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2007年8月31日 (金)

第192回 14年目8月 SPZクライマックス 中編

14年目8月 SPZクライマックス中篇

2戦目は仙台大会。
新咲(2点、高速ジャーマン 24.02)芝田(2点)

芝田が粘る。フロントスープレックスやラリアットでやられても諦めずごつごつと掌底、裏拳で反撃。新咲を「ボコボコ」にしてゆく。しかし新咲、シャイニングウィザードでぐらつかせて、パワーボムを狙うもウラカンラナで切り返し!大歓声。
しかし新咲、ここが勝負どころと感じたのか必殺の高速ジャーマン発動。これで終了。やぶれたとはいえ芝田、大先輩の新咲をここまで慌てさせたのだから素晴らしい。

B来島(4点、エルボーからの片エビ固め12.18)G美月(0点)

ギムレットの一発ドラゴンカベルさえ気をつければ来島の優位は動かないところ。この日は力の差を見せ付けるようなボディスラム連打。しかしこれはギムレットの罠。
「勝率30%上昇修正」
一発にかけたドラゴンカベルナリア。しかし来島しのいで、ついには力任せに振りほどく。そのあと強烈なエルボーで反撃。これで試合は終わった。

S相羽(2点、デスバレーボムからの片エビ固め 18.39)菊池(0点)

札幌でハイブリッドに苦杯を喫し、優勝を狙うためにはこれ以上負けられない相羽。しかしこの日も菊池の玉砕覚悟ファイトで攻め込まれてしまう。菊池のシャイニングウィザードでぐらつく。

スターライト相羽、これ以上受けられないと判断したのかタイガースープレックス、デスバレー、ヒップアタックの猛攻。菊池もミサイルキックで流れを取り戻そうとするが、最後は相羽のこの日2発目のデスバレーでたたきつけられて終了。菊池、地元凱旋を白星で飾れず・・・

S草薙(4点、エルボーからの片エビ固め 15.13)H南(2点)

ハイブリッドがすきあらば関節技を狙ってくるが、焦ったのか勝負をかけたネオ・サザンクロスロックはロープに近い。これで集中力が切れてしまったのかスイレンのエルボーに沈んでしまった。
リーグ戦を2試合消化して勝ちっぱなしはスイレン草薙とボンバー来島の2名のみ。

*************
第4戦は大阪大会。

新咲(3点 時間切れ引き分け)G美月(1点)

―なんとしてもSPZクライマックスで1勝したい。
芝田や市ヶ谷などの後輩が伸びてきており来年もこのリーグ戦にギムレット美月が出られる保証はない。

ー昨年は全敗、ことしも芝田さんに敗れているので、白星を取るとしたら新咲さんしかない。
ギムレット美月が終盤、猛攻。新咲のジャンピングニーを返してからアキレス腱固めを長時間かけ続ける。

「うわああ・・・」
かなりの時間が過ぎた。まだ新咲はギブアップしない。
ギムレットは続けてドラゴンスリーパー。新咲、グッタリとするがギブアップだけは言わない。
「残り時間2分」
ギムレットはドラゴンカベルナリアで止めを刺しにきた。しかしこれも新咲耐える。耐え切ってタイムアップ。館内からはものすごい拍手が送られた。

H南(4点、アキレス腱固め 19.29)芝田(2点)

ハイブリッド南、芝田の攻勢をうまくさばいて、ミサイルキック2連発で芝田をダウンさせる。最後はアキレス腱固めで手堅く勝ち点2ゲット。

「まあ、こんなものね。」

B来島(6点、ダイビングボディプレスからの体固め 14.41)S相羽(2点)

エルボー、チョップ、頭突きとボンバー来島が荒々しい攻めでペースを握る。そして弱らせておいて強烈なバックドロップ。フェイスクラッシャーと追い込む。相羽の反撃は散発に終わる。

「オラオラオラー!」

最後は来島、コーナーに登ってダイビングプレス。あのガタイが降ってくるのだからたまらない。スターライト相羽、プレスハムと化す・・・

S草薙(6点、ドラゴンスリーパー 15.24)菊池(0点)

「しゃあっ!」
菊池ローリングソバット。意外にもスイレンといい勝負を展開。しかしスイレンも草薙流兜落しで菊池の意識を朦朧とさせておいてのドラゴンスリーパーで勝利。やはり一発で流れを変える大技を持っている選手は超一流。菊池、来島相羽スイレンに内容は悪くないものの3連敗・・・

****************************

5戦目は九州ドーム大会。

H南(6点、ジャーマン12.24)G美月(1点)

まさに玄人好みのカードが組まれた。しかし関節技では何枚か上のハイブリッド南がじりじりと追い込んでゆく。最後はジャーマンが久々に火を噴いた。

菊池(2点、ダイビングボディプレスからの体固め 10.53)芝田(2点)

菊池ようやく初日。芝田を手堅くしとめた。

S相羽(4点、裏拳からの片エビ固め13.15)新咲(3点)

スターライト相羽強い。元SPZ王者の新咲相手に終始優勢に試合を運ぶ。

S草薙(8点、ドラゴンスリーパー 14.29)B来島(6点)

「博多はあたしの地元、負けるわけにはいかん」

福岡大会メインは全勝同士の対決。とくにボンバー来島は地元でスイレン相手のメインイベントということでそうとうイレこんでいたが、逆にそれがスイレンに付け入る隙を与えてしまう。スイレン草薙、ストレッチプラムで動きを止める。ボンバー来島も懸命にナパームラリアットで反撃するが、スイレン、とどめのドラゴンスリーパー。こうなってはボンバー来島、ギブアップするしかなかった・・・・・・・

(長くなるので続きます)

2007年8月30日 (木)

第191回 14年目8月 SPZクライマックス(前編)

14年目8月

恒例の「真夏の決戦」SPZクライマックスの季節。8月3日の夜9時、例年通りSPZ横浜本社2階にある閉店後のメイド喫茶「あばしり」を借り切って記者会見が行われた。

■「最強戦士・元SPZ世界王者」ハイブリッド南(23)

7年連続7回目の出場。京スポ予想倍率10.7倍
「今年も完璧な闘いを見せるわ」

■「生ける大食い伝説・前SPZ世界王者」新咲祐希子(22)

6年連続6回目の出場 京スポ予想倍率11.5倍
「目標は優勝。賞金でおいしいものを食べに行きます」

■「新・最強巫女伝説 SPZ世界王者」スイレン草薙(21)

6年連続6回目の出場 京スポ予想倍率1.2倍
「今年は絶対に優勝します」

■「シューティングスター」スターライト相羽(20)

4年連続4回目の出場 京スポ予想倍率3.3倍
「スイレン選手を倒して優勝します」

■「殺人ラリアット」ボンバー来島(18)

2年連続2回目の出場 京スポ予想倍率9,5倍
「全員気持ちよく眠らせてやるぜー」

以下は予選会勝ち上がり組。

■「小さな宇宙戦艦」菊池理宇(18)

2年ぶり2度目の出場 予選会1位通過 京スポ予想倍率13.3倍
「出るからには一つでも多く勝ちます」

■「ファイティングコンピューター」ギムレット美月(19)

2年連続2度目の出場 予選会2位通過 京スポ予想倍率99.9倍
「優勝の確率は微妙ですが、まあ、頑張ります。」

■ 「一撃必殺」芝田美紀(17)

初出場 予選会2位タイ通過 京スポ予想倍率99.9倍
「ホーッホッホホホホ!芝田ここにありということを全国のファンに見せ付けますわ」

京スポ新聞の予想では「吉田がいなくなった今、本命はスイレン、死角がない」とのことであった。
新女に寝返ったEWAと交渉し、契約を結び直し。これでEWAの強豪外人が参戦できると思ったら、こんどはAACを引き抜き返されてしまった。SPZの「常連外人をつくる」戦略を妨害しようとする新女。さすが業界最大手。今野役員はうめくしかなかった。

SPZクライマックスの開催される8月シリーズ、EWAから2人の新外国人選手が参戦。オランダ出身のデイジー・クライと、ロシア出身のアリス・スミルノフ。緒戦の釧路大会、スミルノフはチェーンを振り回しながら入場し、対戦相手のロイヤル北条をパワーで圧倒。いたぶってから最後はふらふらとパイルドライバーか何かをしかけてきた北条をリバーススープレックスで押しつぶして来日初勝利を飾った。
「悪の華がまた咲き乱れた・・・」
まだ16歳、EWAは有望な外人を送ってきた。

***************************

2戦目の札幌大会から悪魔のリーグ戦がスタート。

芝田(2点、延髄斬りからの片エビ固め15.19 )G美月

「かいせつの吉田さん、芝田選手は初出場ですね」

 「ん・・・まあ優勝は厳しいとは思いますが、ひとりでも格上の選手を食ってもらいたいですね。」

「芝田、今日はギムレット美月との対戦ですが、芝田よく関節攻撃に耐えいています。あー、先輩相手でも6月の予選会では引き分けてるんでこの試合が決着戦ということになりますね」

 「あ、森さんちょと待ってください!延髄入っちゃいました」

ワン、トゥ、スリー。

「わたくしと対戦したのが不運でしたわね」

芝田白星発進。

B来島(2点、裏投げからの片エビ固め19.33)菊池

「かいせつの吉田さん、タッグ王者同士の対戦ですね」

 「そうですね。この2人は若手のころからコンビ組んでますから、シングル対決は去年の予選会以来じゃあないですかね」

「どちらが有利でしょうか」

 「・・・そりゃまあ来島選手がパワーが段違いなのでロクヨンで来島選手が有利でしょう。しかし来島選手はまだパワーに頼る面がありますから、菊池選手にもチャンスはありますよ」

試合は中盤までは菊池がミサイルキックやローリングソバットで押していたが、来島が強引に勝負に出た。ナパームラリアットから裏投げ2発。

「オーッとボンバー来島、裏投げ2連発。軽量の菊池派手にたたきつけられた。さあカバー、菊池返せるか、返せるか、ダメだー」

 「はぁ・・・菊池も詰めが甘い。」

「かいせつの吉田さん、ボンバー選手が見事な逆転勝ちですね」

 「ん・・・まあ、菊池選手も攻め疲れちゃったんでしょうね、あのガタイを相手にするわけですから。そこを逃さずラリアットで流れを変えた来島選手がうまかったですね」

H南(2点、ネオサザンクロスロック11.28)S相羽

「かいせつの吉田さん、この試合のポイントは」

 「ん・・まあ、ハイブリッド南も最近は思うようなレスリングができなくて苦しんでますから、まあ相羽選手のペースで動きますよ。ただハイブリッド選手には関節で一発がありますからね。ほんとあの女は性悪なんですよ」

「・・・はははは(引きつった笑い)」

試合は一方的なS相羽ペースで進んだ。ハイブリッドただやられるだけ。

「あーっと、スターライト相羽ニーリフト乱打、ハイブリッド南ふらふらだ、さあ相羽何で決める?」

 「甘い・・・あの女だけは最後の最後まで気を抜いちゃいかん」

「へ?」

『この技でマットに眠りなさい!』

「あーっと、ハイブリッド南、伝家の宝刀ネオ・サザンクロスロック、相羽の首が決まっているぞ、耐えられるか~」

吉田がリング上を凝視する。ハイブリッド南が起死回生のネオサザンクロスロックで締め上げる。

「あーっと、スターライト相羽たまらずギブアップ。これは番狂わせか、対抗馬と見られていたスターライト相羽黒星発進、これは痛~い!」

 「まあ、あの女の試合ではよくあることです、あれが彼女なりのカンペキな試合、なんでしょう。」

吉田が私怨丸出しのコメント。

S草薙(2点、デスバレーボムからの片エビ固め 9.34)新咲

「スイレン選手は死角がないんですよ。立ち技も寝技もこなせますから。だからあれに勝つには正面からねじ伏せるしかないんですね。やりづらい選手ですよ」

「あーっとスイレン草薙必殺バックドロップ!いつみても残酷なまでに美しいフォーム!そして、え、あ、デスバレーボム!あー、新咲が頭から落とされた、これは凄い!ああ、これはダメだ~」

メインは10分足らずで終わってしまった。

「かいせつの吉田さん、気が早いようですが優勝の行方は」

 「きょう見た限りでは99%スイレン選手でしょう。」

「そ、そうですか。それでは今週のSPZプロレス中継はどさんこドームからお送りいたしました。実況はわたくし、森和紀、かいせつは吉田龍子さんでした。それでは皆様ごきげんよう」

2007年8月29日 (水)

第190回 14年目7月 サマースターナイツシリーズ

14年目7月

7月シリーズ「サマースターナイツシリーズ」開幕。

第6戦栃木大会、メインに組まれたのはあばしりタッグ選手権試合。先月ベルトを失った13期生コンビビューティ市ヶ谷、ロイヤル北条組がガイア小早川(9期)・ギムレット美月(10期)と対戦。

「オーホホホホ、やられたらやりかえすのが市ヶ谷家の家訓。マットにひれ伏しなさい!」

両チームが45分2秒の激闘を繰り広げた末、ロイヤル北条がロイヤルスパイクでガイア小早川の脳天をマットにグサリ突き刺して、あばしりタッグ王座奪還。

****************************

第7戦幕張大会。メインに組まれたのはSPZタッグ戦。チャンピオンチーム菊池理宇、ボンバー来島に挑むのはスイレン草薙、ビーナス麗子組。SPZ王者のスイレン草薙がいよいよ2冠王を狙ってきた。
館内は好勝負の期待感でいっぱいだった。スイレン草薙は現時点のSPZ最強選手、2人分闘えばボンバー来島菊池理宇の二人をまとめてつぶすことも可能だ。

「おりゃああああー!」

「・・・うっ」

しかし、ボンバー来島のヘッドバットが予想以上に効いたのか、スイレン草薙の動きにいつもの切れがない。

―アタマを気にしている。もしかして・・・
菊池がすかさず飛びついてDDT。これはカウント2で返したスイレンだったが、もう一度同じ技を食らって、
ワン、トゥ、スリー。

伊達レフェリーの手がマットを3つ叩く。これで試合終了。なんとスイレンが菊池にあっさりフォール負けを喫した。勝負タイム22分47秒。王者組みが2度目の防衛に成功。

「やった・・スイレンさんから取った!」

「タッグならあたしたちが勝てる!」

******************************

最終戦は新日本ドーム大会。5万超の大観衆で埋まった。

第1試合はフレイア鏡対フォクシー真帆の新人対決。フレイアもレスリングセンスは非凡なものを持っているが、フォクシーは一発一発の打撃で流れを止めてしまう。この日も強烈なドロップキックで3カウントを奪った。

第2試合はマイトス香澄対キューティー金井。ドラゴンスリーパーでマイトスが快勝。

第3試合はハイブリッド南対ドスカナ・リブレ。

ついにハイブリッド南もこの位置でシングルマッチが組まれるようになってしまった。ハイブリッド南、プライドを傷つけられたのか、あっさりとネオ・サザンクロスロックでドスカナを処刑。

休憩明けの試合はガイア小早川、ビーナス麗子、ギムレット美月の9-10期生チームに芝田美紀、ビューティ市ヶ谷、ロイヤル北条のスーパーお嬢様トリオが激突する6人タッグ戦。白熱した戦いが展開されたが、最後は芝田の延髄2連発。これで試合は終わった。

セミファイナルは菊池、ボンバー来島対新咲祐希子、スターライト相羽の一戦。SPZタッグ減王者と前王者がノンタイトルながら激突。これも白熱した攻防が展開。しかし最後は6期生で動きが落ちた新咲がつかまってしまい、合体パワーボムを食らって終了。それでも28分37秒の激戦となった。

メインはSPZ選手権。スイレン草薙に挑むのはAACのハイサスカラス。シングルではもはや敵なしのスイレン草薙、スターライト相羽でもボンバー来島でもダメとなると強豪外国人をあてるしかないというマッチメイク。

しかし結末はあっけなくついた。スイレンのサソリ固めでハイサスカラスあえなくギブアップ。勝負タイムなんと8分7秒、SPZ選手権史上最短記録か。王者が4回目の防衛に成功。

そして8月、今年もSPZクライマックスが始まる・・・

2007年8月28日 (火)

第189回 14年目6月 SPZクライマックス予選会

14年目6月
スイレン草薙が映画出演とセカンド写真集「SENZAN」発売のため欠場。ビーナス麗子とマイトス香澄も負傷欠場。
新人のフォクシー真帆も「居残り練習」のため欠場。
6月は恒例のSPZクライマックス予選会。前年本大会優勝の吉田龍子が引退したため、前年6点のスターライト相羽、ボンバー来島も繰り上げシード権獲得という形にして、のこり3つの椅子を以下の6選手で争うかたちとなった。

菊池理宇(11期)
ギムレット美月(10期)
ガイア小早川(9期)
芝田美紀(12期)
ビューティ市ヶ谷(13期)
ロイヤル北条(13期)

第2戦浜松大会、メインであばしりタッグ戦。ガイア小早川、ギムレット美月組のGG砲が王者組ビューティ市ヶ谷、ロイヤル北条を30分35秒の激闘の末に下して王座奪還。

3戦目の三重大会から予選会リーグスタート。

芝田(2点、逆片エビ固め)市ヶ谷
芝田が攻め込まれるも1期先輩の意地を見せて、逆片エビでギブアップを奪った。

G美月(2点、裏投げからの片エビ固め)G小早川
昨日あばしりタッグを奪還した二人がいきなりの対決。互角の戦いが続いたが、最後はギムレットがドラゴンカベルナリアで痛めつけておいての裏投げで勝利。

三重大会メインはSPZタッグ選手権。菊池、ボンバー来島の王者組に挑むはAACのハイサスカラス、ドスカナ・リブレ。
ハイサスカラスにはやや苦戦したふたりだったが、ドスカナが出てくるや猛攻を仕掛けて、最後は菊池がダイビングプレスで圧殺。手堅く初防衛に成功。

翌日は岐阜大会。

芝田(4点 延髄斬りからの片エビ固め)R北条(0点)
芝田が手堅く2連勝。

菊池(2点、DDTからの片エビ固め)G小早川(0点)
菊池もタッグ王者の貫禄を見せてリーグ戦白星発進。

翌々日は滋賀大会。
B市ヶ谷(2点、裏拳からの片エビ固め)R北条(0点)
同期対決は市ヶ谷さんが一方的に攻め込んで7分46秒で勝利。

菊池(4点、タイガードライバー)G美月(2点)
現在の力関係では菊池だがギムレットには関節技がある。しかし菊池が終始攻めまくってタイガードライバーでギムレットを仕留めた。

また、滋賀大会では新人のフレイア鏡がメイン初登場。S相羽、新咲と組んで、ハイブリッド南、エレン・ニールセン、イレーヌ・シウバと対決。フレイア鏡は当然相手チームの集中攻撃を浴びたがなんとか新咲にタッチ。最後は相羽がイレーヌを叩きのめして勝利。

第6戦和歌山大会。
菊池(6点、ムーンサルトプレスからの体固め)R北条(0点)
菊池がムーンサルトで完勝を収めた。

G美月(4点、アキレス腱固め)B市ヶ谷(2点)
ギムレット美月がペースを手放さず、最後は逆片エビで足を痛めつけておいてのアキレス腱固めで勝利。これで市ヶ谷の予選通過は絶望的になった。

芝田(6点、延髄斬りからの片エビ固め)G小早川(0点)
この勝負は長引いた。22分39秒の熱戦の末、芝田が延髄斬りで小早川をしとめた。芝田これで3連勝、予選通過が見えてきた。

第7戦は長野大会。
G小早川(2点、ミサイルキックからの片エビ固め)R北条(0点)
ガイア小早川が先輩の意地を見せて初勝利。

菊池(8点、ブレーンバスターからの片エビ固め)B市ヶ谷(2点)
菊池が危なげない試合運びで市ヶ谷を下した。

芝田(7点 時間切れ引き分け)G美月(5点)
ギムレットが関節地獄に引きずり込もうとするが芝田も懸命に抵抗して、けっきょく両者譲らずドローとなった。しかし12期生の芝田、みごとこれで予選会通過決定。

***************************

最終戦はさいたまドーム大会。
G美月(7点、掌底からの片エビ固め)R北条(0点)
ギムレット美月が落ち着いて戦い、最後は強烈な掌底をたたきこんで北条から3カウントを奪った。これでギムレット美月7点、予選会突破を決めた。

B市ヶ谷(4点、ビューティボム)G小早川(2点)
意外とこの試合は盛り上がった。ガイア小早川もジャーマンを繰り出すなど市ヶ谷をあと一歩まで追い込んだが、最後はビューティボムが決まって終了。

菊池(10点、ムーンサルトプレス)芝田(7点)
芝田、菊池相手に延髄斬りなどで攻め込み、菊池をあわてさせたが最後は必殺ムーンサルトの前に涙を飲んだ。菊池は全勝で予選会通過。

さいたまドーム大会、セミファイナルは新咲祐希子対ハイブリッド南の6期生対決。手数の勝った新咲がキャプチュードで勝利。

メインイベントはスターライト相羽対ボンバー来島。次期SPZ挑戦権のことを考えるとおたがい負けられない一戦。レスリングセンスなら断然相羽が上なのだが、来島にはパワーがある。

「あのガタイで頭突きをやられると本当に効く」対戦した選手が口をそろえて言うのである。そのせいかだんだん相羽の動きがよたっていって・・・

「うりゃっ!」
ボンバー来島の2発めのパワーボム。これでスターライト相羽は3カウントを奪われてしまった。勝負タイム19分4秒。これでSPZベルト挑戦権に一歩近づいた。

2007年8月27日 (月)

第188回 14年目5月 スイレン草薙・敵なし状態

14年目5月
12期生のキューティー金井にファンクラブ結成。
「えっ、あたしに!?すごーい!アイドルみたーい!」

SPZ史上最弱、線の細さは小川ひかる以上、日々やられ役を演じ続ける金井、その健気さがファン心理をくすぐったようだ。

5月シリーズ「ミラクルガールシリーズ」開幕。九州地方を回る。
第4戦別府大会第1試合。フレイア鏡対フォクシー真帆の新人対決が第1試合で組まれた。
「ふあっ!」
野生少女フォクシー真帆がヘッドバッド連発でペースを握る。これでグロッキー状態になったフレイア、ボディスラムで投げられ、とどめのヘッドバットをもらってしまう。

しかしカウント2.9で返すフレイア。場内沸いた。
しかしフォクシー真帆、手を緩めず強烈な逆水平チョップを叩き込んでフォール勝ち。
「真帆の勝ちだ!」
フォクシー真帆、プロ入り初勝利。

別府大会メインはSPZタッグ戦。新咲祐希子、スターライト相羽対菊池理宇、ボンバー来島の一戦。
なんと11期生「キラーマシン軍」が優勢。新咲がやられる一方なので、後半になって相羽が捕まってしまう。不利になってタッチしようにも新咲はリング下で転がっている。最後はボンバー来島がー
「オラオラオラー!」
力のこもったジャーマンで相羽を沈めた。勝負タイム27分45秒。王者組は6回目の防衛に失敗。

「実力だよ!じつりょく!」

「ヘヘッ、やったね!」

ボンバー来島と菊池理宇の11期生コンビがデビューから3年でタッグの頂点に駆け上がった。

翌日の長崎大会、フレイア鏡が脇固めでプロ初勝利。フォクシー真帆に昨日のお返しをした。

第7戦山梨大会、メインで組まれたのが
ビューティ市ヶ谷、ロイヤル北条対ギムレット美月、キューティー金井の「あばしりタッグ選手権」。

「気合と根性だけでは勝てないことを教えてあげます」
「今日は・・・泣かないんだからっ」

団体最弱のキューティ金井があばしりタッグとはいえベルトに挑戦するのだから無茶苦茶なカードだ。
「オーホホホホホ、今日も完璧な試合で観客を魅了しましてよ!」
「ぱーへくとな試合運びで勝利をこの手に!」
本部席の今野社長は戸惑っていた。地方興行とはいえこの4人がメインの重責を担うのである。試合展開は予測不能といえた。

―私が2人分戦えば勝てる。
試合はギムレット美月が出ずっぱりの展開。しかしロイヤル北条もDDTやヘッドバットで応戦。意外と好勝負になってきた。
しかし、やはり王者組2人をギムレット美月1人で相手にするのは無理があった。だんだん超お嬢様コンビの連携の前に孤立していって最後はダブルドロップキックでカウント3を奪われた。

―そんな、市ヶ谷さんの力の伸びは計算以上・・・だった。

「オーホホホホホホ、私が勝つことは試合前からわかっていたことですわ!」

****************************

最終戦は本拠地に戻っての横スペ大会。

第1試合はフォクシー真帆対フレイア鏡の新人対決。フォクシーがボディスラムを連発して勝利。

第2試合はマイトス香澄対ビーナス麗子。けっこう熱のこもった勝負となったが、最後はハイキックを決めたビーナス麗子が勝利。
休憩前は外人同士のタッグマッチ。

そのあとビューティ市ヶ谷、芝田美紀、ロイヤル北条の「お嬢様軍団」対ギムレット美月、ガイア小早川、キューティー金井の6人タッグ戦。この試合は沸いた。お嬢様軍団が好連係で追い込めばギムレット美月も関節技で対抗。しかし最後はキューティ金井が孤立、ビューティボムに力尽きた。

横スペ大会、今回も3大シングルマッチが組まれた。
セミ前でボンバー来島対新咲祐希子のシングル対決。しかし来島の成長は著しく、新咲をパワーで追い込んでゆく。しかし新咲も意地を見せる。

―来島選手のパワーはすごいけど、こっちには修羅場をくぐってきた経験と勝負勘がある!
新咲、必殺の高速ジャーマンで来島がふらついたところをハイキック2連発。勝機と見るや大技を畳み掛けた新咲が来島を破った。

「だれの挑戦でも・・受けるわよっ」
新咲、苦しい表情で勝ち名乗り。

セミファイナルは菊池理宇対ハイブリッド南。先月はハイブリッドが勝ったのだが、今回は菊池が相手の関節技を警戒しながら攻め込んでいって、ローリングソバット2連発からのタイガードライバーで優位に立ち、最後はDDTでハイブリッド南からフォール勝ち。

勝負タイム23分56秒。場内えええええの声。吉田龍子と並んでここ数年のSPZを支えてきた最強戦士が11期の菊池理宇にやられてしまった。

メインのSPZ戦はスイレン草薙対スターライト相羽。吉田龍子が引退したので、スイレン草薙もシングルでは敵なし状態。日本人選手でスイレンに次ぐ実力者がスターライト相羽だが、真正面から来るタイプなのでスイレンの優位は動かない。この日もスイレン、投げ技に関節技を織り交ぜながら安定感ある試合運び。最後はローリングソバットでスターライト相羽の挑戦を退けた。
勝負タイム24分10秒の試合だったが、スイレンに危ないところは見られなかった。3度目の防衛に成功。

2007年8月26日 (日)

第187回 来島さんじゃ勝てない(2回目)

引き続き14年目4月

シリーズ第4戦仙台大会。メインに組まれたのは菊池理宇対ハイブリッド南のシングルマッチ。

「菊池ぃ、気合入れていけよ。先月あたしに勝ったんだからハイブリッド南にも勝てないことはないよ。さっさとあの性悪関節女を引退に追い込んで来い」

吉田コーチが私怨のこもった励まし。引退しても菊池のコーチ役は続けている。
試合は一進一退の攻防。手数では菊池が上なのだがハイブリッドには流れを止める関節技がある。

「休まず攻めろ!気を抜くな!関節技狙ってんぞ!」
戦っている本人よりセコンドの吉田が声を出している。
菊池、ジャーマンでハイブリッドをカウント2,8、続く渾身のエルボーでカウント2.9まで追い込む。仙台のファンは大興奮。地元出身の若手選手があのハイブリッド南を食おうとしている。

―勝てるかも、知れない?

ーくっ、なんとかしなきゃ・・・

ハイブリッド南の表情はだんだんあせりの色が濃くなっていった。

しかし、菊池が突進してきた隙を突いて脇固め。
「ぐぅぅぅ」
懸命にロープへ逃れる菊池。しかしー

「これでおしまいね」
ハイブリッド、リング中央まで菊池をすばやく引きずってネオ・サザンクロスロック!」菊池、もがくが脱出できず。

「ああああああっ」
こらえきれず伊達レフェリーにギブアップの意思表示。
カンカンカン・・・
「32分56秒、ネオ・サザンクロスロックでハイブリッド南の勝ち」

・ ・くっ、勝ったけど・・・納得いかないわ
ダメージが深くてマットに倒れこむハイブリッド。11期生の菊池にあわやというところまで追い込まれたのだ

・ ・あー、やっちゃった。
関節技で一発逆転狙ってくることがわかっていてはまってしまった。自分が情けない・・・菊池は頭を抱え込んだ。

「何だ今日の試合は!」
控え室、鬼コーチ吉田龍子が菊池にビンタ。
「お客さんは完全に期待してたぞ!お前が勝つのを!」
なにしろここは仙台、菊池の地元。
「まああたしもヤツには散々やられたから人のことはあまり言えないが、あいつとやるときは3つ入るまで気を抜くな、わかったか!」

「・・・はい」

****************************

シリーズ第7戦千葉大会、メインに組まれたのは「あばしりタッグ」王座決定戦。ユーリ・スミルノフ引退に伴い王座返上。ビューティ市ヶ谷、ロイヤル北条の13期生コンビにエレン・ニールセン、イレーヌ・シウバ組とで王座決定戦。

イレーヌ・シウバの打撃に苦しんだ市ヶ谷だったが、
「ひれ伏しなさいっ!」
ビューティボム(変形パワーボム)炸裂。これで試合の流れが一変。最後はロイヤル北条とのダブルドロップキック。この当たり所が悪かったのか、これでイレーヌ・シウバからカウント3奪取。24分47秒の激闘を制した。なんとデビュー1年であばしりタッグ王座奪取。

**************************

4月シリーズ最終戦は新日本ドーム大会。吉田引退後初のドーム大会で観客動員への影響が心配されたが、ふたを開ければ52448名、超満員札止めの盛況。

「ふぅー、やれやれ」「ま、よかった」
息をなでおろす今野役員と吉田コーチ。

第1試合開始前、派手派手なスーツを着た吉田龍子のMC。ボンバー来島と菊池理宇を引き連れている。
「Welcome to SPZ!」
「今日は、SPZ旗揚げ13周年記念、新日本ドーム大会、来ていただいて、サンキュー。知ってのとおり、この団体を仕切ってきたのは、あの氷のヤクザキック、井上霧子・・・さん、だったんだがな。この間の京スポの記事にもあったが、団体経営のストレスで酒びたりになってしまったんだ。だからあたしがこの団体を仕切ることにした。その第一歩としてだな、軍団を結成する。チーム名はだな、あたしが昨日の晩3分で考えた、「吉田キラーマシン軍」だ。!

アハハハハハ!

場内は失笑に包まれた。
「それでは吉田キラーマシン軍のメンバーを紹介しよう。まずはこの子、ガタイは小さいが、特訓に特訓を重ね、先月あたしを倒すまでに成長した仙台のスーパースター、菊池理宇。
そしてこっちのゴツイのが、先月までEWAで暴れまわっていた、福岡が生んだ怪物、ボンバー来島だ。こいつは、今日、メインイベントで、あのスイレン草薙の、SPZベルトに挑戦する。まあ・・・・あまり期待しないでおいてくれよ。」

アハハハハハハ!

場内は笑いに包まれた。

「まだまだ、来月以降、新メンバーは増える予定だ。ほんじゃま、きょうは6試合あるんで、最後まで楽しんでいってくれよな!」
あの吉田龍子が引退して1ヶ月もたたないのにMCで観客の盛り上げ役に回る。観衆は笑い転げた。

第1試合はフォクシー真帆対イレーヌ・シウバ。
「ウォォォォォ!」

フォクシー真帆、コンセプトは野生少女という恐ろしいギミック。普段の彼女は(本名は寺田真帆)おとなしく口数の少ない少女なのだが、試合では野生キャラを「つくっている」。今野役員と吉田コーチの差し金であるのは言うまでもない。
しかしシウバもAACの実力者。フォクシー真帆をブレーンバスターできっちりと片付けた。勝負タイム7分52秒。

第2試合はマイトス香澄、フレイア鏡対ドスカナ・リブレ、エレン・ニールセンのタッグマッチ。8期生のマイトス香澄が奮闘するも、最後はやっぱり新人のフレイア鏡がつかまってしまう。エレンのボディスラムでフォール負け。
「あなた、まだまだひよっこね」
勝負タイム12分46秒、外人組が勝利。

第3試合はおもしろそうなカード。「芝田美紀、ビューティ市ヶ谷、ロイヤル北条」の「スーパーお嬢様トリオ」に「ビーナス麗子、ギムレット美月、ガイア小早川」の9・10期生トリオが激突。いままでSPZを盛り上げてきた個性派軍団が勝つのか、お嬢様軍団が勝つのか。

「まずキャリアの浅いロイヤル北条選手を捕まえて痛めつけましょう。そうしたら3対2の状況になって有利になります」

新選手会長、ギムレット美月のたてた作戦は巧い。

で、そのとおりに試合を運んでまずロイヤル北条をつぶす。続いて出てきたビューティ市ヶ谷をローンバトルに追い込んでつぶす。あとは残った芝田を合体攻撃を混ぜながら袋叩き。ギムレット美月の作戦がズバリ的中。お嬢様チームに付け入る隙を与えなかった。

「情報戦を制すものが戦いを制すです」

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休憩後、3大シングルマッチが行われた。
セミ前は菊池理宇対ハイサスカラス。空中戦ならハイサスカラスが数枚上手なので菊池の勝利は厳しいというのが大方の予想だったが、ハイサスカラスの猛攻をしのいだ菊池が
「この技で勝負をかける!」
ムーンサルトプレス。これで大ダメージを与えて、
延髄斬り一閃。当たり所が悪かったのか、これでAAC最強のハイサスカラスから3カウントを奪ってしまった。勝負タイム14分24秒、館内どええええええ。

セミファイナルはハイブリッド南対スターライト相羽。
―ここで負けたら世代交代になってしまう、ホントに。
ハイブリッド南も寝かせようと懸命に応戦したが、相羽が場外ボディスラムで流れを変え、最後はキャプチュードでハイブリッド南から3カウント奪取。勝負タイム12分53秒。

メインイベントはSPZ選手権。王者・スイレン草薙に挑むのはボンバー来島。

「来島さんじゃ勝てない」

ゲストかいせつの上原今日子が断言。

「スイレン選手のプロレスは古武術が微妙に入ってますから、ああいうパワーに任せて突っ込んでくる選手を投げたり関節とったりするのはお手の物なんです」

試合はそのとおりになった。ワンパターンに突っ込んでヘッドバットで攻める来島、しかしたいていはスイレンの投げの餌食。いくら頑健なボンバー来島でもバックドロップ3発食らってはどうにもならない。最後はスイレンのエルボーに崩れ落ちて3カウントを聞いた。勝負タイム25分4秒。王者が2度目の防衛に成功。

「あー、勝てんかった・・・」

2007年8月25日 (土)

第186回 14年目4月 SPZ選手会の総意

レッスルエンジェルスサバイバー プレイ日誌のようなもの 第三部
「輝くエッセンシャルS」

14年目4月。
横浜戸塚に本拠地自社ビルを構える女子プロレス団体、SPZの創業者(でも今は引退して関連会社の役員に収まっていた)今野和弘(48)は、元所属レスラー、小川ひかる(28)と晴れて結婚し、甘い新婚生活に浸っていた。

4月中旬の日曜日のこと、今野元社長は川崎市内の自宅マンションでのんびりとひかると遅い昼食を食べていた。
「あ、このおひたし、おいしい」
「和弘さんといったことのある大阪の料亭の味をコピってみました」

たべおわるころ、自宅マンションの呼び鈴が鳴った。
ひかるが応対するが、招かざる客2名はズカズカっとダイニングに入り・・
「あれ、井上さん、吉田さん。どしたの?」
SPZ社長代行の井上霧子、そしてもうひとりは先日現役を引退したばかりの元SPZ王者吉田龍子。いまの肩書きは「SPZ指導担当インストラクター」である。

吉田龍子がボソッと一言。
「・・・社長、悪く思うな」
「えっ、なに?」

そして今野と相対した井上霧子がいきなり腰を落として、
「ヤクザキック!」
多少手加減したとはいえ、井上霧子が現役時代必殺ムーブで使っていた強烈な蹴りがはいった、崩れ落ちる今野氏。そこを吉田龍子が、

「ほいさ。」
悶絶した今野氏を担ぎ上げてマンション外まで運び出して、あらかじめ停めてあったワンボックスカーに放り込んだ。
「ごめんね、ひかるちゃん」
そう言って井上霧子はワンボックスに乗り込む。

「あ、私も行きます」
小川ひかるも車に乗り込んだ。井上がアクセルを踏んで車を発進させる。今野氏はどこかへ連れ去られてしまった。

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「手荒な真似してごめんね」
2時間後、SPZ本社会議室。あろうことか今野氏は逃走防止のためか、椅子にロープでしばりつけられている。

「ど、どういうことよ・・・」
弱々しい声で抗議する今野氏、そこへ新選手会長に就任したギムレット美月が話しかける。

「社長、お久しぶりです。自宅で交渉したのではお断りされる確率が高いと思い、このような手を使いました、ちょっとごめんなさい」

 「美月ちゃん、用件は・・・」

「SPZ選手会の総意です。現場復帰してください」

 「キミねえ、ようやく激務から解放されてほっとしているのに」

「2年半、社長の座から離れて十分リフレッシュされ、ご結婚もされたので充電期間はもうよろしいかと存じます」

 「・・・理由を聞かせてもらいたい」

「SPZははっきりいってピンチです。吉田龍子さんが引退し、6期生でスター選手のハイブリッド南さん、新咲祐希子さんも引退を真剣に考えています。となるとスーパースターと呼べる選手はスイレン草薙さんだけになり、営業に支障が出ます。すでにチケットの売れ行きに落ち込みが見え始めています」

 「私が戻ったところで大きく変わらないよ」

「井上さんはもう限界です。ここ数ヶ月、集客のためのマッチメイクや演出や企画を考えるのに神経をすり減らして、酒びたりになってしまいました」

 「酒びたり・・・」

SPZの競合相手の新日本女子プロレスは人気ではSPZと肩を並べる状況であり、興行戦争状態はまだまだ続いている。

「お願いします。社長、現場復帰してください」

このあと2時間くらい押し問答が続いた。あのなあ俺もう50近いんだぞという今野社長。集客の知恵だけ貸せといってるのですと押すギムレットと井上霧子。
そのあと沈黙を守っていた小川ひかるが重い口を開いた。

「私も、和弘さんが現場復帰したほうがいいと思います」

 「ひかる、さん」

「この団体は13年前、和弘さんと、井上さんと私と保科さん、ミミさんの5人で立ち上げました。少なくてもその5人は、団体が困ったときは手を貸せるのであれば貸さなければならないと思います」

 「・・・・いいの、ひかるさん、また月の半分はサーキットでいなくなるんだよ」

「今だって似たような状態です。お互い仕事を持っていて、なかなか二人で過ごせないことに変わりはないと思います。」

小川ひかるはさる監査法人に勤め、会計士補として忙しい日々を送っている。

 「ぼくはもう49になるから、昔みたいに先頭に立ってなんてのはできないよ」

「社長には人事と資金繰りを見ていただいて、あとは私たちの営業にかかわる部分の相談相手になってください。現場は吉田さんが見ます。」

井上霧子が口説く。今野氏はあきれるしかなかった。

「・・・そこまで話つめとるんかい」

 「ひかるさん、本当にいいの、また私が若いコのケツを追いかけに行っちゃうの」

「あら、私は何も心配してないわよ。そんなことする人じゃないって思いますから」

 「・・・・もう、逃げられない、のか。じゃとりあえずロープほどいてくれませんか、脱走はしませんから」

このあと条件闘争が2時間続き、話し合いは深夜に及んだ。井上霧子は若手選手に命じて「よこ川」から折り詰め弁当を4つ取り寄せた。話し合いはだんだん細かくなってきた。どうしても社長はいやだという今野氏、ギムレット美月が「落としどころ」を提示し、今野氏はついに折れてしまった。

 「・・・わかった。承知しよう」

「ではこの誓約書にサインしてください」
今野氏は差し出されたA4の紙を一読した。要するにSPZの営業管理担当役員としていっしょうけんめい働きますといった内容の文書だった。

 「これ、ひかるさんの入れ知恵?」

「・・・・さて、どうでしょうか」

今野氏は苦笑いしながら誓約書にサインした。
その翌々日、専門誌および京スポ新聞に今野創業者が「SPZ取締役営業管理部長」に就任することが発表された。

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「やっぱり巡業には帯同せにゃいかんだろうか」

「いかんでしょうね、今月は新人2人デビューしますし」

なお上司は井上霧子社長代行。主従関係が逆転してしまった。
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「ふぅー、やれやれです」
今野役員のいない間にSPZの財務状況は好転し、4月時点の手持ちキャッシュは30億にのぼっていた。

「すごいね、財務体質テッペキやないの」
今野社長はバランスシートを見ながら唸る。

「ふふ、どっかの社長が数年前まで設備投資しまくってましたから。」

そして14年目4月シリーズ「春のバトルグランデ」が始まる。

「あー、またEWAを新女に持ってかれた」
井上代行が愚痴をこぼす。これで契約を結びなおすまでの数ヶ月はナターシャ・ハンら強豪外人は参戦できなくなる。

4月シリーズ緒戦は青森大会。今野役員はひさしぶりに巡業に帯同したが、割り当てられた仕事はグッズ売り場の販売、試合が始まってからは本部席に座ってのゴング叩き。

第1試合はフォクシー真帆のデビュー戦。少し前に行われた新人テストで、馬力の強さで残った逸材である。相手は1期先輩のロイヤル北条。

「青コーナー、岩手県田野畑村出身、ふぉくしー、まーほー。」

井上レフェリーがチェックをすませると本部席にサインを送る。

ーリング、ア、ベル。

今野役員は木槌を手にとってゴングを一打した。

 カンッ!

SPZ14期生、フォクシー真帆のレスラー生活が始まった。

「はっ!」
練習で覚えたばかりのボディスラムで北条を投げつける。だがあとは一方的にロイヤル北条に攻め込まれ、

「ふっ!」
ロイヤルスパイク(DDT)炸裂。フォクシー真帆は頭を打って、何がなんだかわからなくなった。7分10秒、フォール負け。

際2試合、もうひとりのSPZ14期生フレイア鏡のデビュー戦。この選手は15歳とは思えない大人びた表情と体型をしている。デビュー戦なのに緊張したそぶりも見せない。

相手はやはり1期上のビューティ市ヶ谷。
「覚悟なさいッ!」
ビューティ市ヶ谷、いきなりラリアット2連発、そしてエルボー、バックドロップ。これでフレイア鏡、何もできずにカウント3を奪われた。勝負タイム4分52秒。

「オーホホホホ!今日はこのくらいで勘弁してあげますわ」

「くっ・・・」

青森大会メインは、菊池理宇が凱旋帰国、もといEWAとの提携破棄で行き場を失ったボンバー来島とタッグを組んで、革命軍のハイブリッド南、マイトス香澄と対戦するタッグマッチ。百戦錬磨のハイブリッドがボンバー来島をグラウンド技でいためつけてゆくが、マイトス香澄が出てきたとたんにつかまってしまう。最後は来島のパワーボムがマイトスを沈めた。勝負タイム24分42秒。

********************

その夜、青森の郷土料理店で。今野吉田井上のSPZフロント3人が飲んでいた。

「・・・・・今野さん、本当・・・ゴメンね。現場復帰させちゃって」

すっかり出来上がった井上霧子がぼそりと。

 「これも、運命だよ」

今野氏はホタテ刺しをつまみながら日本酒を飲んでいた。

2007年8月24日 (金)

SPZタッグリーグ戦 歴代優勝チーム

SPZタッグリーグ 歴代優勝チーム

第1回優勝 デスピナ・リブレ アリシア・サンチェス 準優勝 ミミ吉原、南利美 
第2回優勝 ミミ吉原 南利美      準優勝 伊達遥 秋山美姫
第3回優勝 沢崎光 草薙みこと     準優勝 伊達遥 秋山美姫 
第4回優勝 草薙みこと 永沢舞     準優勝 沢崎光 上原今日子
第5回優勝 草薙みこと 小川ひかる   準優勝 沢崎光 秋山美姫   
第6回優勝 草薙みこと 小川ひかる   準優勝 沢崎光 秋山美姫   
第7回優勝 吉田龍子 新咲祐希子    準優勝 沢崎光 秋山美姫 
第8回優勝 上原今日子 ハイブリッド南 準優勝 草薙みこと 小川ひかる
第9回優勝 上原今日子 ハイブリッド南 準優勝 吉田龍子 渡辺智美 
第10回優勝新咲祐希子 スイレン草薙  準優勝 吉田龍子 渡辺智美  
第11回優勝新咲祐希子 スイレン草薙  準優勝 吉田龍子 上原今日子 
第12回優勝吉田龍子  渡辺智美    準優勝 スイレン草薙 ガイア小早川   
第13回優勝吉田龍子 ボンバー来島   準優勝 スイレン草薙 ガイア小早川、ハイサスカラス ドスカナ・リブレ   

(大変お待たせいたしました、明日から連載再開いたします)

2007年8月23日 (木)

SPZスター選手列伝 014 吉田龍子

SPZスター選手列伝

従業員コード:013 SPZ5期生

吉田龍子

1997年11月13日、熊本県八代市出身。2013年4月11日、札幌キターアリーナ大会での富沢レイ戦でデビュー。2013年4月11日、札幌キターアリーナ大会での富沢レイ戦でデビュー。172cmの長身と規格外のパワーを生かした攻撃的な戦いぶりで先輩レスラーを次々に撃破し、デビュー2年目で南利美を破り、SPZ王者に輝くなど驚異のスピード出世でトップグループの一角に食い込む。

SPZ世界王者には7回輝き、4度目の戴冠時には驚異の15連続防衛を果たすなどSPZ絶対王者として君臨。またSPZクライマックスは第8回から第13回まで前人未到の6連覇を成し遂げるなど、長きにわたって団体の頂点の座に君臨し続けた。得意技はスプラッシュマウンテン、ムーンサルトプレス。
2022年3月27日、さいたまドーム大会での菊池理宇戦で引退。稼動月数108ヶ月、出場試合数(推定)760試合

タイトル歴
第8代、第11代、第17代、第20代、第24代、第30代、第34代SPZ世界王者

第3代SPZ世界タッグ王者(パートナーは新咲祐希子)
第17代SPZ世界タッグ王者(パートナーは上原今日子)
EWA世界王者

第8回、第9回、第10回、第11回、第12回、第13回SPZクライマックス優勝(6連覇)
第7回SPZタッグリーグ優勝(パートナーは新咲祐希子)
第12回SPZタッグリーグ優勝(パートナーは渡辺智美)
第13回SPZタッグリーグ優勝(パートナーはボンバー来島)

社長コメント:とんでもない選手だった。全盛期は手のつけられない強さで、ハイブリッド南の関節一発くらいしか死角のない選手だった。スプラッシュマウンテン2発食らったらどんな強豪選手でも眠ってしまう。そこに至るまでもプラズマサンダーボムやムーンサルトプレス、ステップキック、パイルドライバーなど効果的な技の引き出しを多く持っており、シングル戦の勝率はきわめて高かった。

選手生活の晩年までSPZクライマックスの優勝を続け、6連覇という金字塔を打ち立てた(この記録を破る選手は出てこないでしょう)さすがに13年目の秋冬からめっきり力が落ち、ギムレット美月やヘレンニールセンといった中堅選手にフォールを取られるようになって引退を決意した。今後はSPZのコーチとして団体を盛り立てていくようである。

2007年8月22日 (水)

SPZクライマックス歴代優勝者

まだ暑くて体調がガタガタなのでリプレイ再開はもう少し先の予定。

とりあえずSPZクライマックス歴代優勝者でも。

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SPZクライマックス(SPZが毎年8月に開催しているシングルリーグ戦)歴代優勝者

第1回 優勝 ミミ吉原   準優勝 南利美
第2回 優勝 沢崎光    準優勝 デスピナ・リブレ
第3回 優勝 南利美    準優勝 草薙みこと
第4回 優勝 伊達遥    準優勝 秋山美姫
第5回 優勝 草薙みこと  準優勝 南利美 秋山美姫 沢崎光
第6回 優勝 草薙みこと  準優勝 伊達遥
第7回 優勝 草薙みこと  準優勝 伊達遥
第8回 優勝 吉田龍子   準優勝 伊達遥
第9回 優勝 吉田龍子   準優勝 ハイブリッド南
第10回優勝 吉田龍子   準優勝 新咲祐希子 
第11回優勝 吉田龍子   準優勝 ハイブリッド南
第12回優勝 吉田龍子   準優勝 ハイブリッド南
第13回優勝 吉田龍子   準優勝 スイレン草薙

2007年8月21日 (火)

第3部予告編

横浜のお嬢様プロレス団体「スーパースターズ・プロレスリング・ゼット」は旗揚げ14年目を迎え、吉田龍子の抜けた穴を懸命に埋めようとしていた。

井上霧子は話題作りのため、ビューティ市ヶ谷率いる「お嬢様軍団」を結成させ、売り出していこうとするがファンの反応はいまいちであった。

「やっぱりさいたまのお嬢様ではいけないのかしら」

「あたしに秘策が・・・ある」

吉田龍子SPZアドバイザー、お嬢様軍団に対抗すべく結成したのは前の晩3分で考えた「吉田キラーマシン軍」であった。構成員は11期生の菊池理宇とボンバー来島。

「やっぱりね、プロレスは対立構造だとおもうんだよね。昔の鶴田軍対超世代軍じゃないけど」

「修行の成果を見せないといけませんね」

現エースはSPZ王者、スイレン草薙。草薙流アレンジが入った投げまくりは健在、関節技絞め技にも強い。

「ボクは、SPZチャンピオンになる!」

次期エースと目されているスターライト相羽の覚醒、飛躍はあるのか?

「気持ちよく眠らせてやるぜーーー」

ボンバー来島もトップグループ入りをうかがう。はたして「来島さんじゃ勝てない」定説は覆るのか?

SPZのリングはエースがいなくなって戦国時代、「輝くエッセンシャルS」近日連載再開予定。乞うご期待。

2007年8月20日 (月)

SPZタッグ王座の変遷

また暑さが戻ってリプレイ再開する気が起きません。

とりあえず13年目終了時のSPZタッグ王座の変遷でも。

SPZタッグ選手権
初代  沢崎光 秋山美姫 1
2代目 草薙みこと 小川ひかる 2
3代目 吉田龍子 新咲祐希子  5
4代目 沢崎光 秋山美姫 0
5代目 南利美 ハイブリッド南 (南利美引退により返上)
6代目 沢崎光 秋山美姫 0
7代目 草薙みこと 小川ひかる 0
8代目 永沢舞 富沢レイ 0
9代目 伊達遥 スイレン草薙 0
10代目草薙みこと 小川ひかる 3
11代目永沢舞 富沢レイ 1
12代目伊達遥 スイレン草薙 0
13代目ハイブリッド南 マイトス香澄 0
14代目永沢舞 富沢レイ 0
15代目ナターシャ・ハン アンナ・クロフォード 2
16代目新咲祐希子、スイレン草薙 5  
17代目吉田龍子 上原今日子 2
18代目ハイブリッド南 マイトス香澄 3
19代目ハイサスカラス ドスカナ・リブレ 0 
20代目スイレン草薙 ガイア小早川 6
21代目新咲祐希子 スターライト相羽(現王者)

2007年8月19日 (日)

SPZ歴代女王の変遷

13年間プレイ時のSPZ世界チャンピオンの変遷

王座を創設したのが4年目の頭なので、10年間で9人のチャンピオンが誕生し、36回の政権交代が起こっています。

               防衛回数

初代 伊達遥(1期生)     0
2代目 草薙みこと(2期生) 0
3代目 南利美(1期生)    0
4代目 伊達遥        10
5代目 草薙みこと       1
6代目 伊達遥          2
7代目 南利美          0
8代目 吉田龍子(5期生)   1
9代目 伊達遥          1
10代目 永沢舞 (4期生)  0
11代目 吉田龍子       0
12代目 伊達遥         0
13代目 草薙みこと       4
14代目 永沢舞         0
15代目 上原今日子(3期生)0
16代目 伊達遥           0
17代目 吉田龍子        1
18代目 永沢舞         1
19代目 伊達遥         0
20代目 吉田龍子       15
21代目 ハイブリッド南(6期生)0
22代目 新咲祐希子 (6期生)0
23代目 永沢舞         0
24代目 吉田龍子        0
25代目 ハイブリッド南     1
26代目 新咲祐希子      0
27代目 永沢舞          2
28代目 ハイブリッド南     
29代目 スイレン草薙 (8期生)0
30代目 吉田龍子        4
31代目 ハイブリッド南      1
32代目 新咲祐希子       0
33代目 スイレン草薙      0
34代目 吉田龍子        1
35代目 ハイブリッド南     1
36代目 新咲祐希子       0
37代目 スイレン草薙(現王者)

2007年8月18日 (土)

SPZスター選手列伝 013 渡辺智美

SPZスター選手列伝
渡辺智美
SPZ5期生 従業員コード:014
1998年3月23日、香川県多度津市出身。2013年7月17日、岐阜体育館での対 ミミ吉原戦でデビュー。2021年3月22日、さいたまドームでの対 キューティー金井戦で引退。

稼動月数93ヶ月 出場試合数(概算)672試合
タイトル歴
第12回SPZタッグリーグ優勝(パートナーは吉田龍子)

社長コメント:渡辺さんがいてくれたおかげで、前座に華があった。軽快な飛び技と関節技で、前座戦線を盛り上げ、「6時半の女」保科優希とは200回近くシングル対戦し、SPZ第1試合の名物カードと化した。保科のおっとりとしたレスリングに懸命についてゆく渡辺の姿が印象的だった。

ある程度レスラーとしての経験をつんでからは、「かわいい顔してこんなこともやる」ヘッドバットなどで保科を追い込むことも多かった。また、吉田龍子や永沢舞と組んで、メインやセミのタッグマッチにも顔を出すこともあり、そのときは一流選手に混じっての懸命なファイトが胸を打った。実力的にはアイドルレスラーの域から抜けられなかったが、若手選手の壁としてながいあいだ活躍していただいた。引退後は芸能界入りし、女優としてそこそこ活躍しているらしい。

2007年8月17日 (金)

第185.1回 「はい。誓います。」

022年3月某日、長野県軽井沢の某教会を借り切って、SPZ前社長の今野氏(48)の結婚式が行われた。
お相手はSPZ一期生の元レスラー、小川ひかる(28)。
本人は「いまさらそんなもんやらなくても」と主張したが、井上霧子をはじめとするかつての仲間、SPZの面々は承知しなかった。
ただ単に「井上霧子が飲む理由が欲しかった」という説もあるが。

井上霧子(なぜかシスターのコスプレ)
「本日 これより 神の御名において 今野和弘と 小川ひかるの 結婚式を 行います。」
井上霧子「それでは まず 神への 誓いの言葉を。」

井上霧子「なんじ 今野和弘は
    小川ひかるを 妻とし……」
井上霧子「すこやかなる時も 病める時も
    その身を 共にすることを 誓いますか?」

「・・・はい。」

井上霧子「なんじ 小川ひかるは
    今野和弘を 夫とし……」
井上霧子「すこやかなる時も 病める時も
    その身を 共にすることを 誓いますか?」

小川ひかる「はい。 誓います。」

井上霧子「よろしい。 では 指輪の交換を。」

今野和弘は 小川ひかるの 指に
小川ひかるは 今野和弘の 指に
リングを はめた。
井上霧子「それでは 神の御前で
    ふたりが 夫婦となることの 証を お見せなさい。」
井上霧子「さあ 誓いの口づけを!」

今野和弘は 小川ひかるを見つめ・・・
そして、唇を合せた。

そのまま列席していたSPZの選手関係者、来客全員がカウントを取る。
「ワン、トゥ、・・スリー!」
スリーカウントが入った。

井上霧子「おお 神よ!
    ここに また 新たな夫婦が 生まれました!」
井上霧子「どうか 末永く このふたりを
    見守って下さいますよう!
    アーメン……。」

吉田龍子「おめでとう!
      エロ社長! 幸せにな!」

ギムレット美月「社長、 小川さん・・・
      どうぞ お幸せに!」

京スポ新聞若林「ピー ピー!
  今野さん! 奥さんを 大事に しろよ!」

こうして 今野和弘は 小川ひかると 結婚した。

その夜は おそくまで
お祝いの宴が 続き……

そして 夜が 明けた……。

*****************************

(こんな原稿を書いてしまい、ほんっとスイマセン。ここ数日、あまりの暑さで筆者の神経は少々おかしくなったものと思います)

2007年8月16日 (木)

SPZスター選手列伝 012 永沢舞

SPZスター選手列伝

従業員コード:012 SPZ4期生

永沢舞

1997年3月29日、福岡県二日市市出身。2012年4月16日、大阪舞州アリーナ大会での保科優希戦でデビュー。猫ミミ&しっぽをつけたコスチュームでイロモノレスラーと見られがちだが、リング上では投げ技を次々と繰り出すファイトを展開。難易度の高いJOサイクロンまで使いこなす。勢いに乗ったときは手がつけられない強さで、全盛期の伊達遥を一方的に仕留めてSPZベルト初挑戦で王者になってしまった事件はファンの間でも語り草になっている。SPZ世界王者には通算5度輝くなど、吉田と並ぶ団体のトップとして活躍。得意技はJOサイクロン。

2020年11月26日、横浜スペシャルホール大会でのビーナス麗子戦で引退。稼動月数103ヶ月、出場試合数(概算)728試合
タイトル歴

第10代SPZ世界王者 

第14代SPZ世界王者

第18代SPZ世界王者

第23代SPZ世界王者

第27代SPZ世界王者

(通算防衛回数 3回)

第8代SPZ世界タッグ王者、

第11代SPZ世界タッグ王者、

第14代SPZ世界タッグ王者(パートナーはいずれも富沢レイ)

第4回SPZタッグリーグ優勝(パートナーは草薙みこと)

社長コメント:SPZトップグループのなかでも個性あふれる選手だった。SPZの選手で最初にJOサイクロンを持ち込み、敗戦必至の状況から一発逆転ドーンをやってのける選手で、SPZベルトも5回巻いた実力者だった。その一方でコロッと負けることも多々あり、好不調の波が激しい選手であった。何も考えずに対戦相手を投げ飛ばすスタイルは多くのファンの胸を打った。初めてSPZ王者になったときの伊達遥戦は衝撃的ですらあった。引退後はSPZのコーチを務めた後、現在はペットショップ店員として第2の人生を送っているようである。

2007年8月15日 (水)

しばらく休養。

(13年目3月シリーズ最終戦終了後の横浜戸塚の日本料理店「よこ川」)

「引退、おめでとー!」

9期生以前(20歳以上)の選手、スタッフが集まりだいえんかい。テーブルの上には刺し身煮物焼き物がズラリ。

「龍子ちゃんお疲れ!きょうはいっぱい食べてってくれ!鯛の刺し身6匹分行くよー!」

「よこ川」のリーゼントマスターが吉田龍子に声をかける。

「・・ありがとう、まあ、うまくやった方かな」

吉田龍子は肩の荷が下りた表情でサバサバとしていた。にこやかな表情でビールをすすった。

「・・・これからSPZどうなるんでしょうか。」

井上霧子、やはり酔っ払っていた。

「ハイブリッド南選手も新咲選手もリングを去る日はそう遠くないですし」

SPZの機関紙と化した京スポ新聞若林記者が相槌を打つ。

「・・・まあしばらくはスイレン草薙が次のエースにして、その間に次のスターを育成するしか・・・ないんですかね」

「かつおのたたき~♪」

新咲祐希子がいつも以上に食いまくっている。

選手連中はひたすらもの食い酒を飲んでいたが、井上霧子は頭を抱えていた。

「相羽ちゃんは、ボクっ娘だしねえ・・・・」

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(筆者より)

ここ数日猛暑が続きぐったりしております。

1日チョコモナカジャンボを2つ食ってもグダグダ状態。

第186回以降も連載はもう少しだけ続く予定ですが、しばらく休憩を取らさせていただきたいと思います。

さすがにサイコー気温35度以上の猛暑日はこたえますね・・・

レッスルエンジェルスサバイバー2が出るらしい。

それまでになんとかSPZを終わらせないと・・・(汗)

2007年8月14日 (火)

第185回 ひとつの歴史が終わるとき

前回までのあらすじ

この連載の事実上の主役、吉田龍子さん(SPZ5期生)が、ついに体力の限界を感じ引退を表明。最終戦はさいたまドーム大会、最後の相手は11期生で吉田がコーチした新鋭、菊池理宇。

カンッ。
序盤は互角の展開。吉田と菊池がエルボーの打ち合い。重さなら吉田なのだが菊池のエルボーもスピードがある。

「オラー!!」

エルボーの打ち合いにじれた吉田が組み付いてボディスラムで投げつける。しかし菊池はこんなのは特訓でやられ慣れているので、平気な顔をして起き上がり、

「はっ!」

エルボーで反撃。そして、15分過ぎに菊池が先に勝負に出た。

「あたしが・・・勝つんだから!」

菊池がムーンサルト。カウント2,5で返す吉田龍子。
重くなったな・・・
駆け出しのころは菊池の飛び技はぜんぜん重さを感じなかったのだが、菊池も特訓を繰り返して相当強くなってきている。

それでも吉田、じぶんがコーチした弟子にやられるわけにはいかんと気合を入れなおし

「てゅりあああっ!」

体重の乗ったニーリフト、ステップキックで形勢を打開。しかし菊池も

「アーーーーーッ!」

菊池ものすごい形相でエルボー。しかし吉田倒れない。

「アーーーーーッ!」

菊池、立て続けにハイキック。吉田これにはダウン。ふらつきながら起き上がってきたところを、狙って、

「ウアアーーーッ!」

もう一度エルボー。しかしカウント2.8で吉田返す。

ドドドドドド。

「これで・・終わらせる!」

吉田龍子、代名詞のスプラッシュマウンテン、軽量の菊池を担ぎ上げて垂直落下。

「ワン、トゥ・・・」マットを叩く井上レフェリーも万感の思い。

しかしカウント2.8で返す菊池。どどどどどどどど。

館内ものすごいヨシダコール。しかし菊池、エルボーで吉田を倒すとコーナーに登って
この日2発目のムーンサルトプレス。

ワン、トゥ・・・ドドドドドド!

カウント2.9で返す吉田。さいたまドームは大盛り上がり。

「ウオオオーッ!」

吉田が吼える。そして「最後の1勝」を取りにいく。勝利への執着心はSPZでも随一である。
体勢を立て直し、デンジャラスヤクザキック。吉田はあまり打撃はうまくはないが、力はあるのでかなり痛い。

「あああっ・・・」

ものすごい蹴りの乱打を食らって吹っ飛ぶ菊池、吉田すかさずカバー。カウント2.8で返す菊池。フラフラだ。

吉田、気合いをいれなおしてから菊池に組み付き、パイルドライバー。オーソドックスな技だが、大柄な吉田がやると破壊力が違う。この技でスイレン草薙を下してSPZクライマックスを獲ったこともある。

バァァン。

―よし、これで勝てる。

吉田、そのまま上に乗ってカバー。

ワン、トゥ・・・

ドドドドドドド!

カウント2.9で返す菊池。

そんなバカな?
一瞬動揺した吉田。思わず井上レフェリーに確認したが指2本を出される。そこをついて菊池が起き上がって組み付いて、ボディスラムで転がし、すばやくコーナーに登り、

3度目のムーンサルトプレス!菊池が見事なフォームで宙返りして吉田に落下して、

ワン、トゥ、スリー!
井上レフェリーの手がマットを3つ叩く。吉田龍子、頭の中のイメージでは返したつもりだったが足が動かなかった。

「23分49秒、ムーンサルトプレスからの体固めで、菊池理宇の勝ち」
リング上を舞う赤い紙テープ。

「・・・強くなったな・・・」
菊池理宇、最後の最後で師匠越えを果たした。

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吉田龍子最終試合

菊池理宇(23分49秒、ムーンサルトプレスからの体固め)吉田龍子

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菊池のテーマ曲「THROUGH THE FIRE」が流れるなか、リング上で菊池と握手して、吉田は埼玉ドームの花道を引き上げた。

「勝てると思ったんだけどね。まあ菊池もこの団体でもまれて強くなったんだろうね」

吉田は淡々とバックステージでインタビューに答えた。あれほどの勝率を残した吉田龍子も最後はシングル5連敗。

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メインイベントは新咲祐希子、スターライト相羽対ハイブリッド南、マイトス香澄のSPZタッグ戦。しかしスターライト相羽が強い。ハイブリッドの関節技攻勢にもうまく対応。最後は孤立したマイトス香澄をキャプチュードで片付けて終了。勝負タイム23分32秒。

SPZ世界タッグ戦

新咲祐希子、S相羽(23分32秒、キャプチュード)ハイブリッド南、M香澄

王者組が防衛に成功

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メインイベント終了後、吉田龍子の引退式。井上霧子社長代行、京スポ新聞の若林記者が花束贈呈。その後吉田龍子から挨拶。

「あたしは今日で引退する。みんな今までありがとよっ!じゃあな!」

涙は見せなかったが、声の端々が震えていた。

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吉田龍子 (SPZ5期生)

2013年4月11日、札幌キターアリーナ大会での富沢レイ戦でデビュー。2022年3月27日、さいたまドーム大会での菊池理宇戦で引退。

稼動月数108ヶ月、出場試合数(推定)760試合

タイトル歴

第8代SPZ世界王者

第11代SPZ世界王者

第17代SPZ世界王者

第20代SPZ世界王者

第24代SPZ世界王者

第30代SPZ世界王者

第34代SPZ世界王者

第3代SPZ世界タッグ王者(パートナーは新咲祐希子)

第17代SPZ世界タッグ王者(パートナーは上原今日子)

EWA世界王者

第8回SPZクライマックス優勝

第9回SPZクライマックス優勝

第10回SPZクライマックス優勝

第11回SPZクライマックス優勝

第12回SPZクライマックス優勝

第13回SPZクライマックス優勝(6連覇)

第7回SPZタッグリーグ優勝(パートナーは新咲祐希子)

第12回SPZタッグリーグ優勝(パートナーは渡辺智美)

第13回SPZタッグリーグ優勝(パートナーはボンバー来島)

写真集 1冊

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(第二部 完)

2007年8月13日 (月)

第184回 13年目3月 吉田龍子引退カウントダウン1

最終戦さいたまドーム大会。正面入り口には大看板が。

吉 田 龍 子 最 終 試 合 

さいたまドームには吉田龍子の最後のファイトを見ようと多くのファンが詰め掛け、当日券はあっという間にはけて、超満員札止めとなった。

17時半開場。無料で配布されるプログラム、表紙には湘南の海をバックにジーンズ姿で物憂げにたたずむ吉田龍子が。

「いや、ほんっと、全盛期の吉田さんはすごかったんだって」

客席のあちこちから吉田龍子の思い出話が。SPZの13年の歴史で、彼女ほど強烈な輝きを放った人はいない。

そして、18時半の開演。例によって「引退記念おもしろビデオ」の上映から。

「吉田の前に吉田なく、吉田の後に吉田なし」

村越リングアナのナレーションのあと、吉田龍子の過去の名勝負がダイジェストで上映される。

「・・・がっ!」

まだ駆け出しの頃の吉田、強烈なタックルに吹っ飛ぶミミ吉原。

「・・・あああっ!」

プラズマサンダーボムで叩きつけられる南利美。

「アアーッ!」

ラリアットでハデに吹っ飛ばされる小川ひかる。客席がひときわどよめく。

「うあっ!」

DDTを食らって苦しむ伊達遙。一期生に引退を決意させたのはこの選手の存在が大きい。

「はああっ!」

スプラッシュマウンテンでまっさかさまに落とされて動けなくなる草薙みこと。

「・・・くっ。」

ステップキックを食らって頭を押さえる上原今日子。鋭い目で見据える吉田龍子。

「うあーーっ!」

デンジャラスキックをもらって吹っ飛ぶスターライト相羽。

「・・そんなっ」

ギロチンドロップでフォール負けして頭を抱えるギムレット美月。

「うぎゃああああああ!」

選手会興行で逆エビ固めをかけられて悶絶する今野前社長。秘蔵映像に場内はどっと沸く。

「吉田龍子の魅力は炎と雷がダブルで暴れるようなその闘争心。殺気の塊のような表情でプラズマサンダーボムやスプラッシュマウンテンをたたきこむ。幾人ものレスラーを葬ってきたその破壊力。対戦相手のみならず、選手の治療費がかさんで多くの関係者に恐怖を与えた」

どっ!

場内爆笑。

「強い気持ちを持って闘うことの大切さを吉田龍子は教えてくれた」

そのあとバックスクリーンに表示された文字。

SPZクライマックス 6年連続優勝

SPZ選手権 通算防衛回数 22回

「前人未到、驚天動地の戦績。今後こんなレスラーはもう現れないであろう、その名選手が今日、ついに、リングシューズを脱ぐ」

そのあと場面は切り替わり、先日「よこ川」でインタビューを受ける吉田龍子の映像が。

「最後にファンの皆様にひとこと」(聞き手:京スポ新聞 若林記者)

「んー、まあ・・その、いままで吉田龍子を応援していただいてありがとうございました。あたしがリングを降りても、これからもSPZは躍進していきますので応援よろしくお願いいたします・・・・・こんなもんでいい?」

「はいOKです。」(しかしカメラは回っている)

「じゃあ井上さん、本格的にのもうか、今日は負けな・・・ひっ?」

「いがいろうで、ばらいえん、いや、はなれそんなんで・・・」(既に深酔いして意味不明の言葉をつぶやく井上霧子)

そのあと井上霧子をほっぽっといて、若林記者とビールを飲みながら放談する吉田龍子。

「あー、ビールうま。でも・・・引退したら、節制しなきゃいかんね。カロリー消費しなくなるから。ブタになっちゃう」

そう言いつつも焼き海老をほおばる吉田龍子。

(まだカメラは回っている)

「若林さ~ん、京スポの連載小説『天使のいない家電量販店』、面白くなってきたんじゃない、あの子、マミちゃん、来週あたりヤラレちゃうの?」

「へ、ぐっ!」ビールを噴出す若林記者。

酔って、京スポ新聞絶賛連載中のエロページ連載小説の話をしだす吉田龍子。場内爆笑。

「・・・・・・・・・・・・・・・・はへぇ~」

最後は酔いつぶれて失神した井上霧子社長代行の顔でおもしろビデオが終わった。場内大爆笑。

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カン、カン、カン、カン、カン・・・・

村越リングアナウンサーが上がり、内ポケットから取り出したメモに書かれた内容を読み上げる。

「大変長らくお待たせいたしました、本日のカードを申し上げます。」

ドワアアアア!

「第1試合、シングルマッチ30分1本勝負、キューティ金井対ドスカナ・リブレ、

第2試合、シングルマッチ30分1本勝負、ビーナス麗子対ガイア小早川。第3試合、6人タッグマッチ30分1本勝負、芝田美紀ロイヤル北条ビューティ市ヶ谷対、エレンニールセンへレンニールセン、アンナクロフォード。第3試合終了後休憩を頂きます。第4試合、タッグマッチ30分1本勝負スイレン草薙ギムレット美月対ハイサスカラス、ナターシャ・ハン。」

ここで一呼吸置いて、次のカードを読み上げる

「第5試合セミファイナル、シングルマッチ30分1本勝負・・・吉田龍子、対、菊池理宇」

ワアアアアアドオオオオオ!

「やっぱり!」「菊池かよ」「驚いた」

どよめきがさいたまドームを包む。最終戦の相手は吉田龍子本人の希望もあって、コーチしていた弟子の11期生、菊池理宇が選ばれた。

村越リングアナ、どよめきが収まるのを待ってからメインイベントのカードを読み上げる。

「メインイベント、SPZタッグ選手権試合60分1本勝負、挑戦者ハイブリッド南マイトス香澄 対 チャンピオン新咲祐希子スターライト相羽」

なおもざわめきは収まらなかった。

カン、カン、カン、カン、カン・・・・

ほわーんとしたメキシコ音楽が流れ出す。SPZ3月シリーズ最終戦が始まった。

「・・・やれやれっと」

吉田龍子、赤コーナー側控室いちばん奥の定位置でつぶやく。今日セミで闘ったら、リングコスチュームを着ることも、リングシューズを履くこともない。

リング上、第1試合はキューティ金井対ドスカナ・リブレ。終始攻めまくったドスカナが7分32秒、ジャンピングニーでアイドルレスラーの金井を退けた。

第2試合はビーナス麗子対ガイア小早川。ふだんはSPZ正規軍として同じコーナーに立つことの多い両者だが、この日は熱い戦いを展開。

「はぁぁっ!」

ビーナス麗子がハイキックでガイア小早川を退けた。勝負タイム12分24秒。

第3試合は6人タッグマッチ。芝田美紀、ビューティ市ヶ谷、ロイヤル北条の「お嬢様軍団」がエレンニールセン、ヘレンニールセン、アンナ・クロフォードのEWA軍と激突。

「凄いタッグチームだ!」

ロイヤル北条ビューティ市ヶ谷、芝田の3人が同じコーナーに立つだけで館内は異様なボルテージに。

だが相手は百戦錬磨のEWA軍。アンナクロフォードが例によってねちねちとした攻めでお嬢様3人に悲鳴をあげさせる。徐々に追い込まれていくお嬢様チーム。しかし土壇場でお嬢様チームが逆転に成功。

「もう遊びの時間は終わりだっ!」
ロイヤル北条の必殺DDT「ロイヤルスパイク」が決まった。これでヘレンニールセンからカウント3.勝負タイム17分23秒。この試合は盛り上がった。赤コーナー側で3人がにっこりと手上げ。大歓声がとどろく。この試合が終わると休憩。

「よういすっか・・・」

吉田龍子、控室奥の更衣スペースでいつもの赤いリングコスチュームに着替える。そのあとリングシューズに紐を通す。

「このシューズも今日で使いおさめか。」

シューズの紐を通し終えると、

「ゆっこー」「はいー」

新咲祐希子と軽くウォーミングアップ。まずタオルの引っ張り合い。そのあとロックアップの動作確認。

その頃リング上では休憩時間が終わり、第4試合が始まった。スイレン草薙、ギムレット美月が登場。対戦相手は最強外国人チームのハイサスカラス、ナターシャ・ハン組。

「せいっ!」

SPZ世界王者のスイレン草薙がいつも通りの投げまくりで最強外人組相手に奮闘するが、外人組の細かいタッチワークにつかまり、ローンバトルを強いられて、最後は合体パワーボムで弱ったところをナターシャ・ハンのカカト落しで3カウントを奪われた。

意外な結末に館内ええええ!の声。

「・・・スイレンもタッグだとアレだね。」

吉田龍子、セミ前が終わったのを確認するや黒いロングガウンを羽織る。ここ数年使っていたが今日で最後である。そのあと花道奥へ移動。

「頑張って、吉田さん」

新咲が声をかける。

「まあ、楽しんでくるよ」

新咲スイレンハイブリッドと違い、自らがメンドウを見た愛弟子の菊池が相手。まあ力押しでなんとかなるだろうと吉田は考えていた。

そしてセミファイナル。
「次の試合に登場する吉田龍子選手は本日が最後の試合となります。ファンの皆様、よりいっそうの声援をお願いいたします」

どどどどどどどどどど!

まず菊池理宇が花道を走って入場、トップロープを飛び越えてリングイン。そして・・

「赤い破片」に乗って吉田龍子入場。引退試合でもいつも通り淡々とした表情で入場。

ロイヤル北条が開けるロープをくぐってリングイン。いつものように対戦相手の菊池をにらみつける。

「本日のセミファイナル、シングルマッチ30分1本勝負を行います。青コーナー、宮城県仙台市出身、きくちー、りーゆぅぅぅぅぅ!」

まるで新人選手のように菊池理宇、深々と一礼。

「赤コーナー、熊本県八代市出身、よしだー、りゅーこーーーー!」

村越リングアナが気合のこもったコール。

赤い紙テープが乱舞乱舞乱舞。後から後から投げ込まれる。セコンド陣総出で片付け。

「レフェリー、井上霧子」

井上レフェリーも一礼。そして形式的なレフェリーチェック。そのとき吉田がボソッとつぶやいた。

「今のあたしを倒さなきゃ一流にはなれないぞ、菊池」

「・・・・・・・・・・・・・!」

挑発しているのか、弟子に最後のアドヴァイスを送っているのか。

そして井上霧子がゴングを本部席に要請した。村越リングアナがゴングを一打。

カンッ!

午後8時15分、吉田龍子最後の闘い。

(続きます)

2007年8月12日 (日)

第183回 吉田龍子引退カウントダウン432

あらすじ

時に西暦2022年、ここ数年のSPZを支えてきたエース選手、吉田龍子がついに引退を表明。引退シリーズは全国を回る。そして残すところあと4戦、吉田龍子の豪快かつ殺気の塊なファイトがもう見られなくなる。

翌日は広島若鯉球場、メインに組まれたのはシングルマッチ、吉田龍子対ハイブリッド南。

「入院の用意はすませたかしら?」

「るせえ。」

ここ数年、恐ろしい抗争を繰り広げてきた両者が最後の激突。パワーの吉田龍子、技のハイブリッド南。気合いを表に出す吉田とサイボーグ、戦闘マシンのハイブリッド。対照的なファイトスタイルの両者は数々の名勝負を生み出してきた。吉田の絶頂期には「吉田を止める可能性のある唯一の女」といわれた。

試合はハイブリッドが吉田の右腕めがけお手本のような一点集中攻撃。

ーなんていやらしいヤツだ。あーもう。

吉田龍子、攻め手が見つからぬままズルズルとハイブリッド南のペースにはまってしまう。グラウンドレスリングでのテクニックはハイブリッドが何枚も上だ。すきあらば右腕を狙ってくる攻め。

ハイブリッド南、最後は脇固めを延々かけ続けて吉田からギブアップを奪った。

「アーくそ。あいつには最後までやられたよ!」

右腕を押さえながら憮然とした表情で引き揚げる吉田龍子。

吉田龍子引退カウントダウン4

ハイブリッド南(15分くらい、脇固め)吉田龍子

実際のところ吉田のシングル戦の戦績はハイブリッドに分が悪い。SPZ王座に7回輝いて7回転落しているが、うち4回はハイブリッドにベルトを奪われているのだ。

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第6戦大阪なにわパワフルドーム大会。

吉田龍子、きょうの相手はメインでSPZ王者のスイレン草薙とノンタイトルながら対戦。

いつものように吉田は突進してのラリアットをたたきこむ。とはいえスイレンもSPZ王者、引退を表明した選手には負けられない。

ドゴオオン!

みごとなノーザンライトスープレックスでたたきつける。しかし吉田もスプラッシュマウンテンで反撃。

「ぐううっ・・・」

スイレン草薙、平静を装って起き上がり吉田に絡み付いてドラゴンスリーパー。

「・・・・・UA」

延々絞めあげる。これで吉田はぐったりしてしまった。

「勝たせていただきます」

スイレン草薙、そこを突いてとどめのノーザンライトスープレックス。ハデに投げつけられた吉田はカウント3を奪われた。勝負タイム18分29秒。

吉田龍子引退カウントダウン3

スイレン草薙(18分29秒、ノーザンライトスープレックスホールド)吉田龍子

「シングル3連敗・・か。どういうことよ。」

吉田龍子、シングルマッチで3連敗を喫するというのは若手時代にもあまりなかった。勝率の高いところがこの選手の特徴だったが、死に物狂いで戦っても上位の選手には勝てなくなってしまったのか・・・

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第7戦名古屋しゃちほこドーム大会。吉田龍子の相手はメインで新咲祐希子とシングルマッチ。新咲は先シリーズに右足首を痛めていたが、3月は最後の2戦だけの特別参戦となった。復帰戦でいきなり吉田とシングルマッチ。だが新咲の目は真剣そのものであった。

―吉田さんに、引導を渡す。

そう考えて新咲は吉田に襲い掛かっていった。

「これ以上負けられるかっての!」

吉田のスプラッシュマウンテン。しばらく実戦を離れていた新咲は大ダメージを負った。
しかしこれで決めきれないのがいまの吉田である。組み付くが次の技が仕掛けられない。

「はああー、いっくよーッ!」

新咲も高速ジャーマンで反撃。吉田は頭からマットに突き刺さる。
「ぐわあああっ」
吉田、目の前が真っ黒になった。逃さず新咲、とどめのキャプチュード。これで吉田からカウント3を奪った。勝負タイム20分32秒。

吉田龍子引退カウントダウン2

新咲祐希子(20分32秒、キャプチュード)吉田龍子

敗れた吉田、リング上で大の字。逆のパターンは今まで多かったのだが・・・
新咲は涙ぐんでいた。若手のころよく吉田とタッグを組んで伊達組や草薙・小川組と死闘を展開していた日々を思い出したのか。初めてタッグベルトを取ったのも吉田とだった。

「ゆっこ・・・ありがとう、本気で来てくれて。これで未練もなくなったよ」
吉田と新咲は抱き合って健闘をたたえあった。

最終戦はさいたまドーム大会。

ひとつの歴史が今終わろうとしている。

2007年8月11日 (土)

第182回 吉田龍子引退カウントダウン8765

13年目3月。
「井上さん、・・・よく考えたんだけど、あたし引退するわ」

「ちょ、ちょっちょっちょと、」

その夜SPZ本社近くの「よこ川」で面談。飲みながらこういう重要な話をするところが井上霧子と吉田龍子の間柄。

「龍子ちゃん、まだやれると思うわよ」

「いや・・これ以上、なんだその、ブザマな姿を見せたくない。こういうのもなんだけど、吉田龍子のイメージを壊さないまま辞めたい」

「・・・・・・・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・・・・・・」

井上霧子も元レスラーなのでこういう心情は痛いほどわかる。

「でも、龍子ちゃんが抜けたら、SPZわー」

そういいながら井上霧子、冷酒のグラスをあおる。

「営業的に困るっていいたいんでしょ~、今野さんが言いそうなことだね、うちの会社そういう風土あるからね」

「ドーム埋める、自信ないわーん」

井上霧子、また冷酒のグラスをあおる。

「心配要らないと思いますよー、スイレンもスターライト相羽ちゃんも、来島さんも、そして菊池も成長してきてる」

「・・・・あの子らに、ドームのメイン勤まるかしら・・・、お客さんが、チケット買ってくれるかしら」

井上霧子、きょうはかなーり酔っている。普段は「私はいくらでも飲めますわー」とか言ってるが、さすがにこたえたらしい。

「前の団体にいたときにねー、先輩に言われたわ」

 「はあ」

「メインやセミに出るプロレスラーってのはね、ひとつのピザパイをつくる仕事なのよー。」

 「ピザパイ・・ですか」

「そう、メインを張るレスラーの輝きが素晴らしいほど、お客さんの人気が集まって、大きな「ピザパイ」が焼けて、前座の試合に出るレスラー、ゲスト参戦するレスラー、スタッフ、関係者がもらえるピザの一切れが増えるって」

 「・・・・・・・・・・」

「龍子ちゃんが抜けても、残った面々で、ピザパイはなんとか焼けると思うの。でも、そのピザパイはいままでより小さくて、味もビミョウな・・・」

 「・・・・・・・・・・・いいたい事は、分かる・・・」

「だから、あと1年くらい、頑張ってみない?・・・ヒック」

でろでろに酔っ払った状態で説得する井上霧子社長代行。

 「でも・・・あたしはもう、いままでのようにうまくやる自信がない。それよりかは来島さんや菊池に、いまの居場所を譲って・・・」

「龍子ちゃん・・・」

 「でも、あたしもSPZを見捨てるつもりはない。井上さんやみんなで、今までより大きいピザパイを焼く手助けを・・・したいと思う」

その夜2人は前後不覚になるまで飲んだ。井上霧子はかなり荒れたらしいが、吉田龍子もそれに付き合って飲んでしまって死んでしまったらしい

***********************

「みんな、あとは頼んだ」
翌朝、道場で吉田龍子が引退を表明。選手は動揺を隠せなかったが、吉田龍子が涙をこらえて「わかってくれ!」と言って、選手一同は沈黙した。

やがてハイブリッド南がひとこと。

「じゃあ、やめる前にシングルマッチやりましょうか。その後はSPZスーパーバイザーとしてフカフカの役員席に座るか、病院のベッドから一生出られないかのどちらかね」

「あんたが言うと冗談に聞こえないよ。この性悪」

これで場がだいぶくだけた。

「巨龍、リングを去る!」

翌日の京スポ新聞の一面は上記の内容だった。午後2時ごろに駅売りされた京スポが7時頃にははけてしまった。京スポ新聞は次の日も直撃インタビュー(もちろん「よこ川」で取材した)を掲載した。

若林「SPZクライマックス6連覇をやった吉田選手、ついに引退を決意されたわけですが、今のお気持ちは」

吉田「まあ飲んでください、そんな硬くならずに、やめるって言ったら辞めるんですよ」

井上「・・・・・・・・・・・・・」(メシも食わず、ひたすら飲んでる)

若林「全国1000万人のSPZファン、吉田ファンが悲しむと思いますが」

吉田「それを言われるとツライよ。でも身体がついていかんのじゃ」

井上「・・・・・・・・・・・・どうやって埋めればいいのかしら」(それでもコップ酒を飲んでる)

若林「引退後のご予定は」

吉田「え、あ、うーんと、菊池理宇のコーチ」

井上「テレビ解説者でしょ、あと休憩時間のカラーボール投げでしょ、グッズの売り子でしょ、あと屋外会場では焼きそばを作ってもらうわ」(パーペキに酔ってる)

吉田「ちょ・・・」

井上「アイアンクロ~」(酒によってマスコミ記者に八つ当たり)

若林「あだだだだだだ、割れる割れる割れる割れるぅぅぅぅ」

SPZはどうなってしまうのか、記者は酔った井上霧子のアイアンクローで悶絶してしまった。今後は後進の指導と団体サポートに回る吉田龍子、「なあに、心配せずとも次のスターは現れますよ。だってうちはスーパースターズプロレスリングだからナハハハ」ともかく今後のSPZから目が離せない。(若林太郎)

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かくて、2022年3月は吉田龍子引退シリーズとなった。
緒戦は茨城カシマ大会。

吉田龍子はセミで菊池、キューティー金井と組んでロイヤル北条、ビューティ市ヶ谷、芝田美紀の若手お嬢様トリオと対戦。
「覚悟なさい!」
市ヶ谷のラリアットが吉田をたじろがす。

「甘いよ」
しかし吉田、DDTで倍返し。代わって出てきたロイヤル北条も軽くあしらう。

「菊池、あと頼む」

「はいっ」

若手相手の龍魂伝承マッチなのでこのくらいでいいだろうと考えた吉田、後始末を菊池に任せた。途中、キューティーがつかまる場面もあったが、最後は菊池が吉田を呼び込んで合体パワーボム。これで芝田をしとめた。勝負タイム11分36秒。

吉田龍子カウントダウン8

吉田龍子、○菊池理宇、Q金井(11分36秒、合体パワーボムからのエビ固め)芝田美紀×、B市ヶ谷、R北条

第2戦、群馬アリーナ大会。吉田はやはりセミの6人タッグに登場。菊池、芝田美紀とのタッグでビーナス麗子、ギムレット美月、ガイア小早川の9-10期生と対戦。吉田はビーナス、ギムレットと軽く手合わせしたあとは若い菊池、芝田に任せてもっぱらコーナーで檄を飛ばしていた。

「おらぁ菊池なにやっとんだー、攻めろガンガンいけーい」

最後はリングインして前夜と同じく菊池の合体パワーボムをアシスト。ギムレットを粉砕した。

吉田龍子引退カウントダウン7

吉田龍子、○菊池理宇、芝田美紀(15分くらい、合体パワーボムからのエビ固め)G小早川、V麗子、G美月×

第3戦は北海道に飛んでのどさんこドーム大会。吉田龍子はセミファイナルの6人タッグマッチに登場。菊池理宇、ビューティ市ヶ谷と組んでハイブリッド南、マイトス香澄、キューティ金井と対戦。

「せぇぇい!」

菊池が成長を師に見せ付けるかのように暴れる。ハイブリッド相手でも一歩も引かない。終盤は自らリングイン。

「ヤーアーーーーーッ!!」

しかしアイドルレスラー・キューティ金井がなんとブレーンバスターで大柄な吉田を投げきる。

ウォォォ!

これには館内沸いた。しかし最後は吉田が逆襲し、菊池を呼び込んでの合体パワーボムで終了。勝負タイム13分47秒。

吉田龍子引退カウントダウン6

○吉田龍子、菊池理宇、B市ヶ谷(13分47秒、合体パワーボムからのエビ固め)H南、M香澄、Q金井×

札幌大会メインはスイレン草薙対スターライト相羽のSPZ選手権。スターライト相羽がベルと挑戦に名乗りを上げたが、試合が始まるやじわじわとスイレン草薙が的確に技を積み重ねてゆく。

「アーーッ!」
強烈なバックドロップ。スターライトの意識はだんだんもうろうとしていった。

―かなり頭を打ってますね。
スイレン草薙延髄斬り、そしてデスバレーボム。アタマを打ったところをさらに頭を攻めるえげつない攻め。しかし相羽カウント2.9で返す。
しかしスイレン草薙、まったく攻撃の手を緩めず2発めのバックドロップ。

「・・・・・・・・・・・・・・・あう」

これでスターライト相羽は動けなくなり、3カウントを聞いてしまった。勝負タイム28分36秒。草薙が慎重に攻めたこともあり時間はかかったが、内容的には完勝であった。王者が初防衛に成功。

SPZ世界選手権

スイレン草薙(28分36秒、バックドロップからの片エビ固め)スターライト相羽

スイレン草薙が初防衛に成功

第4戦九州ドーム大会。この日から吉田龍子、シングルマッチ5番勝負が組まれている。酒に酔った井上霧子が「もうプロレスなんてこりごりだと思わせてやるっ」と言うマッチメイク。

九州ドームのメイン、まずはメインでスターライト相羽と対戦。
9期生のスターライト相羽はまだシングルでは吉田龍子に勝ったことがないので積極果敢に攻めていった。引退する人間の勝ち逃げは許さないつもりか。

「おるぁああああ!」
吉田が形成打開のために無理やりスプラッシュマウンテン!しかしS相羽も

「ボクは、ボクは負けない!」

懸命に立ち上がりキャプチュード、そしてDDT,またキャプチュード。怒涛の波状攻撃に吉田龍子の動きが止まった。

「ウワーッ!」

最後はヒップアタックまで繰り出して、吉田龍子から最初で最後の3カウントを奪った。勝負タイム19分50秒。

「負けたよ。強くなったね。」
試合後の吉田の表情はサッパリとしていた。

吉田龍子 引退カウントダウン5

S相羽(19分50秒、ヒップアタックからの片エビ固め)吉田龍子

2007年8月10日 (金)

第181回 吉田龍子の決断

13年目2月

スターライト相羽にファンクラブ、この人は海外生活が長かったのでようやく。芝田美紀にもファンクラブ。シャープな動きの戦いぶりが人気を得たらしい。
ボンバー来島をEWAに海外武者修行に出した。パワーだけに頼るファイトスタイルなので、海外でいろんなスタイルのプロレスを感じて大きくなってほしいと井上が考えた。

2月シリーズ「エキサイティングシリーズ」豪華・外国人選手多数参戦のシリーズである。
5戦目の石川大会、メインは新咲とスターライト相羽のSPZタッグ王座に吉田龍子、菊池理宇組が挑むSPZタッグ戦。

「やるからには取りにいく。いくぞ菊池!あの大食い女を殴り倒してこようぜ!」
衰えてなおベルトへの執念を見せる吉田。その気迫に引きずられるように菊池も新咲にムーンサルトを放つ。

「どうだっ!」吉田の強烈ステップキックがスターライト相羽に決まる。しかしここ金沢は相羽の地元、負けるわけには行かない。懸命にこらえて新咲にスイッチ。そして新咲が菊池に高速ジャーマン!これで一気に流れが変わった。

カウント2.8で返した菊池、懸命に青コーナーに這っていって吉田にタッチ。吉田がパイルドライバー。新咲カウント2.5で返す。

最後はスターライト相羽対吉田龍子の局面。吉田龍子、タイガースープレックスはカウント2.9で返したものの、続く合体パワーボムに吉田、ついに3カウントを奪われた。勝負タイム57分47秒の死闘。王者組が防衛に成功。

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SPZ世界タッグ戦

新咲祐希子、○S・相羽(57分47秒、合体パワーボムからのエビ固め)吉田龍子×、菊池理宇

新咲組が防衛に成功。

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「ゼェッ、ゼェッ、ゼェッ・・・」

控室で横たわったまま動かない吉田龍子。合体パワーボムでかなり頭を打ってしまったようだ。ロイヤル北条がシューズの紐を解く。

「井上さん・・・」

吉田龍子がぼそりと。

「あたしも・・・二流になったね・・・」

井上霧子、何も言えなかった。手のつけられない強さだった吉田龍子はもう見る影もない。

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第7戦静岡大会、メインはアンナ・クロフォード、ユーリ・スミルノフの「あばしりタッグ選手権」に挑戦するは芝田美紀、ビューティ市ヶ谷の「スーパーお嬢様連合」。

「ククククク、なんだー、今回の相手はやけに弱そうだな?」
「ゆっくり、じっくり、いじめてあげるわ・・・」

ビューティ市ヶ谷はデビュー1年足らずでの「あばしり」とはいえタイトルマッチ抜擢。とはいえ対戦相手が百戦錬磨のEWA外人コンビえでは勝ち目は薄いだろうなーと井上社長代行は感じていた。クロフォードを追い込むも、ベテランのスミルノフが猛攻を見せる。

・ ・・日本で戦えるのも、あと少し・・・
「地獄に落ちなー!」
市ヶ谷にバックドロップ、そしてラリアット。代わった芝田にもラリアット。カウント2.5で返すや2度目のラリアット。これで芝田はカウント3を聞いた。勝負タイム28分51秒。

「ウァーハハハハハハ、ロシア、EWA、NUMBER 1!!」

意気揚々とチェーンを振り回して退場するスミルノフであった。

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シリーズ最終戦は神戸大会。

第3試合開始前、以下のようなアナウンスが。
「次の試合に登場するドリュー・クライ、ユーリ・スミルノフ両選手は本日が日本最後の試合となります。ファンの皆様よりいっそうのご声援をお願いいたします。」

館内ドワアアアの声援。古くからのファンは知っている。ドリュー・クライはその猛烈な蹴りで草薙みことや永沢舞、伊達遥を文字通り「叩きのめした」こともある。

ユーリ・スミルノフもEWAの闘士として、急角度バックドロップを武器に秋山沢崎草薙小川といったSPZ戦士をことごとく血祭りにあげてきた。だが二人とも長年の激闘で身体が言うことをきかなくなり、引退を決意した。3月に本国では盛大に引退興行を行うらしい。日本最後の相手は吉田龍子、ビューティ市ヶ谷とのタッグ対戦。

「地獄に落ちなー」
スミルノフの強烈バックドロップが吉田龍子をたじろがす。そして出てきたドリュー、
「最後のお祈りは済んだか?」
強烈なハイキックに吉田吹っ飛ぶ。たまらず起き上がるや間合いをとって市ヶ谷にタッチ。
しかしここでビューティ市ヶ谷踏ん張り、外人組の猛攻を断ち切って、
「吉田・・・さん!」
吉田龍子とビューティ市ヶ谷、走りこんでのサンドイッチラリアット炸裂。これでスミルノフから3カウントを奪った。勝負タイム18分23秒。

「今までありがとうな。」

吉田が外人2人の下に歩み寄り、握手。この2人とは長きに渡り、激闘を繰り広げた仲だ。

神戸大会メインイベントは新咲にスイレン草薙が挑むSPZ選手権。満を持してのタイトル挑戦となったスイレン草薙、強い。投げ技にいくと見せかけてスリーパー、ストレッチプラムとじわじわと攻める。これで新咲の動きを止めて、デスバレーボムであっさり3カウントを奪った。勝負タイム20分36秒。

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SPZ世界選手権 60分1本勝負

スイレン草薙(20分47秒、デスバレーボムからの片エビ固め)新咲祐希子

新咲が初防衛に失敗。スイレン草薙が37代王者となる

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そして・・・・

13年目3月。SPZに激震が走った。
「みんな、あとは頼んだ」
吉田龍子が引退を表明。

2007年8月 9日 (木)

第180回 13年目1月 新春ロケットシリーズ

13年目1月「新春ロケットガールズシリーズ」開催。

前半は四国を回ったあと、第5戦岡山大会。メインはEWA選手権、王者吉田龍子に対するはナターシャ・ハン。

「ヨシダ、そろそろEWAベルトヲ返シテモライマショウカ」
「やれるもんならやってみな。」

ここ数年戦い続けてきた両者の激突。だがナターシャは20歳、レスラーとして実力はピークにあるのだが吉田は・・・それでも懸命にラリアットを打ってペースをつかもうとする。しかしフィニッシュは突然に。ナターシャの逆片エビが入ってしまったのか、吉田があっけなくギブアップ。勝負タイム17分6秒。ナターシャがベルトをようやく、取り戻した。

翌日は奈良大会、メインはギムレット美月、ガイア小早川対アンナ・クロフォード、ユーリ・スミルノフの「あばしりタッグ選手権」しかし今回は古参外人のスミルノフがハッスルして、バックドロップでガイア小早川を沈めて王座奪取。あばしりタッグ選手権が再び流出してしまった。

第7戦新潟大会。メインは新咲祐希子、スターライト相羽のSPZタッグ王者にEWAのナターシャ・ハン、ユーリ・スミルノフが激突するタッグ選手権。
「ロ・シ・ア!ロ・シ・ア!」

例によってユーリはロシア国旗を振り回しながら入場。この選手も息の長い活躍をしているので館内はロシアコールに包まれた。ゴングが鳴って、スミルノフは相羽のスピード感あふれる攻撃を懸命に受ける。新咲には力のこもったバックドロップをお見舞いしてゆく、懸命に奮戦するもー
「そろそろいくよっ」
スターライト相羽のタイガースープレックスがユーリに炸裂。これで試合は終わった。勝負タイム24分33秒。

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最終戦は新日本ドーム大会。相変わらずのSPZ人気、5万超の大観衆で埋まった。

第1試合はロイヤル北条対キューティー金井。新人のロイヤル北条がタイガードライバーでアイドルレスラー・キューティーを倒した。

第2試合はガイア小早川対ビューティ市ヶ谷。フェイスクラッシャーでガイア小早川の完勝。

第3試合はビーナス麗子・ギムレット美月の10期生タッグにアンナ・クロフォード、ドスカナリブレの外人タッグが対戦。ギムレットがドラゴンカベルナリアでドスカナを撃沈。

休憩明けの第4試合は菊池理宇、ボンバー来島の11期生タッグがナターシャ・ハン、ユーリ・スミルノフのロシアンコンビと対戦。じっくり責めるタイプのナターシャはどうも菊池のスピードとかみ合わない。スミルノフは来島のナパームラリアットを食らって動きががくんと落ちる。最後はナターシャを捉えて、ダブルインパクト発動。これでナターシャからカウント3奪取。27分50秒の激闘。
セミ前はスターライト相羽と芝田美紀がタッグを組んでエレン、ヘレンのニールセン一族と激突。相羽が若い芝田を引っ張って外人組の血の連携に相対する。

ニールセン一族もこまかいタッチワークで相羽の動きに対抗していったが、最後はエレンが相羽のタイガースープレックスに沈んだ。勝負タイム18分26秒。

セミファイナルはSPZ選手権次期挑戦者決定戦。吉田龍子対スイレン草薙。ここ数ヶ月、吉田の能力の翳りはじわじわと忍び寄り、スイレンの投げまくり攻勢についてゆけない。スプラッシュマウンテンで打開を図るが単発に終わり、逆にストレッチプラムで長時間絞り上げられ吉田ぐったり。
そこを突いて、スイレン草薙バックドロップ。勝負タイム12分48秒、スイレンの完勝といっていい内容。

「くっ・・・こんな・・はずじゃ・・・」

メインイベントはハイブリッド南対新咲のSPZ選手権。もう何度も戦った6期生同士の対決である。もうお互い手の内を知り尽くしている間柄、中盤までは一進一退の攻防が続く。
先に仕掛けたのは新咲、高速ジャーマン発動。カウント2.5で返すハイブリッド。
ならばとハイブリッドもネオサザンクロスロックを繰り出すがあまりにもロープに近い。ここで新咲逆襲のシャイニングウィザード。

「がっ・・・」

顔面に膝の直撃をもらって、ハイブリッドは無念の3カウントを聞いた。勝負タイム25分17秒、これで王座移動。新咲もこれで4回目の戴冠、すべてハイブリッドを破っての王座奪取である。

SPZ世界選手権試合

新咲祐希子(25分17秒、シャイニングウィザードからの片エビ固め)ハイブリッド南

ハイブリッド南は2度目の防衛に失敗、新咲が36代王者となる

2007年8月 8日 (水)

第179回 来島さんじゃ勝てない1回目

13年目12月 スノーエンジェルシリーズ続く

第6戦、九州ドーム大会。メインはハイブリッド南のSPZ選手権にボンバー来島が挑むタイトル戦。8月のSPZクライマックス公式戦ではボンバー来島が勝っているだけに挑戦者が勝つ可能性もゼロではない。しかも福岡は来島の地元である。

「ひょ、ひょとしたら取れるかも知れねえから全力で行くぜ」

ボンバー来島、夢にまで見た団体頂点の座が見えてきた。そしてゴング。

「おらっ!」

いつものように頭突きでペースをつかもうとする来島。ハイブリッドはとにかく寝かせて絞め技極め技で・・・と反撃。ファイトスタイルのまったく違う両者の攻防。

「どうりゃっ!」
ボンバー来島のバックドロップ。

「もう一度食らえ!」
「甘いわ」
ハイブリッド南、さすがに2回目は空中で切り返す。
しかしフィニッシュは突然に。25分過ぎリング中央でハイブリッドのサソリ固めが決まる。ボンバー来島、力任せに外そうとするが抜けられない。腰に鋭い痛みが走る。
「くそ・・・ギブアップ」
勝負タイム26分11秒。35代王者が防衛に成功。

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SPZ世界選手権

ハイブリッド南(26分11秒、サソリ固め)ボンバー来島

第35代王者が初防衛に成功

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「アークソ、奪れなかった・・・」

ボンバー来島のSPZ王座初挑戦は苦い結果となった。強豪選手の多いSPZ、次のチャンスが回ってくるのはいつになるかわからない・

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第7戦名古屋しゃちほこドーム大会ではメインでAAC選手権。王者ハイサスカラスに挑むのはギムレット美月。前シリーズのタッグリーグで吉田フォール、新咲からギブアップを奪うといった健闘が評価されてのメイン抜擢となった。

だがこの日はハイサスカラスが強かった。裏拳がギムレットの顔面に入り流血。これで動きに精彩のなくなったギムレット。そこを狙ってハイサスカラス2度目の裏拳。このあとのフォールを返せなかった。勝負タイム16分31秒。

最終戦は横スペ大会。タイトル戦こそ組まれなかったものの年内最終興行なので3大シングルマッチが組まれた。テーマは世代交代。5・6期生3人に若手選手が挑む。

セミ前は新咲祐希子対菊池理宇。手数では新咲ペース。しかし勝負に出たのは菊池で、
「これで終わりっ!」
ムーンサルト、続けてミサイルキック。しかしカウントは2.逆にこれで闘志に火がついた新咲、高速ジャーマン発動。一発で菊池の戦意を根こそぎ持っていってフォール勝ち。勝負タイム13分43秒。

セミファイナルは吉田龍子対ボンバー来島。ふたんはタッグを組んでいる両者だが、この日は熱い攻防を展開。パワーだけなら吉田と来島、互角なのだが、吉田は意外と技のレパートリーが多い。久々のフランケンシュタイナーを繰り出し来島の頭に大ダメージ。さらにパイルドライバーで追い撃ち。これでグロッキー状態になった来島。こうなっては吉田のスプラッシュマウンテンの餌食。勝負タイム14分46秒。

メインはハイブリッド南対スターライト相羽。なんと中盤までは互角の展開。SPZ王者に対して一歩も引かない。しかし最後はハイブリッドがアキレス腱固めでギブアップを奪った。勝負タイム23分19秒、けっきょくこの3試合。能力減退に苦しむ3人がことごとく若手の挑戦を退けた。

年末のプロレス大賞、最優秀選手はスイレン草薙、最優秀新人はビューティ市ヶ谷、シングルのベストバウトは吉田対スイレン、タッグのベストバウトはどこかの地方会場で組んだ吉田龍子、ハイブリッド南対新咲、スイレン草薙のカードが選ばれた。

2007年8月 7日 (火)

第178回 弟子のベルトに師匠が挑む

13年目12月
横浜のお嬢様プロレス団体「SPZ」は「スノーエンジェルシリーズ」開幕。

歳末の書き入れ時、大き目の会場を回って利益を稼ぐシリーズである。スイレン草薙はファースト写真集「BENIBANA」撮影のため不在。

2戦目のどさんこドーム大会。メインに組まれたのは新咲祐希子、スターライト相羽のSPZタッグ王者チームに先月のタッグリーグで優勝した吉田龍子、ボンバー来島が挑むタッグタイトル戦。

「来島、相羽ちゃんは計り知れない力があるから、ゆっこから取るつもりで行くぞ。タッグベルトを取りに行くんじゃあない。あの大食い女をたたきのめすことを考えろ」
だが試合が始まってしまえばスピーディーな攻防で吉田の立てた作戦なぞあったものではない。吉田のエルボーで相羽が流血。
「くらいやがれ!」
ボンバー来島が頭を使った攻撃、頭突き頭突き。王者組は流れを変えるために新咲にタッチ。この日は新咲がハッスル。ネックぶりーカーで吉田を吹っ飛ばす。
吉田が20分過ぎに強引なスプラッシュマウンテン!代わった相羽にはプラズマサンダーボム!早い段階から大技を仕掛けて流れをつかもうとする。

相羽がバックドロップで反撃して新咲にタッチ。吉田プラズマサンダーボム。2.5で返す新咲。ここでボンバー来島にタッチ。

「オラオラオラー!」
来島が吉田龍子を呼び込んでの合体パワーボム。しかしこれは新咲、カウント2.9で肩を上げた。逆に新咲が・・

「はぁぁぁー!」
高速ジャーマン一閃。カウント2.5でなんとか返したもののふらつく来島。タッチを受けて出てきたスターライト相羽のタイガースープレックスを食らってフォール負け。吉田のカットは阻止された。王者組が防衛に成功した。勝負タイム45分31秒、札幌のファンは熱い攻防に沸いた。

「ちくしょーーーー!」
控え室で絶叫するボンバー来島。
「向こうのほうがワンチャンスをものにしたね。来島、まだ次があるよ。そのときはパートナーあたしじゃないと思うけど」

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4戦目大阪難波パワフルドーム大会。メインは意外な組み合わせのタイトル戦だったこともあり、超満員の観衆で埋まった。

第1試合はキューティー金井対ウェイン・ミラー。
「ヘアッ!」
ウェインの関節技攻勢にうめき声を上げるだけの金井。最後は脇固めであえなくギブアップ。勝負タイム8分24秒。

第2試合はギムレット美月対アンナ・クロフォード。マニア受けを狙ったカードで、地味な関節技絞め技の攻防が展開された。大阪のファンはテクニカルレスリングな攻防に拍手を送った。最後はギムレットがドラゴンスリーパーでギブアップ勝ち。勝負タイム14分21秒。

第3試合はビューティ市ヶ谷対ビーナス麗子。
「マットにひれ伏しなさいっ!」

市ヶ谷のDDTが決まる。しかしビーナス麗子も落ち着いて反撃。最後はジャンピングニーで料理した。勝負タイム9分1秒。
その試合が終わると休憩。

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休憩明けの試合にボンバー来島登場。新鋭の芝田美紀と組んでハイサスカラス、ドスカナのAAC勢と対戦。この面子の中でも来島はしっかり試合を作り。最後はドスカナに狙いを絞って裏投げでカウント3を奪った。勝負タイム12分46秒。

セミ前はSPZ王者のハイブリッド南が登場。マイトス香澄との革命軍コンビでエレン、ヘレンのニールセン一族と対決。ハイブリッドの関節技はまだまだキレがある。この日もサソリ固めでエレンを一蹴。勝負タイム12分3秒。

セミファイナルは新咲、スターライト相羽のSPZ王者チームが登場。今日の対戦相手はEWAのナターシャ・ハン、ドリュー・クライである。数年前は蹴りで伊達遥や草薙みことを苦しめたドリューだが、24歳を過ぎ選手としての峠を越えた状態。この日はナターシャのフォローに徹していた。しかし相羽も強くなった。この日はなんとEWA最強のナターシャからデスバレーボムで足腰立たなくさせておいてのキャプチュードでフォール勝ち。なにわパワフルドームは大歓声。

そして、メインイベントはEWA選手権。王者菊池理宇に挑むのは、挑戦者吉田龍子。弟子のベルトに師匠が挑むというカードが組まれた。

「えっ、挑戦者、吉田さんなんですか、あたし勝てないですよう」
「あたしもEWAのベルトはまだ巻いたことがないから取りに行くよ。でも菊池のベルトに挑戦だなんてうれしいよ。先月見たとおり今のあたしには隙がある。叩き潰すつもりでかかってきなよ」
シリーズ開始前に以上のやり取りがあった。

菊池は試合開始前まで悩んでいたが、自分の入場テーマが鳴るや、
「クヨクヨしたって仕方ない。吉田さんとシングルでやれるんだから楽しまなきゃ。ベルトのことは考えないようにする」
カンッ。

21時1分、ゴングが鳴った。

先に攻め込んだのは吉田。
菊池が新人・若手時代、吉田コーチの特訓はそれはそれは恐ろしいものがあった。それを思い出させるようなボディスラム乱打。そしてラリアット。やはり修羅場をかいくぐった経験では吉田のほうが圧倒的に上だ。

「はあっ!」
吉田が長身を生かしたブレーンバスターを放つ。
しかし菊池も懸命に応戦。接近戦での力勝負では勝てないので、遠距離から飛び技に活路を見出し、吉田のペースにさせない。試合は長期化した。

「あたしが勝つんだから!」
菊池のムーンサルト炸裂。カウント2.5で返す吉田。続く菊池のタイガードライバー狙い、これ以上は受けられないと考えた吉田がリバースで返した。そしてー

「いくぞ、フィニッシュはこれだっ!」
スプラッシュマウンテン炸裂。しかし菊池、カウント2.8で返す。そしてエルボーで懸命に反撃。
―なかなかやるね。
吉田も息を整えるために普段はあまり見せないアキレス腱固めを繰り出してつなぎ、ころあいを見て菊池を組みとめ・・・

「おらああっ!」
ノーザンライトスープレックスで菊池を投げる。これでカウント3を奪った。王座移動。
「39分4秒、ノーザンライトスープレックスホールドで、吉田龍子の勝ち」

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「・・・・」
試合後の控え室。菊池、いつもは吉田と同じ控え室なのだがきょうは革命軍の部屋にはいっていた。
「まず勝てないだろうって・・・考えてたんですけど、やってるうちに・・勝てるかも・・しれないって・・・」
菊池は少し泣いた。

一方のEWA新王者、吉田龍子も控え室で大の字。
「・・あんな飛び技しか能のない、しかも向こうの技は全部知ってる二流レスラーしとめるのに40分。あたしも焼きが回った・・・」EWAのベルトを獲っても喜びはあまりなかった。

2007年8月 5日 (日)

第177回 アフター・ガラガラ

前回までのあらすじ

13年目11月、恒例のSPZタッグリーグ戦。団体最古参でエースの吉田龍子は賞金50万円めあてに11期生のボンバー来島と鬼に金棒タッグを組んで出場。しかし、吉田の力の衰えは想像以上で、ギムレット美月やヘレン・ニールセンといった歯牙にもかけなかったような連中にまでフォール負けを喫する始末。吉田の中で何かがガラガラと音を立てて崩れていった・・・

第7戦は幕張大会。

V麗子、G美月○(8点、ドラゴンカベルナリア14.49)ナターシャ×、アンナ(6点)

なんとギムレット美月がドラゴンカベルナリアでEWA最強のナターシャからギブアップを奪ってしまう大金星。今シリーズのギムレットは勝ち運がついているのか、異様だ。

「いえ、たまたまですよ。そういうフロックを含めてのプロレスですから」

S草薙○、G小早川(8点、草薙流兜落しからの片エビ固め 18.02)エレン×、ヘレン(2点)

前夜、SPZの女帝・吉田龍子を倒して意気上がるニールセン一族のふたり。しかしこの日はスイレンがデスバレーボムを連発。ニールセン組も連係で対抗したが、最後は草薙流兜落しで決着。

ハイサスカラス○、ドスカナ(6点、フランケンシュタイナー 10.33)H南、ウェイン×(4点)

連係の差が出たか。AAC軍がうまく分断してウェインを捕らえ、最後はハイサスカラスのフランケンシュタイナーで幕。

吉田○、B来島(8点、キャプチュードからの片エビ固め17.41)新咲、芝田×(6点)

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

吉田龍子の動きに精彩がない。さすがに昨日のニールセン組相手のフォール負けがこたえたのだろうか。新咲にラリアットを狙って腕を振ったが逆にラリアットで返されてしまう。

「ウオオオオー!」

代わったボンバー来島もまだ新咲相手では互角というわけには行かない。だが15分前あたりから吉田が本来の調子を取り戻したのか、フッキレタのか、

―これ以上は負けられないよ!

吉田のプラズマサンダーボムが新咲に決まるも芝田のカットに阻まれた。しかしこれで大ダメージを負った新咲、たまらず芝田にタッチ。さすがに吉田対芝田では勝負にならない。吉田、ここを逃さず芝田の動きを止めて、

スプラッシュマウンテン!
これは新咲がカットしたが、ボンバー来島に逆カットを指示してからのキャプチュード。これで芝田を退けた。試合後吉田は落ち着いた表情でコメント。

「もう、なにもかもどうでもよくなってきた気もするんだけど、可能性が残っている以上は賞金はもらいたいよね、あたし俗物だから」

*************************

最終戦は横スペ大会。優勝争いは10期生コンビ、GS砲、吉田組が8点でトップ。横スペ大会のメインでGS砲と吉田組が激突する。

H南、ウェイン○(6点、DDTからの片エビ固め26.36)V麗子、G美月(8点)

優勝決定戦に進出するには負けられない10期生コンビ。しかし最終戦の相手は難敵・ハイブリッド南組。ウェインに狙いを定めて追い込むも、ハイブリッドが10期生の二人に仁王立ち。ビーナス麗子が蹴っても蹴っても倒れない。ようやくハイキックでぐらつかせたが、そのころには二人とも大ダメージを負っていた。ふらふらのギムレットをウェインミラーがDDTで葬った。

ナターシャ○、アンナ(8点、ジャーマン、14.36)新咲、芝田(6点)

2年目の芝田美紀、新咲と組んでの3勝4敗はまあ健闘か。最終戦を前に優勝争いからは脱落。この日はナターシャのジャーマンに苦杯。

ハイサスカラス○、ドスカナ(8点、ムーンサルトプレスからの体固め13.43)エレン、ヘレン(2点)×

セミファイナルはAAC代表が意地を見せた。4勝3敗と勝ち越してリーグ戦を終了。

**************************

吉田○、B来島(10点、ステップキックからの片エビ固め)S草薙、G小早川×(8点)

メインイベント、勝ったほうがタッグリーグ優勝。しかしスイレン草薙が吉田を投げまくり、来島にもペースを渡さない。しかしボンバー来島の起死回生の、ナパームラリアット!

「ウオオーッ!」
気合とともにボンバー来島が身体ごとのせるラリアット。スイレン草薙頭からマットに落ちる。何とかカウント2.8で返したスイレンだったが、あとはガイア小早川に託さざるをえなくなった。そこを逃さず来島パワーボム。懸命にカウント2で返すガイア小早川。

「龍子さん!」
ボンバー来島、フィニッシュは吉田に託した。
吉田龍子、ふらふらと起き上がってくるガイア小早川をつかまえて、ステップキック一撃。

ボコン!

見た目はさほどではないが結構痛い一撃。崩れ落ちる小早川。のしかかる吉田、
ワン、トゥ、スリー。
井上レフェリーの手がマットを3つたたく。吉田龍子、ボンバー来島が優勝。

吉田組には賞状と金一封、副賞として「携帯ゲーム機」が贈られた。2位には8点で4チームが並んだが、当該チーム同士の対戦成績でスイレン組とハイサスカラス組に賞状と「ももかん」が贈られた。

試合後の控室、賞金25万円(結局来島さんと折半した)を手にしても、吉田龍子の顔色は冴えなかった。

「・・・勝つには勝ったけどね・・・」

吉田龍子、ふたつ負けた試合の負け方がまだ納得行っていなかった。

「酒でも、飲むか・・・」

2007年8月 4日 (土)

第176回 ガラガラと崩れるもの

前回のあらすじ。横浜のお嬢様プロレス団体「SPZ」は毎年11月にタッグリーグ戦を開催する。団体最古参レスラーにしてエースの「生ける格闘伝説」吉田龍子は、「優勝賞金50万円」に目がくらんで、11期生のボンバー来島と「鬼に金棒」タッグを組んで参戦したが、初戦岩手大会、ビーナス麗子・ギムレット美月にまさかのピンフォール負け。その瞬間、吉田龍子の中で何かがガラガラと音を立てて崩れ落ちた・・・

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第3戦は秋田大会。
井上霧子は試合前、右足首にテーピングをぐるぐる巻きしていた。

「・・・あの、バカ・・・」
昨日、狂乱狼狽した吉田龍子に放ったヤクザキックで痛めたようだ。現役時代とかわらぬ威力なのだが、衝撃に井上の足首が持たなかったのだ。

「あ、イタ、まいったわ、歩くのがやっとね・・・ああもう、エロ社長帰ってきてよ・・・」

今野氏にヤクザキック2,3発入れて脅して社長復帰を承諾させようかとも考えた。井上秘書は選手のメンタル面管理は苦手であることを自覚していた。

井上霧子はけっきょくEWA勢の控え室を訪れ、「階段から転げ落ちた」と嘘をついて「ドイツ製痛み止め薬」を入手した。さてリーグ戦は

V麗子、G美月○(4点、ドラゴンスリーパー 15.27)エレン×、ヘレン(0点)

「今日負けたら昨日の勝ちが無意味になります。だから全力で行きます」
10期生チームがニールセン一族相手にのびのびとファイトして、最後はギムレット美月がドラゴンスリーパーで勝利。

新咲、芝田○(4点、延髄斬りからの片エビ固め 14.28)ハイサス×、ドスカナ(0点)

なんと2年目の芝田がいくら新咲のアシストがあったとはいえ延髄斬りをAACトップのハイサスカラスに決めて堂々のピンフォール勝ち。館内どよめき。
「ほーっほっほっほっほっ、わたくしの完全勝利ですわね」

S草薙○、G小早川(4点、バックドロップからの片エビ固め19.05)ナターシャ×、アンナ(2点)

GS砲2連勝。最後はスイレンがバックドロップを連発。そして外人2人がマットに転がるいつもの展開・・・

吉田○、B来島(2点、ステップキックからの片エビ固め18.09)H南×、ウェイン(0点)

「ファイッ!」

痛みをこらえながらメインを裁く井上レフェリー。吉田龍子、これで奮起したのかハイブリッドを良く攻めた。ボンバー来島とのダブルラリアットなど連携攻撃も見せ、最後はノーザンライトでたたきつけたあとハイブリッド南を押さえつけて、

「てめぇコノヤロウ!」

ボコンとステップキック一撃。これでライバル・ハイブリッドからフォールを奪った。
「昨日は昨日。これからエンジンかけていくよ。賞金欲しいからね」

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第4戦は山形大会。

V麗子、G美月○(6点、ドラゴンカベルナリア 19.52)新咲×、芝田(4点)

「心も身体も全部熱くってたまらないの!」
新咲の高速ジャーマンがビーナス麗子に決まる。

・ ・・もうダメ・・・返せない・・・
ワン、トゥ・・・しかしギムレット美月がカウント3直前でカット。

ドドドドドドド!

「・・・美月ちゃん!」

ふらふらと立ち上がったビーナス麗子、新咲に強烈なハイキック。伊達のSPZキックを思い出させるスピードだ。バッタリと倒れこむ新咲。ぐらつきながらも自軍コーナーへ戻ってギムレットとタッチ。そして、

「勝利の方程式発動します」

ギムレット美月のドラゴンカベルナリア!

危ないと感じた芝田がカットに入るが逆に良く見ていたビーナス麗子の蹴りで場外に落とされてしまう。そして自らも場外に降りてベタな乱闘を繰り広げる。

まさかまさかまさか!場内は異様な興奮に

1分ほどこらえた新咲だったが、ついに痛みに耐えかねギブアップの言葉を吐いた。なんと10期生コンビ、吉田に続いて元SPZ王者の新咲からも勝ってしまう快挙。これでまさかの3連勝。

H南○、ウェイン(2点、ハイキックからの片エビ固め 13.52)エレン×、ヘレン(0点)

ハイブリッド南がカカト落しからハイキックとつないでエレンを蹴り倒した。これで初白星。

ハイサスカラス、ドスカナ○(2点、合体パワーボム 14.59)S草薙、G小早川×(4点)

意外にもハイサスカラスがスイレンと互角の攻防。ムーンサルトで大ダメージを与える。しかしスイレンも草薙流兜落しでやりかえす。双方大ダメージを負い、したがってあとはパートナー同士の一騎打ちとなった。最後はドスカナが踏ん張って、ハイサスカラスを招き入れての合体パワーボムで終了、初白星。

吉田、B来島○(4点、パワーボムからのエビ固め13.40)ナターシャ、アンナ×(2点)

この日はボンバー来島が暴れまわる。ナターシャ相手に一歩も引かず裏投げでたたきつける。代わったアンナにも強烈なパワーボム。そのまま全体重を乗せてフォール。

―あ、こりゃ決まるな。
コーナーに控えていた吉田龍子、さっとリングインしてカットに出てくるナターシャを組みとめる。そしてカウント3.
「いやぁ、きょうは楽させてもらったね」

吉田、軽口は出たものの、暴れることが出来なくて少し寂しい様子だった。

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第5戦は福島大会。

H南○、ウェイン(4点、サソリ固め 14.09)新咲×、芝田(4点)

ハイブリッド南のサソリ固め、新咲、脱出できずギブアップ負け。昔はこの程度の技に屈する選手ではなかったのに・・・

ナターシャ○、アンナ(4点、裏投げからの体固め)エレン×、ヘレン(0点)
EWAの同門対決はナターシャが貫録勝ち。

S草薙○、G小早川(6点、ストレッチプラム 15.27)V麗子×、G美月(6点)

スイレン草薙強い。10期生2人をほとんど一人でやっつけた。10期生コンビの連勝は3でストップ。

吉田、B来島○(6点、裏投げからの片エビ固め 20.16)ハイサスカラス、ドスカナ×(2点)

AAC軍のスピード感ある攻撃で、吉田があわやというところまで追い込まれたが、ドスカナのボディプレスを吉田が転がってかわし自爆。これで流れが変わり最後はボンバー来島の裏投げで幕。

リーグ戦4試合を消化して、吉田組、GS砲、10期生コンビが6点で並んだ。

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第6戦は宇都宮大会。この日も大波乱が。

ナターシャ○、アンナ(6点、逆片エビ固め 11.50)H南、ウェイン×(4点)

ナターシャの強烈逆片エビがウェイン・ミラーをグイグイグイと絞って終了。
「やっぱり即席タッグでは難しいわね」

ハイサスカラス○、ドスカナ(4点、合体パイルドライバーからの片エビ固め15.04)V麗子×、G美月(6点)

AAC軍の連携攻撃が的確で、最後も合体パイルをしっかり決めたハイサスカラスがビーナス麗子を眠らせた。これで10期生コンビ、2敗目。

新咲○、芝田(6点、シャイニングウィザードからの片エビ固め 14.52)S草薙、G小早川×(6点)

―スイレンを弱らせれば勝てる。
そう考えた新咲が早めに仕掛け、高速ジャーマンでスイレンの動きを鈍らせる。あとは狙い通りのグダグダ展開となり、苦し紛れにスイレンがガイア小早川にタッチしたところを
―はああああー!
怒涛のシャイニングウィザード2連発。これでガイア小早川を沈めた。GS砲も2敗目。

エレン、ヘレン○(2点、ダブルインパクトからの片エビ固め 17.10)吉田×、B来島(6点)

壁に貼られた星取表を見ながら。「わかんないね展開」と言ってた吉田龍子。きょうの相手はここまで全敗のニールセン組。まあ大丈夫だろう・・・と考えていた。

「ま、さっさと済ませて餃子食いに行こうぜ」

が、油断したのか、試合が始まるやニールセン組の一族ならではの連携にどうしても的を絞れない。

それでも吉田が強引なノーザンライトでエレンをカウント2.9まで追い込むが最後の一撃が出せない。逆に強烈な裏拳をもらってしまいぐらついたところをーヘレンに肩車で持ち上げられ、

「エレーン!」

ダブルインパクト発動。吉田はまっさかさまに転落しカウント3を奪われた。ボンバー来島のカットは間に合わなかった。

ええええええええええええ!

宇都宮のファンは悲鳴とどよめき。なにしろ9月まではSPZ王者だった吉田がタッグとはいえ、こんな二流外人コンビにやられるとは・・・

「・・・・・・・・・・・・・・・」

吉田龍子、今度は暴れる気力すらない。うつろな目で着替えを済ますとひとりでタクシーに乗って宿泊先のホテルに向かい、食事もせずにベッドに横になった。

アタシハ、モウ、ダメナノカ・・・

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これでタッグリーグ戦は吉田組、GS砲、10期生コンビ、ナターシャ組、新咲組の5チームが3勝2敗で並ぶ大混戦となった。

2007年8月 3日 (金)

第175回 退勢の予兆

13年目11月
恒例のSPZタッグリーグ戦。しかし菊池理宇がEWA王者として遠征、スターライト相羽が首の負傷、マイトス香澄が右ひざ痛で欠場、キューティー金井が右手首負傷で欠場・・・となったので、チーム分けは下記のとおりになった。

■「本隊エース+フレッシュスター」 新咲祐希子(6期)&芝田美紀(12期)

■「鬼に金棒」吉田龍子(5期)、ボンバー来島(11期)

■「即席職人系タッグ」ハイブリッド南(6期)、ウェイン・ミラー(EWA)

■「GS砲」スイレン草薙(8期)、ガイア小早川(9期)前SPZタッグ王者

■「同期の桜」:ビーナス麗子(10期)、ギムレット美月(10期)

■AAC代表ハイサスカラス、ドスカナ・リブレ(元SPZタッグ王者)

■EWA代表 ナターシャ・ハン、アンナ・クロフォード(元SPZタッグ王者)

■「一族の連係」エレン・ニールセン、ヘレン・ニールセン(EWA代表その2)

第2戦の岩手大会からリーグ戦スタート。

新咲○、芝田(2点、パワーボムからのエビ固め 12.17) エレン×、ヘレン

―相羽さんが休んでいる今こそわたくしの強さを見せつけるときですわ。
芝田の見事なフォームで延髄斬りがヘレンに決まる。最後は新咲がパワーボムで孤立したエレンをしとめて白星発進。

ナターシャ○、アンナ(2点、ノーザン13.57)ハイサスカラス、ドスカナ×

EWA対AACの代表チーム決戦は激戦の末、ナターシャがノーザンでドスカナをフォールして終了。

S草薙○、G小早川(2点、デスバレーボムからの片エビ固め 23.05)H南×、ウェイン・ミラー

パートナーのマイトス香澄が負傷してしまったので、ハイブリッド南は中堅外人のウェイン・ミラーと即席コンビを組んで出場。インスタントチーム相手にGS砲が負けるわけがない・・・というのが大方の予想。しかし混成チームも粘りに粘る。しかし最後はハイブリッドが孤立してしまった。パートナーのウェインはスイレンに投げられまくって場外でのびている。ここでスイレンはハイブリッドを担いで・・・
デスバレーボム!これでカウント3が入った。GS砲が白星発進。

V麗子、G美月○(2点、合体パワーボムからのエビ固め15.59)吉田×、B来島

「あたしと吉田さんが組んだら鬼に金棒、みんなぶっつぶしてやるぜ」
「・・・あたしも24歳、何かと物入りでねえ、賞金目当てに優勝しようかな」

菊池欠場の影響もあって、吉田龍子とボンバー来島がまさかのタッグ結成。ともにパワーファイトを得意とするだけあって、無茶苦茶な暴れっぷりが期待された。リーグ戦初戦の相手は10期生コンビ。まず負ける相手ではない。

しかし、連携が良かったのは同期の絆を持つ10期生コンビであった。

ー今の吉田さんにはほんの少し、動きにスキがある、ワンチャンスあれば・・・

悪いことにギムレットのドラゴンカベルナリアが長時間決まって吉田大ダメージ。これで吉田の動きががくんと落ちた。ざわつく館内。

「・・・麗子さん!」「ほいー」

合体パワーボム炸裂。吉田のガタイを担ぎ上げてみごとに二人がかりでたたきつけた。すかさずビーナス麗子は来島をけん制。ギムレット美月はそのまま吉田をフォール。

ワン、トゥ・・・

「吉田さん、返せー」

しかし吉田龍子返せなかった。

スリー。

ええええええええええ!

「15分59秒、合体パワーボムからのエビ固めでビーナス麗子ギムレット美月組の勝ち」

緒戦から大波乱!あの吉田龍子がビーナス麗子、ギムレット美月相手にフォール負け!

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10期生コンビは控室でハイタッチ。なかなか芽の出ない若手選手がついに吉田龍子からタッグながらピンフォール勝ちを収めた。

「やたー、勝てたー!」

「正直言って勝てるとは思っていませんですが、これもプロレスでしょう。」

いっぽう、反対側の控室では、

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「うえああああああ!」

控え室から吉田龍子の絶叫が。彼女はこの試合負けることはないとふんでいた。しかし結果はよりによって自分が3カウントを奪われてしまった。差がないハイブリッド南やスイレン草薙あたりにならとられてもいいと思っているが、二流タッグチームに負けるとは・・・・

「おああああああ!ちくしょおおおおおお!」

「うる、さーい!」

井上霧子社長代行がヤクザキック一撃。吹っ飛び、ロッカーに激突する吉田龍子。

「い、井上さん・・・」

「後輩に負けたぐらいで取り乱すな!ひとつやふたつの取りこぼしくらい、あんたが今までSPZでしてきたことに比べれば大したことじゃないよ!」

「・・・・わかった・・・ごめん」

「さっさと着替えてタクシーに乗って帰れ!あと今夜は負けたからといって飲むんじゃないよ、」

「・・・はい」

(長くなるので続きます)

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そのころ、SPZの今野前社長と結婚した小川ひかるは、新宿発19時の「特急スーパーあずさ」で山梨へ向かっていった。お互い忙しくて新居探しもままならないのだが、きょうは仕事が早めに終わったので、ふたりで新婚旅行といっては何だが山梨県甲府近くの湯村温泉に行こうとしていた。しかし、中央線の電車が止まった。

「大雨のため中央本線は上野原と四方津の間で運転を見合わせております、そのためこの列車は遅れが予想されます」

「やれやれ、ついてないねえ」

特急列車は停まらない筈の相模湖駅で2時間近く停車していた。車内で弁当を食べ終えた2人はすることもないので携帯を取り出した。

「そいえば、SPZどうなったかな、きょうからタッグリーグ戦だし」

「今9時半、そろそろメイン終わって撤収してる頃ですね」

小川ひかるは携帯電話でSPZのモバイルサイトを開き、「試合速報」をクリックした。

「えっ」

小川ひかる、携帯に映し出された速報を見て絶句。

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V麗子 ○G美月(15.59 エビ固め)吉田×、B来島

今野前社長も絶句。

「担当者の入力ミスじゃない・・・ですよねえ・・・」

「いや、ムラコシさんそのあたりしっかりしてるからそれはないと思う」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・はー」

ふたりはSPZのひとつの時代が崩れ行くのを感じた。

2007年8月 2日 (木)

SPZ外伝 ストロベリー・ギムレット005

こんばんわ。SPZのギムレット美月です。
WASグダグダプレイ日記の書き手、konno氏がバカンスから戻ってきました。
バカンスといっても、南の島ではないようです。
なんでも「天上界に行って人生を見つめなおしたかった」などと
言っております。
で、今日はkonno氏は2泊3日の荒行で疲れているとのことですので
「外伝」でお茶を濁させてくださいとのことです。
私のストーリーが、外伝?ですって?

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SPZプレイ日記 外伝 ストロベリー・ギムレット005

2021年(13年目)7月末、神奈川赤レンガ倉庫、SPZも旗揚げで使った由緒ある会場なのだが、きょうは男子の新興団体「東京エクストリームプロレス・夏のビッグビッグシリーズ最終戦」が行われていた。

「きゃおう!」
セミファイナル、TEPのトップレスラー、菅原きよしが常連外国人選手、ザ・ピラニアに痛めつけられていた。
菅原きよしも懸命にチョップで応戦したのだが、ザ・ピラニア、卑劣にも、

「ウェーハハハハ」
シューズからメリケンサックを取り出して、それを嵌めて、菅原の頭部を・・・

がごすっ!

殴りつけた。

「あひゃーーー!」

悲鳴を上げて倒れふす菅原。そこを狙ってエルボードロップ。カウント3が入った。
「12分2秒、エルボードロップからの体固めでザ・ピラニアの勝ち!」

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SPZのギムレット美月はたいへんな研究熱心。ファイティングコンピューターはデータ収集に余念がない。一通りのプロレス団体は雑誌やDVDでチェックしているらしいが、「生で見ないと微妙なタイミングやクラッチの切り方とか技術的な部分がわかりません」ということで、「顔パス観戦」できる「東京エクストリームプロレス」の首都圏興行には顔を出していた。この団体の社長兼エースのヒロポン粕谷に気に入られていた。

―凶器攻撃・・・やりたいけど無理っぽいですね。私のキャラでそんなことをやったらファンが引いてしまいそうですし、井上さんが心労で倒れてしまいそうです。
「美月さん、今日のメインは?」
SPZの12期生、キューティー金井もお勉強で観戦に来ていた。
「MWAのタイトルマッチです。ブルースブロディ選手にヒロポン粕谷選手が挑戦するらしいです。」

そしてメイン。タイトルマッチだけあって場内はけっこうな盛り上がり。
しかし、試合のほうはヒロポン粕谷が押されっぱなしであった。
「カスヤ!ダイ!」
乱暴なパンチ攻撃を見舞ってゆくブルース。しかしヒロポン粕谷も上からのしかかり、200kgはあるといわれている体重を浴びせかけてゆく。単純なグラウンドレスリングだが、体重差がここまであるときつい。
「大きい人とやるときはレスリングをやっては勝ち目がありません。上に乗られただけでスタミナが切れてしまいます」

―いいぞー、200kg-!
客席から声援が飛ぶ。
「うるせえ!170だバカヤロウ!」
ヒロポン粕谷も反論する。そしてブルースを抱えあげて走って、アバランシュホールドの体勢で叩きつける。

「NOOOO!」
悲鳴を上げるブルース。
ワン、トゥ・・・

カウント2.5で返すブルース。場内は重低音ストンピング。

「いくぞーーー!!」
ヒロポン粕谷が首かっきりポーズを見せてアピール。そのままコーナー最上段に登ろうとする。だがダメージが深いのか体重がアレなのか、なかなか登れない。やっとコーナー最上段にたどり着いてヒロポンスプラッシュの体勢・・・・になったところで、すでにブルースは蘇生していた。そのままコーナー最上段の粕谷を捕まえて、

バーーン!
デッドリードライブ。
ヒロポン粕谷の巨体がコーナー最上段からものの見事に落ちてゆく。もはや固定ファンでは「伝統芸能」といわれているほどの落ち方である。ピクリとも動かない粕谷。詰め掛けた940名(主催者発表)のファンは一斉にアーアの悲鳴。
「フォオオオオオ!」
気合とともにブルース、勢いよく走って、ギロチンドロップ!そのままカウント3が入った。

「17分22秒、ギロチンドロップからの体固めで、ブルースブロディの勝ち」これでヒロポン粕谷、タイトル戦は7連敗である。

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試合後の控室。
「はあ、ふう、おじさん負けちゃったよ。ごめん」
「いえ、それでもお客さんは沸いてました」
「でもねえ、1回くらいは勝ってみたいよねえ、そうしないと新しいファンはつかないから、あ、そうそう、美月ちゃんSPZクライマックス初出場おめでと」

「粕谷さん、ご存知だったんですか」

「京スポに載ってたよ!粕谷さんしっかり美月ちゃんの試合結果はチェックしてるんだから!」

「え、ああ・・・」

ついたての陰で着替えているコットン綿貫がバラす。
「・・・ま、まあ、優勝はムリだと思いますけど、いい試合をしたいと思ってます」
「だめだよぅ、美月ちゃあん、絶対に勝つって考えないとぅ」
菅原きよしがアドバイスする。

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片隅ではキューティー金井がコットン綿貫にアドバイスを受けていた。
「あ、あの、どうしたらあんなきれいなバックドロップが投げられるんですか?」
「普段はどうやって練習してるの?」
「えっと、DVD見たりスパーリングで美月さんや菊池さんを投げて練習してます」
「投げ技はね、一にも二にもブリッジワークだからね。ぼくはいつもこれで練習してるよ」
それは硬い発泡スチロールを半円形に切った代物であった。
「この上に乗る練習を一日2時間くらいかな」
「そ、そうですか・・・」

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そして迎えた第13回SPZクライマックス。しかしギムレット美月はリーグ戦で勝てない。ビーナス麗子には蹴られ、新咲、ハイブリッドには一蹴され、スイレン草薙にはボロ雑巾のように投げ飛ばされ、S相羽には力負けし、ボンバー来島には吹っ飛ばされた。
そして最終戦・横スペ大会。対戦相手はここまで5勝1敗の吉田龍子。ギムレット美月のまず勝てる相手ではない。

「それでも横スペのセミでシングル。せいいっぱいやる・・・」

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「オラァァァァ!」

ギムレット美月は吉田の荒々しい攻勢を懸命に受け続けていた。でも重い相手なので必要以上に接近戦を挑まない。アウトレインジからの飛びついて脇固めで隙をうかがうくらいしか攻めようがない。

「さっさと倒れろ!こっちはもう1試合あるかも知れねえんだ!」

吉田龍子、メインの試合結果によっては優勝決定戦を闘わねばならず、体力を温存しておきたいところだった。
―10分経過。10分経過―

「さっさと倒れろ!」
吉田龍子、ギムレットに組み付くが、ここでギムレットがなりふりかまわない反撃。

がりがりがりがりがり。
顔面を思い切りかきむしった。TEPでザ・ピラニアから盗んだムーブ。

「あっ、このヤロ、・・・?う、あああああっ!」

ギムレット美月、一瞬の隙を突いてドラゴンカベルナリア!

場内ウォォォのどよめき。まさかここで吉田が足元をすくわれてしまうのか。

―このままこの手を解かなければ、勝てるかも・・・?

そのまま1分が過ぎた、2分が過ぎた。たいていの選手ならこの辺で根負けしてギブアップの言葉を吐いてくれるのだが相手は戦意の塊である吉田龍子、ましてやSPZクライマックス6連覇がかかっているのだ。

「もっと力入れて絞れ!美月!勝てるぞ!ー」
リングサイド席から聞いた男の声がする。
―おじさん?

ギムレット美月は懸命に絞り上げたが、吉田があいていた左手で極められていた首のフックを外して振りほどいた。

―そんな、外され・・・たっ。

このワンチャンスにかけていたギムレット美月、もう次の攻め手がなかった。

「コノヤロウ!」
吉田、本気のステップキック。これで目の前がブラックアウトしたギムレット美月、3カウントを奪われた。それでも15分この強者相手に粘ったのだからたいしたものである。
「ハァハァ、手間かけさせやがって・・・」
ギムレット美月、気がついたら控室で横になっていた。

―ひとつも、勝てなかった・・・
この結果は想定していたが、リーグ戦でひとつも勝てなかったのはやはり悔しい。

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その夜、横浜某所のイタリア料理店「アレグロ」

「きょう、来てらしたんですか」

「そう、お勉強にね、特リン1万円高いねえ」
ヒロポン粕谷とコットン綿貫が猛然とスパゲッティを食べていた。

「すいません、見てる前で、勝てなくて」

「いやでもいい試合だったよ。ドラゴンカベルナリア極めたシーンではもしかしたらって思ったし、吉田さんのファンはアーッて悲鳴あげてる人もいたよ。ああいう声をお客さんに出させるようなのが一流レスラーなんだよね」

「あ、ありがとうございます・・なんとか、吉田さんが引退するまでに、一回取りたいと思っているのですが・・・」
ギムレット美月19歳、悔しさをこらえながらピザを頬張った。

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