外伝SS あきらめなければ、夢はかなう(9)
完全妄想作話
2036年(SPZ28年目)12月1日 ギムレットホール グランドオープン記念タッグトーナメント
これまでのあらすじ
SPZ10期の知性派レスラー、ギムレット美月は自らプロレス会場を作り、使用料収入で食べて行こうと考え、自前のプロレス会場「ギムレットホール」を東京調布に作ってしまった。新会場落成をアピールするために、これまで参戦したインディー各団体に声をかけてワンナイトタッグトーナメントを企画した。自らもキューティー金井(SPZ12期)と組んで出場したが、あえなく1回戦でSPZの中江・藤原組に敗退・・・
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「ゼェ、ゼェ、ゼェ・・・」
控室、藤原和美がコスチューム姿のまま荒い息をついていた。中江里奈も床の上に手折れ込んでいる。1日3試合は新人には酷だ。1回戦は落ち着いてG美月、Q金井組を下したものの2回戦であいちおいでんの二人と18分の熱戦を演じてもう疲れきっていた。こんなんで決勝戦を闘えるのだろうか。
「さあ次は決勝だ!気合入れていけよ!無様な負け方したら道場帰って、特訓させるからな」
付き添いできた上原今日子部長が二人を叱咤激励する。
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リング上、ライラ神威レフェリーが時間調整をかねてMC。ここまで短い試合時間が多く、進行が早かったためマイクを取った。
「おうおうおうおう、くされギムレット美月ファンども、くされギムレット美月ファンどもよ」
ライラ神威の毒舌は健在。
「セミファイナルの前に、おまえらに重要なお知らせがある。ライラ神威プロデュース酒場、『トムラウシ』が先日横浜にオープンした。石川町駅から徒歩3分。ホッケやジャガイモとかの北海道料理がメインなんだだが、鈴波さんとこで覚えたカルボナーラやペペロンチーノもあるぞ。いいかあ、お願いじゃなくて命令するぞう。割引券ばら撒いてやるから食べに来い。以上。グハハハハハハハ」
結局それがいいたかったのですか。自らが経営する飲み屋(さすがにオープン直後で集客に苦戦しているらしい)の宣伝をせんがために、この興行のレフェリーを引き受けたようだった。このあと観客全員に「トムラウシ」の宣伝ビラと「ご飲食代金10%引き」券が配られた・・・・
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「おじさん、そろそろ出番です。宜しくお願いします」
会場外のマイクロバスの中が男子選手控室。(さすがに参戦団体の数が多く控室が足りなかった)美月社長が後部座席の男に声をかける。
「ほんじゃあ、行きますか、綿貫さん」
後部座席でタバコを吸っていた、まるまる太った中年レスラーがメガネを外し、「食通」と書かれた黒いジャンパーを羽織る。
「はい。適当にやってきましょう、菅原さん、やられ役お願いしますね」
がっしりした体格の中年レスラーも「酒豪」と書かれた黒いジャンパーを羽織る。
「うい。」
細身の中年レスラーがメガネを外し、赤いロングガウンを羽織り首筋にタオルを巻く。
そして場内に流れる「今夜はドント・ストップ」これだけで場内は沸いた。
第7試合セミファイナル、決勝戦の前の休憩という意味合いもあって、東京エクストリームプロレスから看板おっさんレスラー3名、ヒロポン粕谷(TEP社長)、コットン綿貫(TEP看板レスラー)、菅原きよし(TEP実力派レスラー)の3名がリングイン。もう3人とも50代だが、動けないぶんファイトに円熟味が出てきている。
対戦相手は謎の覆面レスラー3人。ポテト1号&ポテト2号&ポテト3号。ジャガイモを模した覆面を被っている。どうみてもインディーの若手に覆面をかぶせただけのかませ犬だ。
「きゃおう!!きゃおおう!」
軍服風のロングズボンをはいた菅原きよしが相手の攻勢をある程度受けてから、反撃開始。まず菅原が逆水平チョップでポテト1号を怯ませ、コットン綿貫にタッチ。
「おーりゃーーー!!」
黒いロングタイツ姿がまぶしいコットン綿貫のバックドロップが相手を朦朧とさせる。
「菅原さん!逆カット」
コットン綿貫の指示で菅原きよしがポテト2号を場外に釘付けにする。コットン綿貫もポテト3号をコーナーに押し込んで離さない。さくっと分断に成功。このあたりはさすがベテランのうまさ。
「おら・・・よっ!」
最後はヒロポン粕谷が特別出演。体重が負担のせいか、もうあまり動けなくなっておりこの日もスパッツに白いTシャツを着てのファイト。それでもダウンしたままのポテト1号へ巨体を利したエルボードロップがグサリ。そのままのしかかってフォール。この一撃でポテト1号を沈めた。
「8分22秒、ヒロポンアタックからの体固めで、ヒロポン粕谷、コットン綿貫、菅原きよし組の勝ち」
ヒロポン!ヒロポン!ヒロポン!ヒロポン!
場内に轟くヒロポンコール。さすがの存在感だ。勝ち名乗りを受けた後、意気揚々とおじさん3人は引き揚げた。
「今日はどうもありがとうございました」
美月社長がマイクロバスへ出向き、3人にギャラを手渡す。
「ハア、ハア、フウ・・・初めての会場ってのはいいねえ。おじさん疲れちゃったよ」
ヒロポン粕谷と美月が言葉を交わす。若手の頃、ギムレット美月は新人だったキューティー金井を伴って東京エクストリームプロレスの興行に足を何回も運び、プロレスの勉強をしていたことがある。
そしていよいよメインイベント。ワンナイトタッグトーナメント決勝戦、
藤原和美&中江里奈(SPZ) VS ミラクルひばり&ファンタやまばと(さいたまソウルプロレス女子部)
(続く)
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