20年目12月 年末恒例:SPZ選手会主催興行。
(この回はリプレイではなく、完全妄想作話です。)
「さー、選手会長はウチや。選手会こーぎょーやって、儲けたろか~」
横浜のお嬢様プロレス団体・SPZには年末なら何をやってもいいという風土があり、ここ数年マスターズ戦と選手会主催興行が隔年で行われている。今年企画した「幹事」は成瀬唯選手会長。しかし負傷欠場者が5人もいて、かつJRの面々と極悪ヒールのライラ神威はこの手のイベントには参加しないので、アトラクション編成には苦慮したらしい。
「がっぽり儲けて、冬休みに選手会でワイハ行くで~」
ということで2028年12月31日、昼下がりの後楽園プラザ。まともな試合は2試合しか組まれていないが、SPZ選手会興行は2000名の観衆を集めた。
第1アトラクション:渡辺智美歌謡ショー
正午にイベント開始。場内が暗転し、いきなりスピーカーから大音響が。そしてリングに上がったのはドレス姿の渡辺智美!!
ーああ、 知床、知床、オホーツクの海ぃぃぃ、
想いは はかなく 散ってしまったーーーー
ーああ、 知床、知床、オシンコシンの滝ぃぃぃ、
涙に濡れた ウトロ の 港ーーーー
イベント開始とともに登場したのはSPZ5期生の売れないタレント渡辺智美(30)による歌謡ショー。元アイドルレスラーという肩書きを引っさげて芸能界入りしたが、最近は2時間ドラマの犯人役でたまに出てくるくらいの売れないタレントになってしまった渡辺、年末年始も古巣での営業活動せざるを得ない状況。それでもこの夏にリリースした新曲「知床の海」など3曲を熱唱。後楽園プラザはそこそこ盛り上がった。
「今年も紅白には出られませんでした。(場内笑い)来年もCDを出していきますので、どんどん買って頂いて、私を紅白へ送り込んでくださいっ!」
館内は失笑に包まれた。
第2アトラクション:16期生トークショー
(聞き手:京スポ新聞若林記者):「来年の意気込みを聞かせてください」
氷室紫月:「運命・・・・」
ラッキー内田:「そろそろ市ヶ谷政権を止めたいと思います。来月の新日本ドーム、期待してください」
マッキー上戸:「タッグベルトを守り抜くぜ!!全員ぶっ潰してやる!!」
負傷欠場中のラッキー内田、マッキー上戸、氷室紫月の16期生3人が登場。まったりとしたトークショーを繰り広げた。
第3アトラクション、シングルマッチ
休憩前は普通のシングルマッチ。久々に流れた「oblivion」、
館内これだけでドワアアアア。
登場したのは昨年8月にSPZマットを「退職」したギムレット美月。いまは各地のインディー団体を転戦してプロレスの普及を図っている。昨年のマスターズ戦以来、1年ぶりにSPZのリングに帰って来た!
「赤コーナー、岐阜県垂井町出身、ぎむれっとー、みつーきー」
ドワアアアア!
対戦相手はメキシコから来たという設定の謎の覆面レスラー、エル・ウトンベリノ99.正体はギムレット美月の知り合いのインディー系レスラーらしい。
ゴングが鳴るや往年のねちっこいレスリングを見せるギムレット美月。そして右腕に狙いを絞り一点集中攻撃。このあたりのうまさはさすが。対戦相手のウトンベリノもラリアットやパワースラムなどで攻めたが、ギムレット美月、不利になると場外へエスケープするというズルーイ手を使う。
追ってきたウトンベリノに対して、
「すみません、ちょっとそれ貸してください」
リングサイドの観客が飲んでいた缶ビールを凶器に使用。
ポカポカポカポカポカ!
ウトンベリノをヘッドロックに捕らえて、ビール缶で頭をぼかぽか。このあたりはインディー団体を転戦して覚えたムーブ。飛び散るビール。これで形勢逆転に成功。
最後はリング内に戻って、ダブルアームスープレックスをねらう。
「んんーーーーーーー!!」
力のこもるギムレット美月、投げられまいと下から踏ん張るウトンベリノ。この攻防だけで1分以上見せてしまうのだから凄い。
「んん~~!」
力のこもるギムレット美月、しかし元々パワーのある選手ではないのでやはり投げられない。いったん腕のフックを解いて、
がすっ!
げんこつ一撃。そして顔面かきむしり。
これで怯んだウトンベリノ、すかさずもう一度腕をフックして、
「んんーーーー!!」
こんどはなんとかダブルアームスープレックスで投げきった。そのまま押さえ込む。これでカウント3が入った。勝負タイム15分3秒、ギムレット美月が勝利を収めた。
「ナイスファイト!美月さん」
控室、ギムレット美月が荒い息を弾ませながら戻ってきた。ギムレット美月、選手会長からギャラの5万円を受け取るとその足でエレベーターに向かった。
「八重樫さん、今夜の格闘技戦、頑張れよ」
エレベーター前で今野役員が声をかける。このあと彼女はさいたまスペシャルホールで行われる総合格闘技の試合に出場予定だ。駐車場に車を待たせてある。
「まあ、勝てるわけないですけど、違う競技ですし、まあ適当にやられてお金もらってきます」
こうしてギムレット美月は決戦の地へ向かった。
休憩明け第4アトラクションは例年通りラッキーナンバー抽選会。入場時にもらったパンフレットに記されている4桁の番号とノエル白石がリング上で抽選した4桁のラッキーナンバーがあえば選手提供の豪華?賞品がもらえるという例年のイベント。ラッキー内田は恒例の麻雀コミックのほかに「入場用ガウン」を提供したので大盛り上がり。
セミファイナルはSPZ関係者、OG6名によるグダグダのタッグマッチ。
井上霧子、京スポ新聞若林記者、富沢レイ 対 今野役員、上原今日子、エル・オガワ・メンドーサ。裁くレフェリーは渡辺智美。
「iTe cogi!」
エル・オガワ・メンドーサ、謎のメキシコ人レスラーという設定だが正体はみんな知っている。銀色の覆面とTシャツとトレーニングウェア姿。3年ぶりの参戦となったが、仕事と育児のストレス解消のためか、富沢レイをグーで殴りつける。
「あ、いったーい!」
しかし富沢レイもアイアンクローで反撃。同人誌執筆で右腕の力は現役時代よりパワーアップしている。この手の試合に出るのも後楽園プラザで同人誌(1冊1000えん)を売りさばいて小遣いを稼ぎたいがためらしい。EOメンドーサをコブラツイストで弱らせてからコーナー最上段に駆け上がった。
「バーニング・キーック!」
どうみてもタダのミサイルキック。しかし、まともに食らったメンドーサは吹っ飛んでしまった。そのまま場外でのびてしまった。早くも戦線離脱。
一方仕掛けた富沢もミサイルキックの受け身を取りそこね背中を強打。
「ああぁぁ・・・」
富沢レイも転がって井上霧子にタッチしてそのまま場外でのびてしまった。やはり達人といえどもブランクはいかんともしがたい。
そしてリング上はSPZコーチ・上原今日子とSPZ取締役・井上霧子が対面。両方ともスーツ姿。おねえさん同士の喧嘩になるのか。
「さっさと終わらせるわよ、くらえ、ヤクザキック!」
井上霧子、体力面で不安があるのか、いきなり必殺のヤクザキックを仕掛けてきたが、
「見切った!」
上原今日子、寸前で井上霧子の動きを見切り、後方へ倒れこんで蹴りをかわした。
「なにっ!」
―やはり井上さんももう40代、蹴りのスピードが落ちてきて見切られたか・・・
今野役員がコーナーで戦況を見守る。
バランスを崩す井上霧子、倒れこんだ上原今日子がそのまま水面蹴りの要領で井上霧子の軸足を払った!
「あ、アッ!」
ハデにすっころぶ井上霧子、
「かわいそうだけどこれで終わり!」
上原今日子、倒れこんだ井上霧子へアキレス腱がため!
「うああああああっ!」
苦悶の表情の井上霧子。上原のパワーでアキレス腱固めを食らったらただですまない。これで決まってしまうのか!
しかしここで若林氏がリングイン。井上霧子のピンチに救援に入った。新聞紙を丸めたヤツで上原の頭をすぱーんと殴ってカット。
「ううっ・・・」
頭を押さえる上原今日子。そのまま若林記者が後方から押さえつける。
「必殺!サントリーレッドッ」
井上霧子が隠し持っていた安ウイスキーのポケット瓶を取り出し上原に飲ませる。強制イッキ。
「う、うおおおおお・・っ!!」
あわれ上原今日子はこれで失神してしまった。しかし井上霧子もアキレス腱がための後遺症で、
「足が、動かない・・・っ」
肉離れの疑いもあったので、はいタンカ2台出動。壮絶?バトルの末、井上霧子と上原今日子がタンカで運ばれた。
リングに残されたのは今野役員と若林記者。例年通り、駅のホームで酔っ払った親父同士のケンカファイトを展開。
「この変態役員が~!!」
「なんだとこのエロ新聞!!」
しかしお互いスタミナに難があるので、2分くらいで息が上がってしまった。
「・・・ハア、ハァ・・・・こ、このまま、戦いを続ければどちらかが過労死してしまう。そ、そうなる前に決着をつける!くらえ!ローリングクレイドル!」
若林記者、今野役員に絡みつくやそのまま倒れこんでローリングクレイドル。今野役員をフックしたまま5回転。さすがプロレス記者歴26年。この日のために会議室で若手記者相手に特訓をつんでいたらしい。そのまま3カウントが入った。
「ワハハハハハ、勝ったぞ」
勝ち誇る若林記者、三半規管がやられてしまったのか、ピクリとも動かない今野役員。メンドーサと渡辺レフェリーに引きずられて退場。
メインはSPZ選手同士の6人タッグマッチ。タイガージェット真帆、成瀬唯、野村つばさ対武藤めぐみ、イージス中森、REKI。選手会興行にしては比較的まともな顔合わせとなった。
試合はタイガージェット真帆が暴走暴走大暴走、
「SHAAAAAAA」
サーベル攻撃、首しめで新人のイージス中森をいたぶる。
しかし武藤めぐみが延髄斬りで救援。そのあと6人が入り乱れる攻防になった。15分経過後、リング上に武藤めぐみと成瀬唯の局面。成瀬の実力からいって不利かと思われたが、選手会長には秘策があった。
―ま、悪く思わんといてや。選手会興行なんてこんなもんやから。
成瀬唯、セコンドから受け取った特大のはりせんを構える。
「きのうジョイフルH田で材料買うて作ったんや。ボール紙に鉄板をはっとるから痛いでぇ・・・」
ばしーん、ばしーん、ばしーん!
成瀬唯のスペシャルはりせん攻撃に武藤たじたじ。あっという間にダウン。
「くっ・・・」武藤、反則攻撃でフラフラだ。さて成瀬唯、何でトドメを刺すのか、
「ほんならいくでー、超奥義、ローリング、スペシャル・・・・」
「その先を言う必要はない、消えろ」
いつの間にかコーナーに登っていたREKI,ミサイルキックで急降下爆撃。不意を突かれた成瀬はモロに食らってしまった。これでカウント3.新人のREKIが選手会興行のお遊びマッチとはいえ成瀬からフォール勝ちを取ってしまった。
「来年も、SPZを応援よろしくねーーー」
締めの挨拶は野村つばさ。これで20年目の選手会興行は終わった。
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年末のプロレス大賞、最優秀選手は武藤めぐみ。SPZクライマックスで準優勝に輝くなど、市ヶ谷を脅かす存在になってきたことが評価された。最優秀新人はイージス中森。同期のREKIはライラのパートナーに抜擢され華々しい活躍をしているが中森も力をつけている。
シングルのベストバウトはビューティ市ヶ谷対ラッキー内田の一戦。タッグのベストバウトはラッキー内田、マッキー上戸対ビューティ市ヶ谷、ロイヤル北条の一戦が選ばれた。
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