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2007年9月 4日 (火)

第196回 ダブル引退試合

14年目10月。、横浜のお嬢様プロレス団体「SPZ」は圧倒的な人気と実力を兼ね備えた6期生ふたり、ハイブリッド南と新咲祐希子が引退を表明。

そして最終戦は新日本ドーム大会。
「新咲祐希子 最終試合」
「ハイブリッド南 最終試合」

正面玄関には上記の大看板が2枚。試合開始前には例によって「引退する選手のおもしろビデオ」が流される。内容はハイブリッド南が関節技を決めまくって対戦相手が絶叫するシーンをつなぎ合わせた残虐ビデオと、新咲祐希子が日本各地の巡業先で美味しいものを食べまくるグルメ紀行ビデオを立て続けに流す内容であった。

第1試合はフレイア鏡対フォクシー真帆の新人対決。フォクシーのDDTをカウント2.9で返したフレイアがアキレス腱固めで勝利。

第2試合はマイトス香澄、キューティー金井がエレン、ヘレンのニールセン一族と対戦。小柄な二人がEWAの実力者ふたりに挑んでいった。耐えて耐えて、最後はマイトス香澄が大逆転の絶望2000で勝利。勝負タイム15分17秒。

「南さんの引退試合なので気合はいりましたっ」

革命軍のマイトス香澄は力強くコメントした。

第3試合はスターライト相羽対デイジー・クライ。相羽がEWA新鋭のデイジーを問題にせず、11分3秒、最後はキャプチュードで終了。

休憩明けの第4試合はロイヤル北条、ビューティ市ヶ谷のお嬢様タッグ出陣。10期生コンビのビーナス麗子、ギムレット美月と対戦。お嬢様コンビが優勢に試合を進め、最後はロイヤル北条のロイヤルスパイク(変形DDT)で終了。

セミ前の第5試合は菊池理宇がガイア小早川とタッグを組んでナターシャ・ハン、アリス・スミルノフと対戦。菊池が安定感ある試合運びでEWAの2人を追い込み、最後はアリスをダイビングボディプレス2連発で片付けた。小柄な菊池が大柄なアリスを仕留める展開に場内沸いた。勝負タイム12分35秒。

いよいよセミファイナル。ハイブリッド南と新咲祐希子の最終試合。

*******************************

セミ前が終了し、場内がいったん暗転。ドームがドワアアアと揺れた。村越リングアナがやや上ずった声でアナウンス。

「次の試合に登場するハイブリッド南選手は、本日が最後の試合となります。ファンの皆様、よりいっそうの声援をお願いいたします!」

「スピード」のテーマ曲に乗って、黒いフードつきガウンを羽織ったハイブリッド南が入場。SPZの旗揚げ以来南利美ハイブリッド南のテーマとして使われたこの曲がかかるのもこれが最後である。

ロープをあけたのはセコンドのマイトス香澄。そしてハイブリッド南がリングイン。

そして、館内に響くはー

G・T,G・T,GTO!

新咲祐希子のテーマ曲「GTO」(シニータ)がかかり、いつものように黄色いジャケットガウンを羽織った新咲祐希子が入場。いつものようにトップロープを飛び越えてリングイン。そしてトップロープにもたれてぐいぐいっと背中を反らす。

「ただ今より、シングルマッチ30分1本勝負を行います。青コーナー、高知県高知市出身、ハイブリッドー、みなみーっ」

ハイブリッド南が右手を軽く上げる。

「赤コーナー、山口県下関市出身、しんざきー、ゆきこー!」

村越リングアナが万感の思いをこめてコール。
伊達レフェリーのチェックのあと、両者にらみ合う。

―最後くらい花持たせなさいよ。
―いやよ。勝ち逃げして辞めるわ。

ハイブリッド南は5回SPZ王者に輝いているが、うち4回は新咲にやられて王座転落している。寝技主体でいやらしく攻めるハイブリッドは何でもこなす新咲には相性が悪かった。

「解説の吉田さん、SPZの歴史の中でも引退する選手同士をぶつけるマッチメイクははじめてなんじゃないですか」

「そうですね、引退試合の相手ってのはやりづらいんですよ。私も草薙選手のときやりましたけど、面倒見てもらった先輩を相手にするわけですから思いが入っちゃって、それなら引退するもの同士気兼ねなくやりあってもらおうと井上さんが考えたんだと思います」

「どちらが有利でしょうか」

「んー、まあ、お互い明日からはただの人になるわけですから、お互いがまったく容赦なく殴ったり関節極めたりしてくるでしょうね。過去の相性では新咲選手が多少有利ですが、展開が読めないのでまったく分かりません、まあ私は新咲選手が気兼ねなくあの性悪女をボッコボコにしてくれると思ってますが」

カンッ。
20時6分、今野役員がゴングを一打。

「いくわよ。」
ハイブリッド南が組み付いていきなりボディスラム。しかし新咲もドロップキック、ローリングソバットで反撃。序盤は互角の展開。

「はっ!」

新咲のジャンピングニー狙いを背面トペで切り返すハイブリッド南。こういうところの流れの変え方はやはりうまい。

押しつぶされた新咲が足を少し引きずったのを見るやサソリ固め。運の悪いことにリング中央でガッチリきまっている。

場内ドワアアアアア。新咲がギブアップすればその時点でふたりのレスラー生活は終わってしまう。しかし新咲、懸命に匍匐前進し、サードロープをつかんだ。

「ゼェ、ゼェ・・」

「覚悟して」

ハイブリッド南、流れるような動きで組み付いて即バックに回って、ジャーマンスープレックス。はじめてSPZタッグを獲ったときの思い出の技だ。

ズドーン。

「ゆっこ、返せー!」

本部席の吉田龍子が叫ぶ。が、キックアウトしようにも足に力が入らず・・・

ワン、トゥ、スリー!

伊達レフェリーがマットを3つ叩く。そして本部席にゴングを要請のサインを送る。

カンカンカン・・・

「16分27秒、ジャーマンスープレックスホールドでハイブリッド南の勝ち」

横たわる二人、リング上を埋め尽くすオレンジと紫の紙テープ。

ハイブリッド南のテーマが流れる中、新咲は起き上がり、リング上で一礼してから足取り重く花道を引き上げた。涙を見せなくなかったのか、うつむきながら。人気では新咲もかなりのものがあったのでものすごい拍手が送られた。

ハイブリッド南はしばらく青コーナーにもたれながら新咲の退場を見送って、そのあと立ち上がって、伊達レフェリーに右手を上げてもらった。
「・・・お疲れ様・・」
「・・・まあ、楽しかったわ」

そのあと万雷の拍手が送られる中、ハイブリッド南が花道を引き上げた。

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