第244回 SPZ選手会興行クリスマス・ディストラクション(下)
⑤ メインイベント:20人参加・時間差バトルロイヤル。
SPZ初の試み。選手?は1分おきにひとりずつ登場する(いわゆるロイヤルランブル形式)。
なお参加する選手は自腹で参加費1万円を支払い。優勝した選手が参加費合計20万円を賞金として総取りできるという非情?なルールが設けられた。1万円を投資すれば頑張りと立ち回り次第で20倍になって戻ってくるかもしれない。お金にシビアな面々の多いSPZの選手関係者は色めきたった。村越リングアナがルールの説明をした時点で場内ウォォォの歓声。壮絶なバトルの予感が・・・そして館内に「エクリプス」が轟き、花道に姿を現したのは・・・
1. ボンバー来島(SPZ11期)
「ウオーーーッ」雄たけびを上げながらボンバー来島、右手に1万円札を掲げてレフェリーの伊達遥に渡してからまっさきにリングイン。コールされた後地獄バトルのゴングが鳴った。
しかし次の選手が出てくるまでの1分間は何もすることがない。
「軽くウォーミングアップでもすっか・・・」
来島さん、1分間腕立て伏せをやって時間をつぶした。場内失笑。
2.菊池理宇(SPZ11期)
登場順は選手会長のギムレット美月が厳正なる抽選で決めたと称しているが、自分の有利なように組んだのはいうまでもない。実力者の来島菊池を先頭に持ってくるあたりがズルイ。
「THROUGH THE FIRE」がかかり、菊池理宇が入場。リングインの際、幹事の伊達レフェリーに1万円札を渡す。
「・・・・パートナーだからって、手加減はしません。賞金がかかってますから」
しばらくタッグパートナーの来島さんと取っ組み合いを繰り広げる。来島さんが押し勝ち、ロープ際へ押し込む。
「ロォープ!」ここはクリーンにブレイク。続く3人目は・・
3:フォクシー真帆(SPZ14期)
「SHAAAAAAA」
「ウイリアムテル序曲」が流れる中、フォクシー真帆が入場。しかし菊池と来島さんがレスリングをまともにやっているので入り込めない。立ち尽くすフォクシー真帆、場内失笑。
4:吉田龍子(SPZインストラクター)
「20万稼ぐチャンスやからね。黙って見ているわけにはいかんよ」
久々に「赤い破片」がかかって、SPZの総帥?、吉田龍子がトレーニングウェアでリングイン。場内どよめき。しかし菊池と来島さんが黙々と取っ組み合っているのでやはり戦いに入り込めない。ニュートラルコーナーで立ち尽くすだけ。フォクシーもまさか吉田龍子に殴りかかるわけにはいかず困ったなという表情、このまま1分が経過し・・・
5:渡辺智美(SPZマスターズ・現「売れないタレント」)
「ウェーハハハハ吉田龍子、ここで会ったが百年目、今日こそ貴様の最期だ!あんたがメインイベントで・・・(以下略)」
前年とまったく同じ言い回しでディスコスーツ姿の渡辺智美がリングイン。そして同期で怨敵?吉田龍子と相対。
「きょうは秘密兵器を持ってきたわ。あんたにまともにやりあう気なんてないんだから」
なんと渡辺智美、クリスマスを意識したのかあやしげな白い包みを持って入場。取り出したのは・・・・「北海道産たまねぎ。」
ぐしゃっ。
渡辺、たまねぎを握りつぶすや吉田龍子の顔面にぐりぐりとこすりつけた。なんてひどいことを。
「ぐっ・・・目がっ、目が・・・」
涙をぼろぼろ零しながらがくっとひざをつく吉田龍子。若手のころでもあの吉田龍子が目に涙を浮かべることはなかったのに。
がすっ! どかっ!
「どうだ思い知ったか、この思い上がり者めが~」
殴る蹴るの暴行を加える渡辺、吉田龍子いきなり大ピンチ。
6:井上霧子(SPZ社長代行)
吉田龍子の大ピンチで館内に悲鳴がとどろく中、井上霧子が登場。参加費の1万円を伊達遥に渡してからマイク。
「渡辺さん、龍子ちゃんはSPZの役員なのよ、それをこんな目に合わせてただで済むと・・・」
といいつつも渡辺に加勢して、倒れこむ吉田を痛めつける。そして右足を持ってアキレス腱がため。なんと渡辺も左足を持ってアキレス腱固め!!これはたまらない。
「うぐうううううう!!」
両足の痛みにもだえる吉田龍子、そんなに人望がないのか!?
(わるいけど龍子ちゃんにはさっさと退場してもらおう。強敵は真っ先につぶすのがバトルロイヤルのセオリーなのよ。)
一方、リング中央では菊池理宇がボンバー来島のボディスラム、ブレーンバスターを食らって劣勢。そこをフォクシー真帆がいきなり仕掛けた。
「SHAAAAAAA」
フォクシー真帆の延髄ラリアット炸裂。完全に不意をつかれた来島さん。前のめりにバッタリ倒れこむ。
「くっ、キタネエゾ・・・」
7:氷室紫月(SPZ16期)
「これも・・・運命」
「ウォンテッド」が場内にかかり、新人の氷室がのっそりとリングイン。新人にとって参加費1万円の支払いはバカにならないのだが、20万円をゲットするチャンス。まずはニュートラルコーナーで静観。
ワン、トゥ、スリー。
延髄ラリアットを食らった来島さんがフォクシー真帆のスクールボーイで丸め込まれて3カウントを奪われた。菊池も上から乗ってキックアウトを阻止。
「真帆の勝ちだ!」
勝ち誇るフォクシー真帆。
「ボンバー来島退場」
村越リングアナが最初の退場者を告げる。
8.ラッキー内田(SPZ16期)
新人のラッキー内田が8番目に登場。
「氷室さん、決着をつけましょう!」
リングインするや氷室に襲い掛かりそのまま新人らしい基本的な攻防でやりあう。もっともこれはラッキー内田の作戦。
―終盤まで生き残るためには氷室さんとまともに1対1で戦ってればいい。
「ウギャアアアア!ギブアップだ・・・」
井上・渡辺連合軍のダブルアキレス腱がために吉田龍子懸命に耐えたもののギブアップ。20万円の夢は露と消えた。
「吉田龍子、退場」
「くっそー・・・」吉田龍子、まだ目が痛いのか顔面をタオルで覆って引き揚げた。
9.今野和弘(SPZ人事経理担当取締役)
「はい伊達さん1万円、危険そうだから外で見てていいよね」
バトルロイヤルに参加しておきながら本部席での静観を決め込むスーツ姿の今野役員。あろうことか本部席で缶コーヒーなぞ飲んでいる。金持ち?喧嘩せずということか。
リング上ではフォクシーと菊池が殴り合っている。青コーナー隅では氷室とL内田がグラウンド技の攻防を延々と。
10:若林太郎(京スポ新聞記者)
「あー、何で私がこんなことを・・・」
若林記者も1万円を拠出させられた。とりあえずリングに上がり、顔なじみの井上霧子におそいかかる。
「おりゃあああ!脳天唐竹割りぃぃ」
「いいチョップね、さすが記者歴22年。だけど、戦いの年季が違うわ。ごめんあそばせ」
井上霧子、若林記者にすっと組み付いてスリーパー。
「うっ」
アーッという間に若林記者は落ちてしまった。マスコミ記者だろうが容赦なし!
「ごめんなさいね、酒代に困ってるのよ」
崩れ落ちた若林記者に乗ってそのまま踏みつけフォール。若林記者にフォール勝ち。
「若林太郎退場」
11.成瀬唯(SPZ15期)
「ほんなら、いくでー」
成瀬唯が軽やかに走ってリングイン。リング中央の菊池とフォクシーのやりあってるのに加わり、菊池を痛めつける。菊池、1対2の状況になり大ピンチ。
12。上原今日子(SPZマスターズ 何でもやる課 課長)
「・・・やれやれ、どうしろっていうんですか」
OGの元SPZ王者、上原今日子がおっとり刀でリングイン。井上霧子、渡辺智美とにらみ合う。
渡辺智美が提案。
「こ。ここはひとつOG3人で共謀しませんか?」
13.羽山海(SPZリングドクター)
羽山ドクターも伊達さんに1万円を支払ってからは本部席で今野役員とならんで戦況を見つめているだけ・・・しかし羽山さんの手には怪しいジュラルミンケースが・・・
リング上で動きが、
「せぇぇぇい!」
フォクシー真帆、成瀬唯のダブルのブレーンバスター。菊池投げられてダウン。その上から2人がのしかかる。これでカウント3.
「菊池理宇退場」
14.ミス・クリスマス(????)
純白のコスチュームに身を包んだなぞの覆面レスラーが登場。いったい誰なんだ。場内は一気にざわめきたった。リングインするやフォクシー真帆、成瀬をタックルで弾き飛ばす、
―かなりの実力者か?
「オーッホッホッホッホ!メリークリスマスですわ!」
自分から正体をばらしてしまう高笑い。後楽園のファンは笑い転げた。
「な、なにをする、きさまらーーーー!」
本部席で缶コーヒーを飲みながら戦況を見守っていた今野役員を井上霧子渡辺智美が拉致ってリング上へ運ぶ。
「ダブルキック!」
井上霧子が渡辺と肩を組んで2人がかりでビッグブーツ。
「そんなの、ありかよ~」
吹っ飛ぶ今野役員、そこを上原今日子が踏みつけフォール。カウント3が入ってしまった。
「今野和弘退場」
15.フレイア鏡(SPZ14期)
「今宵リングに女神が降臨しますわ!」
ここで千両役者・フレイア鏡が入場。場内はますます盛り上がった。ミス・クリスマスと2人がかりでフォクシー真帆を痛めつける。
「うー、真帆はもう、疲れた・・・」
序盤から闘い続けたフォクシー真帆、ついに集中力が切れてきた。
「ふふ、スキアリ・・・」
「ああ・・ぐわああああああ」
フレイア鏡、絡み付いての足4の字固め!フォクシー真帆の表情が苦痛にゆがむ。
「ふふふふ、ステキよ真帆さん、ぞくぞくするわぁ・・・」
16.キューティー金井(SPZ12期)
「今日は負けないんだから!」
人気レスラーの登場に場内沸いた。リング中央ではフレイアの足4の字ががっちり決まってしまって・・
「真帆はダメだ・・・ギブアップ」
「フォクシー真帆退場」
しかしそのとき、ミス・クリスマスがコーナー最上段からうっとりしているフレイア鏡にダイビングプレスで飛び降りた!
「・・・ぐわっ!」
虚を突かれたフレイア鏡、これで3カウントを聞いた。
「フレイア鏡退場」
現時点でリング上に残っているのは、
井上霧子、渡辺智美、上原今日子、成瀬唯、ラッキー内田、氷室紫月、羽山海、キューティー金井、ミス・クリスマスの9名。
17.エル・オガワ・メンドーサ(なぞのルチャドーラ)
ほわーんとしたメキシコ音楽が流れ、銀色の覆面をかぶったなぞのレスラーが伊達レフェリーに1000ペソを払ってリングイン。
「iTe voy a matar!」(日本語訳:ぶっ殺す)
物騒な言葉を吐きながら渡辺智美にナックルパートを打ち込んでゆく。ぐらつく渡辺、だがここでまたヒキョウな手を使った。凶器入り袋から取り出したのはUSBキーボード!
「IT時代をリードする!SPそりゅーしょん!」
親会社の宣伝を叫びながらキーボードでメンドーサを殴りつける渡辺。飛び散るキー。ITを駆使した攻撃に館内は失笑。
さらに渡辺はITを駆使した攻撃、LANケーブルを取り出しメンドーサの首をしめようとするが、
「ええかげんにせえよ」
上原今日子がグーパンチ一閃。元正統派レスラーとしてこれ以上レベルの低い戦いにはついていけなかったのだろうか。
「きゃう・・・・」
アイドルレスラー渡辺が倒れこむ。そこへいっせいに井上、メンドーサ、上原が覆いかぶさってかウント3.
「渡辺智美退場」
「ううう、覚えテロ~!!」
18。ビーナス麗子
「やってきました、千両役者!!」
ビーナス麗子が元気よくトップロープを飛びこえリングイン。
「多くなって来ましたわね、少し片付けましょうか」
ミス・クリスマスが動いた。成瀬にものすごいラリアット。振り向きざまにキューティー金井にも。それぞれ立て続けにフォールを奪う。
「成瀬唯 退場」
「キューティー金井 退場」
「オーホホホホホホ!わたくしに勝てるものなぞおりませんことよ!」
しかしここでリング外から思わぬ伏兵が。
フッ。
吹き矢が飛んできてミス・クリスマスの足に命中。犯人はリングドクター羽山。当然吹き矢の中には巨象をも眠らせる麻酔薬が入っている。
ば た。
倒れこむミス・クリスマス。そこを井上霧子、メンドーサ、上原がのしかかってフォール。
「ミス・クリスマス退場」
大本命が担架で運ばれて退場。
19.ガイア小早川(SPZマスターズ/SPZ9期)
引退して半年そこそこのガイア小早川が一夜限りの復活。軽やかな身のこなしは健在。
「はっ!」
軽く飛んで上原今日子にローリングクラッチホールド。
「わ、しまった・・・」
カウント3が入った。しかし世の中甘くない。戦況を見ていた井上霧子とメンドーサがそのまま回転エビ固めをもう半回転。こんどはガイア小早川の肩がマットについた。これでまたカウント3が数えられた。
「上原今日子退場、ガイア小早川退場」
20.テキーラ・ビューティフルムーン(大物?ルチャドーラ)
またもメキシコ音楽が流れ、テキーラ・ビューティフルムーンと名乗る小柄な黒覆面ルチャドーラが1000ペソ払ってリングイン。名前からして正体バレバレである。これで全20選手の入場が完了。現時点で生き残っている選手は以下の7名。
井上霧子、羽山海、EOメンドーサ、ラッキー内田、氷室紫月、ビーナス麗子、Tビューティフルムーン。
赤コーナー側で動きが。
「そろそろ・・・ショーブ・・・かけます・・・っ」
ラッキー内田、いままでずーっと氷室とレスリングをやって2人だけの世界に没頭して時間稼ぎをしたがここで勝負をかけた。まず肩で息をしている氷室を場外にほうり投げて、そしてビーナス麗子を捕まえてブレーンバスター。
「あまいっ!」
ビーナス麗子、投げられたのに先にスックと起き上がってハイキック!これが20万円への意地執念か。崩れ落ちるラッキー内田。これで3カウント。
「ラッキー内田退場」これで残り6名。
残り6人となったところで、井上霧子もここで仕掛けた。
―強そうなコから、つぶす!
ぱかっ。ごくごく。・・・・・
「HAUUUUUUUUUU!」
隠し持っていた景気づけのワンカップを飲むや、殺戮モードに突入した。
―ヤクザキック!
「・・・ううっ!」
ビーナス麗子吹っ飛ぶ。
―ヤクザキック!
ビューティフルムーンも吹っ飛ぶ。なんてヤツだ。昨年のマスターズ戦の再現フィルムをみているようだ。
しかしリング下からまたも吹き矢が。
ぶっ!
バタン。
巨象をも眠らせる麻酔薬が井上霧子の足に刺さる。ここで羽山がリングインし、井上霧子に覆いかぶさって3カウント奪取。
「井上霧子退場」これで残り5名。
「・・・・・・・・・」
なおも吹き矢を構えるマッド女医・羽山だったが、さすがにメンドーサがうまくかいくぐって、絡み付いて多少ぎこちなかったものの、逆さ押さえ込みを決める。当然シロウトの羽山さんは返せるはずがない。
「羽山海退場」
―これで、あと3人ですね・・・
「・・・ウッ・・・」
メンドーサ、ここに油断があって、逆さ押さえ込みを解いた直後に羽山マッド女医の怪しいハンカチ攻撃を食らって意識が遠のいてしまった。
「iBasta・・・・ ya hijo・・・ de puta・・・」(日本語訳:やりやがったなテメー・・・)
ば た。
メンドーサ、ここで力尽きた。リング上には3体のマグロが転がっている状態。これが長く続いた。氷室もロングバトルの後遺症で場外でうずくまっている。1分後、ようやく蘇生したビューティフルムーンがまずメンドーサの上に覆いかぶさって、
「ワン、トゥ、スリ・・・」
3カウント奪取。
「エル・オガワ・メンドーサ退場」
残るはビーナス麗子、氷室紫月。
「・・・くっ!」
氷室が懸命にエルボーを打っていくが、ビューティフルムーン。やすやすと受け流して、
「勝率30%上方修正。」
ドラゴンカベルナリアに捕らえた。氷室の身体が弓なりにきしんで行く!だが・・・・
がす。
しかしこれをビーナス麗子が蹴りを入れてカット。そのままビューティフルムーンを引きずり起こしてニーリフト連打!同期のはずなのに、現金に目がくらむとみんな必死になってしまうのか。
―ここで負けたら、何のために順番の抽選に細工したのかわからなくなってしまう。
ぶんっ!
ビューティフルムーン、20万円への執念を見せ、普段はまず見せないラリアットをビーナス麗子に叩き込む!
「そんな、うわぁーー」
ハデに吹っ飛ぶビーナス麗子。そのままビューティフルムーンが上からのしかかって3カウント。
「ビーナス麗子退場」
―よしあとは新人の氷室選手だけだ、20万円獲れる・・・っ
その一瞬隙があった。ビーナス麗子のカバー解いた直後、氷室がうまーく組み付いて、スモールパッケージで丸め込んだ!
「わ・・・しまったっ」
ワン、トゥ、スリー。
「テキーラ・ビューティフルムーン退場、26分33秒、スモールパッケージホールドで氷室紫月の勝ち」
「これも・・・運命」
氷室紫月、賞金の20万円(正確には18万円と2000ペソ)を受け取っても平然としていた・・・
こうして魔の選手会興行は終わった。
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