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2008年5月31日 (土)

カオスの王者 地下武闘04

「ぬおおおー かっーーーー!」

気合いとともにクレイジードラゴンの身体を包んでいたつなぎが吹っ飛んだ。このあたりは当然特殊効果を使っている。
そして銀色の水着のような戦闘コスチュームに身を包んだドラゴン。これは本気モードなのか!
―この闘気・・・只者じゃない!
青柳智子は思わず後ずさった。
「さあ、あたしの腕の中で息絶えるがよか!!」

****************************

渡辺智美主演映画「カオスの王者 地下武闘」(4)

「てゅりゃーーー!」

気合いとともに青柳智子がチョップを放っていく。

「なんだー?このこそばゆいチョップは、蚊でもさしたか?」
ビシイイイイイイイ
ものすごいチョップ一発で倒される智子。

「くっ、ならば・・・ジェットスマーッシュ!」

前蹴りをたたきこむ智子。しかし効かない。鍛え上げられた肉体、防御力が高すぎるのか。

「蹴りもまるでなってない。これが蹴りだ!!」

ばきっ

ビッグブーツを食らって横転する智子。

「くっ・・・・」
ならばと投げようかと組み付く智子だったが、やすやすと差して争いを制してバックにまわり、クレイジードラゴン、ジャーマン!

「ぐわあああああ」

石のリングなのでものすごく痛い。
しかし、青柳智子、なんとか起き上がる。

―あたしは・・・なんとしても勝つんだ!!

「ほう、まだ起きてくるか。それではその闘志に敬意を表してあたしのキラームーブを見せてやろう」

―なに?

タックルで軽く智子を倒すと、両足を持った、逆エビか?
いや。

「くらえ!スーパージャイアントスイング!!」

ぎゅんぎゅんぎゅんぎゅんぎゅんぎゅん!
おそらく後からフィルムを操作したのだと思うが、目にも留まらぬ高速でジャイアントスイング。智子がありえないスピードで回される。

「ぬわーーーーっ!」

1分間、まるで扇風機の羽のように回転させられた智子が叩きつけられた。

ずだーっ。

「うう・・目がっ・・・・頭が・・・・・おえええええええ!!」

ヒロインとは思えない状態、倒れ伏してゲロを吐いてしまう智子。なんというシーンだ。やはりジャイアントスイングの威力で頭がイッてしまったらしい。

「ふふふふふ、きさまはしばらく頭が完全に回ってしまい動く事もかなわぬ」

高速回転を食らった智子、起き上がれずゲロまみれでのたうちまわるだけ!

「じゃあ、そろそろ死んでもらおうか!くらえ!リーサルムーブ」

クレイジードラゴン、うごけない智子を捕らえて担ぎ上げた!アルゼンチンバックブリーカーと呼ばれる大技だ。

みしみし、めきめき・・・

「さあお前を真っ二つにしてやる!」

「あぎゃあーーーーーー!」

痛みで絶叫する智子。このままでは胴体が二つに切断されてしまう!!

懸命に上からパンチを打って逃れようとする智子、しかしその抵抗も長く続かなかった。ダラーンと腕が伸びてしまう

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

智子の目の前の視界が白くなる。アマレスをやっていた頃、プロレスの門をたたいたころ。選手生活のピークでベルトを巻いた事。過去の思い出が走馬灯のように・・・

源三さん、
最愛の人が脳裏に出てきた、しかし遠ざかる源三、目の前にお花畑が現れた。遠ざかる源三。ここで智子の意識が一瞬戻った。

「そら、もう少し・・・もう少しで楽になるぜ・・・」

ものすごい膂力で智子をひん曲げるクレイジードラゴン。

―あたしは、まだ、死ねない!

智子、まさかのときのために左腕のリストバンドに隠し持っていた砂をつかんで、それをドラゴンの目にすり込んだ!

「ぐわああああ」

さすがにこれは痛かったのか力が緩んだ、なんとかアルゼンチンを脱出した智子、

「はぁぁぁぁー!百裂地獄突き!」

右手を手刀の形にして、ものすごい勢いでドラゴンのノドを突きまくる!いくら鍛えた選手でもノドだけは鍛えようがない!

これで形勢逆転。がくっとひざを突くドラゴン。

「うわああああああああっ」
青柳智子、裂帛の気合とともに助走をつけて思い切り顔面にヒザをぶち当てた。シャイニングウィザード炸裂。

「うおあああああああっ」

そのまま左右からシャイニングウィザード、またシャイニングウィザード、そしてもう一度。怒涛のシャイニングウィザード4連発。

「ぐあああああーーーー」
うめき声を上げて倒れ伏すクレイジードラゴン。そのまま上に乗って右腕をノドに押し当てた!いわゆるギロチンチョーク。

「うぉぉぉぉぉ・・・」
「ああああああああっ!」
鬼気迫る表情で、ありったけの力をこめて右腕でノドをつぶす智子。

「・・・・ぐふっ!!」
クレイジードラゴン、大量の血を吐いて、こと切れた。すぐさまリストバンドから脱出用ボートの鍵を奪い取る。

『なん、なんてことだっ、クレイジードラゴンがやられるとは、おのれぇ、生かして返さぬぞ』

地下格闘組織のエース選手を失い、頭に血がのぼったプロモーター氏。しかし青柳智子、脱兎のように駆け出した。ホテル裏口のドアを蹴破り、モーターボートのエンジンを回した。

ブィーン!
そのままボートを発進させ、フルスピードで北へ向かう。

死闘の後遺症で全身から血を流していたが、一刻も早く最愛の人のもとへ帰りたかった。
そして二時間ほど経った。目の前に九州、鹿児島あたりの砂浜が見えてきた。燃料が残り少ないので智子はボートを着岸させた。

はぁ、はぁ、はぁ、はぁ・・・・

血まみれの智子、リングコスチュームのまま砂浜をよたよたと歩く。
ご都合主義的な展開だが、目の前には源三が迎えに来ていた。どうやら手術は成功したようだ。まだ頭に包帯を巻き、車椅子に座っていたが源三だ。

「うわあああああああん!!」
感動的な音楽が流れる中、智子は涙ながらに、源三の元に歩み寄り、そしてすがりついた。夕陽が砂浜を彩る。
ここで流れるスタッフロール。

**********************
CAST
青柳智子:渡辺智美

源 三 :松永幸一

藤 堂 :筧一志

クレイジードラゴン:吉田龍子(特別出演)

プロモーター:今野和弘(特別出演)
ゾディアックU:ラッキー内田(友情出演)
オブリビオン:八重樫美月(友情出演)
協力:スーパースターズプロレスリング・ゼット

***********************

パチパチパチパチパチ・・・
激しいバトル、そして感動的なラストシーンに映画館に詰め掛けたファンは惜しみない拍手を送った。

「なんで、あたしが、ヤラレ役なんだか・・・・」

ぼやくことしきりの吉田龍子社長だったが。京スポ紙面で「本職にしかできないアクションシーン」などと絶賛され、お取引先に会うごとに「映画観ましたよ凄かったですねえ」などといわれるに至り、吉田龍子もまんざらではないようだった。

2008年5月30日 (金)

カオスの王者 地下武闘03

完全妄想作話 

渡辺智美主演映画

カオスの王者 地下武闘(3)

恋人の手術費用を稼ぐために地下格闘組織に身を投じた元プロレスラー・青柳智子(渡辺智美)は、その後も毎週現れる強敵どもを昔取った杵柄、関節技絞め技の技術を駆使して切り抜けていった。

「ゼェ・・・ゼェ・・ゼェ・・・」

「勝者、アオヤギトモコ!」

大雪のヒグマと呼ばれる柔道家をアンクルホールドで下し、荒い息をつく智子。これで15連勝。

*************************

ビルの最上階、ダブルのスーツを着た初老のプロモーターが葉巻を咥えながら、黒人のエージェントを詰問していた。

「どういうことかね、ロドリゲス君」

 「思ったよりあの女、シュートファイトに適応しており、またブランクの影響もさほどでも・・・」

「そんな事を聞いているんじゃない。このままでは賭けが成立しなくなる。この状況をどうするつもりかね」

 「申し訳ございません、私の不徳のいたすとこ・・」

「いいかげんにしろよっ」

ばきゅーん。

プロモーターがロドリゲス氏をいきなりピストルで射殺。ギャグ映画なのか感動ものなのかわからなくなってきた。

「かくなる上は、『クレイジードラゴン』を投入するしかない・・・くふふふ、智子よ、生きて東京へ帰れると思うなよ」

**********************

「ええっ、本当ですか?」

「次の相手に勝てれば、借金を全額弁済したことにして、東京へお帰りいただいて構いません。次の対戦相手が、モーターボートの鍵を持っています。それを奪取して、ホテル裏口の船着場からお帰りください。」

「よっし・・・・待ってて、源三さん」

でもって、ラストバトル。反対側コーナーのシャッターが開いた。

うぃぃぃん

「こなた、クレイジー・ドラゴン!!」

「あ、あなたは・・・・」

「久しぶりやな」

囚人服のような赤いつなぎに身を包んだ大柄な女性が姿を現した。

「ばっばかな・・・あなたのような人がどうしてこんな・・・」

『ファファファファ、教えてやろう青柳智子、そこにいるのはもちろん泣く子も黙る6年連続プロレスリングトーナメントチャンピオン、クレイジー・ドラゴンその人だ。かつては69連勝という輝かしい戦績を上げていたが、引退後は酒と麻薬とホストで身を持ち崩し、借金を抱え地下格闘界に身を投じた。』

バルコニーからプロモーターさんが説明口調。

「どうして・・・ドラゴンさん、私はあなたにあこがれてプロレスを・・・」

「勘違いするなよ」
クレイジードラゴン(feat吉田龍子《特別出演》)がぼそりと言い放つ

「ここにいるのはおまえを殺して大金を得ようというひとりの殺し屋だよ、ヒック」

なんとクレイジードラゴン、携えていた角瓶をあおった。中身はおそらくウイスキイだろう。

「ボートの鍵は私が持っている。これが欲しくばあたしを倒すことだな、無理だろうけど」

「試合開始ッ」
ドオオン!

「おまえごとき片付けるのに2秒あれば充分だ」

ドラゴン、角瓶を置いていきなり間合いをつめる。

―何という踏み込みの早さ!
ぶぅん!

右腕、豪腕を振った。

「うぉあ!」
いきなりのラリアットを食らってダウンする智子。早くも勝ちを確信した感じのCドラゴン。

 「フッばかめ、かつてバズーカラリアットと呼ばれたあたしのラリアットを食らって立ち上がれるやつなどおらんの・・」

「三下ばかりとやって腕が鈍ったようね。きっちり受け身は取ったわよ」

起き上がる智子。

「ふふふふふ、どうやら久しぶりに骨のあるやつと当たれるらしいな」

このあとC・ドラゴン、大振りのパンチやラリアットやダブルハンマーを狙っていったが、智子のスピードの前に当たらない。

しかしCドラゴン、角瓶の中のウイスキイを口に含んで、ぶしゅーっと智子にミスト状に吹きかけた。

「うっ、目にしみるッ」

「グフ・・・捕まえた」
首根っこをつかんで、悪魔の右手が迫る。
アイアンクロー!

ぐわあわわわ!
「ははははは、おまえの頭をつぶしてやるぜ」

めきめきめきめきという効果音。このまま頭をつぶされてしまうのか。しかし、智子、空いていた右手で、思いっきりドラゴンの鼻の穴に指を突っ込んだ!

「ぐぎゃあああああ!」
鼻孔から噴き出る鮮血。たちまち形勢逆転。

「あたしは青柳智子、そんな簡単にやられはしないっ!」

そしてたちまち組み付いて、Cドラゴンを抱えあげて、垂直落下!ノーザンライトボムと呼ばれる荒技だ。

ごきっ

石造りのリングの上に叩きつけられるドラゴン。額からはおびただしい出血。ダウンしたまま起き上がってこない。

―勝った・・・・

『はたしてそうかな』

プロモーター氏がにやつく。

むく。

C・ドラゴンが起き上がった。

―なんで!?ノーザンライトが完全に入ったのに!

「さすがだな、青柳智子。カミカゼビューティーの称号を持っていただけのことはある」

起き上がって目を閉じるドラゴン。

「だが、なまじ強いばっかりに、あたしの本当の恐ろしさを知る事になるのだ・・・」

―なっ、なに!

「ぬおおおー かっーーーー!」

気合いとともにクレイジードラゴンの身体を包んでいたつなぎが吹っ飛んだ。このあたりは当然特殊効果を使っている。

そして銀色の水着のような戦闘コスチュームに身を包んだドラゴン。これは本気モードなのか!

―この闘気・・・只者じゃない!

青柳智子は思わず後ずさった。

「さあ、あたしの腕の中で息絶えるがよか!!」

(続く)

2008年5月29日 (木)

カオスの王者 地下武闘02

SPZ番外編 渡辺智美主演映画「カオスの王者」

(ここまでのあらすじ)

元レスラーの青柳智子は、引退して婚約者とらぶらぶの日々を送っていたが、婚約者が病に倒れ、その手術費用を稼ぐために地下格闘界のリング復帰を決断する。地下格闘団体「ナイトメアカオス」の主催者、藤堂に参戦を申し入れた青柳智子は、ヘリでどこかへ護送された・・・

(2)
鹿児島南方にある魔界島。

青柳智子(feat渡辺智美)はヘリでこの島へ運ばれた。
一見リゾートホテルに見える建物の2階にあてがわれた部屋。リゾートホテルのスイート並みの広さで、ベッドにはサテンのシーツがかけられ、テーブルの上には果物を盛った銀盆がある豪華な部屋だったが、智子は不安で押しつぶされそうだった。

「えぐっ、えぐっ・・・怖いよう・・・」

ベッドの上に突っ伏して泣いてしまう。

「源三さん、力を、貸してぇ・・・」
そして夜が明けた。

ぷるるる、プルルル。
部屋の電話が鳴った。
「18時から出番です。用意してください」
「・・・はい」
ぱさっ。
智子は着ているスーツ、そして下着を脱いで、生まれたままの姿になり、そのあと試合用の下着をつけて、数年前に使わなくなった水着形の青いリングコスチューム、そしてリングシューズに身を包んだ。鏡の前に立って自らを映す。

「私、もう一度、闘えるかしら・・・」

数年前までは人気と実力を兼ね備えたプロレスラーとして鳴らした彼女だが、リングを降りてからは殆どトレーニングらしいことをしていないのだ。肌にも往年の色ツヤがない。

「でも、やるしかないんだ・・・」
部屋を出て、直通エレベーターに乗って地下10階へ向かう。控室は誰もいない。

ぱっぱ、らー、ぱーぱーぱーぱー。
ファンファーレが鳴り、いきなり目の前の壁が開く。

ヒューヒューヒュー、
わぁーわぁーわぁー!!
2000人ほどの収容力と思われるスモールハウス。リング代わりにあるのが天下一武闘会にあるような石造りの舞台。それだけ。

しかし客層は高そうな服に身を包んだ男女ばかり。やはりありとあらゆる贅沢をしてなお、お金の使い道に困った方々がこのような生死をかけた闘いに足を運ぶらしい。どうやら戦いの賭け金でも億単位の金が動くらしい。

「それでわ、今週のカオスバトル、メインイベントを開催いたします」

アナウンサーらしきおっさんが叫ぶ。
ドワーーー

「かたや、かつてカミカゼビューティーと呼ばれた伝説のレスラー、アオヤギー、トモーコー!!」

「こなた、、裏世界の用心棒10年、ナイフの達人、オブリビオン!!」

反対側から現れたのは小柄なメガネをかけた女の子、しかし目は格闘家のそれだ。そしてオブリビオンと呼ばれた少女はホルスターからスッとナイフを抜いた。

(オブリビオン:feat八重樫美月《友情出演》)

「ちょ、ちょw、そんなのありー?」

がしゃん。

石のリングのまわりに電流を流した柵がセットされた。もうこれで逃げられない。

「ファイッ」

ドーン。ゴング代わりの太鼓が鳴った。

「Die!」
オブリビオンが一気に間合いをつめてくる。そして勢い良くジャンプして上からナイフ攻撃。

「うわっと!!」

かわす智子、しかしかすったのか頬から血が一筋。
ぴとっ。
ナイフから垂れる赤い滴。

「いつまでかわせるかな。Die!」
また間合いをつめて右腕のナイフを振るオブリビオン。

―あんなのが入ったらいくらなんでも死んじゃう!
どうしよう、どうしよう、
困った表情でかわす智子、しかしコーナーに追い込まれた。試合中は場外へ逃げられない。(場外フェンスには電流が流れている)

「ウァハハハハ、Die・・・」
反射的に昔のムーブを思い出した。右腕を手繰り寄せてそのまま飛びつき腕ひし逆十字!

「ウァァァァァァ」
攻守逆転、苦しみ悲鳴をあげるオブリビオン
やらなければ・・やられる!

ごきっ

そのまま右腕をへし折った。

「ぎゃああああああああああ」

右腕を折られた痛みで悲鳴をあげるオブリビオン。素人にしては迫真の演技だ。そして痛みのあまり失神。

ワアアアアア!

「勝者、アオヤギトモコ!」

ワアアアアアアアアアア・・・・

青柳智子、呆然とした表情で勝ち名乗りを受け、ホテルの自室へ引き揚げた。

勝つには勝ったが、後味が悪かった。レスラーのときは手加減していた技も、生きるために折るまでやらないといけなかった。

「なんで、、うう、あたしが、こんな・・・」

運ばれたルームサービスの豪華な食事にも手をつける気がしなかった。

**************************

そして、あっという間に1週間が過ぎた。智子は島から出られず、もっぱら海岸でトレーニングを行い次の試合に備えた。

第2戦の相手は、頭に麻袋を被った女戦士。身体のあちこちにチェーンが巻かれている。

この女はかつては粗暴犯として何回も投獄されたが、刑務所の中でも暴れまくって当局も手を焼き、頭をきれいにする薬を投与されて今はこうなっている。ゾディアックU!」

(ゾディアックU:featラッキー内田《友情出演》)

「ウォーウォーウォーウォー!」

麻袋を看守らしき男に取り外されるや、いっちゃった表情+特殊メイクの女戦士が暴れだす。ラッキー内田のおもかげはまったくない、ただの狂ったおねえさんだ。この人の演技もうまい。

ゾディアックU,視界に智子を捕らえるや、

「ウォーウォーウォーウォー」

襲い掛かってきて首を絞めようとする!!

くっ、なんて力なの・・・

智子、なんとか振りほどくが、ゾディアックUが猛然と体当たり。

「ぐわあああああ・・・っ」

受け身を取ったがリングと違い堅い床。

「ウォーウォーウォーウォー」

ゾディアックU、上からのしかかって首絞め!
ごぶっ

泡を吹く智子、意識が遠のく。

このまま、抵抗をやめれば、ラクに・・・なれる・・・
負けちゃおうかな・・・

しかしそのとき 脳裏に最愛の人の姿が・・・
まだ、死ねない・・・源三さん!!

智子、砕けそうな意識をつなぎとめて、下から足を出して三角絞めに捕らえた。

「ウゴ・・・ブッ・・・・」
ゾディアックU、苦しみだす。智子懸命に絞める。

「ゴブベッ!」
ゾディアックU,絞められ続けてついに失神。泡を吹いて意識をなくした。

「勝者、アオヤギトモコ!!」

ワーワーワーワー
「げほっ、げほっ・・・・」
青柳智子、しばらく起き上がることができなかった・・・
 (続きます)

2008年5月28日 (水)

カオスの王者 地下武闘01

(引き続き完全妄想作話です。)

■渡辺智美主演映画
23年目(AD2031年)12月、1本の映画が公開された。
「カオスの王者~地下武闘~」
内容がバイオレンスアクションものという事と、出演する役者がたいしたメンツでもないので、都内でも上映するのは数館で、神奈川県内にいたっては横浜の中小シネコン1館のみであったが、マニアの層では人気が高かった。

「さあて、吉田さんがどういう演技してるかな」
今野役員と吉田龍子社長、井上霧子に京スポ新聞若林記者の4人が連れ立って映画鑑賞に出かけた。

「べ、別にただ暴れただけだよ」
SPZも12月29日、仕事納めとなり、打ち上げがてら映画でも見に行こうという話になった。吉田社長は「やめてよ恥ずかしいから」と言ったが、井上霧子と今野役員が「面白そうだ見に行こう」はやし立てたので、けっきょく連れ立って映画鑑賞。チケットは若林記者が京スポルートでタダ券を持ってきた。

「でもうちの選手が映画に出るなんて久しぶりね」

「現役はなれてだいぶ経ってるからでしょ・・・それにしてもアイツ、どんなずるい手を使って主役になったんだ」

吉田龍子がつぶやく。

SPZ草創期には「ギャラ目当て」に伊達遥、ミミ吉原、保科優希といった面々が頻繁に映画出演していたのだが、団体の資金繰りに余裕が出てからは映画出演は練習の妨げとなるので断っている。

午後7時、本日の最終上映回が始まった。
****************************
2031 エスピーデジタルアーカイブス Presents

オープニングで、スーツ姿で営業スマイルでなにやらセールスしている女性。この映画の主役、青柳智子(主演、渡辺智美:SPZ5期)である。

「たいよーこー発電は、地球にも優しくて、ご自宅の電気をまかなえる仕組みです。いまなら20%引きの特別価格、240万円でご提供いたします」

―青柳智子30歳、昔はプロレスでチャンピオンに輝くなど華々しい活躍をしたが、いまは引退して、ソーラー発電システムのセールスレディで第2の人生を歩んでいた。

「ふう、今日もいっぱい頑張ったっと・・・」
夕刻、愛車のヴィッツを駆って家路につく智子。住宅街を車で走る。

渡辺智美
松永幸一
筧 一志
吉田龍子(特別出演)
*****************************

そのあとなぜかベッドシーン。

「うっ・・・あっ・・・あっ・・・・」
濃厚な大人のキスの後、二人がベッドに沈む。渡辺智美、迫真の演技。どうやら家に帰って半同棲中の恋人とごはん食べてその後・・・という設定らしい。

「なんちゅう映画だ、展開がベタ過ぎるよね」

「でも、あの智美ちゃんが・・・ははははっ」

引きつった笑いを浮かべる井上霧子。序盤にベッドシーンを持ってきて観客をひきつけるベタな手だ。

「あっ・・・あんっ・・・」
ベッドの上で睦みあう二人。渡辺智美、迫真の演技。

コトが終わって、
「源三さん・・・こんどはいつ、会えるの・・・」
顔をほんのり桜色に染めた智子(feat渡辺智美)が呟く。

しゅぱ
「新作のゲームが、再来週マスターアップの予定なんだけど、バグがいっぱいあってね。回想モードの途中で固まっちゃう現象があって、明日からまた徹夜続きだ。」

恋人のやせた中年男、源三(featお笑い芸人:松永幸一)がタバコに火をつける。

「この新作が終わったらさ・・・結婚でもするか。」

「源三・・・さん」

「・・・・・・・・・・」

ベタな展開に吉田龍子あきれて声も出ない。彼女も映画の完成版を頭から観るのは初めて。試写会は巡業中だったので出られなかったのだ。

そして次のシーンで、また智子は太陽光発電の営業をやっていた。

「それではこちらお見積もりになりますので、ご検討の程よろしくお願いします」

ピリリリ、ぴリリリ・・・
智子の携帯が鳴る。

「え、何ですって!源三さんが!?」

***********************

ところ変わって病院。

「源三さん!!目を開けてぇぇぇ」

どうやら働き過ぎで倒れてしまったようだ。ベッドの上で昏睡状態。

医師が宣告する。

「脳神経が・・・血の塊で圧迫されており・・・手術をしないと意識が戻らないですね。ただ、このケースは難しくて」

「成功しないんですか?」
「いや、この病院では事例がなく、この手術は脳神経科の権威であるアメリカのウトンベリノ教授しかできないんですよ、で、手術費用、渡航費用含めて・・・」

「20万ドル?」

************************

「ど、どうしたらいいの・・・20万ドルなんて大金・・・大金・・大金」

源三さんの会社は保険に加入していない中小のゲーム制作会社なので、いざというときに頼りにならない。

智子、20秒ほど逡巡していたが、意を決して

「先生、お金はなんとかします。源三さんを助けてくださいっ」

ところ変わって、ある高層ビルの40階。

「藤堂インターナショナル」と書かれたドアの前。

「これしか、ないんだ・・・」

智子、複雑な表情でドアを開けた。

「藤堂先生、先日頂いたお話なのですが・・・」

藤堂という太った老人に

「おお、青柳くん。考えてくれたのかね」

「はい。あたしを・・20万ドルで買ってください」

「20万ドルかね・・・そうすると・・・半年は働いて貰わねばならんよ」

「はい。覚悟を決めました」

「そうかね・・・・では・・・」
藤堂老人は小切手にさらさらと署名した。

***********************

「おお、エクセレーント!」

藤堂老人の執事らしきおっさんが叫ぶ。智子は伏目がちに執事の後をついてゆく。

「世界経済のグローバル化に伴い、マネーの動きが活発化し、ファンドマネーやオイルマネーが増殖し、多くのニューリッチ、ニューセレブが誕生しました。いわゆるカクサシャカイですね」

「はい・・・」

「そしてお金持ちたちは美味しいものを食べ、ありとあらゆる贅沢をするようになりました。そうした中、ブックではない真剣勝負のバトルを見たいというニーズが出てきたのデス」

「ええ・・・」

「この地下格闘組織、『ナイトメアカオス』では世界中から選りすぐりの格闘技の達人を集めて、毎週、エキサイティング、マーベラスな興行を行ってマース」

「はい・・・」

「トモコさんもブリバリブッチギリの活躍を見せてください。ア、ソレトこのリングはリアルバウトですから、万一のことがあっても文句は言わないでください」

「・・・はい・・・」

「それでは今日のところは私どもが用意した宿舎で待機してください。明日シアイデース」

「わかりました・・・」

(続く)

2008年5月27日 (火)

第420回 リバイバル南(後編)

23年目12月 完全妄想作話「夢のマスターズ戦2031」

あらすじ 横浜のお嬢様プロレス団体SPZの影番、井上霧子は隔年12月末に、井上霧子主催イベント「夢のマスターズ戦」を決行する。「ノスタルジイ」と「大人の悪ふざけ」がブレンドされたなんともいえない興行、今年はSPZ初代女王の座を争った、1期生の南利美と伊達遥がメインイベントでタッグ対決。試合は伊達が頭の良さを見せ、南の攻め疲れを待ってから反撃といううまい戦法。これが的中し、ついに伊達遥の代名詞「殺人ヒザ魚雷」が南をとらえた。南利美リバイバル。ここで沈没してしまうのか?

*******************************

伊達遥、組み付いて殺人ヒザ魚雷!

ドスドスドスッ。

衝撃で南の身体が一瞬浮き上がる。

「ぐっ、うあ、うわああ・・・うううっ・・・」

リング上で悶え苦しむ南利美。20年前のSPZで良く見られたシーンだ。腹を押さえて悲鳴をあげて苦悶の表情でマット上を転げ回る。

しかし伊達遥も違和感を感じていた。

ー手ごたえが、無かった・・・どういうこと?

しかし伊達、大きく息を吐いてから、南が立ち上がるのを待って、

「SPZキック!」

上段蹴りを放った。しかし南、当たる寸前でフラフラの演技をやめて。スッと身体を沈め、水面蹴りの要領で軸足を払う。このあたりは引退後もビデオを見て研究していたらしい。

「う、ウワーッ」
ハデにスッ転ぶ伊達。南すかさずカバー。

ワン、トゥ・・・ドドドドドドド
カウント2.8で肩を上げた伊達。

「そんな・・・ヒザが入ったのに・・・」

呆然とする伊達遥。

南利美、ゴソゴソと自らのトレーニングウェアの下を探ると、テーピングで留めておいたファッション雑誌を取り出した。腹をこれでガードして殺人ヒザ魚雷を防御したらしい。

「完璧な防御があっての完璧な勝利。これでお仕舞いね」

南利美、レフェリーの制止を振り払って、ファッション雑誌の背表紙の硬い部分で伊達の頭をスコーンと一撃!これは痛い!!

「ぐ、ぐわあああああ」

脳天直撃を食らって悶え苦しむ伊達。南利美、なりふりかまわない攻撃だ。そのまま上に乗ってカバー。

ワン、トゥ・・・ドドドドドド

カウント3ギリギリでメンドーサがカットに入った。南利美の背中に軽く蹴りを入れる。

ワーワーワーワー

「今野さん、逆カットくらい行きなさいよ」

「そ、そう言われましてもねえ・・・」

コーナーで置物状態で試合に参加しない今野役員に文句をたれる南。この隙を伊達は見逃さなかった。

「せいっ」

立ち上がって背後から不意打ちのSPZキック一撃。痛恨の一撃が南の後頭部にヒット。

「・・・・・ううっ」

バッタリと倒れこむ。前のめりに倒れこむのはダメージが大きい証拠だ。伊達、懸命にひっくり返してカバー。

ワン、トゥ・・・ドドドドドド!!

カウント3ギリギリで返した南だったが、もう目はつかれ切っていた。

「・・・これで終わり・・・」

伊達遥、距離を取った。南利美の脳裏に19年前の光景が蘇る。

―ラリアットを狙っている?

そう、19年前、SPZ初代王者決定戦のフィニッシュは伊達の普段はあまり見せないラリアットだった。

「ターッ」
伊達がダッシュ。

―なんて性格の悪いひと。同じやられ方を2度もするもんですか。

南利美、苦笑いして踏み込んで右腕を繰り出した。

パッシーン。

ラリアットの相打ち。2台のクラシックカーがリング中央で正面衝突。両者そのままぶっ倒れてしまった・・・

ドワアアアアア

―このへんに、しておきましょうか。お互い生活があるわけだし。

リングに倒れ伏しながら、南は伊達を見やる。

―そう・・ね、機会があったら続きをしましょう。

そのまま両者コーナーへ這っていって、やっとの思いでそれぞれのパートナーにタッチ。二人ともそのまま場外でうずくまってしまった。久しぶりに正面から激突してクラっときたのだろう。セコンド陣があわてて駆け寄って介抱する。

「どないせいっちゅうねん」
渋々今野役員がリングイン。なんとかして試合をクローズしないといけない。

伊達のパートナー、エル・オガワ・メンドーサが近づいてくる。

「iTe cogi!(もらった!)」

メンドーサ、スペイン語でなにやら叫んでから、グーパンチで今野役員を殴りつけた。さほどの威力はないが、58歳のおっさんをノックアウトするには充分だった。

「アーーーッ!」

断末魔の叫びを上げて倒れる今野役員。メンドーサ、そのまま踏みつけフォール。
ワン、トゥ、スリー。

ラッキー内田レフェリーがマットを3つ叩いた。
前の二人の激闘はなんだったのかと思わせるくらいあっさりと終わってしまった。14分20秒、グーパンチからの体固めで、伊達遥、メンドーサ組の勝利。

グーパンチを食らってしまった今野役員は演出だが、担架で運ばれて退場。南利美はあっけない結末にあきれてものもいえない状況だったが、一礼してつかつかと花道を引き揚げた。

リング上で勝ち名乗りを受けるメンドーサと伊達遥。「勝利者賞」のティーセットをゲットしてから引き揚げた。こうして魔のマスターズ戦は終わった。

2008年5月26日 (月)

第419回 リバイバル南(前編)

23年目(AD2031年)12月 夢のマスターズ戦 in 後楽園プラザ

そしてメインイベント、リバイバルマッチ。SPZの初期を支えた伝説の戦士が15年ぶりに直接対決!!

ワーワーワーワーワー

大歓声の中、ほわーんとしたメキシコおんがくがかかり、まず赤コーナー側花道から、伊達遥とエル・オガワ・メンドーサが入場。お揃いの革製のパンツと「HARD ROCK」などととかかれたTシャツを羽織って入場。

伊達遥37歳、既に結婚してレフェリーの仕事も非常勤で小遣い稼ぎがてらたまに手伝うくらいだが、まだまだキビキビとした動きは健在。

「Matar!」(死んでしまえっ!)

銀色の覆面を被ったメンドーサ。正体はみんな知っているのだが、いちおう謎のメキシコ人という扱い。中の人は既に結婚して一児の母なのだが、本業は公認会計士なのでそうとうストレスがたまっているらしく、堂々と人を殴れるということでマスターズ戦には常連となっている。

一方の青コーナー側、南利美のテーマ曲「SPEED TK REMIX」に乗って、南利美が単独で入場。こっちは拳法着のようなトレーニングウェア姿だ。この人は引退後何をやっているのか全てが謎。海外でバイクを走りまわしたりして放浪していたらしいが、近況はハイブリッド南も知らないらしい。

パートナーの上原はどうしたのか。ここで村越リングアナがお詫び。

「えー、ここで皆様にお詫びがございます。本日出場予定でした上原今日子さんは一昨日の秘密特訓中にぎっくり腰を発症致しまして、本日の試合出場は不可能となりました、あしからずご了承ください」

場内ええええええええの声。興行を締めるメインはどうなるのか。いくらチケット3000円とはいえ・・・しかし、次の瞬間笑い声が響いた。

「うう・・・ファンの・・・皆様に・・・申し訳ないです・・・っ」

館内スクリーンに病院のベッドでもだえ苦しむ上原の映像が流れた。マッド女医の羽山さんが介抱しているが、右手にはぶっとい注射器が。

「やっちゃいました・・・ファンの皆様・・・ごめんなさい」

どうやら打倒伊達遥に燃えるあまり特訓につい力が入って、腰をやってしまったらしい。現役時代からこの人はそうだった。練習は誰よりも熱心にやるのに本番ではからきし弱い。後楽園プラザに詰め掛けたファンの面々は笑い転げた。

「さすが上原さんね。現役はなれてもう10年以上経ってるのに特訓なんて、無理に決まってるじゃないの」

南利美がボソッと。そのあとでマイクを握った。

「上原今日子なんかいなくても、私一人で二人とも倒して見せるわ。だからパートナーは信楽焼きのタヌキで充分。今野さん」

南利美は何とパートナーを、本部席でカンコーヒーを飲んでいたSPZ今野取締役58歳を指名。

「ちょ、ちょっと、うわ、なにをする、きさまーーー」

嫌がる今野役員の首根っこをつかんで無理やり赤コーナー側エプロンに立たせる。このあたりは井上霧子が苦し紛れに書いたブック。

「そこの特等席に立ってて、すぐに終わらせて見せるわ。さあ、はじめましょうか」

そのまま4人がコールされる。憮然とする今野役員。盛り上がる観衆。

「なお、この試合の勝者には『あばしり』の提供により、アンティークティーセット1組が贈られます」

************************

青コーナー側の先発は伊達遥。SPZ初代王者決定戦の組み合わせが再現となった。しばしにらみ合う二人。

「まともにやるの、15年ぶりね」

「・・・・・・・・・・・」

「ファイッ!」

ラッキー内田レフェリーが試合開始を宣した。

まずはリング上で力比べ。伊達が押し勝ってロープブレイク。

そのあともう一度組み合う。こんどは南がグラウンドで攻勢を仕掛けてきた。引きずり倒して腕関節を取ってくる。現役時代から伊達の関節防御はヘタクソだった。そこを突くうまい作戦。
そのまま脇固めに移行。

「うわっ、い、痛い・・・っ」
さすがにこれはコーナーからメンドーサが出てきて南に軽く蹴りを入れてカット。このあたりがタッグマッチの辛いところ。

序盤戦では南がリードといったところ。

「まあ、でもお互いもう37、38歳ですか。スタミナが少し心配だと思いますよ」

DVDかいせつのビーナス麗子が冷静なコメント。

なおも右腕に狙いを定め、しつこくしつこく攻めてゆく南。現役時代さながらの動き。
一方の伊達も意地を張って防戦。流れを変えるためにパートナーにタッチしようとは思わなかった。

―リミさんは絶対バテる。そのときが勝負。

あえて冴えないファイトをして攻め疲れを待つという古典的戦法に出た伊達だが、

「待ち戦法ってわけね。じゃあこれに耐えられるかしら」

グラウンドの攻防でサッと上に乗って、現役時代は見せなかったギロチンチョーク。足もフックして跳ね返せなくしているところに南なりのアレンジが加えられている。

「ぐ、ごぼ・・・っ」

苦しみだす伊達、さすがにこれはラッキー内田レフェリーが止めた。もちろん大ダメージを与えるのが目的。

「これでお仕舞いね」

南利美、伊達を引きずり起こしてバックに回って果敢にもジャーマンを狙ったが引っこ抜けない。
「・・・・・くっ」

こんどは伊達が南のバックを取り返してジャーマンを狙う
「・・・・くっ」

それが交互に繰り返される。まさに意地の張り合い。これだけで場内は沸いた。

「ぜぇ、ぜぇ、ゼェ・・・・」

10分経過のアナウンス。しかし南利美ついにばてて来た。息が乱れてるのがはっきりと分かる。足取りが覚束ない。これはやばい。ざわつきだす場内。

「勝機、見逃すわけには行かない」

伊達遥、組み付いて殺人ヒザ魚雷!
ドスドスドスッ。

往年の必殺兵器が命中。衝撃で南の身体が一瞬浮き上がる。

倒れこむ南利美、悠然と見据える伊達。あの頃の再現だ。

「ぐっ、うあ、うわああ・・・うううっ・・・」

リング上で足をばたつかせて悶え苦しむ南利美。20年前のSPZで良く見られたシーンだ。腹を押さえて悲鳴をあげて苦悶の表情。

ドワアアアア

場内悲鳴と歓声が交錯。最後の対戦から15年を経ても、伊達の「殺人ヒザ魚雷」の破壊力は健在なのか。いや、腹筋を鍛えていた現役選手が食らってもものすごく痛い技だったのに、ろくにトレーニングをしていない普通の人が食らったら死ぬほどの大ダメージだろう。

「リミさん、もうこのあたりでよろしいかと思いますが」

コーナーに控える今野役員もここで声を出す。これ以上無理して戦って怪我でもしたら、この後の普通の生活に差し支える。

しかし南利美、転げまわりながら、一瞬だけ今野役員をにらみつけた。

ーバカいわないでよ。やれるところまではやるわ。

(後半へ続きます・・・)

2008年5月25日 (日)

第418回 吉田龍子の受難

23年目(AD2031年)12月、「夢のマスターズ戦」

休憩明けの会場、富沢レイがリングに上がり、アニメソングを2曲歌う。さすがに試合出場は「即売会が近いから」という理由で辞退したものの、休憩時間にきっちり」同人誌を売りさばいて小遣いを稼いだらしい。そのあと、

「oblivion」がかかり、SPZ10期生、ギムレット美月が登場。

第4試合:ギムレット美月 VS美鈴みどりこ(上諏訪温泉地下プロレス)

ドワーーーーーー!!

「おかえりなさい!」
「会長!!会長!!」

SPZ前選手会長の年に1度のSPZマット帰還に場内ワアアの大歓声。この選手は4年前にSPZマットを「退職」してから、いまだにフリーでインディー団体を転戦するかたわら、株式会社ギムレットオフィスを設立し社長となり、自前でプロレス会場を持つという野望に向かって進んでいる。

とはいえまだ完全に現役を引退したわけではないので、SPZの現役選手ともマスターズ連中とも当てにくいので、対戦相手は美月のコネクションで「上諏訪温泉地下プロレス」から美鈴みどりこがリングに上がった。インディーズ系のレスラーだが、基礎はしっかりできている若手の有望株選手という触れ込み。

試合はギムレット美月がグラウンドレスリングの奥深さを見せ付けるそれなりに引き締まった試合となった。あっという間に10分経過。

「これで決めます。勝率200%」

ギムレット美月、アキレス腱固めで絞り上げるが、美鈴みどりこも懸命にこらえる。

「粘りますね、ならば・・・・」

ギムレット美月、スピニングトーホールドでも狙ったのか、足を持ったが、スタミナ切れを起こしたのか動作がのろい。その隙を突いて美鈴がスモールパッケージ!あっけなくこれでカウント3が入った。勝負タイム12分22秒。あっけなくやられてしまうところは往時のままだ。それでも場内はけっこうな拍手に包まれた。

セミファイナル「深まる遺恨?」 吉田龍子 VS 渡辺智美

「ああ、酒代のためとはいえ、何であたしが・・・こんな事を・・・」

セミファイナルは革ジャンジーンズ姿の吉田龍子が登場。先週のさいたまドーム大会でライラ神威にヒドイ目にあわされて、生死の境をさまよった・・・らしいが、映画のプロモーションがかかっているので、なんとか強行出場を果たした。スタンロッド電撃を食らったばかりなので体調はいまいちだが、SPZのマスターズといえばこの人は外せない。

「まあ、あの自称銀幕スターをぶん殴ってやるか」

そして反対側の花道から同じくSPZ5期生で今はタレントの渡辺智美33歳が入場。

試合に先立ち館内スクリーンに映画の予告編が流れる。12月24日公開の「カオスの王者」という映画で、渡辺智美演ずる元レスラーが、愛する男性のために、地下格闘組織に身を投じて闘うという内容。そして渡辺智美がマイクであおる。

「でぇ、ネタバレになるんですけど、ラスボス、悪の親玉が、あの吉田龍子です!はまり役でしょう、吉田龍子が悪の権化、フフフッ、ファンの皆さん、是非映画館に足を運んでいただいて、吉田龍子が惨殺される決定的瞬間を見に・・・」

「渡辺、てめぇこのやろう、調子に乗るんじゃないぞ」

吉田龍子も怒鳴り返すが、声にいつものハリがない。そのままゴングがなった。

映画公開を意識したカード、渡辺智美との一騎打ち。裁くレフェリーはラッキー内田。5期生同士のメモリアルな一戦だが、タダで終わるはずがない。

「てや、てや、てや、てや」

試合開始早々、果敢にも頭突きを撃っていく渡辺だったが、吉田龍子社長にはきかなかった。

「効くもんか、そんなへなちょこ頭突き」

吉田龍子、グーパンチ、前蹴りで反撃。パワーはまだまだ健在。単純な殴る蹴るでもこの人がやるとサマになる。

「ううっ、痛い、いたいーーー」

もがき苦しむ渡辺智美、現役時代では実力に雲泥の差があった。

「ブザマな・・・さあ立てっ。曲がった根性をッ叩きなおしてやる」

しかし渡辺智美がここで奥の手を使った。

「えーいっ」

ディスコスーツの内ポケットから怪しい包みをとりだして、吉田龍子の顔面にぶちまけた。白い粉が飛び散る!ハードコア団体でよく見られるパウダー攻撃だ。

「ぐっ・・・目が・・・目がっ」

「くはははは、どうだ、調合した秘密の白い粉『マッドホワイト51』は。何しろ片栗粉と塩と胡椒と粉わさびと風邪薬を混ぜたあたしの特製だからねえ、ははははは

なんという卑劣な攻撃。勝ち誇る渡辺、顔面を真っ白にしてガクッと肩ひざをつく吉田社長、先週に引き続きやられ役である。

「トドメっ!スーパーシャイニングウィザード!!」

どこがスーパーなのかよく分からないが、渡辺智美、走りこんで吉田の顔面にヒザを当てた。そのあとフォール。これでカウント3が入った。吉田龍子あえなく敗北。勝負タイム4分11秒。

「これで・・・勝ったと・・・思うなよ・・・」

吉田龍子、パウダー攻撃の後遺症でまともに歩けず、フォクシー真帆に背負われて引き揚げた。この人も先週今週と受難続きである。

そしてメインイベント、リバイバルマッチ。南利美と伊達遥が久々に対決する・・・・

(しょうもない妄想作話なのですが、続きます)

2008年5月24日 (土)

第417回 井上霧子の結婚

(筆者より、本日より1週間ほどはリプレイをお休みし、完全妄想作話となります。あしからずご了承くださいませ)

********************************

23年目12月 SPZ夢のマスターズ戦

「今年は徹底的にやりましょうか」

井上霧子が怪気炎。

SPZマットは悪の魔将・ライラ神威が真っ黒に染め上げて焼け野原を呈している情況なので、SPZの裏番・井上霧子はウサ晴らしなのか、こんなときこそ楽しいショーをやりたいと考えたのか、入念にマスターズ戦の準備にとりかかった。

現役を離れて収入が激減する選手の救済イベントとファンの間ではささやかれている「夢のマスターズ戦」が実施される。はっきりいって引退した元レスラーは身体を動かしてるかどうかにもよるが、基本的には長時間の戦闘はできないし、頭からの受け身もやばいのでできないので、基本コンセプトはあくまで「ノスタルジイの追求」と「大人の悪ふざけ」である。

で、12月21日後楽園プラザ。
事前発表されたカードには、
「メインイベント 南利美 上原今日子 VS 伊達遥 エル・オガワ・メンドーサ」という1期生・3期生のタッグマッチであることを公表したのでチケットは瞬く間にはけてしまった。バルコニーの立ち見まで出た。

入場料だけで600万の収入。会場使用料の150万を引いた利益が450万。これを参戦したOG連中13人で山分けするのだから、けっこう割のいいバイトになる。ちなみに今野社長やスタッフ組、お手伝いに借り出される現役選手のギャラはわずか1万円である。

「どうやらおせち代くらいは稼げそうね」

メインに出る南利美がボソッと。しかしそのとき主催者の井上霧子は控室で悩んでいた。

「参ったわ・・・どうしたらいいのかしら」

メインに出場予定の上原今日子が急遽出場不能となった。まだ代わりの人材の手配はついていない。ブックをすぐに修正せねばならないのだが・・・

ともかく午後6時半、イベント開始。いつものSPZ興行と同じように今野役員がゴングを5回叩いた。

カン、カン、カン、カン、カン・・

「メリー・クリスマス」

リング上で井上霧子が挨拶。

「本日は、年末のお忙しい中、SPZマスターズ自主興行、ストリートファイト2031にお越しいただきましてありがとうございます」

(チケットは割安の3,000えん)

「なお、本日出場する選手は、いずれも元プロレスラーでありますので、技のかけ方は忘却しておりますし、私ども実行委員会と致しましても怪我でもされたらうまくありませんので、頭から投げ落とす攻撃は禁止と致しました。」

(場内笑い)

「なお、本日の興行は株式会社スーパースターズプロレスリングゼットは無関係であります。そこのところもお含みいただきますようお願いいたします」

(場内失笑)
***********************

「ふう、コーヒーが、美味い・・・」

今回はSPZ初代社長・今野役員はカードに名を連ねる事もなく、ゴング叩き係に専念。本部席でのんびり缶コーヒーなど飲んでいる。マスターズ戦や選手会興行の度にひどい目にあっていたが、今回はのんびり見物できそうということで安堵していた。

まずは前座から。
第1試合 フォクシー真帆VSフレイア鏡

9月に引退したばかりのフレイア鏡と、10月に引退したばかりのフォクシー真帆が14期生同士のシングル対決。引退したばかりなので両者とも現役時代と同じコスチューム。

「うふ、うふふふ、うふふ・・・」

試合はフレイア鏡ワールドがのっけから全開。腕や足を極めまくってフォクシー真帆に悲鳴をあげさせる。しかしフォクシー真帆がプッツンしたのか、引退したから何をやってもいいと考えたのか、リング下に隠しておいたチェーンで攻撃。腕に巻きつけてパンチを振り下ろす。これは痛い。

「あかんって!」

たまらず成瀬唯レフェリーが反則負けを宣した。勝負タイム9分2秒、試合後も暴れまくるフォクシー真帆だった。

続く第2試合、菊池理宇 VS ロイヤル北条

SPZのコーチ同士の一戦。12月シリーズの巡業中にお互いちょっとは練習していたらしい。

「はっ!」

現役を離れてからのブランクが短く、かつレフェリー業でリングに毎試合上がっているロイヤル北条が優位に立つが、得意のロイヤルスパイクDDTが頭から落とす技を禁じるマスターズ戦ルールに引っかかるので繰り出せない。しかし、

「うらあああっ」

見事なアバランシュホールドで菊池をたたきつけてそのまま3カウントを奪った。勝負タイム7分20秒。

そして第3試合、このあたりから怪しくなってきた。

館内スクリーンに

「若 林 太 郎 復 帰 戦」

などと表示され、氷室紫月が吹き込んだナレーションが流れる。

「10月に、SPZベルトを強奪したライラ神威、リング上で暴れ回り、その隙に乗じて井上霧子をスタンロッドで抹殺しようとしたが、若林記者が身を挺してかばった。まさに運命。」

『霧子ッ、危ない、ぬわーーーーっ!!』

スクリーンに流れるビデオ。

「レスラーでも危険なライラ神威の高圧電流を食らってしまった若林太郎、一時は生死の境をさまよったものの、持ち前の不屈の闘志で入院生活を送った。これも運命。」

病室で井上霧子のむいたと思われるリンゴをほおばる若林記者の映像。場内ざわつき、そして爆笑。

「もう一度リングサイドで記事を書きたい。あとマスターズ戦で暴れたい・・・そしてリハビリを耐え、若林太郎はついにリングへ戻ってきた!これぞ運命。」

そのあと、ロッキーのテーマが流れ、

京スポ新聞副編集長、若林太郎(プロレス記者歴28年)が、黒いロングタイツに身を包みリングイン。ぽっこリ突き出た腹がせくしぃ。

若林太郎、井上霧子、ビーナス麗子VSスターライト相羽、マッド女医羽山、森和紀(大日本テレビアナウンサー

素人が3人も混ざっている。試合は若いビーナス麗子とスターライト相羽が先発を買って出て、グラウンドで腕の取り合いベースの攻防を展開したが、5分もしないうちに両方とも疲れてしまったのでタッチ。

リング上は森アナと若林記者。なんと森アナは右手にゴルフクラブを持っている。1週間前これでライラ神威をKOしたのは記憶に新しい。

若林記者を軽くクラブで小突いて場外に転落させてから、森アナがいきなりマイクを握って、大日本テレビ年末年始特番の番宣を始めた。場内爆笑。

「皆さんこんばんは、世界のかずのりでございます。今年も大日本テレビはやらかします。もう今年は紅白なんざ目じゃありません。12月31日は夜6時から6時間ぶっ続けのシミュレーションドラマ、『1945日本軍ついにアメリカ西海岸上陸』を放映いたします、主演は今をときめくイケメンの・・・」

なんと試合中に番宣を5分ちかくやってしまう。

「森さん、長いわよ、アンタ」

井上霧子が背後から忍び寄ってローキック。番宣に夢中になっていた森アナはスっ転んで、ゴルフクラブも取り落としてしまった。

「うう・・・・」

ダウンする森アナ、井上霧子が指示。

「今よ、若林さん!」
「ウオオオオオ」

若林記者、ロープの反動を利して走り、そのまま倒れこんでボディプレス。さすがプロレス記者歴28年だけあってフォームがさまになっている。そのまま押さえ込む。森アナ、返せるはずもなくそのまま3カウントが入った。勝負タイム10分2秒。若林記者と井上霧子が笑顔で勝ち名乗り。その試合が終わると休憩・・・となるが、ここでサプライズ。

「んー、ここで皆さんに重大発表があります」

本部席に陣取ったSPZ社長吉田龍子がマイクを握る。

「んー、弊社取締役、井上霧子はさる12月1日に、京スポ新聞記者若林太郎さんと入籍されました。謹んでご報告いたします」

ええええええええ!

後楽園プラザは爆発した。元KJW世界王者、氷のヤクザキックと呼ばれた名レスラー、井上霧子51歳。引退後は新団体SPZの設立・発展に尽力した。どうしようもない酒びたりで、かつ一匹狼の性格でここまでそういう話はあまり聞こえなかったが、若林記者とは団体旗揚げ直後から苦楽をともにした付き合いだった。

関係者筋の話を総合すると、10月にライラ神威の暴行を、身を挺して若林さんがかばったことでフラグが立って、入院中の病室で話がまとまったらしい。

井上霧子がファンに挨拶。

「まあ、そういうことになりました。私も齢なので、一人で好き勝手やっていくことも疲れましたので。これからは太郎さんとタッグを組む事にしました。でもSPZは辞めません。お茶飲んで吉田さんと相談するだけでお給料がもらえますから」

そのあと所属レスラー、OG連中が井上霧子を胴上げ。3回宙に舞った。その後若林記者も胴上げ。この人もプロレスの普及、進行に力を尽くし、副編集長に出世してからもSPZの担当だけは降りず、ほとんど内輪同然の人間だった。しかし最後、3度目に宙に舞ったあとは誰も受け止めず、お約束で若林記者マットに落ちた。でもしっかり受け身を取っているあたりただものではない。

そのあとSPZ選手会を代表して、氷室紫月から両人に花束の贈呈。
「これも、運命・・・」

「ありがとうね。」

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「おめでとう!!霧子さん!!」「お幸せに!!」
大歓声、満場の拍手の中、二人は肩を並べて花道を引き揚げた。

2008年5月23日 (金)

第416回 SPZ永久チャンピオンの誕生

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SPZ世界選手権(60分1本勝負)

ライラ神威(26分37秒、トムラウシからの片エビ固め)武藤めぐみ

第64代王者が初防衛に成功

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時に西暦2031年、師走決戦、スノーエンジェルシリーズ最終戦さいたまドームで、極悪王者のライラ神威(17期)が団体最強の武藤めぐみ(18期)を破ってしまう波乱?がががが。

場内に流れるライラ神威のテーマ曲「COLLECTIVE」、念のためライラ神威、セコンドのコンバット斉藤に自らの勝利を確認。

「3つ、入った・・な?」

「はい。入りました」

ーようやく、ようやく、あの武藤めぐみに大舞台で勝った。

「ウオオッ!」

この瞬間、ライラ神威は思わず咆哮。武藤が団体最強になってからようやく勝った。しかしすぐ極悪ヒールの顔に戻った。

武藤圧勝→はいはいベルト奪還 というブックを描いていた吉田龍子・井上霧子は唖然。これでライラ神威がベルトを持って年を越す破目になってしまった・・・

「少しヤバイかもしれないわよ~」

羽山リングドクターがリングに駆け上がって、武藤めぐみの状態を確認。意識はあるようだがまだ起き上がれない。頭をしたたかに打っていていると判断したので、セコンド陣に早く医務室へ運んでくださいと指示した。

「・・・・・・・・・・・・・・・・・」

武藤めぐみ、ぼう然とした表情。100%勝てると思っていた相手だけにショック。成瀬唯の肩につかまりながら引き揚げた。試合後もノーコメントで会場を後にした。

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その頃本部席では。

「や、焼き鳥でも喰いに行きましょうか、井上さん」

「そ、そうですね」

このあと立会人の京スポ新聞・若林記者はライラ神威の襲撃を恐れて、本部席のSPZベルトをセコンドのREKIに手渡すや、ゼロハリバートンのかばんを手にして、井上霧子今野役員を連れ立ってそそくさと花道を逃げ去ってしまった。花道をダダダダッと全力疾走する3人に館内爆笑。

放送席は放送席で重苦しい雰囲気に包まれた。

「か、かいせつの吉田さん、ライラ選手が勝ってしまいましたねえ・・・」

大日本テレビ・森アナウンサーも驚いた口調。あの天才姫・武藤めぐみがライラ神威に正面からやって敗れてしまうとは・・・

あーうー、うーあー。(吉田龍子社長、問題選手の防衛に放心状態)」

***********************

「ふーー」

防衛を果たしたライラ神威、ペットボトルの水を飲んで一息、試合が終わってもこの選手の「仕事」は終わらない。ヒールってのは因果な商売ダナと思いながら、REKIにマイクをもってこいと指示。

そして、リング上ではライラ神威のオンステージ。マイクを握るや無茶苦茶な事を云う。

アーオラ、自称天才武藤めぐみなんてこの程度だ!これからはだな、ライラ神威がSPZの永久チャンピオンだ、分かったかオラ、エー!だからベルトはこうしてやる!」

ばいりばりばりっばりばり!

なんと自らを「SPZ永久チャンピオン」と名乗り(そんな称号あるわけがない)、あげくの果てに、なんとチェーンソーでチャンピオンベルトを真っ二つに切り裂くという暴挙に出たライラ神威。館内悲鳴と怒号。いくら悪役といえどもやっていい事と悪い事がある。

*******************

控室ではマッキー上戸がブチ切れた。団体の象徴ともいえるチャンピオンベルトを切断するとはなんてやつだ。

「あのクソバカ野郎!!」

しかし氷室紫月は冷静にモニターを見ていた。

「これも運命。よく見て、あのベルトは偽物」

「ん?え、ああ・・・・」

確かによく見るとベルトはボロくない。形はよく似ているが、作成時期はごく最近と推定された。

**********************

放送席では、SPZベルトの価値を誰よりも知る元女王が怒りに震えていた。

「はー、はー、なんてことしくさるんだ・・・」

テレビかいせつの吉田龍子が怒りにぶるぶる震える。

いくら試合中にすり替えたレプリカベルトとあっても(本物は若林さんが逃げた際に持ち去った)伝統ある女王の座、限られた者だけが巻く事のできるベルトを真っ二つにされたのを目の当たりにした吉田龍子。あのベルトにはのべ60人以上の血と汗と涙がしみこんでいるというのに・・・

「もう我慢ならん、ライラ神威、ええかげんにせえよ!」

プッツンした吉田龍子社長、放送席を飛び越えてリングイン。

「黙れ、オバハン!」

なんとライラ神威、吉田龍子を右ストレートで殴りつけるやスーツ姿の吉田龍子を担ぎ上げてパワーボム。吉田龍子頭からマットへ!

そしてスタンロッド攻撃。10年前に引退した人間に対して、そして自分の勤める会社の社長に対してまるで容赦なし!!

ばちばちばちばちばちっ!

「ぬわああああっ!」

吉田龍子あえなく感電。マットにくすれ落ちる。いったい何しに出てきたのか。

「このデクノボウがぁ!!アタシがいまからSPZの社長だ!氏ねゴルァアアアアアアア」

なんとライラ神威、ごついコンバットナイフを取り出すと、動けない吉田龍子狙って突き刺そうとするーーー!

わあああああああああ

場内悲鳴。SPZ社長吉田龍子、映画封切りを前に殺害されてしまうのか。しかし吉田龍子のピンチに思いもよらぬ救いの手が。

「チャーシューメーン!」

なんと大日本テレビアナウンサー、世界のかずのりこと森和紀さんがリングに上がり、背後から近づいてゴルフクラブ(護身用にわざわざ持ってきたらしい・・・)でライラ神威の頭を一撃。みごとなスゥイング。

「森、てめぇ・・・ぐふっ!」

当たり所が悪かったのか、試合のダメージが残っていたからか、ライラ神威、たまらずマットに崩れ落ちた。

これでSPZ史上最悪の大騒動は終わった。

そのまま担架で運ばれるライラ神威と吉田龍子。無茶苦茶な結末だが、館内はカズノリコールに包まれた。

2031年年末、傍若無人やりたい放題の極悪チャンピオン、ライラ神威。なんと自ら「永久チャンピオン」を名乗る無法、無道。いったいSPZはどうなってしまうのかっ?

2008年5月22日 (木)

第415回 光と闇の頂上決戦(6)

ここまでのあらすじ

横浜のお嬢様プロレス団体、SPZは旗揚げ23年目、日本有数のプロレス団体として@その名を全国に轟かせたが、団体はじまって以来の本格派ヒールのライラ神威がノエル白石を破りSPZ世界王座を奪取。会社イメージを考えたSPZマッチメイク委員会は、初防衛戦の相手に団体最強の武藤めぐみを推挙。

そして2031年12月15日、さいたまドームで光と闇の頂上決戦。試合はライラ神威が思いのほかラフファイトを薄めにして正面切って武藤めぐみとやりあう展開。いい勝負となった。意外な展開にさいたまドームに詰め掛けたファンは固唾を呑んだ。

*************************

両者ダウンしたまま、25分経過のアナウンスが流れた。

25分経過、25分経過・・・

ついにこの試合25分が経過。ビッグマッチにふさわしい好勝負となった。

―この試合が終わったら、新得に、帰ろう。

 トムラウシの・・・風、空・・・、アタシに・・・力を・・・・

ライラ神威、ふらつきながらも先に立ち上がった。そして頭を打っていてまだ起き上がれない武藤を引きずり起こして担ぎ上げた。そして腕をクラッチさせてデスバレーの要領で頭から落とした。

バァンッ!

ライラ神威のキラームーブ、トムラウシがこの土壇場で炸裂。武藤めぐみ、頭からマットへ。場内は悲鳴が巻き起こる。ライラ神威の必殺技といえばトムラウシとカムイエクウチカウシの2枚看板である。

トムラウシとはアイヌ語で「お花の多いところ」の意味である。SPZ最強の武藤めぐみ、このままお花畑に沈んでしまうのか!?

バッタリとマットに倒れこむ武藤、目の焦点が合ってない。ライラ神威、懸命にひっくり返してカバー。

「武藤はん、返せっ」

セコンドの成瀬唯が叫ぶ。

ワン、トゥ・・・・ドドドドドドド!!

意識が砕けそうな状況下、レスラーの本能だけでカウント2.8で返す武藤めぐみ。場内ざわつきだす。これは大番狂わせか。ほとんどのファンが武藤めぐみの王座奪還は確定事項と見ていたのである。

「あーっと、武藤めぐみかろうじて返した。意識はあるのか、気を確かに持て、武藤めぐみこれはいけません!!」

実況の森アナの声も裏返る。信じられない光景が目の前で起ころうとしていた。

「いかんですね」

かいせつの吉田龍子がぼそりとコメント。

決め技、そしてフォールを返されたライラ神威だが、まだまだ気持ちは切れていなかった。

ー返されたら、なんぼでも落とす。それだけだ。

「うーあははははははは!!!」

ライラ神威、もう一度立ち上がり、客席に見得を切って、そして、

故郷の山の名を叫んだ。

「トムラウシッ!!」

ライラ神威、半失神状態の武藤をもう一度担ぎ上げた。そしてトムラウシでもう一度頭からマットへ落とした!!

「やばいで!!」

セコンドの成瀬唯が慄然とした表情。武藤めぐみのあんな落ち方は新人の頃以来だ。

ライラ神威、力なく倒れこんだ武藤の上に覆いかぶさる!!

ロイヤル北条の右手がマットを叩く!!

ワン、トゥ、

「武藤はん、返せーーーーーーーー」

スリー。

マットが3つ叩かれ、今野役員が試合終了のゴングを木槌でたたき、ライラ神威のテーマ「Collective」の音楽ファイルを起動した。

ええええええええええええええええええええええええええ!

ドドドドドドドドドドドドドドド!!

「26分37秒、トムラウシからの体固めでライラ神威の勝ち」

村越リングアナが試合結果をコール。勝負タイム26分37秒、大悪人・ライラ神威が武藤に勝ってしまった。大方の予想を裏切る結果にさいたまドームは爆発した。
セコンドのコンバット斉藤とREKIがリングに上がってライラ神威に駆け寄る。

ライラ神威、上体を起こしてセコンドのコンバット斉藤に確認。

「3つ、入った・・な?」

「はい。・・・入りました」

コンバット斉藤もこの試合結果はちょっと胸に響いた。DFの大将、ライラ神威にどう考えても分が悪いと思っていたのだが、諦めずベストをつくしたら大方の予想を覆して勝ってしまった。

激闘を制したライラ神威、内心は泣きたいくらい嬉しかった。

ようやく、ようやく、あの武藤めぐみに大舞台で勝った。

「ウオオッ!」

この瞬間、ライラ神威は思わず咆哮。しかしすぐにヒールの顔に戻った。

(次回、この世の地獄・・・か)

2008年5月21日 (水)

第414回 光と闇の頂上決戦(5)

23年目12月 スノーエンジェルシリーズ最終戦さいたまドーム大会、メインイベントはSPZ世界選手権、ライラ神威VS武藤めぐみ。光と闇の頂上決戦はいよいよ大詰め。

*******************************

頂上決戦は20分が経過。両者繰り出す技の数こそ少ないものの、気合いと情念のこもったいい勝負となり、さいたまドームは盛り上がってきた。

「ぐわああ・・・」

武藤めぐみの鋭いジャンピングニーアタックを食らったライラ神威、足をばたつかせながらもがき苦しむ。

「か、かいせつの吉田さん・・・これは・・・」

「うーん、アゴにでも入っちゃったんでしょうかねえ、まあ武藤選手の技は一つ一つがキレがあるんで、当たり所が悪かったら動けなくなっちゃうってことがよくあるんですよ」

「なるほど、ただ技を繰り出しているという事ではないわけですね」

「そうです。まあ武藤選手がここからどう挽回するかが見ものですね」

「さあ、立てっ」

武藤めぐみ、ライラの首根っこをつかんでムリヤリ引きずり起こす。組みとめるやいなやフロントスープレックス!

どおんっ!

「ウグ・・・・・」

ライラ神威、動きがばったり止まった。それほどさっきのジャンピングニーが聞いたのか。

「ウアーッ!!」

武藤めぐみ、気合を入れてからライラ神威をつかんで引きずり起こして次の技を仕掛けようとしたが、

ここでライラ神威がやられたフリの芝居をやめて、

「ばかめっ、おらぁあああ」

鋭い踏み込みで武藤のバックに回り、

ズドォンっ。

高角度のバックドロップ。武藤めぐみ頭からマットへ。

いくらライラ神威のバックドロップがうまくても、武藤ほどの実力を持つ選手なら受けきってしまうだろうと考えたライラ神威、油断させておいて虚を突いて仕掛けることで、相手の受け身を取りづらくしてダメージを倍加させるという古典的、でも凄く効果的な手を使った。

両者ダウン。ライラは疲れているだけ、武藤は本当に頭を打って苦しい表情。

「・・・・・・・・」

武藤めぐみ、頭の中で火花が散った。動けない。場内は武藤コールに包まれた。

武藤!武藤!武藤!武藤!

「これは・・・いかんですね」

かいせつの吉田社長がぼそりと。いくら武藤でも開始早々から頭をこうも集中攻撃されてはぶっ壊れてしまうだろう。

「キェキェキェ、いくぞおらああああ」

ライラ神威、客席にアピールしてから武藤めぐみを引きずり起こして組み付いて大技を狙ったのだが、そこにスキがあった。

「うわああああああっ」

武藤めぐみ、一瞬の隙を突いて飛びつき腕ひしぎ逆十字!

ウオオオオオオオオ!!

虚を突かれたライラ神威、左腕が伸びてゆく。

普段はあまり使わない不慣れな技で、あそこまで攻め込まれていて、疲れていても勝負を捨てず逆転の関節技を仕掛けてくる。武藤めぐみは本当の天才かもしれない。

「うああああああっ」

武藤めぐみ、裂帛の気合をこめて、鬼神の表情で絞り上げる。たちまちのうちに攻守逆転!

「ギブアップか?ギブアップか?」

ロイヤル北条レフェリーがあわてた表情で意思確認。

―折れてもギブアップなんかするかよ。こんなアホ相手に。

ライラ神威、鋭い眼光でロイヤル北条レフェリーをにらみ返す。

はっ

ここで武藤めぐみ、苦しさに耐えかね息を吐いた。

ライラ神威、この隙に腕に力をこめて筋が伸びきらないようにしつつ、懸命に右足をサードロープに伸ばした。

あと30センチ・・・20センチ・・・10センチ・・・
なんとかライラ神威の足がサードロープにかかった。

「ブレイクッ」

ロイヤル北条レフェリーがブレイクを命ずるが、武藤めぐみ無視して絞り上げる!!

ええええええ!!

ここまで熱くなった武藤めぐみはあまり記憶がない。

「あーもう、はなせっつの!」

ロイヤル北条レフェリーが入り込んで実力行使。ムリヤリ引き剥がす。この試合、裁くレフェリーも大変である。汗をびっしょりかいている。

両者ダウン。ライラ神威は左肘の痛みに苦しむ。武藤ももうグロッキー状態。先に立ち上がるのはどっちか。

武藤、武藤、武藤、武藤!!

ライラ!ライラ!ライラ!ライラ!

なんと完全悪役のはずのライラ神威にも声援が飛んだ。普段は悪事一辺倒の彼女がどうして今日はここまで奮戦するのか、理解した半数くらいのファンはライラ神威に声援を送った。

「・・・・・・・・・・・・」

セコンドのコンバット斉藤も瞠目。普段は悪い事ばかりしているライラ神威だが、ここ一番で武藤めぐみに負けまい負けまいと徹底抗戦。実力では圧倒的に不利でも、懸命に試合を作るライラ神威、その気魄に胸を打たれた。

25分経過、25分経過・・・

村越リングアナが25分経過を告げる。ついにこの試合25分が経過。ビッグマッチのメインイベントにふさわしい好勝負となった。

(続きます)

2008年5月20日 (火)

第413回 光と闇の頂上決戦(4)

前回までのあらすじ

時に西暦2031年、SPZ始まって以来のヒール王者が誕生してしまった。悪逆非道のライラ神威がSPZマットを蹂躙。傍若無人な振る舞いに怒ったSPZフロント陣(吉田龍子井上霧子)は、初防衛戦の相手に団体最強の武藤めぐみを起用して、ライラ神威のベルトを奪いにかかった。そして12月さいたまドームメインイベント。光と闇の頂上決戦、序盤から中盤にかけては両者互角の展開。

*************************

頂上決戦は15分が経過。

「ケケケケケ」

ライラ神威、先ほどのスクラップバスターで武藤が腰を打ったのを見るや、足を取って逆片エビ固めに捕らえる。

「うっ・・・く・・・」

武藤の表情が苦しい。

「か、かいせつの吉田さん・・・」

「んー、きょうのライラ選手は冷静ですね。逆片エビ固めでつなごうという試合運びなんて普段やりませんからね、きっちり作戦を立ててきてそれが功を奏してますね」

「うあーっ」

なんとか腕を突いてはいつくばってロープ近くまで逃げようとした武藤だったが、

「ケケケケケ」

ライラ神威、武藤の足をつかんだまま腰を上げて、そのままリング中央へ移動。そしてもう一度逆片エビで絞り上げる。

「うぐぐ・・・っ」

ここまでじわじわと攻めるライラ神威というのも珍しい。それだけこの一戦に賭けているのか。場内は武藤コールに包まれた。

2分ほどこらえて、武藤めぐみ再び匍匐前進。懸命に前進して、右腕をサードロープにかけた。

パチパチパチパチ・・・

拍手が巻き起こる。

ぜぇ、ゼェ、ゼェ・・・

武藤めぐみは戸惑っていた。

ーきょうのライラさん、別人みたいだ・・・

地方興行でひんぱんに6人タッグで当たるときのラフファイトや悪いこと一辺倒のライラ神威ではない。きっちりとした試合を作っていて自分のペースに持ち込めない。

このあとリング中央で再び殴り合い。

バシッ!

武藤めぐみがエルボー、ライラ神威も張り手でお返し。そしてライラ神威が蹴り。これで武藤が一瞬怯んだ。

「ウオアアアアア」

すばやく組み付いて両腕をフック。そして持ち上げた、

ドオン。
タイガードライバー炸裂。そのままフォール。

ワン、トゥ・・・
武藤めぐみ、カウント2で返したが頭を抱えている。なかなか起き上がれない。ざわつく館内。

「ウオアアアーー」

ライラ神威、武藤を引きずり起こして組み付いて河津落とし。普段はまず見せない渋い技をつなぎで出してくる。

ワン、トゥ・・・・

武藤めぐみ、これもカウント2で返す。

あの武藤めぐみが攻めあぐねる。あまり見られないシーンだ。9月のN白石戦と似たようなパターンになってきた。

ライラ神威、なおも武藤を引きずり起こして、次の技を狙ったが、武藤が即座にロープに振り返して、ローリングソバットを叩き込んだ。

「ぐえっ・・・」

鋭いソバットを食らってしまい、倒れこむライラ神威。

しかしライラ神威、そのままリング上を転がって場外へエスケープ。武藤の波状攻撃を許さない。

―誘って、いるの・・・?

武藤、場外へ追撃すべきかどうか考えあぐねる。ライラ神威は場外でうずくまって息を整える。

セコンドのREKIに耳打ち。

「まだ大丈夫だ。今日こそアイツをぶっ殺してやるよ」

―戻ってきたときを狙おう。

そして20分経過のアナウンス。王者ライラ神威、ここまでは武藤にペースを握らせずうまい立ち回り。

・・・ふーっ・・・・
ライラ神威、息をついてからリング内に戻った、そこへ武藤が突進してきて、

「はっ!」
ジャンピングニー炸裂。

「うあっ」
もがき苦しむライラ。足をばたつかせる。当たり所が悪かったのか。

*********************

そのころ本部席では。

「わ、若林さん・・・?」

井上霧子取締役が怪訝な顔をする。

京スポ新聞、若林記者が、足元においていたゼロハリのスーツケースから、1本のチャンピオンベルト~形状はSPZ世界王者のベルトそっくりだが、本物のほうが20年近く使っているためかボロい~を取り出して、本部席にある本物のSPZベルトとすり替えた。そして本物のチャンピオンベルトは若林記者のゼロハリの中にしまいこんだ。

「ちょっと、念のために・・・ね。」

若林記者、ゼロハリを閉じると何食わぬ顔でリングへ視線を戻した。

(ヤマ場なので、続きます)

2008年5月19日 (月)

第412回 光と闇の頂上決戦(3)

23年目12月 光と闇の最終決戦(3)

12月シリーズ最終戦のさいたまドーム大会、メインイベントはSPZ戦、王者ライラ神威に対するは最強の挑戦者、武藤めぐみ。

ライラ神威と武藤めぐみの一騎打ち、10分過ぎに場外戦になった。

―くっくっく、場外はアタシの領域だ!!

まず場外で息を整える武藤にダッシュしていって

「うわあっ!」
タックル気味の体当たりで転倒させる。

そのあとライラ神威、本部席へ取って返して、テレビ中継用機材の入っていたジュラルミンケースをうばいとるや、

「オラーーーー」
倒れている武藤めぐみにほうり投げた。

ごす。

武藤めぐみ、顔面への当たりを腕でふせいだがかなり辛い一撃。

「このおっ・・・・」

怒った武藤、立ち上がってライラに向かっていくが、ライラ神威、本部席の今野役員からゴング叩き用の木槌をうばいとるや、
武藤の横に回って、

ばこっ!

木槌で武藤の頭を殴った。

「考えたな・・・頭を狙ってる・・・」

放送席の吉田龍子社長がつぶやく。武藤めぐみの得意技はリング上を縦横無尽に駆ける飛び技攻勢。しかし頭を狙って攻撃しておけば突進力が鈍る。そこまで計算した上の攻撃なのか。

なおも木槌で殴りつけようとするライラ神威だったが、さすがにこれはロイヤル北条レフェリーがリング下まで降りてきて阻止。

「ライラ、木槌を離せ!!」

「やなこった。」
ばこばこばこばこ。
武藤めぐみを殴る殴る殴る。

ロイヤル北条レフェリー、またも実力行使に出て木槌を力ずくでもぎ取った。しかし狡猾なライラ神威、この流れでうまくロイヤル北条を突き飛ばした。

そのあとうずくまっている武藤めぐみの腕を捕らえて、

ガシャアンッ!!
フェンスに振る。武藤めぐみ、背中で受ける。そこへライラ神威が歩み寄って、うずくまる武藤めぐみのノド元へシューズのつま先を押し当てた。

「ヒャーハハハハハハハ!!」

なんというラフ殺法。

「うっ、ぐぐ・・・」
そのあとライラ神威、再度武藤を捕らえてもう一度フェンスに振ろうとしたが、これは武藤がうまく相手の力を利用して体を入れ替えた。

ガシャアンッ!
こんどはライラ神威がフェンスに叩きつけられる。

「グググ・・・」
よろめきながら立ち上がるライラ神威、ここをチャンスと見た武藤、エプロンに上がってエプロンサイドからのキック攻撃を狙ったが、

「REKI,代わりに受けろっ!!」

「はっ」

なんとセコンドのREKIがライラ神威の前に立ちはだかり、武藤のダイビングキックを身代わりで受けた。
場外マットに倒れこむ武藤とREKI,そこへライラがイスを手に近寄って、

「アホウが」

イスを武藤の頭にたたきつけた。そのあと場外戦はこのくらいダナと判断したライラ神威、いち早くリングに戻って息を整えた。

・・・フーッ、フーッ・・・

ーここまでは大きなミステイクをせずに試合を作れている。ここからどうやってあいつのペースに乗らないかだ・・・

「フォーティーン・・・フィフティーン」

ロイヤル北条レフェリーがようやく立ち上がって場外カウントを取る。武藤めぐみ、やおら起き上がって、頭を気にしながらリングに戻った。沸き起こる拍手。

しかしここでライラ神威が仕掛けた。戻ってくる武藤に組み付いて、ロープに振った。そして、戻ってくるところを掬い上げた。

バァンッ!!

パワーのこもったスクラップバスター。ひときわ大きな音が響く。武藤めぐみ、これでしたたかに腰を打ってしまった。

「うっ・・・・・・」
一瞬顔をゆがめ、腰に手をやる武藤めぐみ。そこを見逃すライラ神威ではない。

「15分経過、15分経過」
ここで15分経過のアナウンス、ハイスパートレスリングが身上の武藤めぐみ、そろそろ仕掛けてもいい頃合いだが、今日のライラ神威は隙を見せない闘いができている。

「か、かいせつの吉田さん・・・」

意外な展開に森アナウンサーも驚きを隠せない。

「んー、まあライラ選手が考えて闘ってますね。ああ見えてけっこう頭のいい選手ですから」

2008年5月18日 (日)

第411回 光と闇の頂上決戦(2)

前回までのあらすじ、

横浜のお嬢様プロレス団体「スーパースターズプロレスリング・ゼット」、史上初のヒール王者となったSPZ17期生、ライラ神威。悪ノリしてリング上で悪行パフォーマンスを繰り広げる。当然快く思わないSPZマッチマイク委員会は、初防衛戦の相手に団体最強の選手、SPZ18期生、武藤めぐみをぶつける情け容赦ないマッチメイクを行った。そしてさいたまドーム、光と闇の頂上決戦のゴングが鳴った。

****************************

「5分経過、5分経過」

ーアイツとやる場合は、ガンガン攻めるしかない。後手に回ったらまず勝てない。

ライラ神威、起き上がって武藤めぐみと組み合う・・・ふりをしてから、いきなりグーパンチ。

「・・・・・」

これで武藤めぐみ、ムッとしたのか、エルボーでお返し。

バシッ!

しかしライラ神威、臆せず右のグーパンチ。げんこつで殴るのは反則なのでロイヤル北条レフェリーが注意する。しかしライラ神威、一喝。

「ウッセーバカヤローテメー」

大先輩に暴言を吐いてからなおもグーパンチ、そして水平チョップ。グーパンチ水平チョップグーパンチ水平チョップ。あっという間に武藤をコーナーに追い詰め、

「きぇーーーーー!!」

武藤めぐみに詰め寄って首しめ!!武藤めぐみの顔が苦痛にゆがむ。

「いいかげんにしろ反則負けにするぞ!!」

ロイヤル北条が止めに入る。

「るせえ、やれるもんならやって見んかいボケ」

ドーム大会のメイン、営業面を考えると反則裁定はありえない。そこまで読んだライラ神威の首しめ。武藤めぐみの顔がどんどん赤くなってゆく!!しかしここでロイヤル北条が実力行使。ムリヤリ間に割って入ってライラ神威を突き飛ばした。

「ぐ・・・げほっ・・・・」

首しめ攻撃でペースをかき乱された武藤めぐみ、しかしこんな事をされて黙っているわけには行かない。

「ウアーーーッ」

気合いとともにライラとの間合いをつめてエルボー、エルボー、またエルボー。

「コノヤロウ!!」

ライラ神威、これでカチンときたのか強烈な右からのはり手。

バチーン。

鋭い音が響く。リングサイドの観客はどよめき。

しかし武藤めぐみもはり手でお返し。

バチーン。

「お前の張り手なんザ効くかアアア」

バチーン。

大きくよろめいた武藤だったが、張り返す。

バチーン。

「お前なんか、消えてなくなれーーーっ!!」

バチーン!。

ライラ神威、ファイトに私怨がこもっている。1期後輩で入門してきた武藤めぐみ、天才だの超新星だの周囲から言われ、ライラ神威、内心は穏やかならぬものがあった。その積年の恨みつらみを吐きつけるかのようなはり手をたたきこむ。

「ふざけないで!!」

バチーン!

武藤めぐみ、意地で張り返す。

「ウ、アーーーーーーッ!!」

ライラ神威、渾身のはり手、

バチーン!!

SPZの試合ではあまり見られないはり手の応酬に場内どよめいた。

ぐらつく武藤、そこへ踏み込んでいったライラ神威、

「オルァーーー!!」

力まかせのボディスラム。

「・・・・くっ」

武藤めぐみ、何とか起き上がってエルボーで反撃。しかしライラ神威、2,3発受けてから、

「オルァアアアアー」

もう一度、力まかせのボディスラム。

武藤めぐみ、ひとまず態勢を立て直すために場外にエスケープ。こんどはライラ神威も後を追った。

*************************

「かいせつの吉田さん・・・・・ここまでを見てどうでしょうか」

「んー、まだ出だしは互角ですね。ライラ選手がまだうまく自分のペースで闘っていますね。どちらが先に大技を仕掛けてくるかがポイントだと思います」

「10分経過、10分経過」

本部席の村越リングアナが10分経過を告げる。

(続きます)

2008年5月17日 (土)

第410回 光と闇の頂上決戦(1)

前回までのあらすじ

横浜のお嬢様プロレス団体「スーパースターズプロレスリングゼット」はじまって以来の悪役レスラー・ライラ神威はついにノエル白石を下し、団体の頂点、SPZ世界選手権のベルトを巻くに至った。

しかし、営業面への影響および団体イメージの低下を恐れた社長吉田龍子・取締役井上霧子ら「マッチメイク委員会」は、すぐさま団体最強の武藤めぐみを挑戦者として推挙し、ライラ神威のベルトを取り戻しにかかった。

そして、2031年12月15日、埼玉ドーム、光と闇の頂上決戦!!!

*****************************

セミが終わるやいなやさいたまドームに詰め掛けたファンはメインの試合への期待感からか、大歓声大声援。

まず「アメジスト」に乗って武藤めぐみが花道を歩いてリングへ。9月にノエル白石に不覚を喫して以来、3ヶ月ぶりにベルト奪還のチャンスがめぐってきた。実力なら団体最強。SPZベルト連続防衛15回の歴代1位タイ記録も持っている。若手時代はともかく、ここ3年ほどは1期先輩のライラ神威には全て勝っている。

「この花道、勝って戻って見せる!」

いつも通りクールな表情でリングイン。

そのあと、ライラ神威の番、しかしなかなか入場しない。そして・・

ドオオオオオ!!

花道に高そうなオープンカーが姿を現した。いつもと違って、エルガーの「威風堂々」がかかる中、ベルトを掲げたライラ神威が後部座席に立ってリングへ進む。オープンカーを運転しているのは今野役員。助手席にはREKIが「DF」の黒い旗を掲げている。

―これをやるのが、夢だった・・・

エプロンサイドでオープンカーが止まり、第64代SPZ王者・ライラ神威がリングイン。

ライラ神威のセコンドにはREKIとコンバット斉藤、武藤めぐみのセコンドには成瀬唯がついた。

続いて認定証の読み上げ。

立会人の京スポ新聞若林記者(50)が井上霧子に支えられてリングに上がる。やらせなのだが、まだ頭に包帯を巻いている。10月にこの選手、ライラ神威のスタンロッドを食らって入院に追い込まれたのである。

若林記者、認定証の文字を読まずに、こう一言。

「ふたりの生き様を見せてください。2031年12月15日、若林太郎。」

続いてチャンピオンベルトの返還。ライラ神威が若林記者にベルトを返還。若林記者がベルトを四方に掲げるお決まりのセレモニー。

*******************************

そのあと村越リングアナが両者をコール。

「本日のメインイベント、SPZ世界選手権 60分1本勝負を行います!」

ドワアアアア

「青コーナー、挑戦者、静岡県本川根町出身、武藤ー、めぐーみー!!」

「赤コーナー、SPZ世界選手権者 北海道新得町出身、らいらー、かむーいー!!」

ドドドドドドド

「レフェリー、ロイヤル北条」

ロイヤル北条がレフェリーチェックに入ろうとしたところを、ライラ神威がいきなり武藤に襲い掛かってきた。

「ウルァアアアアアアアア!!」

いきなり右のパンチ。武藤めぐみの側頭部を思い切り殴りつけた。不意打ちに片ひざを突く武藤、なおもショートレンジで殴りかかってゆくライラ神威。やむを得ずロイヤル北条レフェリーは本部席へゴング要請のサインを送った。

カンッ

本部席の今野役員がここでゴングを鳴らした。

「氏ね、オラアアアアアアアア」

なおもボコボコと殴っていくライラ神威、当然オープンフィンガーグローブの中には何か入っているに違いない。

歓声と怒号が渦巻くさいたまドーム、光と闇の頂上決戦がいま幕を開けた。

「さあいよいよ始まりましたSPZタイトルマッチ、解説はSPZの社長、吉田龍子さんにお越しいただきました。さて、吉田さん、この試合のポイントは」

実況はいつも通り世界のかずのりこと森和紀アナ、かいせつは吉田龍子。

「んー、まあ武藤選手が自分のプロレスをきっちりやれれば結果はついてくると思いますよ。逆にライラ選手はあわてさせる事ですね。悪い事でも何でもやって」

_____________________________

頭をぶん殴られて先手をとられた武藤めぐみ、ひとまず場外へエスケープ。しかしライラ神威、まだ追っては来ない。場外でうずくまる武藤めぐみを指さして挑発。

「ヘイヘイどうしたこのクソ天才姫!」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

武藤めぐみ、リングの回りを一周して呼吸を整え、サッとリングイン。

しばしにらみ合ったあと、リング中央で組み合った。武藤めぐみが押し勝ち、ロープ際へクリーンにブレイク・・・・その隙を突いたライラ神威、

―先手を取られたらまず勝てない。

武藤まぐみの強さはよく分かっているライラ神威、早くも凶器入りヘッドバットで先手。覆面の中には絶対何かが入っている。

ごつ、ごつ、ごつ!!!

「ぐうっ・・・・」

リング上をのた打ち回りながら苦しむ武藤めぐみ、ライラ神威、追ってきてストンピングを降らせてから、上に乗ってスリーパーで攻めようとする。しかし武藤めぐみもしっかりガード、しばらくそのままグランドの攻防となった・・・

なんとか武藤めぐみロープブレイク。

そのあと両者立ち上がって組み付く。こんどは武藤めぐみがいい差し手、ライラ神威をロープに振って、かえって来た所をめがけて跳躍。

「はっ!」

お手本どおりのドロップキックで手数を返す。

「うおっ!」

ハデに吹っ飛ぶライラ神威。

「5分経過、5分経過・・・」

ここで5分経過のアナウンス。序盤は互角の展開。

*********************

(長くなるので、続きます)

2008年5月16日 (金)

第409回 さいたま決戦 光VS闇

23年目12月
「スノーエンジェルシリーズ」開幕。ラッキー内田が右太もも負傷のため欠場。

最終戦のさいたまドーム、ライラ神威の初防衛戦の相手をどうするかというマッチメイク会議、満場一致で武藤めぐみが挑戦者に推挙された。まあ、まずエースの武藤めぐみが勝ってベルトを奪還するだろう。それを期待してのマッチメイク。

「あんなのにベルトを持たせたまま越年させるわけには行きません」

井上霧子が厳しい表情で記者会見。

10月の王座奪取時の大乱闘はSPZフロントを驚愕させた。井上霧子もあわや大怪我というめにあわされ、代わりにマスコミ記者さんが身代わりで負傷となってしまった。あわれスタンロッドの直撃を受けた京スポ新聞副編集長・若林太郎氏(50)は入院に追い込まれ、あとから吉田井上今野の3人で京スポ新聞社へ謝罪に出向かねばならなかった。

*************************

初戦札幌どさんこドーム大会メインはTWWA選手権。海外団体のタイトルマッチをやって会場を埋めようというせこいマッチメイク。

今回のTWWA王者メガライトのかませ犬はイージス中森。

「勝つつもりでやります。メガライト選手に勝てなければ武藤さんには勝てませんから」

しかしパワーに勝るメガライトが優勢。イージス中森もストレッチプラムを繰り出すなど大いに健闘したが、

「これで終わりだーー!」

ベリー・トゥ・バック炸裂。王者メガライトが防衛に成功。勝負タイム22分41秒。

「くっ・・・また・・・結果を出せなかった・・・っ」

20期生のイージス中森、トップグループまであと一息なのだが・・・

*************************

第4戦大阪大会メインはあばしりタッグ戦。王者REKI,コンバット斉藤に挑むのはハムルシアター、ジェニー・ビーチ。

しかしコンバット斉藤は強くなった。蹴りを主体とした試合運びにも安定感がある。あばしりレベルからは抜きん出ている。

しかし挑戦者チーム、ハムル・シアターが実力者の意地を見せた。ハイキックでREKIを追い詰めてバックドロップ。これはなんとかカウント2.8で返したREKIだったが、2度目のハイキックをもらって万事休す。コンバット斉藤のカットは阻止された。28分21秒、これで王座移動。王者組は4度目の防衛に失敗。

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あばしりタッグ選手権 60分1本勝負

○ハムルシアター、Jビーチ(28分21秒、ハイキックからの片エビ固め)REKI×、コンバット斉藤

35代王者組が4度目の防衛に失敗、ハムル組が第36代王者となる

**************************

花道奥で試合を見ていたDFの総帥・ライラ神威が一言。

「REKIは、ダメだ・・・あんなのにやられてるようじゃあな」

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第5戦九州ドーム大会。メインはGWA選手権、王者ローズ・ヒューイットに挑むのは、DarkFractionの旗手・コンバット斉藤。総合力ではヒューイットのほうが何枚も上だが、コンバット斉藤には一発がある。

「いきますわよ!」
ヒューイットが開始早々スピードの乗ったタックル。ふっとばされる斉藤。

しかし起き上がって、打撃で応戦、掌底を乱打。たちまち流血に追い込む。

「お、おのれ・・・」
顔面をボコボコにされて怒ったヒューイット様、ラリアット、フェイスクラッシャー、ラリアットと大技攻勢に出てくる。やはりこの選手は怒らせると怖い。

「あまりにも華麗なこの技!」

バスターローズ一閃。伝家の宝刀をきっちり決めたヒューイット様がベルト防衛に成功。勝負タイム20分37秒。

花道奥で試合を見ていたDFの総帥・ライラ神威が一言。

「何をやっとるんだ。もっと蹴って相手をぶっ壊さなきゃだめだっつうのに・・・・アイツも、もろいなあ・・・」

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第7戦名古屋しゃちほこドーム大会。セミとメインに面白いシングルマッチを入れて何とか満員にした。

セミは氷室紫月対マッキー上戸。16期生同士の対戦。

SPZクライマックスではマッキーが勝っているカードだが、今回は氷室が優勢に進める。
「はぁっ!」
珍しい延髄斬り。これでM上戸から3カウント。勝負タイム10分38秒。

メインは最強外人ジェナ・メガライト対ノエル白石。

しかしメガライト様、今シリーズは絶好調。前SPZ王者のN白石を投げまくって最後はパイルドライバーで幕。勝負タイム15分49秒。

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そして最終戦、さいたまドーム大会。入り口には下記の大看板がががが。本隊エースの武藤めぐみとDF総帥のSPZ王者、ライラ神威がSPZベルトを賭けて闘う。まさに光と闇、正義の勇者と悪の大魔王の決戦。果たしてベルトを持って年を越すのはどっちか。ファンの予想も武藤有利という意見だったが、「ライラ神威がとんでもないことをやってくるのでは」という声もあった。

「決戦・ 光 VS 闇」

17:30、開場。グッズ売り場には長蛇の列。

「武藤めぐみTシャツ、2000円ですーー」

グッズ売り場の一角にはDFコーナーが。悪の軍団もけっこう人気が出てきた。

「DarkFraction」Tシャツ 2500円

「DarkFraction」タオル 2000円

「DarkFraction」ジャンパー 5000円

「ライラ神威Tシャツ」2000円

「ライラ神威お勧め 飲んでよし、水割りによし、料理に使ってよし、北海道大雪連峰 トムラウシ水500ml」1000円

「REKITシャツ」2000円

17時37分、マスコミ記者席に若林記者が姿を現した。

「若林さん、もう大丈夫なの」

「今も通院してるけどね、ふっ、なんとしても認定証だけは読むよ。でも多分武藤選手が勝つよ、あの人強いから」

17:55 控室奥の廊下、

「あー、年内最後の試合なのでしまっていきましょうー」

今野役員が檄を飛ばす。

18:20 放送席、

「いやー、今日は凄い試合になりそうですねえ、コーフンしますよ。チャンピオンがライラ神威というのもありえないんですけど、挑戦者があの武藤めぐみですからね、血で血を洗う展開も予想されますが」

世界のかずのりこと、森和紀アナの口調も上ずっている。

「んー、まあ・・・・普通にやれば武藤選手の勝ちなんですけどね、・・・・んー、プロレスは強い選手がそのまま勝つとは限りませんからね。・・・んー、まあ、どっちに転ぶかは時の運もありますよ」

かいせつの吉田龍子SPZ社長も緊張した面持ち。普段は「夫婦漫才」と評される名コンビなのだが、さすがに今日は重苦しい雰囲気。

放送席、森アナも(吉田社長にたきつけられて)護身用にゴルフクラブを持参。まさにリングサイドは戦場の予感ががががが。

18:30、オープニングムービーのあと、村越リングアナがカードを読み上げる。

「メインイベント、SPZ世界選手権60分1本勝負、チャレンジャー武藤めぐみVSチャンピオンライラ神威」

ドオオオオオオ!!

ここで場内暗転、オーロラビジョンをジャックしたのはもちろんあの選手。

「さいたまのくされSPZファンども、さいたまのくされSPZファンども、さいたまのくされSPZファンども、年末だというのにこんなつまんねえ興行に銭払って見にくるアホウめ、きょうはレスリングなんかするつもりはねえ、おまえらに真の地獄というものを見せてやる。じゃあな。ダーク・フラクション!!」

18:36、ドームに野村つばさのテーマ「ほほえみのヴァネッサ」が流れる。

第1試合は野村つばさ対ミスティアマスク。

ド派手な覆面をかぶった外人レスラー、ミスティアマスクが第1試合に登場。トリッキーな動きで会場を沸かせたが、対戦相手の野村つばさもSPZで6年もまれた実力者。最後は綺麗なフォームのミサイルキックで3カウント奪取。

「みんな、応援ありがと!」
勝負タイム8分29秒。それなりに盛り上がった。

第2試合は成瀬唯対ジーナ・デュラム。

「今日も、いくでーーーー!!」

団体最古参になった15期生成瀬唯はネタ外人と対戦。さすがにこのクラスの相手となると成瀬強い。

「ほいっ!」

DDTで頭を攻撃して弱らせてからアキレス腱固め。抜けようともがくジーナ・デュラムだが頭を打っており思うように身体が動かない。

「いやぁあああー!」

さいたまドームに響くジーナの悲鳴。成瀬に珍しくブーイングが飛んだ。
ジーナ・デュラム、結局抜けられずギブアップ。勝負タイム12分45秒。

第3試合はDFの準構成員登場、ナイトメア神威、マーメイド千秋対シンディー・ウォン、ミス・マスカレード。

外人チームの連携に手こずったが、最後はナイトメア神威がタイガードライバーを決めて、マスカレードから3カウントを奪った。その試合が終わると休憩。

普段と比べて席を立つファンが少ない。メインイベントへの期待感がすごいのか。

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休憩明け第4試合は外人同士のタッグマッチ。ファントムローズ1号、ハムル・シアター対ジェニー・ビーチ、ジェシー・ビートン。

一進一退の攻防が続いたが、最後はハムル・シアターが実力者の本領を発揮し、ラリアットでジェニービーチからカウント3を奪った。勝負タイム15分28秒。

第5試合、ノエル白石・氷室紫月の前SPZタッグ王者・ネイチャーコンビが入場。対戦相手は前あばしり王者でDarkFractionのコンバット斉藤・REKI組。

「消えろ」

氷室がつかまってしまい、REKIの農鳥を食らってしまうが何とか振り切ってノエル白石にタッチ。しかし代わったN白石もコンバット斉藤のジェットスマッシュ、飛燕脚を立て続けに食らうなど大ピンチ。

しかし最後はスタミナ切れを起こしたコンバット斉藤をうまく氷室が捕らえ、ダイビングプレスで3カウント奪取。勝負タイム17分58秒、N白石・氷室組が熱戦を制した。

ここから3大シングルマッチ。

セミ前はマッキー上戸対イージス中森。

優勢に進めたのはイージス中森。今シリーズのマッキー上戸は元気がない。ヘッドバットで反撃するも単発に終わる。焦ったマッキー上戸は強引にスプラッシュマウンテンで担ぎ上げて落としペースをつかみなおそうとする。しかしイージス中森、

―これ以上は受けられない、勝負をかける!

ストレッチプラムをここで繰り出し、マッキー上戸からギブアップを奪った。勝負タイム18分40秒。時代は確実に流れているーー

セミファイナルは最強外人決戦。ジェナ・メガライト対ローズ・ヒューイット。迫力あふれる肉弾戦が繰り広げられたが、最後はジェナ・メガライトがベリートゥバックで勝利。勝負タイム15分24秒。

21:05

そしていよいよ始まるメインイベント、天才姫 VS 極悪王者・・・・

森アナウンサーの声も震える。

「さ、さあいよいよ始まります世紀の一戦、ライラ神威VS武藤めぐみ、方やSPZの大エース、こなたSPZはじまって以来の大悪人・・・」

放送席の吉田社長はメモに走り書きして、森アナに手渡す。

「まんいち、ライラが勝った場合は、逃げてください」

(続きます)

2008年5月15日 (木)

第408回 23年目11月 SPZタッグリーグ後編

23年目11月 SPZタッグリーグ戦(後編)

第5戦は福島大会。
A中森、C斉藤○(2点、ジェットスマッシュからの片エビ固め 30.0)キャシー、シンディー×(2点)

個々の力では中森組、チームワークなら悪役姉妹。試合は白熱の好勝負となった。

「ほあーーっ!」
ズバッと決まったジェットスマッシュ。1発目はキャシーのカットに阻まれたがすかさずもう一発叩き込んで終了。これで中森・斉藤組が遅ればせながら初日。

L内田、M上戸○(4点、ジャーマンSH 16.19)R神威×、N神威(4点)

2敗を喫しあとがないジューシーペア。

「相手は小悪党と新人だ!そんなのには負けられねえぜ!」

「まずナイトメア選手をつぶしましょう。いくらライラ選手でも私たち2人を相手には出来ないと思います」

でもってその通りの試合展開。出ずっぱりのライラ、撃沈・・・

N白石○、氷室(8点、STOからの片エビ固め 22.18)ローズ、Fローズ1号×(2点)

白石・氷室組、先シリーズから入場テーマ曲がノエル白石の「ラジオスターの悲劇」に変わり、コール順もノエル白石が後になった。この日もノエルの動きが冴え、最後はひとり格落ちのファントムローズ1号をSTOでつぶして終了。

武藤○、成瀬(8点、ムーンサルトプレスからの体固め 13.32)メガライト×、Jビーチ(2点)

「白石さんとこも星落とさんなぁ・・・」

セミを見ながら成瀬がボソッと。
しかし試合が始まるや武藤が猛攻。最強外人のメガライトを一方的に押し切ってムーンサルトでフォール勝ち。これで4連勝。福島のファンは絶句。

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第6戦は宇都宮大会。
L内田、M上戸○(6点、スプラッシュマウンテンからの片エビ固め 23.34)A中森、C斉藤×(2点)

若手大連立コンビ、ジューシーペア相手に大いに善戦したのだが・・・
「あたしたちはチャンピオンだ。そう簡単にはやられない・・ぜ!」

メガライト○、Jビーチ(4点、ベリートゥバック 11.34)ローズ、Fローズ1号(2点)

メガライト組が2勝目。最後はベリートゥバックで決着。

キャシー○、シンディー(4点、ハイキックからの片エビ固め 25.40)N白石、氷室×(8点)

ノエル組の連勝街道がストップ。意外にも悪の姉妹コンビが粘り、連係を多用してペースを渡さない。そして最後は氷室がつかまってしまった。

「そろそろトドメを刺してあげましょう!」

キャシー・ウォンのハイキック一閃。これで3カウントを喫した。ここへ来ての思わぬ取りこぼしは痛い・・・

武藤○、成瀬(10点、シューティングスタープレスからの片エビ固め 11.43)R神威、N神威×(4点)

武藤めぐみもエンジン全開。ナイトメア神威をシューティングスタープレスで圧殺。まるで容赦なし。これで5連勝、、大方の予想を覆して単独トップに立った・・・

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第7戦は幕張大会。
ローズ○、Fローズ1号(4点、バスターローズからの片エビ固め 20.48)L内田、M上戸×(6点)

思ったより激戦となった。ローズ・ヒューイットが思いのほかしぶとい。最後は4選手が入り乱れる乱戦の中、ローズ・ヒューイットが伝家の宝刀バスターローズを決めてマッキー上戸から3カウントを奪取。またこの戦いに懸命についていったファントムローズ1号の頑張りも光った。

N白石○、氷室(10点、パワーボムからのエビ固め 7.35)R神威、N神威×(4点)

ナイトメア神威、ノエル白石の猛攻の前に何も出来ず敗北。このシリーズ、新人のナイトメアは試練の日々が続く・・・

メガライト○、Jビーチ(6点、デスバレーボムからの片エビ固め 26.52)A中森×、C斉藤(2点)

思いのほか星が上がらない若手連立コンビ。この日もJビーチを追い込んだが逃げられてしまい、そのあとはメガライトにズルズルと・・・

武藤、成瀬○(12点、アームホイップからの片エビ固め 14.44)キャシー、シンディー×(4点)

武藤組まさか?の6連勝。最後は武藤がノーザンで投げつけた後へ成瀬がアームホイップ。これで3カウントが入ってしまった。これで優勝の行方は最終戦横スペ大会のメイン、武藤組対白石組。武藤組が勝てば武藤組の優勝、白石組が勝てば同じカードで優勝決定戦。

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最終戦は横スペ大会。
ローズ○、Fローズ1号(6点、シャイニングウィザードからの片エビ固め15.30)A中森×、C斉藤(2点)

けっきょく若手コンビは2点どまりで最下位。攻め込まれるともろい課題を露呈した。

L内田、M上戸○(8点、バックドロップからの片エビ固め12.43)シンディー、キャシー×(4点)

マッキー上戸がパワーで押し切った。タッグ王者が4勝3敗。有終の美を飾ったものの憮然とした表情でジューシーペアは引き揚げた。

メガライト○、Jビーチ(8点 ステップキックからの片エビ固め 15.57)R神威、N神威×(4点)

メガライト組堂々の勝ち越しで存在感を示した。最後はきっちり分断作戦に成功。

武藤○、成瀬(14点、ジャンピングニーからの片エビ固め 28.56)N白石、氷室×(10点)

「私が2人ともやっつけるつもりでやります。もしもの時はお願いします」

「・・・はいはい」

武藤鬼のような強さ。しかしノエル白石もSTOで抵抗。これで成瀬にタッチしてしまった。決定戦を望むファンからはドオオオの歓声。しかし氷室の動きもあまり良くなく、成瀬にDDTを食らってしまう。ノエル白石が出てきたが、成瀬、懸命に武藤につないだ。あーあという横スペ場内の空気。

そのあとは武藤とN白石がひとしきりやりあう。その後氷室が出てきたがノリノリの武藤、飛びつき腕ひしぎ逆十字を初公開。

そしてN白石がふたたび出てくるや、

「悪く思わないでね」
シューティングスタープレス。しかし氷室がカット。最後は氷室とN白石の速いタッチワークに手こずったが、

「覚悟して!」
ジャンピングニーが氷室に命中。これで3カウントが入った。武藤めぐみ、成瀬唯組堂々の全勝優勝。前座要員をパートナーにしても全勝してしまうのだから凄い。

優勝した武藤めぐみ、成瀬唯組には賞状と賞金60万円、副賞のノートパソコンが贈られた。

2008年5月14日 (水)

第407回 23年目11月 SPZタッグリーグ前編

23年目11月

SPZ始まって以来初の悪役王者となってしまったライラ神威。王座奪取はともかくその後の行為でSPZ本社には抗議の電話やメールが殺到した。

1.権威と歴史あるSPZベルトを爆破した
2.マスコミ記者を感電させ負傷させた(病院送り)
3.演出とはいえ、武藤めぐみをチェーンソーで襲おうとした

この3点が問題となった。ライラ神威は悪びれず「うっせえ!新宿伊勢丹前で襲撃しないだけありがたいと思え!」と反省の色なし。SPZマッチメイク委員会はライラ神威に出場停止処分を課すことも検討したが、「いや、あれはあれなりにSPZマットを盛り上げようと頑張っているんじゃないの」という意見も出たのでしばらく様子を見ることになった。

23年目11月
恒例のSPZタッグリーグ戦。出場するのは下記の8チーム。

武藤めぐみ&成瀬唯 組(元SPZタッグ王者)

氷室紫月&ノエル白石 組(前SPZタッグ王者)

ラッキー内田&マッキー上戸組(現SPZタッグ王者)

イージス中森&コンバット斉藤(賞金目当て即席タッグ)

ライラ神威&ナイトメア神威組(REKI負傷欠場でナイトメアにチャンスが回ってきた)

ジェナ・メガライト&ジェニー・ビーチ組(最強外人)

ローズヒューイット&ファントムローズ1号(薔薇一家)

キャシー・ウォン&シンディー・ウォン(極悪姉妹?)

前年武藤のパートナーだったイージス中森は「武藤さんとは組むより闘いたい」ということでコンバット斉藤とコンビを結成。それでもSPZタッグ王座戴冠経験のあるタッグが3チームも出る。2戦目の盛岡大会からリーグ戦がスタート。

シンディー○、キャシー(2点、ステップキックからの片エビ固め)R神威×、N神威

REKIが負傷欠場したためライラのパートナーには新人で同郷のナイトメアが抜擢された。ナイトメアの経験を考えるとライラが矢面に立たないといけない。で、けっきょくそうなってしまい、出ずっぱりのライラが悪の姉妹につかまってしまい、SPZ王者が3カウントを奪われた。

「あー、タリィ。タッグリーグなんてやってらんねえ!REKIのヤロウ、怪我しやがって・・・」

L内田、M上戸○(2点、スプラッシュマウンテンからのエビ固め )メガライト×、Jビーチ

過去2回このリーグで優勝しているジューシーペア、実績は申し分ないのだが、実力はピークを過ぎている。この日はメガライトのパワーに手こずったものの、最後はマッキー上戸が伝家の宝刀スプラッシュマウンテンを決めて白星スタート。
「優勝狙うぜ!あたしらはタッグ王者なんだし、賞金が欲しいんだ!」

氷室、N白石○(2点、裏拳からの片エビ固め )A中森、C斉藤×

「コンバット斉藤さん、DarkFractionからは脱退するということなんですか?」
「いえ、私は今でもDFの一員だと思ってます。中森さんと組んだのは、えーと、そのう、まあ・・・大連立です。」

この日は優勝候補のノエル&氷室組と対戦。ジェットスマッシュ2連発で氷室を追い込んだコンバット斉藤だがN白石がカット。その後出てきた暴君ノエルの猛攻。STOから裏拳で終了。
「スマッシュが連続で入ったのに・・・っ」
大連立コンビ、あと一歩・・・

武藤、成瀬○(2点、ネックブリーカーからの片エビ固め )ローズ、Fローズ1号×

「ま、ウチが沈まなきゃええねんな」
今年は武藤のパートナーは実力微妙でピークを過ぎたベテランの成瀬唯。懸命にメインの戦いについていって、最後は自らファントムローズ1号からフォールを奪った。

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第3戦秋田大会

R神威○、N神威(2点、フェイスクラッシャーからの片エビ固め15.55 )ローズ、Fローズ1号×(0点)

ライラ組に初日。ネタ外人のファントムローズ1号をたたきのめした。

メガライト○、Jビーチ(2点、フロントスープレックスからの片エビ固め 12.25)キャシー、シンディー×(2点)

メガライト組もきっちり初日を出した。悪役姉妹のトリッキーな動きにも惑わされずスープレックス攻勢で決着。

N白石○、氷室(4点、合体パワーボムからのエビ固め 15.33)L内田×、M上戸(2点)
ジューシーペア敗北。ノエル白石の動きについていけず、最後は二人がかりのパワーボムにラッキー内田が沈んだ。

武藤○、成瀬(4点、延髄斬りからの片エビ固め 18.10)A中森×、C斉藤(0点)

大連立コンビが団体最強・武藤めぐみの高い壁に挑む。しかし歯が立たない。成瀬も絶妙の顔見世ファイト。引きどころをきちんと押さえて武藤につなぐ。そのまま武藤が押し切って2勝目。

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第4戦は山形大会。
ローズ○、Fローズ1号(2点、サソリ固め 13.39)シンディー×、キャシー(2点)
ヒューイット一家が初日を出した。

R神威○、N神威(4点、カムイエクウチカウシからのエビ固め 18.29)A中森×、C斉藤(0点)

ライラ神威が混戦の中、きっちりカムイエクウチカウシで実力者のイージス中森を退けて2勝目。「優勝?できるわけねえだろう!」と言っているが・・・

N白石、氷室○(6点、ギロチンドロップからの片エビ固め 18.21)メガライト×、Jビーチ(2点)
ノエル白石がSTOでメガライトに大ダメージを与え、後を受けた氷室がスリーパーで弱らせてからのギロチンでトドメ。氷室ノエルも3連勝。

武藤○、成瀬(6点、延髄斬りからの片エビ固め 15.12)L内田×、M上戸(2点)

「成瀬さんと組んでも優勝できますよ」、私一人で相手を二人ともやっつければ問題ありません」
ジューシーペア相手にこの言葉を実践する武藤は凄い。今シリーズ多用している延髄斬りでラッキー内田から3カウントを奪った。

第23回SPZタッグリーグ、リーグ戦を3つ消化した段階で勝ちっぱなしは武藤組と氷室組・・・(長くなるので続きます)

2008年5月13日 (火)

映画の予告編

時に西暦2031年10月、ライラ神威がSPZ王者を強奪してウァハハハハと勝鬨を上げているころ、一部のSP系列映画館で次のような予告フィルムが流れ始めた。

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ー守るものがあるから、私は戦える。

渡辺智美 主演

『カオスの王者~地下武闘~』

 かつて、カミカゼビューティーと呼ばれた世界チャンピオンのレスラー、青柳智子がいた

 多くのファンを魅了した青柳は、ファンに惜しまれつつ24歳で引退。

 それから6年、青柳智子は、恋人もでき、電気製品のセールスレディとして、第2の人生を送っていた。

 しかし、幸せな日々は長くは続かなかった。

「源三さんっ、目を開けてぇーーーー!!」

恋人の源三が病気で倒れてしまった。手術費用を稼ぐため、青柳智子は地下格闘界のリング「ナイトメア カオス」に身を投じるーーーー。

「ぬわーーーーっ!」

そこは相手を戦闘不能に追い込むまで闘わねばならない真剣勝負のリング。数々の猛者が青柳智子におそいかかる!

なんとか持ち前の技術、根性、気迫で勝ち進んでゆく青柳智子、しかしそこに最強の敵「クレイジー・ドラゴン」が立ちはだかるーーーーーーーー

主演:渡辺 智美

松永幸一 筧一志

特別出演:吉田 龍子

友情出演:八重樫美月 

友情出演:ラッキー内田

協力:スーパースターズプロレスリング・ゼット

2031.12.24 公開

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(外伝のお笑い格闘映画ネタで、Word25ページ書きました。近日中に公開する予定です。)

2008年5月12日 (月)

第406回 ああライラ神威

23年目10月シリーズ最終戦 新日本ドーム大会

そしてメインイベントはSPZ選手権。新王者ノエル白石・初防衛戦の相手はよりによってSPZの極悪人、17期生のライラ神威。

ばちばちばちっ。

「うっ、ううう、あうううん!!」

ライラ神威の入場テーマの冒頭にはスタンロッドの電気音と、おっさんの悲鳴断末魔が響き渡る。そしてー

―遊びはもう終わりだー、シンデレラは王子を喰うー

「COLLECTIVE」がかかる中、ライラ神威が入場。例によってチェーンソーをぶいぶいぶいーんといわせながら花道をあおりつつリングイン。

そして「ラジオスターの悲劇」がかかる中、いつものようにノエル白石がとことこと歩いて入場。いつもと違うのはN白石の腰に金色のベルトが巻かれていること。

「いやいやいやいやかいせつの吉田さん、個性派同士のタイトルマッチですね。」

実況の森和紀アナ(大日本テレビ)もコーフンした面持ちで実況。

「きわものですよ。とくにライラ選手は、こんなカードをドームのメインで組んでしまって恥ずかしいです。社長辞めたくなってきました」

吉田社長は苦虫を噛み潰したような表情でコメント。

「認定証 この試合は、株式会社スーパースターズプロレスリングゼットが認定するシングル世界選手権試合であることを宣言する 2031年10月22日、スーパースターズプロレスリングゼット代表取締役社長 吉田龍子、代読、京スポ新聞、若林太郎」

認定証読み上げのあと両選手がコールされ、そしてゴング。

―SPZベルトを取るとしたら、武藤がチャンプじゃない今しかねえ・・・

ライラ神威、作戦をミスったか。ラフファイトを封印して真正面からノエルとやりあった。珍しくドロップキック、スクラップバスターとわりあいまともに攻める。しかしノエル白石もパワーでは完全にライラの上を行く。ブレーンバスター、スクラップバスターで倍返し。

「んー、いかんですね。正面からやったらノエルが強いのはSクラで実証済みでしょう」

前半15分はピリッとしないレスリング。しかしこれはライラ神威の作戦だった。前半はわざとやられて相手を油断させる古典的な手法。20分過ぎにはじめて疑惑のヘッドバット。これでノエル白石がぐらついた。

「おらぁぁぁぁぁぁぁ!!」

ライラ神威タイガードライバー、カウント2で返すノエル白石。しかしこのとき受け身を取り損ねたか、頭を気にするしぐさを見せた。ライラ神威、もう一度タイガードライバー。またカウント2、そしてライラ神威、三度目のタイガードライバー。またカウント2.このあたりで場内ざわめきだす。タイガードライバー3連発と言う非情な攻撃。

―ノエル白石の動きがおかしい。ペースをかき乱されたか。

ニヤリ。

ライラ神威がここで勝負に出た。うずくまるノエル白石の腰をつかんで高々と抱え上げて、

「ブッコワレローー!」

カムイエクウチカウシ発動。

アイヌ語で「熊も転げ落ちるほどの山」を意味する垂直落下スプラッシュマウンテンを食らったノエル白石。そのまま3カウントを聞いて、王座から転げ落ちた。

「26分17秒、カムイエクウチカウシからのエビ固めで、ライラ神威の勝ち」

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SPZ世界選手権(60分1本勝負)

ライラ神威(26分17秒、カムイエクウチカウシからのエビ固め)ノエル白石

第63代王者が初防衛に失敗、ライラ神威が第64代王者となる

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ウオオオオオオオオオオ!

SPZ17期生、極悪人ライラ神威が第64代SPZ王者に輝いた。頭を打ったノエル白石、氷室につかまりながら引き揚げた。

「あー、おめっとさん。」

立会人の京スポ新聞若林記者がベルトをライラに渡そうとするが、もちろんこのままで終わるはずがない。

「こんなもん別に欲しくねえや!」

ライラ神威、なんと若林太郎記者に蹴りを入れてフッ飛ばし、ベルトを強奪するや、隠し持っていた爆竹にライターで火をつけ、ベルトの上に投げ落とした。

ZDOOOOOM!

これが後日社内で問題になった「ベルト爆破事件」である。

「ライラ!ええかげんにせえよ。」

本部席で解説をしていた吉田龍子社長がリングに上がりライラをにらみつける。しかし

「過去の人はひっこんでろ」

吉田龍子に右ストレート、ついで鉄製の凶器で額を一撃。

「いかんやめさせろ!」

若手セコンド陣がリングイン。あとはもう滅茶苦茶な騒乱状態となった。DFのREKI、コンバット斉藤、ナイトメア、マーメイド千秋はライラに加勢。見苦しい乱闘が続く。神聖なSPZタイトルマッチの試合後でこんなシーンはかつてなかった。

カンカンカンカンカンカン!!

今野役員がゴングを乱打するが何の効果もない。

「ヤクザキック!」

井上霧子取締役までもが止めに入った。がうまく見ていたライラ神威、軸足を水面蹴りで刈ってころばせた。バランスを崩してリング上に転倒する井上霧子。

「氏ね、ババア」

ライラ神威、スタンロッドを取り出して井上霧子に押し当てようとしたが、

「霧子ッ、危ない!!」

なんと京スポ新聞・若林記者が身を挺して井上霧子をかばった。

ばちばちばちっ!
これが後日京スポ新聞社との間で問題になった「京スポ記者感電暴行事件」であった。

「わ、若林・・さん・・・」

高電圧をモロに食らって悶絶する若林記者。呆然とする井上霧子。セコンド陣も止めようとするがスタンロッドを持っているので安易に近づけない。

「いい加減にしなさい!素人に手を出して恥ずかしくないの?」

ここで、元王者武藤めぐみがジャージ姿で現れた。花道を走ってリングイン。

「やっと出やがったなあ、このクソ天才姫」

・・・・・・・・・・・・場内、息を呑む展開。

「12月のさいたま、あんたを血祭りに挙げてやるぜ・・・なんて言わないぜ。今日お前を抹殺してやるぜ、おいナイトメア、セイレン、手錠。」
かちゃっ。
なんと武藤めぐみの左右の手をロープに手錠でくくりつけた。足はREKIが押さえて細引きで縛った。まさにはりつけ。そしてライラ神威はリング下に隠しておいたチェーンソーを手に取った。まさか・・・

「今日が貴様の命日だァーーーッ!」

ぶいぶいぶいぶいぶいーん!

チェーンソーが武藤に迫る。これが後日あまりにやり過ぎとしてワイドショーで問題になった、「武藤めぐみ惨殺未遂事件」であった。

「い、いヤーーーッ!」

武藤めぐみ迫真の演技。アカデミー賞ものである。このまま切断殺害されてしまうのか。

「そうそう、その声だよ、たまんないねえ」

ブ ス ー ッ。

しかしその瞬間ライラ神威の右足に吹き矢が刺さった。やったのはもちろんリングドクター羽山海。もちろん吹き矢には巨象をも眠らせる麻酔薬がはいっている。

ば た。

意識をなくしてマットに倒れ伏すライラ神威。これで大騒動は終わった。

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そのあと、ざわついた状態のままフォクシー真帆の引退セレモニー。

「真帆は、真帆は・・・ウグ、ウグ、うわああああん!」

フォクシー真帆、大泣き。見かねた成瀬唯が肩を抱いて二人でお辞儀をして、そのまま引き揚げた。

フォクシー真帆(SPZ14期生)

2022年4月16日、札幌どさんこドーム大会でのロイヤル北条線でデビュー。2031年10月22日、新日本ドームでの成瀬唯戦で引退。稼動月数115ヶ月、出場試合数(概算)816試合

タイトル歴

第22代・第24代・第27代・第31代あばしりタッグ王者(パートナーは成瀬唯)

2008年5月11日 (日)

第405回 フォクシー真帆 最終試合

23年目10月

「体が動かない・・・」
14期生のフォクシー真帆が引退を表明。したがって10月シリーズはフォクシー真帆引退シリーズとなった。

初戦沖縄大会、第1試合でフォクシー真帆対マーメイド千秋の最後のシングルマッチ。ここのところ力をつけてきたマーメイド千秋の粘りに苦戦したものの16分11秒、フォクシードライバーで勝利。

第3戦三重サンシャインアリーナ大会、メインはあばしりタッグ戦。王者REKI,コンバット斉藤に挑む今回の挑戦者は強豪外人コンビ、ハムル・シアター&ジェニー・ビーチ。

「晴れの舞台だ・・・心していこう・・・」

「いい雰囲気~、故郷を思い出す~、燃えてきた~!」
対照的な外人コンビが入場。試合はそこそこ盛り上がった。しかしREKIも相当力をつけてきていて、最後は合体パイルでビーチを仕留めた。勝負タイム24分31秒。これで王者組が3度目の防衛に成功。

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そしてシリーズ最終戦は新日本ドーム。
「フォクシー真帆 最終試合」の大看板が。

第1試合は野村つばさ対ジェニー・ビーチ。武藤と同期ながら実力微妙のアイドルレスラー野村が第1試合に登場。対戦相手の「サーファー女」ジェニービーチはいつもどおりビーチボールを投げ入れてからリングイン。

「いやあーッ!」
試合のほうはなんとビーチがフェイスクラッシャー3連発。小柄な野村はハデに顔面を強打。けっこう痛い技である。なんとかカウント2.9で返した野村だったが、続くDDTに力尽きた。勝負タイム10分22秒。

第2試合、悪役コンビが登場。ナイトメア神威、マーメイド千秋対ハムル・シアター、ジェシー・ビートン組。
「COUNTRY POWER!」
ジェシー・ビートンが上記のせりふを吐いてマーメイド千秋に力のこもったブレーンバスター。しかしマーメイド千秋も意地でバックドロップ。

しかしハムル・シアターもGWAでは名の知れたシューター。
「とどめだっ!」
ものすごいハイキックが炸裂。ナイトメア神威悶絶。勝負タイム11分16秒。

第3試合はシングルマッチ。氷室紫月対REKI。元SPZ王者の16期生氷室がカード編成の都合とはいえ新日本ドーム大会で前半に登場。

「これも、運命・・・」
しかし氷室さん、内心では忸怩たるものがあったのかいきなりストレッチプラム、逆エビ固めでREKIを翻弄。そしてスリーパー。
REKIの動きがこれでがくんと落ちた。サソリ固めで痛めつけておいてパイルドライバー。REKIに付け入る隙を与えない。そして・・

「行きます」
ダイビングプレスは2.9で返されたが、続けざまに強烈なステップキックを浴びせて3カウントを奪った。勝負タイム14分29秒。

そして、
「次の試合に出場するフォクシー真帆選手はこの試合が最後のファイトとなります。ファンの皆様、より一層のご声援をお願いいたします」

ウイリアムテル序曲が流れる中、SPZ14期生、野生女・フォクシー真帆が最後のリングへ向かう。
対戦相手は長らくタッグを組んであばしりタッグを取った15期生の成瀬唯。
「HAAAAAAA」
フォクシーのタックル。しかし成瀬はひらりとかわして脇固め。かみ合っているようでかみ合っていない両者のファイトが続いた。成瀬も動きはかなり落ちているのだが、ひらりひらりとフォクシーの突進をかわす。

若手のころ、この2人の対決はSPZの前半戦名物カードだった。
「・・・くたばれ」
ただ体当たりするフォクシー真帆
「いてこましたる。」
とにかく腕を狙う成瀬唯。パワーと技術が正面からぶつかりあった。

フォクシー真帆、もう右腕は散々痛められて動かないはずなのだが、おくびにも出さずまたタックル。
「仕返ししたるっ!」

成瀬珍しく走って、ランニングタックル。ぶっ倒れる両者。ここで30分タイムアップドローとなった。引退試合のシングルマッチが30分タイムヤップドローというのははじめてである。場内ものすごい拍手。

「ハッ、ハッ・・・・」
しばらく両者座り込んで息を整える。青い紙テープが投げ込まれた。

「お疲れ様。」
吉田社長から金一封の贈呈。そのあと全所属選手が胴上げ。フォクシー真帆は3度宙に舞った。そのあと休憩。

休憩明けは外国人選手同士の6人タッグマッチ。ヒューイット一家(ローズ・ヒューイット、ファントムローズ1号、ワイルドローズ2号)VSジェナ・メガライト、シンディーウォン、キャシーウォン。GWAとTWWAの威信をかけた戦いとなった。チームワークのヒューイット家、メガライトのパワー。この試合は盛り上がった。最後は大賞同士の一騎打ちとなり、メガライトがキャプチュードでローズ・ヒューイットを投げきり3カウント。これで試合は終わった。

そのあと3大シングルマッチ。

セミ前は武藤めぐみ対マッキー上戸。

SPZ女王の座から転落した武藤、ドーム大会でセミ前という扱い。対戦相手のマッキー上戸も8月のSPZクライマックス公式戦で武藤に勝っているので一発ねらってきた。

「落ちローー!」
スプラッシュマウンテンを早い段階でしかけてくる。しかし耐え切った武藤、ローリングソバットからDDTと流れるような逆襲。

―もう、誰にも負けたくない。
秘技・シューティングスタープレス炸裂。これでマッキー上戸を仕留めた。勝負タイム10分6秒。

セミファイナルはイージス中森対コンバット斉藤。SPZの次代を担う若い二人の対決。レスリングの技術なら断然イージス中森なのだが、コンバット斉藤には打撃がある。今日も掌底がうなりをあげる。連打を食らってぐらついたところをニーリフト。けっこうシビアな戦いとなった。

「はいっ!」
コンバット斉藤、ローリングソバットでぐらつかせて、一転してパワースラムで叩きつける。しかもロープ際で闘って、決め技での決定的チャンスを作らせない。
じれたイージス中森、ここで打撃で応戦。

「はっ!」
裏拳2連発。的確に頭を狙って撃ちぬく。これでカウント3.勝負タイム24分54秒の激闘が終わった。

試合終了後、イージス中森がマイクアピール。

「斉藤さん。来月、タッグリーグ、賞金目当てに組みましょう。あなたとならジューシーペアを倒せると思う
コンバット斉藤、一瞬ためらったものの、差し出した手を握り返した。

そしてメインイベントはSPZ選手権。新王者ノエル白石 初防衛戦の相手はよりによってSPZの極悪人、ライラ神威。
(続きます。次回、SPZ最大の悪夢が・・・・)

2008年5月10日 (土)

第404.1回 試合後の控室

(23年9月シリーズ、埼玉ドーム大会、試合後の控え室)

(16回目の防衛に失敗した武藤めぐみ、着替えもせず悄然とした表情でイスに座っている)

「よう」

上原今日子巡業部長が声をかける。

「上原さん・・・」

 「今頃、暴れてるんじゃないかと思ってね、様子見に来た」

「・・・・いや、・・・・後悔は・・・・してないし、しても・・・・しょうがないです。弱いから・・・負けた、それだけです。」

(普段こういう敗北直後のフォローは吉田龍子社長の役割なのだが、吉田のV15の記録を破ることが今日の目的であった以上、吉田社長は気を使って顔を出さなかった。)

 「そうか、若林さんがコメント取りたいって云ってるけどどうする?」

「悪いですけど、とても出せる顔じゃないと思いますので、ノーコメントにして置いてください」

 「わかった・・・着替えてメシでも喰いに行くか?」

「いえ・・今日は・・・一人にさせて、ください・・・・」

 「そうか・・・わかった」

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筆者より、滞在先の岐阜のホテルから書き込み。

明日は24時までに帰ってこれたら更新できると思いますがあまり期待しないで下さい

2008年5月 9日 (金)

第404回 無心の勝利

23年目9月
「女たるもの、引き際は美しくありたいもの」
団体最古参、14期生のフレイア鏡が引退を表明。

20期生REKIのファンクラブ結成。スピーディーな動きに魅了されたファン多数。

同じ20期生のイージス中森にもファンクラブ。ファイトスタイルは玄人好みだがSPZクライマックスでも活躍するなど実力をつけてきたので。

第3戦熊本大会メインはあばしりタッグ戦。王者REKI、コンバット斉藤に挑むのはシンディー・ウォン、キャシー・ウォンの強豪外人コンビ。TWWA、アメリカ本国ではチャイナマフィアのギミックを演じている二人の外人レスラー。連係もお手のもの。ダブルドロップキックでREKIを吹っ飛ばす。

しかしー
「一気に決める!」

コンバット斉藤のジェットスマッシュ。これでシンディーが大ダメージ。ここで外人組も勝負に出て、連係技を駆使してコンバット斉藤を追い込む。白熱した好試合、最後はREKIがスタミナの尽きたシンディーを捕らえて新蛇抜。これでカウント3.勝負タイム26分7秒。

第6戦長崎大会、この興行にもテレビカメラが入った。

第3試合、REKI対フレイア鏡。
「決める・・・」
REKI、農鳥で急降下爆撃。これは何とかロープに逃れたフレイア鏡だったが、続く新蛇抜に力尽きた。勝負タイム16分28秒。

長崎大会メインはSPZタッグ戦。王者の氷室、ノエル白石組に挑むのはジューシーペア。
16期生も全盛期から少しずつ動きが落ちている。マッキー上戸もいまひとつピリッとしない攻め。それでも連係のよさを見せ、ダブルラリアットでノエルを追い込んでいく。

しかしノエルもいつものペースで

「もう、終わりにするの・・・」
STO炸裂。これで大ダメージを負ったマッキー上戸、それでも20分過ぎに復帰してバックドロップで氷室をたたきつける。
そしてノエル白石が出てきたところへ、

「いっちゃうよ、バカやローー」
スプラッシュマウンテン。これはなんとか2.8で返したノエル白石だったが、続くジャーマンに力尽きた。

「白石さんよ、アンタしょっぱいよ。そんなんで武藤のバカとやるつもりか?さいたま、アタシがやってやるからアンタはとっとと休んでろコノヤロウ!」
36分5秒、ジューシーペアにタッグベルトが戻ってきた。

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最終戦、さいたまドーム大会。セミ前の第5試合。

「次の試合に出場いたしますフレイア鏡選手は、この試合が最後のファイトとなります。ファンの皆様、より一層のご声援をお願いいたします。」
対戦相手は1期下の成瀬唯。
「さっ!」
フレイア鏡、タックルやスクラップバスターなど、一つ一つの技を確かめるように決めていく。そしてDDT、これで成瀬の動きが止まった。

「・・・・ワァーーッ!」
気合とともに突進してジャンピングニー。崩れ落ちる成瀬、のしかかるフレイア鏡。これで3カウントが入った。勝負タイム11分59秒。フレイア鏡、最終戦を白星で飾った。

セミファイナルはジューシーペア対ライラ神威、REKI。タッグ王座を奪還したばかりのジューシーペアがいきなり難敵と対戦。

しかしなんとか分断作戦に成功し、マッキー上戸がREKIを捕らえた。場外戦に活路を見出そうとしたREKIだったが、逆に場外でフィッシャーマンバスターを食らってしまう。最後はスプラッシュマウンテンからの合体パワーボムで幕。勝負タイム23分41秒。

さいたま大会メインはSPZ選手権。今回の挑戦者は19期生のノエル白石。初挑戦である。

「さて、いきましょうか!」
武藤めぐみ、この試合に勝てば吉田龍子を抜いて、SPZベルト防衛回数の新記録(16回)である。

先シリーズ、SPZクライマックスで2度勝っている相手なので、武藤めぐみ、最初から飛ばした。しかしノエル白石もタックルで応戦。力だけなら武藤と互角。

バンッ!
タックルの衝撃で何とか受け身をとる武藤。一瞬顔をしかめたのを見て、ノエル白石組み付いてブレーンバスター。これもかなりの威力。

そして、
「もう、終わりにするの・・・」
ノエル白石が仕掛けた。ここで必殺のSTO。

バターン。

大外刈りのような外見だが、この選手がやると威力満点。

「くっ、よくも・・・」

武藤めぐみの表情が険しくなってきた。こんな表情の武藤も久しぶり。オーロラビジョンに写されたので館内ざわつきだす。

「ぐっ・・・」

ノエル白石ニーリフト。カウント2で返す武藤。

―この試合は負けられない!何のためにここまでやってきたのか・・・

しかし武藤ここで猛反撃、ダイビングプレス2連発からジャンピングニー!ノエル白石もかなりダメージを負ってきた。

しかしノエル白石、まったくあわてる様子がない。

「えっと・・・」
ノエル白石、組み付いてバックに回ってジャーマン。カウント2.8で返す武藤。ざわつく館内。大波乱なのか?

「アーーッ!」

武藤、強引にノエル白石をロープに振ってジャンピングニーかなんかをねらったが、ノエル白石、うまくロープの反動を利して背面トペで切り返してそのまま武藤めぐみを押しつぶした。そのままフォール。

ワン、トゥ、スリー!

押し倒されたときの打ち所が悪かったのか、反応が遅れた武藤、フォールを返せなかった・・・

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

その瞬間、さいたまドームは一瞬沈黙が。

「に、28分56秒、は、背面トペからの体固めでノエル白石の勝ち」

あわてて村越リングアナが結果をコール。

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SPZ世界選手権 (60分1本勝負)

ノエル白石(28分56秒 背面トペからの体固め)武藤めぐみ

第62代王者が16度目の防衛に失敗、ノエル白石が第63代王者となる

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「えええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ!!」

さいたまドームのファンは悲鳴どよめき歓声。

(評価の差300をはね返したノエル白石)

「あー、絶対王者、天才姫が止まったーーーー!新記録達成ならず!」

どよめきどよめきまたどよめき。

「か、かいせつの吉田さん・・・白石選手が勝ってしまいましたね~」

森アナウンサーも驚愕の表情。

「・・・・・うーん・・・・油断してたとも思えないですし、やりづらい相手でもないと思うんですけど、序盤のタックルが効いたんでしょうか。うーん・・・・武藤選手いつものババーッとといった速攻が見られなかったですね。うーん・・・・やはりプロレスは強い選手がそのまま勝つとは限りませんねえ、でも無心で闘ったノエル白石をほめるべきでしょう」

吉田社長、自らの持つ記録が破られることを覚悟していたが、予想外にノエル白石が勝ってしまって複雑な表情。

ざわめきの中、ノエル白石の腰にSPZベルトが巻かれる。本人はいつも通りのクールな表情・・・と思いきや、ノエル白石の瞳から雫が零れ落ちた。

「あれ、何で・・・」

苦節4年半、19期生のノエル白石がSPZの頂点に立った。

「くっ・・・・・・・・・・・・」

唇を噛んで、悔しさをあらわにして引き揚げる武藤。1年9ヶ月間守った女王の座から転落。

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「去り際は美しく・・・みなさん、お別れですわ」
どよめきが収まらないまま、フレイア鏡の引退セレモニー。SPZで猛威を振るったお嬢様軍団「ジュエルローゼス」最後のひとりがリングを去った。

フレイア鏡 (SPZ14期生)

2022年4月16日、札幌どさんこドームでのビューティ市ヶ谷戦でデビュー。2031年9月29日、さいたまドームでの成瀬唯戦で引退。稼動月数114ヶ月、出場試合数(概算)808試合

タイトル歴

第27代SPZタッグ王者(パートナーは芝田美紀)

第33代あばしりタッグ王者 (パートナーはREKI)

写真集 1冊

(筆者より、筆者取材のため明日5月10日の更新はお休みさせていただきます ご了承ください)

2008年5月 8日 (木)

本編の今後の展開予定

忙しくてリプレイできないので、今後の展開予定なんぞを。

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(横浜のお嬢様プロレス スーパースターズプロレスリングゼット 番宣より)

シングルマッチの連勝記録こそ29でストップした天才姫・武藤めぐみだが、SPZベルトの防衛記録は歴代1位のあの吉田龍子の持つ大記録15に並び、9月シリーズ中にも予定される防衛戦で負けなければ記録更新が決まる。

「はははっ、多分抜かれるよ。記録を変に意識しない事だね」(SPZ社長吉田龍子)

武藤めぐみの快進撃に頭を抱えるSPZフロント陣。このままでは好勝負すら成立しなくなる。ということで9月シリーズ、ストップザ武藤めぐみに会社が選んだのは19期生、ネイチャーガール・ノエル白石!8月のSPZクライマックスで優勝決定戦まで駒を進めた実績が評価されたか。

「うん、頑張る・・・」

もう武藤めぐみを倒すにはこの人しかいない。ノエル白石の無心、無欲の力に賭けたPZマッチメイク委員会。

「あたしだって先月勝ったんだ。5回やりゃあ1回は勝てる力はあるぜ」

連勝記録を止めたマッキー上戸。パワーはまだまだ健在だ!

「まだトップを奪い返すのを諦めたわけではありません。ラッキーキャプチャーさえ決まればいけると思います」

「すべては、運命・・・」

16期生のラッキー内田、氷室紫月ももう一花咲かせようと狙っている!そしてストップ寒塔といえばこの人。悪の総帥、何をやらかすか分からないライラ神威。

「あひゃひゃひゃひゃひゃ、地獄の軍団ダークフラクション、新メンバーにマーメイド千秋、ナイトメア神威の加入も内定したぜ。これで5人。いくら武藤めぐみが天才でも5人でよってたかって殴れば死んじゃうべさ、いいかくされSPZファンども、(以下罵詈雑言につきカットされた)」

2031年、秋、SPZに巻き起こる武藤めぐみ包囲網!SPZマットから目が離せない!!

2008年5月 7日 (水)

書き下ろしSS ギムレット美月のそれから2

元SPZ10期生のギムレット美月(28)のそれから(その2)

フリーになってもう4年が経つ。その間彼女はリングネームを「悪の殺し屋 ジ・オブリビオン」に変えて、黒いカッターシャツとタイツに身を包み、オファーがあればいろいろなインディー団体のリングに上がり、「1試合5万円」のギャラを稼ぎ続けた。

愛知県設楽町にある小さめの体育館。ここ1週間、「あいちおいでんプロレス」の巡業に同行して、若い選手にみっちりレスリングを叩き込んでいる。

「痛い痛い痛い痛い!!」

対戦相手の女子レスラー、ウイング下地をいたぶって観客からブーイングを浴びる。

客数は500人もいないし、内陸部の小さな町なのでさほどプロレスを見慣れているとも思えないので、オーソドックスに関節を極めていった。

なんとかロープに逃れるウイング下地。

「FINISH・・・・」

10分くらい痛めつけたのでもうそろそろかなと感じたオブリビオン、ウイング下地の頭をつかんで引きずり起こして、

右腕を大きく振りかぶってラリアットを狙った。が、モーションが大きいのでうまく決まった試しがない。元々この選手は立ち技はあまりうまくない。

ばさっ!

ウイング下地はリストバンドに隠し持っていたパウダーを投げつけた。白い粉が飛散する。

「うわあ、目が、目がっ・・・」

直撃を食らったオブリビオン、たまらずその場に倒れこんで、顔を押さえて足をばたつかせる。意外な展開に観衆は沸いた。

「いまが、チャーンス!」

ウイング下地、すばやく組み付いて、フィッシャーマンズスープレックスで投げた。そのままフォール。

ワン、トゥ、スリー。

ジ・オブリビオン、11分33秒であっさり敗北。もちろんブックは事前に決まっていた。

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ばしゃっ。

オブリビオン、洗面所でこびりついたパウダーを洗ってからセミ、メインの男子レスラーのルチャリブレを観戦。そのあと社長に挨拶。

「今週はどうもありがとうございました。ギャラのほうは、後日請求書をお送りいたしますので、9月20日払いで振り込んでください」

愛知県の東部の町や村を7戦サーキットしたジ・オブリビオン。往年の動きは望むべくもないが、グラウンドレスリングだけならまだまだ通用する。

ー東京に帰ったら、物件を見て回らないと・・・

一昨年に個人事務所「ギムレットオフィス」を立ち上げ、オブリビオンのフリー参戦とプロレスグッズのネット通販でまずまずの売り上げが上がっていた。この選手、老後のためにプロレス会場のオーナーになって、会場使用料で食っていこうという野望がある・・・

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j筆者より、修行から帰ってきてズタズタなので15分で場もたせ用のSSを書きました・・・

2008年5月 6日 (火)

入場SS05 ムーンリベンジ

入場SSその5 富沢レイ:「Moon Revenge」(アニメ映画サントラ)

初期のSPZはスポコン雰囲気がけっこうあり、ストイックに練習に没頭する選手が多かった。しかし、この選手だけはそういった感じを表に出さない選手だった。

秋の気配も深まった10月中旬、広島にある大き目のアリーナ。

「はいどーも、ありがとーう!!」
売店スペースでサインをしまくる富沢レイ。実力微妙の選手なのでつい開場から試合開始までのグッズ販売の時間は駆り出されてしまう。

ようやく客足が落ち着いて、富沢レイは控室へ戻った。

―うえ今日シングルマッチじゃない。

富沢レイは顔を覆った。壁に貼られた今日のカード

3.富沢レイ 1/30 ハイブリッド南

富沢レイの選手の要領のよさというか立ち回りのよさはかなりのものがあり、タッグマッチでは相棒の永沢舞を全面に出して自分はコーナーで檄を飛ばすだけで相手チームがズタボロになった時点で登場してくる・・・といったことを平気でやる。

寮を出て、社宅扱いのアパートで一人暮らしを始めて、練習量は確かに落ちた。別の名前で同人誌を何冊も出しているのはファンの間では有名な話だ。地方巡業でも試合前の練習はちょっと走るだけ。

・・・ハイブリッド南さんねえ、最近急に力をつけてきているし、こないだは小川さんにも勝っちゃったから、んーこりゃ負けかな。

ゆっくりと衝立の陰でリングコスチュームに着替える。そのあと自分でデザインした「レイちゃんTシャツ」を羽織る。
そのあと屈伸運動をやったりして出番を待つ。

―動けるうちは、動く。じたばたしてもやられるときはやられるし。

SPZでコロッと負ける選手の代表格が永沢舞と富沢レイなのである。一期生からは苦々しい目で見られることもあるが、今野社長や井上霧子は「いいんじゃないですか、こういう個性の人がいても」ということで気にしていない。

そして第2試合が終わり、富沢レイのテーマ「Moon Revenge」がかかる。今野社長が昔持っていたアニメ映画のサントラからのセレクトらしい。

ド派手なイントロに続いて5人が合唱する歌が流れ出す。
♪やっと たどり着いた 愛 握り締め 小さな眠りに 安らぐ人・・・

「うん・・・おっけ!」
富沢レイ、意を決して花道へ通じるカーテンを開けた。

「どもーーっ!」
会場に詰め掛けたファンに手を振りながら、いつもの笑顔で富沢レイはリングへ向かった。

2008年5月 4日 (日)

入場SSその4「Mighty Wings」

SPZの仕事人 小川ひかる:「マイティ・ウイング」(チープ・トリック)

横浜のお嬢様プロレス団体・SPZの東北地方を巡業するシリーズ第2戦、秋田の体育館で組まれた興行。

試合前の控室、マネージャーさんが本日のカードを貼り出す。

3.小川ひかる 30分1本 マリア・クロフォード

チーム関節地獄がミミ吉原引退により解散してからは、小川ひかるの定位置は休憩前の第3試合。そこそこの相手とのシングルマッチが組まれることが多い。

開場前の控室。ジャージ姿の小川ひかるは「よくわかる会社の内部統制とコンプライアンス」といった本を読んでいる。

あ、もう5時。もうちょっとだけ動かしとくかな。

小川ひかる、ジャージ姿で控室を出て、開場前のリングに上がり、リングの一隅で軽く受け身の練習。この選手は「やられること」が売りなのである。きょうはあまり手を合わせたことの無い外人選手相手なので、入念に準備しておかなければならない。

17時30分、開場。

「小川さん、グッズ売り場列客多いから、さばくの手伝って~」

今野社長が声をかける。この団体、初ドーム興行を成功してようやくメジャー団体の体をなしてきたが、資金繰りがかつかつなのでグッズ販売の現金収入はバカにならない。

「わかりました、すぐ行きます」
「ありがとー、今夜ハタハタおごるから。」

「はい、ありがとうございます。龍子さんTシャツ、あ、2000円になります」

そして6時半、興行開始。小川ひかるはジャージ姿のまま花道奥から客層をチェック。

「本日はスーパースターズプロレスリングゼットの興行にご来場いただきましてまことにありがとうございます。ご来場のお客様に本日のカードをご案内いたします。第1試合、シングルマッチ30分1本勝負、保科優希対渡辺智美、第2試合、タッグマッチ30分1本勝負、富沢レイ、新咲祐希子対デスピナリブレ、ミレーヌシウバ。」

まずリング上では今野社長がいつもの名調子でカードを読み上げる。

「第3試合、シングルマッチ30分1本勝負、小川ひかる対マリア・クロフォード」

ワアアアアアア!!歓声と拍手が。

「第3試合終了後、15分程度の休憩時間を頂きます。第4試合・・・」

うーん・・・

小川ひかるは頭を抱えた。カード発表のとき、客席がうんともすんともいわなければ、自分のスタイルであるじっくりとしたレスリングを見せたほうが盛り上がる。

でも今日のお客さんは、私のことをある程度知ってる・・・・
こうなると試合展開はお約束ムーブの「やられっぷり」をしっかりと展開しないといけない。しかもシングルマッチなので自分できっちり受けきらないといけない。

・・・さて、着替えますか・・・

小川ひかるは控室に戻った。たいてい草薙、南姉妹と4人が同じ部屋でスタンバイする。
小川ひかるはSPZの所属選手の中でいちばんレスラーらしくない。戸塚のSPZ本社で電話番をしていたときは来客のお取引先に事務スタッフと間違えられたほどだ。細身の身体で懸命にリングを務める。団体旗揚げの頃のファイト内容は一方的にやられまくって見ていられなかったという伝説がある。今はある程度技術や要領を覚え、そこそこの相手なら充分渡り合えるようになったが、初めて会場に足を運ぶファンはこんなコが闘うのかと、息を呑んでしまうらしい。

リングコスチュームに着替え、リングシューズを履いて紐を通す。これで戦闘準備は完了。

「南さん」

「・・・はい」

そのあと休憩明けの試合に出る南利美とロックアップの動作確認。組み合って最後の調整。

「社長と、その後どうなったの」

南利美がボソッと。ごく親しい選手しか知らないが、この選手、試合直前でも笑わせたりドキッとすることを言う。シビアな試合前に同僚やパートナーをリラックスさせようとする南なりの心遣い。

「別に、何も無いですよ。ごはん食べに行ってるだけで」

「・・・週刊誌に現場を押さえられないようにね、あなた人気あるんだから」

「・・・何言ってるんですか、もう」

そうこうしているうちに第2試合が終わった。小川ひかるは花道奥に移動。「Team Kansetsu Jigoku」のブルーパーカーを羽織る。自身のTシャツもあるが、どうも気恥ずかしいらしく入場時はTKJのパーカーかSPZTシャツを着用している。

そして、場内に流れるは「Mighty Wings」。トップガンの映画音楽だけあってカッコイイ曲調。小川ひかるのイメージに合わないとの意見もあるが、今野社長は「絶対これ、小川さんは一番好きな選手なんだから」などと妄言を吐いて押し切ったらしい。

Raging fire in my heart tonight
Higher and higher in my soul ~

ふーっ。

いつもながらこの瞬間は緊張する。でもここまできたら腹をすえて自分のレスリングをするだけ。

息を吐いてから花道に通じるドアを開けた。ジャージ姿で先導するのはハイブリッド南。そのあと小川ひかる、小走りでリングへ向かった。

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筆者より、ゴールデンウイーク取材旅行のため、明日5月5日の更新はお休みさせていただきます。あしからずご諒承のほどお願いいたします。

2008年5月 3日 (土)

入場テーマ曲SS3「DETECT」

入場テーマ曲SSその3

万能ファイター 秋山美姫:「DETECT」(C.G mix)

まだまだ残暑が残る9月の幕張コンベンションホール、

SPZ1期生の中でも器用さは随一、オールラウンドなレスリングに対応できるファイターという評価を受けている秋山美姫は黙々と会場の外周をジョギングしていた。会場中央のリングではマイトス香澄やスイレン草薙といった若手選手がスパーリングを行っている。
年季の入ったベテラン選手の調整は各人に任されているし、リング上での練習は若手選手に譲って、開場前に走ったり体操をして体をほぐす程度。

―あれから、もう7年かぁ・・・・

SPZ草創期、旗揚げ直後の5月、初代の寮「はまかぜ寮」はボロアパートを少し改装しただけの代物で、強制収容された5人の少女、保科優希寮長、南利美小川ひかる秋山沢崎・・・は喰って寝て練習漬けの日々を過ごした。食事は交代制で作ったが、練習で疲れていたのと料理ができる人がいなくて、まともなシロモノが出てこなかった。

―それでも、あの頃は、楽しかった・・・

それでもみんなでワイワイやって、懸命にプロレスを覚えた。1部屋にしかテレビが無くて、日夜男女を問わず他団体のDVDを見て盗めるものは盗んだ。南利美は完璧な関節使いの職人、沢崎は投げ技を中心とした熱血ファイト、保科は前座要員として基本に忠実、小川ひかるは壮絶なまでのやられ役。というキャラをつくりあげた。そして秋山は何でも器用にこなす万能レスラーという評価を得た。

このシリーズは「南利美引退シリーズ」と銘打たれ、チケットの売れ行きもいつも以上のものがあった。団体初代エースだった南利美が体力気力の限界を感じ、会社に引退を申し入れた。この知らせを聞いたとき、秋山は沢崎を連れ立って井上霧子に直訴した。

「最後に、南さんとタッグ選手権、やらせてください」

引退を表明した選手がベルトに挑戦するなどあり得ないのだが、そこを曲げて何とかと秋山が頼み込んで、きょう幕張メインで行われる秋山沢崎対南利美、ハイブリッド南の一戦はSPZタッグ選手権として行われることになった。

黙々と会場の外周をジョギング。そのあと長年のタッグパートナー、沢崎光と柔軟体操。

「・・・リミさんを、今日は叩き潰そう」
南利美と保科優希は同じ1期生でも年齢はひとつ上。新人の頃からメインに抜擢されて酷使され続けた南がやはり、最も早くガタがきだした。会社としてはハイブリッド南との姉妹タッグでもう一花咲かせようと考えていたが、南の衰えは予想以上のものがあった。グラウンドレスリングを得意とするもの同士で、秋山美姫は南の存在を常に意識していた、が、それも今シリーズまで。

一通りの調整を終えたので、秋山は会場ロビーの自販機でミネラルウォーターを買いに走ったが、ここで南利美と鉢合わせ。どうやら南も動けないなりに会場の外で調整をしてきたようで、汗をかいている。

「・・・リミさん、きょう、宜しく・・・・」
伏目がちに声をかけた。
南利美のほうが吹っ切れていたのか、穏やかな表情で言葉を返した。

「うん。秋山さんと・・・やれるの最後よね。思い切りやりましょう。」

そして開場時間、秋山はいつものように赤コーナー側控室に陣取った。今日の出番は当然メインイベント。身体を動かしながらモニターで前座の試合を見つめる。
午後8時33分、セミが終わる。

「さあ、行こうか!」
沢崎光がイスから立ち上がり、SPZタッグベルトを腰に巻いてから銀色のガウンを羽織る。

まず反対側花道をチャレンジャーチームの南姉妹が入場。
「ハイブリッドの方が、イレ込んでるね・・・」
モニターを見た秋山、苦笑しながらベルトを腰に巻く。そして沢崎とお揃いの銀色のガウンを羽織る。

「秋山さん、考えてることは同じだと思うけど、リミさんを思いっきりぶん殴ってきましょう!」

沢崎光も気合が相当入ってきたようだ。

南姉妹がリングインしたあと、ひとつ間を置いて、秋山美姫のテーマ曲「DETECT」が会場にかかった。なぜこの曲になったのかは秋山本人も知らない。旗揚げ直後のバタバタでいつのまにかこうなっていた。

♪Ah- Can you see the light・・・・your eyes・・・・

バリバリのテクノサウンドが会場に流れる。
「さあ、行くよーーーッ!」

沢崎光が声をかけて、花道に通じるカーテンを開けた。

「はい。」
秋山もゆっくりと後を追う。

ドワアアアアアア!!
会場もすっかりセミまでの激闘で出来上がっていた。ものすごい声援が送られる。
長い花道を歩き終えて、リングに上がって、セカンドロープとトップロープの間をくぐる。対戦相手の南姉妹を見据えた。

2008年5月 2日 (金)

23年目冬の予告編

ひっさより:本業激務で大変な状況なので、本編の更新を1週間ばかりお休みさせていただきたく存じます。

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23年目8月 横浜スペシャルホール

SPZクライマックス優勝決定ともえ戦前のインターバル。

SPZ5期生にして引退後は売れないアイドル歌手、渡辺智美が場もたせでリング上から熱唱。歌うはデビューシングル「悲しみの日本海」

♪ひとり 夜汽車の 自由席

 ふらり 旅立つ きたぐにへ

 窓枠 もたれ 外の闇

 ぼんやり、見つめ 物思う・・・

 夢破れ 恋破れ ああ

 それでも あんた いとしくて

 鉛色 涙色 ああ

 悲しみの 日本海

(なんと2番まで熱唱。横スペに詰め掛けた超満員のファンはあきれ返った。元団体所属選手で社長と同期という立場を利用してCDを売りさばくとんでもない歌手である)

 ♪姫川 渡れば 糸魚川

 荒波 流れる 朝ぼらけ

 私の 心は 遠い空

 遥かな 波間 揺れている

 夢破れ 恋破れ ああ

それでも あんた いとしくて

 鉛色 涙色 ああ

 悲しみの 日本海~

「ども、ありがとうございましたーーーー!!!」

「ここでえ、皆様に重大発表があります」

「12月、年末に、『カオスの王者』って映画が公開されるんですけど、なんと、その主役を、私、渡辺智美がやらせていただくことになりましたーーー!!」

どええええええ。

「内容は、アクション映画で地下の格闘組織で闘う女の子のお話なんですけど、アクションシーンが盛りだくさんで、しかーも、多くのSPZ関係者が特別出演しちゃいます!!」

どわあああああ。

「だからだから、ぜひぜひ年末は劇場に足を運んでくださいねえーー!!智美のお願いーーー」

放送席の吉田龍子社長がボソッと。

「あいつが主役・・・ねえ。いったいどんなずるい手を使ったのやら」

(外伝1本、ビールを飲みながらWord25ページ分書きました。 近日公開予定)

2008年5月 1日 (木)

第403回 23年9月時点のプログラムから

23年目9月

今野役員は久々にプログラムのメンテナンスを行った。

妖しのお嬢様 フレイア鏡

本名:鏡春江。2006年12月13日、長崎県佐世保市出身。井上霧子にスカウトされ、SPZ第14期生として入団し、2022年4月16日、札幌どさんこドームでのビューティ市ヶ谷戦でデビュー。持ち前の運動センスを生かし、関節技を主体としたファイトを見せる。

ビューティ市ヶ谷率いるお嬢様軍団「ジュエルローゼス」の一員としてメインやセミでも奮闘し、芝田美紀と組んでSPZタッグ王者にも輝く。市ヶ谷、北条引退後は一匹狼として前座戦線を盛り上げる。鬼気迫る表情で得意技のストレッチプラムを繰り出すシーンがたまらないというファン多数。

テーマ曲:リライト・マイ・ファイヤー(ダン・ハートマン)

野生少女 フォクシー真帆

本名:平津戸真帆。2006年8月18日、岩手県田野畑村出身。SPZの新人テストに合格し、14期生として入団。2022年4月16日、札幌どさんこドーム大会でのロイヤル北条線でデビュー。岩手県の山奥で育ったことをネタにして吉田プロデューサーが「野生少女」というギミックを考え出し、その個性的なキャラで売り出し中。

成瀬唯と組んであばしりタッグ王座を獲得するなど若手中堅選手の壁として活躍。得意技はパワーボム、ヘッドバット。

テーマ曲:ウイリアムテル序曲(ロッシーニ)

ナニワファイター 成瀬 唯

本名・同じ。2007年11月2日、大阪府豊中市出身。新人テストに合格し、SPZ15期生として2023年4月21日、釧路アリーナでのフォクシー真帆戦でデビュー。身軽な動きを生かしたプロレスで会場を盛り上げる。大阪出身らしく気合のこもったファイトで多くの固定ファンを持つ。フォクシー真帆と組んであばしりタッグ王座を獲得するなどSPZに欠かせない存在として活躍。得意技はミサイルキック、ストレッチプラム。

テーマ曲:ミオクルカラ(C.G mix)

運命戦士 氷室紫月

本名・同じ 2008年11月27日、富山県高岡市出身。中学時代からアマレスで身体を鍛え、これに目をつけた井上霧子がスカウト。SPZ16期生として2024年4月21日、仙台アリーナ大会でのマイトス香澄戦でデビュー。

レスリングセンス、そしてここぞというときの絞め技の威力はかなりのものでスリーパーで相手を落とすこともしばしば。団体トップレスラーの一員となりSPZ王者にも2度輝く。またタッグ戦線でもノエル白石と「ネイチャーガールズ」を結成しSPZタッグ王者に輝く。得意技はドラゴンスリーパー。

テーマ曲:ウォンテッド(ザ・ドゥーリーズ)

ラッキーキャプチャー ラッキー内田

本名:内田栄子 2008年10月30日、東京都多摩市出身。中学時代からアマレスで頭角を現し、SPZ16期生としてスカウトされる。2024年5月15日、鹿児島県営広場特設リング大会での成瀬唯戦でデビュー。同期の氷室とは出世競争を繰り広げ、スターライト相羽とのコンビであばしりタッグ王座も戴冠。

相羽引退後はマッキー上戸との同期コンビでジューシーペアを結成し、あばしりタッグ王座、SPZ世界タッグを戴冠。シングル戦線でもそつのない試合運びと勝負どころで繰り出す関節技で活躍し、SPZ世界王者に輝く。得意技はラッキーキャプチャー、ラッキーキャプチャーZ。

テーマ曲:ラッキー・ラブ(カイリー・ミノーグ)

Double Harmonize Shock!(I‘ve sound:ジューシーペア登場時限定)

炎の戦士 マッキー上戸

本名:上戸真紀 2009年3月8日、鳥取県倉吉市出身。SPZ16期生としてスカウトされ、2024年7月16日、青森武闘館大会での氷室紫月戦でデビュー。同期の氷室、ラッキー内田らと出世競争を繰り広げる。パワーに任せて突っ走るファイトで人気も上昇。

ラッキー内田とジューシーペアを結成し、あばしりタッグ王座、SPZタッグ王座に輝く。ツボにはまったときのパワーは計り知れないものを持っており、トップ戦線に食い込みSPZ王座に輝く。最近でも武藤めぐみのシングル連勝記録を止めるなど、実力は健在。得意技はスプラッシュマウンテン。

テーマ曲:Cheer up full throttle!(某ゲームサントラ)

悪役ファイター ライラ神威

本名:島宮香織。2009年6月16日、北海道新得町出身、SPZ17期生としてスカウトされ、2025年4月21日、釧路アリーナ大会での成瀬唯戦でデビュー。正統派レスラーの多いSPZマットにおいてヒールレスラーとして活躍。入場時には凶器を持ってのパフォーマンスを繰り広げ観客を恐怖のどん底に陥れる。

悪役パフォーマンスに目が行きがちだが、リング上でのパワーファイトもかなりのものをもっており、ボンバー来島の引退試合でスプラッシュマウンテンで投げきってカウント3を奪ったときには観客の度肝を抜いた。REKIと組んであばしりタッグ王座を戴冠。

得意技はカムイエクウチカウシ(高角度スプラッシュマウンテン)、凶器攻撃。

テーマ曲:COLLECTIVE (KOTOKO)

リングのひまわり 野村つばさ

本名:同じ、2011年3月30日、愛媛県西条市出身。SPZの新人テストに合格し、18期生として2026年7月7日、青森武闘館大会での対 ライラ神威戦でデビュー。抜群のルックスと軽やかな身のこなしでファンのハートをつかむ。イージス中森と組んであばしりタッグ王者に輝く。得意技はミサイルキック、エルボー。

テーマ曲:ほほえみのヴァネッサ(クレイダーマン)

天才姫 武藤めぐみ

本名:同じ、2010年4月4日、静岡県本川根町出身、天性の運動神経に目をつけた井上霧子にスカウトされ、SPZ18期生として2026年7月7日、青森武闘館大会での対 フォクシー真帆戦でデビュー。SPZの次代をになうスター候補として期待され、デビュー1年足らずでボンバー来島と組んでSPZタッグ王座を獲得し、2年目にはいきなりSPZクライマックス本大会に出場するなど驚異の出世街道をばく進。

そして2028年にはSPZ世界王座を奪取し、SPZクライマックスで全勝優勝を飾るなど先輩方をごぼう抜きして団体の頂点に輝き、7月にはSPZベルト連続防衛回数15回を達成してあの吉田龍子の持つ記録に並んだ。シングルマッチの連勝は29で止まったが、実力では他の追随を許さない状況。得意技はシューティングスタープレス。

テーマ曲:アメジスト(KOTOKO)

不思議系戦士 ノエル白石

本名:白石直子、2011年11月11日、新潟県糸魚川市出身。中学時代は助っ人で出た柔道大会で5人抜きするという伝説を持つ。SPZにスカウトされ、19期生として2027年4月20日、釧路アリーナ大会での対 野村つばさ戦でデビュー。細身の身体からは想像もつかない腕力の強さを持ち、氷室紫月とタッグを組んでSPZ世界タッグ王者に輝く。シングル戦線でもSPZクライマックスで優勝決定戦まで残るなど実力は急上昇し、SPZのトップグループに割り込んできた。得意技はSTO。

テーマ曲:ラジオスターの悲劇(バグルズ)

ザ・クノイチ REKI

本名:大門敬子、2012年8月18日、山梨県早川町出身、幼少の頃より忍者としての修行を積み、対人格闘術の修行のために流派の壁を越えプロレスの道を選び、SPZ20期生として2028年4月16日、京都市体育館での対野村つばさ戦でデビュー。忍者ならではの軽快な身のこなしを生かしたファイトで観客の度肝を抜く。ライラ神威のパートナーに起用され、あばしりタッグを戴冠。得意技は農鳥(変形ミサイルキック)

テーマ曲:二人の擲弾兵(シューマン)

ヤングライオネス イージス中森

本名:中森かずさ、2012年11月29日、徳島県徳島市出身、SPZ新人テストに合格し、20期生として2028年4月16日、京都市体育館でのキューティー金井戦でデビュー。練習熱心な性格で、関節技を主体としたキビキビしたファイトを繰り広げ、武藤めぐみと組んでSPZタッグ王者に輝き、トップグループまであと一歩に迫ってきた。得意技はストレッチプラム。

テーマ曲:you give・・・(川田まみ)

暗黒の空手家 コンバット斉藤

本名:非公開。2014年3月4日、三重県四日市市出身、中学時代までは空手に打ち込んでいたが、強すぎて対戦を断られるようになり、プロレスに転向。SPZ21期生として2029年4月21日、釧路アリーナ大会での対イージス中森戦でデビュー。空手の経験を生かした打撃技は強力。上段蹴りのジェットスマッシュが決まれば上位でも通用する。REKIと組んであばしりタッグ王者に輝く。

テーマ曲:LAMENT(KOTOKO)

悪の狼 マーメイド千秋

本名:川上千秋、2015年1月5日、鳥取県境港市出身。SPZ22期生として2030年5月11日、鹿児島県営公園大会の対コンバット斉藤戦でデビュー。セイレーン千春と姉妹同時デビュー。セイレーン千春海外遠征後は、小気味いいヒールファイトで前座戦線を盛り上げる。得意技はフィッシャーマンバスター。

テーマ曲:SEEK&DESTROY(メタリカ)

温泉プロレス ケンドー・カミスワ

本名:非公開 生年月日:不明 長野県上諏訪温泉出身。上諏訪温泉の老舗旅館の娘らしい。SPZ22期生として2030年6月9日、沖縄体育館大会での対フォクシー真帆戦でデビュー。上諏訪温泉の効能を伝えるためか、どてらを着て入場し、温泉マーク入りの覆面でファイト。TWWA,ついでGWAで暴れ回り、上諏訪温泉をワールドワイドにするため奮闘。得意技は脇固め。

テーマ曲;木曾節(長野県民謡)

悪の超新星 ナイトメア神威

本名:高瀬真美 2015年7月16日、北海道新得町出身。その身体能力の高さに同郷のライラ神威が目をつけ、SPZ23期生として2031年5月10日、高知県体育館での対成瀬唯戦でデビュー。駆け出しだが、持ち前のパワーを生かしたレスリングで外国人選手にも白星を挙げるなどただの新人ではないところを見せる。得意技はタイガードライバー。

テーマ曲:レクイエム、怒りの日(W/A/Mozart)

レフェリー 井上霧子

1980年9月15日、神奈川県川崎市出身。1995年5月1日、関東女子プロレス・後楽園プラザ大会のユリシーズ島宮戦でプロレスデビュー。2004年11月に現役引退。SPZには旗揚げ前から社長秘書兼レフェリーとして参加。選手のまとめ役として貢献。2019年からはSPZ社長代行として団体フロントの顔としても活躍。近年は一部スポーツ紙上で酒びたりであることが暴露され、2027年8月に酒気帯びレフェリング事件が発覚し、社長代行の座を退いた。現在はSPZ取締役として主に前座試合のレフェリーを務める。

レフェリー 伊達遥

1993年10月23日、宮崎県都城市出身。SPZの一期生として旗揚げ直後から参加し、2009年6月20日根室市体育館、アリシア・サンチェス戦でデビュー。SPZ草創期から団体を支え続け、SPZ初代王者として団体エースとして活躍。2019年2月、現役引退。井上霧子の推薦でレフェリーに転向。井上霧子がフロント業に駆り出される中、2030年に結婚し、現在は非常勤でレフェリーを務めている。

レフェリー 吉田龍子

1997年11月13日、熊本県八代市出身。2013年4月11日、札幌キターアリーナ大会での富沢レイ戦でデビュー。2022年3月、現役引退。引退後はSPZコーチとして若手の育成に当たる一方、ボンバー来島、菊池理宇の後見人として「吉田キラーマシン軍」を結成。第1試合前のMCを勤める。2027年8月、井上霧子のあとをうけて3代目のSPZ社長に就任。バランスシートも読めない社長でSPZの将来をお先真っ暗にすること確実。社長業のかたわら後半のレフェリーもつとめる。

レフェリー ロイヤル北条

本名、北条美雪。2006年2月7日、富山県氷見市出身。SPZ13期生として2021年4月21日、釧路アリーナ大会での芝田美紀戦でデビュー。2030年1月、現役引退。引退後はSPZに残り、若手選手のコーチをする傍ら、レフェリーを務める。現役時代の動き同様キビキビとした動き、かつ厳格なレフェリングは好評。

リングアナウンサー 村越忠幸

1984年6月11日、東京都八王子市出身。2019年4月入社、営業課長兼リングアナウンサーとして団体を陰から支える。2児のパパで趣味は料理。

リングドクター 羽山海

1987年6月21日、鹿児島県上屋久町出身。帝王大学医学部を卒業後、蝦天堂大学病院で外科医として勤務。プロレス観戦好きが好じ、「タダでプロレスが見られる」という今野元社長の甘言に乗り、SPZにリングドクターとして随時参戦。得意技は注射で、選手全員から恐れられている。

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