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2008年2月29日 (金)

第350回 21年目5月東西対抗戦

21年目5月シリーズ 最終戦横浜スペシャルホール大会

最終戦は横スペ大会、今年も東西対抗がおこなわれるので第1試合は寄せ集め6人タッグマッチ。

ジェナ・メガライト、シンディー・ウオン、コンバット斉藤対ローズヒューイット、ファントムローズ1号、ワイルドローズ2号。

メガライトとヒューイットお嬢様が世界の一流選手らしいぶつかり合いをやってのけた。新人のコンバット斉藤もあのメガライトとタッグを組むという通常ありえないマッチメイクを意気に感じ、懸命にファイト。
しかし最後はヒューイットファミリーの連携がものをいい、シンディーウォンを捕らえてミサイルキックで仕留めた。勝負タイム12分57秒。
「わたしが技の1号よ!」

第2試合から東西対抗戦。SPZの所属選手を出身地別で東西に分け、シングルマッチ7戦を行い、勝ち越したチームが勝利となり賞金70万円を得る。

REKI○(山梨)(農鳥からの片エビ固め)イージス中森×(徳島)

初戦はREKIが農鳥(高角度ミサイルキック)を連発して東軍が先勝。勝負タイム8分12秒。

ノエル白石○(新潟)(パワーボムからのエビ固め)野村つばさ×(愛媛)

プロ3年目、着実に力をつけトップグループに迫りつつあるN白石と18期生アイドルレスラーの野村では勝負にならない。野村も懸命にアームホイップやエルボーで応戦したものの、ノエルはうんともすんとも言わず、最後は力任せのパワーボムで幕。これで東軍が2勝目。

ここで休憩。そして休憩明け第4試合で黄金カードが実現。

******************************

武藤めぐみ○(静岡)(ジャンピングニーからの片エビ固め 13.26) マッキー上戸×(鳥取)

昨日の新潟大会で氷室を破ってSPZベルトを巻いたばかりのマッキー上戸、この日は東西対抗というイベントとはいえ武藤とシングルで激突。勝てばSPZベルト挑戦権をほぼ手中にする武藤は積極的に攻める。マッキー上戸、前日の疲れがあるのかいつもの波状攻撃が見られない。スプラッシュマウンテンで反撃するも単発に終わる。焦りの色を濃くするマッキー上戸

「これで!」
武藤ダイビングプレス、2.8で返す上戸、

「お前なんかに、負けてたまっかー」
マッキー上戸、叫んでからこの日2度目のスプラッシュマウンテン。場内歓声と悲鳴が交錯!

しかし武藤、カウント2.5で返す。

「・・・覚悟して」
そして走りこんでのジャンピングニー。

ワン、トゥ、スリー。
「13分26秒、ジャンピングニーからの片エビ固めで武藤めぐみの勝ち」
ワアアアアア!
SPZチャンプが敗れた。ベルトがかかってなかったからいいようなものを・・・これで東軍3連勝。

R神威○(北海道)(カムイエクウチカウシからのエビ固め 17.20)- 氷室紫月×(富山)

セミ前は「運命」対「極悪人」。前日SPZベルトを失った氷室紫月。この日の相手は極悪非道のライラ神威。実力では氷室が上だが油断のならない相手。やはり本調子でないのか氷室、タイガードライバーを2連発で食ってしまうなどペースをつかめない。それでも延髄斬りでぐらついたのを見るやパイルドライバー。そしてスリーパーで反撃。しかしライラ神威も耐え切って、

「死ねやあ!」
ライラ神威、トムラウシ(変形デスバレーボム)、2.8で返す氷室。

氷室、懸命に組み付いてパワーボムで反撃、しかしライラも2.8で返して、

「泣き叫びなアアアアア!」
ライラ神威、リーサルムーブのカムイエクウチカウシをここで発動。アイヌ語で「熊も転げ落ちる山」の由来どおり垂直に落とされる氷室。

ワン、トゥ・・・

しかし氷室カウント2.9で返す。館内ドドドドドド。
しかしライラ神威もここが勝負どころと見て、

「ブッコワレローーーー」

もう一度、カムイエクウチカウシ。これでカウント3が入った。ライラ神威も前SPZ王者の氷室に勝った。しかも今日は反則系の攻撃を使わず、正面から闘って勝ってしまった。いよいよライラ様もトップグループに割って入ってしまうのか?吉田社長は頭を抱えた。勝負タイム17分20秒、これで東軍4連勝で勝利決定。

L内田○(東京)(コブラツイスト 12.39)成瀬×(大阪)

セミファイナルは技巧派同士の対戦。現在の力関係からいって勝敗は見えていた。成瀬もストレッチプラムで見せ場は作ったが、そこまで。ラッキー内田がコブラツイストで成瀬を仕留めた。これで勝負タイム12分39秒、東軍ドトウの5連勝。

F真帆×(岩手)(脇固め、15分くらい) F鏡○(長崎)

14期生の同期対決。もう二人ともベテランの域に入りつつある。フォクシーは体力を生かしてタックルで攻めようとするがフレイアも意地になってタックルでお返し。フィニッシュは一瞬で決まった。脇固めにあっというまにフォクシーの表情がゆがんで・・・ようやく西軍が1勝を返した。

B市ヶ谷○(埼玉)(ムーンサルトプレスからの片エビ固め 20分くらい)-R北条×(富山)
横スペ大会メインは13期生の同期対決となった。普段はタッグを組んでいるB市ヶ谷とR北条だが、闘うときには真剣にやりあう。しかし最後は市ヶ谷様がJR首領の意地を見せて、ムーンサルトでロイヤル北条を仕留めた。これで今回は東軍の6勝1敗となった。

2008年2月28日 (木)

第349回 マッキー上戸がトップに立った日!

21年目5月

「バトルカデンツァ2029」開幕。芝田美紀は右ひじ負傷のため欠場。

今シリーズからGWAと業務提携を結びなおし、あのヒューイット一家が再来日するようになった。しかもこんどはファントムローズ1号に加えワイルドローズ2号を従え3人で暴れまくる。

初戦の高知大会、ノンタイトル戦ながらタッグ王者のジューシーペアが武藤めぐみ、成瀬唯組に敗れる波乱が。マッキー上戸が武藤にカウント3を奪われてしまった。

高知大会メインはローズヒューイット、Fローズ1号、Wローズ2号のヒューイット一家ファミリー軍団?が初登場。対戦相手はこれまた凄いトリオ、ジュエルローゼスのビューティ市ヶ谷、ロイヤル北条、フレイア鏡。

しかし分断に成功したのはJR。最後は孤立したワイルドローズ2号にロイヤル北条が「スパイク」を決めて終了。勝負タイム17分19秒。

****************************

第5戦岡山大会メインはSPZタッグ選手権。王者ジューシーペアに対するは「ミステリアスチーム」氷室紫月、ノエル白石組。

「負けちゃダメ・・・」

「これから・・・どこへ行くの・・・?」

「2人ともぶっ潰してやる!」

「今日は、氷室選手に落とされた屈辱を晴らします」

そしてゴング、

「解説の吉田さん、この試合のポイントは」

「んー、まあ、連係ならジューシーペアだと思うんですけどね、氷室さんもノエル白石選手もつかみどころがないですからね。闘志を前面に出すタイプじゃないですし。しいていえば経験の浅いノエル白石を早めにつぶせるかどうかですね」

しかしノエル白石もレスラー稼業3年目に入り、ラッキー内田の猛攻にきっちりついてゆく。
「たあ」

ノエル白石、頭突きの連発、連発、連発、連発。

「うう・・・っ」

ーなんて石頭。こんなのには付き合ってられないわ。

ラッキー内田はバッタリと倒れこむ。たまらずマッキー上戸にタッチ。挑戦者チームも氷室が出てきた。

今シリーズ最終戦でSPZシングルのベルトをかけて闘う両者がシビアな攻防。しかし力負けしたのは氷室で、マッキー上戸のスプラッシュマウンテンで叩きつけられてしまう。

これで決定的ダメージを負った氷室、

「行くぜラッキー!」

マッキーが指示してようやく蘇生したラッキーを呼び込む。

「はいはい。」

貫禄のサンドイッチラリアット。これでSPZ王者の氷室は3カウントを奪われた。勝負タイム39分47秒、王者組が4度目の防衛に成功。

******************

SPZ世界タッグ選手権

L内田、○M上戸(39分47秒、サンドイッチラリアットからの片エビ固め)氷室紫月×、N白石

第36代王者が4度目の防衛に成功。

*******************
第6戦奈良大会、メインはあばしりタッグ戦。ライラ神威、REKIに対するはファントムローズ1号、ワイルドローズ2号。ある意味予測不能な戦いのゴングが鳴った。

「氏ねやああああああああ」

極悪人・ライラ神威がいつものように暴れまくる。REKIの出番なし。さんざん2人を痛めつけたあげく、最後はカムイエクウチカウシでワイルドローズ2号を仕留めた。勝負タイム22分52秒。

***********************

第7戦新潟大会。セミファイナルは武藤めぐみ対ジェナ・メガライトの一騎打ち。トップグループに入ってはいるがまだSPZベルトを巻いたことのない武藤、挑戦権を得るためにはなんとしてもメガライトを叩いておきたいところ。しかしメガライト強い。ごつごつした投げ技の連発で武藤にペースを握らせない。

「それえ!」
メガライト2度目のバックドロップ。

しかし武藤、きょうは踏ん張ってムーンサルトで反撃!そしてメガライトの動きが鈍ったのを見てノーザンライト。これで3カウントを奪った。勝負タイム12分26秒。

新潟大会メインはSPZ選手権。王者氷室紫月に対するはマッキー上戸。先月シングルマッチでメガライト、武藤めぐみの2人を撃破した実績が評価された。ジューシーペアは「どちらかといえばラッキー内田のほうが強い」とみられていたので、マッキー上戸、心中期するものがあった。

ー内田が出来て、あたしに出来ないことはない!

「おりゃあああ」

持ち前のパワーで氷室を投げ飛ばしてゆく。そしてジャーマンで追い込む。マットにうずくまる氷室。しかしマッキー上戸は厳しい表情を崩さない。

―氷室さんは最後の最後まで気を抜いちゃいけない。

絞め技による一発逆転を警戒したマッキー上戸、容赦のない攻めを最後まで貫いた。

「手加減はしねえぜ!」
頭を押さえて苦しむ氷室を担いでフィッシャーマンバスター。頭から落とした。これで氷室は動けなくなった。

ワン、トゥ、スリー。

*********************

SPZ世界選手権

マッキー上戸(17分17秒、フィッシャーマンバスターからの片エビ固め)氷室紫月

第58代王者が2度目の防衛に失敗。マッキー上戸が59代王者となる

*********************

マッキー上戸、SPZ王座戴冠。勝負タイム17分17秒とタイトルマッチにしては短かったが、これは上戸が一気の攻めを見せたためか。

「っ、やったぞーーーーー」
コーナーポスト最上段に駆け上がって両手を高く突き上げる。とどろき渡る歓声が、マッキー上戸の胸を焦がした。
控室に戻ってウーロン茶で乾杯。パートナーのラッキー内田が声をかける。

「おめでとう、マキさん」

「へへへ、プロレスやっててよかったぜ。これでやっと・・・あんたに並んだぜ」

2008年2月27日 (水)

第348回 旗揚げ20周年記念興行

20年目4月。

4月シリーズ、旗揚げ20周年記念大会。最終戦は新日本ドーム。あえてメモリアルマッチは組まず、16期生の3大シングルマッチで普段どおりのSPZを持ってきた。(15周年のメモリアルマッチが2分で終わってしまったトラウマがあったと思われる)

ドームの入り口には大看板が掲げられた。

「SPZ旗揚げ20周年記念興行」

*************************

「よっし、当日券はけたっ」今野役員がホクホク顔。

「みんな、今日はメモリアルマッチなんだけど。んー、まあ、あまり緊張せずにいつも通りのいいファイトをしてください。以上。」

吉田社長が控室で訓示。

超満員札止めの大盛況。そして午後6時30分。

カン、カン、カン、カン、カン・・・・

村越リングアナがリングに上がって、全7試合のカードを読み上げる。そのあと第1試合開始。「ほほえみのヴァネッサ」がかかり、アイドルレスラー、野村つばさが手を振りながら長い花道をリングへ。メモリアル興行のオープニングを任された。

第1試合は野村つばさ対ジーナ・デュラム。裁くレフェリーは伊達遥。すっかり前座の名物カードとなった。

「い、いやーっ!」

弱気な外人ジーナが困りきった表情で、ドロップキックを放って応戦したが、メモリアル興行の第1試合を任されて燃える野村つばさが優勢に試合を進め、

「てやーっ!」

スリーパーホールド。これが入ってしまったのか、ジーナ・デュラムあえなくギブアップ。勝負タイム8分47秒。

「みんな、やったよーっ!」

アピールしながら引揚げる野村つばさよりも、

「うう・・・」

ふらつきながら戻るジーナデュラムに大歓声が飛んだ。このあたりがジーナの凄いところ。

第1試合終了後、SPZの現執行部、吉田龍子社長、井上霧子役員、そして今野役員がリングへ向かい挨拶。

「みんな、今日は来てくれてどうもありがとう。SPZはこれからも頑張りますので応援よろしく頼む」

場内はものすごいヨシダコール。そのあとカラーボール投げ。20周年にふさわしく3人で100球を客席へ投げ入れた。(あとで売店へ持っていくとオリジナルグッズがもらえるのである)今野役員がリングサイドへほいほいと投げ、吉田社長が外野方面へ強肩を披露。投げ終わったあとで3人が本部席に陣取った。

そして第2試合はタッグマッチ。イージス中森と新人のコンバット斉藤がタッグを組む。相手はあばしり王者のライラ神威とREKI。裁くレフェリーは上原今日子。

「なんであたしが前座なんだ!」

ライラ神威、新人のコンバット斉藤にも容赦しない。第2試合にまわされた恨み(メインやセミに持ってくるとメモリアルがどうなるか分かったものではないという会社の判断・・・)を吐きつけるかのようなファイト。

中盤、同期のREKIとイージス中森がそこそこかみ合った攻防を展開したが、最後はライラ神威がまた登場、スタミナの尽きたコンバット斉藤を担ぎ上げて、

「おら、よっ!」

カムイエクウチカウシ!まっさかさまにたたきつけた。凍りつく観客。こんなの新人が受けられるはずがない。当然カウント3が入った。勝負タイム10分34秒。思わず羽山リングドクターがリングに駆け上がった。デビュー8戦目で頭から落とす攻撃はないだろう。

「オラ!くされSPZファンども!何が20周年だ!吉田のクソバカ!前座に回すんじゃねえ!もっと待ち主な相手を用意しろってんだ!覚えてろよコノヤロウ!武藤のアホと一緒にぶっ殺してやる!!」

ライラ神威、マイクで怒鳴ってから引揚げた。

コンバット斉藤は起き上がれず、担架で運ばれた。控室でも大の字。デビューシリーズの最終戦でプロレスの怖さを味わった。

ーこれが、プロレス・・・

第3試合は外人同士のタッグ戦、アリス・スミルノフ、デイジー・クライ対ジェニー・ビーチ、シンディー・ウォンの組み合わせ。裁くレフェリーはEWAのトムさん。

試合は17分47秒の激しい攻防の末、デイジーの蹴りがシンディー・ウォンを眠らせた。その試合が終わると休憩。

*************************

ーああ、 知床、知床、オホーツクの海ぃぃぃ、

 想いは はかなく 散ってしまったーーーー

ーああ、 知床、知床、オシンコシンの滝ぃぃぃ、

 涙に濡れた ウトロ の 港ーーーー

休憩明けにリングに上がったのはSPZ5期生の元レスラーで現在は売れないタレント渡辺智美(30)の歌謡ショー。SPZ20周年に花を添えた。「知床の海」を熱唱。ドームでライブをやれるというのは「超一流歌手」である。場内大笑い。

歌謡ショー明けの第4試合にジュエルローゼス登場。きょうはボスの市ヶ谷様がメインに出るので、あとの3人が第4試合でファイトとなった。

芝田美紀、フレイア鏡、ロイヤル北条。JRの3人が赤コーナー側に陣取る。

に対するはフォクシー真帆、成瀬唯、ノエル白石のトリオ。裁くレフェリーは井上霧子。

「ファイッ!」

井上霧子、万感の思いをこめて試合開始のサインを送った。今野役員がゴングを叩く。

6人が6人ともここ数年のSPZを引っ張ってきた名選手である。試合はノエル白石のパワーがJRの3人をたじろがす。それでも芝田がダイヤモンドキックでノエルを場外転落させる。そして・・・

「もう遊びの時間は終わりだ」

ロイヤル北条の代名詞ロイヤルスパイクがF真帆に決まる!

しかしこれは間一髪ノエル白石がカット。

最後はロイヤル北条がローンバトルに追い込まれ、スタミナ切れを起こしてしまった。そこを突いた成瀬が冷静にタイガードライバー狙いをリバースで返してそのままのしかかって3カウント。勝負タイム24分49秒の熱戦にドームは沸いた。

「ウオーッ!」

フォクシー真帆、デビュー7周年を白星で飾った。

「やったでーーー!」

成瀬唯はリングサイドの観客とハイタッチしてから引揚げた。乱戦のどさくさにまぎれてR北条からフォールを取れて嬉しかったのだろう。

「あー、疲れた。長引いたわねこの試合」

ロングマッチのレフェリングを終えた井上霧子、控室で水を飲む。

*************************

ここから3大シングルマッチ。

まずセミ前は武藤めぐみ(18期)対マッキー上戸(16期)。

武藤がテーマ曲「アメジスト」に乗って花道をリングへ。勝てばSPZベルト挑戦が見えてくる。そのあとマッキー上戸、「Cheer up full throttle!」が流れる中、リングイン。これだけで大歓声。裁くレフェリーは伊達遥。

試合のほうは今シリーズメガライトを倒してゼッコーチョーのマッキー上戸、18期生の武藤めぐみを圧倒。スプラッシュマウンテンでグロッキー状態にしてから、

「オウラアアアーーー」

DDTでトドメ。12分5秒で後輩の武藤を沈めた。

「やっぱりアタシが最強!SPZベルトに挑戦させろお!」

本部席前でマイクを取ってSPZベルト獲りをアピールした。

セミファイナルはラッキー内田(16期)対ジェナ・メガライトの一騎打ち。裁くレフェリーは引き続き伊達遥。

「ラッキー・ラブ」が流れる中、SPZの看板スター、ラッキー内田がリングへ向かう。ものすごい大歓声に包まれた。しかしラッキー内田の表情は硬い。

今シリーズの大阪大会でメガライトに破れた内田、なんとしても勝っておきたいところ。次期SPZ挑戦権のことを考えるとどうしても負けられない。しかし今回もメガライトが持ち前のパワーで押して押しまくる。ラッキー内田、そのままズルズルと攻め込まれてしまい、

「ウラァァァァァ!」

キャプチュードで叩きつけられそのままカウント3が入った。勝負タイム14分6秒。

メインイベントはSPZ戦。新王者氷室紫月に対するは「最強の挑戦者」ビューティ市ヶ谷。

まず「トッカータとフーガ」が流れる中、市ヶ谷様がリングへ。20周年ということでお金がかかってそうなきらびやかなガウンを羽織っている。

そして「ウォンテッド」が流れる中、氷室紫月がいつものポーカーフェースでリングへ。腰には団体の至宝、SPZベルトが巻かれている。

「えー、この試合は、えー、株式会社スーパースターズプロレスリングゼットが、えー、認定する、えー、世界シングル選手権の、えー、選手権試合であることを、えー、認定する。2029年4月21日、株式会社スーパースターズプロレスリングゼット、代表取締役社長吉田龍子、えー代読、京スポ新聞若林太郎。」

立会人の京スポ新聞・若林太郎記者が認定証を朗読。20周年とあって、心なしか緊張しているようだ。

裁くレフェリーは上原今日子。午後8時51分、運命のゴング。

「解説の吉田さん、この試合のポイントは」

「ええ、んー、まあ、ビューティ市ヶ谷選手の動きがどのへんまで落ちてるかですねえ。」

もはやビューティ市ヶ谷にかつての一気にもって行く力はない。氷室のほうがだんだんペースを握っていって、強烈なステップキックで市ヶ谷をグロッキー状態に追い込む。

そして・・・

「行きます」

氷室、大技攻勢、ダイビングプレス、パワーボムはカウント2.8で返した市ヶ谷、そのあと市ヶ谷が最後の力を振り絞って反撃、ビューティボムを放ったがそれまでにダメージの蓄積のない氷室がカウント2で返す。ならばともう一度狙うが・・・

「・・・・・・・・・・」

「くっ・・・・・・・」

下からこらえる氷室、力がこもる市ヶ谷、しばらくその状態が続いたが、根競べを制したのは氷室だった。リバースで返してそのまま上から乗っかる。

ワン、トゥ、スリー。
ビューティ市ヶ谷、返せず試合終了。勝負タイム30分20秒。王者が初防衛に成功。

************************

SPZ世界選手権試合

氷室紫月(30分20秒、リバーススープレックスからの体固め)B市ヶ谷

第58代王者が初防衛に成功

***********************

こうしてSPZ20周年メモリアル興行は幕を閉じた。

2008年2月26日 (火)

第347回 旗揚げ20周年記念エッセンシャル・シリーズ

21年目4月

旗揚げ20周年記念 エッセンシャル・シリーズ

ここまでのあらすじ

時に西暦2029年、横浜戸塚に自社ビルを構えるお嬢様プロレス団体「スーパースターズ・プロレスリング・ゼット」(略称:SPZ)は、旗揚げからの苦闘、前進、飛躍を続け、ついに旗揚げ20周年を迎えた。団体を最初から裏方で支えてきた今野役員(55)と井上霧子(48)は黙って握手を交わした。

そして、新たなる戦いの幕開け・・・

**************************

「コンバット斉藤選手はこの試合がデビュー戦となります・・・」

ぱちぱちぱちぱち・・・

シリーズ初戦釧路大会第1試合で期待の新人、コンバット斉藤のデビュー戦。相手は1期先輩のイージス中森。

「はっ」

デビュー戦だろうが物怖じせず、掌底を見舞うコンバット斉藤。しかしイージス中森もエルボーで応戦。そして時間経過とともに、コンバット斉藤がだんだんばてていった。

「うあーーッ!」

コンバット斉藤、思いっきり裏拳を打っていったが、イージス中森、カウント2で返してすくット立ち上がり、組み付いてアームホイップ一閃。コンバット斉藤はこのあとのフォールを返せなかった。勝負タイム9分33秒。勝ったイージス中森、殴られた頭を押さえながら引き揚げた。

試合を本部席で見ていた吉田社長がひとこと。

「このコ、スタミナがついたら恐ろしい存在になるかもよ」

**********************

第2戦は札幌どさんこドーム大会。

―な、はやい!

REKIの鋭いドロップキック3連発にたじろぐコンバット斉藤。忍者出身だけあって動きについていけない。しかし間合いをつめてきたところをカウンターの掌底で逆襲。

「・・・・・・・・・ウッ」

REKI,口の中を切ったらしく苦痛にうめく。これでREKIが本来の鋭い動きが出せなくなり大苦戦に追い込まれるも、何とかフェイスクラッシャーで形勢逆転。

そしてコーナーポスト最上段に駆け上がってC斉藤が起き上がってくるのを待つ。

「農鳥(のうとり)」

REKI、コーナー最上段で思いっきり跳躍してから急降下してミサイルキック。これをまともに食らってコンバット斉藤は3カウントを奪われた。

「10分7秒、農鳥からの片エビ固めでREKIの勝ち」

札幌どさんこドーム大会メインはTWWA選手権、王者ジェナ・メガライトに挑むのは地元出身の大ヒール、ライラ神威。

「ヒャーハハハハハハハハハハハハ」

例によって花道を小型トラックを運転して入ってくるライラ神威。当然本部席に突っ込んで机を破壊した。吉田社長と実況森アナはすんでのところでかわした。無茶苦茶なパフォーマンスのあと試合開始。

しかし対戦相手のメガライトもスープレックスモンスターと呼ばれる実力者なのでライラにとって分が悪い。

ーダメだ、パワーが違いすぎる・・・

本部席の吉田龍子社長がつぶやく。中盤にメガライトが放ったラリアットでライラ神威の動きが止まる。

ライラ神威も凶器入りヘッドバット、カムイエクウチカウシで懸命に抵抗するが、最後はスタミナの尽きたライラ神威に強烈なエルボーをかましたメガライトの勝利。勝負タイム23分36秒。

**************************

第4戦はなにわパワフルドーム大会。箱の大きい会場なのでメインにはそれ相応のカードを組まねばならない。ということでメインはSPZ前王者のラッキー内田、対するは最強外人ジェナ・メガライトという好カードを組んだ。

前回のシングルマッチではラッキー内田が勝っているのだが、今回は雪辱に燃えるメガライトがラフファイトを仕掛けた。

「捕らえたっ」

場外でDDT、バックドロップ。これで動きの落ちたラッキー内田に強烈なベリー・トゥ・バック。勝負タイム18分20秒、ラッキー内田が沈んでしまった。

*******************************

その翌日第5戦若鯉球場大会メインではマッキー上戸がジェナ・メガライトと対戦。前日敗れたパートナーのカタキ討ちに燃えたマッキー上戸だったが、メガライトのパワーに苦戦。

しかし最後は

「死ねやーーーー!」

スプラッシュマウンテン炸裂。ハデに叩きつけられたメガライト、3カウントを喫した。これでパートナーのカタキを取った。

*************************

第6戦福岡九州ドーム大会メインはあばしりタッグ選手権。王者のライラ神威、REKIに挑むのは新外国人ジェニー・ビーチ、シンディー・ウォンの外国人チーム。

「ひゃーははははははははは!」

ガトリング砲をぶっ放しながら入場するライラ神威。壊れたキャラもファンに支持されてきた。

「参る・・・」
そのあと花道を一人駆けてリングインするREKI。

試合はライラ神威の強さが光った。パートナーのREKIが捕まってしまうが何とか切り抜けて、ライラ神威につなぐ。最後は

「キエーーーーー!」
裏投げでライラ神威が快勝。これで王者組が3度目の防衛に成功。

************************

第7戦名古屋しゃちほこドーム大会、メインはSPZ世界タッグ戦。王者ジューシーペアに挑むのはすっかりベテランになったジュエルローゼスの13期生コンビ、ビューティ市ヶ谷、ロイヤル北条。もう何回もSPZタッグをめぐって闘った4人なので内容も盛り上がる。こうなってくると4人の根競べになってくるが、

最初に大技を仕掛けたのはマッキー上戸。スプラッシュマウンテンでロイヤル北条をたたきつける。ロイヤル北条、返すことができずカウント3.勝負タイム28分35秒、これで王者組が3度目の防衛に成功。

最終戦は新日本ドーム大会。「旗揚げ20周年記念興行」である。

2008年2月25日 (月)

第346回 旗揚げ20周年記念パーティー

21年目4月。

「三重県は亀山市ににかなりの空手の腕を持つ少女がいるようです。」

ということで今野役員と吉田社長が出向いた。空手道場で座りながら交渉。一家全員空手をやっている恐ろしい家族。父君が健康のためにやっている空手、二人の娘が真似して道場に通って・・・というパターン。妹は9歳で一通りの基本動作を覚え、15歳の姉は中学の県大会の組手で敵なし状態らしい。

「えーっと、契約金が1500万円、あとギャラがワンマッチこのぐらいで。」

「んー、まあ、見たところ強そうだし、えらくしっかり鍛えていると思うからさ、かなりのところまで行くと思いますよ」

「・・・わかりました。お世話になります」

新人スカウトで斉藤千歳を獲得。リングネームは吉田龍子が「悪の空手家として売り出そうぜえ、」ということでコンバット斉藤となった。

**************************

そして、旗揚げ20周年記念シリーズが開幕する。

4月シリーズ「旗揚げ20周年記念 エッセンシャル・シリーズ」開幕前夜、横浜某所のホテル大宴会場で「SPZ創立20周年記念パーティー」がマスコミ各社、お取引先各社を招いて盛大に行われた。会場にはSPZの過去の名勝負が流され、テーブルには「SPZ 20」の巨大な氷細工。そして豪華な料理の数々。若手選手は日ごろは喰えない超高級料理をほおばった。

「さー、今日はタダメシ喰っていきますか」

京スポ新聞・若林太郎記者、大日本テレビの「世界のかずのり」こと森和紀アナウンサーも顔を出した。あとは羽山リングドクター、「喫茶あばしり」鈴波かすり店長、「よこ川」の横川マスターらも姿を見せた。

「本日はSPZ20周年記念パーティーにお越しいただきありがとうございます。忘れもしないあの2009年4月21日、横浜赤レンガ大会にてわずか3名の選手で旗揚げしました。

あのときは新人の小川ひかる選手と保科優希選手がAACの選手にボコボコにされて、この団体どうなるんだろうと思いましたが、あれから20年のときを経て、16名の素晴らしい選手、スタッフを擁するそこそこのプロレス団体となりました。」

SPZを旗揚げから支えてきた井上霧子役員が挨拶。

今月もドーム興行連発というチャレンジを致しますが、初心を忘れることなく、本気、まごころ、手作り感を旗印に、選手社員一丸となって頑張ってまいりたいと思います。」

「えーそれではここで、SPZを支えてきた選手、支えている選手。これから支えていく選手を一人ひとりコールしたいと思います」

まず所属選手から。アナウンスは村越リングアナ。

「こんばっとー、さいーとー」

まだデビュー前のコンバット斉藤が一礼。続けて村越リングアナが若い順に次々に名前を読み上げる。

「あばしりタッグ選手権者、RE-KI-----」

「イージスー、なかーもリー。」

「のえるー、しらーいしー。」

「むとー、めぐーみー。」

18期生の武藤、おそらくこの人がSPZの次期エース。

「のむらー、つばーさーー」

「あばしりタッグ選手権者、らいらー、かむーいー。」

大悪党のライラ様も今日はブラックスーツを着てパーティーに参加している。

「SPZ世界タッグ選手権者、マッキーうえーとー、アーンド、ラッキー、うちーだー」
ジューシーペアは二人続けて読み上げられた。

「SPZ世界選手権者、ひむろー、しづーくー」

5年前の15周年記念パーティーではデビュー前で最初に名前を呼ばれた氷室、がいまやSPZ女王の座にいる。

「なるせー、ゆーいー」

「ふぉくしー、まーほー」「ふれいあー、かがーみー」

SPZを長い間支えてきた中堅選手が紹介される。

「ろいやるー、ほうーじょー」

そして、
「第16回第17回第18回第19回第20回SPZクライマックス優勝、ビューティー、いちーがやー」

宴会場に響く市ヶ谷の高笑い。そして最後は

「しばたー、みーきー!」
団体最古参の芝田美紀が一礼。

そして今シリーズに参戦する外国人選手が読み上げられる。

「デイジー・クラーイー」

「TWWA世界選手権者、ジェナ、メガライトオー!」

SPZの歴史は海外から来た常連外人抜きには語れない。

そして本日出席しているSPZの引退した元レスラー、OG連中もコールされる。コールするのは今野役員。現役でないのでキャッチフレーズ付きである。

「福岡が生んだ殺人ダンプカー、元SPZチャンピオン、ぼんばー、きしーまー!」

 11期、パワーだけならSPZの歴史の中でも一番だった。

「仙台が生んだ青春ロケット、元SPZチャンピオン、きくちーりーゆー!」

 おなじく11期生。まさかこの選手が女王の座を取るとは誰も思わなかった。

「ファイティングコンピューター、ぎむれっとー、みつーきー!!」

 10期生のギムレット美月。SPZマットを去ったが、まだ各地のインディー団体で活躍している。

「SPZを駆け抜けた熱き星!元SPZチャンピオン、スタライトー、あいーばー!」

 9期生、吉田の次のエースとして期待されたが、一時代を築くには至らなかったが。それがかえって等身大のレスラーとして人気を集めてしまうのだからこの業界は分からない。

「戦うアイドル、わたなべー、ともーみー!」

保科との第1試合で200回以上対決。前座要員として欠かせない存在だった。そして今は売れないタレントの渡辺智美。

「生ける格闘伝説、吉田の前に吉田なく、吉田のあとに吉田なし、SPZクライマックスV6,元SPZチャンピオン、そして現社長、よしだーりゅーこー!」

現SPZ社長吉田龍子がコールされる。無茶苦茶な呼ばれ方に吉田社長は苦笑い。このあと続々と初期のSPZを彩った名選手がコールされる。

「スープレックスマスター、ながさわー、まーいー!」

この選手は時に異様な力を発揮して手のつけられないときもあった。

「マットの覇者、うえはらーきょおーこー!」

伊達との名勝負は忘れられない。3期生の上原今日子、引退後はSPZのフロントとして辣腕を振るっている。

「即売会の女王、とみざわー、れーいー!」

アイドルレスラーに近い存在だったが、永沢舞とSPZタッグ王者に輝いたこともある。そしていよいよ団体の創世記を支えた1期生がコールされる。

「脳天クラッシャー、さわざきー、ひかーるー!」

SPZベルトは巻けなかったがその根性は凄かった選手。

「殺人ヒザ魚雷―、だてー、はるーかー!」

忘れもしないSPZ初代王者、伊達遥。

「SPZのヒロイン、おがわー、ひかーるーーー!」
壮絶なまでのやられっぷりがファンのハートをつかんだ小川。

「関節技の魔術師、みみー、よしはらー!」

SPZの初代エース、ミミ吉原も久々に元気な姿を見せた。

OGの面々が紹介されたあと、

「元KJW世界王者、氷のヤクザキック、そして現在はただの酒びたり、いのうえー、きりーこー!」

井上霧子までコールされる。参会者はそれだけで盛り上がった。SPZを支えてきた名優たちが壇上に上がる。

「乾杯の音頭は、SPZ旗揚げ戦メインイベントで戦ったミミ吉原さんにお願いいたします!」

もう39歳になるのに現役時代とイメージがあまり変わらないミミ吉原が短めに挨拶した後、
「SPZの発展を祈って、カンパイ!」
こうして楽しいパーティーが盛大に行われた。

「あー、しんどかった。やっと20年だよ」

今野役員(55)が会場隅のイスに腰掛けてボソッと。

「あのとき・・・5人ではじめた・・・SPZが、こんなに多くの人が関わるようになって・・・」

井上霧子も感慨深げ。

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SPZ 旗揚げ20周年記念大会 -a will-

2029年4月21日 新日本ドーム

■SPZ世界選手権

王者:氷室紫月 VS 挑戦者:ビューティ市ヶ谷

■旗揚げ20周年記念スペシャルシングルマッチ

ラッキー内田 VS ジェナ・メガライト

マッキー上戸 VS 武藤めぐみ

他、数試合予定 

2008年2月24日 (日)

第345回 ラッキー内田失神

20年目3月

続く3月シリーズ「ファイヤーソウルシリーズ」にもジェナ・メガライトが継続参戦。しかもタッグパートナーとして悪役中国人?レスラー、シンディー・ウォンを連れてきた。

そのシンディー・ウォンは開幕戦ではREKIとシングルで対戦。REKIのスピードにもついていって、的確に技を積み重ねて、それなりに相手の技を受けてからREKIが疲れたのを見計らってフロントスープレックス。これでREKIを下した。勝負タイム10分11秒。

第6戦宇都宮大会、セミはSPZの最大派閥、ジュエルローゼスからビューティ市ヶ谷、ロイヤル北条、フレイア鏡の3人がメガライト、シンディー、チョチョカラス2と6人タッグで対戦。

「あのポット出の生意気外人をつぶすッ」

ロイヤル北条も気合入りまくり。JRの3人がメガライトに狙いを絞り、長年の連携で攻め立てていく。しかし外人組も強い。メガライトがパワーで押し込みチョチョカラス2が飛ぶ。シンディーもうまく2人をフォロー。

しかし最後は意外な結末。STFで痛めつけたフレイア鏡が、隠しムーブのハイキック。
「はぁっ!」
これで頭を強打したメガライト、3カウントを喫した。勝負タイム25分27秒、JRのチームプレイが最強外人を下した。

宇都宮大会メインはあばしりタッグ戦。ライラ神威、REKIに対するは悪の外人アリス・スミルノフ、ネタ外人ジーナ・デュラム。

「イェーハハハハハ!」
ライラ神威、まるで容赦なし。最弱外人ジーナ・デュラムをカムイエクウチカウシで仕留めた。
「弱すぎだア!話にならねぇ!」
これで王者組は2度目の防衛に成功。

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あばしりタッグ選手権

○ライラ神威、REKI(20分くらい、カムイエクウチカウシ)A・スミルノフ、ジーナデュラム×

第28代王者が2度目の防衛に成功

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その翌日、第7戦幕張大会。メインではSPZタッグ戦が組まれた。

今回の挑戦者はTWWAのジェナ・メガライト、シンディー・ウォン。SPZ参戦経験は短いが、実力は保証書つきなので油断のならない相手である。しかし試合のほうはジューシーペアがメガライトを集中攻撃。いくら怪力のメガライトでもラッキーマッキーの二人を立て続けに相手をするのは・・・

「落ちろおおおおおお!」
マッキー上戸、絶好調。スプラッシュマウンテンからパワースラムとつないでメガライトを仕留めた。これで2度目の防衛。

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SPZ世界タッグ選手権

ラッキー内田、○マッキー上戸(30分くらい、パワースラムからの片エビ固め)Jメガライト×、Sウォン

第36代王者が2度目の防衛に成功

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「・・・クッ」

メガライト、SPZの厳しさを味わう。ここからどう巻き返してくるか。

そして最終戦さいたまドーム大会。後半では3大シングルマッチが組まれた。

セミ前ではビューティ市ヶ谷対ライラ神威。

「なんでこのわたくしが地元でセミ前なんですの?」

前SPZ王者の市ヶ谷、セミ前に回された怒りをライラにぶつける。この選手衰えを感じさせないファイト。最後はフィッシャーマンバスター。わずか9分35秒でライラを仕留めた。

セミファイナルは武藤めぐみ対ジェナ・メガライト。これがシングル初対決。

「これでどうだ!」
メガライト、投げ技のキレが恐ろしい。草薙みことのようにキレイに投げるのではなくて力まかせになげつけるので受身が取りづらい。アーッという間に武藤をグロッキーに追い込み、
「地獄に落ちナ!」
パイルドライバー一閃。これで武藤を葬った。勝負タイム12分31秒。SPZ王座どりをめざす武藤めぐみ、内容的にも悪すぎる敗戦

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さいたま大会メインイベントはSPZ選手権、王者ラッキー内田に挑むのは氷室紫月。16期生同士の対決。

「かいせつの吉田さん、この試合どういった展開になるでしょうか・・・」

「んー、まあこの二人のことですから、お互いに絞め技極め技で仕掛けてくるでしょうね。それまでは静かな攻防なんですがこれがかえって不気味ですね。」

試合はグラウンド技を中心にした一進一退の攻防。大技がなくてもこの2人は盛り上がる。しかし30分過ぎ、突然にラッキー内田が勝負をかけた。リング中央での攻防からスッとラッキーキャプチャーZに移行。

「そろそろ決め時・・・ね」
「うっ・・・」
懸命にこらえる氷室、どうにか顔のフックを外す。そして足のクラッチも外す。

―く、外された。

そして一瞬の隙を見逃す氷室ではない。必殺ドラゴンスリーパー発動。この選手のはタダのドラゴンスリーパーではない。ラッキー内田の意識が遠のき・・・

「・・・・・・・・・・がはっ」

ラッキー内田失神。危険を察知した伊達レフェリーが試合を止めた。勝負タイム36分10秒、氷室がSPZ世界王者に返り咲いた。

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SPZ世界選手権(60分1本勝負)

氷室紫月(36分10秒、ドラゴンスリーパー)ラッキー内田

第57代王者が2度目の防衛に失敗、氷室が59代王者となる

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「あれ、やばいわよ!!」

羽山リングドクターが血相を変えてリングに上がり、ラッキー内田の様子を確認。ぐったりとしたまま動けないラッキー内田。

「タンカだ、タンカ!」

騒然とする赤コーナー側を無表情で見ながら、氷室は立会人の若林記者からベルトを受け取り、引揚げた。

2008年2月23日 (土)

第344回 20年目2月 SPZ選手権 ラッキー内田VSジェナ・メガライト

20年目2月シリーズ

横浜のお嬢様プロレス団体、スーパースターズプロレスリングゼットは、超強豪外人、ジェナ・メガライトを招聘した。前評判どおりの強さを見せ、JRの4人をなで斬り。ラッキー内田の持つSPZベルトに最強の挑戦者が現れた。

でもって、最終戦横スペ大会。

「次の試合に出場するヘレン・ニールセン選手はこの試合が最後のファイトとなります、ファンの皆様、より一層のご声援をお願いいたします」

SPZの常連外人だったヘレン・ニールセンのラストマッチ。今日は第1試合でネタ外人のジーナ・デュラムを軽く一蹴。フィニッシュはノーザンライトスープレックスだった。

勝負タイム6分31秒。とどろき渡る大歓声、そしてヘレンコール。ニールセン一族の血の連係で吉田龍子やハイブリッド南を苦しめた名バイプレイヤーもついにリングを去る日が来た。吉田社長がヘレンに花束を贈呈。

第2試合は野村つばさ、ノエル白石対フォクシー真帆、イージス中森の若手中堅選手4人のタッグマッチ。最後はイージス中森を捕まえた野村つばさ、フェイスクラッシャーで仕留めた。勝負タイム24分15秒。

第3試合はフレイア鏡対新外国人チョチョカラス2.フレイア鏡が自分のペースで闘い、最後は強烈なハイキックでチョチョカラス2を退けた。

休憩明け、第4試合はロイヤル北条、芝田美紀対ライラ神威、REKIのタッグマッチ。ロイヤル北条とライラが熱い攻防を展開。しかし最後は昨日メガライトに玉砕したREKIが懸命のファイト。芝田をフェイスクラッシャーでグロッキーに追い込んでからいい流れでライラ神威にタッチ。最後は17分24秒、ライラがカムイエクウチカウシで芝田を仕留めた。

ここから3大シングルマッチ。

セミ前は氷室紫月対デイジー・クライ。このあたりで氷室も存在感を見せておきたいところ。強豪外人デイジー相手でもいつものペースで戦って、サソリ固めでじわじわとスタミナを奪っておいてのダイビングプレスで幕。勝負タイム13分48秒。

セミファイナルはビューティ市ヶ谷対武藤めぐみ。次期SPZ挑戦権のことを考えるとお互いに負けられない。一進一退の攻防が展開された。

―市ヶ谷さんに勝って、上へ行く!

―こざかしい、お茶畑のコムスメ!

22分41秒の熱戦の末、最後はビューティボム炸裂。武藤またも市ヶ谷の前に力尽きた・・・

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そしてメインイベント。王者:ラッキー内田 対 挑戦者:ジェナ・メガライト。

JRの4人、ライラ、ノエル、REKIをぶっ飛ばして来日1シリーズ目でSPZベルトに挑戦。

「ウァオオオオオオ」

メガライトいきなりのタックル攻め。ハデに吹っ飛ぶラッキー内田。しかしラッキー内田も試合巧者、ラリアットをかいくぐってスリーパーで反撃。そしてネックブリーカー。そのあとは一進一退の攻防が続いた。

先に仕掛けたラッキー内田、ラッキーキャプチャーZ、しかしこれはロープに近い。メガライト、体勢を立て直すために場外乱闘へ。しかしラッキー内田も場外スープレックスを警戒してか深追いはしない。

再びリング内での闘い。ラッキー内田、アームホイップで倒してからコーナー最上段に登り、ダイビングプレスで急降下。

「ワン、トゥ、スリー」
これで3カウントが入った。ラッキー内田、初来日の強豪外人ジェナ・メガライトを下して初防衛に成功。勝負タイム24分53秒。

―あ、危なかった・・・

裏のかきあいを制したラッキー内田、なんとかベルトを守った。

2008年2月22日 (金)

第343回 黒船襲来

20年目2月。

「うはははははははは、交渉に成功したぞ!」
「今野さん?」

不気味に笑う今野役員を吉田社長が怪訝そうな目で見る。

「TWWAの強豪選手、ジェナ・メガライト来るよ」

「ええええっ!」

アメリカマット界でも超大物といわれていたジェナ・メガライトがやってくる。アマレス仕込みのスープレックス連発で対戦相手を恐怖のどん底に落としまくっているらしい。実力は未知数だが、海外での評価は高いので最終戦ではラッキー内田の持つSPZベルトへのタイトルマッチを組んだ。

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でもって、初戦沖縄大会メイン。

いきなり、ロイヤル北条(SPZ13期)対ジェナ・メガライト戦が組まれた。

「うわ、強そうだ」
「けっこう上背もあるし筋力もありそうだ」
「なんでもアメリカのハイスクールではレスリングで敵なしだったからプロレスの世界に入ったそうな」

SPZの古参、ロイヤル北条もパワーでは団体5本の指に入るのだが、メガライトの力に振り回されて段々息が上がっていった。そして・・

「捕らえタ」

デスバレーボム、パイルドライバーで虫の息状態に追い込む。

「もう遊びの時間は終わりだっ」

追い込まれたロイヤル北条、ロイヤルスパイク、パワースラムでメガライトをカウント2.8まで追い込んだが、逆にこれがメガライトを本気にさせた。

「GO TO HELL!」
ものすごい高速のジャーマンが決まって、ロイヤル北条の意識を持っていった。

「21分30秒、ベリー・トゥ・バックで、ジェナ・メガライトの勝ち」

ざわつく館内。衰えたとはいえ元SPZ王者のR北条がメガライトに完膚なきまでに叩きのめされてしまったのだ。
この後メガライトがマイクアピール。

「SPZ!ベルトはモラッタ!」

ラッキー内田の持つSPZベルトへの挑戦を宣言した。

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勢いに乗るメガライトは、2戦目静岡大会でもSPZ期待の新星・ノエル白石(SPZ19期)をベリートゥバックで処刑。10分23秒。

「当然の結果ダナ」

そして第3戦三重大会でも、JRの地獄案内人・フレイア鏡(SPZ14期)をものともせず一方的な試合展開で、キャプチュードでカウント3。勝負タイム12分34秒。

「当然の結果ダナ」

ジェナ・メガライト、続く第4戦和歌山大会でも、ジュエルローゼスの重鎮、元SPZ王者の芝田美紀(SPZ12期)を子供扱い。芝田が殴ろうが蹴ろうが平然。相手にならないのだ。そしてものすごいデスバレーボムで7分12秒、芝田を処刑。

「・・・・・・・・・うう・・・」

ピクピクと痙攣したまま動かない芝田。このときビューテ市ヶ谷が血相を変えてリングイン。JRの盟友3人が次々と撃破されてしまったのだから屈辱ものである。

「明日、滋賀大会、シングルマッチで勝負ですわ!」

とうとうJRの大将・ビューティ市ヶ谷(SPZ13期)がかたき討ちを宣言した。

ええええええええ!

***************************

で、翌日滋賀大会セミ、とうとうこのカードが実現。

「青コーナー、アメリカ、フロリダ州出身、ジェナー、メガライトー」

「赤コーナー、埼玉県さいたま市出身、ビューティー、いちーがやー」

ドドドドドドドド!

早くも実現した大物同士のタイマン勝負に滋賀のファンは熱狂。地方の体育館でこんなカードが見られるとは。

だが前SPZ王者の市ヶ谷様でもメガライトをとめられない。ジェナ・メガライト、圧倒的なパワーで市ヶ谷の動きを封じこむ。強烈なバックドロップが市ヶ谷をもうろうとさせる。

「そんな、この、わたくしが・・・っ」

2発目のバックドロップで動けなくなった市ヶ谷、そこを捉えて逆片エビ固め!

ぐいぐいぐいぐいぐい!
力まかせに絞り上げるメガライト。市ヶ谷の顔がみるみるうちにゆがんでゆく。
「ギブアップ・・・ですわ・・・」

えええええええええええええええええええ!

16分22秒、前SPZ王者、市ヶ谷様が初来日のメガライトに敗北。試合内容を見ても完敗に近い内容。これでジュエルローゼスの4人は揃ってメガライトの前に討ち死に・・・

「ハーハハハハハハ、SPZベルトハモラッタ!」

「あ、あたし・・あんなのとやるの・・・?」
花道奥で見ていたSPZ王者・ラッキー内田(SPZ16期)も呆然としていた。

滋賀大会メインイベントはあばしりタッグ戦。王者ライラ神威(SPZ17期)、REKI(SPZ20期)に対するはヘレン・ニールセン、ジーナ・デュラム組。

しかし、やはりといっては何だがジーナがつかまってしまい、最後はライラの強烈なエルボーに崩れ落ちて3カウントを取られた。王者組が初防衛に成功。

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第6戦は岐阜大会。メガライトのきょうの相手は悪党・ライラ神威。

「いくらメガライトが強くたって凶器使えば勝てるべ」

オープンフィンガーグローブの中に鉄片を仕込むライラ神威。しかしそんなのは無意味だった。開始早々、ものすごいラリアットを食らってライラの記憶が飛んでしまった。そのあともライラはしばらく戦い続けたのだが、キャプチュード、パイルドライバーの猛攻に3カウントを奪われた。勝負タイム10分50秒。

「当然の結果ダナ」

第7戦長野大会。メガライトの相手はSPZがやけくそで送り出した新人REKI。当然一方的な展開。もはやそれは戦闘ではなく一方的な制裁だった。わずか6分26秒、ベリー・トゥ・バックでREKIを病院送り。

「何がクノイチだ、見かけ倒しだな!明日はラッキーがこうなるぜ!」
担架で運ばれるREKIを指さしながらほえるメガライト。まさか初来日の外人選手にSPZベルトを持ってかれてしまうのか?新王者ラッキー内田、いきなり大試練が訪れた。

2008年2月21日 (木)

第342回 20年目1月 頂上決戦

20年目1月 新春ロケットシリーズ

1月15日、最終戦新日本ドーム大会。

第1試合は18期生のアイドルレスラー、野村つばさ(SPZ18期)対ネタ外人ジーナ・デュラム。元気よくリング上を飛び回った野村が優勢に試合を進め、最後はジャンピングニーで弱気外人ジーナを仕留めた。勝負タイム9分42秒。

第2試合はタッグマッチ、フォクシー真帆、成瀬唯対氷室紫月、イージス中森。

元SPZ王者、トップグループの氷室が第2試合に登場。カード編成の都合とはいえ、屈辱的なマッチメイクととられなくもない。しかし本人は意にも介さずいつものポーカーフェースでフォクシーの攻めを受ける。そしてフィニッシュは突然に。氷室のスリーパーホールドにフォクシー、いきなり苦しみだしてギブアップ。勝負タイム15分22秒。

休憩前の第3試合はあばしり王者のライラ神威、REKIが登場。ライラは例によってスタンロッドをバチバチッと鳴らしながらの登場。そこへデイジークライがキックで強襲。

「てんめぇ・・・・」

試合は荒れた。乱戦になった。こうなると外人組の思うツボ。REKIをまずデイジーがボコボコにのしてしまう。

「ぐっ・・・無念」

場外マットに横たわるREKI。こうなるとあとは外人組がふたりがかりでライラを公開処刑。2対1のハンディキャンプマッチになってしまった。

「コノヤロウ!」

ライラ、シューズに隠し持った凶器を取り出そうとするが
「ハイ、ソレダメヨーン」

レフェリーのトム氏(EWAエージェント)に取り上げられてしまう。

「あーもう!」
ローンバトルに嫌気が差したのか、ライラがなんとか蘇生したREKIにタッチ。そこをデイジーが仕留めにかかる。フロントスープレックスで終了。勝負タイム15分49秒。エキサイティングな試合だった・・・

「けっ、使えねえ奴だ。」

ライラ神威、リングに横たわるREKIを置き去りにして一人で引揚げた。

*******************************

休憩明けはマッキー上戸登場。

今日の対戦相手はメキシコからやってきた新外国人、チョチョカラス2である。あのチョチョカラスに指導を受けた天才レスラーというふれこみであったが、マッキー上戸のほうが優位に試合を運ぶ。が・・・

チョチョカラス2!逆転のムーンサルトプレス。これで動きが止まったマッキー上戸、続くフランケンシュタイナーにフォール負け。勝負タイム14分6秒。

「そ、そんな・・・」
初来日の外人選手に敗れてしまったマッキー上戸は呆然。

ざわついた雰囲気のまま始まったセミファイナル。ロイヤル北条、芝田美紀のジュエルローゼス見参。対戦相手は武藤めぐみ、ノエル白石組。
試合では武藤の強さが目立った。JRの2人をほとんどひとりでうやっつけた。最後は芝田を捕まえてシューティングスタープレス!

「覚悟して」
これでカウント3.武藤めぐみもSPZのトップレスラーになってきた。勝負タイム11分56秒。

そしてメイン。SPZ世界王者のビューティ市ヶ谷、きょうのラッキー内田戦に勝てばSPZ王座通算防衛記録を吉田龍子の持つ記録、22回に並ぶ。

「んー、まあ、これは大変な記録ですよ。市ヶ谷選手はいままでこのチャンピオンベルトを21回も防衛したんですから」

・・・アー、並ばれちゃうのかな。

解説席の吉田龍子も複雑な表情でヘッドセットに手をやる。記録は破られるためにある。しかし破られるのを目の当たりにしていい気分はしない。

「それっ!覚悟なさい!」

ビューティ市ヶ谷、いつもどおりのラリアット乱打。衰えているはずなのだがそれをまったく表に出さない戦いぶり。あっという間にラッキー内田を追い込んでゆく

しかしビューティ市ヶ谷が攻め疲れたのを待ってラッキー内田もスリーパー、ネックブリーカーで反撃開始。一気にもっていけなくなったところが市ヶ谷の今の状態を物語っている。そして執拗なコブラツイストで市ヶ谷のスタミナをじわじわと奪う。

「ハァ、ハァ・・・くっ、覚悟なさい!」

市ヶ谷のビューティボム狙いを冷静にリバースで切り返すラッキー内田。立ち上がったところを延髄斬り!

ビューティ市ヶ谷、これはカウント2.8で返したものの、同じ技をもう一度食らって万事休す。

「30分50秒、延髄斬りからの片エビ固めでラッキー内田の勝ち。」

王座移動。ビューティ市ヶ谷、タイ記録はならなかった。ノーコメントで会場を後にした。

これでSPZのスーパーヒロイン(今野役員談)ラッキー内田が第57代SPZ王者となった。

「苦しい戦いでした・・・。でもベルトをもう一度巻けて嬉しいです」

2008年2月20日 (水)

第341回 20年目1月 新春ロケットシリーズ

20年目1月、SPZ14期生にしてJRの核弾頭・フレイア鏡(20)ファースト写真集「MIDORI」発売。ファンにとっては待望の写真集発売。

「写真越しとはいえ欲望深い連中に私の肢体を晒せと?」
今野役員は笑うしかなかった。まあスーパーモデル並みのスタイルを持つ彼女だけに、売れ行きは上々だろう。

「ウァー、GWA新女にもってかれたーーー」
吉田社長はひっくり返った。これでマッチメイクが苦しくなった。

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「2029新春ロケットシリーズ」開幕。

第1戦鹿児島大会メインイベントはSPZタッグ選手権。王者組ジューシーペア(ラッキー内田&マッキー上戸)に挑むのは「天才姫」武藤めぐみ、「不思議姫」ノエル白石組。

「解説の吉田さん、この試合の見どころは」

「えーと、ん・・・まあ、ノエル白石がどこまで頑張るかじゃないですか、当然ジューシーペアもそこ狙ってくると思いますんで」

やはりジューシーペアが早めに仕掛けた。

「つぶしてヤルーッ!」
マッキー上戸、5分かそこらでスプラッシュマウンテンを武藤に決める。武藤をなるべく早く戦線離脱させて、ノエル白石を料理しようという手堅い作戦。

「うわっ・・・」
カウント2で返す武藤めぐみ。

「そっちがその気なら、こっちだって・・・」
武藤も早い段階でシューティングスタープレスをラッキー内田に見舞って、試合は荒れた。武藤もラッキー内田も早々と大ダメージを負って、思うように動けなくなってしまった。鹿児島のファンは大歓声。

「覚悟して!」

しかし武藤、なんとか体勢をたてなおしてノエル白石にスイッチ。

―決めるなら、今しかない・・・

ラッキー内田怒涛の絞め技攻勢。ラッキーキャプチャーをしつこくかけて、ノエル白石を弱らせて、

「せぇっ!」
フライングニールキック一撃。粘るノエルからこれで3カウントを奪った。勝負タイム36分52秒、王者組が初防衛に成功。

**************************

シリーズ第5戦長崎アリーナカブトガニ大会。

セミファイナルはジューシーペア対ビューティ市ヶ谷、芝田美紀のノンタイトル戦。しかし最終戦のドーム大会でSPZ王者のB市ヶ谷はラッキー内田の挑戦を受けることが決まっているので、前哨戦的な意味合いのタッグマッチ。

「おーほほほほほほ、さっさとひざまづきなさい!」

ラリアット乱発で試合の流れを強引につかもうとする市ヶ谷。しかし、ジューシーペアの2人を向こうに回して闘っているうちに疲れてしまったのか、突然のラッキーキャプチャーに捕らえられてしまう。芝田のカットはM上戸が逆カット!

「ギブアップ、ですわ・・・」

えええええええええええ!
13分44秒。ビューティ市ヶ谷ギブアップ。最終戦での防衛に黄信号が灯った。

長崎大会メインはあばしりタッグ選手権。王者フォクシー真帆、成瀬唯組に対するは前王者のライラ神威、REKI組。

「ベルトなんて知ったことかぁ、あの関西人と田舎ものを血の海に沈めてやるぜ!へへへへへ」

「参る・・・・・」

 「解説の吉田さん、いつみてもライラ、REKI組ってのは良く分からないタッグチームですね」

「んー、いや、そうでもないですよ。ライラ選手が好き勝手暴れて、REKI選手がうまくつないでるんですよ。まだREKI選手キャリアが浅いんですけど、将来的にはいいタッグチームになってもらいたいですね」

今回はREKIが深追いせず、ライラ神威のフォローに徹していた。終盤、成瀬のストレッチプラムを食らってしまうなど危ないシーンもあったが、なんとかライラにつなぐ。

「イヤーッ!ハハハハハハハ」

ライラ神威、悪党らしからぬブリッジのきいたバックドロップで成瀬を仕留めた。REKIはカットに飛び込んでくるフォクシーをうまく阻止。ライラ、REKI組があばしり王者に返り咲いた。

そして1月15日、最終戦新日本ドーム大会。会場入り口には大看板が。

SPZ世界選手権試合 (王者)ビューティ市ヶ谷 VS (挑戦者)ラッキー内田

市ヶ谷様が勝てば、累計防衛回数が22となり、歴代1位の吉田龍子に並ぶのだが・・・・

2008年2月19日 (火)

第340回 ギムレット美月の「それから」(2)お金と勇気。

レッスルエンジェルスサバイバー プレイ日記
輝くエッセンシャル 外伝
ギムレット美月、それから (2)

2028年12月31日、午後3時、さいたまスペシャルホール。スタッフの運転する車で会場入りした八重樫美月(26)。きょう行われる大晦日の格闘技イベント「アポカリプス」に参戦するため、昼間に後楽園プラザで行われたSPZ選手会興行での自分の試合が終わるや駆けつけた。

「私は総合格闘技なんてやったことありませんし、あれは別の競技ではないですか?」

12月頭に参戦のオファーがあったとき、いったんは断った美月だったが、提示された「けっこうな額」のギャラに変心した。

―目的のためには、信条を曲げることも時には必要ですね。

プロレス会場のオーナーになるという目的があり、その資金を稼ぐために八重樫美月は参戦を了承した。

控室に着くやいなや着替え。ギムレット美月のコスチュームを脱ぎ、黒いカッターシャツとロングタイツに着替える。殺し屋レスラー、ジ・オブリビオンの出来上がりだ。
そのあと今日2度目のアップ。後楽園プラザでシングルマッチを闘ったあとで、疲れてはいるがプロレスラーとして最善をつくさなければならない。

そのあとインタビューの撮り。午後6時からの試合は御台場テレビ系列で生放送である。

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そのころ横浜戸塚のSPZ本社。今野役員と井上霧子、吉田社長がビールを飲みながらテレビ観戦していた。

「美月ちゃん、大丈夫かしら~」

「まあ殺されはしないと思うよ。」

「んー、今野さん、対戦相手誰なの」

「外人姉ちゃんっぽいね。ルシャガワ・ラウシーっていうアメリカ人格闘家だってさ、空手と柔道やってたって」

「聞いた事ないわね、あ、そろそろ番組始まるわ」

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「いよいよ始まりました大晦日の格闘技イベント『アポカリプス』第1試合はジ・オブリビオンことギムレット美月が登場いたします。」

「驚きましたねえ、日本最強の女子プロレス団体SPZでチャンピオンになったレスラーでしょう。そんな選手が総合格闘技のリングに上がってくるわけですから」

解説の元格闘家、ヘルクラッシャー東浦が驚きの表情でコメント。

「うっわー、元ウチ所属を前面に出しとんのか~」
今野役員がテレビの前で顔を覆う。

ちなみにギムレット美月はAACチャンプになったことはあるが、団体では中堅どころのポジションだったのでSPZベルトはシングル・タッグともに巻いてはいない。

「それではここでオブリビオンことギムレット美月選手の映像を見てみましょう」

「あっ、誰だ映像素材出したの」

スターライト相羽を関節技でいたぶるギムレット美月の映像が。おそらく15年目頃の映像だろう。しかし画面右下に(映像提供:大日本テレビ)と出たからお台場テレビサイドが大日本テレビに掛け合ったものと思われた。

「もともとSPZは関節技やグラウンドレスリングが強い選手がいっぱい集まってましたからね。総合格闘技でもその恐ろしさが発揮されるんじゃないですかー?」

「んー、まずいかも知れんね」

吉田龍子は顔を曇らせた。ここで八重樫美月が惨敗してしまったら、SPZの最強神話が崩れ、観客動員にも響いてくるのではないか。分かっているファンがすべてではない。

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「それではここで試合前の控室の様子を除いて見ましょう。赤コーナー側リポーターの小坂さん」

「はーい、試合前のオブリビオン選手ですが、真剣そのものですね」

オブリビオン、無表情をよそおってオープンフィンガーグローブの感触を確かめ、シャドーボクシングの真似事なんぞをやっている。

「ちょっと意気込みを聞いて見ましょう、今の心境は」

「you will pay、dying!thousand death! thousand death!」

(訳:お前は代償を支払う!1000の死!1000の死!)

あくまで殺し屋のギミックを演じるオブリビオン。

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そして試合開始、「oblivion」が流れて、赤コーナー側花道からオブリビオンがゆっくり歩いてリングへ。表情が少し硬い。

―100%負けるとしても、レスラーの意地を見せられたら。

ロープの間をくぐってリングイン。一線を退いたとはいえ、人気レスラーの総合格闘技参戦に場内ハイテンションマックス!

「赤コーナー、ジ・オブリビオン~!!」

リングアナのコール。

「ギムレットー!!」「美月さん、頑張れー!」

「会長―!!」SPZ時代の会長コールまで飛び出した。

総合格闘技ルール、5分3ラウンド。ゴングが鳴った。

カンッ。

「せいっ!!」

オブリビオン、いきなりダッシュして間合いをつめて、右腕でラリアット。あくまで闇の殺し屋としてのファイト。ギムレット美月の頃は使っていなかった技。しかしルシャガワ、あっさりとかわしてタックルで転ばせる。そのまま上へのしかかって、オブリビオンの頭部へ重いパンチを撃ち込む。

がすっ。

「美月!」
テレビ観戦していた吉田社長の顔色が変わる。
「あー、終わった」
井上霧子も顔を覆う。

しかしオブリビオン、砕けそうな意識をつなぎとめて、なんとかルシャガワをグラウンドで組みとめて、フェイスロックに捕らえた。手首のリストバンドの部分で鼻をつぶす。SPZで若手の頃、小川ひかるに良くやられていたムーブだ。

ドワアアアア!
ごきっ。
鼻のひしゃげる音。飛び散る鮮血。

しかしルシャガワは意に介さず、決められた態勢のままオブリビオンのわき腹にパンチを打つ。

がっ、がっ。
三発目で肋骨に電気が走った。

―もう、このへんで、いいかな。

オブリビオン、血で滑ったような動きに見せかけてフェイスロックを解いた。あとは馬乗りになったルシャガワが側頭部へパンチ。パンチ、パンチ。

―伊達さんの蹴りよりかは・・・マシ。

しかし四発目でついに意識が砕けた。レフェリーがここで試合を止めた。オブリビオンTKO負け。

「1ラウンド43秒、マウントパンチでルシャガワ・ラウシー選手の勝ち」

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「いやー解説の東浦さん、短いながら見ごたえのある攻防でしたね」

「最初に不用意にラリアットをやったのが響きましたね。あれでルシャガワが上になっちゃいましたから。しかしオブリビオンもうまく組み付いてフェイスロックをやりましたからね、血で滑ったのが惜しかったですね」

試合後のリング上、オブリビオンはなかなか起き上がれなかった。「アポカリプス」専属のリングドクターまで駆け上がって状態をチェック。

―美月さん、美月さん!!

ぼうっとかすむ意識の中、セコンドのキューティー金井(現タレント)が涙ぐんでいた。

「何秒・・・持ちましたか」

「えぐ、えぐ・・えっと、43秒だって、大丈夫、いまタンカ来るから」

「・・・・必要ありません。歩いて帰ります」

気付けで、ペットボトルの水を頭からかぶる。吉田龍子やスイレン草薙にやられたときも、よほどのことがない限り自分で歩いて帰った。

リング上でお辞儀をしてから、そろりとリングを降りて、ふらつく足取りでさいたまスペシャルホールの長い花道を歩く。なにやってんだという罵声を覚悟していたが、

「美月さん、ありがとう!」

「会長、よくやったぞ!」

―やっぱり、SPZのファンは・・・・
古くからのファンは分かっていた。これは無謀な挑戦だということは。わかったうえでむしろその勇気を称えてくれる。実力微妙で10年戦い続け、第一線を退いてもなお声援を送ってくれる。お金のために違う競技のリングに上がっても。
八重樫美月、涙をこらえながら花道を歩ききって、もう一度お辞儀をしてからカーテンをくぐる。そのあとすぐ倒れこんだ。

「美月さん!!」

キューティー金井があわてて駆け寄る。」

「心配ありません・・・少し横になれば、回復します・・・」

控室には羽山海リングドクター(SPZ社外取締役)が来ていた。これは無謀な挑戦を案じたキューティー金井があらかじめ手配しておいたのである。

「はーい、どうしました?腰が痛い?あー、それは、重い、重~い、肋骨骨折かもしれませんね~、すぐにお手当てしないと大変です。では、そこに横になってください、ふふ、リラックスして・・」

ブスーッ。

「はい、痛み止めー、肋骨ひび入ってるかも知れないから、2週間は安静にしててね~」
八重樫美月、このあと控室でしばらく横になったあと、キューティー金井の運転する車で東京府中の自宅へ帰った。

2008年2月18日 (月)

第339回 20年目12月 SPZ選手会興行

20年目12月 年末恒例:SPZ選手会主催興行。

(この回はリプレイではなく、完全妄想作話です。)

「さー、選手会長はウチや。選手会こーぎょーやって、儲けたろか~」

横浜のお嬢様プロレス団体・SPZには年末なら何をやってもいいという風土があり、ここ数年マスターズ戦と選手会主催興行が隔年で行われている。今年企画した「幹事」は成瀬唯選手会長。しかし負傷欠場者が5人もいて、かつJRの面々と極悪ヒールのライラ神威はこの手のイベントには参加しないので、アトラクション編成には苦慮したらしい。

「がっぽり儲けて、冬休みに選手会でワイハ行くで~」

ということで2028年12月31日、昼下がりの後楽園プラザ。まともな試合は2試合しか組まれていないが、SPZ選手会興行は2000名の観衆を集めた。

第1アトラクション:渡辺智美歌謡ショー

正午にイベント開始。場内が暗転し、いきなりスピーカーから大音響が。そしてリングに上がったのはドレス姿の渡辺智美!!

ーああ、 知床、知床、オホーツクの海ぃぃぃ、
 想いは はかなく 散ってしまったーーーー
ーああ、 知床、知床、オシンコシンの滝ぃぃぃ、
 涙に濡れた ウトロ の 港ーーーー

イベント開始とともに登場したのはSPZ5期生の売れないタレント渡辺智美(30)による歌謡ショー。元アイドルレスラーという肩書きを引っさげて芸能界入りしたが、最近は2時間ドラマの犯人役でたまに出てくるくらいの売れないタレントになってしまった渡辺、年末年始も古巣での営業活動せざるを得ない状況。それでもこの夏にリリースした新曲「知床の海」など3曲を熱唱。後楽園プラザはそこそこ盛り上がった。

「今年も紅白には出られませんでした。(場内笑い)来年もCDを出していきますので、どんどん買って頂いて、私を紅白へ送り込んでくださいっ!」

館内は失笑に包まれた。

第2アトラクション:16期生トークショー

(聞き手:京スポ新聞若林記者):「来年の意気込みを聞かせてください」

氷室紫月:「運命・・・・」

ラッキー内田:「そろそろ市ヶ谷政権を止めたいと思います。来月の新日本ドーム、期待してください」

マッキー上戸:「タッグベルトを守り抜くぜ!!全員ぶっ潰してやる!!」

負傷欠場中のラッキー内田、マッキー上戸、氷室紫月の16期生3人が登場。まったりとしたトークショーを繰り広げた。

第3アトラクション、シングルマッチ

休憩前は普通のシングルマッチ。久々に流れた「oblivion」、

館内これだけでドワアアアア。

登場したのは昨年8月にSPZマットを「退職」したギムレット美月。いまは各地のインディー団体を転戦してプロレスの普及を図っている。昨年のマスターズ戦以来、1年ぶりにSPZのリングに帰って来た!

「赤コーナー、岐阜県垂井町出身、ぎむれっとー、みつーきー」

ドワアアアア!

対戦相手はメキシコから来たという設定の謎の覆面レスラー、エル・ウトンベリノ99.正体はギムレット美月の知り合いのインディー系レスラーらしい。

ゴングが鳴るや往年のねちっこいレスリングを見せるギムレット美月。そして右腕に狙いを絞り一点集中攻撃。このあたりのうまさはさすが。対戦相手のウトンベリノもラリアットやパワースラムなどで攻めたが、ギムレット美月、不利になると場外へエスケープするというズルーイ手を使う。

追ってきたウトンベリノに対して、
「すみません、ちょっとそれ貸してください」
リングサイドの観客が飲んでいた缶ビールを凶器に使用。

ポカポカポカポカポカ!

ウトンベリノをヘッドロックに捕らえて、ビール缶で頭をぼかぽか。このあたりはインディー団体を転戦して覚えたムーブ。飛び散るビール。これで形勢逆転に成功。

最後はリング内に戻って、ダブルアームスープレックスをねらう。

「んんーーーーーーー!!」
力のこもるギムレット美月、投げられまいと下から踏ん張るウトンベリノ。この攻防だけで1分以上見せてしまうのだから凄い。

「んん~~!」
力のこもるギムレット美月、しかし元々パワーのある選手ではないのでやはり投げられない。いったん腕のフックを解いて、
がすっ!
げんこつ一撃。そして顔面かきむしり。

これで怯んだウトンベリノ、すかさずもう一度腕をフックして、

「んんーーーー!!」
こんどはなんとかダブルアームスープレックスで投げきった。そのまま押さえ込む。これでカウント3が入った。勝負タイム15分3秒、ギムレット美月が勝利を収めた。

「ナイスファイト!美月さん」
控室、ギムレット美月が荒い息を弾ませながら戻ってきた。ギムレット美月、選手会長からギャラの5万円を受け取るとその足でエレベーターに向かった。

「八重樫さん、今夜の格闘技戦、頑張れよ」

エレベーター前で今野役員が声をかける。このあと彼女はさいたまスペシャルホールで行われる総合格闘技の試合に出場予定だ。駐車場に車を待たせてある。

「まあ、勝てるわけないですけど、違う競技ですし、まあ適当にやられてお金もらってきます」

こうしてギムレット美月は決戦の地へ向かった。

休憩明け第4アトラクションは例年通りラッキーナンバー抽選会。入場時にもらったパンフレットに記されている4桁の番号とノエル白石がリング上で抽選した4桁のラッキーナンバーがあえば選手提供の豪華?賞品がもらえるという例年のイベント。ラッキー内田は恒例の麻雀コミックのほかに「入場用ガウン」を提供したので大盛り上がり。

セミファイナルはSPZ関係者、OG6名によるグダグダのタッグマッチ。

井上霧子、京スポ新聞若林記者、富沢レイ 対 今野役員、上原今日子、エル・オガワ・メンドーサ。裁くレフェリーは渡辺智美。

「iTe cogi!」

エル・オガワ・メンドーサ、謎のメキシコ人レスラーという設定だが正体はみんな知っている。銀色の覆面とTシャツとトレーニングウェア姿。3年ぶりの参戦となったが、仕事と育児のストレス解消のためか、富沢レイをグーで殴りつける。

「あ、いったーい!」
しかし富沢レイもアイアンクローで反撃。同人誌執筆で右腕の力は現役時代よりパワーアップしている。この手の試合に出るのも後楽園プラザで同人誌(1冊1000えん)を売りさばいて小遣いを稼ぎたいがためらしい。EOメンドーサをコブラツイストで弱らせてからコーナー最上段に駆け上がった。

「バーニング・キーック!」

どうみてもタダのミサイルキック。しかし、まともに食らったメンドーサは吹っ飛んでしまった。そのまま場外でのびてしまった。早くも戦線離脱。

一方仕掛けた富沢もミサイルキックの受け身を取りそこね背中を強打。
「ああぁぁ・・・」
富沢レイも転がって井上霧子にタッチしてそのまま場外でのびてしまった。やはり達人といえどもブランクはいかんともしがたい。

そしてリング上はSPZコーチ・上原今日子とSPZ取締役・井上霧子が対面。両方ともスーツ姿。おねえさん同士の喧嘩になるのか。

「さっさと終わらせるわよ、くらえ、ヤクザキック!」

井上霧子、体力面で不安があるのか、いきなり必殺のヤクザキックを仕掛けてきたが、

「見切った!」

上原今日子、寸前で井上霧子の動きを見切り、後方へ倒れこんで蹴りをかわした。

「なにっ!」

―やはり井上さんももう40代、蹴りのスピードが落ちてきて見切られたか・・・
今野役員がコーナーで戦況を見守る。

バランスを崩す井上霧子、倒れこんだ上原今日子がそのまま水面蹴りの要領で井上霧子の軸足を払った!

「あ、アッ!」
ハデにすっころぶ井上霧子、

「かわいそうだけどこれで終わり!」
上原今日子、倒れこんだ井上霧子へアキレス腱がため!

「うああああああっ!」

苦悶の表情の井上霧子。上原のパワーでアキレス腱固めを食らったらただですまない。これで決まってしまうのか!

しかしここで若林氏がリングイン。井上霧子のピンチに救援に入った。新聞紙を丸めたヤツで上原の頭をすぱーんと殴ってカット。

「ううっ・・・」

頭を押さえる上原今日子。そのまま若林記者が後方から押さえつける。

「必殺!サントリーレッドッ」

井上霧子が隠し持っていた安ウイスキーのポケット瓶を取り出し上原に飲ませる。強制イッキ。

「う、うおおおおお・・っ!!」

あわれ上原今日子はこれで失神してしまった。しかし井上霧子もアキレス腱がための後遺症で、

「足が、動かない・・・っ」

肉離れの疑いもあったので、はいタンカ2台出動。壮絶?バトルの末、井上霧子と上原今日子がタンカで運ばれた。

リングに残されたのは今野役員と若林記者。例年通り、駅のホームで酔っ払った親父同士のケンカファイトを展開。

「この変態役員が~!!」

「なんだとこのエロ新聞!!」

しかしお互いスタミナに難があるので、2分くらいで息が上がってしまった。

「・・・ハア、ハァ・・・・こ、このまま、戦いを続ければどちらかが過労死してしまう。そ、そうなる前に決着をつける!くらえ!ローリングクレイドル!」

若林記者、今野役員に絡みつくやそのまま倒れこんでローリングクレイドル。今野役員をフックしたまま5回転。さすがプロレス記者歴26年。この日のために会議室で若手記者相手に特訓をつんでいたらしい。そのまま3カウントが入った。

「ワハハハハハ、勝ったぞ」
勝ち誇る若林記者、三半規管がやられてしまったのか、ピクリとも動かない今野役員。メンドーサと渡辺レフェリーに引きずられて退場。

メインはSPZ選手同士の6人タッグマッチ。タイガージェット真帆、成瀬唯、野村つばさ対武藤めぐみ、イージス中森、REKI。選手会興行にしては比較的まともな顔合わせとなった。

試合はタイガージェット真帆が暴走暴走大暴走、
「SHAAAAAAA」
サーベル攻撃、首しめで新人のイージス中森をいたぶる。

しかし武藤めぐみが延髄斬りで救援。そのあと6人が入り乱れる攻防になった。15分経過後、リング上に武藤めぐみと成瀬唯の局面。成瀬の実力からいって不利かと思われたが、選手会長には秘策があった。

―ま、悪く思わんといてや。選手会興行なんてこんなもんやから。

成瀬唯、セコンドから受け取った特大のはりせんを構える。

「きのうジョイフルH田で材料買うて作ったんや。ボール紙に鉄板をはっとるから痛いでぇ・・・」

ばしーん、ばしーん、ばしーん!

成瀬唯のスペシャルはりせん攻撃に武藤たじたじ。あっという間にダウン。

「くっ・・・」武藤、反則攻撃でフラフラだ。さて成瀬唯、何でトドメを刺すのか、

「ほんならいくでー、超奥義、ローリング、スペシャル・・・・」

「その先を言う必要はない、消えろ」

いつの間にかコーナーに登っていたREKI,ミサイルキックで急降下爆撃。不意を突かれた成瀬はモロに食らってしまった。これでカウント3.新人のREKIが選手会興行のお遊びマッチとはいえ成瀬からフォール勝ちを取ってしまった。

「来年も、SPZを応援よろしくねーーー」

締めの挨拶は野村つばさ。これで20年目の選手会興行は終わった。

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年末のプロレス大賞、最優秀選手は武藤めぐみ。SPZクライマックスで準優勝に輝くなど、市ヶ谷を脅かす存在になってきたことが評価された。最優秀新人はイージス中森。同期のREKIはライラのパートナーに抜擢され華々しい活躍をしているが中森も力をつけている。

シングルのベストバウトはビューティ市ヶ谷対ラッキー内田の一戦。タッグのベストバウトはラッキー内田、マッキー上戸対ビューティ市ヶ谷、ロイヤル北条の一戦が選ばれた。

2008年2月17日 (日)

第338回 20年目12月 GWA選手権 ローズヒューイット×フレイア鏡

20年目12月
ビューティ市ヶ谷、氷室紫月、ラッキー内田、マッキー上戸、ノエル白石が次々に負傷発覚。主力選手5名が欠場となった。

「うっわーーーー」

今野役員は唖然。吉田社長と相談して、年末「ビッグファイトシリーズ」は会場規模を縮小して行うことになった。

18期生の武藤めぐみ、17期生のライラ神威にファンクラブ結成。正統派ファイターで次期エースの武藤は分かるが、悪役のライラ神威が・・

さて年末シリーズ、初戦は札幌キターアリーナ大会。
「・・・・・・・・・・・・」
第1試合でREKIがジーナ・デュラムをわずか8分、圧倒して下した。最後はかっこよくショルダータックルを決めて終了。REKIもライラ神威のタッグパートナーに抜擢されてから動きが良くなってきている。

第2試合はイージス中森対野村つばさ。アイドルレスラーの野村が新人のイージス中森を迎え撃つ。イージス中森も先輩越えを果たそうと食らいついていったが、最後は野村のダイビングプレスに力尽きた。勝負タイム12分14秒。

第3試合はライラ神威対フォクシー真帆。すっかり中堅要員(かませきつね?)と化したフォクシー、ライラ神威のあくどいファイトに耐える。しかし・・・

「フハハハハ、泣き叫びナ!」
カムイエクウシカウチ炸裂。14分16秒、ライラ神威が貫録勝ち。

セミファイナルは武藤めぐみ、成瀬唯対ローズ・ヒューイット、ファントムローズ1号。先月のタッグ戦のカード。武藤がヒューイットを熱いファイトの末たたきのめし、成瀬がきっちりファントムローズ1号をドラゴンスリーパーで仕留めた。勝負タイム15分10秒。

メインイベントは6人タッグマッチ。芝田美紀、ロイヤル北条、フレイア鏡、ジュエルローゼスの3人が登場。対戦相手はデイジー・クライ、ヘレン・ニールセン、アリス・スミルノフのEWA勢。6人が入り乱れる攻防。芝田がデイジーに追い詰められたが、ダイヤモンドキックでピンチを脱出し、最後はロイヤル北条とフレイア鏡の合体パワーボムがアリスに決まって終了。勝負タイム24分30秒。

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第7戦しゃちほこドーム大会、メインはあばしりタッグ選手権。王者ライラ神威、REKIに対するはフォクシー真帆、成瀬唯の中堅コンビ。

ライラ、REKI組の入場シーンは異様。まずライラが観客をあおりながら、手にしたチェーンソーをぶいぶいぶいーんと言わせながら入場。そしてリングイン。REKIはそのあと花道を全力疾走してすばやくリングイン。ある意味新人らしい入場。

「おまえらなんか顔じゃねえんだ!」吼えるライラ。

「・・はいはい。でも試合は勝たしてもらうさかい」

―とにかく動いてライラを疲れさせる。そしてREKIが出てきたところがチャンスや。

成瀬の立てた作戦が的中。フォクシー真帆の強引なパワーファイトに嫌気が差したライラ、いったんREKIにタッチ。そこを集中攻撃を浴びせる。

「シャーーーーー」
フォクシードライバー炸裂。これで3カウントをREKIから奪った。あばしり王座移動。勝負タイム30分12秒の激戦。

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年内最終戦はさいたまドーム大会。メインはGWA選手権。自前でタイトルマッチできないので海外団体の助けを借りた。王者ローズ・ヒューイットに対するはSPZ14期・JRのフレイア鏡。

「ワタクシは美しい薔薇!」
ゴングと同時にローズ様、激しい攻撃。ショルダータックルの乱発でペースをつかもうとする。

「さぁ、マットに口付けなさい!」
フレイア鏡、逆転を狙ったストレッチプラム、しかしヒューイット、力まかせに外してしまった。さすがGWAのトップ。パフォーマンスだけではない。

「そんな!?」
ここでヒューイット、決め所とみてラッシュ。バックドロップ、裏拳、シャイニングウィザードとものすごい波状攻撃。

「散りなさい!」
続くパワーボム、なんとか2.9で返した鏡だったがもはや起き上がることができず、続くギロチンドロップに力尽きた。勝負タイム25分59秒。

これで激闘の2028年が終わった。

2008年2月16日 (土)

第337回 20年目11月 SPZタッグリーグ後編

20年目11月 SPZタッグリーグ戦 続き

第6戦は群馬大会。

氷室、N白石(5点、時間切れ引き分け)F鏡、芝田(3点)

氷室とフレイア鏡が関節技狙いのグラウンドレスリングを延々展開。これで大きく時間を食ってしまう。氷室が終盤になってようやくサソリ固めを仕掛けるが芝田がカット。ここで30分フルタイムドローとなった。

ローズ○、Fローズ1号(8点、バスターローズからの片エビ固め 18.33)武藤、成瀬×(4点)

いくら武藤が進境著しいといっても即席タッグではリーグ戦を勝ち抜くのは苦しい。ローズ・ヒューイットの攻めに苦しむ。たまらず成瀬にスイッチ。成瀬唯・・・弱い。バスターローズ一発で終了。

B市ヶ谷○、R北条(6点、デスバレーボムからの片エビ固め11.48)アリス×、ヘレン(2点)
市ヶ谷様があっさりとEWA軍を退けた。

L内田○、M上戸(10点、ラッキーキャプチャー 15.18)R神威、REKI×(4点)

先発はマッキーとライラ。力押しでの消耗戦はマッキーに一日の長があるのでライラは気おされたのかあっさりREKIにタッチ。マッキーがREKIをあっという間に追い込みジャーマンで半失神にしてしまうがライラがこれはカット。

ここでラッキー内田登場。みごとなテクニックでライラを追い込み、ラッキーキャプチャーでぐったりさせる。続いて出てきたREKIにもラッキーキャプチャー。REKI耐えられず終了。ジューシーペア危なげなく5連勝!

第7戦は幕張コンベンションホール大会。

氷室○、N白石(7点、サソリ固め 11.51)ローズ、Fローズ1号×(8点)

GWA軍が2敗目。ローズ・ヒューイットの破天荒なファイトに押された氷室だったが、格落ちのファントムローズ1号を捕らえるやサソリ固め、あっさりギブアップを奪った。

B市ヶ谷○、R北条(8点、デスバレーボムからの片エビ固め 7.29)R神威、REKI×(4点)

REKI、市ヶ谷様の猛攻に玉砕。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

武藤、成瀬○(6点、ドラゴンスリーパー 14.13)F鏡×、芝田(3点)

3敗を喫し優勝争いから脱落した武藤組。
―あたしにはまだ、試合を支配する力がない・・・

それでも今日はJRの2人相手に真っ向勝負。あっという間にフレイアを追い込む。そしてフィニッシュは成瀬が取った。ドラゴンスリーパーでフレイアを仕留めた。

L内田、M上戸○(12点、ジャーマンSH 11.13)アリス、ヘレン×(2点)

1敗がいないため、引き分け以上で優勝が決まるジューシーペア。もっともいまのジューシーペアがEWA二流外人に負けるわけもない。あっさり優勝を決めた。

******************************

最終戦は横スペ大会。
第1試合で新人のイージス中森がジーナ・デュラムに勝利。同期のREKIの活躍に刺激されたか。

第2試合ではフォクシー真帆がパトリシア・ルイスに快勝。

そしてリーグ戦最後の4試合。
ローズ○、Fローズ1号(10点、パワーボムからのエビ固め 24.40)F鏡×、芝田(3点)

「散れッ!」
ガシャアンっ!

ローズ・ヒューイット大暴れ、場外ラリアットでフレイア鏡を観客席に頭から突っ込ませる。ファントムローズ1号も絶妙のサポート。最後は再び出てきたローズ・ヒューイット。パワーボムでフレイア鏡を沈めた。堂々の10点でリーグ戦終了。準優勝となり、賞品の「ももかん」を入手して引き揚げた。

氷室、N白石○(9点、合体パワーボムからのエビ固め 23.02)アリス×、ヘレン(2点)

氷室がEWA軍の連携に苦しむ。代わって出てきたノエルにもスミルノフがきついバックドロップ。しかし最後は合体パワーボムを決めた氷室組が有終の美を飾った。

武藤○、成瀬(8点、)シューティングスタープレスからの片エビ固め 18.41)R神威、REKI×(4点)

デビュー7ヶ月で本拠地横スペのセミで試合をするまでにポジションを上げたREKI。(本当のところはライラと組めるレスラーがいないからだったが)

「ウァラァアア、死ねや武藤~!!」

この日のライラ、勝敗度外視で武藤とやりあう。しかし武藤も正面から対応し返り討ちに。ここでREKI登場。しかし武藤の厚い壁にあっさりとはじき返された。

L内田、M上戸○(14点、合体パイルドライバーからの片エビ固め29.38)B市ヶ谷、R北条×(8点)

すでに優勝を決めているジューシーペアが前年優勝チームの市ヶ谷・北条組と対決。
「覚悟なさい!」
市ヶ谷様暴れまわる。しかしジューシーペアも懸命の連係でつないで、マッキー上戸がスプラッシュマウンテンで市ヶ谷を戦線離脱させることに成功、

ジューシーペアチャンス到来。しかし孤立したロイヤル北条も懸命の抗戦を見せ、マッキーのジャーマンを前方回転エビに切り返す。しかしー

マッキー上戸のバックドロップで頭を打ってしまったロイヤル北条、目がうつろだ。そこを突いたジューシーペア、合体パイルドライバー。ロイヤル北条力尽きた・・・
ジューシーペア堂々の全勝優勝。
「まだまだ、こんなんじゃ満足してねーぜ」
「次は市ヶ谷さんのSPZベルトを獲りに行きます」

2008年2月15日 (金)

第336回 20年目11月 SPZタッグリーグ戦(前編)

20年目11月。
恒例のSPZタッグリーグ戦。第20回の記念大会だけあってバラエティに富んだ?出場チーム。以下の8チームがエントリー、

前回優勝:ビューティ市ヶ谷、ロイヤル北条(ジュエルローゼス)

前回準優勝:ラッキー内田、マッキー上戸(SPZタッグ王者)

ミステリアスコンビ:氷室紫月、ノエル白石

悪逆非道:ライラ神威、REKI(あばしりタッグ王者)

ジュエルローゼス:芝田美紀、フレイア鏡(元SPZタッグ王者)

天才&関西:武藤めぐみ、成瀬唯

EWA代表:アリス・スミルノフ、ヘレン・ニールセン

GWA代表:ローズ・ヒューイット、ファントムローズ1号

武藤めぐみは氷室とのコンビを解消。「氷室さんとは組むより闘いたい」と本人が申し出てきた。

2戦目の岩手大会からリーグ戦スタート。

R神威、REKI(2点、トムラウシからの片エビ固め 9.44)アリス、ヘレン×
「消えろ・・・」
中盤苦戦を強いられた新人のREKIだったが、フェイスクラッシャーで形勢逆転してライラにスイッチ。

「キェーヘヘヘヘ!」
ライラ神威、中堅外人相手だと強い。あっさりとトムラウシで仕留めた。

「優勝!?できるわけねぇだろ!好き勝手暴れるだけさあ!」

武藤○、成瀬(2点、サンドイッチラリアットからの片エビ固め 14.57)氷室、N白石×
武藤と氷室、袂を分かった両者がいきなり激突。シビアな攻防を繰り広げる。しかしノエル白石が終盤つかまってしまう。

「ああ・・・」

ダイビングプレスは2.5で返したノエル白石だったが

「成瀬・・・さん!」
「はいな!」

サンドイッチラリアット炸裂。これでノエル白石を仕留めて白星発進。

B市ヶ谷○、R北条(2点、デスバレーボムからの片エビ固め 9.53)F鏡、芝田×

ジュエルローゼス同士の一戦は市ヶ谷組が勝利。最古参の芝田、動きが相当悪い。

L内田、M上戸○(2点、13.22ジャーマンSH)ローズ×、Fローズ1号

ラッキー内田強い。GWA最強のローズヒューイットを圧倒。フィニッシュはマッキーに譲ったもののエースの風格が出ていた。磐石の白星発進。

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3戦目は山形大会。
ローズ○、Fローズ1号(2点、シャイニングウィザードからの片エビ固め 15.45)R神威、REKI×(2点)

やはり経験の浅いREKIがつかまってしまう。
「クッ・・・」
それでも懸命にショルダータックルで反撃し、ライラにつなぐ。勝負を分けたのはファントムローズ1号の踏ん張り。鮮やかなミサイルキックをライラに叩き込む。これで動きがぐらついたライラ神威、代わったローズ・ヒューイットの猛攻をまともに受けてしまう。これでREKIに後を託さざるを得なくなったライラ神威。この時点で勝敗は決した。

ガゴッ!
ローズ・ヒューイット、かっこよくシャイニングウィザードをヒットさせる。これでREKIは頭を打って3カウントを喫した・・・

武藤○、成瀬(4点、ダイビングプレスからの片エビ固め 23.55)アリス、ヘレン×(2点)

「いまさらあんな二流外人にやられません」
「・・・・そ、そやそや!」

成瀬唯、あまりの武藤のビッグマウスにあきれる。会社の指示で武藤とタッグを組んだ選手会長。成瀬としても上位に食い込める「おいしい役どころ」なのだが・・・

で、結果はやはりEWAの2人の攻撃は武藤の耐久範囲内であった。成瀬が少し捕まったものの最後は武藤がダイビングプレスで締めた。

「よしっ。まだまだ勝たないと」

パートナーを引っ張って勝つ。武藤にエースの風格が出てきた。

氷室○、N白石(4点、裏投げからの片エビ固め 26.14)B市ヶ谷、R北条×(2点)

市ヶ谷様と氷室の対決。しかしロイヤル北条もまだまだ元気。
ロイヤルスパイクで氷室をぐらつかせる。たまらず氷室、、ノエルにスイッチ。しかしノエル白石、ビューティ市ヶ谷相手では分が悪すぎる。それでもなんとかしのいで氷室にタッチ。氷室のドラゴンスリーパーで市ヶ谷大ダメージ。

最後はR北条と氷室が一騎打ち状態。氷室が裏投げを決めて競り勝った。氷室組大逆転。とどろきわたる歓声。

L内田○、M上戸(4点、ラッキーキャプチャーZ 30.00)F鏡×、芝田(0点)

芝田がハッスルしてマッキー上戸を攻めた。フレイア鏡もハイキックであと一歩まで追い込んだがそこまで、

「そろそろ決め時・・・ねっ」
ラッキーキャプチャーZ。フレイア鏡、耐えたが延々かけ続けられてしまう。芝田のカットはマッキーに阻止された。タイムアップ寸前、ついにギブアップ。

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第4戦、茨城カシマ大会。
ローズ○、Fローズ1号(4点、シャイニングウィザードからの片エビ固め 13.19)アリス×、ヘレン(0点)

外人選手同士の対決はGWA軍が制した。

F鏡、芝田○(2点、ダイヤモンドキックからの片エビ固め 15分くらい)R神威、REKI×(2点)

フレイア鏡組が初白星。ライラ神威の暴れまくりに苦戦したものの最後はきっちりとREKIを料理した。

B市ヶ谷○、R北条(4点、パイルドライバーからの片エビ固め20.54)武藤、成瀬×(4点)

前日氷室組に痛い星を落とした市ヶ谷組。ジューシーペアが磐石なことを考えると、これ以上は負けられない。しかし今日の相手、武藤組も楽な相手ではない。

「何、武藤を追い詰めれば成瀬が出てきます。そうすれば勝ったも同然です」
ロイヤル北条はそう作戦を立てていたが、武藤が目覚ましい成長ぶりを見せて市ヶ谷とも互角以上の戦いを見せる。が、市ヶ谷がSPZ世界王者の意地を見せた。
「マットにひれ伏しなさい!」
ビューティボム炸裂。これで武藤、ふらついて成瀬にタッチ。館内ため息。成瀬では市ヶ谷様に太刀打ちできない。パイルドライバー2連発食らって終了。

L内田○、M上戸(6点、シャイニングウィザードからの片エビ固め 16.07)氷室、N白石×(4点)

氷室がマッキーの力押しに大ダメージを負って場外でうずくまる。よくねばったノエル白石だったがジューシーペアの牙城を崩せず。

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第5戦宇都宮大会。
アリス○、ヘレン(2点、ギロチンドロップからの片エビ固め29.35)F鏡、芝田×(2点)

この程度の相手に苦戦するなんて・・・

芝田美紀がEWAチームの連携にいいようにやられてしまう。代わったフレイア鏡もいまひとつピリッとしないファイト。ダイヤモンドキックも決めてEWA軍を追い込んだが、最後はついに合体パイルで動けなくなり、続くギロチンに力尽きた。

R神威○、REKI(4点、カムイエクウチカウシからのエビ固め 17.47)氷室、N白石×(4点)
何を考えてるか分からない氷室組と何も考えてないライラ神威のげきとつ。氷室とライラはド迫力の殴り合いをやってのけた。こうなるとパートナーの立ち回りが勝敗を分ける。REKIがうまく不利なときはタッチしたのに対し、ノエル白石は引きどころを誤ったのか、ライラ神威と正面きって闘ってしまう。

「戻ってきてっ・・・」
氷室の呼び声もむなしく、カムイエクウチカウシ(変形スプラッシュマウンテン)に力尽きた。悪役コンビもこれで2勝目。

「キェヘヘヘ、ノエル白石、何が不思議ちゃんだ!ああいうのはパーニングっていうんだよ!」

ローズ○、Fローズ1号(6点、シャイニングウィザードからの片エビ固め 16.58)B市ヶ谷×、R北条(4点)

SPZの宇都宮では何かが起こる。7年前吉田龍子がヘレン・ニールセンにタッグリーグで敗れたのもここだった。でもって、この日もビューティ市ヶ谷が沈んだ。ローズ・ヒューイットのシャイニングウィザードがモロに入ってしまいフラフラ状態に追い込まれて、

「散れっ!」
ローズ・ヒューイット、すかさず同じ技をもう一度。これでSPZ世界王者の市ヶ谷様から3カウントを奪った。市ヶ谷組2敗目・・・

L内田○、M上戸(8点、ラッキーキャプチャー 14.54)武藤×、成瀬(4点)

「ひとりで・・・戦い抜く!」
覚悟を決めてジューシーペアに立ち向かっていった武藤だったが、この判断はムリがあった。まるでファイトスタイルの違うふたりを相手にすると知らず知らずのうちに疲れてくる。最後はローンバトルで動けなくなったところをラッキーキャプチャーで幕。

第20回SPZタッグリーグ戦、トップは4連勝のジューシーペア。1敗でヒューイット組が追う展開。(続く)

2008年2月14日 (木)

第335回 ライラ神威がベルトを巻いてしまった日

20年目10月
秋爽シリーズ開幕。日本海側の都市を回る。

初戦山口周南大会でSPZタッグ戦。王者デイジー、ローズヒューイット組に挑むのはジューシーペア。
「美しい薔薇!わたくしは美しい薔薇!」
「あたしの対戦相手になるとはフコウナコトダナ」

強豪外人連合軍が勝つか、SPZ屈指の名タッグ、ジューシーペアが勝つか。山口のファンは歓声を送った。

「やっぱりプロレスの楽しみは日本人対外人ですな」

本部席の今野役員がつぶやく。

さて試合のほうはタッグ王座奪還に燃えるマッキー上戸が気合のこもった表情で攻め立てる。
「うらあああっ!」
バックドロップ、そしてジャーマン。これでローズから3カウント奪取。勝負タイム27分33秒。
「ヨッシャー!」
ジューシーペアにSPZタッグベルトが戻ってきた。

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SPZ世界タッグ戦

ラッキー内田、○マッキー上戸(27分33秒、ジャーマンSH)R・ヒューイット×、デイジークライ

35代王者が初防衛に失敗、ジューシーペアが36代王者となる

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第7戦神戸大会、メインはあばしりタッグ戦。王者デイジー・クライ、ジーナ・デュラム組に挑むのはライラ神威、REKI組。

デイジー・ジーナ組は連係はそれほどでもないのだが、圧倒的な攻撃力を持つデイジーが試合の主導権を握る。ということでSPZサイドはライラ神威にあばしりタッグ奪取を託した。しかしライラのパートナーを務めるのはまだ新人のREKI。

試合はデイジーの打撃をライラがたくみにかわす立ち上がり。そのあとやはりといってはなんだがタッチを受けたREKIがつかまってしまう。しかしREKIも外人組の攻勢を断ち切ってライラに再びタッチ。そしてとうとう、ライラ神威対ジーナの局面になってしまった!

「キェヘヘヘヘヘヘ」

タイトルマッチでも悪いことはやる。シューズに隠しておいた鉄製の棒(さすがに白テープを巻いてカモフラージュした)でジーナの頭をメッタ突き。
「ふ、ふわあああっ!」
場内ブーイングの嵐。フランス人アイドルレスラーにそこまでやるかライラ神威!

「キェヘヘヘヘッヘ」
ジーナが怯んだところをすかさずトドメのバックドロップ。REKIはカットに入るデイジーを逆カット。16分23秒、王座移動。

あばしりタッグ選手権

R神威、REKI(16分23秒、バックドロップからの片エビ固め)デイジークライ、ジーナデュラム×

25代王者が5度目の防衛に失敗、R神威・REKI組が26代王者となる

REKI、なんとデビュー半年であばしりタッグのベルトを奪取という快挙。しかしリング上の雰囲気はそれどころではなかった。
ヒキョウ者!そうまでして勝ちたいのか~!」

人気なら外人ナンバーワンのジーナ・デュラムを凶器攻撃で戦闘不能にするという空恐ろしいことをやってのけたライラにやってはいけないことなのだが物が飛ぶ。タダでさえ関西のファンは熱しやすいのに。

「物を投げないでください物を投げないでください」
REKIはスッと走って花道を抜けたが、ライラ神威は平然とした顔で投げ込まれる弁当ガラやたこ焼き、しめ鯖。

「キェヘヘヘヘヘ!キェヘヘヘヘヘ!」
しめ鯖の直撃を受けても花道で狂ったように笑うライラ神威。

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最終戦は新日本ドーム大会。

第1試合は野村つばさ対ジーナ・デュラム。ジーナ、昨日のあばしりタッグ戦で頭に大ダメージを受けてしまったので、負担の少ない第1試合に回された。

しかしやはり精彩を欠くファイト。この日は野村つばさのスクラップバスターに3カウントを喫してしまった。勝負タイム10分47秒。

「はぁ・・・」
しかし新日本ドームののファンはジーナコールの大声援を送った。

第2試合はフォクシー真帆、成瀬唯対イージス中森、REKIのタッグマッチ。

20期生コンビがフォクシー・成瀬に懸命に挑んでいったが、まだまだ地力にはかなりの差がある。REKIも掌底、DDT、フェイスクラッシャー、フランケンシュタイナーと成瀬を攻めたが、フォクシーのヘッドバットに動きが止まってしまった。

「しゃーーー」
続くニーリフトでREKI,あっさり3カウントを奪われた。勝負タイム13分15秒。

第3試合ではジュエルローゼス登場。芝田美紀、ロイヤル北条、フレイア鏡。対するはローズ・ヒューイット、ファントムローズ1号、ヘレン・ニールセンの3人。豪華絢爛な6人タッグ、華々しい戦いが展開されたが、最後はローズ・ヒューイットが芝田を18分34秒、合体パワーボムで仕留めた。

セミ前はライラ神威が登場。きょうはデイジー・クライとの一騎打ち。しかし試合開始早々に掌底が入ってしまったのか、動きがおかしい。そのまま一方的にデイジーが押し、最後はハイキックでのして、昨日のあばしりタッグ戦のリベンジを果たした。勝負タイム11分31秒。

セミファイナルはジューシーペア登場。今日の対戦相手は18期の武藤めぐみ、19期のノエル白石組。ジューシーペアも後輩に追われる立場になったカードが組まれるようになった。

「なーに、ノエルを狙えば楽勝さあ」
しかし武藤めぐみが前面に立って奮闘したため試合は盛り上がった。15分過ぎにようやくチャンスが。マッキー上戸が武藤に強烈なスプラッシュマウンテン。しかし武藤カウント2.8で返す。そして後をノエルに託さざるを得なくなった。

「もう、終わりにするの」
ノエル白石、STOでラッキー内田を追い込む。しかしマッキー上戸がフィッシャーマンバスター。ノエル白石これは返せなかった。勝負タイム18分14秒。19期生のノエル白石が存在感を出してきた・・・

そしてメインイベントSPZ選手権。王者ビューティ市ヶ谷に挑むのは16期の氷室紫月。

しかし今月も市ヶ谷の集中力というかベルトへの執念がすさまじい。市ヶ谷も能力減衰に悩んでいるはずなのだが、そんなそぶりも見せず氷室を圧倒、ただ圧倒。フィッシャーマンバスターで氷室をグロッキーに追い込む。氷室も懸命にドラゴンスリーパー、逆片エビ、ギロチンドロップで反撃するが、仕掛けるのがあまりにも遅い。
「覚悟なさい!」
ビューティ市ヶ谷のニーリフト炸裂。21分49秒、氷室の挑戦を退けて3度目の防衛に成功。累計防衛回数を21に伸ばし、吉田龍子の持つ記録へあと1とした。

「こりゃ抜かれちゃうかな、ははっ」

吉田社長は苦笑した。

2008年2月13日 (水)

第334回 20年目9月 SPZ選手権:ビューティ市ヶ谷×武藤めぐみ

20年目9月

9月シリーズ「バトルアトランティス」開幕。四国地方を回る地方重視のシリーズ。マッキー上戸は負傷欠場。

第5戦岡山大会、メインに組まれたのはあばしりタッグ選手権。王者デイジー・クライ、ジーナ・デュラムに挑むのは芝田美紀、ノエル白石組。団体最古参の芝田が最後の仕事と言うことで?若手の有望株・ノエル白石のパートナーを引き受けたのだが、芝田でも暴れるデイジーをとめられない。

「・・・うーん、そりゃ!」
ジーナ・デュラムは顔見世程度のファイト。深追いせずにデイジーに再びタッチ。

「くらえええええい!」
怖いキックのお姉さん、デイジーのハイキックが命中。23分11秒、芝田美紀がのされてしまった。これで王者組が4度目の防衛に成功。

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第7戦新潟大会、メインはSPZタッグ選手権。王者氷室紫月、武藤めぐみ組、対するチャレンジャーチームは外人の強豪どころ、ローズ・ヒューイット、デイジー・クライ組。実力と個性ある外国人選手ふたり、王者組でも苦戦は免れないだろうと見られていた。

「ウラ!」
デイジーの掌底が氷室をたじろがす。しかし武藤も今日は気合いが入っていた。

―あたしは市ヶ谷さんに勝つんだ!外人選手なんかに負けてられない!

しかしデイジーもまったく容赦のない裏拳。試合はヒートアップした。

「武藤さん、いったん代わって」
氷室が入ってサソリ固めで逆襲。これでデイジー、後はローズ・ヒューイットに託さざるを得なくなった。しかしローズもGWAの女王だけあってしぶとい。STO2連発で氷室をグロッギー状態に追い込み、武藤には、

「散りなさい!」
バスターローズ炸裂。武藤、これで3カウントを奪われた。

「・・・・・・・・・・・・・・・・・」
勝負タイム51分2秒。SPZタッグベルトが流出してしまった。
武藤めぐみショックのあまり動けず。

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最終戦はさいたまドーム大会。

第1試合は野村つばさ対イージス中森。新人のA中森がぶつかってゆく。相手の野村もアイドルレスラーなので試合運びが危なっかしい。しかし野村もいちおうSPZで2年もまれているので耐久力は上。イージス中森の攻撃を受けきって、ミサイルキックで反撃、1発目は何とか返した中森だったが、立て続けにもう一度食らっては返せず。場内はツバサコールがとどろく。勝負タイム10分7秒。

第2試合タッグマッチ、早くもチェーンソーを轟かせながらライラ神威入場、きょうは新人のREKIと組んでヘレン・ニールセン、ジーナ・デュラムとタッグ対戦。先発で出たREKIが捕まったものの、何とか振り切ってライラにタッチ。こうなったらあとはライラの悪逆三昧。最後はジーナ・デュラムを捕まえてタイガードライバーで葬った。
「ヒャーハハハハハハ!」

休憩前の第3試合、早くもJRの3人が登場。芝田美紀、ロイヤル北条、フレイア鏡対成瀬唯、フォクシー真帆、ノエル白石の6人タッグマッチ。面子から見てJRの楽勝かと思われた。実際にもその通りで、ロイヤル北条の安定感が際立ち、まず成瀬をパワースラムで戦闘不能に追いやり、ノエルとフォクシーの攻撃をやすやすと受けきる。余力を残したままのフレイア鏡がここで特別出演。

―疲れてますわね。それでは天国へ送って差し上げますわ!

ストレッチプラム!!

「アアアアアアア!」

苦しむフォクシー真帆、アブナイ笑みを浮かべながら絞り上げるフレイア鏡。初めて観戦に来た人はこの表情を目にするとドン引きしてしまうらしいが・・・

「うう、ギブアップ。」
15分0秒、ストレッチプラムでフレイア鏡がフォクシーを葬った。その試合が終わると休憩。

休憩明け、ここから3大シングルマッチ。

セミ前第4試合は氷室紫月対デイジー・クライ。昨日のタッグマッチでは打撃で苦しんだ相手なのだが、氷室、サソリ固めなどで付け入る隙を与えない。デイジーも掌底やニーリフトで反撃するが単発。氷室、関節技絞め技でぐったりさせておいてとどめのサソリ固め。19分33秒、氷室がデイジーを下した。

セミファイナルはラッキー内田登場。対戦相手はGWAのローズ・ヒューイット。ラッキー内田がすきのない試合運びを見せて優位に試合を運び、最後はこの日2度目のダイビングプレスで17分20秒、ローズ・ヒューイットを退けた。

そしてメインイベントSPZ戦。王者ビューティ市ヶ谷に挑むのは18期生、武藤めぐみ。先月のSPZクライマックス公式戦で市ヶ谷を破った実績が評価されて、ようやく、やっとSPZタイトルマッチ挑戦者となった。

「先月負けたのはまぐれですわ。今日はあのお茶畑の田舎ものに痛みというものを教えて差し上げますわ!」

武藤、初めてのベルト挑戦で固くなっていたのか。動きにいつものキレがない。逆に市ヶ谷が荒々しい攻めを見せる。

「これでっ!」
武藤エルボーで反撃、しかし市ヶ谷も目には目をとエルボーでやり返す。そしてー

「アナタなんかこの程度ですわ!」

ラリアット、裏拳で武藤を吹っ飛ばす。

「・・・・・・・どうすればっ・・・」

うずくまる武藤、立ちはだかる市ヶ谷、そしてー

「覚悟なさいっ!」

デスバレーボム炸裂。武藤、3カウントを奪われた。

「36分45秒、デスバレーボムからの片エビ固めでビューティ市ヶ谷の勝ち」
王者が2度目の防衛に成功。これで累計防衛回数を20の大台に乗せた。偉業と言っていいだろう。

2008年2月12日 (火)

第333回 20年目8月 武藤めぐみの長い一日

20年目8月 SPZクライマックス

最終戦の横浜大会を残して、リーグ戦の星勘定は以下の通り。
9点 ラッキー内田(最終戦の相手はビューティ市ヶ谷)
8点 武藤めぐみ(最終戦の相手はライラ神威)
  氷室紫月(最終戦の相手はフレイア鏡)
  ビューティ市ヶ谷(同 ラッキー内田)
4人が優勝の可能性を残す大混戦。

**************************
そして最終戦横スペ大会。決定戦の可能性があるので試合開始はいつもより繰り上げ、午後5時に第1試合開始となった。前座の3試合のあと休憩、そして18時過ぎに後半のリーグ戦が始まった。

R北条(9点 ロイヤルスパイクからの片エビ固め 14.03)M上戸(6点)

優勝争いからは脱落したものの、武藤を破り、ラッキー内田と引き分けるなど、JRの副将として「B市ヶ谷の援護射撃」を果たしたロイヤル北条。この日はマッキー上戸と対戦。マッキー上戸、今シリーズは腰の負傷を抱えながらのファイトで、最終戦で爆発してしまったのか精彩を欠くファイト。ロイヤル北条に押し込まれてー

「いくぞっ!」
ロイヤルスパイク2連発。これでマッキー上戸を仕留めた。2敗1分けの9点でリーグ戦を終えた。

「ク ソ ー ッ!」

マッキー上戸6点どまり、まさかの予選会行き・・・

武藤(10点、シューティングスタープレスからの体固め15.15)R神威(2点)

―決定戦、やるのかな・・・

ゴング前、武藤がそう考えていると、対戦相手のライラ神威がいきなり爆竹にライターで火をつけ、投げてきた。
「ZDOOOOOM!」
思わず目をつぶって顔をガードする武藤。そこへライラ神威、間合いをつめて頭突き!来島さんの引退試合で使ったのと同じ手だ。しかし武藤、ローリングソバット連発で形勢逆転し、とくいのムーンサルトを狙う。しかしよく見ていたライラ神威、うまくかわす。武藤2度も自爆。逆にトムラウシを食らってカウント2.8まで追い込まれる、しかしここで武藤が奮起。

―これ以上は負けたくないっ!

ボディスラムで転ばせて、コーナー最上段に駆け上がりシューティングスタープレス。
ドーン。
これでカウント3奪取。武藤、どうにか勝ち点10でリーグ戦を終えた。

「ハァッ、ハァッ・・・・」

勝つには勝ったが格下のライラ神威相手にかなりのダメージを負ってしまった。このあとメインの結果によっては決定戦を闘わないといけない。

「ハーイ武藤さん、今日はメインのあとがあるかもしれないから着替えないで待機しといてね」

羽山リングドクターが引揚げてきた武藤を控室奥に誘導する。イスに腰を下ろして水を飲む武藤。

氷室(10点、サソリ固め 14.26)F鏡(0点)

氷室がスキのない戦いを見せて、じりじりとフレイア鏡を追い詰めて、最後はサソリ固めでフレイアからギブアップを奪った。氷室も10点でリーグ戦を終えた。決定戦の可能性があるのでリングコスチュームのまま控室で待機。

フレイア鏡、けっきょく0点でリーグ戦を終えた・・・

B市ヶ谷(10点、デスバレーボムからの片エビ固め 13.42)L内田(9点)

午後7時13分、えらいメインイベントになった。進行を担当する今野役員は頭を抱えた。一番長引く3人の決定戦の可能性がががが。午後10時には撤収しないといけない。

SPZクライマックス千秋楽結びの一番、ラッキー内田  VS ビューティ市ヶ谷。

ラッキー内田が勝てばラッキー内田が優勝。
引き分けならL内田、氷室、武藤の3人で決定戦。
市ヶ谷が勝てば市ヶ谷、氷室、武藤の3人で決定戦。

控室モニタで戦況を見つめる武藤と氷室。

―ふぅ、自分のプロレスをやるしか・・ない。

ものすごいプレッシャーの中、市ヶ谷と相対するラッキー内田。

「はっ!!」
序盤はじっくりスリーパーで市ヶ谷のスタミナを奪う作戦に出た。そしてドロップキック、アームホイップと小技を積み重ねてゆく。しかし10分経過のアナウンスと同時に市ヶ谷がスパートをかけた。

「私にひざまづきなさい!」
5連覇への執念を見せる市ヶ谷、ビューティボム、裏拳。
ラッキー内田の目の前がぼうっとかすむ。

そして市ヶ谷デスバレーボム。ラッキー内田カウント2.5で返す。
焦ったラッキー内田、ラッキーキャプチャーZをねらうが、あまりにもロープに近い。ならばとタイガードライバーを繰り出すが2.5で返される。

「オーッホッホッホッホ!!」
しかし市ヶ谷2度目のデスバレーボム。
ワン、トゥ、スリー。
これでカウント3か入った。

場内はため息と歓声があい半ば。もう2試合見られてうれしいというのと、一番人気のラッキー内田の敗退で・・・・・
メインが終わったのが午後7時30分。20分のインターバルを置いて、B市ヶ谷、武藤めぐみ、氷室紫月の3人による優勝決定戦。その間は渡辺智美スペシャル歌謡ショー(こんなこともあろうかと、売れないタレント渡辺智美を待機させておいた)をやって場をもたせた。

B市ヶ谷(フィッシャーマンバスターからの片エビ固め 15.25)氷室

午後7時50分、優勝決定戦第1戦はビューティ市ヶ谷対氷室紫月。

「せぇぇぇい!」
メインで勝った勢いそのままに氷室を追い込んでゆくビューティ市ヶ谷。2試合目なのにこの勢いはどこから来るのか。氷室もグラウンドレスリングで応戦するが、市ヶ谷もうまくロープ近くで闘うクレバーなところを見せる。

そしてころあいを見て市ヶ谷様が決めにかかった。
「覚悟なさい!」
ニーリフト、カウント2.8で返す氷室、
ハイキック、カウント2.9で返す氷室、しかしー

フィッシャーマンバスター炸裂、これで氷室はカウント3を奪われた。

「オーホホホホホホホホ!!」

勝ち誇る市ヶ谷様。公式戦では負けた相手へ、リベンジを果たした。

「これも・・・運命・・・」

シングルマッチを2試合闘ってさすがに疲れの色が隠せない氷室、セコンドの肩を借りて引揚げた。またこのあと20分間のインターバル。

ーああ、 知床、知床、オホーツクの海ぃぃぃ、

 想いは はかなく 散ってしまったーーーー

ーああ、 知床、知床、オシンコシンの滝ぃぃぃ、

 涙に濡れた ウトロ の 港ーーーー

またも場もたせ、元レスラー(SPZ5期生)で売れないタレント渡辺智美(30)が新曲「知床の海」を熱唱。会場は爆笑した。

B市ヶ谷(ニーリフトからの片エビ固め 10.23)武藤
午後8時28分、優勝決定戦2試合目。

「オーホホホホホホ、さくっと終わらせて賞金持って帰りますわ!」

―どうすれば勝てるんだろう。

L内田、氷室を連破して勢いに乗るビューティ市ヶ谷。こうなったときの市ヶ谷は誰もとめられない。これで今日3試合目なのだが疲れたそぶりはおくびにも出さない。

武藤めぐみ、戦う前から決定戦の雰囲気にのまれていた。

ビューティ市ヶ谷、すさまじいまでの集中力。イッキの攻めで武藤を投げまくる。そしてムーンサルト、ニーリフト。これでカウント3を奪取。

「オーホホホホホ、5連覇ですわーーー!」

ビューティ市ヶ谷、SPZクライマックス5連覇達成(第16回~第20回)

公式戦で負けた武藤、氷室を決定戦で連破しての栄冠。ファンは大歓声で偉業を称えた。
午後8時40分、表彰式。優勝のビューティ市ヶ谷には賞状と賞金100万円、副賞としてノートパソコンが贈られた。準優勝は武藤めぐみ、横浜中華街のお食事券5万円分が贈られた。(氷室も10点で並んでいるが直接対決では武藤が勝っているため)、3位の氷室紫月にはスポーツドリンク1ケースが贈られた。

*****************************

―悔しい。

午後9時過ぎ、武藤めぐみは控室で拳を震わせていた。

上戸さんと北条さんのどちらかに負けていなければ・・・なんであのとき、死にものぐるいでやれなかったんだろう!

「来島さん」
武藤は悔しさを押し殺して、

「このお食事券、差し上げます。若い選手でも連れて行ってください」
ボンバー来島コーチにお食事券の入った封筒をおしつけた。

「・・わあった、でも、まあ、よ、思い通りにならなくても、この結果はあんたのためになったと思うぜ。」

2008年2月11日 (月)

第332回 20年目8月SPZクライマックス 大混戦

シリーズ第6戦は九州ドーム大会。

M上戸(6点、パワースラムからの片エビ固め 14.22)武藤(8点)

「べつに疲れてはいません。ひとつひとつ精一杯自分のプロレスをするだけです」

過酷なシングルリーグ戦。あとからあとから強敵が現れる。武藤、表面は強気を装っていたが・・・

「武藤はトップを走ってたから守りに入ってたな」
マッキー上戸、パワースラム2連発で武藤の動きを止める。焦る武藤、だがどうにもならず、マッキー上戸3度目のパワースラム。ここで武藤特急がついに止まった。

「くっ・・・」
天才姫、ここで踏ん張れるか。

氷室(6点、サソリ固め 15.35)R北条(5点)

パワーならR北条、関節技絞め技なら氷室。積極的に仕掛けたのはロイヤル北条。まだ武藤との直接対決を残しているので優勝の可能性もある。

だが氷室、スリーパーで形勢逆転してサソリ固め。昨日の市ヶ谷戦とまったく同じムーブでギブアップを奪った。ロイヤル北条は2敗1分けとなり優勝戦線からほぼ脱落。

L内田(7点、ダイビングプレスからの体固め 16.15)R神威(2点)

ライラ神威はスタンロッドを振り回しながら入場。しかし試合が始まるやラッキー内田のレスリングについていけない。

「ライラ選手はSPZクライマックスに出て本来の破天荒なプロレスを忘れてよそ行きのファイトをしています。あれじゃあ勝てないですね、まして上の選手には」

かいせつの吉田龍子が指摘。しかしこの日はライラ積極的な攻め。
「ブッコワレロー!!」
カムイエクウチカウシ炸裂。内田カウント2で返す。ここでラッキー内田本気になって、コブラツイストでじわじわスタミナを奪って、シャイニングウィザード、そしてダイビングプレス。これでライラ神威を撃破。ラッキー内田、これでトップとの差を0.5差に縮めた。敗れたライラは予選会行きが決定。

B市ヶ谷(6点、フィッシャーマンバスターからの片エビ固め12.09)F鏡(0点)

ジュエルローゼス同士の対戦。ここまで勝ち点のないフレイア鏡、市ヶ谷にくらいついてゆくが、市ヶ谷の壁厚く、フィッシャーマンバスターに力尽きた。
「まだ私はあきらめていませんわよ!」

そして第7戦、名古屋しゃちほこドーム大会。

R北条(7点、ニーリフトからの片エビ固め 17.22)武藤(8点)

武藤めぐみ、試合前からそわそわしていた。

―今日北条さんに勝てば、明日のライラさんはなんとかなる。

ボンバー来島コーチが一言。
「まあこういう経験はあまりできないから楽しんでこいや」

「・・わかってるわよ」

ロイヤル北条も過酷なリーグ戦で苦しんでいた。10分過ぎに守勢を察したのか早くもロイヤルスパイクで勝負に出た。

―ここは負けられない。
武藤、ローリングソバット、そしてサソリ固め。しかしここでロイヤル北条も勝負に出た、タイガードライバー、カカト落としで武藤をグロッギー状態に追い込む。

「うわあああっ!」
武藤も必死の反撃、シューティングスタープレス。しかしR北条がはカウント2.5でクリアして、

「おらっ!」
組み付いてニーリフト一撃。崩れ落ちる武藤。押さえ込むロイヤル北条。カウント3が入った。

「北条さん!」

控室モニタで見ていたビューティ市ヶ谷、タッグパートナーの援護射撃に破顔一笑。
武藤4連敗のあとの2連敗。ここへきて痛すぎるブレーキ。

―プレッシャーに負けたの・・かしら。
武藤、控室奥でがっくり。頭を抱え込む。

L内田(9点、ノーザンライトSH 25.31)F鏡(0点)

武藤が敗れて逆転の可能性が出てきたラッキー内田。フレイア鏡と関節の極めあい。しかしお互いロープ際で闘い決定的チャンスを作らせない。しかしラッキー内田、場外ノーザンまでやって勝ちに行く。そのあとリングに戻っても関節の極めあい。しかしロープに近い。

―ならばスープレックスで決める。
ラッキー内田、みごとなブリッジでノーザン。フレイア鏡返せず。これで武藤を抜いてトップに躍り出た。しかし最終戦は市ヶ谷戦である。

氷室(8点、裏投げからの片エビ固め 14.38)M上戸(6点)

勝ち点6、2敗同士の対戦。負けたほうが優勝争いから脱落するまさにサヴァイバル。
「オラーーー!」
マッキー上戸、力押しのファイト。しかし氷室もドラゴンスリーパーで朦朧とさせておいてパワーボム、裏投げ。しかしマッキーカウント2.8で返す。

マッキー上戸、DDTでぐらつかせて得意のジャーマンに持ち込もうとするが、前方回転エビ固めに切り返され、そのあと、氷室の2度目の裏投げをもらってしまい3カウントを喫した。

「良かった・・・」
氷室、優勝の可能性を残したまま最終戦へ。

B市ヶ谷(8点、パイルドライバーからの片エビ固め 12.42)R神威(2点)

ライラ神威、ロケットランチャーを構えながら入場。しかしこの日の市ヶ谷は自力優勝の可能性が出てきたので、ハッスルしていた。
「あなたみたいなイモ畑の住人には負けるわけがありません!!」

イモ畑・・・
北海道民に対するあまりの物言いにライラも怒って組み付いていったが、市ヶ谷の壁厚く、パイルドライバーに力尽きた。ライラ神威もまだ2点、なかなか星が上がらない。

最終戦を残して星勘定は以下の通り
9点 ラッキー内田(最終戦の相手はビューティ市ヶ谷)
8点 武藤めぐみ(最終戦の相手はライラ神威)
   氷室紫月(最終戦の相手はフレイア鏡)
   ビューティ市ヶ谷(最終戦の相手はラッキー内田)

4人が優勝の可能性を残す大混戦。

2008年2月10日 (日)

第331回 20年目8月SPZクライマックス中篇

20年目8月 SPZクライマックス(中篇)

これまでのあらすじ

横浜のお嬢様プロレス団体「スーパースターズ・プロレスリング・ゼット」は毎年8月に所属選手によるシングルマッチのリーグ戦を開催する。このリーグ戦に優勝することはSPZシングルのベルトを巻くより難しいとされている。過去4年連続優勝しているSPZの史上最凶のお嬢様、ビューティ市ヶ谷が5連覇をねらう。R北条M上戸を撃破し2連勝と上々の滑り出し。一方超新星、武藤めぐみも予選会勝ち上がりとは思えない好スタート。SPZ元王者の氷室L内田を連破。そしてリーグ戦中盤戦。

第4戦なにわパワフルドーム大会。

R北条(4点、ロイヤルスパイクからの片エビ固め15.34)R神威(2点)

ライラ神威、小型トラック(ハイエース)でリングサイドまで乗り入れるド派手な入場。しかし試合のほうは地力に勝るロイヤル北条が押し込んで、ロイヤルスパイクをズバリ。最後まで自分のペースを崩さなかったロイヤル北条が2勝目ゲット。

M上戸(2点、ジャーマンSH 15.56)F鏡(0点)

まだ勝ち星のない両選手。初勝利目指して猛然とぶつかりあった。マッキー上戸が気迫のこもったボディスラムで投げればフレイア鏡は脇固めで右腕集中攻撃。しかしパワーに勝るマッキー上戸が次第に優勢となり、パワースラムの連発でグロッキーに追い込むと

「手加減しねえぜ!」

ジャーマン。1発目はカウント2.9で返されたが、間髪入れず2回目。これで初日を出した。

L内田(4点、フライングニールキックからの片エビ固め 15.36)氷室(2点)

大阪大会セミはそれぞれ武藤に敗れており、優勝のためにはこれ以上負けられない両者の対戦。一進一退の攻防を制したのはラッキー内田。ここぞというときに出してくる隠し技、フライニングニールキックで3カウント奪取。

武藤(6点、延髄斬りからの片エビ固め20.59)B市ヶ谷(4点)

「・・・・・・・・・・・」

武藤、ものすごい表情でB市ヶ谷をにらみつける。この一戦に向けて相当気合いがひっているのか。

しかしB市ヶ谷も、

「あなたみたいなお茶畑の田舎者には負けませんことよ!」

などと叫んで襲い掛かる。両者ともこのカードがリーグ戦のヤマということはわかっている。

―この子は氷室さん内田さんに勝っている。ここで私が負けたら走りかねない・・・

そう考えた市ヶ谷が勝負に出た。

「私にひざまづきなさい!」

市ヶ谷ビューティボム、しかし武藤もカウント2で返し、

「悪く・・・思わないで」

シューティングスタープレス!しかし市ヶ谷もカウント2.5で返す。

―返された、でも攻めるだけ!

武藤、フィニッシュホールドを返されても組み付いて、ノーザンで投げる。これもカウント2.8で返した市ヶ谷だったが、足が思うように動かない。

―くうっ、こんなはずでは・・・

やっとの思いで起き上がったときには武藤が飛んでいた。後頭部へ延髄斬り!そして倒れるB市ヶ谷。そのまま覆いかぶさる武藤、まさか・・・

ワン、トゥ、スリー!
上原レフェリーの手がマットを3つ叩く。市ヶ谷返せなかった。

えええええええええええええええええええええ!

大阪のファンはびっくり仰天。武藤これで団体最強のSPZチャンプ、市ヶ谷も食ってしまった。驚愕の3連勝。

「ハァッ、ハァッ・・・苦しい戦いでした、でも勝ちました。明日からも頑張ります」

武藤めぐみ、これで優勝の可能性がグンと上がった。

ビューティ市ヶ谷はノーコメント。控室では相当荒れたらしい。

****************************

第5戦は広島若鯉球場でのリーグ戦。

M上戸(4点、フェイスクラッシャーからの片エビ固め11.10)R神威(2点)

ライラ神威、きょうはチェーンソーを振り回しながら入場。しかし試合が始まるやマッキー上戸のパワーが爆発。ライラの疑惑ヘッドバットをものともせずブレーンバスター、バックドロップで猛攻。カムイエクウチカウシの反撃にはヒヤリとしたものの、ダイビングプレス、フェイスクラッシャーと大技でつないでライラを振り切った。これで2勝2敗。

武藤(8点、ムーンサルトプレスからの片エビ固め 23.28)F鏡(0点)

予選会ではフレイア鏡が勝っている対決の再戦。しかし武藤もここで取りこぼすわけには行かない。せっかく氷室内田市ヶ谷のSPZトップどころ相手に3連破したのだから。

「うふふふふ・・・・・」

しかしその心理を見透かしたかのようにフレイア鏡、執拗な脇固めで右腕攻め。

しかし武藤めぐみ、ビューティ市ヶ谷を葬った延髄斬りで活路を開く。とくいのムーンサルトは2度の自爆にもめげず3度目のトライで決めた。武藤これで4連勝。

「武藤、ナイスファイ。あと3つ頑張れや」

控え室前でボンバー来島コーチが武藤に声をかける。

 「わ・・・わかっているわよ。」

「ここからがタイヘンだけどよ、あまり気張らずに普段どおりやれや。優勝したら賞金で高級寿司喰いにいこうや」

 「・・・たかる、気ですか。」

選手をリラックスさせるのもコーチの務め。武藤めぐみ、残る相手はM上戸、R北条、R神威。M上戸、R北条はパワーファイターだが本来の力を出せば勝てない相手じゃあないし、R神威はただの反則屋だ。このまま行けば勝てるが、キャリア2年半の武藤に足りないのは経験だ。

「あー、残念ですわ。今夜はキタでウサ晴らしですわ・・・」

いっぽう敗れたフレイア鏡、4連敗で予選会行きが決定した。

L内田(5点、時間切れ引き分け)R北条(5点)

パワーならR北条、テクニックならL内田、一進一退の攻防が繰り広げられた。

「行くぞ!」

ロイヤル北条がロイヤルスパイク、パワースラムで猛攻。
しかしラッキー内田もラッキーキャプチャー、ラッキーキャプチャーZといつもの関節地獄でギブアップを迫る。しかしロイヤル北条耐え切って時間切れドロー。

ラッキー内田はぼそりと一言。

「この引き分けは、負けに等しい・・・」

ラッキー内田、これで1敗1分けとなり、トップを走る武藤とは1.5ゲーム差がついてしまった。さらに彼女はまだ最終戦でB市ヶ谷戦を残している・・・

氷室(4点、サソリ固め 22.43)B市ヶ谷(4点)

前日、武藤にまさかの敗北を喫した市ヶ谷様、1差のまま追走して武藤にプレッシャーをかけたいところ。この日の相手はSPZ王座の戴冠経験もある16期生の氷室紫月。楽な相手ではない。決定的ダメージを与えられぬままズルズルと氷室のねちっこいレスリングにペースを狂わされ、そして、終盤、氷室の痛め技地獄にはまってしまった。

「ぐ・・・」

スリーパーで弱ってるところへサソリ固め。グイグイと絞られ、市ヶ谷はついにギブアップの言葉を吐いてしまった。これで市ヶ谷様まさかの2連敗ブレーキ。5連覇の夢が大きく遠のいた。

「・・・・・・・・・・・・!!」
試合後の市ヶ谷様はノーコメント。そうとう悔しかったのだろう。

第20回SPZクライマックス、リーグ戦4戦を消化した時点で優勝争いは8点で武藤めぐみ、5点でL内田、R北条が続く、そして4点で氷室、B市ヶ谷、M上戸。残り3戦で1.5ゲーム差をつけた武藤めぐみ、初優勝へこのまま突っ走るのか?
(続きます)

2008年2月 9日 (土)

第330回 SPZクライマックス、20回目の祭典(上)

20年目8月

第20回SPZクライマックスが開催。SPZが世界に誇る真夏の祭典もついに20回を数えることとなった。参考までに過去の優勝者・準優勝者は以下の通り。

第1回 優勝 ミミ吉原   準優勝 南利美
第2回 優勝 沢崎光    準優勝 デスピナ・リブレ
第3回 優勝 南利美    準優勝 草薙みこと
第4回 優勝 伊達遥    準優勝 秋山美姫
第5回 優勝 草薙みこと  準優勝 南利美 秋山美姫 沢崎光
第6回 優勝 草薙みこと  準優勝 伊達遥
第7回 優勝 草薙みこと  準優勝 伊達遥
第8回 優勝 吉田龍子   準優勝 伊達遥
第9回 優勝 吉田龍子   準優勝 ハイブリッド南
第10回優勝 吉田龍子   準優勝 新咲祐希子 
第11回優勝 吉田龍子   準優勝 ハイブリッド南
第12回優勝 吉田龍子   準優勝 ハイブリッド南
第13回優勝 吉田龍子   準優勝 スイレン草薙
第14回優勝 スイレン草薙 準優勝 ボンバー来島
第15回優勝 ボンバー来島 準優勝 スイレン草薙
第16回優勝 ビューティ市ヶ谷 準優勝 ボンバー来島、芝田美紀
第17回優勝 ビューティ市ヶ谷 準優勝 ボンバー来島
第18回優勝 ビューティ市ヶ谷 準優勝、ボンバー来島、芝田美紀、ロイヤル北条
第19回優勝 ビューティ市ヶ谷 準優勝 ロイヤル北条

8月3日の夜9時、閉店後の「喫茶あばしり」を借り切って、出場者の記者会見が行われた。

■「史上最凶のお嬢様・SPZ世界王者 」ビューティ市ヶ谷(22)

6年連続6回目の出場 第16回・第17回・第18回・第19回大会優勝 京スポ予想:本命
「オーッホッホッホ!全員このわたくしにひざまづくのです!」

■「スーパーお嬢様」ロイヤル北条(22)

6年連続6回目の出場 

「自分のレスリングを信じて白星を積み重ねたいです」

■「炎の闘志」マッキー上戸(19)

3年連続3度目の出場 

「全員ぺしゃんこにしてやるぜ!」

■「氷の彗星」ラッキー内田(19)

3年連続3度目の出場 京スポ予測対抗

「今年こそは優勝を狙います」

■「ザ・運命」氷室紫月(19)

4年連続4回目の出場 

「運命の歯車が回り始めた・・・」

以下は予選会勝ち上がり組。

■「地獄案内人」フレイア鏡(21)

2年ぶり2度目の出場 予選会1位通過 
「ふふふふふふ。私の技の犠牲になりたい方はだぁれ?」

■「超新星」武藤めぐみ(17)

2年連続2度目の出場 予選会2位通過 京スポ予想大穴

「まあ、やるだけだわ」

■「何をしでかすかわからない」ライラ神威(18)

初出場 予選会3位通過
「キエーヘヘヘヘヘヘヘッ!なにもかもぶっ壊してやる」

今年の見所はなんといっても市ヶ谷様の5連覇が実現するかどうか。しかし16期生の3人や18期生の武藤も力をつけてきているだけに、混戦が予想された・・・

*******************************

2戦目の札幌どさんこドーム大会から地獄のリーグ戦がスタート。

R神威(2点、トムラウシからの片エビ固め 16.2)F鏡

予選会ではフレイア鏡が勝っている対決の再戦。SPZクライマックス初出場で気合がはいったのか、ライラ神威はガトリング砲を撃ちまくりながら入場。パワーならライラk未イなのだがレスリングセンスならフレイア鏡、力のこもった好勝負が展開されたが・・・
「グェッヘヘヘヘ!」
トムラウシでフレイア鏡を完全に沈黙させた。これでライラ神威、SPZクライマックス初勝利。

武藤(2点、ムーンサルトプレスからの体固め 16.54)氷室

札幌のセミ前でこんな好カードッ!が実現。進境著しいといわれながらなかなかSPZベルトへの挑戦権を得ることが出来ない武藤、今日の相手はタッグパートナーの氷室。先に仕掛けたのは武藤だった。

―長引けば関節技を持ってる向こうが有利。ガンガンしかける。

「この技を受けて立っていられる?」

シューティングスタープレスは2.5で返した氷室だったが、続くムーンサルトを食らってしまって3カウントを奪われてしまった。

「よしっ、まだまだ勝たないと」

武藤、勝っても笑顔なし。本気でこの選手、先輩方を倒してのSPZクライマックス優勝を狙っている。

L内田(2点、ラッキーキャプチャーZ 16.37)M上戸

マニアックなカードの連発に札幌のファンは沸いた。前半、パワーでガンガンしかけたのはマッキー上戸のほうであった。しかし、後半ラッキー内田が関節地獄にはめ込んでタッグパートナーを処刑。コブラツイスト、ラッキーキャプチャー、ラッキーキャプチャーZとつないでギブアップを奪った。

B市ヶ谷(2点、デスバレーボムからの片エビ固め 12.35)R北条

札幌大会のセミ前以降3試合はいずれも普段は見られないタッグパートナー同士の対戦。年に1回しか組まれないプレミアもののカードが続いた。しかし市ヶ谷様強い。5連覇を狙っているのか、ロイヤル北条を猛然と攻める。終盤スパイクを食らってしまうなど危ないシーンもあったが、最後はデスバレーで白星発進。

「かいせつの吉田さん、初戦終わった段階でどの選手が有利ですか?」

「んー、読めないですね今年は。誰が突っ走るかだと思います」

***************************

第3戦は仙台大会。

R北条(2点、ロイヤルスパイクからの片エビ固め 14.44)F鏡(0点)

ジュエルローゼス同士の対決。フレイア鏡も良く粘ったのだが伝家の宝刀、ロイヤルスパイクに力尽きた。

氷室(2点、ダイビングプレスからの体固め 12.43)R神威(2点)

ライラ、きょうはフレイル(とげつき鉄球)を振り回しながらの入場。前日武藤にまさかの敗戦を喫した氷室はいきなりストレッチプラムでイニシアチブを取る。そこからもスキのない攻めを見せ、最後はパイルドライバーで半失神に追い込み、コーナー最上段に駆け上がりダイビングプレス。

武藤(4点、ムーンサルトプレスからの片エビ固め 23.20)L内田(2点)

リーグ戦2戦目にしてはやくも山場、天才姫が勝つのかレスリングマスターが勝つのか。一進一退の攻防が続く。しかし昨日の氷室戦同様、関節技を警戒したのか連続的に攻め込んで行く武藤。ダイビングプレスで内田の動きが鈍る。そこを狙ってバックドロップ!しかし内田もラッキーキャプチャーZで反撃、場内ドワアアアア。

「こんなところで・・・負けらんない!」
しかしこれをこらえきった武藤、ムーンサルトで逆襲!これでカウント3が入った。武藤、これで元SPZ王者の氷室、L内田から破竹の2連勝。ひょっとしたらこのままいくのか・・・

B市ヶ谷(4点、ニーリフトからの片エビ固め13.40)M上戸(0点)

「どうかしら?」

市ヶ谷様容赦のないラリアット乱打。マッキー上戸攻め手が見つからぬままズルズルと。ビューティ市ヶ谷の横綱プロレスが展開された。

「覚悟なさいっ!」
最後はニーリフト乱打、これでマッキー上戸を葬った。

第20回SPZクライマックス、リーグ戦2戦を消化して、勝ちっぱなしは早くも「5連覇を目指す最凶お嬢」ビューティ市ヶ谷と「天才姫」武藤めぐみの2人となった。翌々日の大阪なにわパワフルドーム大会でこの両者がいよいよ激突する。リーグ戦の行方を占う大一番。

(続きます)

2008年2月 8日 (金)

第329回 20年目7月 SPZ選手権 ビューティ市ヶ谷×ローズ・ヒューイット

7月、サマースターナイツシリーズ開幕。東北地方を回るシリーズである。

第6戦宇都宮大会メインはSPZタッグ戦。

王者ビューティ市ヶ谷、ロイヤル北条に挑むのは氷室紫月、武藤めぐみ組。内容は保証書つきの一戦。宇都宮のファンは大興奮ハイテンションMAX。4人が4人とも来月のSPZクライマックス出場権を持っているので一瞬たりとも目が離せない熱い攻防。試合は武藤がハッスル。終盤になってもスタミナが尽きなかった。

―まだ私は市ヶ谷さんや内田さん氷室さんの下に見られている。ここでタッグベルトを自分の力で取って上へ行く!

ビューティ市ヶ谷をシューティングスタープレスで追い込み、ダイビングプレスでカウント2.8まで追い詰める。

「氷室・・・さん」

最後は氷室を招き入れて合体技、ダブルインパクト。これでビューティ市ヶ谷から3カウント奪取。勝負タイム54分26秒。これで氷室・武藤組が34代目のタッグ王者に輝いた。

**********************************************

最終戦は新日本ドーム大会。

第1試合はイージス中森対ジーナ・デュラム。新人のイージス中森、まだまだ外人相手には荷が重く、攻め込まれてしまう。最後は鋭いアームホイップに受身が取りきれずカウント3を許した。8分41秒、ネタ外人の快勝に場内大盛り上がり。

第2試合は野村つばさ対ヘレン・ニールセン。常連外人のヘレン、今日の相手は実力微妙のアイドルレスラー・野村つばさ。やはりヘレンが一方的に攻めてニーリフトでカウント3、勝負タイム7分40秒。

第3試合はフォクシー真帆、成瀬唯がタッグを組んでファントムローズ1号、パトリシア・ルイスと対戦。そこそこ力量のある中堅選手同士のぶつかり合いに会場は沸いた。ファントムローズ1号のオーバーアクションにドーム爆笑。

「もうあきらめろ」

フォクシー真帆、力のこもったパワーボム。たまらずファントムローズ1号は3カウントを喫した。勝負タイム15分13秒。

そして後半へ。セミ前は氷室紫月登場、きょうはノエル白石とタッグを組んで、ライラ神威、REKI組と対戦。

新人のREKI,さすがに氷室相手となると苦しいが、それでもフェイスクラッシャーで反撃するなど健闘。

しかし最後はREKIがつかまってしまい、氷室の延髄斬りに敗北。それでも19分38秒の試合を成立させたのだからREKI、将来が楽しみである。

セミファイナルはラッキー内田、マッキー上戸、武藤めぐみ対フレイア鏡、ロイヤル北条、芝田美紀の6人タッグ。6人の意地がぶつかり合った好勝負、最後は武藤が芝田にシューティングスタープレスで大ダメージを与える。これはカットにすくわれたが、直後の延髄斬りがジャストヒットし、芝田から3カウント奪取。

メインはSPZ世界選手権。王者ビューティ市ヶ谷に挑むのはGWAのローズ・ヒューイット。パワーで上回る市ヶ谷が前半ラッシュをかけたが、ローズもバスターローズ、フェイスクラッシャーで反撃。しかし最後はニーリフト乱打で強引に3カウントを奪って防衛に成功。勝負タイム21分4秒。

これでビューティ市ヶ谷の通算防衛回数は「19」となり、歴代1位の吉田龍子にあと3と迫った。

そして20年目8月、第20回SPZクライマックスが始まる・・・

2008年2月 7日 (木)

第328回 20年目6月 ライラ神威SPZクライマックス出場

20年目6月 SPZクライマックス予選会(続き)

あらすじ

横浜のお嬢様プロレス団体「SPZ」は、毎年8月に総当りリーグ戦、「SPZクライマックス」を開催する。出場権のあるのは「前年の大会で7点以上獲得または4位以内入賞でシード権を獲得した選手」と、「6月に開催される予選会リーグ戦上位の選手」合計8名で争われる。で、6月の予選会。今年の予選会出場枠は「3」。SPZクライマックス出場を狙う若手選手、中堅選手、ピークを過ぎた選手が出場権をめぐって激しい争いを展開した・・・

第5戦は滋賀大会。

成瀬(4点、アキレス腱固め 28.29)N白石(0点)

成瀬、ノエルのナチュラルパワーに手こずったものの、最後はアキレス腱固めでギブアップを奪い勝ち点2をプラス。ノエル白石、試合内容は良いのだが結果がついてこない。しかし本人は負けても表情を変えず。こういうところが大物。

R神威(6点、トムラウシからの片エビ固め 3.33)野村(0点)

ライラ神威、開始早々のトムラウシ2連発でアイドルレスラー野村を処刑。勝負タイム3分33秒、まるで容赦なし。今シリーズの野村つばさは惨劇が続く・・・

芝田(7点、ダイヤモンドキックからの片エビ固め 30.0)F真帆(5点)

芝田が長期戦に引きずり込んで、タイムアップ直前にダイヤモンドキックを浴びせてそのまま3カウントを奪った。

「もう一回、SPZクライマックスに出て市ヶ谷選手と対戦したいですわ。」

F鏡(10点、逆片エビ固め 22.04)武藤(8点)

全勝同士の対決を制したのはフレイア鏡。攻防そのものは一進一退だったのだが20分過ぎに繰り出した逆片エビ固めが決まってしまった。

「・・ほら、もっと苦しみなさい!」

「うわあああっ!」

コーコツの表情で逆片エビで絞るフレイア鏡、滋賀のファンはどよめき。武藤めぐみ、ついにギブアップ。ここでひとつ落としても本大会出場に影響はないと思われるが、トップ争いのことを考えると、痛い敗戦。フレイア鏡勝ち点10。予選会突破が見えてきた。

6戦目は和歌山大会。

R神威(8点、トムラウシからの片エビ固め 13.12)成瀬(4点)

成瀬も良く粘ったが、ライラ神威のトムラウシが決まって終了。ライラ神威も何とか圏内に踏みとどまった。

N白石(2点、STOからの片エビ固め 8.22)野村(0点)

ノエル白石ようやく初白星。アイドルレスラー野村を沈めた。
「勝ったの?ふーん」

芝田(9点、裏投げからの片エビ固め 22.43)F鏡(10点)

ジュエルローゼス同士の対戦。すでに1敗1分けの芝田はこれ以上負けられない。フレイアがねちっこい攻めで追いこめば、芝田も裏拳、ダイヤモンドキックとタコ殴り。フィニッシュは裏投げであった。フレイア鏡の連勝ついに止まる。

武藤(10点、シャイニングウィザードからの片エビ固め10.50)F真帆(5点)

フォクシーのパワーボムを食らってしまうなど危ないシーンもあった武藤だが、シャイニングウィザードで決着。フォクシー真帆、無念の3敗目を喫し脱落・・・

第6戦終了時点での星勘定は下記のとおり。

武藤めぐみ、フレイア鏡(10点) 芝田美紀(9点) ライラ神威(8点)

武藤めぐみとフレイア鏡は予選会通過が決定的。3つ目のイスを芝田とライラ神威が争う展開。

*************************

第7戦長野大会、リーグ戦はこの日が最終日。

成瀬(6点、ステップキックからの片エビ固め 10分くらい)野村(0点)

野村つばさ試練のリーグ戦が終わった。15期生の成瀬唯、6点どまり、今年も本大会には出られなかった・・・

R神威(10点、トムラウシからの片エビ固め 13.16)N白石(2点)

本大会出場の望みをつなぐためには負けられないライラ。ノエルのパワーに手こずったが最後はきっちりトムラウシで地獄送り。これで勝ち点を10とし、あとの試合の結果を待つ・・

F鏡(12点、ストレッチプラム 30.0)F真帆(5点)

14期生同士の対戦。去年フレイアはこの選手に敗れて本大会出場を逃しているだけあって慎重な攻め。最後はタイムアップギリギリでストレッチプラムを決めてギブアップ勝ち。

武藤(12点、ムーンサルトプレスからの片エビ固め 12.41)芝田(9点)

武藤がムーンサルトで有終の美。芝田美紀、1点届かず本大会出場権を失った・・・

「そんな、このわたくしが・・・くっ」

この結果予選会は1位通過フレイア鏡、2位通過武藤めぐみ、3位通過ライラ神威が決まった。

「ヒャハハハハハ、SPZクライマックスをぶっ潰してやるぜえ!何が真夏の祭典だ!!」

SPZの大ヒール、ライラ神威が入門4年目でSPZクライマックス初出場を決めてしまった。過酷なリーグ戦でどんな悪事を働くのだろうか。吉田社長もちょっと心配。

「んー、困ったね、なにやらかしてくれるんだろう」

***************************

最終戦さいたまドーム大会。メインに組まれたのは当然SPZ選手権。王者ラッキー内田に挑むのはビューティ市ヶ谷。タッグではジューシーペアを蹴散らしたのだからシングルでも関節技につかまらなければ勝てる。市ヶ谷様、あいかわらずのパワフルな攻め、ラッキー内田に付け入る隙を与えない。

「覚悟なさい!」

容赦のないパイルドライバーでラッキー内田悶絶。続くデスバレーで市ヶ谷様勝利。勝負タイム20分58秒、これで2冠王。

「オーホホホホホ!この調子でSPZクライマックスもいただきますわ!」

________________________

SPZ世界選手権(60分1本勝負)

ビューティ市ヶ谷(20分58秒、デスバレーボムからの片エビ固め)ラッキー内田

第55代王者が2度目の防衛に失敗、B市ヶ谷が56代王者となる

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2008年2月 6日 (水)

第327回 20年目6月 予選会リーグ戦(前編)

20年目6月
恒例のSPZクライマックス予選会。

芝田美紀(12期)前回本大会5点

武藤めぐみ(18期)前回本大会2点

フレイア鏡      フォクシー真帆(14期)

成瀬唯(15期)

ライラ神威(17期)

野村つばさ(18期)

ノエル白石(19期)

この8名でリーグ戦を行い、得点上位3名が本大会出場権を得る。
初戦は沖縄大会。

F真帆(2点、ニーリフトからの片エビ固め 19.10)N白石

もうキャリア6年目なのに、まだ1回もSPZクライマックスに出ていないフォクシー真帆。気がつけば中堅のポジションから抜けられない状態。

―なんとかSクラに出たい。それにこれ以上後輩に抜かれたくない。

終始押したフォクシー真帆、パワーボムで2年目のノエルをグロッキー状態に追い込み、ニーリフトで白星発進。

F鏡(2点、DDTからの片エビ固め 6.31)野村

フレイア鏡が野村を軽く一蹴した。

R神威(2点、裏投げからの片エビ固め 22.37)芝田

イロモノレスラーの域から脱出し、ライラ様ここにありを見せ付けるためになんとしても予選会を突破したいライラ。しかしこの日の相手は元SPZ王者で打撃攻撃には定評のある芝田。スクラップバスターの連発で流れをつかもうとするが芝田も掌底で反撃。そしてダイヤモンドキック、裏拳と畳み掛ける攻め。

しかしライラ神威も猛反撃。トムラウシから裏投げへつないで難敵芝田からカウント3を奪った。
「ロートル、ヘボは去れってんだよ!!」

武藤(2点、ムーンサルトプレスからの片エビ固め 11.26 )成瀬

「あたしが欲しいのはSPZのベルト。こんなところで手こずってられない」

武藤めぐみ攻める。成瀬にほとんど攻め手を与えない。シャイニングウィザードは返されたが落ち着いてムーンサルト。

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2戦目は浜松大会。

F真帆(4点、ニーリフトからの片エビ固め 4.38)野村(0点)

今シリーズの野村つばさは白星配給係になってしまうのか。この日はフォクシー相手に5分もたなかった。

F鏡(4点、パイルドライバーからの片エビ固め 28.6)R神威

「キェヘヘヘヘヘ」

覆面の中に凶器を仕込んだ疑惑のヘッドバットでペースをつかもうとするライラ。対するフレイア鏡はしつこい脇固めで右腕一本集中攻撃。お互いの個性が出た試合は試合は長期化した。フレイアのストレッチプラムはロープにあまりにも近い。

しかしライラ神威が勝負をかけたカムイエクウチカウシはロープに逃げられた。けっきょく最後はフレイア鏡がパイルドライバーで熱戦にけりをつけた。

芝田(1点、時間切れ引き分け)成瀬(1点)

12期生で能力減衰に悩む芝田、きょうの対戦相手は15期の成瀬唯、試合はお互い決め手を欠く展開。けっきょく時間切れドローとなった。

武藤(4点、ノーザンライトSH 10.41)N白石(0点)

「予選会に出るのはこれで最後にします」

武藤がノエルを圧倒して下した。

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浜松大会メインはSPZタッグ戦。王者ビューティ市ヶ谷、ロイヤル北条に挑むのはジューシーペア。しかし市ヶ谷様絶好調。ジューシーペアの2人をあっという間に叩きのめし、最後はムーンサルトでマッキー上戸からカウント3.勝負タイム28分36秒、王者組が2度目の防衛に成功。

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第3戦は三重大会。

R神威(4点、トムラウシからの片エビ固め 13.32)F真帆(4点)

格下の相手なら悪いことをしなくても勝てる。ライラがトムラウシを決めて勝利。フォクシーの連勝は2でストップ。

F鏡(6点、ストレッチプラム 13.45)成瀬(1点)

フレイア鏡3連勝。成瀬を落ち着いて下した。

芝田(3点、ネックブリーカーからの片エビ固め 18.20)N白石(0点)

芝田が先輩の意地を見せてネックブリーカーでノエルを振り切った。

武藤(6点、シューティングスタープレスからの体固め 3.11)野村(0点)

18期生の同期対決は武藤がわずか3分で野村を下した。うつむいて花道を引揚げるアイドルレスラー野村にけっこうな拍手が飛んだ。

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第4戦岐阜大会。

F真帆(5点、時間切れ引き分け)成瀬(2点)

成瀬、脇固め右腕一点集中も功を奏せず、そのまま時間切れでドローとなった。

F鏡(8点、パイルドライバーからの片エビ固め 28.41)N白石(0点)

「お客さんが必殺技やれって・・・」
ノエル白石のSTOで大ピンチに追い込まれたが、最後はフレイア鏡、何とかパイルドライバーで振り切って勝利。28分41秒の激闘を制した。

芝田(5点、ダイヤモンドキックからの片エビ固め 11.37)野村(0点)

芝田が貫録勝ちをおさめた。

武藤(8点、ムーンサルトプレス 19.14)R神威(4点)

実力ではトップグループに並びかけている武藤。対戦相手のライラがいくらかき回しても平然。フィニッシュはムーンサルトだった。

第20回SPZクライマックス・予選会、4戦を消化してトップは武藤めぐみとフレイア鏡。5点で芝田とF真帆、4点でライラ神威が続く。大舞台のきっぷは3枚。手に入れるのは誰か・・・

(続く)

2008年2月 5日 (火)

第326回 20年目5月 第3回東西対抗戦

20年目5月

5月シリーズ「春のエキサイティングシリーズ」開幕。

2戦目の宮崎大会第1試合で新人のREKIが野村つばさをフェイスクラッシャーで破ってしまう番狂わせが。
第3戦熊本アクエリアンドーム大会。メインはあばしりタッグ戦。負けそうで負けない王者チームデイジー・クライ、ジーナ・デュラム組、相手は前王者のフォクシー真帆、成瀬唯組。
だがー、デイジー・クライ強い。成瀬、フォクシーをまったく寄せ付けず、最後はフロントスープレックスでフォクシーを下して幕。ジーナは置物状態・・・

第4戦別府大会、メインはSPZタッグ戦。新王者ビューティ市ヶ谷、ロイヤル北条に対するは氷室紫月、武藤めぐみ組。

先発は武藤と市ヶ谷。
―市ヶ谷さんとまともにやり合えるようにならないとSPZシングルベルト挑戦のチャンスが回ってこない。

そう考えて武藤が懸命に市ヶ谷に食らいついてゆくが、ビューティ市ヶ谷。

「アナタなんかまだまだ顔ではありませんわ!」

市ヶ谷が武藤をパワー殺法で追い込む。中盤、氷室がロイヤル北条と互角の戦いを展開したが、最後は氷室がスタミナ切れを起こしてしまい、51分20秒、市ヶ谷のムーンサルトに力尽きた。王者組が初防衛に成功。

第7戦山梨大会、メインはSPZ選手権。王者ラッキー内田に挑むのはマッキー上戸。ジューシーペア同士の激突。

「アイツの弱点は一緒に組んでるアタシが一番よくわかってる。ラッキー内田は崩せない相手じゃあない」

その言葉通りガンガン持ち前のパワーを生かして攻め込んでゆくマッキー上戸。DDT、ブレーンバスター、ヘッドバットと追い込んで行く。しかしラッキー内田も

「そろそろ決め時・・・ね」
ラッキーキャプチャーZ(変形ドラゴンカベルナリア)で反撃すると、続くラッキーキャプチャー(変形STF)でタッグパートナーをつぶしにかかった。一度はロープに逃れた上戸だったが、再度リング中央に引きずられてもう一回食らってしまっては万事休す。勝負タイム22分25秒。王者が初防衛に成功。

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最終戦横スペ大会。第3回東西対抗戦が行われた。所属選手が出身地別に東西に分かれてシングル対戦し、勝利チームに賞金70万円が贈られるという企画。

REKI×(山梨)― 野村○(愛媛)

REKIもローリングソバット、フェイスクラッシャーを繰り出すなど健闘したが、新人特有の一発もらったときの挽回が利かないという弱点が出てしまう。最後はジャンピングニーを決めた野村が勝利。

N白石×(新潟)- M上戸○(鳥取)

西軍サイドに若手選手が少ないので早くもマッキー上戸が登場。どうみてもマッキーの優位は動かないところ。しかしN白石もジャーマン、そしてパワースラムを返すなど健闘したが、最後はスプラッシュマウンテンに力尽きた。これで西軍が2勝目。

武藤○(静岡)-氷室×(富山)

ドームのメインも張れそうなカードがここで実現。東西対抗でイベント色が強い試合でも、武藤は本気で氷室つぶしを仕掛けてきた。しかし氷室も応戦。ふだんタッグを組んでいる選手同士の闘いとはおもえない好勝負が展開された。

「はっ!」
武藤、ローリングソバットを連発して流れを引き寄せる。氷室もステップキックまで出して反撃。一気にヒートアップ。

―氷室さんは必ず関節か絞め狙ってくる。
冷静に氷室のドラゴンスリーパーをロープブレイクした武藤、バックドロップ2連発で前SPZ王者の氷室に勝ってしまった。勝負タイム19分2秒。

R神威○(北海道)-成瀬×(大阪)

東西対抗だろうがライラ神威は例によってスタンロッドを振り回しながら入場。成瀬も良く粘ったが、ここでライラ神威が本領発揮。

「ウァハハハハハハハ」

シューズの中に隠しておいた鉄のクギで凶器攻撃。とがった部分で成瀬の頭をぐりぐり。

「うあーーーーっ!」

これで成瀬の動きが止まった。そしてカムイエクウチカウシ(変形スプラッシュマウンテン)でたたきつけて勝利。

「ウァハハハハハハ」

紙コップやしめ鯖が投げられる中悠然と退場するライラ。これで東軍が2勝2敗のタイに戻した。

L内田○(東京)- F鏡×(長崎)
ここでSPZ王者が登場。対戦相手のフレイアを徐々に追い込む横綱プロレス。最後はコブラツイストでギブアップを奪った。これで東軍が王手をかけた。

F真帆×(岩手)- R北条○(富山)

西軍が逆王手。元SPZ王者のロイヤル北条が落ち着いて野生少女をさばき、カカト落としで磐石の3カウント。

B市ヶ谷○(埼玉)-芝田×(大阪)

メインはジュエルローゼス同士の対戦。同門対決だが、勝ったほうに賞金70万円が入るのだから普段タッグを組んでいる関係はおいといて、の熱い攻防が展開された。が、能力にかげりの見える芝田、市ヶ谷の前になすすべなく、デスバレーで動きを止められてしまった、そこを突いてのムーンサルトプレス。17分1秒、カウント3が入った。この結果東軍が4勝3敗で勝利。

2008年2月 4日 (月)

第325回 キューティー金井ラストマッチ

20年目4月

「旗揚げ19周年記念 バトル・カデンツァ」

シリーズ最終戦は新日本ドーム大会。メインのカードが強力だったので超満員となった。

第1試合はREKI対イージス中森。

新人同士の対戦。REKIが新人離れした身のこなしを見せ、すばやい攻めでイージス中森を翻弄し、最後は強烈な掌底でカウント3。REKI、プロ入りシングル初勝利を挙げた。勝負タイム7分33秒。

そして第2試合、

「次の試合に登場するキューティー金井選手はこの試合が最後のファイトとなります。 ファンの皆様より一層のご声援をお願い致します」

「げっちゅきっちゅsummer」がかかる中、キューティー金井が最後のリングへ向かう。いつも通りファンにども、ども、と手を振りながら入場。

キューティー金井、最後の相手は18期生の野村つばさ。
野村も懸命にキューティーにくらいついていって、ネックブリーカーでぐらつかせたが、続くミサイルキックをかわされたのが痛かった。

「う、うう・・・」
盛大に自爆して痛みに転げまわる野村。

キューティー金井、野村つばさが起き上がるのを待ってー
「ええーい!」
キューティー金井のエルボーがテンプルに入ってしまった。バッタリと崩れ落ちる野村つばさ、これでカウント3が入った。勝負タイム10分0秒。

そのあと恒例のセレモニー。(引退試合で勝った選手しか行われない)ライラ神威を除く所属選手全員がリングに上がり、キューティー金井を胴上げ。3回宙に舞った。

「ま、お疲れさん」

吉田龍子社長と成瀬唯選手会長から花束の贈呈。そのあとタッグを組んで一緒にあばしり王座を獲ったOGのギムレット美月(SPZ10期生)が久々にSPZの会場に姿を現し、花束の贈呈。

「お疲れ様です。」

第3試合は外人同士のタッグ戦。デイジー・クライ、アリス・スミルノフ組がファントムローズ1号、ジーナ・デュラム組を撃破した。その試合が終わると休憩。

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休憩明けの第4試合、フレイア鏡対ライラ神威。狂気VS危ない人。きょうのライラ神威の凶器はフレイル(トゲつき鉄球)をぶんぶん振り回してリングイン。

ゴングが鳴ってからもいつも通りのラフファイト。殴っては投げるライラ神威のファイトを貫く。

「ヒャヒャヒャヒャヒャ」

バックドロップの連発で頭から落とし、フレイア鏡の動きを止める。

これで終わりだ!トムラウシ!!」

出たああああ!!、会場のファンが悲鳴と歓声。ライラ神威のキラームーブ、トムラウシがここで火を噴いた。

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・・・トムラウシ・・・

北海道は新得町から タクシーで一時間半のところに「トムラウシ温泉」があり そこから徒歩で6時間 登りきったところがトムラウシ山(標高2141メートル)である 頂上に達するには森の中を抜け 谷を越え 夏でも雪の残る谷をつめて 岩の間をよじ登っていかなければならず この山に登ることは困難をきわめるという 

このようは天然のトレーニング場が アスリートたちにとって修行の場になったことは当然といえよう 夏季ともなれば、北海道のスポーツ選手たちが トムラウシ山に登り 忍耐力と基礎体力作りに励む姿をよく見かける

参考文献 今野銀河著「とつげき日本百名山」

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グロッキーのフレイア鏡を担いでそのまま頭から落とした。

ワン、トゥ、スリー。

勝負タイム15分32秒。ライラ神威がトムラウシでフレイア鏡を撃破した。

ライラ神威、個性が強すぎて一匹狼という状況でどうしても負担の大きいシングルマッチが多くなるのだが、本当によくやっている。

セミファイナルはビューティ市ヶ谷、ロイヤル北条、芝田美紀のジュエルローゼスに、マッキー上戸、武藤めぐみ、ノエル白石の混成トリオがぶつかるカード。武藤が名古屋大会メインであっさりやられた屈辱を晴らそうと、市ヶ谷にぶつかっていったが、逆にそれをうまく利用して武藤を孤立させてしまう。このあたりはJRのうまさ。最後はビューティ市ヶ谷がデスバレーで12分53秒、武藤を退けた。

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新日本ドーム大会メインイベントはSPZ戦、王者氷室紫月に挑むのは前王者のラッキー内田。

「氷室さんとは、勝負は紙一重の差で決まる。だから最善をつくします」

「負けちゃダメ・・・」

氷室も少しでも先手を取りたかったのか、先月同様「いきなりストレッチプラム」を見せて客席をどよめかせる。しかしラッキー内田も逆エビでしつこくしつこく攻めて、そしてコブラツイスト。

「う・・・くっ・・・」
腰への一点集中攻撃が功を奏したのか、氷室のわき腹に異変が起こってしまったのか、氷室たまらずギブアップ。ラッキー内田がベルトを奪還し55代王者に返り咲いた。勝負タイム24分14秒。

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SPZ世界選手権(60分1本勝負)

ラッキー内田(24分14秒、コブラツイスト)氷室紫月

第54代王者が2度目の防衛に失敗 ラッキー内田が第55代王者となる

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メイン終了後、12期生キューティー金井の引退式。当然金井は大泣きした。引退後はタレントとして活動するらしい。

2008年2月 3日 (日)

第324回 20年目4月 女帝健在

レッスルエンジェルスサバイバー プレイ日誌のようなもの
「輝くエッセンシャルS」
(かなり脳内妄想はいってます)

20年目4月。
「旗揚げ19周年バトルカデンツァ」開幕。初戦は京都大会。

第1試合はREKI対野村つばさ。

―実戦は奈良田の里でもやっていた。勝つつもりで行く。

クノイチレスラー、REKIが初陣のリングへ向かった。

「・・・・・」

フェイスクラッシャー、DDTなどでよく闘ったが、最後は野村つばさがジャンピングニーで先輩の貫禄を示した。勝負タイム8分44秒。

ーこれが、プロレス・・・・

第2試合はイージス中森対キューティー金井。今シリーズ限りでの引退を表明しているキューティーがイージス中森のデビュー戦の相手を務める。

ーガンガン攻めてく、返されるのを恐れずに。

しかし相手は団体最古参のQT。フロントスープレックスでほいほいと投げられ、カウント3を喫した。勝負タイム8分12秒。こうして20期生2人のデビュー戦は終わった。

「けっこう見所はあると思いますよ。とくにREKI選手は動きが新人離れしていますし、中森選手もまったく緊張していませんでしたから今後そうとう期待が持てます。」

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第2戦大阪なにわパワフルドーム大会、メインはあばしりタッグ選手権。ノエル白石があばしりタッグに初挑戦。もっとも手近に組ませられる中堅選手が居ないので、パートナーはなんとネタ外人、ファントムローズ1号。理解不能予測不能の即席タッグ。

これで「キックの鬼」デイジー・クライに相対。やはりまともに渡り合えるはずもなく、最後はノエル白石がつかまってしまい、ハイキックでのされてしまった。勝負タイム22分34秒。

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今シリーズはドーム級の会場を回るのでメインはそれなりのカードを用意しないといけない。第3戦若鯉球場ではビューティ市ヶ谷対デイジー・クライのシングル対決(市ヶ谷がビューティボムで勝利)

その翌日九州ドームメインではビューティ市ヶ谷対マッキー上戸のシングル対決が。マッキー上戸も良く攻め込んだものの、やはり地力では市ヶ谷様のほうが何枚も上手で、最後はムーンサルトでかっこよくマッキー上戸を退けた。勝負タイム19分55秒。

「ク ソ ー ッ 」

16期生の中でマッキー上戸がなかなか市ヶ谷様の壁を越えられない。(過去SPZクライマックス公式戦で勝っていることはありますが)

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第5戦札幌どさんこドーム大会。第1試合はイージス中森対ジーナ・デュラム。

―きょうは新人さん相手だから、勝てるかな・・・

デビュー5戦目の新人相手でも懸命に戦うジーナ。最後はエルボーが顔面に入って6分9秒、ジーナが勝利。

第2試合はキューティー金井対REKI。忍者候補生として幼い頃から育てられただけあって身のこなしは見るべきものがあるが、投げ技の重さではキューティー金井のほうが何枚も上。REKIも掌底や回し蹴りなどで抵抗するが、最後はキューティーがフロントスープレックスで動きを止めてカウント3奪取。

どさんこドーム大会メインイベントはSPZタッグ選手権。王者ラッキー内田・マッキー上戸に挑むのはジュエルローゼスのビューティ市ヶ谷、ロイヤル北条組。
しかし市ヶ谷様が強い。ジューシーペアの2人がかわるがわる相手になっても歯が立たない。ならばとロイヤル北条に狙いを定めるが、R北条も実力者なのでそうかんたんにはやられず、受けきってB市ヶ谷につなぐ。

「覚悟なさいっ!」

合体パワーボムでまずラッキー内田が一時的に戦線離脱。代わったマッキー上戸にもデスバレーで大ダメージ。何とかラッキー内田にタッチは成功したが、ラッキー内田も足元がふらついていた。そこを見逃さなかったロイヤル北条、

「テェヤアア!」
カカト落とし炸裂。これでラッキー内田は3カウントを聞いてしまった。勝負タイム54分0秒。ジュエルローゼスにタグ王座が移動。時代が逆戻りしてしまた。

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第7戦、しゃちほこドーム大会、第1試合はキューティー金井対ノエル白石。最後のシングル対決である。

「・・・は」
デビュー1年になるノエル白石が良く攻める。グラウンドでの攻防でも優位に立ち、スリーパーで痛めつける。キューティー金井もフロントスープレックスで懸命の反撃。しかしノエル白石も、

「えっと・・・」
強引なSTO,これでキューティーから3カウントを奪った。勝負タイム19分2秒。

「・・・うん、これで、あとひとつ」
これでキューティー金井のファイトは残すところあと1試合となった。

しゃちほこドーム大会メインはビューティ市ヶ谷対武藤めぐみ。完全に集客狙いのノンタイトルシングルマッチ。
「オーホホホホホホ、コムスメはさっさとひれ伏しなさい!」

「・・・あたしは負けない、あなたに勝ってSPZベルトに挑戦する」
試合が始まり、市ヶ谷のアラアラしい攻めを懸命にこらえる武藤。しかしー
ビューティボム、デスバレーの波状攻撃、1度は耐えた武藤だったが、2度目のデスバレーボムに武藤、健闘むなしく敗北。

このシリーズの市ヶ谷、シングルでデイジー、マッキー上戸、武藤を破り、なおかつタッグ王座を奪還するなどまだまだ女帝健在を印象付けた。

2008年2月 2日 (土)

第323回 ようやく20年目突入

20年目4月。

SPZ12期生・キューティー金井が引退を表明。壊れたおもちゃのように投げられ叩きつけられる・・といったやられっぷりが売りだったのでその分体が持たなくなるのも早かった。もっとも彼女の場合、芸能界入りしても充分やっていける。

「クスン・・もう、お別れなの」

久しぶりに実施した新人テストで徳島県出身の中森登志子を採用。性格面がしっかりしてそうだと吉田社長が判断した。

その翌々日、今野役員と井上霧子は新人スカウトのために山梨県は身延からバスで一時間半の山奥へ出かけていた。

 「うわー、山奥行くねえこのバス。」

「身延のはるか山奥、奈良田の里に近くに忍者養成所があるらしいです」という話を井上がかぎつけた。この人はあちらこちらに情報網を持っている。

「なにしろ忍者ですからね、身体能力は凄いらしいですよ。」

 「忍者なんてこの21世紀の世の中にいるのですか」

「いるみたいですよ」

井上霧子が情報屋からのメールの写しを今野役員に差し出す。

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・・・奈良田の里の忍び・・・

奈良時代は大仏建立や国分寺の建造など仏教文化の成熟が印象に強いが 時の実力者がころころ変わる権力闘争の時代でもあった

そのような状況下 貴族や豪族 高僧にとって自らの身を守ったり 政敵を暗殺したり 戦争を有利に進めることのできる有能な私兵を抱え込むことが不可欠となった。

奈良時代後期 孝謙女帝は8年間 甲斐身延の山奥に滞在したことからその地が「奈良田」と呼ばれるようになった 歴史書には病気を温泉で治すために滞在したとされているが 実際は藤原仲麻呂に対抗するための私兵を集めるためだったという 

奈良田の里は 背後を白峰山脈に守られ 身延から早川の渓を50キロも遡らねばならず 守り易く攻め難いところであり かつ背後の白根山脈は標高3000メートルの高さを有することから 現代でいう高所トレーニングの効果もあって かつ外傷に効く温泉が湧き出ていることもあり 忍者にとって鍛錬と回復の両方をまかなえることもあり この地を拠点とした忍者衆が出たのは 当然といえよう

こうして奈良田の里の忍者を配下にした孝謙女帝が怪僧・道鏡と組んで藤原仲麻呂を政界から追い出すことに成功し 764年の恵美押勝の乱では 藤原仲麻呂の北国脱出を先回りして阻止するなど活躍し 道鏡政権樹立に少なからぬ貢献をしたのではといわれている

孝謙女帝の死後も 奈良田の忍軍は長く存続し続け 中世の東国での動乱の背後には奈良田の忍びの影があるという

 高幡書房刊 「古代朝廷の権力闘争 表と裏 」 より 

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バスの終点が奈良田の集落だった。数十軒の民家が川沿いに固まっているだけのさびしいところだった。その集落の一番奥から、野呂川にかかるつり橋を渡ったところに、古いお寺なのか空手道場なのか判然としない建物があった。

「ここが、奈良田の忍びのアジト、いや本拠地らしいですよ」

で、午後から奈良田の里の代表者、西山さんと交渉。この西山さんの下で10代から20代の男女十数人が日夜修行に明け暮れているようだ。

「われわれ奈良田の忍びは長年にわたり、要人警護の人材を輩出してきたが、昨今は養成所の運営資金にも事欠いておる。したがってわれわれの中から誰かを修行に出すことはやぶさかではない」

「ギャラは・・・ワンマッチこのくらいです。そのほかに契約金が1500万ほどです。どうです、どなたかSPZで活躍してみませんか」

今野人事経理担当役員が金銭面での条件を提示して押す。

「そうか・・・では、年齢が若く・・伸びしろがある者を派遣しよう。・・・大門」

「はい」

一人の少女がどこからか現れた。

「そなたはまだ若い、横浜へ行って修行を積んでまいれ」

「・・・仰せと、あらば・・・」

こうして、大門と呼ばれた少女はSPZに入団することになった。これが数年後、悪の忍者レスラーとして大ブレイクするプロレスラー・REKIとの出会いであった。

2008年2月 1日 (金)

第322回 時代が、動いた日

19年目3月

ファイヤーソウルシリーズ開幕。マッキー上戸が右肩痛で負傷欠場。GWAと契約を再締結した。

第6戦うつのみや大会ではメインであばしりタッグ選手権。デイジー・クライ、ジーナ・デュラム組に対するはフォクシー真帆、成瀬唯の前王者組。

「い、いやぁぁ・・」

弱気な表情でローリングソバットを放つジーナに大声援が送られた。フォクシーと成瀬は完全にヒールになってしまっていた。そして最後はデイジー様が特別出演。

「イクゾ!」
鋭いハイキックでまずフォクシーを戦闘不能に。孤立した成瀬にもハイキック2連発。これでカウント3が入ってしまった。

「まだ殴り足りないねえ」
24分7秒、王者組が初防衛に成功。

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第7戦、幕張コンベンションホール大会、メインはGWA選手権。王者ローズ・ヒューイットに挑むのはライラ神威。何が起こるかわからないタイトルマッチ。挑戦者はまたもジープをリングサイドまで乗りつけて、本部席に突っ込んで破壊するパフォーマンスを屋って入場。
しかし試合が始まればヒューイットお嬢様のほうが技の切れもパワーも格上。

「いきますわよ!」

ローズヒューイット、パワーボム2連発。なんとか2.8で返したライラだったが、

「散りなさい」
必殺のバスターローズ。これもカウント2.9で返したライラだったが、パワーボムをはさんでもう一回食らっては返せなかった。19分56秒、王者が防衛に成功。
「有名な言葉でしょう?美しい薔薇にはトゲがある」

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最終戦はさいたまドーム大会。

第1試合は野村つばさ対キューティー金井。新旧アイドルレスラー対決である。手数で勝ったのはキューティー。コーナー最上段からのミサイルキックで戦意を奪い、とどめはブレーンバスター。これでアイドルレスラー先輩の貫禄を示した。勝負タイム9分45秒。

第2試合は前座の名物カードとなったジーナ・デュラム対ノエル白石。不思議ちゃんキャラのノエル白石と怯えながらファイトするジーナ・デュラム。しかしー

「お客さんが必殺技やれって・・」
ノエル白石の必殺技、STO炸裂。一度はカウント2.8で返したジーナだったが立て続けに2回目を食らっては万事休す。ノエル白石が12分55秒、勝利。

第3試合はタッグマッチ。フォクシー真帆、成瀬唯対デイジー・クライ、エレン・ニールセン。力のこもった攻防が展開されたが、外人組はデイジーが前面に立って日本人2人にダメージを与えて終盤、余力を残すへレンが勝負をかける策に出た。しかしフォクシー、成瀬は懸命に粘って決定的チャンスを作らせず、そのまま30分ドローに持ち込んだ。

休憩明け第4試合は、ジュエルローゼスの実力派2人が登場。芝田美紀、フレイア鏡対ローズ・ヒューイット、ファントムローズ2号。一進一退の攻防が展開されたが、芝田のダイヤモンドキックでヒューイットお嬢様が痛がったあたりから試合が動き始めた。4人が入り乱れる乱戦が展開された。

しかし地力に勝るローズ・ヒューイットがパワーボム、バックドロップ、パワーボムと大技をたたみかけてフレイア鏡から3カウントを奪った。勝負タイム29分28秒。

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ここから3大シングルマッチ。セミ前はロイヤル北条対ライラ神威。ライラは昨日の幕張でヒューイットお嬢様に叩きのめされたが、今日も狂気に凶器同伴で入場。スタンロッドをバチバチと響かせながら入場。しかし勝負は地力に勝る元SPZ王者ロイヤル北条が優勢に進める。

「ブッコワレロー!!」

ライラもカムイエクウシカウチで反撃するもロイヤル北条受け切って、裏投げ、バックドロップと大技を畳み掛けてライラを仕留めた。勝負タイム14分48秒。

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セミファイナルは武藤めぐみ対ラッキー内田。進境著しい2年目の武藤めぐみが前SPZ王者のラッキー内田と対戦。ラッキー内田は寝かせてしまえばこちらのものとねちっこいレスリングで武藤のスタミナを奪う作戦。そのまま優位に進めて、最後はスタミナが切れたころあいを見計らって、ラッキーキャプチャーで勝利。

勝負タイム17分47秒。ここへきて武藤めぐみはトップの壁にぶち当たってしまったか。

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メインイベントはSPZ選手権。王者氷室紫月に挑むのは元王者のビューティ市ヶ谷。氷室はまだシングルで市ヶ谷に勝ったことはない。実力ではまだまだ挑戦者のほうが上、氷室の防衛は厳しいと多くのファンは思っていた。

「勝たないと・・・」

時代の逆戻りは避けたい16期生の氷室、勇を鼓していきなりストレッチプラムを仕掛ける奇襲攻撃。これには市ヶ谷も怒ってラリアットで反撃。試合は序盤から荒れた立ち上がり。だがこれは氷室の仕掛けた罠だった。

―わざとバタバタした展開に持ち込めば、きっと、市ヶ谷さんでもスキができる・・・

で、その作戦がズバリはまった。12分過ぎ、スッと・・・

「これで決まり」

ドラゴンスリーパー。抜けられない。市ヶ谷抜けられない。苦悶の表情を浮かべ足をばたつかせるが市ヶ谷抜けられない。氷室ひたすら締め上げる。市ヶ谷抜けられない。そしてついに根負けした市ヶ谷、伊達レフェリーの手を叩き、ギブアップの意思表示。

「14分29秒、ドラゴンスリーパーで氷室紫月の勝ち」

えええええええええええええええ!

あの誇り高い「ビューティ市ヶ谷」がギブアップの言葉を発するなんて、ファンは呆然。それも15分足らずの短時間での決着。時代は確実に動いているのか・・・・

SPZ世界選手権

氷室紫月(14分29秒、ドラゴンスリーパー)ビューティ市ヶ谷

第54代王者が初防衛に成功。

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