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2007年10月31日 (水)

第244回 SPZ選手会興行クリスマス・ディストラクション(下)

⑤ メインイベント:20人参加・時間差バトルロイヤル。

SPZ初の試み。選手?は1分おきにひとりずつ登場する(いわゆるロイヤルランブル形式)。

なお参加する選手は自腹で参加費1万円を支払い。優勝した選手が参加費合計20万円を賞金として総取りできるという非情?なルールが設けられた。1万円を投資すれば頑張りと立ち回り次第で20倍になって戻ってくるかもしれない。お金にシビアな面々の多いSPZの選手関係者は色めきたった。村越リングアナがルールの説明をした時点で場内ウォォォの歓声。壮絶なバトルの予感が・・・そして館内に「エクリプス」が轟き、花道に姿を現したのは・・・

1. ボンバー来島(SPZ11期)
「ウオーーーッ」雄たけびを上げながらボンバー来島、右手に1万円札を掲げてレフェリーの伊達遥に渡してからまっさきにリングイン。コールされた後地獄バトルのゴングが鳴った。
しかし次の選手が出てくるまでの1分間は何もすることがない。
「軽くウォーミングアップでもすっか・・・」
来島さん、1分間腕立て伏せをやって時間をつぶした。場内失笑。

2.菊池理宇(SPZ11期)
登場順は選手会長のギムレット美月が厳正なる抽選で決めたと称しているが、自分の有利なように組んだのはいうまでもない。実力者の来島菊池を先頭に持ってくるあたりがズルイ。
「THROUGH THE FIRE」がかかり、菊池理宇が入場。リングインの際、幹事の伊達レフェリーに1万円札を渡す。

「・・・・パートナーだからって、手加減はしません。賞金がかかってますから」

しばらくタッグパートナーの来島さんと取っ組み合いを繰り広げる。来島さんが押し勝ち、ロープ際へ押し込む。
「ロォープ!」ここはクリーンにブレイク。続く3人目は・・

3:フォクシー真帆(SPZ14期)
「SHAAAAAAA」
「ウイリアムテル序曲」が流れる中、フォクシー真帆が入場。しかし菊池と来島さんがレスリングをまともにやっているので入り込めない。立ち尽くすフォクシー真帆、場内失笑。

4:吉田龍子(SPZインストラクター)
「20万稼ぐチャンスやからね。黙って見ているわけにはいかんよ」
久々に「赤い破片」がかかって、SPZの総帥?、吉田龍子がトレーニングウェアでリングイン。場内どよめき。しかし菊池と来島さんが黙々と取っ組み合っているのでやはり戦いに入り込めない。ニュートラルコーナーで立ち尽くすだけ。フォクシーもまさか吉田龍子に殴りかかるわけにはいかず困ったなという表情、このまま1分が経過し・・・

5:渡辺智美(SPZマスターズ・現「売れないタレント」)
「ウェーハハハハ吉田龍子、ここで会ったが百年目、今日こそ貴様の最期だ!あんたがメインイベントで・・・(以下略)」
前年とまったく同じ言い回しでディスコスーツ姿の渡辺智美がリングイン。そして同期で怨敵?吉田龍子と相対。

「きょうは秘密兵器を持ってきたわ。あんたにまともにやりあう気なんてないんだから」
なんと渡辺智美、クリスマスを意識したのかあやしげな白い包みを持って入場。取り出したのは・・・・「北海道産たまねぎ。」
ぐしゃっ。
渡辺、たまねぎを握りつぶすや吉田龍子の顔面にぐりぐりとこすりつけた。なんてひどいことを。
「ぐっ・・・目がっ、目が・・・」
涙をぼろぼろ零しながらがくっとひざをつく吉田龍子。若手のころでもあの吉田龍子が目に涙を浮かべることはなかったのに。

がすっ! どかっ!
「どうだ思い知ったか、この思い上がり者めが~」
殴る蹴るの暴行を加える渡辺、吉田龍子いきなり大ピンチ。

6:井上霧子(SPZ社長代行)

吉田龍子の大ピンチで館内に悲鳴がとどろく中、井上霧子が登場。参加費の1万円を伊達遥に渡してからマイク。
「渡辺さん、龍子ちゃんはSPZの役員なのよ、それをこんな目に合わせてただで済むと・・・」
といいつつも渡辺に加勢して、倒れこむ吉田を痛めつける。そして右足を持ってアキレス腱がため。なんと渡辺も左足を持ってアキレス腱固め!!これはたまらない。
「うぐうううううう!!」
両足の痛みにもだえる吉田龍子、そんなに人望がないのか!?

(わるいけど龍子ちゃんにはさっさと退場してもらおう。強敵は真っ先につぶすのがバトルロイヤルのセオリーなのよ。)

一方、リング中央では菊池理宇がボンバー来島のボディスラム、ブレーンバスターを食らって劣勢。そこをフォクシー真帆がいきなり仕掛けた。
「SHAAAAAAA」
フォクシー真帆の延髄ラリアット炸裂。完全に不意をつかれた来島さん。前のめりにバッタリ倒れこむ。

「くっ、キタネエゾ・・・」

7:氷室紫月(SPZ16期)
「これも・・・運命」
「ウォンテッド」が場内にかかり、新人の氷室がのっそりとリングイン。新人にとって参加費1万円の支払いはバカにならないのだが、20万円をゲットするチャンス。まずはニュートラルコーナーで静観。

ワン、トゥ、スリー。
延髄ラリアットを食らった来島さんがフォクシー真帆のスクールボーイで丸め込まれて3カウントを奪われた。菊池も上から乗ってキックアウトを阻止。
「真帆の勝ちだ!」
勝ち誇るフォクシー真帆。
「ボンバー来島退場」
村越リングアナが最初の退場者を告げる。

8.ラッキー内田(SPZ16期)
新人のラッキー内田が8番目に登場。

「氷室さん、決着をつけましょう!」

リングインするや氷室に襲い掛かりそのまま新人らしい基本的な攻防でやりあう。もっともこれはラッキー内田の作戦。
―終盤まで生き残るためには氷室さんとまともに1対1で戦ってればいい。

「ウギャアアアア!ギブアップだ・・・」
井上・渡辺連合軍のダブルアキレス腱がために吉田龍子懸命に耐えたもののギブアップ。20万円の夢は露と消えた。
「吉田龍子、退場」

「くっそー・・・」吉田龍子、まだ目が痛いのか顔面をタオルで覆って引き揚げた。

9.今野和弘(SPZ人事経理担当取締役)
「はい伊達さん1万円、危険そうだから外で見てていいよね」
バトルロイヤルに参加しておきながら本部席での静観を決め込むスーツ姿の今野役員。あろうことか本部席で缶コーヒーなぞ飲んでいる。金持ち?喧嘩せずということか。

リング上ではフォクシーと菊池が殴り合っている。青コーナー隅では氷室とL内田がグラウンド技の攻防を延々と。

10:若林太郎(京スポ新聞記者
「あー、何で私がこんなことを・・・」
若林記者も1万円を拠出させられた。とりあえずリングに上がり、顔なじみの井上霧子におそいかかる。

「おりゃあああ!脳天唐竹割りぃぃ」

「いいチョップね、さすが記者歴22年。だけど、戦いの年季が違うわ。ごめんあそばせ」

井上霧子、若林記者にすっと組み付いてスリーパー。

「うっ」
アーッという間に若林記者は落ちてしまった。マスコミ記者だろうが容赦なし!
「ごめんなさいね、酒代に困ってるのよ」
崩れ落ちた若林記者に乗ってそのまま踏みつけフォール。若林記者にフォール勝ち。
「若林太郎退場」

11.成瀬唯(SPZ15期)
「ほんなら、いくでー」
成瀬唯が軽やかに走ってリングイン。リング中央の菊池とフォクシーのやりあってるのに加わり、菊池を痛めつける。菊池、1対2の状況になり大ピンチ。

12。上原今日子(SPZマスターズ 何でもやる課 課長)
「・・・やれやれ、どうしろっていうんですか」
OGの元SPZ王者、上原今日子がおっとり刀でリングイン。井上霧子、渡辺智美とにらみ合う。
渡辺智美が提案。
「こ。ここはひとつOG3人で共謀しませんか?」

13.羽山海(SPZリングドクター)
羽山ドクターも伊達さんに1万円を支払ってからは本部席で今野役員とならんで戦況を見つめているだけ・・・しかし羽山さんの手には怪しいジュラルミンケースが・・・

リング上で動きが、
「せぇぇぇい!」
フォクシー真帆、成瀬唯のダブルのブレーンバスター。菊池投げられてダウン。その上から2人がのしかかる。これでカウント3.

「菊池理宇退場」

14.ミス・クリスマス(????)
純白のコスチュームに身を包んだなぞの覆面レスラーが登場。いったい誰なんだ。場内は一気にざわめきたった。リングインするやフォクシー真帆、成瀬をタックルで弾き飛ばす、

―かなりの実力者か?
「オーッホッホッホッホ!メリークリスマスですわ!」
自分から正体をばらしてしまう高笑い。後楽園のファンは笑い転げた。

「な、なにをする、きさまらーーーー!」
本部席で缶コーヒーを飲みながら戦況を見守っていた今野役員を井上霧子渡辺智美が拉致ってリング上へ運ぶ。

「ダブルキック!」
井上霧子が渡辺と肩を組んで2人がかりでビッグブーツ。
「そんなの、ありかよ~」
吹っ飛ぶ今野役員、そこを上原今日子が踏みつけフォール。カウント3が入ってしまった。
「今野和弘退場」

15.フレイア鏡(SPZ14期)

「今宵リングに女神が降臨しますわ!」

ここで千両役者・フレイア鏡が入場。場内はますます盛り上がった。ミス・クリスマスと2人がかりでフォクシー真帆を痛めつける。

「うー、真帆はもう、疲れた・・・」
序盤から闘い続けたフォクシー真帆、ついに集中力が切れてきた。

「ふふ、スキアリ・・・」
「ああ・・ぐわああああああ」
フレイア鏡、絡み付いての足4の字固め!フォクシー真帆の表情が苦痛にゆがむ。
「ふふふふ、ステキよ真帆さん、ぞくぞくするわぁ・・・」

16.キューティー金井(SPZ12期)
「今日は負けないんだから!」
人気レスラーの登場に場内沸いた。リング中央ではフレイアの足4の字ががっちり決まってしまって・・
「真帆はダメだ・・・ギブアップ」
「フォクシー真帆退場」

しかしそのとき、ミス・クリスマスがコーナー最上段からうっとりしているフレイア鏡にダイビングプレスで飛び降りた!
「・・・ぐわっ!」
虚を突かれたフレイア鏡、これで3カウントを聞いた。
「フレイア鏡退場」

現時点でリング上に残っているのは、
井上霧子、渡辺智美、上原今日子、成瀬唯、ラッキー内田、氷室紫月、羽山海、キューティー金井、ミス・クリスマスの9名。

17.エル・オガワ・メンドーサ(なぞのルチャドーラ)
ほわーんとしたメキシコ音楽が流れ、銀色の覆面をかぶったなぞのレスラーが伊達レフェリーに1000ペソを払ってリングイン。

「iTe voy a matar!」(日本語訳:ぶっ殺す)
物騒な言葉を吐きながら渡辺智美にナックルパートを打ち込んでゆく。ぐらつく渡辺、だがここでまたヒキョウな手を使った。凶器入り袋から取り出したのはUSBキーボード!

「IT時代をリードする!SPそりゅーしょん!」
親会社の宣伝を叫びながらキーボードでメンドーサを殴りつける渡辺。飛び散るキー。ITを駆使した攻撃に館内は失笑。
さらに渡辺はITを駆使した攻撃、LANケーブルを取り出しメンドーサの首をしめようとするが、
「ええかげんにせえよ」
上原今日子がグーパンチ一閃。元正統派レスラーとしてこれ以上レベルの低い戦いにはついていけなかったのだろうか。
「きゃう・・・・」
アイドルレスラー渡辺が倒れこむ。そこへいっせいに井上、メンドーサ、上原が覆いかぶさってかウント3.
「渡辺智美退場」
「ううう、覚えテロ~!!」

18。ビーナス麗子
「やってきました、千両役者!!」
ビーナス麗子が元気よくトップロープを飛びこえリングイン。

「多くなって来ましたわね、少し片付けましょうか」
ミス・クリスマスが動いた。成瀬にものすごいラリアット。振り向きざまにキューティー金井にも。それぞれ立て続けにフォールを奪う。
「成瀬唯 退場」
「キューティー金井 退場」
「オーホホホホホホ!わたくしに勝てるものなぞおりませんことよ!」

しかしここでリング外から思わぬ伏兵が。
フッ。
吹き矢が飛んできてミス・クリスマスの足に命中。犯人はリングドクター羽山。当然吹き矢の中には巨象をも眠らせる麻酔薬が入っている。

ば た。
倒れこむミス・クリスマス。そこを井上霧子、メンドーサ、上原がのしかかってフォール。
「ミス・クリスマス退場」

大本命が担架で運ばれて退場。

19.ガイア小早川(SPZマスターズ/SPZ9期)

引退して半年そこそこのガイア小早川が一夜限りの復活。軽やかな身のこなしは健在。

「はっ!」

軽く飛んで上原今日子にローリングクラッチホールド。
「わ、しまった・・・」
カウント3が入った。しかし世の中甘くない。戦況を見ていた井上霧子とメンドーサがそのまま回転エビ固めをもう半回転。こんどはガイア小早川の肩がマットについた。これでまたカウント3が数えられた。
「上原今日子退場、ガイア小早川退場」

20.テキーラ・ビューティフルムーン(大物?ルチャドーラ)

またもメキシコ音楽が流れ、テキーラ・ビューティフルムーンと名乗る小柄な黒覆面ルチャドーラが1000ペソ払ってリングイン。名前からして正体バレバレである。これで全20選手の入場が完了。現時点で生き残っている選手は以下の7名。

井上霧子、羽山海、EOメンドーサ、ラッキー内田、氷室紫月、ビーナス麗子、Tビューティフルムーン。

赤コーナー側で動きが。
「そろそろ・・・ショーブ・・・かけます・・・っ」
ラッキー内田、いままでずーっと氷室とレスリングをやって2人だけの世界に没頭して時間稼ぎをしたがここで勝負をかけた。まず肩で息をしている氷室を場外にほうり投げて、そしてビーナス麗子を捕まえてブレーンバスター。

「あまいっ!」
ビーナス麗子、投げられたのに先にスックと起き上がってハイキック!これが20万円への意地執念か。崩れ落ちるラッキー内田。これで3カウント。
「ラッキー内田退場」これで残り6名。

残り6人となったところで、井上霧子もここで仕掛けた。

―強そうなコから、つぶす!
ぱかっ。ごくごく。・・・・・
「HAUUUUUUUUUU!」
隠し持っていた景気づけのワンカップを飲むや、殺戮モードに突入した。
―ヤクザキック!
「・・・ううっ!」
ビーナス麗子吹っ飛ぶ。

―ヤクザキック!
ビューティフルムーンも吹っ飛ぶ。なんてヤツだ。昨年のマスターズ戦の再現フィルムをみているようだ。
しかしリング下からまたも吹き矢が。
ぶっ!
バタン。

巨象をも眠らせる麻酔薬が井上霧子の足に刺さる。ここで羽山がリングインし、井上霧子に覆いかぶさって3カウント奪取。
「井上霧子退場」これで残り5名。

「・・・・・・・・・」
なおも吹き矢を構えるマッド女医・羽山だったが、さすがにメンドーサがうまくかいくぐって、絡み付いて多少ぎこちなかったものの、逆さ押さえ込みを決める。当然シロウトの羽山さんは返せるはずがない。
「羽山海退場」

―これで、あと3人ですね・・・

「・・・ウッ・・・」
メンドーサ、ここに油断があって、逆さ押さえ込みを解いた直後に羽山マッド女医の怪しいハンカチ攻撃を食らって意識が遠のいてしまった。
「iBasta・・・・ ya hijo・・・ de puta・・・」(日本語訳:やりやがったなテメー・・・)
ば た。

メンドーサ、ここで力尽きた。リング上には3体のマグロが転がっている状態。これが長く続いた。氷室もロングバトルの後遺症で場外でうずくまっている。1分後、ようやく蘇生したビューティフルムーンがまずメンドーサの上に覆いかぶさって、
「ワン、トゥ、スリ・・・」
3カウント奪取。
「エル・オガワ・メンドーサ退場」
残るはビーナス麗子、氷室紫月。
「・・・くっ!」
氷室が懸命にエルボーを打っていくが、ビューティフルムーン。やすやすと受け流して、

「勝率30%上方修正。」
ドラゴンカベルナリアに捕らえた。氷室の身体が弓なりにきしんで行く!だが・・・・
がす。
しかしこれをビーナス麗子が蹴りを入れてカット。そのままビューティフルムーンを引きずり起こしてニーリフト連打!同期のはずなのに、現金に目がくらむとみんな必死になってしまうのか。

―ここで負けたら、何のために順番の抽選に細工したのかわからなくなってしまう。

ぶんっ!
ビューティフルムーン、20万円への執念を見せ、普段はまず見せないラリアットをビーナス麗子に叩き込む!

「そんな、うわぁーー」
ハデに吹っ飛ぶビーナス麗子。そのままビューティフルムーンが上からのしかかって3カウント。
「ビーナス麗子退場」

―よしあとは新人の氷室選手だけだ、20万円獲れる・・・っ
その一瞬隙があった。ビーナス麗子のカバー解いた直後、氷室がうまーく組み付いて、スモールパッケージで丸め込んだ!

「わ・・・しまったっ」
ワン、トゥ、スリー。
「テキーラ・ビューティフルムーン退場、26分33秒、スモールパッケージホールドで氷室紫月の勝ち」

「これも・・・運命」
氷室紫月、賞金の20万円(正確には18万円と2000ペソ)を受け取っても平然としていた・・・

こうして魔の選手会興行は終わった。

2007年10月30日 (火)

第243回 16年目12月 選手会興行クリスマス・ディストラクション(上)

2024年年末。SPZ選手会が風雲急を告げる。

「選手会で何かイベントやりましょう。また年末で飢えた吉田さんや井上さんがマスターズ戦やりましょうとか言い出す前に。」

昨年の「夢のマスターズ戦」は悪夢だった。SPZ選手会は「お手伝い」を強要?されて、レフェリーやリングアナをやらされ、ビーナス麗子やギムレット美月はメインでは酔っ払って殺人狂と化した井上霧子のヤクザキックを食らってノックアウトされたのである。しかも「井上霧子主催イベント」ということでギャラは出なかった・・・

「そうですね、先手を打って何かイベントをやらないとまた井上さんのキックの餌食になってしまいますから」

「でもでも、井上さんたちに声かけないと、後々やばくないですか~?」

ビーナス麗子が心配げに話す。

「心配ありません。こちらで企画をがっちり考えてから、堂々と誘えばいいのです。」

選手会長・ギムレット美月が決断。
「24日、後楽園プラザ、押さえましょう」

********************

そして12月24日、クリスマスイブ当日。チケットは割安の3,000円、SPZ選手会興行が久々に開催された。何かが起こるSPZの年末お笑い興行、今年も多くのファンが後楽園に詰めかけた。午後6時30分、ギムレット美月選手会長がリング上から挨拶。

「えーと、SPZ選手会長のギムレット美月です。メリー・クリスマス。」

ぱちぱちぱちぱち・・・・

「本日はクリスマスイブにもかかわらず、SPZ選手会主催イベント・『クリスマス・ディストラクション』にお越しいただきまして誠にありがとうございます。本日は2試合ほどプロレスの試合はありますが、まあゆるーいファイトですので、まあ笑ってください。」

① サンドバッグ選手権「ウルトラSPZクライマックス」

リング中央に置かれたのはゲームセンターとかで置かれているサンドバッグ。エントリーは8人、このサンドバッグを殴って、衝撃で一番多いポイントを稼いだ選手が「賞金1万円」を獲得する。映画音楽が流れる中、8人のつわものどもがリングに上がる。

A:羽山海(SPZリングドクター)
「えいっ!」
めいっぱい力をこめてサンドバッグを殴りつけた。シロウトだがなかなかのいい突き。80kgの数値が出た。

B.ラッキー内田(SPZ16期)

「はっ!」
この選手、打撃はあまり得意でないのだがミドルキックを叩き込んで120kgをたたき出した。場内どよめき。やはり新人にとって1万円はバカにならないのか。

C.今野和弘(SPZ取締役)

「オアタァアアア」
かけ声だけは立派だったが、もう51歳、寄る年波には勝てず、渾身のグーパンチは70kg、場内は失笑に包まれた。

D.ギムレット美月(SPZ選手会長)

「別にこんなのに本気出すのも・・・」
裏拳を軽くスナップ利かせて105kg。

E.森和紀(大日本テレビアナウンサー)

「みなさまこんばんは世界のかずのりでございます。大日本テレビは年末年始の特番を数多く用意しておりまして(以下番宣で3分しゃべる)わたくしも正月は駅伝の実況に例年駆り出されます。世界の大日本テレビ、みんなの大日本テレビ、ホワァァァッ!」
体重の乗った右フックを打ったが95kgどまりであった。

F.エル・オガワ・メンドーサ(謎のメキシコ人?マスクウーマン)

銀色の怪覆面マスクウーマンが現れると場内どよめき。
「iTe cogi!」(もらった!)
本業の監査法人勤めのストレスを吐きつけるかのようなグーパンチ炸裂。現役時代を上回る90kgをマーク。

G.成瀬唯(SPZ15期)

「ほな、いくでー」
べっちーん。
受け狙いなのか、サンドバッグにはり手。それでも100kgをマークするあたり、この選手も只者ではない。

H。井上霧子(SPZ社長代行)

そして真打ち、SPZの裏番が登場。

「HAAAAAAAAA」

井上霧子、ものすごい表情で気合をこめる。

「大人気ないぞ!霧子さん!」

館内は失笑とヤジが交錯した。

「ヤクザキック!」

DOGOOOOON!

恐ろしい勢いのヤクザキックがヒット。しかし、マシンごと壊してしまったのか、威力得点の表示が出ない。場内ざわめき。リング下では協議が始まった。

「えー、ただいまの競技について説明いたします。井上霧子さんのキックは命中しましたが、マシーンを壊してしまったので記録なしと致し、したがって最高得点のラッキー内田選手が優勝となります」

京スポ新聞若林記者が説明。

「何ですって・・・・」井上霧子愕然。

② ラッキーナンバー抽選会。

各選手が快く提供した物品が抽選で当たる選手会興行定番の企画。選手会長のギムレット美月は電子手帳を提供。若手のラッキー内田は巡業中に読んだと思われるコミック本「麻雀地獄戦記GXW」全10巻を提供。そしてボンバー来島からは移動中に使用したと思われるサンダル。菊池理宇はTシャツを提供。これは大いに盛り上がった。

③ 移動中の秘蔵ショット公開。

大型スクリーンに移動中の秘蔵ショットがさらされる。ビーナス麗子のトークが冴える。ネタにされたのは山ごもり特訓中のスターライト相羽だった・・・

「あ、これも相羽ちゃんですね。前の日フォール負けして凹んでるんですね。」

④ セミファイナル・普通のシングルマッチ。

「やはりまともな試合を1試合くらい入れておかないとお客さんは引いてしまいます」

とのことで、お嬢様軍団の同門対決。ロイヤル北条VS芝田美紀の20分1本勝負が組まれた。このカードは2週間前のさいたまドームのセミでも組まれていて内容は保証書つき。いつものように目いっぱい戦って時間切れドロー。後楽園プラザは拍手に包まれた。

⑤ メインイベント:20人参加・時間差ドリームバトルロイヤル。

SPZ初の試み。

・選手?は1分おきにひとりずつ登場する。バトルロイヤル形式で戦い、最後まで残った選手が優勝。

・参加する選手は自腹で参加費1万円を支払い、優勝した選手が参加費合計20万円を賞金として総取りできる。

という非情?なルールが設けられた。SPZの選手は15名、しかも相羽ちゃんは「山ごもり」で欠席、マッキー上戸は海外修行中でこのイベントに出られる状況なのは13名。あと7名はどうするつもりなのか・・・(続く)

2007年10月29日 (月)

SPZスター選手列伝 019 ガイア小早川

従業員コード:019

暴走エクスプレス ガイア小早川

本名:小早川桃子、2002年1月16日、福島県郡山市出身。2017年のSPZ新人テストに合格し、9期生として入門。2017年4月11日、釧路市体育館での保科優希戦でデビュー。勝気な性格を生かしたファイトで活躍。最近ではスイレン草薙のパートナーに抜擢され、SPZタッグ王座を獲得。またギムレット美月とのタッグであばしりタッグ王者にも輝く。得意技はミサイルキック。

2024年6月22日、さいたまドーム大会でのスイレン草薙戦で引退。稼動月数87ヶ月、出場試合数612試合(推定)

タイトル歴

第20代・第24代SPZタッグ王者(パートナーはスイレン草薙)

第2代・4代・7代あばしりタッグ王者(パートナーはギムレット美月)

第14回SPZタッグリーグ優勝

写真集 1冊

SPZ9期生で採用したが、マイトス香澄同様に体格面でのハンデを背負い、大成は難しいかと思われていた。シングル戦での勝率はあまり良くなく、SPZクライマックスへの出場も果たせなかった。しかしスイレン草薙のタッグパートナーに抜擢されてからは懸命のファイトが胸を打った。パートナーのスイレンの力が大きかったのだが、SPZタッグ王者にまで輝いたから満足いくレスラー生活が送れたのではないかと思う。引退後はグッズショップSPZフィーバーの福島店店長をしている。

(筆者より:リプレイ日記・書き溜めた在庫で食いつないでいる状態が続いています。PS2のスイッチを入れても別のゲームをやる状況です。武藤めぐみの連勝街道が続いて・・・)

2007年10月28日 (日)

SPZスター選手列伝 018 マイトス香澄

SPZスター選手列伝

従業員コード:018 SPZ8期生
「突貫少女」 マイトス香澄

本名:秋山香澄 2000年10月10日、東京都江戸川区出身。2016年のSPZ新人テストに合格し、8期生として入門。2016年4月14日、札幌キターアリーナ大会での南利美戦でデビュー。ハイブリッド南と革命軍を結成し、SPZタッグ王者にも輝く。ハイブリッド南引退後は「ひとり革命軍」として、小柄な体格を持ち前の精神力でカバーする熱いファイトを展開。得意技は絶望2000ジャーマン。
2024年4月29日、新日本ドームでのフォクシー真帆戦で引退。稼動月数97ヶ月、出場試合数(推定)692試合

タイトル歴
第13代SPZ世界タッグ王者
第18代SPZ世界タッグ王者(パートナーはハイブリッド南)

スイレン草薙と同期入門の選手。新人スカウトで採用したスイレンが順調に出世街道を突っ走ったのに対して、テスト上がりのこの選手は前座要員で長いこと耐えてきた。SPZクライマックスにも1回だけ出たが全敗。体格やパワーのハンデがあり、シングルマッチでの大成は厳しかったが、ハイブリッド南が打倒吉田を掲げ革命軍を結成したときはいち早く加入して、ハイブリッド南のパートナーを務めた。タッグマッチでは弱いほうが狙われるのだが、懸命のファイトでSPZタッグ王者に輝いた。しかしその激闘の数々で身体を痛めてしまい、稼動8年で引退という比較的短い選手生命となってしまった。太く短くを体現したレスラーだったと思う。

2007年10月27日 (土)

SPZスター選手列伝 017 スイレン草薙

SPZスター選手列伝
従業員コード:017 SPZ8期生

スイレン草薙

本名:本堂ななか。2000年9月21日、山形県寒河江市出身。幼い頃から草薙流武術を伝承体得し、15歳で草薙流武術大会で優勝。この才能に目をつけた草薙みことがSPZプロレスにスカウトし、2016年4月14日、札幌キターアリーナ大会の渡辺智美戦でデビュー。

持ち前の格闘センスと草薙流兜落としを武器にめきめきと実力をつけ、伊達遥とのタッグでEWAタッグ王者、SPZタッグ王者に輝く。また、団体最強の称号・SPZ世界王者にも4度輝く。得意技は草薙流兜落とし。2024年8月14日、横浜スペシャルホールでの芝田美紀戦で引退。稼動月数101ヶ月。出場試合数(推定)708試合

タイトル歴
第29代SPZ世界王者
第33代SPZ世界王者
第37代SPZ世界王者
第41代SPZ世界王者
 (累計防衛回数 8回)

第9代SPZ世界タッグ王者
第12代SPZ世界タッグ王者(パートナーは伊達遥)
第16代SPZ世界タッグ王者(パートナーは新咲祐希子)
第20代SPZ世界タッグ王者
第24代SPZ世界タッグ王者(パートナーはガイア小早川)

EWA世界タッグ王者(パートナーは伊達遥)

第14回SPZクライマックス優勝

第10回SPZタッグリーグ優勝
第11回SPZタッグリーグ優勝(パートナーは新咲祐希子)
第14回SPZタッグリーグ優勝(パートナーはガイア小早川)

写真集 2冊

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今野取締役コメント:
草薙流格闘術の猛者として、SPZで存分に暴れていただき、実績では草薙みこと以上の結果を残したが、キャリアの前半から中盤まではあの絶対王者・吉田龍子に分が悪く、ファンの間からは長い間ナンバー2と見られていた。やはり第12回第13回SPZクライマックスの優勝決定戦で2年続けて吉田龍子に負けたのが後々まで響いた。

吉田龍子が引退後、ようやくSPZの大エースとして君臨したが、こんどは下の世代、S相羽菊池理宇ボンバー来島―の猛追にさらされ、実質的なスイレンの天下は1年少々だったのでめぐり合わせの悪い選手だった。けっきょくSPZクライマックスで優勝できたのは第14回の1回だけ。キャリアの終盤はビューティ市ヶ谷率いるお嬢様軍団に追い越されてしまった。実力は吉田龍子並みのものを持っていたとは思うのだが、返す返すもめぐり合わせが悪かった。引退後は実家のタクシー会社の電話番をしているらしい。

2007年10月26日 (金)

第242回 16年目12月 SPZ選手権 ビューティ市ヶ谷VSスターライト相羽

16年目12月

そして最終戦さいたまドーム大会。正面入り口の看板は・・

SPZ選手権試合 

王者:ビューティ市ヶ谷 VS 挑戦者:スターライト相羽

「えっと・・あの・・その・・今年最後なので・・・気合入れて・・・行きましょう」

試合前、伊達レフェリーが全選手に気合を入れる。

第1試合、成瀬唯(15期)対キューティー金井(12期)。
「関西弁の美少女レスラー」として実力はともかく人気上昇中の成瀬が「アイドルレスラー」キューティーと対決。しかしキューティーも先輩の意地で、だんだん投げ技で追い込んでいって、最後はフロントスープレックスで勝利。

第2試合はフレイア鏡(14期)対フォクシー真帆(14期)。

「うがああああ・・・」

「うふふふ、も~っと苦しみなさい、ふふふふ・・・」

同期だろうがまったく容赦なし。妖しい笑みを浮かべながらアキレス腱固め!何度かロープに逃げたがフレイア鏡のアキレス腱地獄は続く。ついに根負けしたフォクシー真帆はギブアップ。勝負タイム26分1秒の長い試合。後半は残虐ショーっぽかったが。

第3試合は氷室紫月(16期)対ドスカナ・リブレ。ドスカナのスピード感に氷室ついていけず、最後はローリングソバットに撃沈。勝負タイム10分59秒。

休憩明けの第4試合、ボンバー来島(11期)の登場に館内沸く。きょうは新人のラッキー内田(16期)と組んでエレン、ヘレンのニールセン一族と対戦という比較的楽なマッチメイク。しかしきょうは来島さんの調子があまりよくないのか、ニールセン一族の打撃に苦しむ。シャイニングウィザードまで食らってしまう。

ラッキー内田が懸命につなぐが、来島の動きが本調子でなく、エレン、ヘレンの猛攻にピンチの連続。エレンのステップキックで来島が「もうダメだ返せない」と思ったところまで追い込まれたが、ラッキー内田がカット成功。そのまま30分フルタイムドローとなった。

「来島さん、らしくなかったけど・・・大丈夫?・」
心配した今野役員が声をかける。
「カゼだよ、カゼ。頭で思ってた動きができなかっただけ」

第5試合はビーナス麗子、ギムレット美月の10期生タッグがデイジー・クライ、アンナ・クロフォード組と対戦。しかしデイジーとの蹴りあいに競り負けたのはビーナス麗子。11分16秒、ハイキックに撃沈。

セミ前はハイサスカラス対ナターシャ・ハンの最強外人対決。ナターシャがジリジリと押していって、最後はパイルドライバーからの片エビでフォール勝ちをスコア。

セミファイナルはロイヤル北条(13期)対芝田美紀(12期)。お嬢様軍団の同門対決でナンバー2争い。芝田が打撃で優位に立とうとするが、

「この技に耐えられるか?」
この日2度目のロイヤルスパイク発動。これで芝田を倒した。勝負タイム19分42秒。

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メインイベントのSPZ選手権、ビューティ市ヶ谷の挑戦者はスターライト相羽。B来島でもダメ芝田でもダメ、菊池は負傷欠場とあって、勝てないエース・スターライト相羽にチャンスがもう一度、回ってきた。もう一花咲かせることが出来るか、S相羽。

「最後の挑戦のつもりで頑張って来ますッ」

「オーホホホホホホホ、相羽・・・・さん。あなたもこの美しいわたくしの生贄になるのですわ!」

ここ数年のS相羽のヘタレっぷりは首都圏のファンはみんな知っている。せっかくスイレンを倒して新時代を開いたのに翌月に来島さんにベルトを奪われ、そこから再びベルトを巻くこともなく、芝田やR北条にも負けてトップグループから脱落しつつある。この日も市ヶ谷のラリアット攻めに防戦一方。

「ウワーーッ!」
それでもS相羽、ビューティ市ヶ谷の攻めをかいくぐってタイガースープレックスで見せ場を作る。そしてバックドロップ、キャプチュード、ハイキック!珍しい大技ラッシュを見せる。

―もう一度、ベルトを・・・巻くんだ・・・っ・・・

ビューティ市ヶ谷の顔から余裕の表情が消える。
だが、相羽の頑張りはここまでだった。
市ヶ谷の強烈パイルドライバー。相羽2.8で返すが起き上がれない・・・

「このわたくし相手に良く耐えたとほめて差し上げますわ!」
市ヶ谷、コーナー最上段によじ登る、まさか・・・
市ヶ谷が優雅に飛んだ。そして宙返り。
本邦初公開、ビューティ市ヶ谷のムーンサルト!

「プレミアものですよ!」
解説の上原今日子が叫ぶ。
ドーン。これはスターライト相羽返せず。
勝負タイム21分15秒、ビューティ市ヶ谷が4度目の防衛に成功。

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年末のプロレス大賞、MVPはビューティ市ヶ谷。当然の結果ですわねとのこと。最優秀新人は氷室紫月。シングルのベストバウトはビューティ市ヶ谷対ボンバー来島のSPZ戦、タッグのベストバウトは地方会場で組んだ特別試合、ボンバー来島、S相羽対ビューティ市ヶ谷、ロイヤル北条のタッグマッチが選ばれた。

しかしプロレス大賞の表彰会場にスターライト相羽の姿はなかった。

山形県の奥山。

「ボクはもう疲れた・・SPZ、辞めようかな・・・」

2007年10月25日 (木)

第241回 らきすた砲、結成

16年目12月
菊池理宇が右足首負傷で欠場。この選手は空中戦主体なのでどうしてもどこかを痛めてしまう。

新人のマッキー上戸をEWAへ海外遠征に出し、ラッキー内田を呼び戻した。今野役員が「内田選手のほうが固定ファンがつきそう」と発言したためだったらしい。このオッサン、ショートカット萌えなのか。

12月は一般ピープルがお金を持っているということで「ドーム興行5発実施」というむちゃくちゃなシリーズ。

第1戦札幌どさんこドームでは第4試合で

「ラ ッ キ ー 内 田 凱 旋 帰 国 試 合」

と題してラッキー内田対ドスカナ・リブレの一騎打ち。しかしAACの強豪、ドスカナは手ごわい。一方的に攻められてしまう。ラッキー内田もコブラツイストで懸命に反撃したが、最後はスタミナ切れを起こしたところをエルボーで一撃されて3カウントをとられてしまった。勝負タイム9分41秒。

―くっ、勝てなかった・・・

―フウ、ハア、アト2年モスレバ恐ロシイ存在ニナルダロウ・・・

、そして本部席では今野役員がほくそ笑んでいた。久々にSPZにニューヒロインが入ってきた。氷室さんとの2枚看板で売り出そう・・・・

どさんこドーム大メインは外国人選手同士のAAC選手権。王者デイジー・クライに挑むのはハイサスカラス。デイジーのケリまくりに追い込まれたハイサスカラスだったが、最後はフランケンシュタイナーで逆転勝利。勝負タイム24分10秒。ハイサスカラスがAACベルトを奪還した。

第3戦は大阪なにわパワフルドーム大会。第1試合は氷室紫月対アンナ・クロフォード。氷室もストレッチプラムを繰り出すなど健闘したが、最後はアンナのパイルドライバーに撃沈。勝負タイム18分15秒。

第4試合はボンバー来島、ラッキー内田対ハイサスカラス、ドスカナ・リブレ。だがやはりハイサスカラスにはいまの内田では太刀打ちできない。ムーンサルトで半失神まで追い込まれたが何とか来島にスイッチ。そのあとは来島さんが力まかせに攻め立て、最後はブレーンバスターの打ち合いを制してカウント3。

大阪大会メインはEWA選手権。王者ナターシャ・ハンに挑むのはビーナス麗子。前シリーズのタッグリーグでの奮闘が評価されたのと、EWAサイドが「ビーナスかギムレットじゃなきゃヤダ、ベルトを持ってかれると困る」と申し出てきたのである。

「麗子ちゃん、いつもいつもトップ外人相手のタイトル戦の相手させて悪いねえ」
さすがにマッチメイクする今野役員にも罪悪感はあるらしい。

「あら、社長には感謝してますよ、ナニワドームのメインでシングルでやれるんですから、レスラー冥利に尽きますよ。それに、私、勝つつもりでやりますし。」

ビーナス麗子もすきあらば打撃でペースを作ろうとするのだがナターシャもEWAトップだけあって容赦のない関節攻め。

がすっ!

ビーナス麗子のハイキックにナターシャがキレた。コマンドサンボ仕込の変形ドラゴンスリーパー。これでビーナス麗子失神。あわてで伊達レフェリーが試合を止めた。館内悲鳴。勝負タイム13分7秒。

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第4戦広島大会メインは久々開催のあばしりタッグ選手権、エレン、ヘレンのニールセン一族チャンプに挑むのはスターライト相羽、ラッキー内田組。
「ええ、デビュー7ヶ月でタイトル挑戦させちゃうんですか?無茶ですよ、いくら喫茶店ベルトとはいえ」
井上霧子社長代行が驚愕。

「これも試練だ。内田さんが3年後くらいに大成してもらうために」

「なんで、ボクが、いまさらあばしり・・・」

スターライト相羽は複雑な表情。いくら力が落ちてきたとはいえSPZシングル・SPZタッグの戴冠経験のある自分が格下の中堅タッグベルトにいまさら挑戦・・・

「相羽さん、わるいんだけど内田さんとタッグ組んであばしりに挑戦してねん」

ーボクは、そこまで会社に信頼されてないのか。ああもう、みんな叩き潰してやるっ。

しかしスターライト相羽、二流外人のエレンにも打撃技で攻め込まれるありさま。SPZ本隊エースとは思えない動き。

―アイバをタタキツブセバ、ウチダがデテクル。ソコヲ一気に潰ス。
試合は外人組の作戦通りの展開になった。

ーなんとしても受けきって、相羽さんにつなぐ・・・

しかしラッキー内田もうまく戦って、セオリー通りある程度戦ったら深追いせず、パートナーの相羽にタッチする戦法を守る。なかなか新人はこれができない。ヘレンの打撃技、DDTをしのいでコブラツイストで反撃して相羽につなぐ。これにはスターライト相羽も燃えた。

―内田さん、よく見ておいて、これでボクはトップを張ってきたんだ!

スターライト相羽、バックに回って、すばやく腕をフックし、
タイガースープレックス!これでヘレンは3カウントを奪われた。勝負タイム24分34秒。

ドオオオオオ!

まだ16歳になったばかりのラッキー内田があばしりタッグ王座戴冠。
「内田さん、おめでとう」
氷室がラッキー内田の腰にあばしりベルトを巻く。

2007年10月24日 (水)

第240回 ボンバー来島の咆哮

16年目11月 SPZタッグリーグ戦

最終戦、地元に戻って横スペ大会。消化試合にもかかわらず超満員となった。

第1試合はマッキー上戸対フォクシー真帆。
―来年はあたしもタッグリーグに出るんだ!
同期、氷室の懸命のファイトに触発されたのか上戸がハッスル。しかしパワー勝負ならフォクシー真帆のほうがまだ上。ド迫力のパワーボムで終了。

第2試合はキューティー金井対成瀬唯。

「もう逃げられへん!」
成瀬、気合のこもったストレッチプラム。懸命にロープに逃れる金井、今シリーズ、氷室のがんばりが若手に大きな刺激を与えている。打たれ弱い成瀬だがこの日は金井相手に互角の好ファイト。ステップキックでカウント2.8、スクラップバスターでカウント2.9までキューティーを追い込むが、キューティーがノーザンで逆転勝利。第2試合から24分23秒の激闘。

「ちく・・しょう。」

第3試合からリーグ戦最終日の公式戦4試合。
ナターシャ、アンナ○(8点、合体パイルドライバーからの片エビ固め 24.26)芝田、F鏡×(8点)

勝てば10点の芝田組だったが、EWA組が好連携を見せる。ナターシャが延々とアキレス腱固め。芝田、なんとかフレイア鏡のカットに救われたが足が動かなくなった。終盤、フレイア対アンナの一騎打ちとなったが最後は合体パイルを決めたEWA組に凱歌。この試合も24分の大激戦。会場は盛り上がった。

デイジー、ヘレン○(6点、ラリアットからの片エビ固め 14.44)G美月×、氷室(2点)

「ヒムロ?まだ15歳なんだろ、叩き潰してやる。」
デイジー・クライの容赦ない攻め。氷室懸命に耐える。客席からは「人でなし」という声があがるほど、懸命に耐えてショルダータックルで反撃したがそこまで、あとは場外でのびてしまい、孤立したギムレットがやられてしまうパターン。それでも客席は沸いた。14期15期と有望な新人が出なくて、ファンは新しい血に飢えていたのか。

S相羽、V麗子○(10点、バックドロップからの片エビ固め 10.30)ドスカナ、イレーヌ×(0点)
このカードなら相羽組が断然有利。順調に押し込んでイレーヌを仕留めた。相羽組、なんとか10点を挙げたが、パートナーのビーナス麗子の奮闘が光った。

菊池、来島○(10点、パワーボムからのエビ固め 24.02)B市ヶ谷×、R北条(12点)

消化試合だが最終戦メインカードはこれしかない。来島と市ヶ谷は相変わらずの大迫力バトル。しかしDDT2連発で市ヶ谷が優位に立つ。流れを変えたのが菊池のムーンサルト。しかし菊池も代わった来島にビューティボム!菊池が懸命のファイト、ミサイルキック乱打。

終盤は4人が入り乱れる超絶バトルが展開される。最後は菊池のダイビングプレスが市ヶ谷に命中!直後フォールはロイヤル北条がカットしたものの、菊池がロイヤル北条を場外へ連れ出し、

「ウォオオオオオオ」

来島がグロッキー状態の市ヶ谷を高々と抱え上げパワーボム!これでカウント3が入った。24分2秒の大激闘。試合後は4人とも大の字となった。

優勝を決めながら最終戦でフォール負けを喫したビューティ市ヶ谷はメイン終了後の表彰式をボイコット。控室ではかなり荒れたようだ。賞金と賞状、副賞の「エルメスバッグ」はロイヤル北条が2人分受け取った。

2位は10点で菊池来島と相羽組が並んだが、直接対決で勝っている菊池・B来島組が準優勝扱いになり、賞状と副賞の「ももかん」を受け取った。
試合後の控え室。
ぱか。
菊池、来島、吉田コーチの3人がももかんを貪り食いながら残念会を行った。

2007年10月23日 (火)

第239回 This is the future

16年目11月 SPZタッグリーグ戦:中編

あらすじ:横浜戸塚に自社ビルを3つ構えるお嬢様プロレス団体「スーパースターズプロレスリング・ゼット(略称SPZ)」恒例のタッグリーグ戦を開催。しかし優勝候補筆頭のボンバー来島・菊池理宇組が開幕2連敗という大波乱。いっぽう、菊池来島のキラーマシン軍、頼りない本隊エースのS相羽ちゃんを差し置いてSPZの一大勢力になってしまったビューティ市ヶ谷率いるお嬢様軍団(カッコイイ軍団名を検討中です)は市ヶ谷組、芝田組ともに快進撃。SPZの勢力図が塗り替えられようとしている・・・

第5戦宇都宮大会。
ナターシャ○、アンナ(6点、パイルドライバーからの片エビ固め 12.25)G美月×、氷室(2点)

氷室紫月の試練は続く。この日もナターシャのSTFで早々の戦線離脱。残ったギムレット美月、ひとりでEWAの猛者二人を相手に出来るわけなく力尽きた。

デイジー○、ヘレン(2点、ハイキックからの片エビ固め 8.17)ドスカナ、イレーヌ×(0点)

EWAのデイジー組がようやく初勝利。怖いキックのおねえさんデイジーが本領発揮。

B市ヶ谷○、R北条(8点、デスバレーからの片エビ固め12.6)芝田、F鏡×(6点)

お嬢様軍団の同門対決。互いに3連勝して激突。しかしB市ヶ谷が冷静にひとり格落ちのフレイアを仕留めた。やはり優勝のためには弱いほうを狙わないといけないと感じたのか。

菊池、来島○(4点、STOからの片エビ固め 15.01)S相羽、V麗子×(4点)
最近のキラーマシン軍は来島さんが相手に大ダメージを与えて、菊池がトドメを刺すパターンが多い、が、今日は先発来島が大暴れ。本隊エース(のはず)スターライト相羽をまったく寄せ付けない。

「おうらあああ!」

代わったビーナス麗子にも猛攻をしかけSTOで幕。菊池、きょうは顔見世程度のファイト。

「さあ仕事は終わった!餃子食いにいくぞーー!」

第6戦は群馬大会。
デイジー○、ヘレン(4点、ハイキックからの片エビ固め 12.06)ナターシャ、アンナ×(6点)

「最後のお祈りは済んだか?」

EWA勢どうしの対決は怖いキックのおねえさん・デイジーのケリが猛威。アンナをのしてしまった。ナターシャ組、優勝争いから後退する痛い2敗目。

S相羽、V麗子○(6点、ハイキックからの片エビ固め20.1)芝田、F鏡×(6点)

「相羽ガンガンいけよ!そんなもんじゃないだろう!」

客席からは痛烈なヤジも飛ぶ。が、時の流れなのか不調なのか、芝田の打撃技についていけない。なんとかタイガースープレックスで反撃したがあとはリング下でうずくまるだけ。

そして芝田対ビーナス麗子の局面。ビーナス麗子も裏投げを繰り出すなど、芝田美紀相手に大いに健闘した。が、芝田にボコボコにされたあげく新鋭のフレイアにも攻め込まれる。スクラップバスターでカウント2.9まで追い込まれる。
しかしビーナス麗子が先輩の意地を見せた。

がすっ!

組み付こうとするフレイア鏡に、みごとなハイキック一閃。これがフレイアの戦意を不稼動に追いやった。そしてカウント3、大逆転。

「勝ったよーーーーー」
ものすごい麗子コール。

B市ヶ谷○、R北条(10点、フィッシャーマンバスターからの片エビ固め10.41)G美月×、氷室(2点)

「まあ今日は安パイですわね」
ビューティ市ヶ谷が氷室にトップ選手の洗礼を浴びせる。えぐいパイルドライバーで氷室を潰す。なんとかカウント2.8で返した氷室だったがもう戦う力なく、ギムレット美月にタッチ。あとは市ヶ谷、ギムレット美月をあっさり処刑。これで無傷の5連勝。

菊池○、来島(6点、タイガードライバーからのエビ固め 12.55)ドスカナ、イレーヌ(0点)

「まあ今日は安パイだよな」
来島さんが落ち着いて闘ってAACの二人を追い込んで、最後は「炎のクローザー」菊池登場。タイガードライバーで3勝目。時すでに遅し・・の感はあるが、ようやくチャンピオンチームにエンジンがかかってきた。

第7戦千葉大会。

芝田○、F鏡(8点、ダイヤモンドキックからの片エビ固め 23.39)デイジー×、ヘレン(4点)

「芝田様~!」
会場の女性ファンからものすごい声援が。きょうはEWAのデイジー組と力のこもった好勝負を展開。デイジーのパワーに手こずった芝田だが、パートナーのフレイア鏡がストレッチプラムで大ダメージを与えて流れを引き寄せるナイスフォロー。

「はっ!」

最後は芝田が延髄斬り(ダイヤモンドキックと命名)でデイジーを倒して、23分の激闘に勝利。場内ものすごい芝田コール。

B市ヶ谷○、R北条(12点、ニーリフトからの片エビ固め 9.47)ドスカナ×、イレーヌ(0点)

「さっさと決めてきますわ!」
勝てば最終戦を待たずして優勝の市ヶ谷組。といっても結果はこのカードでは見えていた。前の試合でお嬢様軍団が盛り上げたため市ヶ谷もじつに気持ちよくファイト。AAC組を追い込んで最後はニーリフトでドスカナから3カウント、

「オーッホッホッホッホ!まあ当然の結果ですわーーーー」

お嬢様軍団、2年連続の優勝!投げ込まれる紙テープ。ビューティ市ヶ谷とR北条はリング上でがっちり握手。

S相羽、V麗子○(8点、ジャンピングニーからの片エビ固め15.54)ナターシャ×、アンナ(6点)

幕張大会のセミメインは消化試合と化した。頼りないエース・スターライト相羽が今日はEWA軍と対戦。ナターシャの関節地獄に苦しみ悲鳴をあげまくる相羽だったが、どうにか振り切ってビーナス麗子につなぐ。

「私だって、やるときはやるんだからっ!」

ここでビーナス麗子が予想外の大ハッスル。なんとハイキック、ジャンピングニーと恐ろしいまでの猛攻を見せ、EWA最強のナターシャからまさかの3カウントを奪取。

その瞬間、幕張が燃えた。ウォオオオオオオ!

「勝ったーーー!!」

コーナーに上がって両手を突き上げるビーナス麗子、とどろき渡る歓声。

「麗子―!、お前がエースだ!」

会場からはそんな声も。スターライト相羽は赤コーナーで座り込んでいた・・・

菊池○、来島(8点、ムーンサルトプレスからの体固め 12.10)G美月、氷室×(2点)

盛り上がった幕張大会、メインイベントで菊池来島登場。SPZの未来、氷室紫月が懸命のファイトを展開するも岩のような身体の来島さんには通じない。やすやすとはじき返される。そして来島さんならではの重量感あふれる攻撃。

「うっ・・・くっ・・・」

倒れこむ氷室紫月。氷室への声援が凄い。

「んじゃ、あと頼む」

満場のヒムロコールの中、満を持してクローザー菊池登場。かっこよくムーンサルトで決めた。チャンピオンチームの厚い壁にはじき返された氷室だが、いつの日かさなぎは蝶へと、そして羽ばたくことを予感させるファイトだった。This is the future!

2024.11.22幕張。ここ数年のSPZの首都圏興行の中で空前の盛り上がりを見せた。タッグマッチ4連発、いずれも見ごたえのあるいい試合だった。

「いいプロレスの興行だったよ」
「優勝はできませんでしたが、きょうはプロレスしてて楽しかったです。明日は市ヶ谷選手に恥をかかせます。負けて賞金を受け取るシーンを見せたいです」
菊池来島は笑顔でコメント。

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筆者より。月・火と黒部峡谷へ山ごもりに行っていたので月曜日の連載はお休みさせていただきました。

2007年10月21日 (日)

第238回 16年目11月 SPZタッグリーグ戦

16年目11月、恒例のSPZタッグリーグ戦。参加チームは以下の8チーム。

菊池理宇、ボンバー来島(SPZタッグ王者)

ビューティ市ヶ谷、ロイヤル北条(前回優勝)

芝田美紀、フレイア鏡(お嬢様軍団2)

スターライト相羽、ビーナス麗子(本隊代表)

ギムレット美月、氷室紫月(選手会長&期待の新人)

ナターシャ・ハン、アンナ・クロフォード(元SPZタッグ王者)

デイジー・クライ、ヘレン・ニールセン、(EWA代表)

ドスカナ・リブレ、イレーヌ・シウバ(AAC代表)

2戦目の岩手大会からリーグ戦スタート。

G美月○、氷室(2点、カカト落としからの片エビ固め 13.0)ドスカナ×、イレーヌ

「これも運命だ。全敗でいいから、タッグリーグ戦でもまれてきなさい」

今野役員は数年後を見越して、新人の氷室をタッグリーグに出した。当然相手チームに狙われる氷室。しかし、どうにか粘ってギムレットにつなぐ。ギムレット美月はいつもの落ち着いた戦いぶりを見せて、最後はカカト落としでドスカナを沈めた。これで氷室、うれしいリーグ戦初勝利。

S相羽○、V麗子(2点、DDTからの片エビ固め 16.40)デイジー、ヘレン×

SPZ本隊とEWAの激突。スターライト相羽の動きに往時の切れがなく苦戦を強いられたがなんとかヘレンをDDTで振りきった。

B市ヶ谷○、R北条(2点、デスバレーからの片エビ固め11.06)ナターシャ、アンナ×

最強お嬢様コンビが2連覇へ好発進。市ヶ谷がナターシャとアンナをたたきのめした。

芝田、○F鏡、(2点、アキレス腱固め20.07)B来島、菊池×

タッグ王者チームまさかの敗戦。ボンバー来島が芝田美紀をいつものパワー殺法で痛めつけ、あとは菊池が料理するだけだったのだが、伏兵・デビュー3年目のフレイア鏡がストレッチプラム、アキレス腱固めと関節技のオンパレードで菊池を追い込む!

「・・・・うわああっ!」

「ふふふふ、菊池・・・さん、もっとよ、もっと苦しみなさい!」
これで菊池は足の痛みに耐えかね、ギブアップしてしまった。

「ごめんッ、来島さん・・・」

SPZタッグ王者V10チームがまさかの黒星発進。

翌日は山形大会。
芝田、F鏡○(4点、合体パワーボムからのエビ固め18.47)ドスカナ、イレーヌ×(0点)

優勝候補筆頭の来島組を破って、意気上がるお嬢様チームがAAC軍を追い詰めて最後は合体パワーボムがズバリ。

S相羽、V麗子○(4点、キャプチュード 11.17)G美月、氷室×(2点)

スターライト相羽、のっけからタイガースープレックスを氷室に仕掛けてトップ戦線の厳しさを叩き込む。そしてビーナス麗子も続いてキャプチュード。これで氷室撃沈。本隊チーム2連勝。ひょっとする・・・のか?

B市ヶ谷○、R北条(4点、ダブルラリアットからの片エビ固め 15分くらい)デイジー×、ヘレン(0点)

市ヶ谷組も2連勝。EWAの強豪にも正攻法で撃破。

○ナターシャ、アンナ(2点、STF 12.38)菊池、B来島×(0点)

まさかの敗戦から一夜明けても王者組は落ち込んではいなかった。
「クヨクヨしたって仕方ないです、次頑張ります」

「さっさと叩き潰してメシ食いに行こうぜ!」

いつも通りのボンバー来島の暴れっぷりにアンナは早々に戦線離脱。残るナターシャ・ハンも快調にヘッドバットなどで追い込んでいって一丁上がりかと思われたが、最後に大どんでん返し。

「ウフフフ・・・これで終わり」
ナターシャ・ハンの必殺STFが!ボンバー来島の首が曲がってゆく!今まで防戦一方だったのは来島さんを油断させる罠だったのか!

「あ、あぶない!」

菊池のカットはアンナが場外から足を押さえて阻まれた。そのまま来島さんが脱出不能STFのえじきになってゆく。

「くそ・・・ギブアップ」

えええええええええええ!
タッグ王者V10チームがまさかの2連敗。これで優勝は絶望的となった。

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翌日は茨城大会。
芝田○、F鏡(6点、合体パワーボムからのエビ固め14.24)G美月、氷室×(2点)

新人氷室に芝田のきつーい延髄の洗礼。
ぐったりと横たわる氷室、これはギムレットがカットしたが続く合体パワーボムで終了。芝田組は3連勝。

ナターシャ○、アンナ(4点、STF 10.52)ドスカナ、イレーヌ×(0点)

EWAチームが2勝目を挙げた。2日連続で必殺STFが猛威。

B市ヶ谷○、R北条(6点、フィッシャーマンバスターからの片エビ固め 23.13)S相羽×、V麗子(4点)

2連勝同士、お嬢様軍と本隊の激突。しかしエースの相羽の動きに切れがなく、ロイヤルスパイクを食らってしまう。ビーナス麗子がキックで奮闘するが、お嬢様軍の2人に追い込まれていって潰される。最後は相羽を捕らえた市ヶ谷がフィッシャーマンバスターでフォール勝ち。

「オーホホホホホ!優勝は決まったも同然ですわ!!」

B来島、菊池○(2点、ダイビングプレスからの体固め 13.24)デイジー、ヘレン×(0点)

「お前らなにやっとんだ!」

まさかの開幕2連敗に、吉田コーチの怒声が飛ぶ。

「・・・・・」

来島菊池のショックもありあり。吉田龍子もまずいなと感じたのか、
まあ、相手あってのプロレスだから思い通りにいかんこともあるわな。もう優勝は厳しいから、ももかん(準優勝の副賞)目当てに頑張ってこい。3人でももかん食おう。」
この言葉に奮起?した菊池来島、いつもどおりのレスリングを見せ、来島痛めつけーの、菊池トドメ刺しーので初白星。しかし菊池のダイビングプレスはいつ見ても大空に羽ばたく鳥のようで、美しい。

3試合を消化して、市ヶ谷組と芝田組が3連勝でトップ。このままお嬢様軍団がワンツーフィニッシュしてしまうのか。(続く)

2007年10月20日 (土)

第237回 16年目10月 菊池来島タッグV10

16年目9月

「秋のウルトラバトルシリーズ」開幕。前半は四国各県を回る。
新人の氷室紫月がメインで戦う機会も増えてきた。3戦目の徳島大会でボンバー来島、菊池理宇と組んで「お嬢様軍団」ビューティ市ヶ谷、ロイヤル北条、フレイア鏡と対決。

バシッ!

氷室、ビューティ市ヶ谷のラリアットを食らってしまうも逆片エビで反撃、そして菊池につなぐ。最後は菊池のダイビングプレスがフレイアに命中。カウント3を奪った。

5戦目岡山大会でSPZタッグ戦。菊池来島に挑むのはEWAのナターシャ・ハン、アリス・スミルノフのロシアンコンビ。菊池がナターシャのスリーパー攻勢に苦しんだが、代わって出てきたボンバー来島強い。ロシア人2人を蹴散らす蹴散らす。ならばとナターシャ、STFで勝負をかけるも来島ムリヤリ振りほどく。そしてー

「気持ちよく眠らせてやるぜー」
ナパームラリアット炸裂。EWAの女帝からこれで3カウント奪取。勝負タイム24分52秒。王者組が9度目の防衛に成功。

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SPZ世界タッグ戦

菊池理宇、○ボンバー来島(24分52秒、ナパームラリアットからの片エビ固め)ナターシャ・ハン× アリス・スミルノフ

王者組みが9度目の防衛に成功

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第7戦新潟大会ではAAC選手権。王者デイジー・クライに挑むのは10期生のギムレット美月。ビーナス麗子やギムレット美月はこんな使われ方ばかりされている。

「まあ、やるしかありませんね・・」

しかし、この試合はデイジーが打撃技で押しまくり、最後もハイキックでギムレットを仕留めた。勝負タイム16分49秒。

最終戦さいたまドーム大会、SPZ王者ビューティ市ヶ谷に挑むのは同じお嬢様軍団の芝田美紀。SPZクライマックス準優勝の実績が評価された。

市ヶ谷、走りこんでいきなりラリアットの構え。しかし芝田、巧みに身をかがめてかわしラリアットで反撃。その後も市ヶ谷の力技をことごとく読みきって打撃で痛打を与えてゆくが、市ヶ谷様、ビューティボムで形勢逆転。あとは一方的な市ヶ谷様のペース。ミサイルキック、裏拳で攻め立てる。パイルドライバーで芝田カウント2.8まで追い込まれる。フィニッシュはミサイルキックだった。
「ホーホホホホ!私に勝とうなんて100万年早いですわ!」
勝負タイム28分47秒、またも市ヶ谷の高笑いが響く。王者が3度目の防衛に成功。

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SPZ世界選手権(60分1本勝負)

ビューティ市ヶ谷(28分47秒、ミサイルキックからの片エビ固め)芝田美紀

第43代王者が3度目の防衛に成功

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16年目10月。

「写真集?まったく今更ですの?本来なら私がこの団体に入ったときにすぐオファーを入れるのが常識だというのに・・・」

ビューティ市ヶ谷ファースト写真集「RABBIT」発売。SPZ世界王者にして最凶のお嬢様がまさかの写真集発売。ファンの間は驚きに包まれた。

10月シリーズ「レッドフラクションシリーズ」開催。売り出し中の新人・氷室紫月は今シリーズも菊池来島と組んでメインに顔を出す。
「壊レナサイ・・・」
第2戦島根大会、ナターシャ・ハンの強烈STFで氷室、ギブアップ負け。それでも観客は氷室の奮闘に拍手を送った。

4戦目高岡大会、氷室はこの日も地元凱旋とあってメイン起用。菊池理宇、ボンバー来島と組んで、スターライト相羽、ビーナス麗子、ギムレット美月と対戦。

「来島さんは厄介ですから、氷室さんが出てきたら即つぶしましょう」
しかし氷室もデビューして半年がたち、ある程度耐える力をつけてきているので、粘って来島にタッチ。試合は地方会場ということで派手な場外乱戦をギムレット美月が仕掛けた。場外ドラゴンカベルに菊池が燃えた。なんと場外裏投げ。これでギムレット美月グロッギー状態。あとは菊池がリング上に戻してエルボーで仕留めた。

シリーズ最終戦は新日本ドーム大会。市ヶ谷様不在でも超満員札止めの観衆を集めた。

第1試合は成瀬唯対マッキー上戸。なんとマッキーが一気の攻め。ボディスラムで力強く投げてゆく。しかし成瀬も上戸の攻め疲れを待って猛反撃。タイミングよく組み付いてDDT。第1試合から盛り上がった。しかし最後はマッキー上戸、ブレーンバスター2連発。先輩からフォール勝ちを収めた。勝負タイム14分29秒。

第2試合はフォクシー真帆対キューティー金井。2期先輩のキューティーが意地を見せ、11分19秒、バックドロップで勝利。

第3試合はフレイア鏡対へレン・ニールセン。ヘレンの打撃が冴え、最後はフロントスープレックスで鏡をたたきつけて3カウント奪取。その試合が終わると休憩。

休憩明けの第4試合、ビーナス麗子、氷室紫月対アンナ・クロフォード、アリス・スミルノフのタッグマッチ。しかしEWAのアリス・スミルノフ、ノリノリで闘い、まずビーナス麗子をバックドロップで戦闘不能にした後、氷室には激しいラリアット。これで氷室撃沈。

セミ前はロイヤル北条対ハイサスカラス。菊池を破るなどSPZでも上位に食い込んできたハイサスカラス、きょうはAAC最強のハイサスカラスとノンタイトルで対戦。
「あなたよくがんばったわ、でもこれまでね」
ハイサスカラスのムーンサルトをなんとか2.5で返す北条。そしてロイヤルスパイクで反撃。ハイサスカラスをカウント2.5まで追い込んでー

グシャッ!
カカト落とし炸裂。なんとロイヤル北条が15分42秒、ハイサスカラスに勝ってしまった。

セミファイナルは芝田美紀対ナターシャ・ハン。いまやキラーマシン軍にかわってSPZの最大勢力となったお嬢様軍団の副将が登場。なんとナターシャ・ハンにほとんど攻め手を与えず打撃技で流れを変えつつ最後はノーザンで勝ってしまった。市ヶ谷がいなくてもお嬢様軍団恐るべし。

メインイベントはSPZタッグ戦。

キラーマシン軍の菊池理宇、ボンバー来島対「本隊(ヘボ)エース」スターライト相羽、ギムレット美月のタッグが挑む。スターライト相羽のパートナーがギムレットなのは菊池の極め技絞め技対応の甘さを見越しての起用。

菊池のテーマ「THROUGH THE FIRE」がかかる中、ベルトを巻いた王者組が入場。
「今日の犠牲者はどこのどいつだ!」

そして試合が始まるや来島さんのパワーが爆発。

「ウワーーッ!」

来島のタックルに派手に吹っ飛ぶスターライト相羽。そしてヘッドバット。鼻で受けてしまったのでスターライト相羽流血。

「・・・・・・・・・・・・・・・・!!」

これで相羽、闘志に火がついたのかタイガースープレックスで来島さんのガタイをブン投げる。

ーこういうファイトを連日見せてくれれば今頃スイレン並みの大エースになれたものを・・

本部席で吉田龍子が頭を抱える。

「菊池、すまねえ、しばらく頼んだ・・・」

これで両者大ダメージを負い菊池対ギムレット美月の局面。ギムレットのアキレス腱固めで会場沸いたが菊池なんとかロープへ。

そのあと菊池がダメージの回復した来島を呼び込んで合体パイル。これでギムレットも昏倒し、相羽にはいずりながらタッチ。しかしタッチを受けたS相羽が簡単につかまり来島のパワーボムで終了。28分17秒、王者組が前人未到のタッグV10達成。

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SPZ世界タッグ選手権

菊池理宇、ボンバー来島○(28分17秒、パワーボムからのエビ固め)スターライト相羽×、ギムレット美月

王者組が10度目の防衛に成功。

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「V10、おめでとーーー!!」

井上霧子社長代行がタッグ王者の二人にビールをかける。偉業といっていいだろう。タッグベルトを10回連続防衛。来島さんが暴れ回って菊池がつなぐ。守勢に回ってもお互い耐久力が強いので簡単には沈まない。SPZ史上ベストタッグの呼び声も高い。

「この調子で来月のタッグリーグも取るぜ!賞金けっこー馬鹿になんねえしな!」

2007年10月19日 (金)

SPZスター選手列伝 016 新咲祐希子

新咲祐希子

SPZ6期生 従業員コード:016

1999年3月2日、山口県下関市出身、2014年5月7日、高知体育館の対渡辺智美戦でデビュー。デビュー戦を白星で飾る。AACで海外武者修行を行い、2015年11月の凱旋帰国後は吉田龍子とタッグを組んでSPZタッグ王者にも輝く。

トップに立つために受け身の取りづらい高速ジャーマンを編み出し、SPZ世界王者に4度輝く。得意技は高速ジャーマン、シャイニングウィザード。

2022年10月22日、新日本ドーム大会でのハイブリッド南戦で引退。稼動月数102ヶ月。出場試合数(推定)728試合。

タイトル歴
第22代SPZ世界王者
第26代SPZ世界王者
第32代SPZ世界王者
第36代SPZ世界王者

累計防衛回数:0回

第3代SPZ世界タッグ王者(パートナーは吉田龍子)
第16代SPZ世界タッグ王者(パートナーはスイレン草薙)
第21代SPZ世界タッグ王者(パートナーはスターライト相羽)

第7回SPZタッグリーグ優勝(パートナーは吉田龍子)
第10回・第11回SPZタッグリーグ優勝(パートナーはスイレン草薙)

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今野取締役コメント
6期生で入門し、高速ジャーマンやシャイニングウィザードなどの躍動感あふれるプロレスを得意とするかなりの実力者だったのだが、吉田龍子の影に完全に隠れてしまった感がある。ハイブリッド南にはめっぽう強く、4度のSPZベルト戴冠はすべてハイブリッド南を破ってのものだが、永沢舞やスイレン草薙といった無心で投げまくってくる選手に弱く、4回もベルトを巻いたのに1度も防衛できなかったという記録?も持っている。
タッグ戦戦での活躍もめざましく、誰がパートナーでもきっちり結果を残したのはさすがである。吉田引退後はさすがに息切れしてしまったのか、ハイブリッド南と同時引退となった。いまは大食いタレントに転進し、グルメリポーターでそこそこ活躍しているらしい。

2007年10月18日 (木)

SPZスター選手列伝 015 ハイブリッド南

SPZスター選手列伝15

ハイブリッド南
SPZ6期生 従業員コード:015

1999年3月1日、高知県高知市出身。姉は元SPZ王者で「関節のヴィーナス」南利美。本人いわく「姉をいたぶる連中に復讐するため」SPZ入り。

2014年4月10日、釧路アリーナ大会の対ミシェール滝戦でデビュー。姉譲りの関節技で実力は急上昇。ついには南利美とのタッグでEWAタッグベルト、SPZタッグベルトを戴冠。南利美の引退後は革命軍を結成し、吉田龍子の首を付け狙い、SPZ王座に5度輝くなどSPZのトップ戦線で大いに暴れ回る。得意技はネオ・サザンクロスロック(変形STF)

2022年10月22日、新日本ドーム大会での新咲祐希子戦で引退。
稼動月数103ヶ月。出場試合数(推定)728試合。

タイトル歴
第21代SPZ世界王者
第25代SPZ世界王者
第28代SPZ世界王者
第31代SPZ世界王者
第35代SPZ世界王者
(累計防衛回数 10回)

第5代SPZ世界タッグ王者(パートナーは南利美)
第13代・18代SPZ世界タッグ王者(パートナーはマイトス香澄)
EWA世界タッグ王者(パートナーは南利美)
第8回・第9回SPZタッグリーグ 優勝(パートナーは上原今日子)
写真集 1冊

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今野取締役コメント:

南利美の妹で運動センスは姉以上のものがあったので迷わず6年目開始と同時にスカウトに走った。若手の頃は伸び悩んでいた時期があったが、南利美の引退直前から大ブレイクし、第8回SPZクライマックスであわや初出場初優勝かというところまで行って、南利美の引退シリーズでついに姉妹でのタッグベルト奪取をなしとげた。

1期上の絶対王者・吉田龍子に「勝てる可能性のある唯一の選手」だったが、それでもリング中央でネオサザンなどの痛め技が決まればという条件でのことだった。それでもシングル王座に5回も輝いたのだから大したものである。だがやはりシングル戦の勝率に関しては吉田ほど高くはなく、SPZクライマックスでは毎回優勝争いに絡むものの、けっきょく1度も優勝できずに終わった。吉田龍子のライバル的存在として、1期生のいなくなったSPZを大いに盛り上げていただいたと思う。吉田のあとを追い続けたハイブリッド南、吉田引退後はやはり動きが落ち、吉田の引退から7ヵ月後に、新咲と同時引退となった。引退後は郷里の高知に帰って実家の手伝いをしているらしい。

2007年10月17日 (水)

第236回 スイレン草薙最後の戦い

16年目 8月 SPZクライマックス(続き)

第7戦は名古屋しゃちほこドーム大会。

菊池(6点、ムーンサルトプレスからの体固め 13.44)S草薙(2点)
シード権確保のためにはこれ以上負けられない菊池、しかし菊池はいままでスイレンにシングルで勝ったことはない。そして勝つチャンスは今日しかない。スイレンの極め技絞め技に苦しんだものの・・・

「あたしが勝つんだから!」
ムーンサルト2連発。菊池これでスイレンに初めて勝った。
「今日は菊池選手の執念に負けました」

試合後のスイレンの表情はさっぱりとしていた。

B来島(11点、ジャーマンSH 8.54)V麗子(0点)

順当に来島さんが勝った。今シリーズの来島さんはフィニッシュにジャーマンを多用。対市ヶ谷用に決め技を複数持とうと考えているのか・・・

芝田(9点、リバーススープレックスからの体固め 18.14)S相羽(6点)

予選会のときと同じく芝田が延髄などで優位に立つ。相羽もタイガースープレックスなどで懸命に反撃するが、芝田の裏拳でぐったり。しかし相羽諦めずデスバレーでぐらつかせて裏拳のお返し。これで芝田の動きが止まった。パイルドライバー、サソリ固めで最後の猛攻、あと一歩で芝田をつぶせるところまで来たかに思われたが、

「うおおおおおお!」
スターライト相羽、最後はパワーボムか何か大技を狙ったところを根負けしてリバースに切り返され3カウントを聞いた。

B市ヶ谷(10点、ミサイルキックからの片エビ固め 14.15)R北条(4点)

お嬢様軍団の同門対決。ビューティ市ヶ谷が余裕を持って攻め込んでゆく。ロイヤル北条も「スパイク」を2回も繰り出すなど健闘したが、最後は市ヶ谷のミサイルキックに力尽きた。
これで優勝の行方は最終戦で組まれている一騎打ち、ボンバー来島(10点)とビューティ市ヶ谷(11点)の勝ったほうとなった。引き分けの場合は1点差でボンバー来島が優勝となる。

「30分逃げ切り?あたし器用じゃないから、んなの狙ってできるもんじゃないよ。いつもどおり叩き潰しにいくだけさあ」

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そして最終戦横スペ大会。休憩明けに場内にアナウンスが流れた!

次の試合に登場するスイレン草薙選手はこの試合が最後のファイトとなります。ファンの皆様よりいっそうのご声援をお願いいたします。

ドワアアアア!

「オリエンタルクラッシュ2」がかかる中、スイレン草薙が最後のリングへ向かう。

最後まで「草薙みことのコピー」という風評がささやかれていたが、実力では元祖を越えていた。とくに関節技絞め技では本家より上であった。SPZ王者としての連続防衛回数7回は吉田龍子15、伊達遥10に次ぐ記録である。吉田龍子と演じたSPZクライマックスの死闘は記憶に新しい。

最終戦の相手は12期生「お嬢様軍団」の芝田美紀。勝てない相手ではないが、今シリーズのスイレンはここまでリーグ戦1勝5敗と絶不調である。

「赤コーナー、山形県寒河江市出身、すいれんー、くさなぎー!」

村越リングアナが最後のコール。リングには白い紙テープが乱舞乱舞。

「レフェリー、井上霧子」

ー最後だから思いっきり暴れなさいよ。

カンッ!

午後7時15分、スイレン草薙の最後の戦いが始まった。

「はあっ!」

スイレン草薙、DDTで優位に立ち、
「これで決めます!」
草薙流兜落とし!いっせいにフラッシュが瞬く。芝田カウント2で返す。
スイレン草薙ノーザン!しかし芝田これもカウント2で返す。

スイレン草薙、隠しムーブの延髄斬り!しかし芝田カウント2.9で返す。

ドドドドドドド!

ここから芝田猛反撃、裏拳でぐらつかせてからの延髄斬り、スイレン2.5で返す、

芝田ハイキックを狙うしかしスイレン水面蹴り。続くフォールは芝田2.8で返す。

しかし芝田ドラゴンスリーパー!これでがくっと崩れたスイレン、続くパワースラムに無念の3カウントを聞いた。

芝田(11点、パワースラムからの片エビ固め 25.39)S草薙(2点)

25分39秒の激闘が終わり、スイレンはリング上で一礼してから引き揚げた。ものすごい拍手。

R北条(6点、裏投げからの片エビ固め15.25 )菊池(6点)

引き分け以上でシード権確保の菊池、しかしロイヤル北条も元SPZ王者からの1勝を挙げようとけんめいに応戦、なりふり構わぬヘッドバットでペースを握る。しかし菊池もローリングソバットで反撃。最後は大技の応酬、菊池ムーンサルト、ロイヤル北条はタイガードライバー、そしてロイヤルスパイク!カカト落としと怒涛の猛攻、最後は裏投げで菊池を仕留めた。
「これくらい当然です」ロイヤル北条は力強くコメント。

S相羽(8点、パイルドライバーからの片エビ固め10.0)V麗子(0点)

スターライト相羽、ようやく最終戦で勝ち越し&シード権確保を決めた。SPZの本隊エースとして、最低限の仕事を果たした。

B市ヶ谷(12点、デスバレーボムからの片エビ固め15.34)B来島(11点)

いよいよ千秋楽結びの一番、来島さんの2連覇か市ヶ谷の初Vか、しかし今年に入ってから来島は市ヶ谷相手のシングルには2連敗しておりブが悪い。
「覚悟なさい!!」
ラリアットでペースをつかむ市ヶ谷。そして早めの仕掛け。デスバレーボムでまっさかさま。

もともとスキの大きい来島は守勢に回るともろい。そこまで読みきっての仕掛け。以降は来島の攻めに精彩がなくなり、2発目のデスバレーで動きが止まった。来島、意地だけでナパームラリアットで反撃するも市ヶ谷攻撃の手を緩めずミサイルキック、そして3発目のデスバレーボム。これで来島を仕留め、SPZクライマックス優勝のトロフィーを手に入れた。

ビューティ市ヶ谷高笑い。
「オーッホッホッホッホ!まあ、決まりきった結果ですわね!」
優勝したビューティ市ヶ谷には賞状と金一封、副賞として「ノートパソコン」が、準優勝はボンバー来島と芝田美紀が11点で並び、直接対決でも引き分けているので両者に賞状と「横浜中華街のお食事券」が贈られた。

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表彰式の後、スイレン草薙の引退セレモニー。クールなスイレンの目から涙。また涙。まだやれると思っていたファンもSPZクライマックスの戦績が2点という結果を突きつけられては・・・・
こうしてSPZを支えたスーパースターがまたひとり、リングを去った。

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スイレン草薙

(SPZ8期生)

2016年4月14日、札幌キターアリーナ大会の渡辺智美戦でデビュー。2024年8月14日、横浜スペシャルホールでの芝田美紀戦で引退。稼動月数101ヶ月。出場試合数(推定)708試合

タイトル歴
第29代SPZ世界王者

第33代SPZ世界王者

第37代SPZ世界王者

第41代SPZ世界王者

SPZ王座の通算防衛回数8回(歴代4位)

第9代SPZ世界タッグ王者(パートナーは伊達遥)

第12代SPZ世界タッグ王者(パートナーは伊達遥)

第16代SPZ世界タッグ王者(パートナーは新咲祐希子)

第20代SPZ世界タッグ王者(パートナーはガイア小早川)

第24代SPZ世界タッグ王者(パートナーはガイア小早川)

EWA世界タッグ王者(パートナーは伊達遥)

第14回SPZクライマックス優勝

第10回SPZタッグリーグ優勝(パートナーは新咲祐希子)

第11回SPZタッグリーグ優勝(パートナーは新咲祐希子)

第14回SPZタッグリーグ優勝(パートナーはガイア小早川)

写真集 2冊

2007年10月15日 (月)

筆者取材のため

こんばんわ、SPZのギムレット美月です。

筆者からの書き置きを読み上げます。

ーまことに申し訳ありませんが、本日と明日(15日16日)の連載は、筆者取材のためお休みさせていただきます。山梨県の身延奥地の寺で修行してきます。

ですって。

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新幹線の中、スイレン草薙は自棄酒の缶ビールを飲んでいた。

「・・・まだ1勝、ですか・・・」

SPZクライマックス5戦消化して、まさかの1勝4敗。

上がってきた頃は吉田龍子と2年連続優勝決定戦をやったほどの実力者もかつての力はない。

ー明日、菊池さん。あさって、芝田さん。それで私の現役生活は終わる。

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2007年10月14日 (日)

第235回 SPZクライマックス16・スイレン草薙最後の戦い:中篇

16年目8月 SPZクライマックス 続き

第4戦はナニワパワフルドーム大会。

R北条(4点、ロイヤルスパイクからの片エビ固め 12.09)S草薙(2点)

若いロイヤル北条の攻めを懸命に耐えるスイレン。大阪なにわパワフルドーム内は悲鳴に包まれた。
「どうしたんだスイレン!」

そんな声も飛ぶ。全盛期を過ぎたとはいえロイヤル北条はまだ負けるような相手ではないというのが大方のファンの認識であった。しかし、

「行くぞ!」

ロイヤルスパイク(ジャンプしてのDDT)2連発でスイレン、3カウントを喫した。

ええええ!!の声。

芝田(3点、ノーザンライトSH 13.16)V麗子(0点)

芝田がリーグ戦初白星を挙げた。ビーナス麗子もハイキックを繰り出すなど健闘したが・・・

B来島(5点、エルボーからの片エビ固め 9.35)S相羽(4点)

ボンバー来島は相羽には自信を持っているのか、いつものヘッドバットを起点にペースを作り、裏投げ、パワーボムでダメージを重ねるいつものファイト。フィニッシュは強烈なエルボー。スターライト相羽、来島さんにはつぶされました。完敗・・・・

菊池(2点 ダイビングボディプレス 11.52)B市ヶ谷(4点)

前の試合で相羽が敗れ、早くもトップに立つ可能性が濃くなった市ヶ谷様。

「まあ、あんな小さいの、さくっと片付けてきますわ」

しかし、試合は意外にも菊池ペースで進む。ドロップキックローリングソバット、動き回る菊池にねらいがつけづらいのか。

「はぁぁっ!」

菊池のほうがハイキック、裏投げと大技を積み重ね、菊池が市ヶ谷という巨大な山をだんだん切り崩して行く。

「なぜ、・・・くっ、そんな!?」

焦る市ヶ谷だが有効打が返せない。そうこうしているうちに、菊池コーナーに登って

「せやぁっ!」
団体で一番美しいフォームのダイビングプレスが決まる。これで市ヶ谷、3カウントを奪われた。これだから菊池理宇選手からは目が離せない。

「こ、このわたくしが・・・・」
動揺の色をありありと浮かべる市ヶ谷、痛い1敗を喫した。

リーグ戦3戦を消化して早くも勝ちっぱなしがいなくなった。

トップは1分けの来島さん。1敗でS相羽、B市ヶ谷が続く。

「よし、まだボクにもチャンスはある・・・」

スターライト相羽、本気で優勝を狙っているのか。

翌日第5戦は広島大会。

芝田(5点、ドラゴンスリーパー 13.30)R北条(4点)

6月の予選会ではロイヤル北条が勝っている、お嬢様軍団ナンバー2とナンバー3の対決。
―同じ相手に2連敗はできませんわ。
芝田が果敢に攻めて、最後は意表をついてドラゴンスリーパーでギブアップ勝ち。

菊池(4点、ムーンサルトプレスからの体固め 8.22)V麗子(0点)

きのう優勝候補筆頭の市ヶ谷を破って気を良くした菊池、ビーナス麗子を猛然と攻める。ビーナス麗子もハイキック、ブレーンバスターで反撃したが最後は菊池のムーンサルトに涙をのんだ。

B来島(7点、パワーボムからのエビ固め13.08)S草薙(2点)

「今できることをやるだけです」

いつものように凛とした表情でリングに上がったが、広島のファンが目にしたのは現実。ボンバー来島にただやられるだけ。それでも来島に向かっていくスイレンの心中、いかばかりか。フィニッシュはパワーボムだった。

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

広島のファンは絶句。スイレン草薙、1勝3敗で優勝争いから脱落・・・

B市ヶ谷(6点、ミサイルキックからの片エビ固め 17.30)S相羽(4点)

1敗同士の直接対決。しかし市ヶ谷、昨日の悪夢をふりはらうかのような荒々しい攻め。

「んー、まあ、きょうの市ヶ谷選手は気合が入ってますね。昨日勝ちを計算してた菊池に負けて、これ以上負けられないことは分かってますから、こうなったときの市ヶ谷選手をとめるのは容易じゃないです。ましてや相羽ちゃんでは。」

かいせつの吉田龍子取締役がズケズケ予想する。

S相羽は器用なタイプなのだが、ビューティのようなパワーファイターには分が悪い。それでもタイガースープレックス、パイルドライバーで相羽反撃、簡単には負けない。

「ハイハイ!これで終わりですわ!」

しかし最後は市ヶ谷のミサイルキックにフォール負け。スターライト相羽、2敗目・・・

第6戦は九州ドーム大会。

芝田(7点、延髄斬りからの片エビ固め 26.28)菊池(4点)

殴れば芝田、飛べば菊池。一進一退の攻防となった。しかし芝田の掌底が菊池の流れをことごとく止める。そして裏拳。これで突破口を開いた芝田、弱った菊池に満を持して延髄斬り。

「うわっ!」

・・・バタリ。

大きくふらついて西部劇の悪役のように前のめりに倒れこむ

「あー、こりゃ入ってますね、前のめりに倒れるときはダメージが大きくてワケわかんない状態のときですから」

これで菊池、力尽きた・・・26分28秒の激闘に館内拍手。
元SPZ王者の菊池理宇、3敗目を喫し優勝争いから完全に脱落。

S相羽(6点、DDTからの片エビ固め 14.06)S草薙(2点)

正規軍エース同士の対決。しかしスイレン草薙、勝てない。この日もスターライト相羽にズルズルと攻め込まれ最後はDDTでフォール負け。スイレン草薙4敗目

B来島(9点、ジャーマン 10.02)R北条(4点)

地元だけあってボンバー来島が燃えた。強烈な裏投げ、フェイスクラッシャー、相手が負ける可能性の低いR北条ということもあって、じつに生き生きと戦っている。
「おらおらおらー!」
最後はジャーマン。力で無理やり投げるのでダメージがある技だ。

B市ヶ谷(8点、フィッシャーマンバスターからの片エビ固め 15.24)V麗子(0点)

今大会のビーナス麗子は白星配給係状態。AACの戴冠歴もある弱い選手ではないのだが、そこまでSPZクライマックスはレベルが高いのか。全敗だけは避けたいと序盤、掌底などでよく攻めたが、ラリアットで攻守逆転。あとは市ヶ谷がガーッと攻めて、フィッシャーマンバスターでケリ。

残り2戦を残して、トップは9点のボンバー来島、しかし8点のビューティ市ヶ谷も最終戦で来島さんとの直接対決を残しているのでまだ自力優勝の目は残っている。

「菊池さんが、援護射撃してくれたんだ。負けられねえよ・・・」

2007年10月13日 (土)

第234回 SPZクライマックス16・スイレン草薙最後の戦い

16年目8月
SPZクライマックス記者会見で衝撃が走った。

■「新・最強巫女伝説 前SPZ世界王者」スイレン草薙(23)

第14回大会優勝 8年連続8回目の出場 京スポ予想倍率10.9倍

「えーと、私、スイレン草薙は今シリーズ限りで引退いたします。応援していただいたファンのみなさま、関係者スタッフの皆様、いままでありがとうございました。SPZクライマックスはこれが最後なので、全力で行きます」

ざわつく記者団。一時の力はなくなったとはいえまだまだ破壊力は健在だが、本人曰く「強い草薙流戦士のイメージを壊したくない」ということで引退を決意したとのこと。

■「殺人ラリアット・前SPZ世界王者」ボンバー来島(20)

前回(第15回大会)優勝 4年連続4回目の出場 京スポ予想倍率3.3倍
「全員気持ちよく眠らせてやるぜー」

■「小さな宇宙戦艦」菊池理宇(20)

3年連続4度目の出場  京スポ予想倍率12.3倍
「出るからには一つでも多く勝ちます」

■「史上最凶のお嬢様 SPZ世界王者」ビューティ市ヶ谷(18)

2年連続2回目の出場 京スポ予想倍率1.6倍

「オーッホッホッホ!全員このわたくしにひざまづくのです!」

以下は予選会勝ち上がり組。

■「スーパーお嬢様」ロイヤル北条(18)

2年連続2回目の出場 予選会1位通過、京スポ予想倍率49.9倍

「自分のレスリングを信じて白星を積み重ねたいです」

■ 「一騎当千のお嬢様」芝田美紀(19)

3年連続3回目の出場、予選会2位通過 京スポ予想倍率40.9倍

「ホーッホッホホホホ!芝田ここにありということを全国のファンに見せ付けますわ」

■「シューティングスター」スターライト相羽(22)

6年連続6回目の出場 予選会3位通過 京スポ予想倍率7.7倍

「ボクは、ハマのヘボエース(ネット上の書き込みではこういわれている)なんかじゃないことを証明します。頑張りますッ」

■ 「一撃必殺」ビーナス麗子(21)

3年ぶり3度目の出場 予選会4位通過 京スポ予想倍率99.9倍
「何とかして勝ち越したいです」

*************************

2戦目の札幌どさんこドーム大会からリーグ戦スタート。

R北条(2点、ロイヤルスパイクからの片エビ固め10.58 )V麗子(0点)

ロイヤル北条がロイヤルスパイク2連発で予選会のとき同様に勝利を収めた。

S相羽(2点、裏拳からの片エビ固め 17.48)菊池(0点)

大激戦。去年このカードに敗れている相羽が意地を見せ、菊池のムーンサルトを返した上でキャプチュードを連発。最後は裏拳で菊池の戦意を根こそぎ奪って3カウント。
「こんな強い相羽さんは久しぶりだ・・・」
客席からどよめきが。相羽、このリーグ戦にかける意気込みは並々ならぬものがある。

B来島(1点 時間切れ引き分け)芝田(1点)

来島、パワーで押し込むも要所要所で芝田のえぐい打撃をもらい流れが止まってしまう。
「ぐわあっ!」鋭い裏拳にダウン。

―やべ、頭くらくらする。
しかし来島、市ヶ谷戦までは負けられない。何とか体勢を立て直しフェイスクラッシャーを繰り出すがここでタイムアップ。

「・・・・ああ、やっちった・・・」

前回優勝のボンバー来島、いきなりの1点ロス。

B市ヶ谷(2点、ニーリフトからの片エビ固め10.28)スイレン草薙(0点)

「どこまでやれるか、自分でも楽しみです」

かつての絶対王者が団体内最強のビューティ市ヶ谷に懸命にくらいついてゆく、

がー

「覚悟なさい!」

ビューティ市ヶ谷、デスバレー2連発、フィッシャーマンバスターと大技の波状攻撃。これでスイレンは虫の息。直後のニーリフトで敗戦。

シリーズ3戦目は仙台大会。

S草薙(2点、バックドロップからの片エビ固め12.26)V麗子(0点)

「ハッ!」
スイレンが2発目のバックドロップ。これでビーナス麗子はフォールを返せず終了。スイレン草薙、このクラスの相手ならまだまだ強い。初日を出した。

S相羽(4点、パイルドライバーからの片エビ固め17.56)R北条(2点)

予選会では負けている相羽、しかし格下であばしり以外のタイトル歴もないロイヤル北条相手に2連敗は許されないことは本人も一番良くわかっている。

「アーーーッ!」

デスバレーボムで形勢を逆転させると伝家の宝刀タイガースープレックス。これでロイヤル北条をぐらつかせる。

「アーーーッ!」

裏拳でカウント2.9まで追い込む。しかしロイヤル北条も猛反撃、パワースラム、ロイヤルスパイクを繰り出して相羽を追い詰める!

―ボクは負けられない!
スターライト相羽、場外に逃げる。

「まてっ!」

追撃する北条、しかし相羽、ここで反撃。ロイヤル北条を組みとめて、マットのない場外フロアでパイルドライバー。

ご ん。

場内悲鳴。そういえばスイレンをはじめて破ってSPZ王者になったときもこの手を使った。ロイヤル北条目がうつろだ。それでもハイキックで仕返しをして大場外戦をやるあたりが凄い。

「モドレッつってんだよ!」
長引く場外乱闘に井上霧子レフェリーも怒鳴る。両者ふらふら状態でリングに戻る。しかし最後の余力を残していたのはスターライト相羽。パイルドライバーをもう一発決めてカウント3奪取。

「勝っ、た・・・」

スターライト相羽、なりふり構わない手を使ったとはいえども、堂々の2連勝。

ーオフに特訓でもしたのか?

ー山奥の寺にでもこもっていのしし相手に特訓をしたんだろ。

ーヤバイ注射でも打ったんじゃないの?

ざわつく仙台のファン。

B来島(3点、ジャーマンSH 16.32)菊池(0点)

「あー、地元でいいとこ見せようと思ってたのにー」

よりによって今日の相手は前SPZ王者、ボンバー来島。体格やパワーでは圧倒的に不利な相手だ。それでも菊池はドロップキック、ローリングソバットを岩のような来島の身体にタタキこんでゆく。シャイニングウィザードまで決めるが来島ぐらつかない。逆にフェイスクラッシャーまでもらってしまう。そしてー

「気持ちよく眠らせてやるぜー」
ナパームラリアット炸裂。これで菊池吹っ飛ぶ。

「オラアアアアア!」
ボンバー来島、力のこもったパワーボム、しかし菊池カウント2.9で返す。
ドドドドドド!
「やっぱアンタはすげえよ、最高のパートナーだぜ!」
来島トドメのジャーマン。これで菊池は目の前が真っ黒になり3カウントを奪われた。

B市ヶ谷(4点、パイルドライバーからの片エビ固め 24.54)芝田(1点)

来島に負けなかった勢いで市ヶ谷にぶつかってゆく芝田。しかし市ヶ谷は来島のようなパワーファイター特有の隙がない。ならばと得意の打撃で攻めるが市ヶ谷もラリアットで対抗。最後はニーリフトで動きが鈍ったところをパイルドライバー。敗れたとはいえ芝田、市ヶ谷相手に25分近い熱闘をやったのだから大した物である。

リーグ戦最初の2試合を終えた時点で、勝ちっぱなしはビューティ市ヶ谷とスターライト相羽の2名。これは優勝は市ヶ谷様でほぼ決まりか。いや、相羽ちゃんも、ひょっとしたら、いや、ひょっとしたらひょっとするかも・・・

(長くなるので続きます)

2007年10月12日 (金)

第233回 16年目7月 マッキー上戸デビュー

16年目7月
横浜のお嬢様プロレス団体SPZは、9期生のガイア小早川が引退し、レスラーライセンス枠が1つ空いたので、新人スカウトを行った。鳥取にスポーツ万能の元気少女で体格のいいのがいるという情報を井上霧子がキャッチし、早速出向いて口説き落とした。

「上戸さんは体格がいいから吉田さんみたいに大成すると思うわ。それにプロレスラーになればコスチュームとシューズを持って日本全国を回れるわ!遠征の際の宿泊費食費は会社持ちなので日本全国のうまいものを(以下略)」

「わかりました、おせわになります!」

少女の名は上戸真紀。リングネームは「マッキー上戸」となった。

新人のラッキー内田をEWAへ海外遠征に出した。いままでSPZはデビュー後最低1年は国内で鍛えてからというのが不文律だったが、「内田さんは基礎ができてるっぽいから」という理由でEWAへ送り出した。

7月シリーズ「サマースターナイツシリーズ」開幕戦、青森武闘館大会第1試合でマッキー上戸のデビュー戦。相手はデビュー3ヶ月の氷室紫月。

「オラーッ!」

マッキー上戸、デビュー戦だというのに緊張した様子もなく氷室を殴ってゆく。

しかし上戸、ヘッドバットの連発で氷室を追い込むが、最後はブレーンバスターを打とうとしたところを根負けし、ブレーンバスターに切り返されてフォール負け。勝負タイム9分2秒。

4戦目の山形大会でマッキー上戸プロ初勝利。1期先輩の成瀬唯をパワーで圧倒し、最後は逆水平チョップで殴り倒し、そのまま覆いかぶさって3カウント、勝利。

山形大会では氷室紫月、またもメインのカードに名を連ねた。菊池理宇、ボンバー来島と組んでスイレン草薙、スターライト相羽、ビーナス麗子と対戦。氷室は序盤に出てきてビーナス麗子のエルボーや投げを懸命に受けて来島につないだ。

試合はSPZ王座挑戦が決まっている来島がスパート。ビーナス麗子をパワーボムでたたきつけ3カウント奪取。

第6戦宇都宮大会はあばしりタッグ戦。ビーナス麗子、ギムレット美月対エレン・ヘレンのニールセン一族。だが今回はギムレット美月がニールセン一族の連携につかまってしまい。最後はヘレンのニーリフトで沈没。

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あばしりタッグ選手権

エレン・ニールセン、ヘレン・ニールセン○(20分くらい、ニーリフトからの片エビ固め)ビーナス麗子 ギムレット美月×

ニールセン組が第12代王者となる

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第7戦幕張大会メインはボンバー来島、菊池理宇対ビューティ市ヶ谷、ロイヤル北条のSPZタッグ戦。

名タッグ・来島菊池の快進撃を止められる可能性があるとしたら市ヶ谷しかいないと会社が判断した。
「この技に耐えられるか?」
ロイヤル北条の必殺ロイヤルスパイク(変形DDT)が決まる。

「ぐわっ・・・」

これで頭を打った来島は菊池にタッチ。そして菊池が市ヶ谷の猛攻を浴びるがなんとか一通りしのいで来島にタッチ。

24時間後にSPZ戦を控える来島とビューティ市ヶ谷がド迫力の攻防。来島がナパームラリアットを繰り出せば市ヶ谷はデスバレー。双方大ダメージを負ってロイヤル北条対菊池の局面。

しかし菊池がムーンサルトでロイヤル北条に大ダメージを与え、一気に自軍有利の状況を作り上げる。そして、ボンバー来島にタッチ。

ボンバー来島、ふらつく北条のバックに回ってジャーマン。菊池は市ヶ谷を場外に蹴落として自らも後を追う。
ワン、トゥ、スリー。

「45分40秒、ジャーマンスープレックスホールドでボンバー来島、菊池理宇組の勝ち」

王者組はなんと8度目の防衛成功。新記録を更新した。

マットに横たわるロイヤル北条、ボンバー来島は市ヶ谷を指差して、

「市ヶ谷!あした、新日本ドーム!あんたがこうなるぜ!」

しかしビューティ市ヶ谷、

「オーホホホホホホ、面白い冗談ですこと。あなたのような野蛮なプロレスにこの私が負けるわけがありませんわ!オーッホホホホホホ」

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最終戦新日本ドーム大会。

第1試合はマッキー上戸対成瀬唯。なんとヘッドバット連打でマッキーが勝ってしまった。

控室で落ち込む成瀬。デビューしてから1年あまり、それこそ死ぬ思いでやってきたのに、氷室にあっさり抜かれ、マッキー上戸にも敗れてしまった。

ーこれが素質の差、なんやろか。

第2試合はビーナス麗子対アンナ・クロフォード。終始打撃技で押しまくったビーナス麗子が最後はキャプチュードでぶん投げて3カウント奪取。

第3試合、早くも菊池理宇登場。フォクシー真帆と組んで、昨日死闘を展開したロイヤル北条、そしてフレイア鏡と対戦。

「はっ!」

菊池理宇とR北条は昨日のタイトル戦さながらの攻防を展開。しかし最後はフォクシー真帆がつかまってしまい。フレイア鏡がフロントスープレックスで3カウント奪取。勝負タイム26分30秒の激戦。

休憩明け、スイレン草薙、ギムレット美月がEWAのナターシャ・ハン、アリス・スミルノフと対戦。だがスイレン草薙の動きは全盛時からかなり落ちており、ナターシャのグラウンドさばきについていけない。苦し紛れにギムレット美月にタッチしてジエンド。ギムレット美月、キャプチュード2連発に力尽きた。

セミファイナル。スターライト相羽がなんと新人の氷室紫月とタッグを組んでヘレンエレンのニールセン一族と対戦。氷室、デビュー4ヶ月でもう「ドームのセミ」登場である。しかし外人組みは氷室が出てくるや集中攻撃。ヘレンはニーリフトできついプロの洗礼を浴びせる。

「・・・・・・・・・!!」

氷室、なんとかドロップキックで反撃しスターライト相羽にタッチ。あとは相羽が安定した闘いを見せ、最後はエレンをDDTで仕留めた。パートナーの力が大きいとはいえ氷室紫月、ドームのセミで勝利。

メインはビューティ市ヶ谷対ボンバー来島のSPZ選手権。ダンプカー対史上最凶のお嬢様。

「そりゃあ勝ちたいけど、市ヶ谷さんだとなるようにしかならんよ」

ボンバー来島はこういい残してリングへ向かった。

「オラー!」

ボンバー来島がヘッドバットの嵐。たいていの選手はこれでわけが分からなくなってしまうのだが、市ヶ谷はきっちりラリアットで反撃。チカラとチカラがぶつかり合う消耗戦となった。

先に大技で仕掛けてきたのは市ヶ谷。DDT、そして裏拳。そしてニーリフト。来島のガタイが浮き上がるのだからそうとうな破壊力だ。アームホイップをはさんでからふたたびニーリフト。来島なんとか2.8で返すもー

「このわたくし相手によーくここまで耐えたとほめて差し上げますわ!」
ここでビューティボム炸裂。来島はフォールを返せなかった。勝負タイム26分18秒。王者が2度目の防衛に成功。

********************

SPZ世界選手権試合

ビューティ市ヶ谷(26分18秒、ビューティボムからのエビ固め)ボンバー来島

第43代王者が2度目の防衛に成功。

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そして8月、今年もSPZクライマックスが始まる、が・・・・

京スポ新聞がまたすっぱ抜いた。8月3日の一面トップ。

スイレン草薙引退

2007年10月11日 (木)

第232回 ガイア小早川・最終試合

16年目6月シリーズ最終戦

最終戦はさいたまドーム大会。
「ガイア小早川 最終試合」

の大看板が。

第1試合はフォクシー真帆(14期)対氷室紫月(新人)。がすがすと打撃技で押したフォクシーが優位に立ち、最後はDDTで快勝。

第2試合は成瀬唯(15期)対ラッキー内田(16期)。ラッキー内田はまだ先輩相手からは勝っていない。この日も成瀬のドロップキックに敗北。

第3試合はアリス・スミルノフ対キューティー金井(12期)。キューティーも良く粘ったが、最後はアキレス腱がために悲鳴を上げギブアップ。その試合が終わると休憩。

休憩明けはイレーヌ・シウバ対ハイサスカラス。AAC選手同士の対決。ハイサスカラスが飛び回って、最後は裏拳で手堅く勝利をおさめた。

第4試合―
次の試合に登場するガイア小早川選手はこの試合が最後のファイトとなります。ファンの皆様よりいっそうのご声援をお願いいたします!」

ドオオオオ!

最後の「Sky-was G-ray」がかかり、ガイア小早川が長い花道をリングへ走る。感傷を振り切るように。そしていつものようにトップロープを飛び越えリングイン。
ガイア小早川、最終試合の相手は、長くタッグを組んだ1年先輩のスイレン草薙が名乗りを上げた。

「はっ!」

3分過ぎにスイレン、強烈なバックドロップ。これでガイアの動きがガクリと落ちた。
スイレン草薙、ローリングソバットで追撃、カウント2.8で返す小早川。

「ウ、ワーッ!」

ガイア小早川、ふらつく足でコーナーに登って、最後のミサイルキック。ガイア小早川といえばこの技だ。瞬くフラッシュ。
しかしスイレン、何事もなかったかのように起き上がり組み付いて、ノーザンライトスープレックス。

「ワン、トゥ、スリー!」
「8分55秒、ノーザンライトスープレックスからの片エビ固めでスイレン草薙の勝ち」

―終わった、か・・・

ガイア小早川はドームの天井を見上げながらつぶやいた。

セミファイナルはスターライト相羽、ビーナス麗子、ギムレット美月対デイジー・クライ、ヘレン・ニールセン、エレン・ニールセンの6人タッグマッチ。相羽の出番は最初のちょっとだけ、ビーナス麗子がデイジーとド迫力の殴り合いをやってのけた。最後はギムレットがドラゴンカベルでエレンを仕留めた。勝負タイム10分6秒。

メインはSPZタッグ選手権。菊池理宇・ボンバー来島の王者組に挑むのは芝田美紀、ロイヤル北条のお嬢様軍団。今シリーズも先輩越えをはたしたロイヤル北条がどこまで王者組に食い下がれるか。しかしやはり王者組の壁は厚い。両者ともにSPZシングルの戴冠経験があるので穴がないのだ。

そして勝負どころと見るや、来島がナパームラリアットで一気に攻める。この一発で芝田はグロッキー状態。

「オラオラオラー!」
最後は来島のジャーマンだった。勝負タイム24分50秒、王者組が7度目の防衛に成功。新記録である。

*******************

メイン終了後、ガイア小早川の引退式。ガイア小早川、ちょっと泣いていた。
「いままで応援ありがとうございました!」

ガイア小早川
2017年4月11日、釧路市体育館での保科優希戦でデビュー。2024年6月22日、さいたまドーム大会でのスイレン草薙戦で引退。稼動月数87ヶ月、出場試合数612試合(推定)

タイトル歴

第20代・第24代SPZタッグ王者(パートナーはスイレン草薙)

第2代・4代・7代あばしりタッグ王者(パートナーはギムレット美月)

第14回SPZタッグリーグ優勝

写真集 1冊

2007年10月10日 (水)

第231回 16年目6月 SPZクライマックス予選会

16年目6月。

「くっそー!身体がついていかないんだよね!」
ガイア小早川が引退を表明。
なおビューティ市ヶ谷がまた負傷欠場。フレイア鏡もヒザの違和感のため欠場。

恒例のSPZクライマックス予選会。今年の出場者は以下の6名となった。
スターライト相羽(前回本大会6点)
芝田美紀(前回本大会6点)
ギムレット美月(前回本大会2点)
ロイヤル北条(前回本大会0点)
ビーナス麗子(10期)
キューティー金井(12期)
上位4名に本大会出場権が与えられる。

シリーズ第1戦は沖縄大会。第2試合でガイア小早川対ラッキー内田の最初で最後のシングルマッチ。ガイア小早川が容赦のない攻めを見せた。バックドロップは2.5でクリアした内田だったが続くフィッシャーマンバスターで意識をなくして終了。

第2戦静岡大会、第2試合でやはり氷室紫月対ガイア小早川の最初で最後のシングルマッチ。8分19秒、ガイアがミサイルキックを決めて氷室を倒した。

さて予選会リーグ戦。
G美月(2点 ドラゴンカベルナリア)R北条
芝田(2点、延髄からの片エビ固め)V麗子
S相羽(2点、ハイキックからの片エビ固め)Q金井

第3戦、三重サンシャインアリーナ大会。リーグ戦の結果は下記の通り。

R北条(2点、カカト落としからの片エビ固め)V麗子(0点)
芝田(4点、ハイキックからの片エビ固め)Q金井(0点))
S相羽(4点、タイガーSHからの片エビ固め)G美月(2点)

第4戦岐阜大会。

R北条(4点、ロイヤルスパイクからの片エビ固め)Q金井(0点)
芝田(6点、延髄からの片エビ固め)G美月(2点)
S相羽(6点、ネックブリーカーからの片エビ固め)V麗子(0点)

第5戦滋賀大会。
G美月(4点、ドラゴンスリーパー)Q金井(0点)
ギムレット美月も2勝目。ねばるキューティー金井を16分、ドラゴンスリーパーで仕留めた。
R北条(6点、ブレーンバスターからの片エビ固め)芝田(6点)
ロイヤル北条がお嬢様軍団の先輩、芝田からカウント3を奪ってしまった。

第6戦和歌山大会。ラッキー内田は第1試合で成瀬唯と対戦。

1年この団体で死ぬ思いしてきたんや。2シリーズ目の新人には負けられへん。

成瀬がストレッチプラム。14分59秒の熱闘を制した。

予選会リーグ戦。

V麗子(2点、ハイキックからの片エビ固め)Q金井(0点)

予選会突破4つ目の椅子は、ビーナス麗子とギムレット美月の2人に絞られた。
R北条(8点、ロイヤルスパイクからの片エビ固め)S相羽(6点)

「そんなぁ・・・」
スターライト相羽ズルズルと押し込まれる「悪いときの相羽」最後はロイヤルスパイクに敗れる。すでに予選会突破は決めているものの、今までトップグループにいた選手が「お嬢様軍団の3番手」に敗れる始末。

和歌山大会メインは6人タッグ戦。スイレン草薙、ギムレット美月、ガイア小早川に対するは菊池理宇、ボンバー来島、氷室紫月。新人が3シリーズ目でメイン抜擢とは異例。氷室の出番は3分過ぎ。スイレン草薙は「まだあたしの相手じゃない」とばかりにガイア小早川に任せた。氷室、懸命にドロップキックで反撃して来島につなぐ。しかしスイレン組みもスイレンが投げまくって来島菊池を痛めつけたので氷室が再びリングイン。
―これが、外せますか。
ギムレット美月、ドラゴンカベルナリア。これで氷室はギブアップ。勝負タイム19分45秒、氷室、初のメインは苦かった。

V麗子(4点、ハイキックからの片エビ固め)G美月(4点)
勝ったほうがSPZクライマックス本大会出場権を得る。去年本大会に出られなかったビーナスがするどいドロップキックを叩き込んでゆく。ギムレットは寝かそうとするがビーナス麗子の執念のほうが上だった。
「ガンガン、いっちゃうぞ!」
タッグパートナーだろうが容赦なし。ハイキックで見事に倒した。

芝田(8点、延髄斬りからの片エビ固め)S相羽(6点)
相羽の投げと芝田の打撃がぶつかりあういい勝負となったが、最後は芝田の延髄2連発。20分36秒の闘いを制した。しかしスターライト相羽、北条に続いて芝田にも破れ、トップグループの座から完全に転落したといわねばならない。

2007年10月 9日 (火)

第230回 16年目5月 ラッキー内田デビュー

レッスルエンジェルスサバイバー プレイ日誌のようなもの
「輝くエッセンシャルS」

16年目5月
ガイア小早川が先月のドーム大会で右ひざ負傷。けっこう重症となった。

ギムレット美月、ファースト写真集「NAGARA」発売。

「私はアイドルではありませんよ?」

「えーい、ビーナス麗子もガイア小早川もスターライト相羽も菊池も来島さんも出しておいてなぜ出ないんですか、というメールがいっぱい来ておるのじゃ、行け~」

隠れファンが多いギムレット美月、まさかの写真集発売にちょっとした騒ぎになったらしい。

SPZは将来に備え、2人目の16期生をスカウトにかかった。東京都多摩市のレスリングクラブでけっこう有望な選手がいるという情報を井上霧子がキャッチしたので、即スカウトに出向いた。

「そうですね、やってみましょう」
内田栄子入門。リングネームは吉田インストラクターが3分で考えて、「ラッキー内田」となった。

そして5月シリーズ「ハイパーバトル2024」開幕。
第1戦鹿児島県営広場特設リング大会。第1試合でラッキー内田のデビュー戦。

この日は屋外特設会場なので、控室は少しはなれたところにある公民館に確保してある。

「はーい、あと10分で第1試合始まります」

「はい、いま行きます。」

ラッキー内田はコスチュームの上からTシャツを羽織り、上原今日子の運転するワンボックスカーに乗り込んだ。きょうは選手をこれでピストン輸送するのである。

「デビュー戦、がんばってこいよ」

「はい!」
2分ほどで車は花道奥に横付けされた。
カン、カン、カン、カン、カン・・・・

「ハイこちら本部席、第1試合青コーナー側入場願います」
本部席の今野役員がトランシーバーで上原に連絡。
「さあ、一生の思い出になるから暴れてこい!」

上原はワンボックスのドアを開けた。車を降りた内田、花道の階段を上って、客席内を仕切るカーテンをくぐった。
ワアアアアア!
SPZが8ヶ月に一度しか巡業に来ない鹿児島のファンは早くも出来上がっていた。ラッキー内田、緊張するそぶりも見せず花道を走ってリングイン。
対戦相手は1期先輩の成瀬唯。

「いてこましたる。」
先輩の貫禄を見せようとしたのか、腕を取って脇固め。しかし内田もあせらず振りほどいてスリーパーで反撃。
―そか、この人アマレスやるねんな。
成瀬、攻め方を変えて打撃技、エルボーやチョップで反撃。これは内田受けられなかった。ドロップキックはカウント2.8で返した内田だったが、続く逆水平チョップに息が詰まってしまいカウント3を奪われた。

「なかなかええ動きやったで!」

試合後、成瀬は内田の手を挙げて健闘をたたえた。勝負タイム12分12秒。
「こりゃまた、イキのいいの入ってきたね~」

***************************

第2戦宮崎大会の試合前。
「氷室さん、内田さん。きょうからふたりで最終戦まで第1試合でシングル7連戦やって。勝ち越したほうはご褒美に来シリーズ、メインイベントに出場させるから。」
井上社長代行がにこやかに話した。
「えっ・・」
ラッキー内田は耳を疑った。選手層の厚いこの団体でいきなりメインに出られるとは。
宮崎大会はラッキー内田がドロップキックを連発し、氷室からあっさり3カウントを奪った。勝負タイム9分28秒。ラッキー内田プロ入り初勝利。
「アナタとは覚悟の量が違うわ」
「あらま。内田さん勝っちゃった。しかし短期間でドロップキックをああもきっちり決めるとはこりゃ将来楽しみですよ」
二人とも新人にありがちな勝ち急ぐところや緊張しすぎるところがない。アマレス出身者だけあって動きにムダがない。

第3戦、アクエリアンドーム熊本大会。

「やっ!」
ラッキー内田の鋭いアームホイップ2連発。しかし氷室もアームホイップで反撃。終盤はショルダータックルの打ち合い。
「これで決まり。」
氷室、力のこもった脇固め。しかし内田、巧みに一回転して脱出。そしてドロップキック。しかし氷室2.9で返す。そして先に立ち上がりドロップキックで反撃。こんどは内田、フォールを返せず1勝1敗となった。

熊本大会メインはビーナス麗子対デイジー・クライのAAC選手権タイトルマッチ。しかしビーナス麗子、EWAの猛者デイジーの打撃にだんだん押されていって、最後は裏拳で記憶が飛んだところをDDTでフォール負け。ビーナス麗子タイトルを手放した。

第4戦大分大会ではラッキー内田がアームホイップで氷室から3カウントを奪った。

その翌日長崎大会。勝って3勝目を挙げたい内田と五分に戻したい氷室。しかしこの日は内田のエルボーで氷室、鼻から流血。それでも何事もなかったかのように腕を取っていくのだから新人離れしている。最後は氷室が身体ごとぶつかっていって3カウントを奪った。これで2勝2敗のタイ。

長崎大会メインは菊池理宇、ボンバー来島対ナターシャ・ハン、デイジー・クライのSPZSタッグ戦。EWA最強の二人がそれなりに菊池来島を追い込んだが、最後は菊池のムーンサルトがデイジーに決まり3カウント奪取。勝負タイム24分6秒。王者組が6度目の防衛に成功。これでスイレン草薙・ガイア小早川組の持つ最多防衛記録に並んだ。

第6戦佐賀大会、新人同士のシングル7連戦、勝ち越し王手をかけたのはラッキー内田。シングルマッチ連戦で疲れが見えたのか、少し動きに隙ができた。そこを逃さずスリーパー。
「うぐ・・・」
たまらず氷室はギブアップの意思表示。

しかし第7戦山梨大会ではまたまた氷室がドロップキックで3カウントを奪い、決着は最終戦の横スペ大会へ持ち越しとなった。

*********************

そして最終戦横スペ大会。

第1試合はラッキー内田対氷室の7連戦・最終戦。一進一退の攻防が繰り広げられたが、最後はラッキー内田の集中力が切れたところをドロップキック。これでカウント3.氷室が7連戦に勝ち越した。

「良かった・・・」

こんかいの横スペ大会も、セミ前からは3大シングルマッチが組まれた。

セミ前は菊池理宇対スターライト相羽。

「相羽!ここで負けたら終わりだぞ!」
観客席からそんな野次も飛ぶ中、相羽が懸命に応戦。ここ数ヶ月は「勝てない相羽」としての印象が定着しつつある。この日の相手は11期生の菊池なのだが、前半はけっこう押し込まれた。しかし相羽、ここでなりふり構わない手を使った。

「アーーーーッ!」
場外でキャプチュード2連発。これで決定的ダメージを負った菊池、リングに戻ったところをタイガースープレックスに3カウントを奪われた。勝負タイム18分19秒。

「ボクは、まだまだSPZで暴れて見せますっ!」

セミファイナルはボンバー来島対芝田美紀。

「さ、これでトドメです!」

芝田の延髄が決まるが

「き、効かねーよ!」

耐え切った来島がこの試合2回目のパワーボム。13分51秒、芝田を下した。

********************

メインイベントはSPZ選手権、新王者市ヶ谷、初防衛戦の相手はかつての絶対王者、スイレン草薙。一時の絶対的な力はないもののまだまだ投げ技の鋭さ、寝技のうまさは健在。この日も市ヶ谷を草薙流兜落としでもしかしたら・・・というところまで追い込んだが、市ヶ谷逆襲のビューティボム。これでスイレンの動きが止まり、続くパイルドライバーに3カウントを聞いた。勝負タイム25分41秒、王者が初防衛に成功。
「おーっほっほっほっほっほ!わが道に敵なしですわーー!」

横スペに響く市ヶ谷様の高笑い。これからこの団体はどうなってしまうのか。

2007年10月 8日 (月)

第229回 SPZ旗揚げ15周年記念興行in新日本ドーム

16年目4月

旗揚げ15周年記念シリーズ・最終戦は新日本ドーム大会。旗揚げ15周年記念興行だが、メインのカードが弱かったので客入りは満員どまりであった。

「外野まで埋まらなかったのは残念じゃ。しかしSPZ15周年、本当に長かった。みんな、きょうはのびのびと暴れて来てください!」

開場前、今野役員が万感の思いで選手に檄を飛ばす。

会場入り口で配られるプログラム。表紙は丹沢の山をバックに笑顔のマイトス香澄が飾った。

ページをめくると井上社長代行の挨拶、そして本日のカード。SPZの過去、現在、そして未来が凝縮された全6試合。

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1. 成瀬  唯     30分1本   氷室 紫月

2.ガイア小早川   タッグ・マッチ キューティー金井

  ギムレット美月    30分1本  ビーナス麗子

3.フレイア 鏡      30分1本  アリス・スミルノフ

               休 憩

4.マイトス香澄      30分1本  フォクシー真帆

5.ヘレン・ニールセン タッグ・マッチ ナターシャ・ハン

  スターライト相羽    30分1本  菊池 理宇

  ボンバー来島             スイレン草薙

6.芝田 美紀       60分1本  デイジー・クライ

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第1試合は氷室紫月の東京デビュー戦。相手は成瀬唯。
ドゥーリーズの「ウォンテッド」が流れる中、クールな表情でドームの長い花道を歩いて入場する氷室紫月。
試合は地味めなグラウンドの展開。執拗に脇固めで腕を狙う成瀬、スリーパーで反撃しつつ隙をうかがう氷室。
成瀬スクラップバスター。氷室カウント2で返す。
氷室反撃、走りこんでのショルダータックル。

だん。

もんどりうってリングに倒れこむ成瀬が起き上がるのを待って走る氷室。ドロップキック炸裂。そのままカバー。

ワン、トゥ、スリー!

「9分24秒、ドロップキックからの片エビ固めで、氷室紫月の勝ち。」

なんとデビュー8戦目の氷室が1期先輩の成瀬に勝ってしまった。当然シングル初勝利。

「良かった・・・」

場内あっけにとられる中、淡々と引き上げる氷室。久々にSPZに将来有望な新人が入った。

続く第2試合、「sky was g-ray」が流れる中、バックスクリーンに字幕が。

☆ガイア小早川 デビュー7周年記念試合☆

この日のガイア小早川、ギムレット美月と久しぶりの「GG砲」を結成し、ビーナス麗子、キューティー金井と対戦。

9期生のガイア小早川、155cmの小柄な体格ながら勝気な性格で奮闘し、スイレン草薙のパートナーに抜擢されてSPZ世界タッグ王者にまでなった。
この日はガイア小早川、ビーナス麗子の殴る蹴るの攻撃を懸命に受けてギムレットにつなぐ。

しかし最後はギムレット美月対ビーナス麗子の同期対決になって、ビーナス麗子がメモリアル気分を吹き飛ばす容赦のないハイキック。

「・・・・がっ」

崩れ落ちるギムレット美月。これで3カウントを聞いた。勝負タイム16分15秒。

「SPZ、15年、これからも、よろしくーッ!」

ビーナス麗子、本部席前でマイクアピールをしてから引き揚げた。

ーやってくれますね。さすが麗子さんだ。

強烈な蹴りを食らった選手会長ギムレット美月、ふらつきながら引き揚げたが大きな拍手が送られた。

第3試合はフレイア鏡対アリス・スミルノフのシングルマッチ。フレイア鏡も良く粘ったが、EWA系の強豪外人アリスのパワーにだんだん押されていって、最後はニーリフトに沈んだ。勝負タイム13分0秒。

「UOOOOOOOOOOO!」

アリスはいつもどおりチェーンをぶんぶん回しながら退場した。その試合が終わると休憩。

そして休憩明けにアナウンスが。

「次の試合に出場するマイトス香澄選手は、この試合が最後のファイトとなります。ファンの皆様、より一層のご声援をお願いいたします。」

ドオオオオ!
身長152cmと体格的には恵まれていないものの、ハイブリッド南の革命軍結成の呼びかけに同調し、ハイブリッド南とのコンビでSPZ世界タッグ王者にまで輝いた。いつも実力微妙なので対戦相手に狙われたが、懸命のファイトでお客さんの支持も高かった。

「恋はピンポン」が流れる中、いつもどおりマイトス香澄が走ってリングイン。首の負傷で今シリーズは出場も危ぶまれたが、羽山リングドクターに「連日の痛み止め注射」を打ってもらってどうにか完走した。

「赤コーナー、東京都江戸川区出身、SPZ8期生、まいとすー、かすーみー!」

ドワアアアアアア!

最後の相手は14期生のフォクシー真帆。実力ではまだまだマイトス香澄が上だが、何しろ今シリーズ、ズタズタの状態で戦ってきたので結果の読めないラストファイトとなった。

試合はフォクシーが押していた。マイトス香澄、ヘッドバットやギロチンドロップで頭や首を狙われるともうどうしようもない。

「やーーーーーっ!」

それでも懸命にエルボーで反撃、しかしいつもの軽快さがない。組みとめられてボディスラムで投げられてしまう。

「しゃーーー」

うなり声ギミックを上げながら、フォクシー真帆、この日2回目のギロチンを落とす。そのあと押さえ込む。

ワン、トゥ、スリー。

勝負タイム12分25秒。

―ボクの闘いは、終わった・・・

本部席から羽山リングドクターが上がり、倒れこむマイトスの状態をチェックする。
それでも長い時間をかけて起き上がって、ファンに一礼して引き上げた。ドームはものすごい拍手に包まれた。

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そしてダブルメインイベント、第5試合は

「旗揚げ15周年記念特別試合」

ファンの前評判は「なんてカードだ、ぐちゃぐちゃで混乱するではないか」「いや、お祭りだからこれもアリなんじゃない」「さすがSPZ、プレミアもののカードだ」賛否両論のこのカード、会場はざわめきたった。なんと選手はひとりずつ入場。

まず青コーナー側からロシア音楽が流れる中、EWA最強のナターシャ・ハンが悠然と入場。この選手もEWAのトップ外人として大活躍していて、SPZにはなくてはならない存在だ。関節技絞め技のキレは世界一かもしれない。

きくち!きくち!きくち!きくち!

そのあと「THROUGH THE FIRE」が流れ、菊池理宇がいつものように花道を走って、トップロープを飛び越えてリングイン。SPZを支えてきた小さなスター選手、菊池理宇。その空中さっぽうと不屈の闘志は大きい選手が強いというこれまでの常識を覆し、SPZチャンピオンにまでのし上がった。

そして青コーナー側のトリはスイレン草薙。「オリエンタルクラッシュ2」が流れる中、錫杖のしゃりん、しゃりんという音を響かせながらスイレン草薙が入場。

SPZ8期生、同期のマイトス香澄もリングを去り、なお戦い続けるこの選手。吉田龍子との幾多の死闘はファンの胸を揺さぶった。今なおSPZの顔である。

センターにスイレン草薙、左右に菊池とナターシャが控える。改めてみると凄いトリオだ。

赤コーナー側からユーロビート音楽が流れる中、ヘレン・ニールセン登場。EWAの常連外人でいい味を出しており、ギムレット美月を破りAACのベルトを巻いた名脇役だ。

続いて「スターライトシンフォニー」が流れる中、9期生のスターライト相羽が入場。頼りないエースとしてファンから愛されている?が、スイレン草薙の長期政権を止めたのはこの選手だ。正規軍のエースとして多くの会場でメインを張ってきた。

最後に「エクリプス」が流れる中、ボンバー来島が入場。圧倒的なパワーを武器にSPZの頂点に駆け上がって、昨年のSPZクライマックスではついに栄冠をつかんだ。SPZのみなぎるパワーだ。

ドームはものすごい歓声。

ボンバー来島、スターライト相羽、ヘレンニールセン

               対

スイレン草薙、菊池理宇、ナターシャ・ハン

6人のコールの際はものすごい量の紙テープが乱舞。これだけで堪能したファンも多かっただろう。

カンッ。

記念試合のゴングが鳴った。先発を買って出たのはヘレン・ニールセンとナターシャ・ハンの両外国人だった。リング中央でいかにもEWAらしいグラウンドの攻防が続いた、が・・・
隙を見つけたナターシャがいきなり変形のドラゴンスリーパー。これが入ってしまった。

「ぐ、ゴボッ・・・・」

いきなり落ちてしまったヘレン、危険と判断した伊達レフェリーが試合を止めた。

カンカンカン・・・

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SPZ旗揚げ15周年記念試合

○ナターシャ・ハン、スイレン草薙、菊池理宇(2分31秒、ドラゴンスリーパー)ヘレン・ニールセン× スターライト相羽 ボンバー来島

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「・・・・・・・・・・・・・・・」

あとの4名出番なし。勝負タイム2分31秒。場内のファンも目が点になる。
担架で運ばれるヘレン。スッと右手を上げて勝ち名乗りを受けて引き上げるナターシャ。

あとの4人はまだぽカーン状態。

「・・・か、軽く乱闘すっか・・・」
アクシデントで決まってしまったメモリアルマッチ。まさかSPZのスター選手4人がドーム大会でまったく汗をかかないまま帰るのもアレなので、

「てめぇこのヤロー!」

来島が猛然とスイレンに襲いかかった。あとはもうリング上は4人が入り乱れる大乱闘が数分続いた。そしてスイレンのバックドロップを食らったスターライト相羽がまずのびてしまい、そのあとボンバー来島がスイレン、菊池にナパームラリアット2連発。

「UOOOOOOOOO!あたしが最強ダァーーーッ!」

たたきのめされた3人がリング上で横たわる中、雄たけびを上げてボンバー来島は引き上げた。強引なフォローに観客は笑うしかなかった。 

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結びの一番は芝田美紀対デイジー・クライ。

市ヶ谷、北条が負傷欠場したためこのようなカードが組まれた。それでも12期生の芝田がシングルでドームのメインを務めるので未来を感じさせるカードだ。打撃技を得意とする両者だけあって試合は盛り上。がった。芝田が技の切れならデイジーにはパワーがある。一進一退の攻防が続く中、終盤先に勝負に出た芝田の延髄を2.5でクリアしたデイジーが逆襲のハリケーンラッシュ。

ケリ連打をもらってしまった芝田、無念の3カウントを聞いた。なんと勝負タイム40分50秒の激闘。敗れはしたが芝田、メインの重責を果たすとともにSPZの未来を感じさせる戦いだった。

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最後にマイトス香澄の引退セレモニー。

「ボクは・・・ボクは 全力を出し切りました、悔いはありませんッ!」

マイトス香澄、顔は笑って、肩で震えながら挨拶して引き上げた。

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マイトス香澄

2016年4月14日、札幌キターアリーナ大会での南利美戦でデビュー。2024年4月21日、新日本ドームでのフォクシー真帆戦で引退。稼動月数97ヶ月、出場試合数(推定)692試合

タイトル歴
第13代・第18代SPZ世界タッグ(パートナーはハイブリッド南)

2007年10月 7日 (日)

第228回 旗揚げ15周年記念シリーズ

SPZ 旗揚げ15周年記念シリーズ

シリーズ初戦仙台大会、第1試合は氷室のデビュー戦。
まだテーマ曲はない。花道をたたっと走って氷室はリングイン。
対戦相手は今シリーズ限りでの引退を表明しているマイトス香澄。首の具合が相当悪いので今野取締役や井上霧子社長代行が「カード的配慮」したのである。

「青コーナー、富山県立山町出身、ひむろー、しづーくー」

カンッ。

午後6時37分、氷室紫月のレスラー生活が始まった。

「・・・・・・・・・・・」

リング中央で組み合う。マイトス香澄が鋭いアームホイップ。しかし氷室も起き上がって組み付いてスリーパー、ランニングタックル、ドロップキックと攻める。マイトス香澄は体調でも悪いのか、新人相手なのにあまり手数を返せない。逆に脇固めを何回もしかけられて苦悶の表情も見せる。
それでも氷室、腕の取り合いを続けていくうちに徐々に疲れが見えてきた。そこを狙ってマイトス香澄が突進、そして

「てぃやーーー!」
ランニングネックブリーカードロップ!これで全身を強く打った氷室、動けなくなり3カウントを奪われた。勝負タイム13分28秒。

「オロロキましたねえ、香澄選手とちゃんとレスリングしてましたよ」
「デビュー戦は緊張するから10分持たないはずなのに、ぜんぜん緊張していないようでしたね」

本部席で井上霧子と今野役員がひそひそ話。
一方的にやられて終わるどころか、元SPZタッグ王者のマイトスをかなり苦しめたのだから将来有望である。

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第2戦札幌大会、氷室は第2試合でガイア小早川と組んでキューティー金井、成瀬唯と対戦。キューティーの投げをけんめいにこらえて、15分12秒の試合を成立させた。最後は成瀬の逆片エビが決まり、氷室たまらずギブアップ負け。

しかしこの選手、敗れても悲壮感を漂わせることなく帰ってゆく。これは大物かもしれないと先輩たちは感じた。

第3戦は大阪ナニワパワフルドーム。氷室は第1試合で成瀬唯と対戦。氷室、脇固めを軸に成瀬を追い詰めたが、最後は成瀬が1年先輩の意地を見せてドロップキックで片付けた。

大阪大会メインはEWA選手権試合。どう見ても動員対策のために組んだタイトル戦。ナターシャ・ハン対挑戦者ギムレット美月。

「SPZのトップどころとはやりたくない、しかし弱いのもいい映像にならないからいやだ」ということで中堅どころの適任者?ギムレット美月がタイトル挑戦。ギムレット美月もすきあらば関節技をしかけていったが、ナターシャのニーリフトに悶絶。それでも16分49秒の試合を成立させた。

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第4戦広島・若鯉球場大会、氷室は第1試合でフォクシー真帆のパワー攻勢の前に手も足も出ず。8分12秒ボディスラムにフォール負け。

広島大会メインはアリス・スミルノフ、デイジー・クライの「あばしりタッグ」にビーナス麗子、ギムレット美月の10期生タッグが挑む。しかし久しぶりの来日のデイジー・クライがひとまわり強くなっていた。

「ウルァ!」

掌底でギムレット美月を流血に追い込む。ならばと同期ならではの早いタッチワークでつないでいって、最後はデイジーのハリケーンラッシュをギムレット美月が受けきって、焦ったデイジーが場外乱闘を仕掛けるが、逆にギムレット美月が場外バックドロップ、場外ドラゴンカベルナリアで反撃。

これでペースが完全に狂ったデイジー、最後はギムレット美月が「たまにしか見せない」ハイキックをたたきこんで勝利。なんと勝負タイム39分28秒の大激戦。SPZにあばしりタッグが戻ってきた。

「やったね美月ちゃん!」
10期生の2人はリング上でがっちり握手。

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第5戦・九州ドーム大会メインは菊池理宇、ボンバー来島対スターライト相羽、ビーナス麗子組のSPZタッグ選手権。相羽のパートナーのビーナス麗子がひとり格落ちなのでスターライト相羽が矢面に立たなければならないのだが、さすがSPZヘボエースと陰口をたたかれている選手だけあって来島さんのパワーに押されまくってしまう。

ビーナス麗子も懸命に菊池の動きと来島のパワーに応戦し、掌底で来島を流血させたが、疲れてタッチしたいと思ったときには相羽はリング下でうずくまっていた。ビーナス麗子、孤立。ここで来島の強烈なエルボー。
「う、うわー!」
これでビーナス麗子は3カウントを奪われた。勝負タイム29分33秒。王者組が5度目の防衛に成功。

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第6戦名古屋大会で氷室がタッグながらはじめて勝ち名乗りを受けた、といっても本人は何もしておらず、パートナーのギムレット美月が一気に成瀬をつぶして終了という試合。

名古屋大会メインはAAC選手権。王者へレン・ニールセンに挑むのはビーナス麗子。ビーナス麗子は3日連続のタイトルマッチで少し疲れていたが、シングルベルトを巻けるチャンスなので精一杯ぶつかっていった。
―ヘレンさんは強敵。とにかく殴って殴り倒すしかない。
これが通じたのか、なんと一方的にビーナス麗子が殴りまくる展開。ヘレンはサンドバッグ状態。強烈な掌底でぐらつかせて、

「はあああ・・・っ!」
走りこんでのジャンピングニーが命中!これでフォール。
ワン、トゥ、スリー!
勝負タイム13分0秒、ビーナス麗子AAC世界王者に輝く!

「社長!見た見たー?、勝ったよー!」
デビューしてから6年余り、ついにシングルのベルトを巻くところまで来た。ビーナス麗子の目に熱いものが浮かんだ。

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AAC世界選手権

ビーナス麗子(13分0秒、ジャンピングニーからの片エビ固め)ヘレン・ニールセン

ビーナス麗子が新王者となる

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そして最終戦は、新日本ドーム大会。旗揚げ15周年記念大会である。

「誰と誰が先発を買って出るか 考えるだけでも楽しい」

ボンバー来島     スイレン草薙

スターライト相羽 VS 菊池理宇

ヘレンニールセン   ナターシャ・ハン

《本誌予想倍率はこれだ!》

来島 VS 菊池 2倍 相羽 VS S草薙 3倍 来島VS S草薙 5倍

ヘレン VS ナターシャ 7倍  相羽 VS 菊池 20倍 

来島 VS ナターシャ 30倍 相羽 VS ナターシャ 50倍

ヘレン VS S草薙 99倍 ヘレン VS 菊池 99倍

「前売り券が売れてねえ・・・」

今野役員が渋い表情で。何しろ市ヶ谷欠場でメインが芝田VSデイジーでは迫力不足だし、セミのお祭り的カードも京スポに上記のような広告を打ってもらったが、ファンの反応はいまいちであった。

SPZ、いよいよ15周年。

2007年10月 6日 (土)

第227回 SPZ創立15周年記念パーティー

16年目4月
「さびしいけど、引き際が肝心だよね・・・」
8期生のマイトス香澄が引退を表明。ハイブリッド南引退後もひとり革命軍として奮闘したが、長年のツケで首をかなり痛めてしまい、当分長期ロードは危険と診断された。
ビューティ市ヶ谷が先月のタイトルマッチで右足首を負傷。ロイヤル北条もわき腹を負傷。よって欠場となった。

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「プロレス、ですか・・・」
新人スカウトで氷室紫月を獲得。今野役員と井上社長代行が富山まで出向いて口説いた。
「わかりました。これも運命・・・」
どことなくミステリアスな雰囲気ただよう少女であった。

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「ひかるさん、明日のパーティー出てね~、横浜パシフィコ。服装はどれすで。」

「みんなも・・来るんですか?」

「うんうん、懐かしい人もいっぱいきますよー」

そして4月シリーズ開幕前夜、横浜パシフィコホテルのバンケットルームで、

「SPZ創立15周年記念パーティー」

がマスコミ各社、お取引先各社を招いて盛大に行われた。会場には8ヶ所、大型テレビがセットされ、過去の名勝負が流されていた。テーブルの上には豪華な料理がこれでもか!というくらい並べられ、若手選手は肉や魚をひたすら摂取した。中央にはSPZの文字の巨大な氷細工が置かれ、来場者の目を引いた。

もうこの団体、普通に利益を稼げる状況になってきており、また設備投資もほとんど済ませており自社ビル3つの全都道府県にグッズショップを構える団体になり、ようやくこういう無駄遣いが出来る団体となったのである。

「本日はSPZ15周年記念パーティーにお越しいただきありがとうございます。忘れもしない2009年4月21日、横浜赤レンガ大会にてわずか3名の選手で旗揚げしましたが、こんにち16名の選手、多数のスタッフを擁する大きな会社となりました。」

井上霧子社長代行が挨拶。この人も旗揚げの苦しい時期からずっと裏方としてこの団体を支えてきた。

「今月もドーム興行連発というチャレンジを致しますが、初心を忘れることなく、本気、まごころ、手作り感を旗印に、選手社員一丸となって頑張ってまいりたいと思います。」

「えーそれではここで、SPZを支えてきた選手、支えている選手、これから支えていく選手を一人ひとりコールしたいと思います」

まず所属選手から。アナウンスは村越リングアナ。

「ひむろー、しづーくー!」
まだデビュー前の氷室紫月が一礼。若い順に名前を読み上げる。
「SPZ世界選手権者、びゅーてぃー、いちーがやー」
4月シリーズ負傷欠場のビューティ市ヶ谷とロイヤル北条も出席した。

「SPZ世界タッグ選手権者、ぼんばー、きしーまー」

そしてコールは進み、
「すいれんー、くさーなぎー」
最古参8期生のスイレン草薙が一礼。そして
「まいとすー、かすーみー」
今シリーズ限りで引退するマイトス香澄も一礼。

続いて今シリーズに参戦する外国人選手が読み上げられる。
「デイジー・クラーイー」
「AAC世界選手権者、へれーん、ニルーセンー!」
「EWA世界選手権者、ナターシャー、ハーンー!」

SPZの歴史は海外から来た常連外人抜きには語れない。

そして本日出席しているOG連中もコールされる。コールするのは今野役員。現役でないのでキャッチフレーズ付きだ。

「格闘サイボーグ、はいぶりっどー、みなみー!」

「生ける格闘伝説、吉田の前に吉田なく、吉田のあとに吉田なし、SPZクライマックスV6,よしだー、りゅーこー!」

この選手も現役時代は無茶苦茶な戦跡を残した化け物である。

「6時半の女、わたなべー、ともーみー!」

第1試合で盛り上げ役を担った5期生の渡辺智美。

「スープレックスマスター、ながさわー、まーいー!」
「マットの覇者、うえはらーきょおーこー!」

SPZベルトを巻いたこともあるSPZの名優2人も元気な顔を見せた。

「即売会の女王、とみざわー、れーいー!」

会場どっと沸く。

「脳天クラッシャー、さわざきー、ひかーるー!」
「殺人ヒザ魚雷―、だてー、はるーかー!」

SPZを彩った名花たちが次々にコールされてゆく。いまはそれそれ第2の人生を歩んでいるが、熱く闘った日々を忘れることはない。

「関節技の悪魔、そして今はロシア料理店「ボストーク」店長、ナスターシャ、ハンー!」

「関節のヴィーナス、みなみー、としーみー!」

初期のSPZを支えた南利美、独特のファイトスタイルは忘れられない。

「SPZのヒロイン、おがわー、ひかーるーーー!」

今野役員が奥さんの名前をコール。旗揚げの頃から目をつけていたのは関係者の間では有名な話だ。

「チーム関節地獄総裁、みみー、よしはらー!」

SPZ初代エースはこの人だった。いまは34歳、結婚して第2の人生を送っている。

OGたちが紹介されたあと、

「元KJW世界王者、氷のヤクザキック、いのうえー、きりーこー!」

どおおおおおお!

井上霧子までコールされる。参会者はそれだけで盛り上がった。SPZを支えてきた名優たちが壇上に上がる。

「乾杯の音頭は、特別ゲスト、SPZ旗揚げ戦第1試合で勝利を挙げた元AACのジュリア・カーチスさんにお願いいたします!」

すっかりイメージが変わったジュリア・カーチスが短めに挨拶した後、

「カンパイ!」

こうして楽しいパーティーが盛大に行われた。

「いやー、ここまでこの団体が大きくなって15年も持つなんて思わんかったわ」

井上霧子はやはり赤ワインを飲んでご機嫌。

「ほんと、日本のプロレス界を引っ張ってますよ~」

「この勢いは当分続くんじゃあないのかな」

京スポ新聞若林記者、大日本テレビの森アナウンサー、SPZの名を全国に広めた伝道師たちだ。

「これからもどんどん注射打ってあげるわね~」

リングドクターの羽山さん。選手たちが大きな事故を起こさなかったのはこの人の力が大きい。

「SPZって凄い会社だったのね~」

「・・みんな、いい顔してるね。」

喫茶「あばしり」の鈴波店長、日本料理「よこ川」マスターの横川さんもパーティー会場に姿を見せた。腹が減っては戦はできない。SPZの選手の腹ごしらえの係りをやったのだから貢献度はひじょうに大きい。

「今野さん」

井上霧子がいつものように出来上がっている。

「井上さん、明日は釧路で興行なんだから、はははは」

「別にワイン5杯くらいなんともないわよ。・・・このシアワセが、少しでも長く、続いたらいいですね・・・」

「そうだね、ここまで大きくなると維持管理もタイヘンだけど。みんなの顔見るとね、ははは。」

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SPZ旗揚げ15周年記念興行

「未来へ向かって」

2024・4・21 新日本ドーム

主催:㈱スーパースターズプロレスリングゼット

後援:大日本テレビ 京スポ新聞 喫茶あばしり

■ダブルメインイベント -a will-

芝田美紀 VS デイジー・クライ

■ダブルメインイベント SPZ旗揚げ15周年記念特別試合

ナターシャ・ハン    ヘレン・ニールセン

菊池理宇    VS  スターライト相羽

スイレン草薙      ボンバー来島 

■マイトス香澄 最終試合

マイトス香澄  VS  (対戦相手未定)

■ガイア小早川デビュー7周年記念試合

ガイア小早川      ビーナス麗子

ギムレット美月  VS キューティー金井

他、数試合予定(負傷などによりカードは変更となる場合があります)

特別リングサイド10,000円 リングサイド7,000円 アリーナ席5,000円 内野スタンド席4,000円 外野スタンド席3,000円

2007年10月 5日 (金)

第226回 新時代幕開け最凶お嬢様伝説

そして3月シリーズ「バトルアトランティス2024」開幕。

第7戦千葉大会で組まれたのはSPZタッグ選手権。。ボンバー来島、菊池理宇組に挑むのは強力外人コンビ、ハイサスカラス、ヘレン・ニールセン組。

後半、菊池が捕まってしまい、ハイサスカラスのムーンサルト2連発であわやというところまで追い込まれ(かろうじてロープに逃げた)、ハイサスカラスがめったに見せないラ・マヒストラルまで出してきた。(菊池はなんとかカウント2.9でクリア)

しかし最後は菊池、逆転のタイガードライバーでハイサスカラスを仕留めた。勝負タイム42分50秒の激闘の末、王者組が4度目の防衛に成功。

最終戦はさいたまドーム大会。

第1試合はフォクシー真帆対成瀬唯。地方会場では脇固めが入ったりして紺シリーズ何回か勝利している成瀬だが、今日は一方的に攻め込まれて最後はドロップキックに3カウントを奪われた。勝負タイム6分19秒。

第2試合はマイトス香澄、キューティー金井対ガイア小早川、ギムレット美月。12期生のキューティー金井もきっちり力をつけてきてギムレット美月をノーザン、バックドロップで追い込む。後を受けたマイトスも奮起してノーザン。これでギムレット美月から3カウント奪取。勝負タイム15分23秒。

第3試合はビーナス麗子対AAC王者へレン・ニールセンのノンタイトル戦。投げあい蹴りあいの結構熱い闘いとなった。しかし最後はヘレンのバックドロップ。1度目は空中で切返したが2度目はまともに食らって万事休す。勝負タイム15分9秒。

休憩明けの第4試合はロイヤル北条、フレイア鏡対ハイサスカラス、イレーヌ・シウバのタッグマッチ。しかしこのメンツではハイサスカラスの実力が頭ひとつ抜け出ている。お嬢様軍団もイレーヌに狙いを定めよく粘ったが、最後はロイヤル北条がつかまってしまい、ムーンサルトにカウント3を喫した。勝負タイム24分45秒の熱戦。

ここから3大シングルマッチ。

セミ前は菊池理宇対スイレン草薙。

―もう一度、SPZベルトを巻きたい。

このままズルズルとトップグループから後退したくない。スイレン草薙は気合いが入っていた。

そのためには菊池には負けられない。菊池が痛め技への対応が甘いことを見越して延々とサソリ固めで弱らせる。そのあとバックドロップ3連発。鬼気迫るスイレンの攻めに菊池はあえなく撃沈。勝負タイム13分28秒。今日の菊池はほとんどいいところがなかった。

セミファイナルはスターライト相羽対芝田美紀。

―いつまでもお嬢様軍団のナンバー2じゃなくてよ。

芝田が相羽相手にも臆せず掌底を叩き込んで行く。トップグループに入るには相羽をなんとしても倒したいのだろう。
早い段階で延髄をたたきこんで相羽を追い込む。相羽もアームホイップやタックルで反撃するが隙を突いて2発めの延髄斬り。

「ぐっ・・・」
前のめりに崩れ落ちるスターライト相羽、ひっくり返してフォール。
ワン、トゥ、スリー!

勝負タイム15分1秒、芝田美紀勝利。元SPZ王者でトップグループの一角、スターライト相羽を倒してしまった。さいたまドームはどよめきに包まれた。これで芝田もかんぜんに「SPZ王座挑戦者」のローテーションに入ったといえるだろう。

「そんな、芝田・・・さん・・・にまで、負ける、なんて・・・・」

がっくりとして引き揚げるスターライト相羽。

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メインはSPZ王者ボンバー来島にビューティ市ヶ谷が挑戦するタイトル戦。

市ヶ谷、10月に惜敗してから再挑戦のチャンスが回ってきた。

ー来島さんは確かに強い。でもわたくしが頂点に立つにはどうしても勝たなくてはならない相手。

ゴングが鳴るやいなや、いきなり市ヶ谷ラリアット。しばらくはごつごつした投げ合い殴りあい、5分過ぎいきなり市ヶ谷が

「マットにひれ伏しなさい!」
ビューティボム炸裂。試合の組み立ても何もあったものではない。勝つためには早めはやめの仕掛けが必要と感じたのか。

「ウオオーっ!」
しかし来島もナパームラリアットで反撃。このあとは大技の応酬となった。しかし、市ヶ谷のDDT、パイルドライバーで来島の動きが鈍った。
―今なら勝てる。
そこを逃さずデスバレーボム。重量級のボンバー来島を抱えあげて頭から落とすのだから凄い。衝撃がすべて来島の頭へ。そのあとフォール。

ワン、トゥ、スリー。

「17分33秒、デスバレーボムからの片エビ固めでビューティ市ヶ谷の勝ち」

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SPZ選手権試合

ビューティ市ヶ谷(17分33秒、デスバレーボムからの片エビ固め)ボンバー来島

第42代王者が5度目の防衛に失敗、ビューティ市ヶ谷が第43代王者となる。

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「いちがや!いちがや!いちがや!いちがや!」
館内賞賛の市ヶ谷コール。
「オーッホッホッホッホ!ついにSPZの頂点を獲りましたわ!」
高笑いする市ヶ谷。13期生で入団して、3年で栄冠を勝ち取った。
「かいせつの上原さん、市ヶ谷選手が勝ってしまいましたね」

「そうですね。来島選手が先に大技を食らって動揺しちゃいましたね。大技の出し合いなら瞬発力は向こうのほうがあるわけですから、相手のペースにはまってしまいましたね。」

旗揚げから15年、SPZの時代はどんどん動いてゆく。

2007年10月 4日 (木)

第225回 来島さんでも勝てるレッスルエンジェルス

15年目2月シリーズ(続き)

第7戦神戸大会メインはAAC選手権、王者ギムレット美月に対するはヘレン・ニールセン。
「まあ・・・やるしかないですね・・・」

相手はEWA系の強豪レスラー、立ち技ではまず勝てないと考えたギムレットはとにかく寝かそうとするが、相手もそれは百も承知。

強烈なラリアット、ニーリフトで主導権を握る。そしてシャイニングウィザードであっけなく3カウントが入り、ギムレット美月はベルトを手放した。勝負タイム16分22秒。

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

1回はメキシコで防衛したものの、2ヶ月でベルトを手放すことになったギムレット美月。

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そして最終戦、横スペ大会。メインはSPZ世界選手権、王者ボンバー来島に挑むのはスターライト相羽。元SPZ王者のスターライト相羽、他の挑戦者がことごとく来島さんに屈したので、ようやくチャンスが回ってきたが、やはり来島さんの重量感あふれる攻撃に苦戦。

「おらっ!」

強烈ヘッドバットがスターライト相羽をたじろがす。スターライト相羽も脇固め、ヒップアタックと来島を崩しにかかるがー

「どうりゃっ!」
来島裏投げ。これ以上は受けられないと判断した相羽バックドロップ。来島続くフォールをカウント2.5でクリアして、

「ウリャーーー!!」

ボンバー来島、豪快なパワーボム。S相羽どうにか2.8で返す。
ボンバー来島、ジャーマンを狙うがS相羽、前方回転エビで切り返す。
ボンバー来島来島休まず攻めてエルボー、しかし相羽2.9で返す。
ドドドドドド!

ー今回負けたら、次のチャンスはたぶん、ない。

SPZフロントのS相羽への評価の低さには薄々本人も気づいている。将来的にはビューティ市ヶ谷をトップにすえる会社の方針というのも理解している。だからこそ、ベルトを取って、あの酒びたり(井上霧子)の鼻を明かしてやりたい。

「アーーーーーーーーーーっ!」

相羽、すばやく組み付いて最後の力を振り絞ってタイガースープレックス!来島をカウント2,5まで追い込む。しかし先に立ち上がったのは来島のほう。

ーあたしだってスーパースターだ。

「ウオオオー!」

ナパームラリアット。豪腕を思いっきりたたきつけた。首筋に衝撃を受けて相羽、頭からマットへ。これはダメだ。これで3カウントが入った。勝負タイム30分30秒。

「ハァ、ハァ・・・へへ、やったぜ。」
ボンバー来島4度目の防衛に成功。もうこれはSPZで一時代を築いたと言えるだろう。

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SPZ世界選手権(60分1本勝負)

ボンバー来島(30分30秒、ナパームラリアットからの片エビ固め 30分30秒)スターライト相羽

第42代王者が4度目の防衛に成功

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(筆者より、いつもより短めですが、酔っ払っているのと話の区切りの関係上きょうはここで切ります。次回でSPZ、まる15年となります!)

2007年10月 3日 (水)

第224回 冬の鳥取

15年目2月。
菊池理宇ファースト写真集「HIBARI」発売。努力の人でSPZ王者にまでなった選手がついに写真集を発売。ファンの間では騒然となった。

そして2月シリーズ「ウインター・ラグナロク」が開催。日本海側の都市を回るシリーズである。

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3戦目の鳥取大会。
「菊池も馬鹿だよなあ、2月の鳥取休むなんて」
SPZ王者の来島さんは会場入りから上機嫌。なにしろ冬の鳥取。試合がはねたらおいしいカニ鍋をつつきにいくのである。

前の日は松江で試合、SPZご一行を乗せたバスは14時ころ鳥取体育館に到着。すでにリングはリング設営スタッフにより組みあがっていた。若手選手はリング上で入念にスパーリング。

「ふっ、ふっ」
ボンバー来島は体育館の隅で一人スクワット。

スイレン草薙は体育館の外周を黙々と走りこむ。
「雪が・・・降ってきましたね」

今野役員は会場スミの会議用テーブルに選手グッズを並べ始めていた。最近の売れ筋は「来島さんTシャツ」である。井上社長代行はプログラムを取り出していた。

17時30分、
「開場しまーす」
村越リングアナの声で選手は全員控え室に散る。ちなみに部屋割りは以下の4つ。
① お嬢様軍団(B市ヶ谷、芝田、R北条、F鏡)
② SPZ正規軍(S草薙、S相羽、V麗子、G美月、G小早川他)
③ 吉田キラーマシン軍(B来島、F真帆、吉田プロデューサー)
④ 外人さん(ハイサスカラス、ヘレン、イレーヌ、トーニャ)

ほどなく観客がわらわらと入ってくる。井上社長代行、今野役員、会場スタッフがプログラムを配布。そして18時半の試合開始を迎えた。

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まず吉田龍子取締役プロデューサーが軍服のような服に身を包みリングイン。ジャージ姿のフォクシー真帆とボンバー来島を引き連れている。

「ようこそ、鳥取の皆さん。今日は雪なのにSPZプロレスを見に来てくれてありがとう。さてそれではSPZのシングルとタッグのベルトを独占している最強軍団・吉田キラーマシン軍のメンバーを紹介しよう。福岡の怪人、パワーを武器にSPZ王者にまでのしあがったとんでもないヤツ、ボンバー来島」

「そしてこっちが、岩手県の巡業中に拾ってきた野生少女、まだ若手だけど計り知れない力を持つ新星、フォクシー真帆だ」

「あときょうここにはいないんだけど、ちっこいの、菊池理宇。ファースト写真集は3月1日、書店にて発売だ!来島さんの写真集はやっぱり売れなかったけどな。今度は期待しても良いと思う」

ははははははは。

場内爆笑。ネタにされた来島さんは頭をかくしぐさ。

「お願いじゃなくて命令するぞ、写真集、菊池ファンは最低3冊買え!買ってわれらキラーマシン軍の資金集めに協力するのだ、いいか、SPZの動かすのはな、酒びたり(井上霧子)でも新婚おやじ(今野役員)でもヘボエース(S相羽)じゃなくて、吉田キラーマシン軍だ!それじゃあ今日はせいぜい楽しんでいってくれよ!」

ヘタウマなマイクパフォーマンスが終わった後、村越リングアナウンサーがカードを読み上げる。そのあと、

カン、カン、カン、カン、カン・・・・・

今野役員がゴングを鳴らす。沸きあがる鳥取のファン。

そして第1試合をさばくレフェリーの上原今日子がリングに上がって、そのあと成瀬唯のテーマ曲がかかる。花道をダッシュしてリングインする成瀬。

第1試合は成瀬唯対トーニャ・カルロス。新人の成瀬、とにかく打たれ弱い。ローリングソバットで動きが止まってしまう。それでも脇固めで勝ちを狙いにいく。しかしトーニャもAACのベテラン。落ち着いてロープに逃れて、スクラップバスターで成瀬をたたきつける。これで3カウントが入った。勝負タイム11分28秒。

「くっ・・」
成瀬唯、同期がいないせいもあってまだシングルマッチで勝ったことがない。悔しそうな面持ちで花道を引き上げた。

第2試合はガイア小早川対スターライト相羽。

9期生の同期対決だが、実力は「ヘボエース」の相羽が断然上である。ガイアのドロップキックなどすばやい動きにも動じない。ころあいを見て裏拳。これでガイア小早川の動きが止まった。
「そろそろ本気で行くよ!」
スターライト相羽の必殺技、タイガースープレックスが決まる。ガイア小早川返せず終了。勝負タイム9分1秒。いくら地方大会とはいえ、実力では団体最強クラスの相羽が第2試合に出てくることが会社の相羽に対する扱いを物語っている。

その試合が終わると休憩。

休憩明け19時30分からは第3試合、ボンバー来島、フォクシー真帆対スイレン草薙、ギムレット美月のタッグマッチ。SPZチャンピオン、ボンバー来島の登場に会場ドオオオオと沸く。まずボンバーが持ち前のパワーで痛めつけてフォクシー真帆とタッチ。フォクシーも懸命にギムレットのカンセツ攻撃を受けきって来島にタッチ。最後はギムレット美月がつかまってしまい、ボンバー来島が高~く抱え上げて・・・
ドォォン!パワーボム炸裂。スタンダードな技でもこの選手がやると威力満点。あぶないとスイレン草薙がカットに入ろうとするがフォクシーが立ちはだかる。13分0秒、これで試合は終わった。

セミファイナルは芝田美紀対ビーナス麗子のシングルマッチ。人気選手、ビーナス麗子の登場に館内沸く。今日の対戦相手はお嬢様軍団のナンバー2、芝田である。序盤はドロップキックの打ち合い。芝田の突進をかわしてアームホイップ。そしてハイキックで追い込んだが、続くブレーンバスターをしかけたが、力比べのすえに逆に投げ返されて形勢逆転。ここで芝田が延髄斬りで反撃。これでビーナス麗子の動きが止まった。

「はっ!」

最後は芝田の裏拳がクリーンヒット。崩れ落ちるビーナス麗子。これで3カウントが入った。19分40秒の激闘。かなりの打撃戦となったのでものすごい拍手が送られた。

メインイベントはお嬢様軍団対外国人選手の6人タッグマッチ。ビューティ市ヶ谷、ロイヤル北条、フレイア鏡にハイサスカラス、ヘレン・ニールセン、イレーヌ・シウバが激突。

しかし先発を買って出た市ヶ谷がいきなりラリアットを連発して外人組にペースを握らせない。
「おーほほほほ、たあいもない。しばらく頼みますわよ」
そのあとロイヤル北条とフレイア鏡の出番を少しずつはさんだあと市ヶ谷が再登場!
「覚悟なさい!」
ものすごい裏拳がハイサスカラスを襲う。しかしトドメを狙ったハイキックは、ハイサスカラスにうーまく水面蹴りで返された。気勢をそがれた市ヶ谷はロイヤル北条にタッチ。

ロイヤル北条とへレンがシビアな攻防を展開。そしてフレイア鏡が再び登場。ここを逃す外人組ではなかった。
「セイッ!」
ヘレンがアームホイップで転がして、タッチを受けて入ってきたハイサスカラスがいきなりムーンサルトプレス。菊池のそれとは違って気品すら漂う宙返り弾。これはカウント2.8で返したフレイアだったが、ここで外人組が動く。

ヘレンとイレーヌが控えていた市ヶ谷と北条におそいかかって場外乱闘に持ち込む。ふらふらと立ち上がるフレイア鏡。ハイサスカラス、そこを狙いすましたラリアット一撃!これで3カウントが入った。勝負タイム20分31秒。

メインが終わったのが20時35分、手早く着替えを済ませたSPZの面々は移動バスに乗り降りしきる雪の中、宿泊先のホテルに向かった。

「カニ♪カニ♪」
ボンバー来島は若手選手を誘ってカニ鍋をつついた。

2007年10月 2日 (火)

第223回 15年目1月 新春ドーム決戦 ボンバー来島×スイレン草薙

15年目1月

スターライト相羽のセカンド写真集「HAKUSAN」発売。

「トップ取りを諦めてお色気路線か?相羽ちゃんは・・・」(吉田取締役)

ギムレット美月はAACへ防衛戦のため遠征。

「スペイン語はばっちりです。メキシコでひと暴れしてきます」

EWAがまたも新日本女子に提携先を乗り換える。常連外人を作るSPZの手法の妨害工作である。したがって1月シリーズ「新春エッセンシャルシリーズ」の参加外国人選手は3名のみとなった・・・

1月5日、新春の新日本ドーム決戦。

「いてこましたる!」
第1試合は成瀬唯(15期)対AACのトーニャ・カルロス。
「もう逃げられへん!」
逆片エビ固めで勝負に出た成瀬だったが、カルロスは落ち着いてロープに逃げた。そのあと鋭いローリングソバットで反撃。
「ううっ・・・」
打たれ強さに難のある成瀬、この一撃で動きが止まってしまい3カウントを喫した。勝負タイム9分52秒。

第2試合はビーナス麗子(10期)対マイトス香澄(8期)。
「がんばれー、かくめー軍!」
会場のファンから声援が飛ぶ。ハイブリッド南が引退してからの革命軍は廃部寸前の部活動の様相。この日もマイトス香澄、ビーナス麗子と小気味よいファイトを繰り広げるも最後は12分53秒、キャプチュードに敗北。

第3試合はガイア小早川(9期)対キューティー金井(12期)。アイドルレスラーのキューティー金井、入団時は想像を絶する弱さだったが、もうレスラー生活も4年を迎え、普通のレスラーっぽくなってきた。この日は元SPZタッグ王者のガイア小早川を押し込む。

「これでどうだぁ!」
キューティー金井のエルボーがガイア小早川をぐらつかせる。しかしアイドルレスラーには負けられないと感じたガイア小早川もミサイルキック、裏拳と猛反撃、意外に熱い攻防にファンは大歓声。

「必殺技いっきまーす!」
キューティー金井、必殺技のバックドロップ。これで頭を打ったガイア小早川は3カウントを許してしまった・・・

「勝っちゃった~」
勝負タイム14分33秒、ようやく12期生のキューティー金井が9期生のガイア越えを果たした。

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休憩明けの第4試合は菊池理宇(11期)が登場。若手のフォクシー真帆とタッグを組んで、芝田美紀(12期)、フレイア鏡(14期)のお嬢様軍団と激突。フォクシーとフレイアの14期生同士が熱い戦いを繰り広げるが、最後は菊池のDDTがフレイア鏡を沈めた。

セミファイナルはビューティ市ヶ谷(13期)、ロイヤル北条(13期)のお嬢様軍団コンビががヘレン・ニールセン、ハイサスカラスと対戦。やはり市ヶ谷が外人2人をボコボコにのしたあと、「クローザー」ロイヤル北条が満を持してバックドロップ。ハイサスカラスからカウント3を奪った。

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そしてメインイベント、SPZ選手権。

王者ボンバー来島に挑むのは前王者スイレン草薙。

「たぶん、SPZのベルトに挑戦するのはこれが最後でしょう」

8期生のスイレン草薙もいつのまにか団体最古参となり動きに翳りが見え始め、以前は問題にもしていなかったボンバー来島との力関係は逆転してしまった。が、B市ヶ谷や菊池と若い挑戦者が敗れたので前王者のスイレンにまた、チャンスが回ってきた。

だがー

「くらいやがれ!」
ボンバー来島のボディスラム、タックルにスイレン手数を返せない。ショルダータックルに跳ね飛ばされてしまう。

「あーっとこの衝撃は交通事故級だ~」

スイレンもストレッチプラムで反撃。しかし来島力任せに外す。スイレン、ノーザンで投げてから再度ストレッチプラム!投げまくりができなくても絞め技極め技がある。
ドームものすごい歓声。しかしボンバー来島、なんとか耐え切って外す。場内ため息。
ボンバー来島裏拳、スイレン草薙、カウント2.8で返す。館内に悲鳴が交錯する!

「おうらあ!」
ボンバー来島、容赦のないパワーボム
ワン、トゥ、スリー。
「30分32秒、パワーボムからのエビ固めでボンバー来島の勝ち」
これで42代王者が3度目の防衛に成功。

「おっしゃー!勝ったぞーーーー!!」

「来島さんがチャンピオン、団体エースってのもちょっとね。やはり将来を見据えてルックスと実力を兼ね備えた次期エースを育成しないといかんな・・・・」

今野役員が本部席で呟く。

「市ヶ谷さん北条さんのお嬢様軍団を売り出しましょうよ。そのほうが女性ファンがつきそうじゃないですか」

井上霧子は別の路線を考えている。

「やだやだ、そんなのSPZのテイストじゃない。もっとこう、キュートで、ポップな・・・」

「このエロ親父め・・・」

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そのあと1月シリーズは地方巡業。最終戦の新潟大会、メインに組まれたのはSPZタッグ戦。王者:ボンバー来島、菊池理宇に対するは、スイレン草薙、ガイア小早川の前王者組。だがスイレンのパートナー、ガイア小早川の動きも相当落ちてきている。序盤にタッチを受けて出てきて、菊池に簡単に転ばされていきなりムーンサルトを食らってしまう。

こうなってしまってはスイレンのローンバトルとなった。スイレン草薙は来島とはド迫力の攻防を繰り広げたが、やはり大ダメージを負ってしまう。あとはダメージの深いガイア小早川を菊池が簡単に料理した。フィニッシュは裏投げ。勝負タイム24分52秒、王者組が3度目の防衛に成功。

2007年10月 1日 (月)

第222回 夢のマスターズ戦 後編

SPZプレイ日記 連載200回記念完全妄想作話

「15年目12月 夢のマスターズ戦 後編」

引退した選手たちの熱い?闘いが繰り広げられた。

① ○新咲祐希子(5分22秒、スクールボーイ)永沢舞●

② ○沢崎光(4分56秒、片エビ固め)上原今日子●

③ ○渡辺智美(5分30秒、リングアウト)吉田龍子●

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セミファイナルは1年前に引退したばかりのハイブリッド南がトレーニングウェア姿で登場。タッグパートナーは京スポ新聞の若林太郎記者。

対戦相手は今野役員&X。

「何で私がこんなことを・・・」

まず背広にネクタイ姿の今野役員がリングイン。そのあと、「スピード」のテーマがかかり、青コーナー側からライダースーツ姿の女が登場し、リングインするやメットを脱いだ。

ウォォォォォォ!
南利美が久々に公の場に姿を現した。後楽園プラザは爆発した。

ハイブリッド南が実の姉を挑発。

「今からやるのはレスリングじゃあないわ。喧嘩よ。」
「・・・仕方ないわね」

ゴングが鳴り、南姉妹が殴りあいベースの攻防をやってのけた。しかし南利美、もう30になろうとする御歳なのでスタミナに難があり、5分ほどで息が切れてしまって今野役員にタッチ。ハイブリッド南も若林記者にタッチ。そのあとはおじさん2人のもみ合いが数分続いた。レスリングとは言えない押し合いへし合いが続いた後は打撃?の攻防。

「キエー!このエロ新聞がぁーー!」

今野役員が大げさなフォームで手刀をうちこめば、

「オラー、このゼニゲバ団体が~」

若林記者もスレッジハンマーのような形で殴ってゆく。まるで駅のホームで酔った親父同士の喧嘩だ。レベルの低い攻防をコーナーで見守る南姉妹。

この攻防を制したのが若林記者。

「うらやましいぞこの新婚エロ親父!」

ナックルパートが命中。バッタリと倒れる今野役員。そして、若林記者が倒れた今野役員に。

「死ねオラー、フィストドロップ!」
その場でジャンプして、拳を落としていった。なんと懐かしい技を出してくるのだ。

「うががががが・・・」
頭を押さえて苦しむ今野役員。

「もらった!」
片エビでフォールする若林記者、しかし南利美が蹴りを入れてカット。ここで試合が動いた。ハイブリッド南がコーナーを飛び出す。しかし南利美はハンマースローで若林記者を振って、リング上で激突させた。このあたりの判断の鋭さはさすが。

「がっ!」
衝撃でリング下にわざとらしく転げ落ちるハイブリッド南。

「この技に耐えられるかしら?」
場内大歓声。ふらつく若林記者にしかけたのは、
出たー。
往年の必殺兵器、飛びつき腕ひしぎ逆十字固め!

「あ、あぎゃあ~!」
若林記者の右腕が変な方向に曲がってゆく。たまらずギブアップ。
「9分9秒、飛びつき腕ひしぎ逆十字固めで南利美、取締役今野組の勝ち」

ドオオオオオオオ!

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そしてメインイベント。まず青コーナー側から、伊達遥が入場。場内爆発。SPZの看板選手だった伊達遥がついに一夜限りの復活。しかも現役時代と変わらない鳳凰をあしらったコスチュームで入場。

ぽろん、ぽろぺろん。

そして、ほわーんとしたメキシコ音楽が流れ出した。
誰だ誰だ?ざわつく場内。銀色の覆面に黒いTシャツ。赤いパンタロン。細い身体の線にどことなく見覚えが・・・
ここでビーナス麗子リングアナがマイク。

「エル・オガワ・メンドーサ!」
場内大歓声。正体はもうあの選手だろう。監査法人の仕事で少しはストレスがたまっていたのか、一夜限りの参戦をダンナの今野役員が打診したところ、快く?引き受けたらしい。
そして赤コーナー。
「富沢レイ入場!」

コスプレのつもりなのか、中国拳法服に身を包んだ富沢レイ(SPZ2期、11年目引退)が花道を駆け抜けリングイン。元人気レスラーの登場に場内沸いた。

「ヨッパライダー井上入場。」
黒いジャンプスーツに身を包んだ井上霧子が入場。左手には赤ワインの瓶が。コーナーに登って赤ワインを飲むパフォーマンス。

「ああ!すでに出来上がっている!」
顔が微妙に赤い。
そしてメインのゴングが鳴ってしまった。

「iAhi esta!」(日本語訳:そこだ!)
引退したルチャドーラ、E・O・メンドーサが先発。富沢レイとがっちり組み合う。それだけで大歓声。そのあとバックの取り合いなどの基本的な攻防をしっかりやってのける。

「iTe voy a matar!」(日本語訳:ぶっ殺す)
メンドーサが物騒な言葉を吐きながら、富沢にエルボー。しかし富沢もチョップでやり返す。SPZ初期を思わせる攻防にファンは拍手。

コーナーに控える井上霧子は控えている間も赤ワインをラッパ飲みしている。
しかし7分ころ、メンドーサのスタミナが尽きた。普段座り仕事であまり身体を動かしていないツケがきたか。

「ゼェ、ゼェ・・・」
「ふふふふっ、トドメさしちゃる。破邪炎舞脚!」

しかしメンドーサ、うまく転がってかわす。このあたりのうまさはさすが。そして

がりがりがりがりがり。
メンドーサ、富沢の顔面をかきむしって、青コーナーに控える伊達にいい流れでタッチ。

・・・ 一気に決める!
伊達、富沢に組み付くや。
ごす、ごす、ごす。
殺人ヒザ魚雷!
現役時代に比べると破壊力は大幅に下がっているが、それでも富沢を苦しませるには充分だった。そしてふらふらと立ち上がってきたところへー

SPZキック!
場内狂喜。
これで大ダメージを負った富沢はヨッパライダー井上にタッチせざるを得なくなった。

「富沢さん、お願いね」
なんと富沢、コーナーには戻らず伊達のバックを取って羽交い締めに捕らえる。

「な、井上・・・さん何するのう?」
「必殺、カルベネ・ソービニヨン、死ぬまで飲め・・・」

井上霧子、赤ワインのビンを押さえつけた伊達遥の口元へ。強制イッキ。
「・・・うご、ああああっ」

赤ワインを一本飲まされてしまった伊達遥ダウン。そのまま場外に転落し意識不明となった。場内ドン引き。

「さあ、ひかるちゃん、もう逃げられないわよ♪」

2対1の状況、ざわつく後楽園。
富沢レイ、EOメンドーサも羽交い絞めに捉え、新しい赤ワインをリング下から持ってきた井上が飲ませようとする。

「必殺、カルベネ、ソービニヨン、死ぬまで・・・」

さすがに今野役員が乱入。セミで激闘を繰り広げたばかりだがそんなことはいってられない。嫁さんのピンチ?にリングインし、井上から赤ワインを奪って、

「そんなに酒が好きなら、お前が、飲めぃ~」

こんどは井上に飲ませるという反撃。ある意味死闘、酒飲みデスマッチとなった。

「HAUUUUUUUUUUUU!!」

赤ワインを一気飲みさせられて完全に酔っ払った井上霧子、これでスイッチが入ったのか、

「ヤクザキック!」

まず今野役員を蹴り飛ばして戦闘不能に追い込んだ。
「iBasta ya hijo de puta」(やりやがったなテメー!)

E・Oメンドーサが反撃してくるが、あっさり、

「ヤクザキック!」  吹っ飛ばす。
そして味方、パートナーのはずの、富沢レイにも

「ヤクザキック!」  ものすごい蹴りで
「あーれー!」倒してしまう。

―これはいけませんね。
レフェリーのギムレット美月(現役・選手会長)が止めようとするが、

「ヤクザキック!」
ものすごい蹴りが炸裂。AACチャンプを一撃でノックアウト。井上霧子が酔った勢いで暴走しまくっている。

「いかんもうだめだ試合どころじゃない!」
本部席の上原コーチがゴングを乱打。
カンカンカン・・・

「11分2秒、レフェリーへの暴行で井上霧子、富沢レイ組の反則負け」
そう言ってから上原コーチとビーナス麗子リングアナが酔って暴走した井上霧子を止めるためにリングイン。
「ヤクザキック!」
 「キャー」ビーナス麗子もダウン。
「ヤクザキック!」
 「ウオー!」上原コーチも倒された。
リングにノックアウトされた6人(今野役員メンドーサ富沢レイG美月V麗子上原今日子)が死屍累々横たわる中、井上霧子がまたワインを飲みながら勝鬨を上げる。

「アイアム、キリコ! ゲチュ&%#$¥・・・(そのあとは何を叫んだかわからない)」
強引な結末にファンは唖然。こうして夢のマスターズ戦は終わった。

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