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2007年9月12日 (水)

第203回 スターライト相羽の確変終了

14年目2月

「今までパワーを前面に出すスタイルでやってきたけど、もう古くさいのかな・・・」

SPZタッグベルトを失ったボンバー来島はさすがに落ち込んでいた。こういうときは今野役員は励まさないといけない。

「そんなことはないと思う。あの吉田龍子を思い出しなさい。むちゃくちゃなパワーファイトでいっときは手がつけられなかった。存在自体が反則だったぞ。もっとパワーを鍛えてああいう風になって観客を引かせるくらいになりなさい」

「うん、わかった、ありがとよ」

―やれやれ。選手のメンタルケアも疲れる。

「今野さん」

 「うげ、吉田コーチ、いつからそこに?」

「菊池の練習を見ていたら聞こえてたよ。誰が存在自体が反則だって?」

 「そのとおりやないですか。特に10年目のあたり」

吉田龍子は笑いながら今野に歩み寄り、

「関節の悲鳴を聞きなさい」

コブラツイストの刑。引退したとはいえパワーは健在である。

「あだだだ・・・」
________________

「試合で私の技が通用していない気がするんです」

アンラッキーな面があったにせよ7度防衛したSPZシングルベルトを失ったスイレン草薙も落ち込んでいた。今野役員はもっぱら聞き役に徹して不安解消に努めた。

そして2月シリーズ前のマッチメイク委員会。例によって今野役員井上霧子コーチ衆がコーヒーを飲みクッキーをかじりながら話し合いでカードを決めてゆく。

「相羽ちゃんの挑戦者どうする?」

「営業面を考えると日本人選手がいいと思う。外人は市ヶ谷さんとやらせればいいと思うし」

今野役員は会場を埋めることを第一義に考える。

「スイレンをすぐリターンマッチであてるとつまんないから、菊池か来島だな」

 吉田取締役がキラーマシン軍の2人を推す。

「・・・となると相羽に何回か勝ってる来島さんがいいと思います」

「じゃあ来島さんでいく?」

「そうですね」

* *************
2月シリーズ「ウインターバトルシュプール」が開催。13期生のロイヤル北条が負傷欠場。

第3戦の三重サンシャインアリーナ大会、SPZタッグ新王者スターライト相羽、ビーナス麗子組に対するは昨年11月のタッグリーグ優勝チーム、スイレン草薙、ガイア小早川組。シングルベルトを失ったスイレンが狙いをタッグベルトに切り替えてきた。

「かいせつの上原今日子さん、この試合のポイントはどのへんですか」

「うん、そうですね。スイレン選手の動きをチャンピオンチームが止められるかどうかですね」

しかしスイレン草薙強い。

「せいっっ!」

先月SPZシングルで苦杯を喫した相羽相手に恨みを晴らすかのような投げ技攻勢。最後はデスバレーボムで頭から落としてぐらついたところをノーザンライトスープレックス。肩を腹にめり込ませるえぐいパターンだ。

ワン、トゥ、スリー。

これでスターライト相羽が3カウントを取られてしまった。王座移動。スイレン、ガイア小早川組が久々にタッグチャンピオンに返り咲いた。

花道奥から吉田龍子がぼそりと一言。

「確変終了だな。」

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第5戦・滋賀大会メインはビューティ市ヶ谷対ハイサスカラスのAAC世界タイトル戦。ハイサスカラスのイレ込みようはハンパではなかった。なんとしてもベルトを取って本国へ帰らないと沽券にかかわるし営業的にもよろしくない。

しかしー

ビューティ市ヶ谷一方的に攻めて圧勝。わずか10分27秒であのハイサスカラスをマットにはいつくばらせてしまう。フィニッシュはデスバレーボムだった。会場にベルトを防衛した市ヶ谷の高笑いが響く。

・ ・・つ、強い・・・

花道奥で観戦していたスイレン草薙スターライト相羽の表情が凍りつく。まだ17歳なのに団体エースの風格すら漂わせていた。

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その24時間後、和歌山大会メインでもEWA選手権、王者ビューティ市ヶ谷 対 挑戦者ナターシャ・ハンが組まれた。

「イイカ!カンセツ技デハオマエガ世界一ナンダ!寝カセロ!立チ技ニツキ合ウナ!タノムカラベルトヲ本国に持ッテ帰ッテクレ・・・」

エージェントのトム氏が悲痛な表情で叫ぶ。その言葉通りナターシャがドラゴンスリーパーでしつこくねちっこく痛ぶって、最後はアキレス腱固め。市ヶ谷ついにギブアップ。勝負タイム22分32秒、EWAが至宝のベルトをなんとか奪還した。

「ヤッタ!ヨクヤッタナターシャ!」

涙ながらにトム氏が叫ぶ。しかしナターシャは息を弾ませながらひとりごちた。

「イチガヤ・・・恐ろしい存在だ・・・」

* *************************

最終戦は横浜スペシャルホール大会。

「ベルトを獲るとしたら、今しかねえ・・・」

ボンバー来島、SPZ選手権試合試合前日、遠征を終えて道場に戻るや黙々とバーベルを持ち上げた。スイレンが王者なら勝つ可能性はきわめて低いが、今のチャンピオンはスターライト相羽だ。直近のシングルマッチでも何回か勝っているので、力で叩きのめせば勝てる相手だ。

「見てろよ、何が来島さんじゃ勝てない、だ、ヘヘッ。明日はあのヘボチャンプを叩きのめしてやる・・・」

かようにSPZの世界は弱肉強食である。

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