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2008年6月27日 (金)

第440回 所沢決闘

最終戦さいたまドーム大会。

「所沢決闘 SPZ世界選手権 チャンピオン 武藤めぐみ 対 チャレンジャー コンバット斉藤」

の大看板が掲げられた。

14:00、コンバット斉藤が会場入り。横浜の寮からライラ神威の運転するパルサーに乗って、決戦の地、さいたまドームへ向かう。

ライラ神威、パルサーのハンドルを握りながら呟く。

「ふっふっふっ、まあ楽しんでこいや。一度目の挑戦だろ。たとえ取れなくてもお客さんは喜んでくれるべ。二度目からはそうも行かんけど」

コンバット斉藤、SPZ女王の座のベルトに挑むのはこれが初めて。4月に七番勝負で武藤めぐみにはじめて勝ったときは、「まぐれ」と会社上層部に判断されて、翌々月の6月のさいたまドームでリマッチのノンタイトル戦が組まれて、そのときは武藤に圧殺された。

しかし8月のSPZクライマックス本割りでジェットスマッシュからのデスバレーでコンバット斉藤が勝ってしまい、しかもそのままSクラを制覇してしまったのだから、いかにSPZ上層部といえども今度ばかりはタイトル戦を組むしかなかった。

(万が一斉藤が勝っちゃったら、DFも位置づけが変わるかもな・・・・)

ライラ神威は車を走らせた。

15時20分、武藤めぐみが会場入り。戸塚の社宅アパートの自宅から、成瀬唯の運転するヴィッツで会場入り。

「ま、武藤はんがどうにかなっても乗せて帰ってやるさかい、きばってやりいや。」

「・・・縁起でもない事言わないでください」

16:15

武藤めぐみ、陽が傾いた西武第二球場の外野を黙々と走りこんで調整。レフト線からライト線までを黙々と往復。そのあと芝生の上で成瀬唯とストレッチ。

ー蹴りさえもらわなければ、勝てる相手。

でも闘いに100%はないと言うことは武藤めぐみ、よくわかっている。あのジェットスマッシュは脅威だ。成瀬も心配な表情。

「しっかりしいや!」

「・・・わかってるわよ」

16:30

コンバット斉藤はさいたまドームのリング上で受け身の練習。普段は試合前の練習をあまりやらないライラ神威もリングに上がってコンバット斉藤を投げる。

「ふっふっふっ、勝ったら立川のグランドパレスで祝勝会しちゃるから、せいぜい頑張れや、まあ負けても上北台の『すしおんど』で残念会してやるから安心しろ」

「・・・クルマはどうするんですか」

「今野のおっさんにでも預けるよ、酒気帯びはまずいからな、一発取り消しだから、ガッハハハハ」

たあいもない話をしながら練習するライラ神威とコンバット斉藤、REKI。

17:30

「開場しまーす」

今野役員が開場を宣する。それまでリングを占拠して調整を行っていたDFの3人はいったん控室に引き揚げる。

客の入りはいつも以上。SPZ絶対王者とSPZクライマックス覇者がぶつかるのだから。当日券もたちまちのうちにはけてしまった。超満員札止め。

17:40

西武第二球場で最後の調整を行っていた武藤めぐみと成瀬唯が、関係者入り口から控室へ戻った。さすがに表情が硬い。

18:25

グッズ売り場でひと稼ぎした今野役員と村越リングアナが関係者通路を歩いて本部席へ陣取る。今野役員はいつものように缶コーヒーでひと息。

「グッズ売れなくなったね・・・」

先月でラッキー内田と氷室が引退した影響は甚大。そのままノートパソコンを立ち上げて、左腕に巻いたオメガの腕時計の秒針を睨む。

18:30

カン、カン、カン、カン、カン・・・・

今野役員がゴングを木槌で5回叩き、リングに上がった村越アナがいつものように本日のカードを読み上げる。メインイベントのところで拍手が。

18:37 そして場内に鳴り響いた、野村つばさのテーマ「微笑みのヴァネッサ」。ドワアアアと沸く。

第1試合は野村つばさ対ジーナ・デュラム。

弱気な性格のジーナのファイトを読んで、先手先手と攻めた野村が9分29秒、ダイビングプレスで勝利。

「みんな、やったよーーーー!!」

そのころコンバット斉藤はジャージ姿のまま、DFの控室で固まっていた。

「おう斉藤さん、ガラにも無く緊張しとんのか」

「い、いや・・・そんなことでは」

無理も無い。ドームのシングルメイン。しかもSPZ王座が目の前にかかっている。初挑戦なので緊張するなというほうがおかしい。

ライラ神威、察したのか、

「ちょっと来い」

関係者駐車場へ連れて行って、パルサーの助手席に押し込んでからクルマを発進させた。

「ちょ、どこへ・・・」

「すぐ、そこだ」

場内に鳴り響いたのは「SEEK&DESTROY」

18:50、第2試合はセイレーン千春&マーメイド千秋の悪の姉妹コンビが出陣。しかし対戦相手はハムル・シアター&パトリシア・ルイスの新あばしりタッグ王者チーム。

やはり実力微妙のセイレーン千春が捕まってしまい劣勢に立たされる。この選手、2年間の海外生活で何をやってきたのかと思うくらい成長していない。妹のマーメイド千秋が懸命にリードしたが、出ずっぱりになってしまったところを合体パイルでやられて終了。勝負タイム18分31秒。

「ちっくしょー、覚えてろよ・・・」

痛々しい表情で引き揚げるマーメイド千秋。

そのころ多摩湖畔の遊歩道。さいたまドームからは車で2分もしない。湖畔の土手の上、ライラ神威がミットを構えた。

「まあ気分転換に蹴ってみろや、軽くな」

19:17、館内に「ミオクルカラ」が流れて、第3試合は、成瀬唯対ワイルドローズ2号。

「いくでぇーーーーー!!」

団体最古参の成瀬が大声援を受けてぶつかっていったが、ワイルドローズ2号のほうがパワーが断然上。最後はSTOに敗れ去った。この試合が終わるころ、10分間の休憩。

パシン、パシン・・・

宵闇の多摩湖畔、コンバット斉藤が蹴りを一心不乱に打ち込む。迷いを断ち切るように。

「まあ、あんたが勝ったらSPZの歴史が変わるかもな。DarkFractionの存在理由は、武藤のアフォをぶっ潰すことだからな。そうなったらDF解散してこんどはお前を狙おうかな・・・ハハハハ。でも、こういう事はなるようにしかならんよ。氷室さんの言葉を借りれば運命だよ。とにかく、マトにむかって思い切り蹴ってこい。結果は気にしなくていい」

ライラ神威が蹴りを受けながら呟く。

「はい!」

ようやくコンバット斉藤の迷いが吹っ切れたようだ。

「おーし、そろそろ後半始まるから、戻るか、乗れや」

ライラ神威がパルサーを発進させた。

19:40 場内に「you give・・・」が流れ、休憩明けの試合には仕事師・イージス中森が登場。対戦相手は久々来日のチョチョカラス2。イージス中森もよく粘ったが、相手は今のメキシコ最強クラスの選手。バックドロップに敗れた。勝負タイム15分50秒。

「まだまだ・・・確実性が無いですね・・・」

がっくりとした表情で引き揚げるイージス中森。

19:55 武藤めぐみがリングコスチュームに着替える。そのあと成瀬唯と組み合ってロックアップの動作確認。

ライラ神威、さいたまドームに戻って急いでリングコスチュームに着替えて自分の試合へ。

20:00

「うっ・・・あう、あうううううん!」

そしてセミファイナル6人タッグ戦、悪趣味なテーマ曲が流れて、DFの面々が登場。ライラ神威、今回は入場時のパフォーマンスを割愛。この時点で常連ファンはアレレと思った。

ライラ神威、REKI,ナイトメア神威。対するはマッキー上戸&Jビーチ&ジェシービートンの混成タッグ。このあたりに現在のSPZのカード編成の苦しさが見て取れる。

「ヒャーハハハハハハ」

試合のほうはライラ神威が冷静に分断作戦を成功させ、Jビーチをカムイエクウチカウシで仕留めた。勝負タイム12分56秒。

コンバット斉藤も迷彩色の空手着を羽織り、リングシューズを履いて戦闘準備完了。セミの最後のほうをモニタで観戦。

「ウァハハハハ、ウィー、アー、DARK FRACTION!!」

ライラ神威がマイクでひと声発してから、花道を手早く引き揚げた。出番を待つコンバット斉藤に一言。

「エンジョイ!!」

ライラ神威、ペットボトルの水を一口飲んで、シャワーも浴びずに黒いジャージに着替えるや、セコンドにつくべく本部席へ向かった。

*********************************

20:20 そしてメインイベント、

「立ちはだかる敵は、倒すのみ」

まず場内に響いたのが「LAMENT」ピアノのイントロから悲しげな詩が場内に響く。コンバット斉藤がしっかり前を見据えてリングイン。

「さて、いきましょうか!」

そして次にかかったのが「amethyst」こちらも哀調を帯びた歌だ。武藤めぐみが一歩一歩花道を歩いてリングイン。

SPZ王者武藤めぐみに挑むのは先月のSPZクライマックスで優勝したコンバット斉藤。久々に殺伐とした雰囲気。

京スポ新聞若林記者による認定証の朗読、チャンピオンベルトの返還と続いて、村越リングアナが両者のコールを行った。

「青コーナー、挑戦者、三重県亀山市出身、こんばっとー、さいーとー」

「赤コーナー、静岡県本川根町出身、SPZ世界選手権者、むとー、めぐーみー」

20:29、運命のゴング。裁くレフェリーはロイヤル北条。

「かいせつの吉田さん、この試合どちらが有利でしょうか」

「んー、まあ・・・・そりゃあチャンピオンの武藤ですね。技術やセンスなら比較にならないですよ。コンバット斉藤が勝つとしたら打撃で意識ごともっていくしかないですね。」

「やっ」
武藤いきなり先制のドロップキック2連発。しかしコンバット斉藤も掌底でお返し。

「やっ」
しかし武藤、うまく組み付いてアームホイップで軽快に投げてゆく。この当たりの組み立てのうまさはさすが。

「せいっ」
武藤、早めの仕掛けで、ローリングソバット2連発。この技が決まりだすと武藤は調子がいい。コンバット斉藤、はじめてのSPZタイトルマッチで緊張しているのか、なかなか手数が返せない。焦りの色が出てくるが、

「・・・いかんなぁ、ガンガン行けよ」

リング下からライラ神威がアドバイス。

「しょうブッ」

腹をくくったコンバット斉藤、武藤が間合いをつめてくるところを、不意打ちのジェットスマッシュ!!

「アーッ!!」

大きく吹っ飛ぶ武藤めぐみ。ジェットスマッシュがモロに命中。この一撃に場内沸いた!ひょっとしたらひょっとするのか。

「せいっ」
そしてコンバット斉藤、裏拳。頭にスコーンとはいった。空手経験者だけあってこの選手の裏拳は危険なのだ。もう一発裏拳。こんどは顔面に入った。

「うっわ・・・」

かいせつの吉田龍子も慄然とした表情。いまのはまともに入った。

「ぐっ・・・」
武藤めぐみ、口元から流血。怯んだのを見逃さず、コンバット斉藤がブレンバスター。そのあとのフォール。

ワン、トゥ・・ドドドドドド!!

カウント2で返す武藤めぐみ、

「くっ・・・・よくも・・・」

武藤DDTで反撃、しかしコンバット斉藤すばやく立ち上がって、

ー思いっきり、蹴る・・・・

「ハアアアーッ!」

裂帛の気合いとともに飛燕脚。
バシバシバシィッ!
下段中段上段の蹴り連打3連発。いずれも体重がきっちり乗っている。

武藤めぐみ前のめりに倒れる。これはダメージが大きい。

「押さえろっ!」ライラ神威が叫ぶ。

C斉藤、ひっくり返して片エビで押さえ込む。

「ワン、トゥ・・・」

「武藤はん、返せーーーー!!」

「スリー!!」

ロイヤル北条レフェリーの手がマットを3つ叩く。これで試合は終わった。今野役員がゴングを叩いて、村越リングアナが結果をコール。
「29分50秒、飛燕脚からの片エビ固めで、コンバット斉藤の勝ち」

*************************

SPZ世界選手権(60分1本勝負)

コンバット斉藤(29分50秒、飛燕脚からの片エビ固め)武藤めぐみ

第68代王者が5度目の防衛に失敗、コンバット斉藤が第69代王者となる

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20:59

「勝っ、た・・・・」
21期生のコンバット斉藤、SPZベルトに初挑戦で即戴冠。

「か、かいせつの吉田さん・・・・・・」

実況の伊藤アナウンサー(大日本テレビ)も絶句。

「うーん・・・・・一発を持っている選手は・・・うーん、こういう結果があるんですかね・・・」

REKI,ナイトメア神威、マーメイド千秋がリングに上がってコンバット斉藤に駆け寄る。ライラ神威はなかなかリングに上がれなかった。

「今野さん、タオル貸してよ・・・」

タオルを顔に押し当てるライラ神威。涙が止まらないことにはリングに上がれない。

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