第213回 星勘定、星のつぶしあい
15年目8月 SPZクライマックス(続き)
リーグ戦初戦大阪大会を終えて、初日を白星で飾ったのはG美月、S草薙、B市ヶ谷、S相羽の4名。だが過酷な戦いは始まったばかり。
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翌日は新幹線で広島へ移動して若鯉球場大会。
芝田(2点、ノーザンライトSH 18.31)R北条(0点)
お嬢様軍団同士の対決。この試合を落としたら全敗かもしれない・・・そう考えたロイヤル北条が積極的に仕掛けてロイヤルスパイクも繰り出したが、受けきった芝田、リング中央でドラゴンスリーパー。
何とか耐え切った北条だったがすでに虫の息。このあとのノーザンを返す力は残っていなかった・・・
B来島(2点、パワーボムからのエビ固め 8.41)G美月(2点)
ボンバー来島が圧倒的なパワーで押す。ギムレットもドラゴンカベルナリアで見せ場は作ったが来島、強引にふりほどく。最後はパワーボム2連発で終了。
「さぁー、これからガンガン勝ち進むよー!」
S草薙(4点、ノーザンライトSH 18.50)B市ヶ谷(2点)
大会場ではおそらくシングル初対決。手負いのスイレン相手に全力でぶつかってゆく市ヶ谷。
ーまだ5試合残っている。ここは早めに片付けないと。
早めの勝負に出たスイレンが草薙流兜落とし、しかし市ヶ谷場外へエスケープ。スイレンは場外でストレッチプラムの追い打ち、しかし市ヶ谷も場外ビューティボムを繰り出し試合はわからなくなってきた。しかし最後はスイレン、しつこくしつこくドラゴンスリーパーを仕掛け弱らせてからこの日2度目のノーザン。粘る市ヶ谷を仕留めた。
ーあと、手ごわいのは来島さんと相羽さん。どちらかに勝てばトップで横浜に戻ってこれる・・・
スイレン草薙も団体最古参。星勘定をしっかり考えている。
菊池(2点、DDTからの片エビ固め 17.32)S相羽(2点)
相羽敗北。菊池のちょこまかと飛びまわる空中戦についていけず。終盤にタイガースープレックス、キャプチュードで懸命に反撃するも仕掛けが遅い。最後は菊池のDDTがズバリ。
「あー、やっちゃった・・・」
リーグ戦2戦を終えて、スイレン草薙がただひとり2連勝。このまま突っ走るのか。
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翌日は博多九州ドーム大会。
芝田(4点、延髄斬りからの片エビ固め 6.30)G美月(2点)
芝田が一方的に試合を進め、最後は優雅に飛んで鋭い延髄。
「かはっ」
崩れ落ちるギムレット。これでカウント3がはいってしまった。
菊池(4点、タイガードライバーからのエビ固め 14.0)R北条(0点)
ロイヤル北条もロイヤルスパイク、シャイニングウィザードを繰り出すなど健闘し、ボディプレスを自爆させてからのパワースラムであと一歩まで追い込んだが、最後は菊池のタイガードライバーに沈んだ。菊池、2勝1敗と白星先行。
B来島(4点、STOからの片エビ固め 20.58)S草薙(4点)
「地元では負けらんないね。」
福岡でこのSPZ頂上決戦が実現。スイレンここでもコツコツと逆水平チョップ、アームホイップ、スリーパーと、ボンバー来島のスタミナを奪っていく「コツコツやるのが、コツ」作戦。
ー悪いが福岡で負けられない。先月怪我させたところを攻めるのは悪いけど。
しかし来島もスイレンの痛めている首に集中しネックブリーカー2連発。なんという非情な攻め。スイレン草薙の首に電気が走る。
「・・・・・・・・・・・・・っ」
(そこまでやりますか来島さん。あなたがその気なら、こちらも・・・)
これにスイレンがムッとしたのか草薙流兜落とし。たまらず頭を押さえて場外へエスケープする来島。この場外戦がポイントだったか。
「逃がしません」
スイレン、勝ちを焦ったのか追撃の場外STO。
「・・・・・・・・・やろお」
ここで来島もキレたのか、むくっと立ち上がり、スイレンを場外フェンスへ押し込み、そのまま、
がしっ!
場外、フェンス際でのナパームラリアット。凍りつく九州ドーム。リングサイド席の上に頭から落ちたスイレン草薙、しばらく動けず。
「サーティーン、フォーティーン、フィフティーン・・・」
カウント18でなんとかリングに戻ったスイレンだったがもはや目がうつろ、ボンバー来島のSTOを返す力は残っていなかった・・・
破れたスイレン草薙、ダメージが深くノーコメント。痛めた首をさらに悪化させてしまった。
B市ヶ谷(4点、ギロチンドロップからの片エビ固め 15.39)S相羽(2点)
ビューティ市ヶ谷、来島に続いてスターライト相羽も食ってしまう。ビューティの強烈な裏拳で相羽、鼻から流血。
「・・・・・・ううっ!」
これで動きが鈍ったのか、市ヶ谷にズルズルと押し込まれていって最後はギロチンドロップに敗北。
「やっぱ相羽ちゃんだ。これで優勝の目はなくなったな」
吉田龍子がぼそりと。スターライト相羽、2連敗。悲願の初優勝は厳しくなってきたか。
3戦目を終えて星勘定は
2勝1敗 芝田、菊池、B来島、S草薙、B市ヶ谷
5人が4点で同点トップ。これは例年まれに見る大混戦。
翌日のオフ、朝一の飛行機でスイレン草薙は緊急帰京。都内の病院で首の治療を受けた。
「スイレンさん、棄権したほうが・・・」
同行した上原コーチが声をかける。
「あと4戦残ってますが、相羽さんにさえ負けなければ1敗は守れます。来年はどうなるか分かりませんし。」
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1日のオフを置いて、リーグ戦4戦目は名古屋大会。
午後3時、横浜近くの病院。マッド女医・羽山リングドクターに痛み止めの注射をスイレン草薙は打ってもらっていた。
「はい、どうしました?・・おお、首が痛い。それは重い、重ーい、頚椎損傷かもしれませんねえ、すぐにお手当てしなければ、大変です。ではそこに横になってください、目を閉じて、ふふ、もっとリラックスしてください・・・」
ブスーッ。
「ああ・・・っ」
「もう一本いっとく?」
「・・はい・・っ」
ブスーッ。
「うう・・・ありがとうございました。」
「んじゃ、死なないように頑張ってきてねーん」
そのままスイレン草薙は新横浜から「のぞみ」に乗り込んだ。名古屋までは1時間半。
菊池(6点、ミサイルキックからの片エビ固め 11.39)G美月(2点)
自分の持ち味である飛び技を積極的に繰り出した菊池が快勝。ギムレット、ドラゴンカベルナリアで見せ場は作った。
B市ヶ谷(6点、ニーリフトからの片エビ固め 9.03)R北条(0点)
13期の同期対決。しかし市ヶ谷強い。この日もロイヤル北条を軽く一蹴。
芝田(6点、延髄斬りからの片エビ固め 30.0)S草薙(4点)
このリーグ戦のベストバウト。芝田が意外にも掌底のラッシュでスイレンのペースに持ち込ませない。後半はスイレン、投げ技は状態が悪く出せないのか、ストレッチプラム、ドラゴンスリーパーと絞め技のオンパレードで勝ちを狙う。殴る蹴る芝田、絞める草薙、場内は大歓声に包まれた。
「・・あ、がっ・・・」
しかし芝田、ギブアップの言葉だけはは吐かなかった。逆に強烈な延髄斬りで反撃。
「はあああ・・・っ」
スイレン草薙、この一撃で視界がブラックアウト。カウント3を奪われてしまった。勝負タイム30分の死闘。
えええええええええええええええ!
愛知のファンは絶句。SPZで団体エースのスイレンが「お嬢様軍団の2番手」にやられてしまった。勝ち名乗りを受け、疲れきっているにもかかわらず、オーホホホホホと高笑いする芝田。
「市ヶ谷さんでも勝てなかったスイレン選手に勝ちましたわ!」
「そん、な・・・」
スイレン草薙、勝ち点2ゲットを計算していた相手にまさかの敗北。それほど状態が悪いのか。呆然とした表情で引き揚げた。
B来島(6点、パワーボムからのエビ固め 12.29)S相羽(2点)
スイレン敗北でざわついた雰囲気のままメインが始まった。ボンバー来島がいつもどおりパワフルな攻めを見せるが、ファンは前の試合の結末の残像が残っておりいまひとつ盛り上がらない。最後は来島がパワーボムで締めた。
「ちょっとやりにくかった。でも相羽さんに勝ててうれしい」
スターライト相羽、まさかの3連敗・・・
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これでリーグ戦は4戦を消化、この4人がトップに並ぶ大混戦。
菊池理宇(6点 残る相手はB市ヶ谷、B来島、芝田)、
ボンバー来島(6点、残る相手は芝田、菊池、R北条)
「いやー、やっぱり名古屋は手羽先ですな~、はははは」
「うまいっ!」
吉田コーチと3人で手羽先のハシゴ。興行がはねたら優勝争いのことは忘れている。
ビューティ市ヶ谷(6点、残る相手は菊池、芝田、G美月)
「くー、くー。」
この選手、興行後は手早く食事して寝てしまう。明日は札幌へ飛んで菊池戦。
芝田美紀(6点、残る相手は来島、B市ヶ谷、菊池)
「もしかして、もしかして、もしかすると・・・ほほほほ」
大番狂わせを演じた芝田、あと1点でシード権確保。まだ同点トップ。
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この選手も優勝は厳しくなったがまだ諦めてはいない。
最終の東京行き新幹線「のぞみ」グリーン車車内。サングラスに野球帽で変装?したスイレン草薙はリクライニングシートに沈んでいた。明日の朝また病院で治療と注射を受けるため、巡業ご一行から離れての単独行動が続く。
「うう・・・・」
(窓枠には自棄酒の缶ビール。)
ー芝田選手は一発狙ってきた。その思いに気づかなかった私が未熟だった。ケガを気にしすぎていつものレスリングが出来なかった。後悔はしてもしょうがないです、けど、痛い・・・
スイレン草薙(4点、残る相手はG美月、R北条、S相羽)
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そのころ愛知県某所の居酒屋。優勝が絶望的になったこの選手が自棄酒のビールを飲んでいた。優勝どころか6点以下なら予選会行きである・・・
「うっ、うっ・・・ボクは、どうしてこうかんじんな試合を落とすんだろう・・・」
スターライト相羽(2点、残る相手はR北条、G美月、S草薙)
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