第202回 スターライト相羽の確変
14年目1月
年が明けて2023年、
前月ハイサスカラスを破ってAACチャンプになったビューティ市ヶ谷にさっそくAACから防衛戦の呼び出し。AACとのお付き合い上、派遣せざるを得ない。
ロイヤル北条にファンクラブ誕生。デビュー2年足らずの若手だが、最近は市ヶ谷のパートナーとしていい仕事をしていることが評価された。
1月5日、新春ロケットシリーズ初戦は新日本ドーム大会。営業努力の甲斐あって超満員札止めの盛況。
新日本ドーム大会セミファイナルはボンバー来島対菊池理宇。タッグパートナー同士の対決だがナンバー3決定戦でもある。来島がナパームラリアットで17分39秒、菊池を仕留めた。
そしてドーム大会メインはスイレン草薙対スターライト相羽のSPZ選手権。スイレンの独走態勢が続いてマッチメーク委員会もためいき。
「マンネリですね」(井上霧子社長代行)
「・・・そうだな」(上原今日子コーチ)
「でもほかに有力な選手いないから1月はとりあえず相羽ちゃんで行きましょうか」(今野取締役)
「それしかないね。」(吉田取締役)
正月でファンもおとそ気分だからとりあえずナンバー2のS相羽をぶつけようかという発想。スイレンの優位は動かないところだったが・・・
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で、午後9時過ぎに試合開始のゴング。
「相羽ちゃんはね」ゲストかいせつの吉田龍子がコメント。
「レスリングうまいんだけど、化け物って感じがしないんですよ」
「・・・そうですか」
「スイレン選手は狂ったように投げたり極めたりしてきますからね、コイツバケモンダと思ったことはあります。相羽選手にはそんな凄みが感じられないですね」
リング上はスイレン草薙の一方的なペース。スターライト相羽をいつも通り投げまくる。ああやっぱりスイレンと相羽ちゃんだなという感じで進んだが、
「ボクは、これ以上、負けられないーっ!」
スターライト相羽もタイガースープレックスで反撃。カウント2で返したスイレン草薙、いったん体勢を立て直すためにゴロンと転がって場外エスケープ。
しかしこれが勝敗の分かれ目だった。
スターライト相羽が場外へ降りて追撃。場外マットをはがしてからうずくまっているスイレンに組み付き、
「せやぁっ!」
場外キャプチュードでブン投げた。
ごつん。
スイレン草薙の頭と床の触れ合う音が響く。スイレンファンの悲鳴が場外にこだまする。
「サーティーン、フォーティーン、フィフティーン」
リングアウト直前でリングに戻ったスイレンだったが、目の前がぼうっとかすんで思うように動けない。
そこを相羽捕らえて、とどめのパイルドライバー。
「あ・・・っ」
これでスイレン草薙の戦意は不稼動状態になった。上に乗って3カウント奪取。スターライト相羽ついに戴冠。
えええええええええええええええええ!
「23分53秒、パイルドライバーからの片エビ固めでスターライト相羽の勝ち」
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SPZ世界選手権試合(60分1本勝負)
スターライト相羽(23分53秒、パイルドライバーからの片エビ固め)スイレン草薙
第37代王者・スイレン草薙が8回目の防衛に失敗、スターライト相羽が第38代王者となる
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「よしっ!ボク勝ちました!」
ようやく団体最高峰の座を勝ち取ったスターライト相羽の腰に、セコンドのギムレット美月がベルトを巻く。スターライト相羽は満面の笑み。絶対王者・スイレン草薙を倒すイメージが湧かず、出たとこ勝負でやったがラッキーな面があったにせよ、勝利を収めた。
「いやかいせつの吉田さん、驚きましたねえ」
「一瞬の機転がスイレン選手に大ダメージを与えたと思います。やはりプロレスは頭を使うことも必要ですね。あらためて感じました」
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そのあとシリーズは九州地方を転戦。最終戦鹿児島大会のメインは菊池理宇、ボンバー来島対スターライト相羽、ビーナス麗子のSPZ世界タッグ選手権。
SPZ世界王者となった相羽が自信をつけたのか、見違えるような動きで王者組を攻め込んでゆく。ボンバー来島とは裏拳での殴り合いをやってのけた。そして来島がぐらついたところをハイキック、キャプチュード、タイガースープレックスと猛攻。これで来島から3カウント奪取。菊池のカットはビーナスにうまく阻まれた・・・
「45分52秒、タイガースープレックスホールドでスターライト相羽、ビーナス麗子組の勝ち」
場内えええええええええ!の声。まがりなりにもバランスの取れたタッグチームの菊池来島が敗北。
「やたー!タッグベルト取ったよー!」
ビーナス麗子が満面の笑みでベルトを掲げる。実力では4人の中で一番下と見られていたが、うまく立ち回ってSPZタッグベルトを初めて巻いた。
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SPZ世界タッグ選手権(60分1本勝負)
○スターライト相羽、ビーナス麗子(43分52秒、タイガースープレックスホールド)菊池理宇、ボンバー来島×
来島組が6度目の防衛に失敗、相羽組が第23代王者となる
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これでスターライト相羽「まさかの」2冠王。「悩めるナンバー2」が団体シングル・タッグ最高峰のベルトを独占。
その夜、鹿児島某所の飲み屋で吉田役員、井上霧子社長代行、今野役員が飲みまくっていた。
「相羽ちゃんもついに覚醒したのかしら」井上霧子がいも焼酎で赤い顔。
「自信もってファイトしてると思うよ」今野役員も飲んでいる。
「いや、あれは覚醒じゃなくて、確変だよ。すぐ悪いときの状態に戻る」吉田龍子がぼそりと。
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