらくは上原今日子のコーチとして団体に残るらしい。

春はフレッシャーズの季節。新人スカウトで芝田美紀獲得。新人テストでキューティー金井獲得。井上霧子が昔のつてを頼って、アマレスを少しかじっていた素質のあるお嬢様、芝田をスカウトしたのであった。

4月シリーズ「旗揚げ11周年記念シリーズ」初戦キターアリーナ大会の第1試合で芝田美紀のデビュー戦。

相手は1期上の菊池理宇。

「うっしゃあっ!」

菊池のショルダータックル攻勢。デビュー戦でさすがにプロレスに慣れていない芝田は防戦一方。

「これで終わり!」

がすっ!

強烈なハイキック。しかし芝田はカウント2.9で返した。

「あたしの・・・顔を・・・蹴ったわね・・・許さない」

チョップで反撃。だがそれまでだった。菊池はボディスラムで転ばせてそのスキにコーナーに登り、得意のミサイルキック。これで試合は終わった。勝負タイム7分39秒。

第2試合はキューティー金井のデビュー戦。相手は5期生の渡辺智美。

「えーい!」

覚えたてのドロップキックで攻めるが、百戦錬磨の渡辺には通用しない。頃合いを見て渡辺がヒップアタックで仕留めた。勝負タイム8分52秒。

こうして12期生ふたりのデビュー戦は終わった。

第4試合で上原今日子はビーナス麗子とタッグを組んでドリュークライ、アンナクロフォードと対戦。場内ものすごいウエハラコール。

ドカッ!

上原のまったく変わらぬキレイなフォームでのローリングソバットが命中。そしてニールキック。だが最後はパートナーのビーナス麗子が捕まってしまい、ドリューの強烈な裏拳に3カウントを聞いた。

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2戦目の仙台大会、上原はメインで永沢舞、ボンバー来島と組んでナターシャ・ハン、ユーリ・スミルノフ、アンナ・クロフォードのEWA勢と対決。しかしキャリアの浅いボンバー来島が外人組の標的にされる苦しい展開。

しかし試合中盤、上原の「剛脚」フライングニールキックがナターシャを吹っ飛ばす。これでパートナーの永沢舞が燃えた。ユーリをスープレックス攻勢で戦闘不能に追い込み、残るクロフォードを仕留めにかかるが、クロフォードもクセ者、永沢のキャプチュード狙いを2度にわたってキックで切り返す粘りを見せる。アゴにキックをもらった永沢はボンバーにタッチ。

「来島、おまえが決めろ!」

鬼コーチ上原が一喝。

クロフォードに懸命に組み付いていって、バックドロップ!

ナターシャがカットに入ったが上原が阻止。そのままベタな場外乱闘を仕掛ける。

クロフォードカウント2.8で返す、しかしボンバー来島は

「食らいやがれ!」

走りこんでの渾身のエルボー。これでアンナ・クロフォードからカウント3を奪取。21分36秒の大激戦に仙台のファンは沸いた。

******************

第3戦京都大会。上原は第4試合で自らがコーチしたボンバー来島と最初で最後のシングル対決。

ボンバー来島も懸命にチョップを打ち込んでいくが・・・

「そんなんで勝つつもりか?」

上原の鋭いキャプチュード一閃。これで試合は終わった。勝負タイム7分6秒。

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2日のオフをおいて第4戦は沖縄大会。上原はメインで永沢舞と対戦。過去何度もSPZ選手権やSPZクライマックスで激闘を繰り広げてきた両者の対決に会場は沸いた。地元ということで圧倒的に上原への声援が大きいが、無心で投げるスタイルの永沢はいつもどおりの戦い方で上原を追い込む。

「たあ!」

永沢のラリアットが上原の首筋に叩き込まれる。上原も懸命にローリングソバット、パイルドライバー、フェイスクラッシャーで反撃し、

「そろそろ本気で行くよ」

この日2度目のニールキック。当たり所が悪かったらしく、これで永沢の動きが止まった。チャンスと見た上原、フィッシャーマンバスターを狙うが、これはスモールパッケージに切り返された。しかし上原はー

「これで終わり!」

渾身のパワーボム。

バーン。

永沢の上に全体重を預けて覆いかぶさった。永沢返せず試合終了。勝負タイム18分57秒。

********************

翌々日、今度は福岡で第5戦。

上原今日子はメインで永沢舞と3・4期生タッグを組み、ハイブリッド南、マイトス香澄のSPZタッグ王者チームとノンタイトル戦ながら激突。しかしこの試合は永沢がハッスルしてハイブリッドとマイトスをポンポン投げまくる。最後もひとり力の劣るマイトスを捕まえて、

「上原さん!」

合体パワーボムが決まり、試合終了。もしベルトがかかっていたらタイトル移動になっていたところである。

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第6戦大阪城大会。

上原今日子はセミファイナルで、ボンバー来島と組んで、新咲祐希子、ギムレット美月と対戦。しかしこの試合はSPZ王座挑戦の決まっている新咲が大暴れ。上原を弱らせて、孤立した来島にネックブリーカー。あっけなく試合は終わった。

大阪城大会のメインは永沢舞対ドリュー・クライ。永沢がJOサイクロンで手堅く勝利。

第7戦は名古屋しゃちほこドーム大会。4万5千の大観衆で埋まった。

セミファイナルで上原今日子は吉田龍子とタッグを組み、永沢舞、ボンバー来島と対決。吉田龍子は首の負傷でこのシリーズは名古屋と東京のドーム興行のみの参戦。先発を買って出た上原は来島を軽くあしらうが、永沢には投げられてしまう。たまらず吉田にタッチ。

パッシーン。

休養明けとは思えない吉田のラリアットが永沢を追い込んでゆく。

しかし永沢も吉田のスキが大きいのを見透かしてJOサイクロンを決め、続いてボンバー来島を呼び込んでダブルラリアット。

ここで再び上原登場、永沢を合体パワーボムで戦闘不能に追い込み、落ち着いてボンバーを料理にかかる。

どごぉっ!

強烈なキャプチュード、来島はなんとかこれをカウント2.8で返したが、上原がトドメの脇固め。力が入らないボンバー来島の腕が曲がってゆく。

「くぞ・・・ギブアップ」

勝負タイム19分16秒の激戦。

名古屋大会メインはハイブリッド南・マイトス香澄のSPZタッグ王者にEWAのナターシャ・ハン、ユーリスミルノフの「新・ロシアンコンビ」が挑むタイトルマッチ。

「ウラー!

左手にチェーンを持ち、右手にロシア国旗を振りながら入場するユーリ・スミルノフ。そのあとからナターシャがゆっくり入場。

「血祭りにあげてやるよ!」

ユーリの猛攻でたちまちマイトスはフラフラ状態に追い込まれる。どうにかハイブリッドにスイッチ。ハイブリッドはユーリを問題にせずサソリ固めで痛めつける。終盤はナターシャと一騎打ちの様相。しかし格闘サイボーグのハイブリッド南強い。

どぼっ!

強烈なニーリフト。これはカウント2.8で返したものの・・・

がすっ!

脳天に踵落とし。このあとのフォールをナターシャは返せなかった。王者組が24分32秒の激闘を制した。

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SPZ世界タッグ選手権試合

○ハイブリッド南、マイトス香澄(24分32秒、カカト落としからの片エビ固め)ナターシャ・ハン×、ユーリ・スミルノフ

王者組が初防衛に成功。

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その翌日、上原今日子の最後の試合。

前夜

名古屋市

内のホテルに宿泊したSPZ一行は新幹線で東京へ移動。東京駅でバスに乗り換え、新日本ドームには昼過ぎに到着した。上原今日子はストレッチで最後の調整を行った。

会場前のテントでは全国40箇所のグッズショップから集められた「上原今日子グッズ大処分セール」が開催された。

午後5時半、開場。今回も5万2千の超満員札止め大盛況。

午後6時半、淡々と第1試合開始。

第1試合は渡辺智美対芝田美紀。

芝田の掌底が渡辺をたじろがすが、渡辺も百戦錬磨。適度に技を受けながら好機を待つ。

「はぁ、ハァ・・・」

息の上がった芝田にヒップアタックを決めて勝利。渡辺はコーナーに上がって勝利をアピールして引き揚げた。勝負タイム11分40秒。

第2試合は菊池理宇対マイトス香澄。SPZタッグを防衛したばかりで昨日の疲れが残るマイトスを菊池が攻め込んでいくが、一発の重みが違う。強烈なノーザンで攻守が変わってしまう。

「手加減はしないよ~」

マイトス香澄のジャーマンは一瞬溜めを作ってハイブリッジで投げるオリジナルで、彼女の生誕年をもじって「絶望2000」の名がついている。これを菊池返せず試合終了。勝負タイム12分41秒。

第3試合はボンバー来島、ギムレット美月対ドスカナ・リブレ、アンナ・クロフォード。4者4様のファイトスタイルが激突する面白い試合となった。試合は先日のタッグ戦で来島のエルボーに敗れたアンナ・クロフォードが、目の色を変えて来島に向かっていって、最後は強烈な合体パイルで来島の意識を持っていって3カウントを奪った。勝負タイム14分37秒、この試合が終わると休憩。

上原今日子は控室でリングコスチュームに着替え終わり、シューズに紐を通す。

まあ、うまくやった方かな・・・

伊達遥や草薙みことといった先輩スターとの試合では分がよくなかったが、それが逆に「怪物に立ち向かう若手選手」というイメージで、負けても上原の人気は上がっていった。また後輩の永沢吉田にもベルト奪取で先を越されたが、「コロッと負ける所が人間らしい」と評価されるのでこの世界何が幸いするのか分からない。それでもトップ争いのドサクサにまぎれてSPZ世界王者のベルトも1回巻いた。

休憩明けの第4試合は9期生のガイア小早川とEWAのユーリ・スミルノフの対戦。体格やパワーでは完全に小早川の上をゆくユーリが優勢に試合を進める。しかしガイアのミサイルキックがアゴに入ってしまい、とたんにユーリの動きが鈍る。

「一気に決めちゃうからね!」

ジャーマン炸裂。小早川がEWAの猛者からカウント3を奪った。

「よしっ。やったー!」

勝負タイム11分8秒、意外な結末に会場は沸いた。

そしてー

「次の試合に登場する上原今日子選手はこれが最後の試合となります。ファンの皆様、より一層の応援を宜しくお願いいたします」

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次回、「輝くエッセンシャル」最終回。「井上霧子の手紙」お見逃しなく。

2007年6月15日 (金)

第147回 11年目3月 所沢2大怪獣決戦

11年目3月

「うわぁ!ファンクラブ!?やりぃ!」

9期生のガイア小早川にもファンクラブができた。小柄な身体で連日飛びまわる身体を張ったファイトが評判になったようである。

そして3月シリーズ「スプリングスペシャルシリーズ」開幕。新咲祐希子は右ひざ負傷のため欠場となった。

7戦目の幕張大会、メインは吉田龍子・上原今日子のタッグ王者組にハイブリッド南、マイトス香澄の革命軍タッグが挑むタッグタイトル戦。

24時間後にSPZシングルタイトル戦を控えるハイブリッド南と吉田がド迫力の殴り合いを展開。しかし、代わって出てきた上原今日子に往時の技の切れが見られない。ひとしきりやられてどうにか吉田につなぐ。

20分が過ぎ、ローンバトルに疲れたハイブリッドがマイトス香澄にタッチ。そこを突いて吉田龍子が猛攻。

「そろそろ派手に決めようか!」

スプラッシュマウンテン炸裂。しかしマイトス香澄、カウント2.8で返した。

ドドドドドド。

「遊びじゃないんだよ!」

今度はパイルドライバー。バッタリと崩れるマイトス香澄。ああこれで終わった、けどマイトス香澄はよく頑張った・・・と誰もが思ったが、マイトス香澄はカウント2.9で返した。

ドドドドドドドドド!

な、何?

「ボクだって、革命軍だああー!」

ネックブリーカードロップで反撃。そしてフラフラになりながらハイブリッド南にタッチ。

ここでハイブリッドがサソリ固め。上原のカットは懸命にマイトスが逆カット。

そして、4人が入り乱れる混戦の中、ダブルタックルで上原を場外に落として、

「行くわよ」

マイトス香澄が吉田を肩車して、ハイブリッド南がコーナー最上段から飛んだ。

ダブルインパクト炸裂。

「うごっ・・・」

吉田は頭からマット転落。無念の3カウントを聞いた・・・

「30分0秒、ダブルインパクトからの片エビ固めでハイブリッド南、マイトス香澄組の勝ち」

これで革命軍にタッグベルトが移動した。

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翌日最終戦はさいたまドーム大会。

「所沢怪獣決戦 ハイブリッド南 VS 吉田龍子 SPZタイトル戦」

などとポスターが・・・

第1試合は渡辺智美対菊池理宇。渡辺の年季の入った関節攻撃に苦戦した菊池だったが、スクラップバスターの連発でペースをつかむと、コーナーに上ってダイビングボディプレス!

しかし渡辺がヒザで迎撃。

「が、はっ・・・」

3ヶ月前の菊池ならここで戦闘不能になっていたのだが、ボディスラムで投げつけて再度コーナーへ登りダイビングボディプレス。これは渡辺、カウント2.8で返したが、もう一度同じ技をやられて万事休す。菊池、渡辺越え達成。第1試合から22分の激戦に館内拍手。

第2試合はボンバー来島対マイトス香澄。

ごすっ!ごすっ!ごすっ!

なんとボンバー来島、ヘッドバッドの乱打でペースを握りに来た。しかしマイトスもSPZタッグ王者に返り咲いたばかり。新人に負けるわけには行かないとばかりにネックブリーカー、ダイビングプレス、ノーザン、バックドロップと大技の猛攻。

しかしボンバー来島、カウント2.9で返した。

「そんな、ボクの投げが返されるなんて・・・」

ボンバー来島、不恰好ながら身体ごとぶつかるようなネックブリーカードロップ。軽量のマイトスはぐしゃっと倒されてしまう。

「ぐわぁーっ」

「これでとどめだっ!」

上原さんに見てもらったラリアット。

「ラリアットは、身体全体で打つんだ。体重を載せるように。」

昔の男子団体のビデオで不沈艦と呼ばれたレスラーのラリアットを見ながら研究した。

大きく振りかぶって、

体重を右腕に乗せて、

バシッ!

マイトス香澄の首にぶち当てる。

モロに体重が乗った一撃、マイトスは吹っ飛び、頭からマットに落ちた。

「ワン、トゥ、スリー」

場内ウォオオオオ。新人がタッグ王者に勝ってしまった。

「12分53秒、ナパームラリアットからの片エビ固めでボンバー来島の勝ち」

休憩前の第3試合はガイア小早川、ビーナス麗子、ギムレット美月の9-10期生若手トリオとエレンニールセン、アンナクロフォード、ユーリスミルノフのEWA勢が激突するカード。意外にこの試合が盛り上がった。個々の力ではやや劣るSPZ若手トリオが懸命につないでゆく。最後も、ビーナス麗子がアンナクロフォードのパイルドライバーをもらったが懸命にロープブレイク、そしてアンナが2発目を狙って来たところをリバースに切り返して、そのまま覆いかぶさって3カウントを奪った。17分8秒の激戦。

休憩明けの試合はスイレン草薙対ドリュー・クライ。

SPZ次期挑戦権のためにも負けるわけにはいかないと奮起したスイレンがドリュークライを一蹴した。勝負タイム9分4秒。

セミファイナルは永沢舞、上原今日子の3・4期生タッグにハイサスカラス、ドスカナリブレが激突するカード。10分過ぎにうまく分断したSPZ古参チームがドスカナを孤立させ、

「チャンス到来待ってました~」

JOサイクロン発動。これで試合は終わった。勝負タイム12分53秒。

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そしてメイン、SPZ王者ハイブリッド南に挑むのは吉田龍子。

「そろそろベルトを返してもらおうか」

「あなたとやる時がいちばん怖いけど楽しいのよ。フフン」

吉田の絶対王者時代と違い、今の両者間には力の差はない。むしろ関節技がある分、ハイブリッドがやや有利というのが下馬評であった。

「おりゃー」

吉田の突進をかわしたハイブリッド、バックに回ってスリーパー。吉田対ハイブリッドの試合では必ず見られるムーブ。

焦れた吉田が早い段階でスプラッシュマウンテンを繰り出しハイブリッドに大ダメージを与え、なおギロチン2連発で追撃。しかしハイブリッドもブレーンバスター、ヒップアタックで反撃、吉田もプラズマサンダーボムで勝負をかけるがカウント2.5で返される。

ここでハイブリッド南が蹴り技攻勢に出る。

右足を高々と上げての踵落とし。これがクリーンヒット。

吉田がフラフラと起き上がってくるところを。

ごすっ!

ハイキック一閃。吉田は崩れ落ち、このあとのフォールを返す力は残っていなかった・・・勝負タイム25分6秒。王者が5度目の防衛に成功。

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SPZ世界選手権

○ハイブリッド南(25分6秒、ハイキックからの片エビ固め)吉田龍子×

第28代王者が5度目の防衛に成功

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「吉田さんとは差がない。そんな相手に勝ててうれしいわ」

これでいちばんの難敵を撃破した。うちの団体は強者が揃っている。そんな中でも、勝ち続けることが苦しくて、面白い。

こうして所沢怪獣決戦は終わった。

2007年6月14日 (木)

第146回 11年目2月 ギムレット美月FC

11年目2月。

「世の中には変わった趣味の方がいらっしゃるんですね・・・」

10期生のギムレット美月のファンクラブ結成。やられても闘志を表に出さず涼しい顔をして関節を極めてくる、独特のファイトスタイルが評価された・・・

「私のファンクラブ?えへへ、うれしいなぁ~」

同時にビーナス麗子のファンクラブも。可愛い顔とアイドルレスラーさながらの動きなのだが、伊達遥をほうふつとさせる打撃技で対戦相手をしばきあげる。このギャップがたまらないファンが多いらしい。

「ふぁ、ファンクラブ?ぼ、ボクの?」

そして、8期生のマイトス香澄にようやくファンクラブが。革命軍としてハイブリッドとタッグを組んでメインやセミに出ると必ず狙われてやられてしまう健気さがたまらない・・・というファンが多いらしい。

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そして2月シリーズ「ウルトラソウルシリーズ」が開幕。日本海側の地方都市を回る地味目なシリーズ。吉田龍子が右足首負傷で欠場。

初戦山口大会。第1試合は新人の菊池理宇対マイトス香澄。菊池も吉田龍子がコーチについており、毎月「動けなくなるまでか気を失うまで」特訓しまくっているので実力を伸ばしてきた。

「あたしが勝つんだから!」

どごぉんっ!

勝負をかけた菊池のミサイルキックがマイトスの顔面を直撃。口の中を切ったマイトスが出血。しかしマイトス、先輩の意地で組み付いていって、勢いよくノーザンライトスープレックス。

ワン、ツー、スリ~

保科レフェリーの手が3つマットを叩く。マイトスが革命軍の意地を見せた。

山口大会メインは新咲、スイレンの前タッグ王者チームがハイブリッド南、ナターシャ・ハンの「恐怖の関節ドリームタッグ」と激突。地元凱旋の新咲に恥をかかそうとハイブリッドがネオサザンで猛攻を見せたが、やはりタッチワークではタッグ王者組が一枚も二枚も上手で、最後も分断作戦に成功し、新咲が見事なシャイニングウィザードを決めて、SPZ王者のハイブリッドからカウント3を奪った。

最終戦は本拠地に戻っての横スペ大会。この大会は全試合がペイパービューで契約者に中継される。大日本テレビの中継は1時間枠なので、第1試合からメインまでをぶっ通しで視聴するとしたらペイパービューしかない。

第1試合は菊池理宇対渡辺智美。

「特別かいせつの吉田さん、この試合の見所は」

今大会の解説は負傷欠場中のSPZタッグ王者吉田龍子。

「んー、まあ、渡辺さんに菊池がどこまで食いついていけるかだと思います。」

「あたしが勝つんだから!」

菊池のミサイルキック。しかしそれを受けきった上で渡辺が反撃し、関節技でいたぶってからヒップアタックで勝利。15分50秒の熱戦を制した。

第2試合はガイア小早川対ウェイン・ミラー。

「んー、この試合はミラー選手のうまさにガイアがどこまでついていけるかがポイントですね」

―――ダメだ、吉田さんテレビ解説は不得意だ。

今野前社長が自宅でビール片手にテレビ観戦。やはり自分が採用した選手たちなので気にかかるのである。

「諦めなさい!」

ウェインミラーのコブラツイストが決まる。ウェインミラーはけっこう力があるので、コブラツイストでガイア小早川の上半身が曲がっていって7分28秒、ギブアップ負け。コブラツイストで試合が終わるのも現代プロレスでは珍しい。

第3試合はアンナ・クロフォード、ユーリ・スミルノフ対エレン・ニールセン、ドスカナリブレの外人同士のタッグ戦。このメンツでは常連外人で来日回数が多いユーリと元SPZタッグ王者のアンナに声援が集まる。アンナが対戦相手の2人を「ゆっくりたっぷり」いたぶったあと、最後は強烈な合体パイルドライバーでドスカナを撃沈。外人同士のタッグ戦だが18分1秒の熱戦。意外にスイングした攻防だった。その試合が終わると休憩。

休憩明け第4試合、マイトス香澄対ボンバー来島のシングルマッチ。ボンバー来島は後半の試合に抜擢されて燃えていた。しかし、力任せの来島の動きを読みきったマイトスがアームホイップやバックドロップで投げまくる。最後はノーザンで大ダメージを与えてから・・・

「ヤー!」

コーナー最上段からのボディプレス。これで3カウントが入った。勝負タイム8分7秒、先輩の貫禄を見せた。

―来島さん、チカラはいいものを持ってるんだけどな・・・動きがね・・・今野前社長はビールを飲みながらひとりごちた。

セミ前は永沢舞、上原今日子の3・4期生タッグにビーナス麗子・ギムレット美月の10期生コンビが挑むタッグマッチ。だが永沢強い。ギムレットをあっという間にスープレックス攻勢で戦闘不能に追い込み、代わったビーナス麗子にも猛攻を仕掛けて、頃合いを見計らって上原にタッチ。

―上原さん、あとよろしくぅ!。

上原はビーナス麗子の技を2つ3つ受けきると、ローリングソバットをたたきこんで、そのあとフェイスクラッシャー一閃。この選手のファイトスタイルも変わらない。これでカウント3が入った。勝負タイム11分19秒。

セミファイナルは新咲祐希子対ナターシャ・ハン。次期SPZ選手権挑戦のことを考えると、新咲にとっても負けられない一戦だったが、ナターシャハンのSTF、ドラゴンスリーパーで動きが力ないものになり、最後は返し技の背面トペで押しつぶされてカウント3を奪われてしまった。勝負タイム20分43秒。

そしてメインのSPZ世界戦、王者ハイブリッド南に挑戦するのはスイレン草薙。前月吉田に勝ったこともあって再び挑戦権が回ってきた。

「かいせつの吉田さん、スイレン選手が勝つためにはどう戦えば良いでしょうか。」

「まあ、スイレン選手がハイブリッド選手の関節技を意識しすぎないことだと思いますね。」

しかしハイブリッド南はスイレン相手には自信を持っているのか、落ち着いて投げ技、打撃技で優位に試合を進めていく。

ータイトルマッチといっても普通のシングルマッチ。ハイブリッド南のプロレスをやるだけよ。ベルトがどうこうなんて考えたら勝てない。目の前の敵を倒すだけ。

吉田もそうだが、トップ戦線で切ったはったのベルトの奪い合いを続けている選手はこういう考え方になってくる。

スイレンに焦りが見え始めた頃、アキレス腱固め、サソリ固めでダメージを与え、潰しにかかる。そして最後はー

「行くわよ」

踵落とし炸裂。これで試合は終わった。勝負タイム29分38秒、ハイブリッド南が4度目の防衛に成功。ハイブリッド南、ただの関節技使いではない、もはや格闘サイボーグの雰囲気をかもし出してきた。このまま長期政権となってしまうのか。

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SPZ世界選手権

ハイブリッド南(29分38秒、カカト落としからの片エビ固め)スイレン草薙

王者が4度目の防衛に成功

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引き上げる際、ハイブリッドは本部席前に立ち寄ってマイクを取った。

「吉田さん、1ヶ月も休んで退屈でしょう。3月のさいたまドーム、次はあなたの番よ。痛覚を持って生まれてきたことを後悔させてあげるわ」

吉田龍子も立ち上がりヘッドセットを外して、

「おもしろい。そろそろベルトは返してもらおうと思ってたんだ」

団体の両エースが拳をかるく突きあわせてからハイブリッドは引き上げた。

2007年6月13日 (水)

第145回 11年目1月 鬼コーチ吉田龍子

年が明けて2020年。SPZから上原今日子と吉田龍子の兼任コーチ就任が発表された。上原は新人のボンバー来島、吉田は新人の菊池理宇をコーチすることになった。

「ほら菊池、立てぇぇ!」

SPZ第2ビルの道場にあるリング。時刻はもう夜10時。

「ハァ、ハァ・・・もう・・・動けませ~ん・・・・」

「タテッつってんだろ!菊池がこの団体で上に行くためには痛めつけられても起き上がれなきゃだめなんだよ!」

「うう・・・・」

菊池がふらふらと立ち上がる。

「よーし、よく起きた・・ほらよ!」

吉田組み付いて今度はブレーンバスター。

バァンッ!手加減したとはいえものすごく痛い。

「おら、立て・・・」

*****************

1月「新春バトルグランデ」がスタート。5戦目の岡山大会でSPZタッグ選手権、吉田、上原の王者組に挑むのは前王者組のスイレン、新咲組。吉田を叩いて上原を引きずり出す作戦を挑戦者組みはとったが・・・

―闘いの年季が違う。あたしはミミさんや小川さんと戦ってきたんだ。思うようなレスリングができなくてもやすやすとやられはしない。

せぇぇい!

変わらぬ威力のニールキックが新咲を吹っ飛ばす。

そして、吉田を呼び込んでー

ダブルインパクト炸裂。これで新咲を葬った。王者組が2度目の防衛に成功。

そして最終戦は新日本ドーム。

第2試合は渡辺智美対ボンバー来島。

「どうりゃっ!」

攻めていたのはボンバー来島。パワーあふれるボディスラム、タックルで渡辺を追い込んでゆく。渡辺もヒップアタックなどで懸命に反撃するが、

「気持ちよく眠らせてやるぜっ!」

6年先輩にこんなセリフを吐いてから右腕をブンッと振って渡辺の首を刈った。

上原今日子コーチが「来島さんの腕力を生かすにはラリアットがいいんじゃないかな」といって改良を促した「ナパームラリアット」が決まる。これはカウント2.8で返した渡辺だったがもう立っているのがやっとで、続くショルダータックルからのフォールを返せなかった。ボンバー来島、先輩越え。

第3試合は菊池理宇対マイトス香澄。前の試合のボンバー来島の勝利に触発されたのか、菊池もミサイルキックを2発繰り出し、マイトスを流血させ、カウント2.8まで追い込む。

ーもしかして、勝てるかも、しれない?

吉田コーチの特訓の成果か、菊池も力をつけてきていた。しかしマイトス香澄も元SPZタッグ王者の意地がある。

「ボクの必殺技、受けてみろっ!」

素早くバックに回ってハイブリッジで落差のあるジャーマンスープレックスホールド、「絶望2000」が決まる。(マイトス香澄が2000年生まれなので、相手を絶望のどん底に追い込む技ということで絶望2000と今野前社長が名づけた)

ドォォォン!

これを菊池返せず、マイトス香澄がどうにか先輩の面目を保った。

ここで休憩。

第4試合はビーナス麗子、ギムレット美月、ガイア小早川の9-10期生トリオにユーリスミルノフ、ウェインミラー、ドリュークライのEWA軍が激突する6人タッグマッチ。

「くらえっ!」

EWAの強豪、ドリューの打撃技が冴え渡り、若手3人を蹴散らしてゆく。ギムレットもアキレス腱固めなどで抵抗したが、最後は強烈なDDTに3カウントを奪われた。勝負タイム16分57秒。

そして今回の目玉の3大シングルマッチ。

セミ前は上原今日子対永沢舞。

古参選手同士の対決。両者ともに固定ファンが多いので試合は沸いた。両者持てる技を出し尽くしての好勝負となった。しかし今日の上原はウンが良く、JOサイクロンを2発ともロープに逃げる。ならばと永沢はー

ネコキーック!

独特のフォームからの顔面蹴りが決まり、マットに崩れ落ちる上原。

しかしこれもロープに近い。ロープブレイク。そして上原が最後の力を振り絞ってニールキック2連発、これで永沢を仕留めた。27分24秒の激闘を制した上原にものすごい拍手が送られた。

セミファイナルは吉田龍子対スイレン草薙。次期SPZベルト挑戦権の事を考えるとお互い負けられない一戦。試合が始まるやスイレンが小気味よく投げ技をガンガン繰り出す。昨年のSPZクライマックスと良く似た試合展開。

「はっ!」

スイレンのバックドロップ2連発が吉田をカウント2.9まで追い込む。

吉田もDDTやギロチンなどで必死に反撃するが、

「はっ!」

この日3度目のバックドロップが吉田の戦意を根こそぎ奪い取った。超龍、撃沈。

「15分28秒、バックドロップからの片エビ固めでスイレン草薙の勝ち」場内どよめき。

メインはSPZ選手権、ハイブリッド南対新咲祐希子。6期生同士の激突。

そこそこ熱戦が展開されたが、20分を過ぎて仕掛けたのは王者のハイブリッド南。

「この技に耐えられるかしら?」

ネオ・サザンクロスロック炸裂。新咲たまらずギブアップ。王者が3度目の防衛に成功。

_______________________

SPZ世界選手権試合

ハイブリッド南(25分くらい、ネオ・サザンクロスロック)新咲祐希子

王者が3度目の防衛に成功。

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2007年6月12日 (火)

第144回 11年目12月 スイレン草薙 王座初挑戦

11年目11月。

永沢舞、ハイブリッド南が負傷欠場。

「ボク、もう一度海外行って鍛えなおしてきます」

スターライト相羽がEWAへ海外再修業に出発。

そしてSPZタッグリーグ戦、出場チームは下記の通り。

吉田龍子、上原今日子(SPZタッグ王者)

新咲祐希子、スイレン草薙(前SPZタッグ王者、前回優勝)

ナターシャ・ハン、ドリュー・クライ(EWA最強コンビ)

アンナ・クロフォード、ウェイン・ミラー(EWA技巧派)

マイトス香澄、ドスカナ・リブレ(混成チーム)

ガイア小早川、渡辺智美(アイドルレスラーズ)

ビーナス麗子、ギムレット美月(10期生コンビ)

ロレン・ニールセン、ジェシカ・カーチス(格闘外国人連合)

リーグ戦のほうはSPZタッグ王者現王者の吉田組と前王者の新咲組が白星街道を突っ走り最終戦の横スペ大会へなだれ込んだ。

「この技にすべてをかける!」

新咲の高速ジャーマンで頭から落ちた吉田龍子が戦闘不能にい込まれる。上原孤立。勝負をかけたスイレン草薙のドラゴンスリーパーが上原を半失神に。

どうにか頭突きで反撃して吉田にスイッチしたが、高速ジャーマンの後遺症か、あの吉田龍子がただやられるだけ。スイレン草薙が、

「全力で行きます」

吉田龍子をストレッチプラム、ドラゴンスリーパーで絞め上げる。カットに入るべき上原は場外で伸びている。吉田の意識はだんだん薄れていった。

団体エースの意地か、ギブアップだけはしなかった吉田だが、ふらふらと起き上がってきたときは完全に目が死んでいた。こんな非力な状態の吉田龍子も珍しい。

そこへスイレンが走りこんでいってー

げしっ!

エルボー炸裂。吉田が崩れ落ちる。フォールするスイレン。返す力はもはや残っていなかった・・・

25分17秒の激闘を制した新咲、スイレン組が2連覇達成。

12月シリーズ「スノーエンジェルシリーズ」が開幕。上原今日子が首の負傷で欠場。年末の書き入れ時なので札幌大阪福岡名古屋と大き目の会場を回るシリーズ。最終戦はさいたまドーム大会。

第3試合のガイア小早川対ウェイン・ミラー戦から大日本テレビのカメラが回りだした。

「くらえっ!」

ガイア小早川この日2発目のミサイルキックがウェインにクリーンヒット。これでカウント3を奪った。同期のS相羽には遅れているが、ガイア小早川も確実に力をつけてきている。

セミ前はギムレット美月、ビーナス麗子の10期生タッグがユーリ・スミルノフ、ジョーカーウーマンと対決。さいたまドームのような大会場で10期生がこの位置で試合をするようになった。しかし10期生コンビ、守勢に回るとまだまだもろい。

「耐えられるかなぁ?」

ジョーカーウーマンのDDTがグサリ。ギムレットは這うようにして自軍コーナーに戻りビーナスにタッチ。ビーナスも懸命に外人組の攻撃を受けたが・・・

「血祭りに上げてやるよ!」

ユーリ・スミルノフのバックドロップがビーナスの意識を断ち切り試合終了。それでも15分55秒の好勝負となった。

「かいせつの保科さん、いい勝負でしたね~」

「ええ~、10期生の二人はいいコンビですよ~。ギムレット選手がうまく流れを作って、ビーナス選手が打撃で暴れてますから~、まだまだ伸びると思いますから今後が楽しみです~」

セミはスペシャルタッグマッチ。吉田龍子・永沢舞の4・5期生タッグが新咲祐希子、ハイサスカラスの「ドリームタッグ」と激突。

「新咲選手はAACに武者修行に行ってたので、外国人選手とのタッグも難なくこなすんですよ~」

保科のほわーんとした解説と対照的にリング上ではハイスパートレスリングが展開されていた。

「はぁぁー、いっくよーっ!」

新咲の「高速ジャーマン」が吉田に決まる。

これで大ダメージを負った吉田、あとを永沢に託さざるをえなくなり、最後は永沢が捕まってしまい新咲のフェイスクラッシャーでフォール負け。永沢も能力の衰えが止まらない。18分19秒の激闘。

そしてメイン、今年最後のSPZタイトルマッチ。

青コーナー側から「オリエンタルクラッシュ2」がかかり、白衣を着たスイレン草薙入場。これがSPZ選手権初挑戦。

赤コーナー側から「スピード」のテーマ曲がかかり、王者のハイブリッド南入場。

「青コーナー、山形県寒河江市出身、すいれんー、くさーなぎー」

「赤コーナー、高知県高知市出身、ハイブリッドー、みなーみー」

村越リングアナがコール。

「レフェリー井上霧子」

―ようやくこの団体で頂点を取れるところまで来た。

8期生のスイレン草薙、ここまで来るのに3年8ヶ月、先輩方の厚い壁に阻まれ楽な道ではなかった。

しかし、試合が始まるやハイブリッドがねちっこくスリーパー攻め、合間合間にボディスラムやジャンピングニーをはさんでスイレンに攻め手を与えない。

そしてハイブリッドがしつこいサソリ固め。スイレン草薙はもがき苦しむばかり。

―このまま何もできずに終わるわけには行かない。

スイレン草薙、サソリ固めをしのぐや組み付いていって、草薙流兜落とし。しかしハイブリッドは何事もなかったかのように起き上がり、スイレンをボディスラムで転がして、トップロープに登り・・・

がすっ!

顔面へ強烈なミサイルキック。このあとのフォールをスイレン草薙返せず試合終了。勝負タイム28分20秒、ハイブリッドが2度目の防衛に成功。

___________________

SPZ世界選手権

ハイブリッド南(28分20秒、ミサイルキックからの片エビ固め)スイレン草薙

___________________

年末恒例のプロレス大賞、最優秀選手は吉田龍子、最優秀新人にボンバー来島。シングルのベストバウトは吉田龍子対ハイブリッド南、タッグのベストバウトも吉田、上原対新咲、スイレンのSPZタッグ選手権が受賞となった。

2007年6月11日 (月)

第143回 社長ついに辞任

11年目10月。SPZに激震が走った。

創業者、今野社長が辞任。

「えーと、わがエスピーグループは電子マネーシステム運営の強化をすることになりまして、えー、グループ会社のプロレス団体SPZの社長を務めていました今野和弘をその任から解き「エスピーデータセンター」の担当取締役に任命することにしました。えーこれは、エスピーグループ内での人事異動だと思って頂きたい」

手塚オーナーの記者会見。

都内にあるIT関連企業、「エスピーテクノロジー」の大会議室で記者会見が行われていた。

「女子プロレス界をここまで盛り上げた今野さんをどうして解任するのですか」

週刊ハッスルの記者が質問。座っていた今野社長が口を開く。

「解任・・・ということではありません。えーと、SPZも旗揚げから10年が過ぎ、おかげさまで大きな会場でもやれるようになって、はっきりいってしまえば、私は目標を見失いましたし、健康状態も良くないので長期ロードに同行するのがきつくなってきました。しばらくはニートになってゆっくりしたかったのですが、生活のために手塚さんのお話を受けることにしました」

「後任のSPZの社長は」

「えー、エスピーマーケティングのイベント担当部長に兼務させます」

記者陣絶句。

********************

その翌日、SPZのホームページに新体制の告知が出た。

2019年10月2日の取締役会の決議により、下記の人事異動が決定となりましたので告知いたします。

SPZ代表取締役社長:津山昭蔵

 (エスピーマーケティング:イベント担当部長兼務)

SPZ取締役副社長:井上霧子(前社長室長)

SPZ取締役・審判部長:伊達遥(レフェリー)

SPZ取締役・広報部長:保科優希(レフェリー)

SPZ取締役・グッズショップ事業部長兼広島店店長:沢崎光

SPZ取締役・リングドクター:羽山海(社外取締役)

SPZ取締役・今野和弘(前社長)

要するに井上さんたちに任せたのである。いちおう今野社長も取締役に名を連ねてはいたが、これは「社長が代わったからといって急激に方向性が変わることはありませんよ」といった「銀行対策」の意味合いが強かった。

所属選手への動揺は大きくなかった。表向きは「ゲキムで体調を崩したから」と説明していたし、吉田選手会長には飲みがてら事情を説明しておいた。吉田龍子は社長から聞かされた真相に呆れ果てた。会社が苦しい状況で、今野社長と苦楽をともにしたのは5期生あたりまでで、6期生以降は会社が大きくなってからの入門なので、あまり社長と直接コミュニケーションをとることはない。(入門直後は離脱防止のため社長は声をかけていたが)

ファンには10月シリーズの最終戦新日本ドーム大会で今野社長自ら挨拶をすることにした。レスラーを裏から支える黒子とはいえ、SPZがここまで大きくなったのは今野社長の手腕にも負うところが大きい。その名プロデューサーが何の説明もなしに去るのは良くないと周囲から説得されたためであった。

10月シリーズ バトルオータム2019、1万人以上の会場規模のビッグマッチは2回。まず三重サンシャインアリーナ大会。

吉田龍子、上原今日子のSPZタッグ王者に永沢舞、スターライト相羽組が挑戦。やはり若く経験の浅いS相羽がついていけなくなり、最後は吉田がシューティングスタープレスで仕留めて終了。王者組が初防衛に成功。

そして最終戦、新日本ドーム大会。

第1試合は菊池理宇対ボンバー来島。新人同士の対戦。パワーでは圧倒的に上を行く来島、力任せに菊池を攻め立て、最後はラリアットで勝利。勝負タイム7分54秒。

第2試合はマイトス香澄対ユーリ・スミルノフ。マイトスが小気味いい投げを連発してペースを握ろうとするが軽量の悲しさ、スミルノフがパイルドライバーで形勢逆転。場外でさんざんいたぶっておいてからー

「ウラー!」

この日2度目のパイルドライバー、

これはカウント2.9で返したマイトスだったが、

トドメのラリアット。これで試合は終わった。

休憩前の第3試合、今野前社長がリングに上がり最後のコール。

「赤コーナー、広島県出身、びーなすー、レイコー」

「赤コーナー、

岐阜県垂井町

出身、ぎむれっとー、みづきー」

「青コーナー、

福島県郡山市

出身―、ガイアー、こばやかわー」

「青コーナー、香川県多度

津市

出身、わたなべー、ともーみー」

着実に力をつけてきた若手選手、そして渡辺の名前をコールした。試合は4人の持ち味がよく出た好勝負となったが、最後はガイア小早川の鋭い延髄斬りがビーナス麗子の戦意を断ち切り3カウント奪取。勝負タイム12分57秒。

試合が終わり、4人が花道を引き上げたあと、ここで前社長挨拶。

「いつもSPZを応援いただきましてまことにありがとうございます。このたび私は健康上の理由により社長を辞任することになりました。この10年半、SPZを大きくしていくのはものすごく大変でしたが、選手の皆さん、関係者の皆さん、ファンの皆さんに支えられて、どうにか勤め上げることができました、これからは一ファンとしてSPZを応援していきたいと思います」

引退式ならここでテンカウントゴングのはずなのだが、流れたのは吉田龍子のテーマ。

花束を持った古参メンバーの上原今日子、永沢舞、吉田龍子がジャージ姿で花道を駆けて、花束を渡すと思いきや、

ばさっ!

持っていた花束で前社長をぶん殴った。乱れ落ちる花弁。

そしてー

「エロ社長!」

吉田龍子が大声で叫ぶやラリアット。

パッシーン。

手加減したとはいえ恐ろしい威力、今野前社長はその場に昏倒した、そしてさらにー

「ヘンタイ、色ボケオヤジ!」

永沢舞が引きずり起こしてバックドロップ。

そして、上原今日子が引きずり起こして羽交い絞め。

ここでリングに上がったのは井上霧子副社長。

「ヘタレのバカ野郎!」

現役時代を思わせるヤクザキック炸裂。これで今野社長は完全に気絶した。花束が3つ打ち捨てられたリング上、今野社長は横たわった。

今野前社長を叩きのめした4人が退場したあと、担架が出動し、羽山リングドクターと若手選手に運ばれてピクリとも動かない今野前社長はドームを後にした。

休憩明けの試合はロレン・エレンのニールセン一族にウェインミラー、ハイサスカラスが激突する一戦。ハイサスカラスが13分42秒、ムーンサルトでエレンを屠った。

セミ前はスターライト相羽対ドリュークライ。相羽も地力をつけてきているのだが強豪外人の壁は厚く、最後はドリューのハイキックがスターライトの戦意を根こそぎ持っていって終了。

「まだ殴り足りないねぇ、」

軽く勝利をアピールして引き揚げるドリュー、勝負タイム10分5秒。次代を担う選手のはずのスターライト相羽、完敗・・・

セミファイナルはスペシャルタッグマッチ、永沢舞・上原今日子対新咲祐希子、スイレン草薙。

「ウエハラ!ウエハラ!ウエハラ!ウエハラ!」

最古参の上原人気が凄い。乗せられた上原は見事なニールキックを新咲に叩き込む。先輩の奮闘に永沢もハッスルしてスイレンとノーガードの投げ合いをやってのけた。そして終盤、新咲を孤立させるとー

「チャンスとーらい、まってましたあ!」

永沢舞の伝家の宝刀、JOサイクロンがズバリ。新咲返せず3カウントを聞いた。勝負タイム18分19秒。

メインはハイブリッド南対吉田龍子のSPZ選手権。7月に永沢からベルトを奪ったハイブリッドの初防衛戦はSPZクライマックス4連覇の「生ける格闘伝説」吉田龍子。

「オラァアアア!」

5分過ぎに早くも吉田龍子が切り札スプラッシュマウンテン。優位に立とうという作戦。しかしハイブリッドも執拗なサソリ固めで吉田の動きを止めてー

「これでお終いね」

リング中央でネオ・サザンクロスロック。しばらく耐えた吉田だったが、脱出できないと判断し、ギブアップの言葉を吐いた。勝負タイム20分25秒。ハイブリッド南が初防衛に成功。場内ウォオオの大歓声。あの戦意の塊のような吉田龍子がギブアップの言葉を吐くとは・・・・

2007年6月10日 (日)

第142回 11年目9月時点のプログラムから

そして11年目9月、しかし激闘の後遺症か、ハイブリッド南、永沢舞、スターライト相羽がバタバタとケガで欠場。渡辺智美が「リフレッシュ」のため欠場。

社長が久々に来場者に無料配布するプログラムのメンテナンスを行った。

マットの覇者 上原今日子

1995年12月31日、

沖縄県那覇市

出身、第3回新人テストに合格しSPZ三期生となる。2011年5月11日、青森スポツァルト黒石大会の保科優希戦でデビュー。琉球空手の経験を生かしたローリングソバットなどの蹴り技を武器に着々とのし上がり、トップグループの一角に食い込み、AACタッグ、AACジュニア王座、そして団体最強のSPZ王座を戴冠。練習熱心な性格で、まだまだSPZの中心選手として活躍。最近は吉田龍子とタッグを組んでタッグベルトを狙っている。得意技はフライングニールキック、フェイスクラッシャー

テーマ曲:「disintegration」(I’ve sound

規格外ファイター 永沢舞

1997年3月29日、福岡県二日市市出身。2012年4月16日、大阪舞州アリーナ大会での保科優希戦でデビュー。猫ミミ&しっぽをつけたコスチュームでイロモノと見られがちだが、リング上では投げ技を次々と繰り出すファイトを展開。難易度の高いJOサイクロンまで使いこなす。勢いに乗ったときは手がつけられない強さで、伊達遥を一方的に仕留めてSPZベルト初挑戦で王者になってしまった事件はファンの間でも語り草になっている。SPZ世界王者には通算5度輝くなど、吉田と並ぶ団体のトップとして活躍。得意技はJOサイクロン。

テーマ曲は「Change my style」(KOTOKO)

生ける格闘伝説 吉田龍子

1997年11月13日、

熊本県八代市

出身。2013年4月11日、札幌キターアリーナ大会での富沢レイ戦でデビュー。長身と規格外のパワーを生かした攻撃的な戦いぶりで先輩レスラーを次々に撃破し、デビュー2年目で南利美を破り、SPZ王者に輝くなど驚異のスピード出世でトップグループの一角に食い込む。SPZ世界王者には5回輝き、4度目の戴冠時には驚異の15連続防衛を果たすなどSPZ絶対王者として君臨。またSPZクライマックスは第8回から第11回まで4連覇を成し遂げるなど、まさに団体の頂点の座に君臨し続ける。得意技はスプラッシュマウンテン、ムーンサルトプレス。

テーマ曲は「赤い破片」

リングの元気娘 渡辺智美

1998年3月23日、香川県多度

津市

出身。2013年7月17日、

岐阜市

体育館のミミ吉原戦でデビュー。軽快な飛び技と関節技で、前座戦線を盛り上げ、保科優希とは200回近く対戦し名物カードとなる。最近は吉田や永沢と組んで、メインやセミにも顔を出すこともあり、若手選手の壁として活躍中。得意技はヘッドバット、ドラゴンスリーパー。

テーマ曲:第一級恋愛罪(バナナラマ)

関節キラー ハイブリッド南

1999年3月1日、

高知県高知市

出身。関節のヴィーナス南利美の妹。本人いわく「姉をいたぶる連中に復讐するため」SPZ入り、2014年4月10日、釧路アリーナ大会の対ミシェール滝戦でデビュー。姉譲りの関節技で実力は急上昇。ついには南利美とのタッグでEWAタッグベルト、SPZタッグベルトを戴冠。南引退後は革命軍を結成し、吉田龍子の首を付け狙い、SPZ王座に3度輝くなどSPZのトップ戦線で暴れ回る。得意技はネオ・サザンクロスロック(変形STF)

テーマ曲:スピード(映画サントラ)

格闘クイーン 新咲祐希子

1999年3月2日、

山口県下関市

出身、2014年5月7日、

高知市

体育館の対渡辺智美戦でデビュー。デビュー戦を白星で飾る。AACで海外武者修行を行い、2015年11月の凱旋帰国後は吉田龍子とタッグを組んでSPZタッグ王者にも輝く。トップに立つために受け身の取りづらい高速ジャーマンを編み出し、ハイブリッド南を下しSPZ世界王者に輝く。いっぽうテレビの大食い番組に出演するなど、人気も団体トップクラス。

テーマ曲:G・T・O(シニータ)

草薙流の守護者 スイレン草薙

本名:本堂ななか。2000年9月21日、

山形県寒河江市

出身。幼い頃から草薙流武術を伝承体得し、15歳で草薙流武術大会で優勝。この才能に目をつけた草薙みことがSPZプロレスにスカウトし、2016年4月14日、札幌キターアリーナ大会の渡辺智美戦でデビュー。持ち前の格闘センスと草薙流兜落としを武器にめきめきと実力をつけ、伊達遥とのタッグでEWAタッグ王者、SPZタッグ王者に輝く。現在は新咲祐希子とのタッグでSPZタッグ王座を保持。第11回SPZクライマックスでは吉田龍子を草薙流兜落としで破るなど、実力はトップグループに限りなく近づいている。得意技は草薙流兜落とし。

テーマ曲:オリエンタルクラッシュ2

突貫少女 マイトス香澄

本名:秋山香澄 2000年10月10日、

東京都江戸川区

出身。2016年のSPZ新人テストに合格し、8期生として入門。2016年4月14日、札幌キターアリーナ大会での南利美戦でデビュー。ハイブリッド南と革命軍を結成し、SPZタッグ王者にも輝く。シングル戦ではまだまだ上位選手の壁が厚いが、小柄な体格を持ち前の精神力でカバーする厚いファイトを展開。得意技はバックドロップ。

テーマ曲「恋はピンポン」(リチャード・クレイダーマン)

リングの新風 ガイア小早川

本名:小早川桃子、2002年1月16日、

福島県郡山市

出身。2017年のSPZ新人テストに合格し、9期生として入門。2017年4月11日、

釧路市

体育館での保科優希戦でデビュー。勝気な性格を生かしたファイトで前座戦線を盛り上げる。得意技はミサイルキック。

テーマ曲:sky was g-rayC.G mix

ヤングライオネス スターライト相羽

本名:相羽明子。2001年7月12日、

石川県金沢市

出身。SPZに第9期生として入門し、2017年7月16日、山口宇部大会の対マイトス香澄戦でデビュー。メキシコ長期遠征から3月に凱旋帰国して、将来を嘱望されているが、先日のSPZクライマックスではわずか1勝に終わり悔し涙を流した。得意技はタイガースープレックス。

テーマ曲:スターライトシンフォニー KOTOKO

バトルコンピューター  ギムレット美月

本名:八重樫美月 、2002年5月26日、

岐阜県垂井町

出身。SPZ10期生としてスカウトされ、2018年4月15日、札幌キターアリーナ大会の小川ひかる戦でデビュー。冷静沈着な性格で、レスリングセンスを生かしたグラウンド技を武器に、前座戦線で日々修行中。得意技はアキレス腱固め。

テーマ曲:oblivion(KOTOKO)

ザ・エンジェル ビーナス麗子

本名:愛野麗子、2002年10月12日、

広島県広島市

出身。SPZ10期生新人テストに合格し、2018年4月15日の札幌キターアリーナ大会でのガイア小早川戦で白星デビュー。アイドル系レスラーだが、打撃技の威力はなかなかのもの。得意技はハイキック。

テーマ曲:toghther forever(リック・アストリー)

期待の新人 ボンバー来島

本名:来島智代、2003年8月13日、

福岡県北九州市

出身。大柄な体格とパワーを見込まれ、SPZにスカウトされ2019年4月16日、釧路アリーナ大会でのガイア小早川戦でデビュー。今後の躍進が期待される。得意技はラリアット。

テーマ曲:エクリプス(イングヴェイ・マルムスティーン)

とつげき新人 菊池理宇

2003年6月24日、

宮城県仙台市

出身。SPZの新人テストに合格し、11期生として2019年4月16日、釧路アリーナ大会での渡辺智美戦でデビュー。小柄な体格を持ち前のガッツでカバーする戦いぶりに人気は上昇中。得意技はミサイルキック。

テーマ曲:THROUGH THE FIRE(ラリー・グリーン)

チーフレフェリー 井上霧子

1980年9月15日、

神奈川県川崎市

出身。1995年5月1日、関東女子プロレス・後楽園プラザ大会のユリシーズ島宮戦でプロレスデビュー。2004年11月に現役引退。SPZには旗揚げ前から社長秘書兼レフェリーとして参加。選手のまとめ役として貢献。

レフェリー 保科優希

1992年9月3日、

滋賀県大津市

出身。SPZ一期生として2009年4月21日横浜赤レンガアリーナ大会で、アリッサ・サンチェス戦でデビュー。SPZ草創期から団体を前座戦線で支え、「6時半の女」と呼ばれていた。2017年6月に現役引退。引退後はレフェリーに転向し、主に前半の試合を裁く。

レフェリー 伊達遥

1993年10月23日、

宮崎県都城市

出身。SPZの一期生として旗揚げ直後から参加し、2009年6月20日

根室市

体育館、アリシア・サンチェス戦でデビュー。SPZ草創期から団体を支え続け、SPZ初代王者として団体エースとして活躍。2019年2月、現役引退。井上霧子の推薦でレフェリーに転向。主に後半、休憩後からセミまでの試合を裁く。

リングアナウンサー 村越忠幸

1984年6月11日、

東京都八王子市

出身。2019年4月入社、営業社員兼リングアナウンサーとして団体を陰から支える。

リングドクター 羽山海

1987年6月21日、

鹿児島県上屋久町

出身。帝王大学医学部を卒業後、蝦天堂大学病院で外科医として勤務。プロレス観戦好きが好じ、「タダでプロレスが見られる」という今野社長の甘言に乗り、SPZにリングドクターとして随時参戦。得意技は注射で、選手全員から恐れられている。

**************************

今野社長はもうこのとき社長業からの引退を決めていた。9月シリーズ、巡業にも帯同せず、最終戦のさいたまスペシャルホール大会、メインのSPZタッグ選手権だけリングアナとしてコールをした。

「赤コーナー、

山形県寒河江市

出身、スイレン、くさーなぎー」

山口県下関市

出身、しんざきー、ゆきーこー」

「青コーナー、

沖縄県那覇市

出身、うえはらー、きょーこー」

熊本県八代市

出身、吉田―、りゅーこー」

「レフェリー井上霧子」

この10年半、苦しかったけど、いい夢見させてもらいました

試合のほうは上原が年齢を感じさせない生き生きとしたファイトでスイレン新咲相手に互角の戦い。ローリングソバットを何度も叩き込む。そして満を持して出てきた吉田もスプラッシュマウンテンでスイレンを半失神に追い込む。代わった新咲にもプラズマサンダーボムで猛攻。、終盤、上原が少し捕まったが、キャプチュードをうまくキックで切り返した上原が吉田にタッチ。そしてー

吉田のスプラッシュマウンテンが新咲に炸裂。一度目はスイレンのカットに救われた新咲だったが、立て続けに同じ技を食らって万事休す。吉田・上原組が51分12秒の死闘を制した。

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SPZ世界タッグ選手権

○吉田龍子、上原今日子(51分12秒、スプラッシュマウンテンからのエビ固め)新咲祐希子×、スイレン草薙

吉田組が第17代王者となる。

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6度目の防衛に失敗した新咲はスプラッシュマウンテン2連発のダメージが深く、若手に背負われて退場。

上原今日子がSPZタッグベルトを巻くのは初めてのことであった。

2007年6月 9日 (土)

第141回 11年目8月 真夏の栄冠

11年目8月

横浜のお嬢様プロレス団体「スーパースターズプロレスリング・ゼット」は恒例のリーグ戦「SPZクライマックス」を開催。吉田龍子、前人未到の4年連続優勝なるか、しかし、第5戦でスイレン草薙にまさかの敗北、リーグ戦制覇に黄信号がともった。

第6戦は仙台大会。

○新咲(5点、フェイスクラッシャーからの片エビ固め)永沢(4点)

一進一退の攻防に突破口を開いたのは新咲の「高速ジャーマン」受け身が取りづらいのでこれを食らった選手は動きが確実に落ちる。これでグロッギー状態になった永沢、フェイスクラッシャー2連発でフォール負け。

○上原(6点、フィッシャーマンバスターからの片エビ固め15.24)スイレン(6点)

前日、吉田に勝ってしまう大金星を上げたスイレン、しかし上原に足元をすくわれた。いつものように投げきれず、逆に終盤フェイスクラッシャー、ジャーマン、フィッシャーマンバスターと大技を立て続けに決められては・・・館内ウエハラコールが爆発。

○ハイブリッド南(9点、アキレス腱固め12.43)S相羽(2点)

スターライト相羽、上位の壁は厚く、ハイブリッドに手も足も出ず。

○吉田(8点、ギロチンドロップからの片エビ固め8.08)M香澄(0点)

マイトス、玉砕。

「遊びじゃないんだよ!」

スプラッシュマウンテンが決まる。1回目はカウント2.5で返したが続けて2度目。落ちた位置がロープに近かったので、マイトスのつま先がロープに触れたのでブレイク。しかしマイトスは半失神状態で起き上がれない。

「まあ、武士の情けだ」

走りこんでジャンプして、トドメのギロチンドロップ。これで完勝。

**********************

第7戦は名古屋しゃちほこドーム大会。

○新咲(7点、フェイスクラッシャーからの片エビ固め、14.53)上原(6点

新咲が上原を良く攻めて、最後はフェイスクラッシャーで快勝。

○ハイブリッド南(11点、踵落としからの片エビ固め 6.40)M香澄(0点)

革命軍同士の対決はハイブリッドが完勝。

○スイレン(8点 バックドロップからの片エビ固め15.15)永沢(4点)

やはりノーガードの投げ合い。しかしスイレンのバックドロップで動きが止まった永沢。デスバレーボムで追い込まれ、そしてこの試合2度目のバックドロップ。これで試合が終わった。スイレン、永沢も撃破。永沢はこれで予選会行き・・・

○吉田(10点、キャプチュード 9.12)S相羽(2点)×

メインは吉田の完勝に終わった。これで優勝は最終戦横スペ大会の吉田対ハイブリッドの勝者となる。

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さて最終戦横スペ大会。過去2年は最終戦を待たずして吉田龍子の優勝が決まってしまったので、最終戦は消化試合と化していたが、今回はメインで勝ったほうが優勝なのでファンの注目度も高い興行となった。

第1試合は新人の菊池理宇対渡辺智美。渡辺がさすがのグラウンドさばきで菊池をキリキリ舞いさせるが、菊池も持ち前のガッツで懸命に食らいついていき、ミサイルキック3発を叩き込むなど健闘。渡辺必殺のドラゴンスリーパーも一度は耐え切ったが、直後に渡辺のヒップアタックをもらってしまう。

「ワン、トゥ、ス・・・」

保科レフェリーの手が3つ叩く直前で返す菊池。新人の大健闘に場内拍手。そしてふらつきながらコーナーに上がり4度目のミサイルキックを狙うがこれは自爆・・・・

そこを逃さず渡辺2度目のドラゴンスリーパー。これで試合は終わった。勝負タイム19分30秒、第1試合にしては異様な長さ。

第2試合はガイア小早川(9期)が新人のボンバー来島と組んで、AACのイレーヌ・シウバ、ジェシカ・カーチスと対戦。

「どうりゃー」

ボンバー来島の気合のこもったラリアット。

―新人の来島さん、力はあるな。これでスタミナがついて試合の駆け引きを覚えれば強くなるー

試合の方はガイア小早川のミサイルキックがイレーヌ・シウバにクリーンヒットし3カウント。勝負タイム13分36秒。

第3試合はビーナス麗子、ギムレット美月の10期生コンビにエレン、ロレンのニールセン一族が激突するタッグマッチ。10期生コンビも好連係で良く粘ったが、個々の力で上回るニールセン一族、最後はエレンのネックブリーカーがビーナス麗子を沈めた。勝負タイム17分28秒。ここで休憩。

休憩明けはSPZクライマックス公式戦4試合。

○永沢(6点、JOサイクロン、14.50)上原(6点)

もう古参となった3期生・4期生の対決。上原もローリングソバットなどで攻めるが、永沢のJOサイクロンが上原をふらつかせる。続くキャプチュードはカウント2.5、ラリアットはカウント2.8で返す粘りを見せた上原だが、2発目のJOサイクロンを食らって万事休す。

○新咲(9点、シャイニングウィザードから片エビ固め 9.41)S相羽(2点)

新咲強い。スターライト相羽何もできず。いくら海外遠征で打たれ強くなっていても技を出さなければ勝てるはずがない。最後はシャイニングウィザード2連発で3カウントを聞いた。

「4勝2敗1分け?とても悔しいです。」そういい残して控室へ消えた新咲。

スターライト相羽は控室で泣き崩れた。この世代では海外遠征に出されるなど、会社からは次期エースとして期待されている選手だったのだが、結果はマイトス香澄から1勝を上げただけ。

「上の人たちに・・・何もできなかった・・・ううっ」

○スイレン草薙(10点、7.28デスバレーボムからの片エビ固め)マイトス香澄(0点)

いちおう同期対決なのだが、あまり力のないマイトス香澄、スイレン草薙の投げ技極め技bに手も足も出ず。デスバレーボムで終了。マイトス香澄全敗・・・・

昨年の4点を大きく上回る10点という結果にもスイレン草薙、悔しさを見せていた。

「吉田さんに勝っても上原さんに負けましたから。私もまだまだ修行が足りません」

そしてメイン、勝ったほうが優勝。引き分けなら1点リードしているハイブリッドの優勝。

青コーナーから「スピード」のテーマに乗ってハイブリッド南入場。この曲はSPZ旗揚げ直後から南利美のテーマとしてかかっている。

そして赤コーナー側から吉田龍子入場。テーマ曲はいつもの「赤い破片」これだけで場内ヒートアップ。

「解説は保科優希さんです。吉田選手が前人未踏の4連覇をなし遂げるのか、ハイブリッド南選手が初優勝するのか、大一番です、さて解説の保科さん、この試合のポイントは」

「え~、やっぱりハイブリッド選手の関節技がいい場所で決まるかといったところだと思います~」

午後8時27分、いよいよゴング。吉田がいきなり先制のラリアットを狙う。しかしハイブリッドもこのムーブを読みきって脇固めで切り返す。そのあとはハイブリッドの打撃技と吉田のラリアットが真っ向からぶつかる好勝負。

-30分粘れば優勝だけど、そんなんで優勝しても価値がないわ。

ハイブリッドが10分過ぎにネオサザンクロスロック、しかしロープに近い。

逆に吉田龍子が

「そろそろ派手に決めようか!」

スプラッシュマウンテン炸裂。

これで大ダメージを負ったハイブリッド南、動きが止まってしまい・・・

「アソビじゃないんだよ!」

スプラッシュマウンテン2発もらってはもはやどうにもならず3カウントを聞く破目になった。吉田龍子逆転で、前人未踏の4連覇。

○吉田(12点、スプラッシュマウンテンからのエビ固め 16.33)ハイブリッド南(11点)

第1回優勝:ミミ吉原 第2回優勝:沢崎光 第3回優勝:南利美 第4回優勝:伊達遥 第5回優勝:草薙みこと 第6回 優勝:草薙みこと 第7回優勝:草薙みこと 第8回優勝:吉田龍子 第9回優勝:吉田龍子 第10回優勝:吉田龍子第11回優勝:吉田龍子

11本のリボンが巻かれたトロフィーを掲げてにっこり笑う吉田龍子。

「これも努力の結果というところかな。でもまあひとつ負けちゃったからね。せいぜい追い越されないようもっと強くなるよ」

しかし地獄のリーグ戦4連覇というのは凄い。あの草薙みことも3連覇だったので、驚異の記録である。

2007年6月 8日 (金)

第140回 11年目8月 吉田龍子4連覇への挑戦

11年目8月

恒例の「真夏の決戦」SPZクライマックスの季節。8月3日の夜9時、閉店後のSPZ本社ビル2階のメイド喫茶「あばしり」を借り切って記者会見が行われた。

「生ける格闘伝説」吉田龍子(21)

第8回・第9回・第10回大会優勝、6年連続6回目の出場

 「全員倒して、優勝する、それだけ。」

「七色のスープレックス」永沢舞(22)

前SPZ王者 6年連続6回目の出場

 「応援していただいているファンの皆さんの期待に応えられるよう、頑張ります」

南風GOGO」上原今日子(23)

7年連続7回目の出場

「最古参なんですけど、上原ファンが多いらしいので(笑)まだまだ上位で通用することを実証して見せます」

「最強戦士・SPZ世界王者」ハイブリッド南(20)

4年連続4回目の出場。

「完璧な闘いを見せるわ」

「生ける大食い伝説」新咲祐希子(20)

3年連続3回目の出場

「目標は優勝。賞金でおいしいものを食べに行きます」

新・最強巫女伝説」スイレン草薙(18)

3年連続3回目の出場

「修行の成果を見せないといけませんね」

「ヤングライオネス」スターライト相羽(17)

初出場

「頑張ります!」

「革命軍・投げの悪魔」マイトス香澄(18)

初出場

「革命軍は南さんだけじゃないと言うところを見せます」

今年の注目は吉田龍子の「あの草薙みこと(3連覇)もなしえなかった4連覇」がなるかどうかといったところ。かつての絶対王者・吉田も最近ではハイブリッドや新咲といったあたりと力の差がなくなってきているので、今年は優勝の読めない大会となった。なお、勝率5割を切った選手(6点以下)は「予選会行き」となることも発表された。

2戦目のなにわパワフルドーム大会から「地獄のリーグ戦」スタート。ドーム球場は46531名の観衆で満員となった。

○S相羽(2点、ジャンピングニーからの片エビ固め 10.25)M香澄(0点)

ここ数年SPZクライマックスには「営業上の理由で」外国人選手を起用しておらず、前回のリーグ戦で負け越した伊達遥草薙みことは引退してしまったので、スターライトとマイトス香澄に出場権が転がり込んできた。がトップ層の壁は厚いので「白星配給係」となることが予想された。試合の方は「未来のエース候補」S相羽がジャンピングニーを連発して白星発進。

「相羽さんもね・・・ボクっ娘だからなぁ、人気エースって柄じゃないんだよねぇ」本部席でひとりごちる社長。今回初めて興行用ポスターに相羽の顔写真が入ったが・・・

○スイレン(2点、STOからの片エビ固め)新咲(0点)

SPZタッグ王者同士の対決。新咲が最初はローリングソバットなどでイニシアチブをとっていくが、スイレンが中盤しつこくしつこく逆片エビ、ストレッチプラム、サソリ固めとねちっこく攻めてスタミナを奪う。そしてー

「全力で行きます」

スイレン草薙の隠しムーブ、「STO」炸裂。全身を強く打って新咲は3カウントを聞いた・・・

○ハイブリッド南(2点、アキレス腱固め 13.51)永沢(0点)

先月の新日本ドーム決戦の再戦。ハイブリッドはレスリングセンスが凄いので、永沢に投げ技連打をさせず極め技に持ち込んでしまう。

ドカッ!

強烈なミサイルキック2連発で転がしておいてー

アキレス腱固め。脱出不可能。耐え続けた永沢ついにタップ。

○吉田(2点、アキレス腱固め 17.44)上原(0点)

「上原さーん」人気では上原今日子のほうが上を行く。上原がドロップキックやローリングソバットで攻めて行くが、吉田もラリアット、DDT、プラズマサンダーボムで猛反撃。終盤、上原が勝負をかけたニールキックはカウント2.5。ここで吉田、あえて豪快なパワー技を温存し、アキレス腱固めで絞り上げる。上原の関節技防御は新人以下というのは古くからのファンの間では良く知られている。上原あっさりギブアップ・・・

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第3戦は札幌どさんこドーム大会。5万人収容の会場は8割の入り。

○上原(2点、フェイスクラッシャーからの片エビ固め8.28)マイトス(0点)

上原今日子、マイトス香澄を問題にせず。フェイスクラッシャー連発で初白星を挙げた。

○スイレン草薙(4点 10.42ノーザン)S・相羽(2点)

スイレン草薙の攻めはもはやエースの風格が漂う。がどうしてもファイトスタイルがあの草薙みことと似通っているので、古くからのファンの評価はいまひとつである。試合の方は相羽をあっさり下し2連勝。

○ハイブリッド南(3点、時間切れ引き分け)新咲(1点)

前日スイレンに敗れて連敗は避けたい新咲がのっけからドロップキック2連発。だがハイブリッドも姉と違って関節技の合間に強烈な打撃を織り交ぜてくるので攻めあぐむ新咲。しかしー

「心も身体も全部熱くってたまらないの!」

新咲の高速ジャーマン炸裂。

「うっ・・・」これで頭を打った戦闘マシーンは動きが格段に鈍る。そのあとはお互い攻め手を欠き30分ドロー。

○吉田(4点、ノーザンライトSH 16.52)永沢(0点)

永沢舞は明るい性格だが内面では悩んでいた。

はぁ・・・きょうの相手は吉田さんかぁ・・・

最近自分の持ち味である瞬発力と言うかバネがおかしくなっているのに気がつき始めた。でもって、きょうの相手はもっとも投げ技をかけづらい吉田さんだ・・・

まぁ、やるしかない・・・

やはりズルズルと吉田のパワーに押され続け、最後のほうでJOサイクロン、キャプチュードを出させてもらえたが、これは吉田が受けきって、永沢が攻め疲れを起こしたところを・・・

「どうりゃっ!」

キレイなフォームではないがその分スピードと重さがあるノーザンが永沢に決まる。これでカウント3。

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第4戦は九州ドーム。やはり8割の入り。

○上原(4点、パイルドライバーからの片エビ固め13.35)S相羽(2点)

スターライト相羽は懸命にぶつかっていったが、上原には余裕があった。

―かわいそうだけど、年季が違うよ。

上原がフランケンシュタイナー、フェイスクラッシャーで優位に攻めて、最後は強烈なパイルドライバー。

がすっ。

スターライト相羽の頭がマットにグサリ。

○永沢(2点、ネコキックからの片エビ固め 6.11)M香澄(0点)

マイトス香澄、わずか6分で玉砕・・・

○ハイブリッド南(5点、ネオ・サザンクロスロック14.52)スイレン草薙(4点)

前年このカードで負けているハイブリッドが猛然と攻める、ニーリフトで痛めつけておいてからの

「この技に耐えられるかしら?」

南利美を思わせる残忍なセリフ。ネオサザンクロスロックが決まりスイレン、あっという間にギブアップ・・・

○吉田(6点、キャプチュードからの片エビ固め 14.53)新咲(1点)

「先月は勝ってるけど、差はないから油断できないよね」そう言ってメインのリングへ向かった。吉田はリーグ戦にあわせた戦い方、短期決着を狙い、早い段階でスプラッシュマウンテン!新咲も必死に手数を返すが、プラズマサンダーボム、キャプチュードの連続攻撃の前に3カウントを聞いた・・・

リーグ戦3戦を消化して吉田だけが全勝をキープ。

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第5戦は若鯉球場。

「グッズショップ店長」沢崎光が

「メインは吉田龍子対スイレン草薙!まさに怪獣同士の激突!元祖パワー怪物、存在自体が反則の吉田龍子!その巨大な壁にスイレン草薙が挑む!」

と宣伝カーで後輩を「ほめ殺し」た効果で、超満員札止めとなった。

○永沢(4点 JOサイクロン。14.06)S相羽(2点)

懸命に攻めたスターライト相羽だったが、大先輩の余裕を崩すことはできなかった。何回かアームホイップで投げさせてもらえたが、これは永沢の余裕のうち。最後は、

「行きまーす!」

伝家の宝刀、JOサイクロンが発動。スターライトを沈めた。

○新咲(3点、パワーボムからのエビ固め、8.21)M香澄(0点)

ここまで3試合でドローでの1点のみの新咲。その恨みを弱いもの相手に晴らすかのように猛烈な攻めでマイトスに完勝。フィニッシュはパワーボム。

○ハイブリッド南(7点、ジャーマン15.20)上原(4点)

上原もローリングソバットやニールキックなどで良く攻めたが、途中サソリ固めを長時間食らってからは動きが落ち、ハイブリッドのジャーマン2連発に敗れた。

○スイレン(6点、草薙流兜落としからの片エビ固め 17.22)吉田(6点)

「パッシーン!」

試合開始早々、吉田のラリアット2連発。

「あー、いけませんねえ、吉田選手はあのラリアットでリズムを作ってくるんですよー」

ゲスト解説の沢崎光がにこやかに話す。

しかしスイレンも鮮やかな投げで吉田を苦しめ、プラズマサンダーボムを2度もウラカンラナで切り返すなど抵抗。その際吉田がマットに額を擦って浅い流血。一瞬隙ができた。

「ウァーッ!」

スイレンがノーザン。カウント2.5で返す吉田。

―今なら勝てる。あの技を出すしかない!

「勝たせて頂きます!」

豪快な草薙流兜落とし発動。吉田龍子この後のフォールを返せず。場内ええええ!の声。スイレンが吉田からシングルでフォールを取ってしまったのは初めて。

「か、かいせつの沢崎さん、時代が動きましたね」

「そ、そうですね。吉田選手に油断があったとは思えませんが、スイレン選手、諦めなかったですね。」

これで優勝の行方は一気にわからなくなってきた。

(長くなるので続きます)

2007年6月 7日 (木)

第139回 即売会であったときはよろしくね!

11年目7月 富沢レイ引退シリーズ(続き)

第5戦宇都宮大会のメインは、新咲・スイレンのSPZタッグ王者に吉田龍子・上原今日子組が激突する一戦。

試合は序盤から上原が捕まってしまう展開。新咲スイレンが上原に的を絞って攻める。

「上原さん、戻ってきてっ!」

懸命にスイレンのバックドロップを空中で切り返して吉田にタッチ。

パッシーン!

吉田のラリアットが新咲を吹っ飛ばす。しかし新咲・スイレンも吉田をうまく追い込み、再度出てきた上原を集中攻撃。しかしこれをなんとか耐え切った上原、吉田に再びスイッチ。

ここで合体技、吉田新咲の合体パワーボムが決まる。新咲の足が震えだしたのを見た吉田がー

「そろそろ派手に決めようか!」

吉田龍子の代名詞、スプラッシュマウンテン!新咲が高く担がれてそのあと垂直に落とされる。

しかし新咲、カウント2.9で返す。

そんなバカな?

一瞬呆然とする吉田。その隙を逃さず新咲、逆にパワーボム。カウント2で返す吉田、スイレンを呼び込んで合体パワーボム。これも吉田、2.8で返す。しかしこのあとー

スイレンのドラゴンスリーパー

「うぐっ・・・」

吉田の身体から力が抜けてゆく。

「あぶない!」

上原がカットに入ろうとするが、新咲がスッと組み付きコブラツイストで逆カット。

場内の興奮はピークに。いくら団体最強の吉田龍子でも試合終盤でダメージが深い状態でドラゴンスリーパーを食らってはあぶない。でも吉田がギブアップするとは考えにくい・・・

耐えに耐えた吉田だったが、ついに観念して、井上レフェリーにギブアップの意思表示。ついにスイレン草薙がタッグながら吉田からギブアップを奪った。場内騒然。

ドオオオオオオ!

ドラゴンスリーパーを解いて、信じられないといった表情のスイレン。そこへ新咲が駆け寄りスイレンの手を上げた。

吉田はマット上に崩れ落ちる。51分20秒の死闘の末、ドラゴンスリーパーで半失神にまで追い込まれた。上原とセコンドの渡辺に抱えられて引き揚げる。控室に着くなり吉田はぶっ倒れた。王者組が5回目の防衛に成功。

翌日群馬大会の試合前。「巨龍、撃沈!」の見出しが躍り一面の京スポ新聞(エロページはマネージャーにより抜かれている)を見ながら吉田は笑った。若手時代はこういう記事を書かれたら新聞を引き裂くこともあった吉田だが、さすがに丸くなって来たので、「まあ、昨日のことは仕方ないよ。来月のSPZクライマックスで仕返しするけど」とコメント。今日の吉田はセミで永沢富沢と組んで、エレンロレンドスカナと対戦するカード。永沢がエレンをキャプチュードであっさり撃破。

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そして最終戦、新日本ドーム大会。

富 沢 レ イ 引 退 試 合

大看板が掲げられた。

第1試合は新人同士の対戦、ボンバー来島対菊池理宇。このカードは地方大会の第1試合ですでに何度も組まれており、パワーで勝る来島の勝率がいいのだが、この日は菊池のミサイルキックが顔面に入ったか、来島の動きが鈍くなり、そこをー

「あたしが勝つんだから!」

ローリングソバット一閃。菊池がカウント3奪取。

第2試合は渡辺智美対ギムレット美月。2年目のギムレット美月、そこそこ力をつけ、5期生の渡辺とも互角の戦いをやってのけるまでに成長した。しかし渡辺も「可愛い顔してこんなのもやる」ヘッドバット!崩れ落ちるギムレット、そこを逃さずドラゴンスリーパー。これは懸命にロープに逃れたギムレットだったが、そこへ渡辺がトドメのヘッドバット。

がすっ!がすっ!

とてもアイドルレスラーとは思えない攻撃にギムレットはあえなく倒れてしまう。そこを覆いかぶさってフォール勝ち。勝負タイム13分8秒。

第3試合はビーナス麗子対ドスカナ・リブレ。意外にも常連外人のドスカナ相手に優勢に試合を進めるビーナス麗子。そのままジャンピングニー連打で押し切り、カウント3を奪った。勝負タイム14分5秒。10期生も確実に力をつけてきている。

休憩明けの第4試合は9期生のスターライト相羽、ガイア小早川にエレン・ロレンのニールセン一族が対戦するカード。しかし連係では9期生のそれよりニールセン一族の血の連係が上回り、スターライト相羽が奮戦するもガイア小早川が捕まった・・・しかし最後に大逆転。ガイア小早川のミサイルキックがエレンにクリーンヒット。この後のフォールをエレン返せず。これには場内どよめきが。9期生コンビが常連外人に勝ってしまった。

そして第5試合。

「次の試合に登場する富沢レイ選手は本日が最後の試合となります、ファンの皆様より一層のご声援をお願いいたします」

意外にも新日本ドームで引退試合というのは富沢レイが初めてである。「ムーンリベンジ」に乗って富沢レイ入場。

「赤コーナー、

千葉県、八千代市

出身ー、とみざわー、れーいー!」

赤い紙テープがリングを埋め尽くす。

そして試合開始。対戦相手は8期生のマイトス香澄。地力ではマイトスのほうが上で、引退試合の異様な雰囲気も小川戦で経験済みなのでこんどはマイトス、容赦なく攻めた。富沢もスリーパーなどで手数を返そうとするが相手の勢いの方が上であった。

―レイさん、今までありがとうございましたっ!

マイトス香澄のバックドロップ炸裂。これで富沢は動けなくなり3カウントを聞いた。勝負タイム10分ジャスト。

あーあ、終わっちゃった。私のレスラー生活。

富沢レイ、引退後はSPZフィーバー千葉店の店長に「栄転」が決まっている。

セミ前はスペシャルタッグマッチ。上原今日子スイレン草薙対ナターシャ・ハン、ドリュー・クライのタッグ戦。しかしこの試合はEWAトップ2が意地を見せ、上原に狙いを絞りドラゴンスリーパーでギブアップの言葉を吐かせた。

セミファイナルは吉田龍子対新咲祐希子。1月に「掟破りのスプラッシュマウンテン」で失神させられた吉田の復讐戦カード?である。今回も大技が乱れ飛ぶ攻防。

「心も身体も全部熱くってたまらないの!」

新咲の高速ジャーマン!吉田がカウント2.8で返す。ここで新咲が非力となった吉田を担いで、

スプラッシュマウンテン!

半年前と同じように自分の得意技で垂直にマットに突き刺さった吉田。しかし、レスラーの本能だけでカウント2.9で返す。

この後の吉田は記憶が飛んでまったく内容を覚えていない。夢中でノーザン、パイルドライバーを繰り出して新咲から3カウントを奪った。14分41秒の「果たし合い」が終わり、両者ダメージが深くしばらく起き上がれなかった。

メインはSPZ選手権、チャンピオン永沢舞にハイブリッド南が挑む。永沢もネコミミ尻尾と言う外見に似合わない投げまくりファイトでSPZベルトを5回も巻いている実力者だが、直近では動きに翳りが見え始めている。しかしハイブリッドのねちっこい攻めを耐えて、自分の持ち味である投げ技で攻めまくる。しかしハイブリッドも「格闘サイボーグ」っぷりを見せ、ニーリフト2連発で動けなくしておいての踵落とし。これはカウント2.8で返した永沢だったが、アキレス腱固めで痛めつけてからもう一度―

がすっ!

永沢の頭に踵落とし命中。これで視界がブラックアウトした永沢、3カウントを聞いてベルトを明け渡した・・・・勝負タイム26分8秒、ハイブリッド南が28代目王者に返り咲いた。これで3度目の戴冠、戴冠回数でも姉の南利美を越えた。

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メイン終了後、富沢レイの引退式。

「みんな、今まで応援ありがとう!即売会であったときはよろしくね!」

場内これには爆笑。

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富沢レイ(SPZプロレス 2期生)

2010年8月8日、新潟・柿崎アリーナ大会の草薙みこと戦でデビュー。2019年7月20日、新日本ドーム大会でのマイトス香澄戦で引退。稼動月数108ヶ月、出場試合数(概算)760試合。

タイトル歴:SPZタッグ選手権(第8代、第11代、第14代王者、パートナーは永沢舞)

写真集 4冊

2007年6月 6日 (水)

第138回 11年目突入、そして富沢レイも・・・

レッスルエンジェルス プレイ日記のようなもの

「輝くエッセンシャル」(かなり脳内妄想はいっています)

11年目4月。

新人スカウトでボンバー来島獲得、新人スカウトで菊池理宇獲得。

ファイナルシリーズに出た吉田龍子とハイブリッド南が重症になってしまったのでそれぞれ休養させた。

11年目4月シリーズ、このシリーズははじめて今野社長は「体調不良」を理由に、巡業に帯同しなかった。観客動員と試合結果のみメールで送られてくる。リングアナは営業の社員に代行させた。

2戦目のどさんこドーム大会、SPZ選手権で永沢舞が新咲祐希子からベルト奪取。第27代王者に輝いた。

最終戦新日本ドーム大会では新咲スイレンのタッグがナターシャ・ハン、ドリュークライ組相手にSPZタッグ王座4度目の防衛。

11年目5月シリーズ、このシリーズも今野社長は巡業に帯同しなかった。最終戦横スペ大会では永沢舞対吉田龍子のSPZ選手権。永沢が30分16秒の激闘を制し、JOサイクロンで初防衛に成功。

11年目6月、SPZは3つ目の自社ビル「SPZサードビル」を30億円かけて横浜市菊名に建設。全国に展開するグッズショップの物流センターとグッズショップ販売部門はこちらへ移した。

スイレン草薙ファースト写真集「TSUBASA」、新咲祐希子ファースト写真集「ISOKAZE」発売。

11年目6月シリーズ、今回も今野社長は巡業に帯同せず。初期を支えた選手がいなくなって団体経営の情熱が失せたか。最終戦さいたまドーム大会メインは永沢舞対上原今日子のSPZ選手権。永沢が23分16秒の熱戦の末キャプチュードで2度目の防衛。

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11年目7月。

「うーん、もう若くないしね」

富沢レイが引退を表明。

2009年にIT業界から転進した今野社長が設立したお嬢様プロレス団体「SPZプロレスリング」は、とうとう団体草創期の苦しい時代を知る世代の1・2期生全員が引退・・・となってしまった。

この団体を今日の隆盛に導いたのは、選手たちの頑張りもさることながら、今野社長が第一線に立って自らリングアナを務め増収を図る一方で、自社ビルを建設したり、全国35箇所にグッズショップを設置するなどの積極策が功を奏したのだが、11年目に入ってから今野社長は元気がなくなり、巡業への帯同もしなくなった。

下世話な週刊誌の表現を借りれば「社長とただならぬ仲?だった小川ひかるが10年目の8月に引退して団体経営への情熱が失せた」のであった。秘書の井上霧子や引退してレフェリーになった伊達遥や保科優希は社長のあまりのヘタレップリにあきれ返っていたが、それでも現場の細部に口をださなくなっただけで、資金的な管理はしっかりしてくれていたので社長への不信感までは至らなかったが。

しかし常連ファンは「最近のSPZの地方カードはつまらなくなった」とネット上の書き込みで噂していた。以前は実力に差がある選手どうしのシングルマッチは組んでいなかったのが平気で組まれるようになったし、昨日は戦った選手同士が今日はタッグを組むと言うことを平気でやるので感情移入がしづらい・・・など。

以前は、対戦カードは第1試合からメインまで今野社長がひねりをきかせて考えていたのが、タイトル戦以外は「コンピューターチョイスによるオートマッチメイク」になってしまったので古くからのファンは「SPZも変わったな」と噂されていた。しかし、個々の選手の人気が高いおかげで観客動員への影響はでていなかった。

11年目7月「富沢レイ引退シリーズ」が始まった。富沢は実力はともかく人気は高い選手で、今野社長ともアニメの話で盛り上がった仲なので、さすがに今シリーズのカードは社長が組んで、巡業にも帯同した。

第3戦山形大会、セミで組まれたのは永沢舞・富沢レイ組対ハイブリッド南、マイトス香澄の対戦。元SPZタッグ王者同士の激突だが、いまは富沢のひとり格落ち状態だった。ましてSPZの世代交代の波は上原今日子や永沢舞まで「最近は思い通りの動きが出来なくなってきました」と言わしめる状態。

「ヤー!!」

マイトス香澄の掛け声とともにバックドロップが決まる。富沢頭から激突。

くっ。

富沢レイは薄れる意識の中、懸命に場外へ逃げた。

―ちょっと休むー。

富沢レイのよくやる「ズルイ戦法」である。しかし場外ではハイブリッド南が待ち構えていて、場外でネオサザンクロスロック!

「ひぎぃーっ!」

さすがにこれは伊達レフェリーが制止したが、カウント19でリングに戻ったとたん、ハイブリッドがブレーンバスター。フラフラと起き上がったところを

げしっ。

ハイブリッド南のハイキック直撃。永沢のカットはマイトスに阻まれ、富沢は3カウントを聞いた・・・

―やっぱりもう後半の戦いにはついていけない。

富沢レイはセコンドの肩を借りて控室へ戻った。

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2007年6月 5日 (火)

第137回 ファイナルシリーズ大暴走

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レッスルエンジェルスサバイバー リプレイではない完全妄想作話。酒を飲みながらこの回は書きました・・・

『ファイナルシリーズ』

10年目3月シリーズの前、草薙伊達引退でバタバタバタバタするSPZオフィスに一通のエアメールが届いた。

社長、アメリカの「XYZプロレスリング」から招待状が・・・

「ああ、来たか・・・」

XYZというのはアメリカ・ラスベガスの地下プロレス団体。そこが「SPZはえらい強いらしいのぉ、地下プロレスの選手とどっちが強いか見たいのぉ」ということで選手4名の派遣を申し入れてきた。断ると角が立ちそうなのと、賞金が莫大だったのでSPZはこの申し出を受け、スターライト相羽、永沢舞、ハイブリッド南、吉田龍子の4名をアメリカに派遣した。ラスベガスの某リゾートホテルの地下に特設リングが設置された会場である。これから3日間にわたり「ワールド・ウィメンズ・レスリングサミット」が開催される。

といってもIWWFやTWWAといったアメリカの強豪団体は「いくら世界各国から強豪が集まるといっても地下プロレスには協力したくない」ということで選手を派遣しなかった。結果的にこの判断は正しかったことになる。有名どころののプロレス団体で選手を派遣したのはSPZ、メキシコのAAC、イギリスのEWAといった「金に目がくらんだ」団体だけであった。

「ウエルカム・SPZのミナサン。私は今回のレスリングサミットのスーパーバイザーを務めるイハビーラと申します」

白衣を着てメガネをかけたアメリカ人女性化学者が今野社長と井上に挨拶。

「この度はわれわれの招待に応じてくれてありがとう。日本で一番強いといわれているSPZの選手たちと戦えるとあって、うちの団体の選手たちも楽しみにしているし、私も楽しみだ、カーカカカカ」

「井上さん、この地下プロレス、怪しくない?」

「そうは言いましても、もう前金の10億は振込まれていますから戦うしかありません。相羽や永沢は海外遠征が長かったので他流試合には慣れていますし、ハイブリッド南や龍子ちゃんを倒せる人間はそうそういません」

「・・・そうかなあ」

初日のヤングガールトーナメントはスターライト相羽が登場。

出場選手は以下の8名。

スターライト相羽(SPZ)

アイグル(XYZ地下プロレス)

ブロンド・ボンバー(OWP・アメリカ独立団体)

アリゲーターレディ1号(クロノス・アメリカ)

B3号(XYZ地下プロレス)

ブラックパピヨン(OWP・アメリカ独立団体)

イレーヌ・シウバ(AAC)

エル・ウトンベリノ(フリー)

1回戦でスターライト相羽はアイグルと対戦。

「アイグル、強い!」

アイグルはモンゴル出身のパワーファイター。ところかまわず再度スープレックス気味に投げまくってくる難敵だった。しかし、

―パワーファイトだから丸め込みはどうかな。

スモールパッケージを繰り出してみたら3カウントはいってしまった。これで準決勝進出。

準決勝の相手はアリゲーターレディ1号。アメリカの独立団体系の選手だったので問題にせずキャプチュードでケリ。

しかし決勝戦の相手はXYZ地下プロレスのB3号。イレーヌ・シウバを破ったのだから警戒しなければと思って相羽は慎重にロックアップ。そしたらいきなり目にも留まらぬハンマーブローが相羽を襲う!

「ぶっ!」

リング下にはノートパソコンを持ったスーパーバイザー、イハビーラ女史が。

「カーカカカ、B3号はちょっと改造しておってだなあ、打撃技のスピードは誰にも見切ることができないのだ」

―こりゃあ受けられないな。

スターライト相羽はコーナーに登る。そのままダイブ。B3号はミサイルキックかタックルかと思って叩き落そうとしたが相羽は空中でうまく跳ねて体勢を立て直し、上からB3号の腰をフックしてローリングクラッチホールドで丸め込んだ。

―ワン、トゥ、スリー。

虚を突かれたB3号はカウント3を喫した。これでヤングガールトーナメントはスターライト相羽が優勝した。

「やりましたね、これで賞金2億円ですよ!」

井上霧子が目を輝かせる。

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翌日のタッグトーナメントはハイブリッド南と永沢舞のコンビで参戦。

出場チームは以下の8チーム。

ハイブリッド南、永沢舞(SPZ)

ネプチューン、プルート(クロノス・アメリカ)

アナスタシア、紅影(XYZ地下プロレス)

坂上智世、YOJINBO(胸尾組)

作品ナンバー001、作品ナンバー002(OWP・アメリカ独立団体)

ドスカナ・リブレ、ジョーカーウーマン(AAC)

スプリングボック、オストリッチ(OWP・アメリカ独立団体)

B4号、B5号(XYZ地下プロレス)

1回戦でSPZチームはネプチューン、プルート組と対戦。

「デッド・スクリーム」

プルートの変形のど輪落し乱発にややてこずった永沢だが、最後はムーンサルトでカウント3を奪って準決勝進出。

準決勝ではXYZのアナスタシア、紅影組と対戦。アナスタシアは女医さんギミック、紅影は忍者ギミックのレスラーのように見えた。試合は紅影のすばやい動きに苦しんだが、ハイブリッドがうまくアナスタシアをアキレス腱がために捉える。

「さ、この技でギブアップしなさい!」

「フ、バカメ」

アナスタシアはポケットから電極を取り出して

「フラットライナー」

ハイブリッドの腕に触れる。

「うおおおおおおっ!」

ハイブリッド南を襲う電気ショック!卑劣な反則攻撃にもほどがある。しかしレフェリーは見て見ぬふり。たちまちハイブリッドはその場に悶絶する。しかしここで永沢が好フォロー。

「ええかげんにせえよ。」

永沢、怒りのJOサイクロン。受身があまり上手でないアナスタシアはこれで悶絶。2人がリング上に転がる中、

「来い、アクトーども!」

怒りの永沢舞、普段は見せない垂直落下式ブレーンバスター。これで紅影から3カウントを奪って決勝進出。

決勝はB4号、B5号戦。しかし準決勝で電気ショックをくらったハイブリッドのダメージが濃い。立っているのがやっとだ。

「ルミさんは控えてて、あたしが2人を倒すから」

しかし相手チームのB4号は人間離れした跳躍力で、永沢にいつもの投げまくりプロレスをさせない。

「カーカカカ。B4号はちょっと改造を行って、鳥類の機能を入れてある。常人が勝つことなどできないのだ」

マッド科学者、イハビーラがいつのまにかリング下で吼える。

「ハァ、ハァ、ハァ・・・」

レスリングとは呼べない不毛な追いかけっこが20分ほど続いた。永沢はだんだん疲れていった。ここで相手チーム、B5号登場。こんどは永沢とロックアップ。

あ、意外とチカラ強い。えー、うんしょ。

力比べがしばらく続いたが、B5号、いきなり口から炎を吐いた。

ごおおおおっ!

「あつっ」

瞬時に伏せて顔面直撃は避けたものの、炎が永沢の頭を襲う。

たちまち倒れる永沢。そこをのしかかったB5号、あっけなく3カウントを奪われた。

「うー、熱いよー、ずるいよー、そんあのありー?」

「カーカカカ。B5号は筋肉を増強した上、口から火炎放射機能をつけたのだ。これぞまさに人間を超越した殺人兵器、ウァハハハハ!」

永沢とハイブリッド組は準優勝に終わった。SPZは準優勝賞金「約4億円」をゲットしたものの、準決勝で電流攻撃を食らったハイブリッド南のダメージは深く、「ラスベガス観光」もできず日本へ即帰国となった。

「どうやらこの団体、あのイハビーラというマッド科学者が地下プロレス団体を乗っ取って配下の改造レスラーの実力を試す実戦テストのようですね・・・参戦させたのはまずかったかもしれません」

「だからアメリカのメジャー団体は応じなかったのか・・・でもまあ吉田さんなら人間離れしているから何とかやってくれるだろう」

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最終日のシングルトーナメントには吉田龍子が参戦。

出場選手は下記の8名。

吉田龍子(SPZ)

ジェミニ(XYZプロレス)

ゾンビガール(OWP・アメリカ独立団体)

藍原まこと(XYZプロレス)

レディーX(XYZプロレス)

ハイサスカラス(AAC)

ナターシャ・ハン(EWA)

アメリカン・ハイウェイ(OWP・アメリカ独立団体)

1回戦で吉田龍子はジェミニと対戦。

「アナタがリューコ・ヨシダね。絶対王者といっても上には上がいることを教えてあげるわ。地獄で私の強さと美しさを語るがいいわ」

「とっとと終わらせて帰るか・・・」

正面からダッシュでジェミニが突進してくる。組みとめようとどっしりと構える吉田。しかしいきなり背後を殴られた。

がすっ!

「な・・・?」

「ファントム」

いつのまに増殖したのか、前と後ろ、ジェミニが2人いる。

「こ、これは・・・」

「ふふふふ、どちらが本物デどちらが幻かわかるはずがない。食らえ!スパイラル。マシンガンパンチ!」

前と後ろから吉田はたこ殴り状態。しかし吉田もしっかりガード。

「あー、うるさい。要するにファントムっていうのはギミックで要するにあんたら姉妹なんだろ。レフェリー、反則じゃねえのか?」

レフェリーは聞こえないふりをしている。

「そうか、アウエーのリングだったんだね。」

「遊びはもう終わりだ!氏ね!クロスボンバーッ」

前と後ろからラリアットを食らって吹っ飛ぶ吉田。しかしすかさず起き上がる。

「ふっ。なんという気迫、なんという執念」

いつのまにかジェミニ姉妹のそれぞれの右腕には威力を倍化させるためなのか、ジャラジャラと鉄製のチェーンが巻かれていた。

「今度こそ貴様の最期だ!クロスボンバー!」

「そうは行かないよ。」

吉田は寸前で身をかがめてかわした。当然壮絶な同士討ち。これでジェミニは起き上がれなくなって吉田のTKO勝ちが宣された。

準決勝で吉田は藍原まことと対戦。

「あ、藍原さん・・・」

藍原まこと、柔道ではそれなりに名の知れた選手だったのだが、いつのまにか地下プロレスに身を投じていたのである。吉田はプロレス入門前、柔道選手権で彼女に負けたことがある。

藍原との戦いは熾烈を極めた。藍原がすきあらば三角締めなどの絞め技を繰り出してくるので対応が難しい。どうにか吉田がスプラッシュマウンテンで勝利した。

準決勝第2試合はレディーX対ナターシャ・ハン。レディーXは1回戦でハイサスカラスをスモールパッケージでフォール勝ちして勝ち上がってきた。ナターシャも1回戦でアメリカンを一蹴してコマを進めてきた。吉田は花道億から見ていた。

5分ころ、ナターシャのSTFが決まり、レディーXの首が変な方向へ曲がってゆく。

「壊れなさい・・・」

ばきっ。会場に響く不気味な音。首の骨が折れたか。

レディーX、しかし無表情で起き上がり、首が変な方向に曲がったままナターシャに

がすっ!

目にも留まらぬ速さのニーリフト一撃。

「はううう・・・」

崩れ落ちて片ひざを突くナターシャ、そこを逃さずシャイニングウィザード。鈍い音が響く。

「リングコスチュームの下、膝になんか入れてんじゃねえのか・・・」

疑惑のシャイニングウィザードを食らって、たまらずこれでナターシャ・ハン、カウント3を喫した。

そして決勝戦、吉田龍子対レディーX。

吉田はゴングが鳴るやいなや猛ラッシュ。ラリアットで転ばせていきなりのプラズマサンダーボム、そして抱えあげてのスプラッシュマウンテン。リング上に大の字になるレディーX,沈黙したのか。そのときリングサイドにXYZのスーパーバイザー、イハビーラ女史が現れた。

「カーカカカ、教えてやろう。レディーXはもはや人間ではない。半分以上は機械でつくられた究極の殺人兵器。このトーナメントで優勝したあかつきには対テロ戦争用兵器として国防省に売り込み実戦配備させるのだ。いってみれば実践テストよ」

「おもしろい、あたしも人間じゃないって言われてたんだよ」

しかしレディーX起き上がるやコスチュームを自ら吹き飛ばした。スーツっぽいコスチュームの下から出てきたのはもう機械としか思えないメタリックなボディ。目からはオレンジ色の光が。

「ビーッ、ビーッ」

上半身を回転させながらリング上をすばやく動き、

「ターゲット・ロックオン」

レディーXが吉田の方向に右腕を構えた。次の瞬間、レディーXの右腕がロケット状にものすごい勢いで発射され、吉田は顔面にものすごい勢いのパンチを食らって昏倒した。レディーX,そのまま踏みつけフォール。吉田は3カウントを聞いた。

「ロケットパンチかよ・・・」

敗れた吉田は頭を抑えながら控え室へ戻った。このとき吉田の怪我はたいしたことではないように思われたが、日本に帰って精密検査をしたところケイツイを痛めており1ヶ月間の安静を余儀なくされた。

リング上ではイハビーラ女史が高笑い。

「まあ、よくやったよ。優勝しちゃうとあとあと厄介だから、SPZの実力はまあ見せることができたし」

こうしてSPZはファイナルシリーズでXYZの奸智にはまり完全制覇こそできなかったが、それでも20億の現金収入をもたらした。

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(筆者より。酔った勢いで書いた文なのでアップするのは恥ずかしかったのですが、ファイナルシリーズではカオスとかめぐちぐといった、ずっと後に出す予定の選手がゴロゴロでてくるので整合性が取れなくなるので、他の作品から出場選手を借りてきてぶつけるという暴挙に出ました。笑って許してください。次回、11年目、来島さん採用。しかし今野社長やる気なくす。)

2007年6月 4日 (月)

第136回 10年目3月 伝説の終わるとき

10年目3月。

伊達の引退を見届けたかのように草薙みこと引退。

「そろそろ潮時のようですね」

本人いわく、草薙神社からの神職として戻って来いという要請をいままで先延ばしにし続けてきたが、ここ数ヶ月思うようなレスリングができなくなったので引退を決意したとのこと。

「今まで本当にありがとうございました」

今野社長は予期してはいたが、寂しさを隠せなかった。初期のSPZを盛り上げたのは南利美伊達遥草薙みことの3強だった。それがみんないなくなってしまう・・・

悪いことに先シリーズで吉田龍子・上原今日子・マイトス香澄の3人が負傷。3人とも「草薙さんの最後のシリーズだから出たい」と言い張ったので、出場試合数を減らして参戦させることにした。

引退シリーズ初戦は九州ドーム。埋まらなかったが採算ラインはクリアした。第4試合でなんとスイレン草薙が永沢舞をドラゴンスリーパーでギブアップさせる波乱が。

草薙みことはセミ前で「スターライト相羽凱旋試合」の相手。長いことAACに修行に出していたスターライト相羽を帰国させた。しかしまだまだ草薙もこのクラスの選手には強く、草薙流兜落としでフォール勝ち。

九州ドーム大会メインでは、前月フルタイムドローに終わったハイブリッド南対新咲のSPZ選手権決着戦。だが今回は新咲が一方的に攻めて、フロントスープレックスの連打で大ダメージを与え、最後はフェイスクラッシャーでカウント3奪取。

「やったー!」

新咲祐希子が勝負タイムわずか12分23秒でタイトル奪取。ハイブリッドは調子でも悪かったのか、あっさり敗れてタイトルを手放す羽目になった。

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SPZ世界選手権(60分1本勝負)

新咲祐希子(12分23秒、フェイスクラッシャーからの片エビ固め)ハイブリッド南

新咲が第26代王者となる

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翌々日は大阪なにわパワフルドームでの試合。いちおう満員になった。草薙はセミで永沢舞と対戦。もはや永沢相手だとサンドバッグ状態。試合中盤に草薙流兜落としで反撃するもあとが続かず、ノーザン2連発からJOサイクロンの猛攻を浴びて敗北した。勝負タイム10分11秒。

大阪大会メインは新咲スイレンのSPZタッグ王者に上原吉田が挑むタイトルマッチ。4人の意地がぶつかり合う好勝負となった。

吉田龍子DDT,そして

「上原さん!」

合体パイルドライバーが新咲に決まる。

しかし新咲も必殺高速ジャーマンで吉田をブン投げてスイレンにスイッチ。スイレン草薙も最近は吉田龍子相手に力負けしなくなり、みごとなバックドロップで投げつけたが、吉田もスプラッシュマウンテンを繰り出す。

しかしフィニッシュはいきなり。吉田に代わって出てきた上原にスイレンがストレッチプラム。吉田龍子がカットに入ろうとしたが、新咲の「たいあたり」で場外転落。これでストレッチプラムが長いこと決まってしまい、上原ついにギブアップ。

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SPZ世界タッグ選手権

新咲祐希子、○スイレン草薙(30分くらい、ストレッチプラム)吉田龍子、上原今日子×

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3戦目は若鯉球場。満員の盛況となった。セミで草薙みこと対スイレン草薙。しかしもうスイレンの実力は草薙みことを遥かに凌駕しており、バックドロップであっさり3カウントを奪った。

第4戦は名古屋しゃちほこドーム。タイトル戦が組まれていないのに超満員となった。草薙はセミでハイブリッド南と対戦。草薙流兜落としを繰り出し終盤よく粘ったが、11分22秒、ハイブリッドのジャーマンに敗北。

名古屋大会メインは集客のために組んだ永沢舞対新咲祐希子のノンタイトル戦。しかし永沢が19分26秒、ドラゴンカベルナリアで勝ってしまった。ベルトがかかっていなかったが、SPZ王者に勝ってしまったのだから凄い。

第5戦は福島大会。草薙みことはセミでSPZ王者新咲祐希子とシングル対決。新咲が終始優位に試合を進め、最後はフェイスクラッシャーでカウント3を奪った。

第6戦は秋田大会。上原今日子とのシングルマッチ。中盤までは互角の闘いを繰り広げたが、上原の後半の大技ラッシュについていけず、ニールキック、パワーボム、ジャーマンとつながれてフォール負け。

第7戦は地元凱旋、山形大会。スイレン草薙と草薙みことがタッグを組んで、革命軍のハイブリッド南、マイトス香澄と対戦。ハイブリッドのアキレス腱固めに苦しんだが、最後はマイトス香澄をうまく分断し、スイレンが強烈なエルボーをたたきこんでフォール勝ちをスコア。

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そして最終戦、さいたまドーム。

「草薙みこと引退試合」の大看板が。

第1試合はビーナス麗子対ガイア小早川。ビーナス麗子がジャンピングニーで勝利。勝負タイム8分24秒。

第2試合は外国人選手同士のタッグ戦、エレン、ロレンのニールセン一族にアンナ・クロフォード、ウェイン・ミラーが激突。EWA系外国人選手同士のの熱戦が展開され、最後はアンナのしつこいアキレス腱固めでロレンがギブアップ。24分32秒の激闘。

休憩前の第3試合は渡辺智美対富沢レイ。アイドルレスラー同士の対戦なので会場は盛り上がった。同じ2期生の草薙引退ということで燃えたのか、富沢が積極的に攻め、最後は20分20秒、ストレッチプラムでギブアップ勝ち。ここで15分の休憩。

休憩明けの一戦は上原今日子が新人のギムレット美月と組んで、ハイブリッド南、マイトス香澄の革命軍と対戦。ギムレットはハイブリッドにも臆することなくアキレス腱固めをかけてゆく。しかしハイブリッド強い。上原をアキレス腱固めで戦線離脱させるとあとはギムレット美月をあっさりブレーンバスターで処刑。勝負タイム15分43秒。

セミ前はスイレン草薙対スターライト相羽。凱旋帰国した相羽だがまだまだ上位陣の壁は厚く、スイレンのバックドロップ、ノーザンの波状攻撃の前に8分47秒、敗退。

そしてセミファイナル。

「次の試合に登場する草薙みこと選手は、この試合が最後のファイトとなります。ファンの皆様より一層のご声援をお願いいたします」

青コーナーから「赤い破片」に乗って吉田龍子が入場。

赤コーナーから「オリエンタルクラッシュ」に乗って草薙入場。はっきりいって勝敗は見えているカードだが、「最後は叩きのめされて終わったほうが未練がなくなります」と草薙が申し出たので、あえてこのカードを組んだ。

本日のセミファイナル、シングルマッチ30分1本勝負を行います、青コーナー、

熊本県八代市

出身、よしだー、りゅーこー!」

「赤コーナー、

山形県朝日町

出身、くさなぎー、みこーとー!」

白い紙テープがものすごい量降り注ぐ。

「レフェリー井上霧子」

そしてゴング。かつてはSPZベルトやSPZクライマックスで激闘を繰り広げた両者だがいまや力の差は歴然。開始早々吉田がラリアット2連発。倒れたところへギロチンの追い打ち。草薙何もできぬままDDT、パイルドライバーを食らい、逆片エビを挟んで2度目のパイルドライバー。これを草薙は返せなかった。勝負タイム9分22秒。草薙の惨敗に終わった。

―終わった・・・

草薙はぼうっとかすんだ視界の中、天井を見上げた。

メインは永沢舞、新咲祐希子のドリームタッグが、ナターシャ・ハン、ハイサスカラスの最強外人タッグと対戦するカード。新咲がムーンサルトでナターシャを仕留めた。

「涙で・・・目がくもって・・・どうしてこんなに・・・すみません・・・」

普段は感情を余り表に出さない草薙の涙。

こうしてSPZの伝説がまた一つ終わった。

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草薙みこと

2010年4月27日、

富山市

体育館で小川ひかる戦でデビュー、2019年3月9日、さいたまドームでの吉田龍子戦で引退。稼動月数108ヶ月、推定出場試合数792試合。

タイトル歴:

SPZ世界選手権(第2代、5代、13代王者)

AAC世界選手権

SPZ世界タッグ(第2代、7代、10代王者、パートナーは小川ひかる)

AAC世界タッグ(パートナーは沢崎光、小川ひかる)

第5回・6回・7回 SPZクライマックス優勝

第3回SPZタッグリーグ戦優勝(パートナーは沢崎光)

第4回SPZタッグリーグ戦優勝(パートナーは永沢舞)

第5回・6回SPZタッグリーグ優勝(パートナーは小川ひかる)

写真集1冊

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2007年6月 3日 (日)

第135回 伊達遥最終試合

10年目2月、伊達遥引退シリーズ第7戦は長野大会。

あと2つ・・・か・・・

きょうの伊達の相手は革命軍のマイトス香澄。よほどのことがないかぎり勝てる相手だ。

「うぁっ!」

伊達が試合開始早々からエルボーの乱打。しかしマイトスも・・・

「これがボクのとっておきだよ!」

ジャーマンで伊達を投げる。これで伊達も必殺技を出した。

「これで決めます。」

伝家の宝刀SPZキック炸裂。相手の戦意を根こそぎ不稼動にしてしまう蹴りだ。もちろんこれで試合は終わった。勝負タイム10分22秒。

そして最終戦横スペ大会。

「伊達遥 引退試合」大看板が掲げられた。例によって午後2時から「伊達遥グッズ処分セール」開催。なにしろ商売好きの今野社長、グッズショップは全国33箇所にあり、その全在庫をかき集めたから相当の量にのぼった。

伊達遥はいつもの横スペ大会と同じく愛車のサニーで会場入り。

午後5時半開場。SPZチャンピオンに6回も輝いた文字通り人気実力兼ね備えた看板選手だったので超満員のファンで膨れ上がった。

午後6時半、例によって「おもしろビデオ」が上映された。要約するとSPZの旗揚げの頃は大変だった。しかし伊達遥は長身を生かした打撃技に活路を見出し、1期生の中で最初にチョチョカラスを倒すなど、その攻撃力は恐ろしいものがあった。ニーリフトは各選手をどん底に落としいれ、いつしか「殺人ヒザ魚雷」といわれるようになった。そしてハイキックは「SPZキック」といわれるようになった・・・しかし伊達も10年近く現役を続け、身体はボロボロの状態となったので引退を決意した。今回も落ちのつけようがなかった。

第1試合はビーナス麗子対ガイア小早川。ビーナスがジャンピングニーでガイアを仕留めた。

第2試合はギムレット美月対ドスカナ・リブレ。さすがにこれはドスカナが6分ちょいでミサイルキック、完勝。

第3試合は富沢レイ、渡辺智美の「アイドルコンビ」がエレン・ロレンのニールセン一族と激突。人気選手の登場に館内沸く。しかしニールセン組が抜群の連係でアイドルコンビを追い込む。渡辺もスリーパーなどで反撃するが、ロレンの鋭い掌底にことごとく流れを止められ、最後はロレンがラリアット、フロントスープレックスで富沢を戦闘不能にしてから渡辺にはニーリフト、フロントスープレックスで叩きのめし3カウント奪取。

その試合が終わると休憩。伊達遥はリングコスチュームに着替え、試合前のウォーミングアップを始めた。次の試合に出る草薙みこととタオルの引っ張り合いをして軽く調整。

休憩明けの第4試合は草薙みこと対ウェイン・ミラー。いくら草薙に往年の力はないといってもこのクラスの外国人選手なら安心して見ていられる。サソリ固めでさんざんいたぶってからのタイガースープレックスで完勝。

「きょうは伊達さんの最後の試合がありますから気合が入りました」と草薙はコメントした。

セミ前は「ドリームタッグマッチ」ハイサスカラス、吉田龍子対ナターシャ・ハン、永沢舞。先発を買って出たのは両外人だった。メキシコ対ロシアの威信をかけた戦いが繰り広げられる。そのあと吉田登場。いつものように重量感あふれる攻めで永沢を追い込んでゆく。そして4人の意地がぶつかり合う好勝負が展開。ハイサスカラスがムーンサルトを出せばナターシャはSTF。決まったかに見えたらパートナーがカット。しかし最後は吉田がデンジャラスキック、キャプチュードとつないでナターシャを沈め、前王者の意地を見せた。

「あ・・・セミ前終わった、行かなきゃ」

伊達遥は花道奥へ移動を始めた。

そしてー

「次の試合に登場する伊達遥選手は本日が最後の試合となります、ファンの皆様、よりいっそうのご声援をお願いいたします」

今野リングアナの放送に館内が異様な声に包まれる。

まず花道から上原今日子入場。若手時代にながいことタッグを組んできた。トップ戦線に入ってからは組む側から戦う側になり、打倒伊達に執念を燃やしたが、伊達が衰え出すまで壁を越えることはできなかった。万感の思いでリングイン。

そして伊達遥のテーマ曲がかかり、白いロングガウンに身を包んだ伊達遥が最後のリングへ向かった。館内ものすごいハルカコール。

これで・・・最後。

ビーナス麗子が開けたロープをくぐってリングイン。

「本日のセミファイナル、シングルマッチ30分1本勝負を行います」

青コーナー、

沖縄県那覇市

出身、うえはらー、きょーこー。

赤コーナー、

宮崎県都城市

出身、だてー、はるかー。

紫色の紙テープの山ができた。セコンド陣総出で除去。

井上レフェリーのチェックのあと、本部席に合図を送ってゴングを要請。

カァンッ!

午後8時33分、ゴング。

いつものように上原はキレイなフォームでドロップキックを打ち込んでゆく。伊達もエルボーやチョップで反撃するが、上原が早めの勝負に出た。

―私は伊達さんのすべてにあこがれていた。けっきょく全盛期の伊達さんには勝てなかった。最後の相手に指名してくれたのは嬉しい。でも、こんな時間は正直言ってつらい・・・

上原は思いを押し殺しながら伊達を潰しにかかった。

フェイスクラッシャー2連発からシャイニングウィザード、そしてフライングニールキック。怒涛の波状攻撃である。

ワン、トゥ・・

カウント2.9で返す伊達。懸命に脇固めで反撃するもそこまでであった。

―伊達さん、ごめんなさい、これで終わりっ!

ロープに逃げた上原が、2発目のフライングニールキック。これで伊達は派手に吹っ飛んで動かなくなった。そこを押さえ込んでカウント3。

「15分49秒、フライングニールキックからの片エビ固めで上原今日子の勝ち」

    ・・終わった・・・・

伊達は横浜スペシャルホールの天井を見上げながら呟いた。

けっきょくこのシリーズ、殺人ヒザ魚雷が火を噴くことはなかった。

メインは新咲祐希子、スイレン草薙対ハイブリッド南、マイトス香澄のSPZタッグ戦。ハイブリッドが果敢に攻めたが、終盤はやはり、ひとり格落ちのマイトス香澄が捕まってしまい、最後は新咲のハイキックで無念の3カウント。勝負タイム23分32秒。王者組が2度目の防衛に成功した。

メイン終了後引退式。

「みんな・・・ホントに・・・ありがとう」

こうしてSPZを旗揚げ年度から支えてきた選手の最後のひとりがリングを去った。

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伊達遥

2009年6月20日

根室市

体育館、アリシア・サンチェス戦でデビュー。2019年2月26日、横浜スペシャルホール大会での上原今日子戦で引退。稼動月数:117ヶ月、出場試合数(概算):864試合

タイトル歴:

SPZ世界選手権: 初代,第4代,第6代,第9代,第12代,第16代王者

AAC世界選手権

SPZ世界タッグ:第9代、第12代王者(パートナーはスイレン草薙)

AAC世界タッグ:(パートナーは秋山美姫、上原今日子)

EWA世界タッグ:(パートナーはスイレン草薙)

第4回SPZクライマックス優勝

写真集3冊

2007年6月 2日 (土)

第134回 もう無理っぽい・・・

10年目2月。

「あの・・・社長・・・えっと・・・お話が・・・」

伊達遥、10年来の付き合いなのにこの口調は変わらない。今野社長はピーンと来た。

「もう無理っぽい・・・」

本社ビル2階のメイド喫茶「あばしり」で面談。

伊達は巨大メロンフロートをすすりながら話した。

「社長やファンのみんなが・・・まだやれるガンバレ、って言ってくれるのは嬉しいけど・・・この間のドームで・・・セミの役目も果たせなくなって、もう無理かなって・・・」

日ごろ後輩レスラーに「試合の最後は映画や小説で言えばクライマックスだからとっておきの技で決めなさい」と指導していた伊達だけに、スリーパーで負けてしまったことが相当ショックだったのだろう。今野社長は慰留したが、伊達の決心は固かった。

「最後、誰とやりたいですか・・・」

「えって・・・あの・・・AACタッグ獲った、上原さんと」

1期生のエース、初代SPZ王者、伊達遥ついに引退を表明。かくて2月シリーズは「伊達遥引退シリーズ」となった。引退後は本人は「ゆっくりしたい」と希望したが、レフェリー兼社長秘書の井上霧子がここで動き、「伊達さん、その性格だと再就職厳しいしグッズショップ店長って柄でもないから、レフェリーやりなさい」と強烈にプッシュしたため「レフェリー」での残留が決まった。井上秘書ももう「年齢的に何試合も裁くのキツイ・・・」らしい。

引退シリーズ、伊達遥は全戦シングルマッチ。初戦沖縄大会では前SPZ王者の吉田龍子とのシングル戦が組まれた。SPZキックと殺人ヒザ魚雷の洗礼を浴びながらトップに上がった吉田龍子、大先輩への敬意を胸に、伊達を潰しにかかった。SPZキックをもらうやいなやスプラッシュマウンテンでお返し、続くギロチンでフォール勝ち。勝負タイム9分53秒。

第2戦はスイレン草薙とのシングルマッチ。スイレンの「教育係」を伊達が務め、タッグを組んでEWAタッグやSPZタッグを奪取したこともある。スイレンがあっという間にバックドロップの連発で伊達のバリアを崩しストレッチプラム。

そして3度目のバックドロップ!伊達はもうふらついて来た。どうにかSPZキックを撃ち返したが、スイレンも反撃に転じノーザン、ストレッチプラム、ノーザン、DDTの怒涛の猛攻―しかし伊達はカウント2.9で返し、2発目のSPZキック!

―これがこの団体をずっと支えてきた人の凄みなのか・・・

スイレンは頭の痛みを振り切って、懸命に伊達に組み付きバックに回り、この試合4発目のバックドロップ。これは伊達返せなかった。勝負タイム14分25秒。

第3戦三重サンシャインアリーナ大会。なんとセミ前でカード編成の都合でスイレン草薙・草薙みこと組の「みこみこバスターズ」タッグがはじめて結成。ハイサスカラス、ドスカナを撃破した。

そして伊達遥、きょうの相手は永沢舞。永沢にとってははじめてSPZベルトを奪取したときの思い出の相手だ。あのときのように何も考えずにというわけには行かないが、それでも伊達への敬意を込めて投げまくった。

ガシィッ!

普段はあまり見せないラリアット、そしてパワースラムといった永沢の猛烈な攻めが決まる。伊達はなかなか得意の打撃が繰り出せず、永沢の攻めを耐え続けるのみ。試合終盤にどうにかSPZキックを放ったが、永沢もお返しのJOサイクロン。伊達に返す力は残っていなかった。勝負タイムは30分ジャスト。あと少し伊達が粘っていたらドローだった。

三重大会メインはハイブリッド南対新咲祐希子のSPZ選手権。前回はタイトル奪取の翌月に新咲に敗れてベルトを手放しているだけにハイブリッドの心中には期するものがあった。

6期生同士のSPZ選手権のゴングが鳴った。しばらくは新咲のドロップキック中心の立ち技とハイブリッドのグラウンド技の対照的ファイトスタイルが交互に繰り返される面白いしあいとなった。しかしハイブリッドが徐々に押し始め、40分過ぎにアキレス腱固め。新咲も懸命にポイントをずらして防御したが、5分以上にわたりしつこくしつこくかけ続けられたので動きが止まってしまった。そしてハイブリッド南がここで意外な技、走りこんでのヒップアタック。しかし新咲カウント2.8で返す。

「はぁぁー、いっくよーっ」

裂帛の気合とともに新咲が逆襲に転じ、高速ジャーマン。

ものすごいスピードでハイブリッドの後頭部がマットへグサリ。

ワン、トゥ・・・

カウント2で返すハイブリッド。両者ダウン。死闘に三重のファンは盛り上がった。伊達引退の余波とはいえ、こんな超絶熱戦がこんな地方会場で見られるとは。かなりの時間をかけてまずハイブリッドが起き上がる。新咲がふらつきながら起き上がったのを見て、

走りこんでのヒップアタック。テクニシャンのハイブリッドだがこんな技を2度も使うとはそうとう追い込まれている。尻というより身体ごとぶつかった不恰好なヒップアタック。懸命にカバーするハイブリッド。新咲カウント2.8で返す。

両者またもダウン。ようやくフラフラと起き上がり、組み合ったところで時間切れのゴングが鳴った。60分フルタイムドロー。ハイブリッド南がどうにか初防衛に成功。三重のファンは総立ちでこの熱闘に拍手を送った。

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SPZ世界選手権試合 60分1本勝負

ハイブリッド南(時間切れ引き分け)新咲祐希子

第25代王者が初防衛に成功

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ハイブリッド南は防衛は果たしたが勝てなかったので悔しい表情。

「くっ・・・納得いかないわ。来月・・もう1回よ」

翌日は岐阜大会。セミ前で草薙みことが中堅外人のロレン・ニールセンに裏投げで敗れてしまう波乱。もう草薙の現役生活もあとわずかなのか・・・

セミで伊達遥対ハイブリッド南。ハイブリッド南は前日60分の死闘明けだが、疲れているそぶりも見せず伊達を潰しにかかった。なにしろプロ入りの動機が「姉の南利美をボコボコにしている膝蹴り女に復しゅうする」だったから・・・

ハイブリッドは落ち着いてボディスラム連発やエルボー連打で伊達のバリアを切り崩し、大技攻勢に出ようとするが、伊達も意地を見せ、SPZキック。

しかしハイブリッドもジャーマン、そしてお株を奪うニーリフト。終盤はジャーマンやブレーンバスターの攻めを良く粘った伊達だったが、リング中央でネオ・サザンクロスロックが決まってしまい万事休す。勝負タイム16分59秒。

第5戦滋賀大会は伊達遥は新咲祐希子とのシングルマッチ。新咲の飛んだり投げたり蹴ったりといった躍動感あふれる攻めに伊達はただやられるだけ。フェイスクラッシャーはカウント2.8で返したが続くシャイニングウィザードに3カウントを聞いた。

第6戦和歌山大会は草薙みこととのシングルマッチ。

この両者は2年目以降数え切れないほど対戦し、シングル戦でもAACやSPZベルトを賭けて幾多の死闘を繰り広げた。草薙が投げの化け物なら伊達は蹴りの化け物。いまでは両者とも実力は衰えているが、それでも今できるすべてをぶつけての熱闘となった。

ごすっ!

伊達のなりふりかまわない頭突き。鈍い音が響く。

草薙がこれで闘志に火がついたのか、草薙流兜落としを繰り出してきた。伊達カウント2で返す。

「ウアーッ!」

伊達ラリアット。はじめてSPZ王座を獲ったときの思い出の技だ。

草薙がノーザンで反撃。カウント2.5で返す伊達。

伊達、最近では珍しいSTO。これで全身を強く打った草薙の動きが止まってしまった。

あの頃のままだ・・・何も変わらない・・・

今野社長は本部席で涙を流していた。古くからのファンも涙なしにはこの攻防を見られなかった。

「ウァーッ!」

伊達、ここが勝負どころと見て必死に組み付いて、ドラゴンスリーパー。新人の頃、ミミ吉原に何度もやられて、見よう見まねで覚えた技だ。しつこく絞め続けられて草薙ついにギブアップ。最後のシングル対決は伊達に凱歌が上がった。

「16分42秒、ドラゴンスリーパーで、伊達遥の勝ち」

両者は抱き合って健闘を讃えあった。

これで場内が沈んでしまったのか、盛り上がらないままメインの吉田永沢富沢対ナターシャ、ハイサスカラス、ウェインの6人タッグが始まってしまい、先発で出た富沢がいきなりナターシャの関節地獄に捕まりアキレス腱固めに3分57秒、ギブアップ負け。あとの4名出番なし。怒った吉田がそのあと数分リング上で暴れまくったのはいうまでもない。

翌日は長野大会。

あと2つ・・・か・・・

伊達遥かは控え室でシューズの紐を通しながらつぶやいた。

2007年6月 1日 (金)

第133回 正月決戦 力と技の激突 吉田龍子×ハイブリッド南

10年目1月。

「新春ファイヤーソウルシリーズ」開幕。

2019年最初の興行は1月5日の新日本ドーム大会から始まる。今野社長はチケットを置いてもらっている神保町の書店「書林ブックマート」にポスターを貼って集客を図った。プロレス団体のポスターは何人ものレスラーの集合写真というのがお決まりだが、この団体はポスターに一人しか出さない。今回のモデルは吉田龍子で、オフの日という設定で芝生に寝転がっている絵。

キャッチコピーは一言.

「正月決戦、力と技の激突。吉田龍子×ハイブリッド南」

ドーム大会は埋まった。井上社長秘書兼レフェリーが年始のご挨拶。「今年もSPZは選手社員一丸となって熱いファイトを提供いたしますのでご声援よろしくお願いいたします」

第1試合は渡辺智美対ビーナス麗子。まだまだ力の差は明らかで、渡辺が7分27秒、ヒップアタックでビーナス麗子を仕留めた。

第2試合はガイア小早川対ギムレット美月。まだまだ新人のガイア小早川はスタミナがなく、7分9秒、ガイア小早川のミサイルキックに撃沈。

どうもスイレン草薙以来有望な新人が出てこない。力のない選手はアイドルレスラーとして「写真集で稼がせる」方針だが、興行の主役というか花形はやはりメインやセミで超絶ファイトをやってくれるエース級の選手だ。修行に出しているスターライト相羽がどのくらい強くなって戻ってくるかな・・・社長は本部席で慨嘆した。

第3試合は富沢レイ対エレン・ニールセン。2期生の富沢、シングルではもはや力の衰えを隠せず、エレンにズルズルと攻め込まれ最後は11分11秒、ネックブリーカーでフォール負け。

ここで休憩。

第4試合はマイトス香澄対アンナ・クロフォード。マイトス香澄が革命軍の意地でアンナに食らいついていくが、まだすこし地力の差があり、最後はクロフォードがスクラップバスターでカウント3奪取。勝負タイム9分35秒。

第5試合セミ前でSPZタッグ王者の新咲祐希子・スイレン草薙が登場。対戦相手はEWAのドリュー・クライ、ウェイン・ミラーである。新咲強い。ドリュー・クライのキックや掌底に動じず。最後はフロントスープレックスで頭から落として3カウント奪取。

セミファイナルは上原今日子、伊達遥、ナターシャ・ハン対永沢舞、草薙みこと、ハイサスカラスの「お年玉バトル」試合展開のまったく予測のつかないカード。EWAのナターシャとAACのハイサスカラスが団体の威信をかけたバチバチな闘いを繰り広げ、そのあと伊達対永沢の局面。

「とおー」

永沢ノーザン。伊達はカウント2.5で返す。

投げ技を連発したので、目先を変える意味で永沢は倒れている伊達を引きずり起こしてスリーパーホールドに捉える。誰もがああ、つなぎの痛め技だなと思っていたが、

入ってしまったのか、伊達の顔が急速に苦悶の表情で歪む。味方のカットを待てないほど苦しかったのか、あっさり伊達タップ。場内ええええの声。SPZプロレスでスリーパーホールドで試合が終わってしまうのは団体始まって以来の珍事である。

「12分57秒、スリーパーホールドで永沢舞、草薙みこと、ハイサスカラス組の勝ち」

「くっ・・・げほっ、げほっ」

たいていのレスラーなら絞められたときにうまくポイントをずらして耐えるのだが伊達はそれがあまり上手ではない。

    ・・あんな技でギブアップしてしまうなんて、自分が情けない・・・

伊達はうなだれて花道を引き上げた。

メインはSPZ選手権、王者吉田龍子対挑戦者ハイブリッド南。実力では吉田が一枚上だが、ハイブリッドは一発で持っていく関節技がある。

―関節技を警戒してもやられるときはやられる。自分のプロレスをするしかない。

そう考えた吉田はいつもどおりの重量感あふれる攻撃のオンパレード。DDTでハイブリッドの動きが止まってしまう。力ないボディスラムやスリーパーで懸命に手数を返そうとするも、強烈な吉田のステップキック。カウント2.8で返すもハイブリッドはグロッキー状態。

しかしハイブリッドは一発逆転を狙っていた。トドメを刺そう組み付いてきた吉田の差し手を制して、うまくスリーパーに捉えてグラウンドに移行し、そのあと流れるように腕を捕らえて脇固め。吉田が力まかせに振りほどこうとしたが、逆にそれで極まってしまった。

「うぁーーーーっ!!」

ものすごい痛みが吉田の右腕を襲う。これはヤバイと反射的に吉田龍子は井上レフェリーの手を叩いてタップ。王座移動。

「22分12秒、脇固めでハイブリッド南の勝ち」

ゴングと同時にゼエゼエとリング上に倒れこむハイブリッド、吉田は腕を押さえて「やっちゃった」といった表情で座り込む。勝ったのはハイブリッド南、25代王者に輝いた。

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SPZ世界選手権試合

ハイブリッド南(22分12秒、脇固め)吉田龍子

第24代王者が初防衛に失敗、ハイブリッド南が25代王者となる

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第3戦からは九州シリーズ。長崎大会メインはナターシャ・ハン対ドリュー・クライのEWA選手権。日本でこの顔合わせでタイトル戦が組まれるのは初めてである。イギリスマットではこの顔合わせで抗争を繰り広げているのだが、日本では害人体日本人のマッチメイク主体なので組まれることがなかった。

「マ、日本ノファンもドリューサンのファイトガワカッテキタとイウトコロデショ」

そういって長崎大会メインのリングへ向かった。ドリューもハリケーンラッシュを繰り出すなど健闘したが、最後はナターシャのネックブリーカーに力尽きた。

3日後、別府ビーコンホール大会ではドリュー・クライ対ハイサスカラスのAAC選手権。今回はハイサスカラスのベルト奪還にかける意気込みがすさまじく、フランケンシュタイナーの連発でドリューを下した。

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シリーズ最終戦は鹿児島大会。メインで新咲祐希子、スイレン草薙のSPZタッグ王者に挑戦するのは吉田龍子、上原今日子組。二人とも実力者ながらパートナーがいなかったので今シリーズからタッグを組ませた。上原今日子はまだSPZタッグのベルトを巻いたことがない。4人が4人ともちょっとやそっとでは倒せない実力者揃いなのでロングマッチが予想された。

やはり試合は4者の意地がぶつかり合う好勝負となった。吉田がスプラッシュマウンテン、スイレンも草薙流兜落とし。

「行くぞっ!フィニッシュはコレだっ!」

吉田がスイレンに2発目のスプラッシュマウンテン。しかしこれは新咲のカットに救われた。スイレン草薙が何とかストレッチプラムで反撃してしのいで、新咲にタッチ。ここで新咲が倒れている吉田を引きずり起こして腰をクラッチしてー

パワーボムか?

しかし新咲は吉田の長身を高々と担ぎ上げてから、垂直落下!

掟破りのスプラッシュマウンテン!!

普段はさんざんこの技で対戦相手をたたきのめしている吉田、ついに自分がこの技を食らってしまった。あの高さから垂直落下プラス自分の体重ぶんが頭に衝撃としてかかっているので、吉田の意識は闇に落ちた・・・

「ワン、トゥ、スリー」

「36分55秒、スプラッシュマウンテンからのエビ固めで新咲祐希子、スイレン草薙組の勝ち」

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SPZタッグ選手権試合

新咲祐希子○、スイレン草薙(36分55秒、スプラッシュマウンテンからのエビ固め)吉田龍子×、上原今日子

第16代王者が初防衛に成功

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吉田龍子のフォール負けは前年8月のハイブリッド戦以来。予想外の技を食らった吉田龍子はダウンしたまま動けない。ありえない光景にファンは「ええええ!」となった。

上原とセコンドの渡辺に抱えられて退場した吉田、控室に着くなりぶっ倒れた。負けたときもコメントを残していた吉田だったが今日は別。ここ数年では珍しく叩きのめされ、ましてや自分の得意技で敗れ去ってしまったのだから。

渡辺が控室でシューズの紐を解く。吉田は朦朧とした状態でひとことつぶやいた。

「ゆっこ・・・覚えてろ・・・」

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