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2008年6月 6日 (金)

第424回 大事件、それから

24年目(AD2032年)4月、SPZで磐石の女帝となっていた武藤めぐみが、21期のコンバット斉藤に不覚を取ってしまった。ジェットスマッシュを食らってしまって昏倒。

が つ。

武藤めぐみ、頭に直撃弾を食らって失神。そのまま3カウントを聞いた。勝負タイム15分40秒。

(評価差450をひっくり返したコンバット斉藤、この記録は過去最高です)

ええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ!

名古屋のファンは絶句

「か、かいせつの吉田さん・・・・」

「うっわー・・・・・入っちゃいましたねえ」

あの天才姫・SPZ王者武藤めぐみがダークフラクションのナンバー3に敗れるとは。ノンタイトル戦だったからよかったもののこの試合にもしベルトがかかっていたらと思うと・・

敗れた武藤、気がついても何が起こったのか理解していない様子。そのまま担架で運ばれた。どよめきと悲鳴が交錯。恥ずかしさと屈辱に顔を覆う武藤。

「気にすんな、打撃が入っちゃうのはよくあることだ」

けっきょく武藤めぐみは大事を取って、吉田社長の運転する車で名古屋市内の病院に運ばれ、そのまま一夜を明かす破目になった。

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「・・・・・・・・・・・・・」
ざわめきが収まらないまままま始まった名古屋大会メインイベントはSPZタッグ戦。王者ライラ神威、REKIに挑むのは元王者ノエル白石、氷室紫月組。

しかしライラ神威が反則、ラフファイトで場内をあおってもセミで起きた戦慄失神劇の余波でお客さんがついていかない。こういうときに実力を発揮するのが氷室、じわじわと攻めてREKIをストレッチプラムで痛めつけてゆく。

あーもう、リアクションわりーなあ・・・

いくら氷室を殴ろうが蹴ろうが、客席からの反応は乏しい。セミで武藤めぐみの失神シーンがみんなの目に焼きついてしまっているのだ。

それでもライラ神威、渾身の力でノエル白石を担ぎ上げてカムイエクウシカウチ。カウント2で返すノエル白石。しかしこれでノエルも本気になってSTOで反撃。全身を強打したライラ。これで後をREKIに託さざるを得なくなった。

REKIとN白石の局面、ノエル白石がREKIにもSTOを仕掛けて追い込んで、
「えっと・・・」
パワーボム炸裂。これで3カウント、ノエル白石・氷室組が30分22秒の激闘を制し、タッグ王者に返り咲いた。

「ケッ覚えてろ」

タッグ王座を失ったライラ神威。倒れ伏すパートナーのREKIには目もくれずスタスタと引き揚げた。

そして、控室で覆面を脱いでボソッとひとこと。

「きょうはコンバット斉藤に負けたよ。セミでお客さんはおなかいっぱいになってましたね」

弟子(舎弟?)の予想外の活躍に苦笑い。

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SPZ世界タッグ選手権(60分1本勝負)

○ノエル白石、氷室紫月(30分22秒、パワーボムからのエビ固め)ライラ神威、REKI×

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翌日は東京に戻って、最終戦新日本ドーム大会。

武藤めぐみ、名古屋市内の病院に一泊したあと朝一で精密検査を受けたが異常は見当たらなかったので、名古屋近くできしめんをかき込んだ後、昼過ぎの「のぞみ(グリーン車)」で東京へ向かった。

「ま、無事でなによりやな。昨日の事は犬にかまれたと思うしかないで、気持ち切り替えていこか」

付き添いの成瀬唯が言葉をかけるが、武藤めぐみ(サングラスと野球帽で変装していた)は窓外を眺めていた。

「・・・・・・・・・・・・・・・・・」

新人の頃、ボンバー来島と組んで出たタッグリーグでデイジー・クライに蹴りつぶされて失神に追い込まれた。あれから5年あまり、練習をかさね、プロレスの技術も上達し、不動のトップ選手となり女王、女帝と呼ばれるに至ったが、まず勝てると思っていた後輩相手に同じ負け方をしてしまった・・・・

よりによって最終戦新日本ドーム大会では武藤めぐみ、メインでSPZ戦が組まれている。そして相手はよりによって・・・

東京駅で「のぞみ」を降りた二人。何気なく見た駅の売店では、入荷したばかりの京スポ新聞が並べられていて、一面トップに自分の名前があった。

「むとめ 失神KO」

きのうの悪夢を思い出したのか、武藤めぐみの顔がこわばった。 

「・・・・・今日、出たくないな・・・」

 「武藤はん・・・」

武藤めぐみ、反対側の階段からコンコースに駆け下りた。

「武藤はん、ちょっと、お茶でも飲もうか」

東京駅構内にあるフルーツパーラーに武藤をつれこんだ成瀬唯、パインジュースを2人分注文してから、

「読みイや」

成瀬唯が今さっき買った、京スポ新聞を武藤の前に差し出す。

「えっ・・・」

「武藤はん、いいから読みイや。目を背けてもなんの解決にもならんで。若林さんなら悪くは書いとらんから」

先輩に云われては仕方がない。武藤めぐみ、震える手で京スポ新聞を手にとり、記事に目を通した。大写真はジェットスマッシュを食らった瞬間の写真が載っている。

(「ええええええええ!」名古屋で大事件が起こった。SPZ最強王者、武藤めぐみ(21)まさかの失神KO負け。名古屋しゃちほこドーム大会、セミファイナルで行われた、対コンバット斉藤(18)戦で、ジェットスマッシュをまともに食らって失神するというアクシデント。格下のコンバット斉藤にフォール負けを喫した。試合後も起き上がれなかった武藤は担架で運ばれ、大事をとって名古屋市内の病院に直行。吉田龍子社長(34)は「たまたま蹴りが入っちゃっただけ。あれはアクシデントだよ」と武藤をかばったが、24時間後に迫ったSPZタイトル戦、防衛に黄信号が灯った。

「あひゃひゃひゃひゃ!武藤のアホウが、日ごろの行いが悪いからこうなるんだ。別に無理して出てこなくてもいいんだぜ、そのまま病院で休んでろ。ドームはあたしの不戦勝だウァハハハハハ」きょう新日本ドームでSPZ女王の座を争う、悪の軍団ダークフラクションの首領・ライラ神威(22)が早くも勝利宣言。舎弟が前日深手を負わせて、首領が当日トドメを刺す腹づもりなのか。

しかし、歴史を紐解くまでもなく、悪は必ず滅びる。きょう新日本ドーム、われらがヒロイン、武藤めぐみは必ず不死鳥のようにリングに現れて、他人の不幸をあざ笑う人間の風上にも置けない悪の権化・ライラ神威に正義の鉄槌をガツンと下すであろう。ファンもそれを信じている。(若林太郎)

「ぷっ」

武藤めぐみ、ベタな書きっぷりに思わず笑ってしまった。

「がんばろうや、あんたならあんなやつ、チョチョいのチョイやろ」

「・・・はい。」

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そして新日本ドーム大会。

セミファイナルで「コンバット斉藤7番勝負最終戦」。これまで3勝3敗の五分なのでなんとしても勝っておきたいところだが、最終戦の相手はテクニシャンタイプの実力者、20期生イージス中森。あまり分の良くない相手だ。

案の定試合はイージス中森が優勢、コブラツイストでじわじわと攻める。しかし懸命に耐えるコンバット斉藤。そのまま時間が過ぎて30分タイムアップ。

「はぁ・・・はぁ・・・」

これでコンバット斉藤7番勝負は3勝3敗1分け、勝率5割となった。勝ち越しこそできなかったが、武藤めぐみに勝ったのは今後を考えると非常に大きい。

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メインはSPZ戦、王者武藤めぐみに挑むのは元王者でDFの首魁・ライラ神威。前回、昨年12月の対戦(さいたまドーム)ではライラ神威が勝っているので気の抜けない相手。

「青コーナー、SPZ永久チャンピオン、らいらー、かむーいー」

「赤コーナー、静岡県本川根町出身、SPZ世界選手権者、むとー、めぐーみー!!」

ドワアアアアアア

「おい、武藤めぐみのクソバカ、この氏にぞこないが、一生病院から出られないように、トドメさしてやるぜ、キェーーーーーー」

舎弟のコンバット斉藤が出会い頭とはいえ武藤に勝っているのに、ボスのライラ神威が負けるわけには行かない。無茶苦茶言ってから武藤に襲い掛かるライラ神威。

しかし今回は武藤めぐみの気合の入り方が違っていた。
前日の名古屋でコンバット斉藤に失神に追い込まれ、病院で一夜を明かし、今日新幹線で上京。王者のプライドはズタズタであった。そして難敵、ライラ神威と相対。

ー昨日は昨日。目の前の相手を倒すだけ!!

武藤めぐみ、早い段階でローリングソバットを仕掛け主導権を握る。しかしライラもヘッドバットで反撃。頭を狙う事で心理的にもダメージを与える。

しかし武藤、15分過ぎに優位に立ちダイビングプレス。これでライラ神威の動きが止まった。

「覚悟して」
ムーンサルトは2.5で返したライラ神威、ブレーンバスターで反撃して、

「ブッコワレロー」

カムイエクウチカウシ発動、しかし武藤、カウント2.5で返して、飛びつき腕ひしぎで反撃!!

クッ・・・腕が・・・

何とかロープに逃れたライラだったが、続くノーザンライトスープレックスを返せなかった。22分59秒、王者が初防衛に成功。

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SPZ世界選手権(60分1本勝負)

武藤めぐみ(22分59秒、ノーザンライトスープレックスホールド)ライラ神威

第67代王者が初防衛に成功

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「勝った・・・・・」

なんとか極悪人を下した武藤めぐみ、荒い息をつきながら勝ち名乗りを受け、疲れきった表情で引き揚げた。

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