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2009年1月31日 (土)

第599回 最後の1試合

30年目10月

そして最終戦、東京・水道橋の新日本ドーム大会

コンバット斉藤最終試合

の大看板が。

毎回集客に苦労する新日本ドーム興行だが通常のSPZ人気に加えあのコンバット斉藤の引退試合ということで超満員札止め、当日券も即はけた。

過去の実績(SPZでの暴れっぷり・・・)からいって、吉田龍子、ビューティ市ヶ谷、武藤めぐみクラスの「大横綱級絶対王者」が引退するとあって、盛り上がりはすごいものがあった。

「コンバット斉藤Tシャツが半額です!1000円~」

会場前は特設テントでグッズ販売の追い込み。全47都道府県にあるグッズショップからコンバット斉藤グッズが集められ、半額プライスで「投げ売り」される。明日からはタダの人なので、レスラーのうちに売りさばくのがSPZなりの配慮。今野役員をはじめ裏方スタッフは大わらわ。

Tシャツやマグカップ、タオルといった定番グッズのほかに、あの売れまくった水着写真集「JET SMASH」も再版され、特設テントで販売された。この写真集がきっかけで人気面も大ブレイクしたのである。

前夜を三重の実家に泊まったコンバット斉藤は、名古屋から午前中の新幹線で新横浜に出て、昼過ぎから戸塚のSPZ道場でラッキー内田コーチを相手に軽く調整。

―長いようで短かったかな・・・・
ラッキー内田が構えるミット相手にいつもの通り蹴りを打ち込む。

「初めて当たったとき、えらい子が入ってきたって思いましたよ」
ラッキー内田が昔を思い出してつぶやく。

打撃の破壊力はあの伊達遥を上回る。全盛期の武藤めぐみを失神KOに追いやったのはファンの間で語り草になっている。

「さ、ラスト、どかんと来い!」

「はい。」

ばしぃっ!

調整でもけっこうな威力の蹴り。「ジェットスマッシュ」という呼び名はあまりの威力がSPZフロントに広まり、「すごい名前つけようぜ」などと吉田龍子社長が言い出し、戸惑う本人をよそに今野役員が「ズバッと決まるからジェットスマッシュってのはどうかな」と言い出し、それに決まってしまったという逸話がある。

午後5時、

売れまくったグッズ、乱れ飛ぶ千円札と一万円札。ようやく全グッズが完売となった。

「ありがとうございました。これで斉藤さんに退職金が出せます」

今野役員がテント前で一礼。紙袋を手にしたファンはどっと沸いた。

コンバット斉藤、きょうの対戦相手も油断ならないのでまだ道場で受け身の確認をしていた。頭から落とされることの多いSPZマット。コンバット斉藤は人一倍の努力を重ねて(特訓の量は小川ひかるや菊池理宇並みだった)プロレスの受け身を覚え、絶対王者の下地を作ったのである。

「そろそろ、行きましょうか」

内田コーチが声をかける。

「はい」
コンバット斉藤、トレーニングウェアのまま道場を出て、迎えの車に乗る。

「おう」
白いワンボックスから出迎えたのはなんとライラ神威(現・居酒屋トムラウシ店主)。私服姿だし覆面も被っていないが雰囲気はあまり変わっていない。

「島宮さん・・・」

「ふっふっふっ、お店を松本に任せて、来てやったぞ。負けザマ見届けてやるぜ」

「・・・・・まあ、なんとかしますよ」

コンバット斉藤のSPZでの師匠格は悪の軍団DarkFraction総帥ライラ神威。あの武藤めぐみが引退するまではヒールサイドにいたのである。

「それじゃあ、行きましょうか」

3人でワンボックスに乗り込み、試合会場の新日本ドームを目指す。ハンドルを握るのはライラ神威。

午後5時10分、開場。わらわらと新日本ドームが埋まってゆく。

「いやほんと、ジェットスマッシュであの武藤めぐみが失神した試合、あれ名古屋で見たけど、凍りついたから」

「DarkFraction時代も凄かったよ。あの統制の取れてないようで取れてるの。斉藤さんがぶん殴ってREKIが決めるパターンがすごいね」

ファンが思い思いにそれぞれの思い出話。伝説を作った選手の引退試合はいつもこうだ。

**************************

そして興行開始時刻6時30分。いつもは淡々と始まるSPZドーム興行だが、今回は大物選手の最終試合とあって、第1試合開始前に「おもしろビデオ」がオーロラビジョンで上映された。

「コンバット斉藤・最強伝説」

タイトルのあと、残虐ビデオの上映。ジェットスマッシュや飛燕脚を食らって吹っ飛ぶ選手が次々と。場内はどよめき。

「DANGER」

当たり所が悪ければ、一発で眠らせるのが打撃使いの恐ろしいところ。眠ってしまった武藤めぐみやノエル白石、イージス中森の衝撃映像集。ざわめく場内。

「PROFESSIONAL」

打って変わって特訓を繰り広げるコンバット斉藤の映像。空手の素養がありながらプロレス技の研究・習得にも余念がなく、パワーボムやデスバレー、裏投げといったそこそこの大技も使いこなすまでになった。

「蹴りをもらった後のデスバレーはやばい(ラッキー内田)」

被害者談に場内どっと沸く。大物ぶりを強調するためか、今回のビデオにはナレーションは無く、テロップと衝撃映像が大部分でおもしろビデオが作られた。元々は引退試合で会場がしめっぽい空気になってしまうのを防ぐための計らい。

そして、
カン、カン、カン、カン、カン・・・・

ゴングが5回鳴った後、

「本日はお忙しい中、スーパースターズプロレスリングゼットの東京大会にご来場いただきまして、まことにありがとうございます。本日のカードを発表いたします」

村越リングアナがいつもの名調子。

「第1試合、シングルマッチ30分1本勝負、サキュバス真鍋対ミスティアマスク、第2試合シングルマッチ30分1本勝負、マリシア・ルイス対ノティアリチャーズ。第3試合タッグマッチ30分1本勝負、霧島レイラ、スカーレット小縞組対 ケンドーカミスワ、RIKKA組。第3試合終了後15分間の休憩を頂きます。第4試合、タッグマッチ30分1本勝負、斉藤彰子、中江里奈組対 ナイトメア神威、マーメイド千秋組。第5試合、八島静香、ハリケーン神田組対 キャシーウォン、ブルックウォン組」

ここまで一気に読み上げてから一呼吸置いて、

「第6試合セミファイナル、コンバット斉藤対藤原和美」

ドワアアアアアア!!
プログラムにも対戦相手はXとしか書かれていなかったので沸いた。

「藤原かよ!」「意外だ!」「やっぱり」

「第7試合メインイベント、SPZ世界選手権試合、チャレンジャー、ジェーンメガライト対チャンピオン、マイティ祐希子」

メインのカードでも場内沸く。いまのSPZでは最高のカード。
6時過ぎに会場入りしたコンバット斉藤。今日の出番はだいぶ先なので、控室で若手選手と談笑。とりとめのない話をして出番を待つ。

(続きます)

2009年1月30日 (金)

第598回 ズバッと決めてよ、ジェットスマッシュ(下)

30年目10月 コンバット斉藤引退シリーズ

第5戦石川金沢大会、セミで最後の姉妹シングル対決。SPZクライマックスの公式戦以外では見られなかったカード。

コンバット斉藤対斉藤彰子。

「最後、彰子さんとやる?」

シリーズ前にフロント陣から打診されたコンバット斉藤だが、「いや、もうボロボロですので・・・遠慮しときます」
8月に伝えるべき事は伝えたと思っていたのでその場では辞退し、勝ち逃げを図ったのだが、斉藤彰子のほうがやる気満々だったのでカードが組まれた。

試合は斉藤彰子がガンガン攻めてゆく。

―勝つとしたら今日しかない

序盤からジェットスマッシュを打ち込むなど気合いのこもった攻め、これでコンバット斉藤も気合いが入って

ジェットスマッシュ!

しかし斉藤彰子、耐え切って飛燕脚。ものすごい蹴り連打。ドハデな打撃戦に場内沸いた。そして、

「倒れろーーーーーッ!」

斉藤彰子、この日2度目のジェットスマッシュ炸裂。自分の決め技を2回も食らってしまったコンバット斉藤、たまらず崩れ落ちる。斉藤彰子カバー。

「ワン、トゥ、スリー」

―やっと姉さんに勝てた・・・

勝負タイム12分46秒、斉藤彰子が最後のチャンスでコンバット斉藤越えを果たした。

「彰子も強くなったな・・・これで思い残すことは何もありませんよ」

コンバット斉藤の表情は実にさっぱりとしていた。

金沢大会メインはあばしりタッグ戦。王者ケンドー・カミスワ、RIKKA組に対するは藤原和美、中江里奈の28期生コンビ。熱い攻防が展開されたが、決着はあっけなくついた。

「うわああああっ!!」

カミスワの飛びつき腕ひしぎがドンピシャのタイミングで入ってしまい、たまらず中江がギブアップ。これで王者組が2度目の防衛に成功。

**************************

一日のオフを置いて、第6戦神戸大会。ここからコンバット斉藤、最後のシングル3連戦。

コンバット斉藤 VS マイティ祐希子

この日はSPZ王者マイティ祐希子と対戦。新旧エースの対決だが結果は見えていた。

「まあ、胸を借りますよ」

試合はマイティ祐希子が一気の攻め。

―全盛期の武藤さんと同じくらい・・・いやそれ以上かな。

コンバット斉藤が攻めさせてもらえない。スピードが圧倒的に違うのだ。

「ほっ!」
ジャーマンをカウント2で返したコンバット斉藤、カウンターの掌底で反撃して、

「はいっ」
代名詞ジェットスマッシュ、そして裏拳。マイティ祐希子の表情から余裕が消えた。すばやく態勢を立て直すと一気の攻め。

「これでどうだ!」
ダイビングプレスで3カウント奪取。勝負タイム12分57秒。

神戸大会メインはSPZタッグ戦。新王者霧島レイラ、スカ小に対するは元王者チームの25期生コンビ八島静香、ハリケーン神田組。

―霧島レイラとは適当に流して、小縞をつぶす。
タッグマッチでは弱いほうを狙えというのは鉄則。しかし霧島レイラそんなことは百も承知。前面に立って八島神田の2人を相手に大立ち回り。

H神田がボロボロになったところへさして疲れてないスカ小登場。
「おーりゃーーー!」

スカーレット小縞、とくいのパイルドライバーが決まって、H神田から3カウント。勝負タイム39分47秒、これで王者組が初防衛に成功。

************************

第7戦三重サンシャインアリーナ大会、コンバット斉藤が最後の地元凱旋。

コンバット斉藤 VS 中江里奈

メインイベントで中江里奈とシングル対決。8月のSクラで中江がC斉藤相手に30分の熱戦の末、惜敗したので再戦がシングルで組まれた。

―あと二つで終わり。足が壊れても「コンバット斉藤」を全うする。

掌底を当てていってのキック攻撃。しかし中江にも意地があった。

「そんなの、効かない!」

頭突きで反撃。

「やるねえ」

コンバット斉藤も頭突きで反撃。空手出身者なのにこの選手柔軟性がある。しかし長引くに連れて中江の息が上がってきた、そこを突いてコンバット斉藤、飛燕脚。

中江里奈ぐらつく。

「一気に決める!」

ズバッと決まったジェットスマッシュ。なんとかフォールを2.8で返した中江だったが目がうつろだ。そしてコンバット斉藤、

「ハアーッ」

2発目のジェットスマッシュ。会場の誰もがこれで終わったと思ったが、中江里奈、ギリギリ、カウント2.9で返した。

ドドドドドドド

―ふぅ・・・自信、なくしますね・・・

しかしコンバット斉藤、落ち着いて中江を担ぎ上げ、デスバレーボムで止めを刺した。中江を完全に潰して3カウント奪取。勝負タイム42分28秒の激闘に場内拍手。

「何分やりましたか?42分・・・私も焼きが回りましたね。」

コンバット斉藤、自嘲気味にコメント。中江のパワーと粘りにかなり手を焼いてしまった。

そして翌日、最終戦。新日本ドーム大会。

コンバット斉藤最終試合

の大看板が掲げられた。(続く)

2009年1月29日 (木)

第597回 ズバッと決めてよ、ジェットスマッシュ(上)

30年目10月
団体最古参、21期生のコンバット斉藤が引退を表明。9年半もハードなプロレスをメイン戦線でやってきて、さすがに限界を感じたらしい。

「あとは、後輩たちに託します」

ということで10月シリーズは「コンバット斉藤さよならシリーズ」となった。

初戦山口大会、メインで斉藤姉妹VSN神威、M千秋。

かつてはタッグを組んだ事もある悪役集団PDFのナイトメア神威と最後の対戦。コンバット斉藤は武藤めぐみが引退するまではヒール軍団DarkFractionに身を置いていたのである。

―姉さんと組めるのはあと4つ、精一杯戦う。

斉藤彰子がケリを連打していったが、ナイトメア神威もいつも以上の狂乱ぶり。コンバット斉藤の頭を殴りつける。ベテラン選手同士の殴り合い、そしてナイトメア神威凶器攻撃
「うわあああっつ」
五寸クギで頭をかち割られたコンバット斉藤、苦しみのた打ち回る。これで戦線離脱してしまった。

しかしタッチを受けた斉藤彰子が奮戦、
「ジェットスマッシュ!」
見事なジェットスマッシュでナイトメア神威を昏倒させる。代わって出てきたマーメイド千秋には飛燕脚。姉のピンチに獅子奮迅の活躍。

しかし勝負をかけたSTOはN神威にカットされてしまい、マーメイド千秋の逆襲を受けてしまう。フェイスクラッシャーからフィッシャーマンバスターと畳み掛けられて、斉藤彰子、無念のフォール負け。

「悪い・・・助けに行けなかった」
終盤ずっとリング下でのびていたC斉藤が謝った。それでも勝負タイム42分21秒の激戦となった。

**********************

翌日、島根くにびき大会でもメイン起用、斉藤姉妹VSハリケーン神田、八島静香組。

SPZタッグ元王者同士の対戦となった。かつてはこの4人のなかのお荷物だった斉藤彰子が積極的に蹴りまくる。連携技ダブルドロップキックも見せた。

しかしコンバット斉藤も動きがかなり落ちていて、ハリケーン神田との打撃合戦でも押し込まれてしまう。

―姉さんが動けないぶんは、あたしが・・・

斉藤彰子が必死に奮戦するも、コンバット斉藤が息切れ。八島のデスバレーを食らって動きが止まった。そこへ八島の重戦車タックル。

―まだまだあああ!

しかしコンバット斉藤も大声援にこたえてジェットスマッシュ!八島をぐらつかせる。
しかし最後はハリケーン神田が、長期戦で疲れた斉藤彰子の動きが鈍ったところへ

「はっ!」
狙いすましたゴッドハンド。これでカウント3奪取。それでも46分56秒の激戦に場内沸いた。
「見ての通りです。終盤にうまく立ち回れませんね、空手家の習性でしょうか」

***********************

第3戦鳥取大会、メインは斉藤姉妹VS現SPZタッグ王者霧島レイラ&スカーレット小縞。

―引退を表明した選手に負けられません。

霧島レイラがごつごつした攻め。タックル連発、コンバット斉藤はただやられるだけ。斉藤彰子が懸命に流れを引き寄せようといいファイト。スカ小を捕まえて飛燕脚。そして、

「ショウブッ」

出た姉譲りの必殺ジェットスマッシュ。これでスカ小を戦闘不能に追い込みカウント3奪取。勝負タイム24分29秒。ベルトがかかっていなかったからよかったものの・・・

********************

コンバット斉藤、第4戦福井大会ではセミの6人タッグに出場。斉藤彰子、中江と組んでカミスワ、RIKKA、サキュバス真鍋と対戦。

先発を買って出たC斉藤、まずはカミスワと手合わせ。この2人もSPZ世界王座を争った間柄だ。

サキュバス真鍋、セミ登場に張り切ったが、斉藤彰子が新人相手に容赦のない掌底。アーッという間に鼻から流血。けっきょく何もできずRIKKAにタッチ。

しかしカミスワがいい動き。10分過ぎに再登場したコンバット斉藤を捕らえてRIKKAと連係攻撃、サンドイッチラリアットを見せる。試合は盛り上がった。

「よーし、ならばボクが・・・」

中江里奈、ラリアットを連発してカミスワをたじろがせる。救援に出てきたRIKKAにはパワーボム。そしてカミスワにねらいをつけてDDT,STOの波状攻撃。これで3カウント奪取。勝負タイム15分19秒。

第5戦石川大会、セミで最後の姉妹直接対決。コンバット斉藤対斉藤彰子。

(続きます)

2009年1月28日 (水)

SPZクライマックス歴代優勝者(第1回―第30回)

SPZクライマックス 歴代優勝者

第1回 優勝 ミミ吉原   準優勝 南利美
第2回 優勝 沢崎光    準優勝 デスピナ・リブレ
第3回 優勝 南利美    準優勝 草薙みこと
第4回 優勝 伊達遥    準優勝 秋山美姫
第5回 優勝 草薙みこと  準優勝 南利美 秋山美姫 沢崎光

第6回 優勝 草薙みこと  準優勝 伊達遥
第7回 優勝 草薙みこと  準優勝 伊達遥
第8回 優勝 吉田龍子   準優勝 伊達遥
第9回 優勝 吉田龍子   準優勝 ハイブリッド南
第10回優勝 吉田龍子   準優勝 新咲祐希子 

第11回優勝 吉田龍子   準優勝 ハイブリッド南
第12回優勝 吉田龍子   準優勝 ハイブリッド南
第13回優勝 吉田龍子   準優勝 スイレン草薙

第14回優勝 スイレン草薙 準優勝 ボンバー来島
第15回優勝 ボンバー来島 準優勝 スイレン草薙

第16回優勝 ビューティ市ヶ谷 準優勝 ボンバー来島、芝田美紀
第17回優勝 ビューティ市ヶ谷 準優勝 ボンバー来島
第18回優勝 ビューティ市ヶ谷 準優勝、ボンバー来島、芝田美紀、ロイヤル北条
第19回優勝 ビューティ市ヶ谷 準優勝 ロイヤル北条
第20回優勝 ビューティ市ヶ谷 準優勝 武藤めぐみ

第21回優勝 武藤めぐみ   準優勝 マッキー上戸
第22回優勝 武藤めぐみ   準優勝 ノエル白石
第23回優勝 武藤めぐみ   準優勝 ノエル白石
第24回優勝 コンバット斉藤 準優勝 武藤めぐみ
第25回優勝 武藤めぐみ   準優勝 コンバット斉藤

第26回優勝 コンバット斉藤 準優勝 ナイトメア神威
第27回優勝 ナイトメア神威 準優勝 コンバット斉藤
第28回優勝 コンバット斉藤 準優勝 ナイトメア神威
第29回優勝 コンバット斉藤 準優勝 マイティ祐希子

第30回優勝 マイティ祐希子 準優勝 霧島レイラ

*****優勝回数5傑*************

吉田龍子6

ビューティ市ヶ谷5

コンバット斉藤4 武藤めぐみ4

草薙みこと3

2009年1月27日 (火)

第596回 スカーレット小縞の意地

30年目9月
マイティ祐希子が負傷欠場。SPZクライマックス最終戦で右足首をひねったので大事をとってお休み。コンバット斉藤とハリケーン神田も休んで古傷の治療に専念。

シリーズ第1戦は高知大会。

セミファイナルは藤原和美対ケンドーカミスワ。7月のあばしりタッグ戦で絞められてギブアップしたくつじょくを晴らすには最適のカード。

―川端さん(カミスワの中の人)に勝って、上へ行く!

藤原和美、フロントスープレックスを連発するなど果敢に攻めてゆくが、試合終盤になるとどうしてもスタミナ不足か、動きが落ちてしまう。そこへネックブリーカーを連発で食らってしまう。これで弱ったところへジャーマンを食らって敗北。勝負タイム18分40秒、藤原の苦闘は続く。

高知大会メインは最終戦で行われるSPZタッグ選手権の前哨戦。霧島レイラ、スカ小、斉藤彰子対ナイトメア神威、マーメイド千秋、RIKKA。最終戦でSPZタッグ挑戦の決まったスカ小がいい動き。ナイトメア神威にも力負けしないが、調子に乗って戦うあまり引きどころを見失う。PDFの連係につかまってしまう。

「アイツは、いつもこうだ・・・・」

かいせつの吉田社長が顔を覆う。しかし霧島レイラ、先月のSクラ準優勝で自信がついたのか、落ち着いたファイト。最後もナイトメア神威をラリアットで沈めた。

******************************

第3戦鳴門大会、メインは通好みのカード、中江里奈対ケンドー・カミスワのシングルマッチ。しかしカミスワの長期戦温泉地獄にはまってしまった中江、40分を過ぎてついにスタミナが尽きて、40分41秒、逆片エビ固めにギブアップ。しれでも地方興行で40分のタイマン勝負というのは珍しいので満場拍手。

第7戦新潟大会、メインはあばしりタッグ戦、新王者カミスワ、RIKKA組、初防衛戦の相手は強豪外人、キャシーウォン&ブルックウォン。

RIKKAがこの戦いにどこまでついて行けるかがポイントだったが、うまく立ち回ってカミスワにタッチ。ならばと外人チームは連係攻撃、合体技に活路を見出そうとするが、22期生のカミスワまだまだ元気。上諏訪温泉極楽絞めでブルックの意識を遠のかせておいてのシャイニングウィザードで快勝。勝負タイム20分23秒。王者組が初防衛に成功。

**********************************

最終戦はさいたまドーム大会。M祐希子、C斉藤の2枚看板不在でも、営業努力の甲斐あって満員にこぎつけた。

第1試合はマリシア・ルイス対ミスティアマスク。マリシアがばきばきぶん殴って終了。6分27秒でミスティアマスクを下した

第2試合はRIKKA対サキュバス真鍋。2年目のRIKKA、最近は後半の試合に起用されるようになってきて実力をつけてきた。新人のサキュバス真鍋を一方的に攻めて、最後は農鳥(急降下ミサイルキック)で終了。勝負タイム8分51秒。

休憩前の第3試合は斉藤彰子対アニー・ビーチ。しかし斉藤彰子、この団体で5年もまれてかなり力をつけてきた。アニーの攻めを受け切って、頃合いを見て攻めに転じて、フロントスープレックスで投げつけて3カウント奪取。その試合が終わると休憩。

休憩明けに28期生コンビ、藤原和美、中江里奈登場。対戦相手はキャシーウォン、ブルックウォンの強豪外人コンビ。連係では互角、となると個々の力がどうかということだが、藤原が相手の技をひとしきり受けて中江につなぐ展開。しかしブルックウォン、最終戦だから何をやってもいいと考えたのか凶器攻撃までやってきた。

「このっ・・・」

この振る舞いに怒った中江、パワーボムで叩きつけてブルックをたたきのめした。勝負タイム18分23秒、勧善懲悪の分かりやすい内容。

セミファイナルはシングルマッチ。八島静香対ケンドーカミスワ。メインの試合はバタバタするだろうから、セミでじっくりしたレスリングを見せようというマッチメイク委員会の配慮。

相手の技を受け切ってから反撃というスタイルの八島と、グラウンドレスリング巧者のカミスワ、試合は当然のように地味な攻防となった。

「うああ・・・っ」
スリーパーと脇固めだけで観客をのせてしまうカミスワ。この選手も海外生活が長かったので、相手の勢いをそぐ戦法はお手の物。そして相手が疲れたところを見計らって立ち技を混ぜてくる。しかし八島も打たれ強さには定評がある。

「せいっ」

カミスワの攻めをしのいでパワーボム。しかしカミスワも2で帰して飛びつき腕ひしぎ。しかしここで30分タイムアップのゴング。さいたまドームは拍手に包まれた。

****************************

メインイベントはSPZタッグ戦。ナイトメア神威、マーメイド千秋対霧島レイラ、スカーレット小縞。負傷欠場者が大勢出ており、斉藤姉妹や八島神田組というユニットが組めないので、元あばしり王者の霧島、スカ小組に白羽の矢が立った。

ぱさっ。
試合前、マーメイド千秋がナイトメア神威の麻袋を取る。これが取れると凶暴化するというギミック。

「URYYYYYYYYYY」
霧島とド迫力の殴り合いをやってのける。さすがにたじろぐ霧島、ここはひとまずパートナーのスカ小にタッチ。しかし王者組、タッチを受けて出てきたマーメイド千秋がつかまってしまった。スカ小の頭突きが効いたのか。

こうなると王者組はナイトメア神威が頑張らないといけない。暴れまくるナイトメア神威。霧島レイラをパワーボムでたたきつける。しかし霧島もラリアットでお返し。

「・・・・・・」

これで首を痛めたのか、マーメイド千秋が再度出てきた。霧島にフィッシャーマンバスターを決めるなど要領のよさは健在。代わって出てきたスカ小だったが、ここでナイトメア神威が再登場してスカ小に地獄落とし。しかしスカ小はカウント2で返して、

「うりゃーーーーー」

右腕を振りぬいた。実家がすし屋なだけあって腕力には自信がある。これでナイトメア神威悶絶。上にのしかかるスカ小。そくざに霧島が飛び出しマーメイド千秋を場外に叩き落す。

ワン、トゥ、スリー。

勝負タイム54分31秒、霧島レイラ、スカ小組がSPZタッグ王者に輝いた。

「スカコ、スカコ、スカコ、・・・・」
場内ものすごいスカ小コール。

「やった、よ・・・・・」
スカーレット小縞、タッグの頂点に立って涙ぐんだ。半分アイドルレスラー扱いで、まだSクラにも出られずなかなか芽が出なかったが、ついにタッグベルトを奪取した。

*************************

SPZ世界タッグ戦(60分1本勝負)

霧島レイラ、スカーレット小縞○(54分31秒、ラリアットからの片エビ固め)ナイトメア神威×、マーメイド千秋

霧島・S小縞組が新王者となる

**************************

2009年1月26日 (月)

第595回 SPZクライマックス 第30回記念大会(4)

第30回SPZクライマックス記念大会

第7戦は博多・九州ドーム大会。リーグ戦も佳境。

霧島(10点、スプラッシュマウンテンからのエビ固め 15.18)H神田(7点)

すでにシード権確保を決めている両者の対戦。お食事券(2位)争いのことを考えるとお互いここは勝っておきたい。しかし霧島レイラが持ち前のパワーで終始優勢。ハリケーン神田もゴッドハンドを繰り出したが、霧島の突進をストップさせるまでには至らない。

「これで終わりだ!」

最後はスプラッシュマウンテン。みなぎるパワーで霧島が1敗を堅持。

N神威(6点、パワーボムからのエビ固め 13.13)中江(0点)

中江里奈、試練のシングルマッチは続く。この日は元SPZ王者でPDFの闘将、ナイトメア神威と相対。それなりに健闘したもののN神威の余裕を消すには至らなかった。

ナイトメア神威、パワーボムで快勝。シード権確保に望みをつなぐ6点目。

C斉藤(8点、パワーボムからのエビ固め 23.05)八島(2点)

コンバット斉藤の動きがおかしい。やはり腰が相当悪いのか。八島の攻めをズルズルと受ける悪いパターン。序盤にラリアットを3発もぶち込まれてしまう。そしてデスバレー2発。もはやダルマ状態。福岡のファンは悲鳴と嘆息。

―彰子、3つ入るまではベストをつくす。それがプロレスなんだ。

「せいっ!」

それでもなんとか伝家の宝刀ジェットスマッシュを放った。

「ごっ」

当たり所が悪かったのか、これで八島の動きが止まった。そこへ裏拳、ネックブリーカー。、パワーボムと今できる力を振り絞っての大技攻勢。コンバット斉藤逆転大勝利。

8点目を挙げて、シード権を確保したコンバット斉藤、ふらつきながら控室へ戻った。

「シード権?来年、出られるかどうか、ハハッ、それより、メインを見たほうがいいですよ。」

ズタズタの状態で控室に帰還して、自嘲気味に語るコンバット斉藤。それでも着替えずメインイベントの試合モニタに目をやるあたり妹思いだ。

M祐希子(12点、シャイニングウィザードからの片エビ固め13.03)斉藤彰(3点)

姉の心意気が少しは伝わったのか、懸命に打撃を打ち込んでいく斉藤彰子、攻め込まれてダメージを負っても、ジェットスマッシュでぐらつかせて裏拳。吹っ飛ぶマイティ祐希子。
これでマイティ祐希子の顔色が変わった。

「て、ヤーーーーーッ」

シャイニングウィザード炸裂。これで斉藤彰子の戦意を不稼動に追いやった。
斉藤彰子、これで4敗目を喫し予選会行きが決定。

**************************

そして最終戦は横スペ大会。霧島レイラがここまで1敗で来てくれたおかげで、消化試合にならずにすんだ。

第1試合はノティアリチャーズ対サキュバス真鍋。まだまだシングルマッチでは粗さの残るS真鍋、ネックブリーカーで見せ場は作ったが、ノティアのアキレス腱固めに悶絶・・・勝負タイム11分36秒。

第2試合は藤原和美対マーメイド千秋。SPZクライマックスに出られなかった悔しさをぶつけていった藤原だが、マーメイド千秋がスッと狙い済ましたアキレス腱がため。

「ひああああつ!!」
虚を突かれた藤原、ギブアップ。勝負タイム12分48秒。

休憩前第3試合は6人タッグマッチ。

ケンドーカミスワ、スカ小、RIKKA対マリシアルイス、ブルックウォン、アニービーチ。カミスワが見事な飛びつき腕ひしぎを決めてアニーからギブアップを奪った。勝負タイム10分52秒。

休憩後、Sクラ最後の4試合。

H神田(8点、時間切れ引き分け )C斉藤(9点)

「まあ、もうボロボロですけど、出たとこ勝負でやりますよ」

コンバット斉藤は笑顔でコメント。だが動きは全盛期のかけらしかない。しかし本拠地のファンはかつては手のつけられない強さだったC斉藤に大声援を送る。

―ありがたくて涙が出そうになります。

ハリケーン神田の打撃をこらえて、懸命にニーリフトで応戦。そしてパワースラムも決める。このあたりはトップ戦線で覚えた技。

しかしハリケーン神田もエルボーで応戦。ハリケーン神田も右足首を痛めていたがそれをおくびにも出さずシリーズを完走した。けっきょくそのまま両者相譲らず、タイムアップドローとなった。

「3位入賞、こんばっとー、さいとーーーー」

これでコンバット斉藤の3位が確定し、賞品の「スポーツドリンク1ケース」を今野役員からもらって引き揚げた。

これで第24回大会から7年連続でベスト3入賞。

(優勝―2位ー優勝―2位ー優勝ー優勝ー3位)

これは凄い記録。あの吉田龍子以来の記録である。決して資質の高い選手ではないが、猛特訓と空手魂で息の長い活躍。

「勝てた試合なんですけどね。まあ決め切れなかったちゅうことで。去年100万円で今年はジュース24本。これが現実です」

それでも賞品の重い箱を愛車のトランクへきちんと運んだあたり、彼女なりにこのシリーズを完走した充実感があったのだろう。

斉藤彰(5点、飛燕脚からの片エビ固め 20.00)霧島(10点)

予選会では斉藤彰子が勝っているカードの再戦。しかし優勝の可能性をまだ残している以上負けられない霧島レイラ。しかし斉藤彰子の掌底連発で流血に追い込まれる。

関係者駐車場から戻ってきた斉藤彰子がリング下でセコンドについた。

「彰子、そうだ、それでいいんだ」

自分がボロボロになってまで妹に伝えたかった事。自分を信じるという事。

斉藤彰子が最後の最後で迷いのない掌底乱打。

「うげえっ」
膝蹴りも的確にヒット。

「彰子、休むな、ひるむな、ババーっと行け」

コンバット斉藤がリングしたから督戦。斉藤彰子もここを勝負どころと判断したのか、
「ハァアアー」

飛燕脚、これはカウント2.8で返す霧島レイラ。

―彰子、一気に決めろ!
斉藤彰子、切り札のジェットスマッシュ、懸命にロープブレイクした霧島だったがもう足に来ていた。
「いけーーーーーーーー」

2度目の飛燕脚!バッタリと倒れる霧島レイラ。これで3カウントが入った。

「彰子、よくやったよ」

斉藤彰子、これで姉のカタキをとった。

「あら」
マイティ祐希子、出番前にSPZクライマックス優勝が決まってしまった・・・

「霧島選手おめでとう、来年は上目指して頑張って」

最終戦で敗れたものの、霧島レイラ、堂々の10点で準優勝。横浜中華街のお食事券5万円分をプレゼンターの京スポ新聞若林記者から受け取った。

「お食事券をもらえたのは嬉しいです、が、来年は100万円を狙いたいですね。」

八島(4点、ウラカンラナからのエビ固め19.25)中江(0点)

横スペ大会セミでは今シリーズ不振に終わった両者が対戦。中江もパワーはかなりのものだが、八島はそれ以上。ジリジリと追い込まれてゆく。それでもパワーボムの打ち合いで観客を沸かせたので横スペのセミとしては充分合格点。

3度目のパワーボムを狙ったところをウラカンラナに丸め込まれて敗れた中江、試合後の表情はすっきりとしていた。敗れたものの八島を慌てさせたのだから。

「足りない部分がよく分かりました。力をつけて来年またSクラに出ます。」

M祐希子(14点、バックドロップからの片エビ固め)N神威(6点)

けっきょくメインは消化試合となった。しかしM祐希子のファイトスタイルは変わらない。勝ち進んできたハイスパートレスリングでN神威をさくさく追い込んでって、最後は鋭いバックドロップで危なげなく勝利。全勝でSPZクライマックス優勝を決めた。

ナイトメア神威、結局6点に終わり、守り続けてきたシード権を失った。

マイティ祐希子、堂々の全勝でSクラ初優勝。

「やー、ども、ども」

満面の笑顔で吉田龍子社長から大トロフィーと優勝賞金100万円を受け取るマイティ祐希子。とうぶんこの選手の天下が続くのか!

2009年1月25日 (日)

第594回 SPZクライマックス 第30回記念大会(3)

SPZクライマックス 第30回記念大会

第5戦は大阪なにわパワフルドーム大会。

C斉藤(6点、ジェットスマッシュからの片エビ固め27.17)斉藤彰子(3点)

プレミアもののカード、姉妹対決が大阪で実現。

「行くぞッ」
コンバット斉藤がスリーパーで先手を取って、掌底。しかし彰子も掌底でやり返す。これだけで場内大歓声。

―突きは、重くなってるな・・・

コンバット斉藤、タックルで主導権を握ろうとするが、斉藤彰子は掌底をこつこつ当てに来た。終盤足に来るのを狙っているのか。

―筋はいい。これでなんで上へ行けないのか不思議なくらいだ。

まるで空手の試合のような掌底の打ち合いが長い事続いた。固唾を飲む観衆。先に仕掛けたのは彰子。
「ぐっ・・・」
膝蹴りを連続で叩き込んだ。がくっと片ひざをつくコンバット斉藤。そこへ突っ込む斉藤彰子、だが待っていたのはカウンターのジェットスマッシュ!!

「がふ・・・・」
ハデに吹っ飛ぶ斉藤彰子。

コンバット斉藤デスバレーで追い込む、2.8で返した彰子だったが、トドメの飛燕脚。これで3カウントが入った。このあたり終盤の組み立てはさすが。

「いい勝負だった・・・」
コンバット斉藤、妹の成長を感じ取ったのか、晴れ晴れとした表情でリングを後にした。

霧島(6点 スプラッシュマウンテンからのエビ固め 13.39)中江(0点)

初出場の中江里奈、結果が出せずに苦しい試合が続く。この日も霧島レイラに力負け。スプラッシュマウンテンで完全に足に来てしまっている。それでもやれるだけの抵抗は見せた中江。2発目のスプラッシュマウンテンに散ったがまあ健闘か。

H神田(5点、掌底からの片エビ固め 20.24)N神威(2点)

ゴッドハンド対狂乱大王のカード。ハリケーン神田が打撃で積極的に攻めていったが、N神威が地獄落とし2連発で応戦。最後はお互いフラフラの状態となったが、タイミングよく掌底を入れたH神田が勝利。N神威、1勝3敗となり、シード権確保へ負けられなくなった。

M祐希子(8点、ムーンサルトプレスからの片エビ固め 22.0)八島(2点)

いくら八島の打たれ強さに定評があろうが、攻めなければ勝てない。ズルズルと攻め込まれてついにこらえきれなくなりムーンサルトに敗戦。それでも22分もったのだから仕事は果たしたか。八島も1勝3敗となり、シード権KEEPへ後がなくなった。

****************************

第6戦は若鯉球場大会。

霧島(8点、ラリアットからの片エビ固め 16.58)C斉藤(6点)

1敗同士の対決。だがコンバット斉藤、名古屋30分大阪27分の激闘続きで動きにキレがまったくない。霧島のパワーに押されっぱなし。掌底にも腰が入っておらず勢いがない。
「斉藤!斉藤!斉藤!」

斉藤コールにこたえてジェットスマッシュを放ったが、やはり体重が乗ってないので動きを止めるに至らない。あとは霧島のパワフルな動きにだんだん追い込まれていって、

「うわあっ」
最後はラリアットを食らってカウント3を喫した。

「見ての通りです。」
コメントも弱々しいコンバット斉藤。実は先シリーズの最終戦で腰を痛めており歩くのがやっとの状態。斉藤彰子戦を終えて気が抜けてしまったのか・・・

「とりあえずシード権は獲りました。あとは一つでも多く勝ちます。」

最低目標をクリアした霧島レイラ、ほっとした表情でコメント。

H神田(7点、パワーボムからのエビ固め 16.35)八島(2点)

25期生同士の一戦。シード権KEEPのためにもう負けられない八島が頭突きタックルで積極的に攻め込む。タッグパートナーだからといって容赦はしない。しかしH神田も掌底、ステップキックで応戦したので盛り上がった。しかし最後はハリケーン神田のゴッドハンドが八島の意識を持っていった。ハリケーン神田、すかさずパワーボムでトドメ。

「これで7点ですか、来年予選会に出なくてすみますね」
ハリケーン神田、苦笑。

N神威(4点、フィッシャーマンバスターからの片エビ固め 11.09)斉藤彰(3点)

メンタル面での弱さがでてしまった斉藤彰子、ナイトメア神威の狂乱ファイトに防戦一方。どうして自信を持って闘えないのか。

「URYYYYY」
さいごはフィッシャーマンバスターに散ってしまった。斉藤彰子も3敗目、シード権確保が苦しくなってきた。

M祐希子(10点、ニーリフトからの片エビ固め 8.44)中江(0点)

「ボクが失うものは何もありません。精一杯ぶつかってきます!」
1年先輩のマイティ祐希子相手に果敢に挑んでいった中江だったが、一方的に攻められてしまい、何もできず敗北。

第30回SPZクライマックス、残り2戦の段階で全勝がM祐希子、1敗で霧島レイラが追う展開。
(続きます)

2009年1月24日 (土)

第593回 SPZクライマックス 第30回記念大会(2)

SPZクライマックス 第30回記念大会

第3戦は仙台大会。

H神田(2点、パワーボムからのエビ固め 24.48)中江(0点)

予選会を突破してきた両者の対決。シード権争いを考えるとお互い勝っておきたい試合。だがハリケーン神田が先輩の意地で試合をリード。しかしながら中江も懸命に応戦。力のこもったブレーンバスターでたたきつける。試合は長引いたが、場外乱闘で優位に立ったH神田がそのままの勢いで攻め立てる。

「くっ・・・」
中江、初公開のフランケンシュタイナーを狙ったまでは良かったのだが、あっさりパワーボムに切返されて終了。

「くっそーーーー」

ハリケーン神田相手に24分の熱戦を展開しただけに悔しさもひとしお。

八島(2点、パワーボムからのエビ固め 23.21)斉藤彰(2点)

いいときと悪いときがはっきりしているのが斉藤彰子。この日は八島のパワーに気圧されたのか、本来の鋭い打撃が繰り出せない。放送席で頭を抱える吉田社長。控室でモニタを見ながら苦笑するコンバット斉藤。しかしそれでも中盤からこつんこつん掌底が当たりだした。

「オラーーーーー」

しかし八島もラリアットで応戦。そして自慢のタックル乱打。ゴツゴツしたプロレスとなった。
「ショウブッ」

斉藤彰子、ジェットスマッシュ。しかし八島カウント2.8で返す。斉藤彰子、奥の手STO。しかし八島2.9で返す。これ以上受けられないと感じた八島、デスバレー、ギロチン、パワーボムと大技攻勢で勝負に出た。23分の熱闘の末なんとか斉藤彰子を振り切った。

霧島(4点、ギロチンドロップからの片エビ固め 20.54)N神威(0点)

まだシングルではN神威に勝っていない霧島。果敢に攻めていったが、ナイトメア神威のラフファイト、凶器攻撃で流血に追い込まれる。鮮血をふりまいて闘う霧島に大声援が飛んだ。スプラッシュマウンテンこそカウント2で返されたが、ギロチンドロップを連発で入れてカウント3をもぎ取った。これで2連勝。

M祐希子(4点、バックドロップからの片エビ固め 9.01)C斉藤(2点)

セミまでの三試合がいずれも20分をこえる熱闘。そしてメインは前年の優勝決定戦カード、マイティ祐希子対コンバット斉藤。

しかしあれから1年、両者の力関係は大きく変わった。マイティ祐希子が一方的に攻め立てる。
「ぐえっ・・・・」

ニーリフトに悶え苦しむコンバット斉藤。打撃戦でも五分に渡り合うところにM祐希子の凄さが垣間見える。続くバックドロップで終了。コンバット斉藤10分もたず。メインの役割すら果たせなかった・・・

****************************

第4戦は名古屋しゃちほこドーム大会。

H神田(3点、時間切れ引き分け)斉藤彰(3点)

予選会ではハリケーン神田が勝っているカードの再戦。斉藤彰子あいかわらず先輩で格上相手には弱い。何か弱みでも握られているのかと思うくらい別人。でもこれが斉藤彰子クオリティなのかもしれない。彼女がトップに立てない、結果が出せない理由はこのオドオド癖にある。ほんでもってズルズルとというお決まりのコース。それでもSPZで5年もまれているだけあって耐久力だけはついてきた斉藤彰子、なんとか時間切れドローに持ち込んだ。判定があったら大差でH神田であろう。

C斉藤(4点、コブラツイスト 30.0)中江(0点)

シングルではおそらく初顔合わせ。下り坂の元エースコンバット斉藤にがむしゃらに立ち向かってゆく中江だったが、コンバット斉藤、Sクラ6年連続連対入りはダテじゃない。この6年彼女は100万円かお食事券のどちらか片方を手に入れているのだ。

しかし、コンバット斉藤、昨日の祐希子戦でどこか痛めたのか、動きに精彩がない。いつものガンガンいく動きの良さが影を潜めている。飛燕脚、パワースラムを繰り出すも波に乗れないし、中江にパワーボムまで決められてしまう。

「斉藤、ガンガン蹴れーー」

ファンの後押しにこたえて2度目の飛燕脚をヒットさせたが、

「ぬわあああーっ」

中江、カウント2.9で返す粘り腰。しかしコンバット斉藤、中江が非力になったのを見るやコブラツイスト。これはきつい。こらえた中江だったがついにギブアップ。勝負タイム30分。あと1秒粘っていれば・・・

「なんとかポイントを拾いましたけど・・・納得いきませんね」

このクラスの若手相手に30分粘られるところが力の翳りを物語っている。

N神威(2点、パワーボムからのエビ固め 14.41)八島(2点)

コンバット斉藤ほどではないが、23期生のナイトメア神威の動きもピークを過ぎている。八島のナチュラルな攻めに苦戦を強いられてしまう。ならばと場外乱闘に誘うが、形勢逆転には至らない。しかし、なんとか態勢を立て直すと得意のパワーボムで3カウントを奪った。これで初日を出した。

M祐希子(6点、ニーリフトからの片エビ固め 15.18)霧島(4点)

2連勝同士の対決。しかしマイティ祐希子がハイスパートプロレス。霧島レイラがこの戦いについていけない。いいところなく攻め込まれてしまう。必殺ムーンサルトを2.9で返したのが見せ場だった。これでマイティ祐希子が3連勝で単独トップに立った。

(続きます)

2009年1月23日 (金)

第592回 SPZクライマックス 第30回記念大会(1)

30年目8月
恒例のSPZクライマックス。第30回の記念大会である。いつものようにシリーズ開始前に喫茶あばしりで記者会見が行われた。

■「ジェットスマッシュ」コンバット斉藤(24)

8年連続8度目の出場  第24回・第26回・28回・29回大会優勝

「やるだけです。」

■「狂乱の舞」ナイトメア神威(22)

6年連続6度目の出場 第27回大会優勝

(頭から麻袋をかぶされているので無言)

■「SPZのエース」マイティ祐希子(18)

3年連続3度目の出場

「ワクワクしてきました。目標はもちろん優勝です。賞金でフランス料理を食べに行きます(笑)」

■「ケンカ番長」八島静香(20)

4年連続4度目の出場 

「応援、夜露死苦」

以下4名は予選会勝ち上がり組。

■「ゴッドハンドの女」ハリケーン神田(20)

3年連続3度目の出場

「全員叩き潰すつもりで闘う」

以下2名は予選会勝ち上がり組。

■「爆裂空手道」斉藤彰子(19)

2年連続2度目の出場 

「出るからには、全力を出し切ります」

■「みなぎるパワー 大砲だ」霧島レイラ(18)

2年連続2度目の出場

「ひとりでも多く大物食いをやります」

■「ニューヒロイン」中江里奈(17)

初出場 予選会4位通過
「1点でも多く勝ち点を取ります」

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さて、2戦目のどさんこドームから地獄のリーグ戦がスタート。かいせつはSPZの吉田龍子社長、実況は大日本テレビの伊藤アナウンサー。

斉藤彰(2点、飛燕脚からの片エビ固め 14.02)中江

「さてかいせつの吉田さん。栄えある30回の記念大会ですね」

「んー、まあ、そうですね。でも面白くないですよ今年は。どうせマイティ祐希子選手が優勝するに決まっていますから」

「オーッと身も蓋もない解説ですね。さて最初のリーグ戦は予選会でもあった組み合わせですね」

「斉藤彰子は弱いものには強いんですよ。ほぅら、表情に余裕があります。涼しい顔して蹴りまくってますね。ああいうファイトがなぜ格上相手でできないんでしょうかね」

「あーと決まった、2発目の飛燕脚、おわったーこれはダメだー」

「んー、まあ、こんなものでしょう」

霧島(2点、ラリアットからの片エビ固め 19.12)八島

「さて、今日の見所カードです」

「んー、今回は優勝争いよりシード権争いのほうが面白いですからね。霧島選手が上へ行くためには八島の壁をこえないといけませんからね」

「お互いパワーにはかなりの自信があるようですが、アーッと八島デスバレー、これは危ない!」

「んー、試合運びのうまさではまだ八島選手に一日の長がありますねえ」

「あーしかし霧島レイラも諦めていない、みーごーとーな裏投げだっ、そーしてネックブリーカー」

「んー、霧島選手は馬力があるからああいうの効くんですよね」

「さあ八島、先輩の意地を見せる事ができるか。あーっと霧島レイラギロチン落とした、そうして首カッキリポオズ、さあ何を狙ってるか、何を狙ってるか、出たー、ラリアット!さ八島返せるか、返せるか、ダメだーーー」

「んー、霧島選手が執念見せましたね。これで八島越えですか。まあよくやりましたね」

C斉藤(2点、ジェットスマッシュからの片エビ固め 17.07)N神威

「さあ、SPZの生ける伝説、ベテラン同士の対決です。かいせつの吉田さん、どちらが有利でしょうか」

「んー、わからんですね。ケリが入れば斉藤で、長期戦になればスタミナのあるナイトメア神威が有利かもわからんですね」

「あーっとものすごい掌底の打ち合いだ、そしてコンバット斉藤ニーリフト、そうして裏拳!」

「んー、攻め急いでますね、スタミナがやばいのを自覚しとるんでしょう」

「アーッと飛燕脚決まったあ、どうだ、2―で返す。ナイトメア神威まだまだ余裕あるか。アーナイトメア神威逆襲のパワーボム、アブナイ、2-で返した」

「んー、いけませんねえ、ナイトメア神威、パワーはこの団体でまだまだトップクラスですから」

「さあナイトメア神威何を持ってくる?何を持ってくる?え、あ、出たー、コンバット斉藤ジェットスマッシュ!ジェットスマッシュが入ってしまったー。そのままフォール、ああ、ダメだ、カウント3はいりマシター」

「んー、まあ、やっぱり一発を持ってる選手は強いですねえ」

M祐希子(2点、バックドロップからの片エビ固め 17.54)H神田

「んー、これは99.99%祐希子の勝利ですよ。お茶でも飲んでましょう」

「そ、そうは言われましても私は実況をしなくてはいけません、さあハリケーン神田、悪魔の右腕で苦しめる事ができるか」

(10分経過)

「あー、マイティ祐希子ノーザン!どうだ、カウント2」

「んー、ノーザンが出てくるって事はそろそろエンジンかけてきてますねえ」

「あー、そしてバックドロップ!いまのは落ち方がやばかったか、さあカバーだ、どうだ、どうだ、3つ入ったーー」

「んー、・・・こりゃもう優勝は祐希子で決まりですね」

「第30回SPZクライマックス、優勝候補の筆頭マイティ祐希子、危なげなくハリケーン神田を下しました!果たしてこのまま突っ走るのでしょうか!」

(続きます)

2009年1月22日 (木)

本日は予定を変更いたしまして、ヤング井上霧子の2回目・・・

こんばんわ、筆者のkonnoです。

大相撲初場所、負け越したら引退の大関・魁皇(36歳)。ここまで7勝4敗。あと1勝でカド番脱出・現役続行。残る相手は豪風、朝青龍、琴光喜、琴欧州・・・・今日12日目豪風戦、勝たないと残りのメンツから言ってやばい。まさに運命分かれ目の決戦。ということで心穏やかならぬ状況で、原稿が書ける状態ではないので、本日は予定を変更いたしまして冷凍モノでお茶を濁します。

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ヤング井上霧子(その2)

時に、西暦1995年。井上霧子14歳。

近所のおねえさん、高橋さんに連れられてプロレス会場の雑用係としてバイトを始めた井上霧子だったが・・・

初戦は4月29日、八王子市体育館大会。井上霧子はジャージを着て(団体のはなかったので自前である)舞台上にリングを設営に加わった。敷き板やマットを運んだ。

「ほーら霧子ちゃん、これがリングだよ」

高橋さんが試合前のリングに上げさせてくれた。井上霧子はロープワークの真似事やコーナーポストに上がったりしてすこし遊んだ。

開場したらチケットのもぎり、場内整理など仕事はいくらでもあった。試合が始まるや選手の誘導、やられた選手の介抱などを行った。関東女子プロレスは所属選手が3人しかおらず、あとは他団体からの助っ人参戦でまかなっているので、雑用員の確保も容易ではない。

メインイベントが終わってから、リングの撤収を手伝い、高橋さんの車で川崎の自宅まで帰った。

「はい霧子ちゃん、今日のギャラ、5000円」

―お給料・・・・
井上霧子は初めて「労働の対価」を得た。さて何に使おうかなと思いながら、井上霧子は眠りについた。

****************************

シリーズ3戦目の5月1日、忘れられない事件が起こった。東京の後楽園プラザで興行。2000人収容の、関東女子プロレスにとっては勝負をかけた大きな会場で、プロレスマスコミの記者さんたちも来た。

「何ですって!今日、来られない!?」

高橋さんが携帯で声を荒げる。なんでも今日来る予定だった他団体の助っ人レスラーが怪我で来られなくなったようだ。フリーの選手や他団体の選手をあてにして興行を組むと、こういう事態は多々起こる。あとでわかったことだが前日の試合で腰を痛め、そのときはたいした事はなかったらしいが、翌朝起きてみたら動けなかった・・というパターンらしい。

「困ったわ・・・どうしたらいいのかしら」

悩む高橋さん。あわてて知り合いのフリーのレスラーに電話をかけまくったが、先約があるとかで誰も色よい返事をしなかったらしい。頭を抱えて悩む高橋さん。

「あー、せっかくの後楽園で、ショーブかけてるのに・・・・まずいまずいまずいわ」

高橋さんはメインイベントでタイトルマッチを闘う予定である。

しかしそのときロビーでタバコを吸っていた冴えない中年男の社長がぼそっと言い放った。

「その子、出しちゃえば。」

「えっ・・・・??」その場にいた誰もが目を丸くする。

「わ、私。まだ何も教わってな・・・」

「きみ、体育の成績は?」

「・・・5、です。」

井上霧子は正直に言ってしまった。

「・・・決まり、だね」
(ありえない展開ですが、いつの日か続きます)

2009年1月21日 (水)

第591回 30年目7月 マーメイド千秋大逆転

最終戦は新日本ドーム大会。

第1試合はRIKKA対マリシアルイス。

昨日の幕張でまったく動かないまま、パートナーのカミスワの短期決戦策のおかげであばしり王者になってしまったRIKKA,マリシアにぶつかっていったが、打たれ弱い課題を露呈し、マリシアの裏拳でブーンと殴られて意識が遠のき、ふらついたところをDDTでフォール負け。それでもあばしり王者なのか。勝負タイム10分50秒。

第2試合はタッグマッチ、スカーレット小縞、サキュバス真鍋組対ミスティアマスク、ブルックウォン。S真鍋の青さを考えると、スカ小が相当頑張らないといけないカード。

しかし外人チーム、あっさり真鍋を捕まえるが、真鍋懸命に逃げて、スカ小へスイッチ。あとはスカ小が暴れて、最後はラリアットでミスティアマスクを沈めた、勝負タイム12分50秒。

第3試合はノティアリチャーズ対アニービーチ。

体格やパワーで勝るアニーが優位に試合を進め、あっという間に追い込んで、最後は意外な丸め込み、スモールパッケージで3カウントを奪った。勝負タイム5分13秒。

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休憩明け第4試合に前SPZ王者ジェーンメガライト登場。きょうの対戦相手はケンドーカミスワ。いくらグラウンドに定評のあるカミスワでも、ジェーン相手だときつい。パワーに太刀打ちできないのだ。

「ORAAAAA」
ボディスラムで壊れたおもちゃのように投げ捨てられる。カミスワも懸命に抵抗したが、パワーの差はいかんともしがたく14分59秒、フェイスクラッシャーに力尽きた。

セミファイナルは6人タッグマッチ。八島静香、ハリケーン神田、霧島レイラ対マイティ祐希子、中江里奈、藤原和美。

SPZクライマックスの前哨戦的カードだ。しかしやはりマイティ祐希子の強さは別格。縦横無尽に駆け回り、最後は霧島レイラを合体パワーボムで片付けた。勝負タイム13分45秒。

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そしてメインはSPZタッグ戦、王者ナイトメア神威、マーメイド千秋、初防衛戦の相手はコンバット斉藤・斉藤彰子組。

王者チームにはM千秋という穴があるが、N神威のパワーは健在。一方の挑戦者チームはコンバット斉藤の動きはかなり落ちている。妹の彰子がどこまでフォローできるかといったところ。
しかしこの日はN神威が前面に出て、C斉藤をつぶしにかかった。

「ケケケケ」
故意なのか偶然なのか、エルボーを鼻に入れて流血に追い込む。けっこうおびただしい出血に追い込まれた。
「代わります!!」

だが代わって出てきた斉藤彰子もピリッとしない。M千秋のフロントスープレックスを食らって片ヒザをつく。

「代われ、流れ変えよう」

しかしコンバット斉藤もかつての押し切る力がない。それでも裏拳を連発ではなって、N神威の顔面にぶちこんで流血させるあたり、只者ではない。
しかし、マーメイド千秋がここで仕掛けた。バックドロップ2連発。

「くっ・・・」
コンバット斉藤、流れを変えるために場外へ逃げる。そのあとC斉藤とM千秋が大場外乱闘を繰り広げたが、リングに戻るやいなや、

「ジェットスマッシュ」

これでマーメイド千秋ダウンしたが、直後のフォールは懸命にロープへ逃れた。C斉藤、続けてネックブリーカーを繰り出すがこれもロープへ。そして攻め手が尽きたC斉藤へ、

「おらあっ」
マーメイド千秋、起死回生のフィッシャーマンバスター。頭からマットに突き刺さったC斉藤、動けず3カウントを聞いた。斉藤彰子のカットはうまくN神威に逆カットされた。

勝負タイム51分30秒。、王者組が初防衛に成功。

2009年1月20日 (火)

第590回 30年目7月 4分47秒のタイトルマッチ

30年目7月「サマースターナイツシリーズ」開幕。

シリーズ初戦は青森大会。

第1試合は新人のサキュバス真鍋対ミスティアマスク。サキュバス真鍋もよく粘ったのだが、相手はキャリア8年のミスティアマスク。アームホイップを連発でくらって動けなくなってしまった。勝負タイム6分1秒。

第2試合はRIKKA対ノティア・リチャーズ。RIKKAが飛びまわって、最後は打点の高いドロップキックを決めて3カウントを奪った。勝負タイム12分7秒。

休憩前第3試合は藤原和美対ケンドーカミスワ。

負傷欠場明けのカミスワだがグラウンドの冴えは健在。じわじわと攻めてスタミナを奪い、だんだんネックブリーカーやローリングソバットなどの立ち技を混ぜてくる。

藤原も逆転をかけたJOサイクロンでカミスワをあわてさせたが、カミスワも奥の手のムーンサルト。これはカウント2.9で返されたが、立て続けにタックルを決めてカウント3奪取。24分28秒の熱戦を制した。

「くっ・・・」

SPZクライマックスに出られなかった藤原、大先輩のカミスワ越えはならなかった。

休憩明けの第4試合、タッグ王者チームのナイトメア神威・マーメイド千秋が登場。対戦相手は初来日のアニー・ビーチ&ブルックウォン。アニー・ビーチはあのJビーチのコピーレスラーだが、地力はかなりのものを持っている。この日はマーメイド千秋を捕らえてあと一歩まで追い込んだが、懸命にナイトメア神威にスイッチ。そのあとはナイトメア神威が暴れ回り、最後は地獄落としでブルックから3カウント奪取。

セミファイナルはシリーズ有数の好カード、SPZクライマックス出場者による6人タッグ、八島静香、ハリケーン神田、中江里奈対コンバット斉藤、斉藤彰子、霧島レイラ。6人がつぎつぎにタッチをかわし、得意技が乱発される。しかし最後は霧島レイラがつかまってしまい、中江と八島の合体パイルドライバーで3カウントを奪われた。勝負タイム19分15秒。

青森大会メインはSPZ戦の前哨戦。マイティ祐希子、スカーレット小縞対ジェーンメガライト、マリシアルイス。先シリーズのさいたまドームでジェーンに女王の座を奪われたM祐希子、攻める攻める。ジェーンを猛攻で蹴散らしたあと、マリシアをあっさりローリングソバットで料理。勝負タイム20分29秒。

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第3戦秋田大会、メインでSPZ戦、王者ジェーンに対するは挑戦者マイティ祐希子。いまのSPZにジェーンに勝てそうな選手がM祐希子しかおらず、下手するとベルト流出したまま秋冬とズルズル行ってしまいかねないので、前王者のM祐希子がそのままリターンマッチに挑むということになった。

しかしジェーンも強敵、とくいのベリートゥバックを食らってマイティ祐希子、劣勢に立たされる。しかしムーンサルトで反撃し、最後は

「うあーーっ!」

奥の手、タイガースープレックスホールドで3カウント奪取。王座を取り戻した。勝負タイム22分22秒。

「勝った・・・」
苦戦したものの王座を奪還してほっとした表情のマイティ祐希子。これで来月のSPZクライマックスへ弾みがついたか。

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第7戦、幕張大会メインイベント。あばしりタッグ選手権が組まれた、王者藤原中江の28期生コンビに対するは、即席タッグのケンドーカミスワ&RIKKA組。

先発は藤原とカミスワ。

元SPZ王者の実力者カミスワをどう切り崩していくかがこの試合のポイントといえたが、いきなりカミスワが仕掛けた。開始早々のグラウンドの攻防を制すると、上諏訪温泉極楽絞め!

「あが・・ぐ・・・」

RIKKAが早くも逆カット。中江を場外に落とした。なおも絞めるカミスワ、絞めるカミスワ。藤原、懸命に耐えたもののついにギブアップ。勝負タイム4分47秒。タイトルマッチ最短記録か。

RIKKA、試合出場の権利が来る前に、逆カットで少し動いただけであばしりベルトが転がり込んできた。まったく汗をかいてない。しかしRIKKA、マスク越しでも分かる複雑な表情。

2009年1月19日 (月)

第589回 30年目6月 SPZクライマックス予選会(下)

そして最終戦、さいたまドーム大会。

第1試合から予選会リーグ最後の4試合。

M千秋(2点、フィッシャーマンバスターからの片エビ固め 8.11)RIKKA(0点)

22期生のマーメイド千秋。ここまでまさかの6連敗と惨憺たる結果。この日は2年目のRIKKAを軽くひねって、ようやく初日を出したものの憮然とした表情で引き揚げた。

中江(8点、パワーボムからのエビ固め19.0)藤原(4点)

28期生同士の対戦。勝って予選会突破を決めたい中江、わずかな可能性を信じて藤原も応戦。レスリングセンスでは藤原なのだが、中江には馬力がある。ドロップキック一つをとっても重さがある。チョップもかなりの迫力。

「オラーーーー」
力のこもったパワーボムで優位に立つ中江。このあとも力の乗ったブレンバスター、STOとたたみかけて、最後は2度目のパワーボムで藤原を粉砕。

「うおおっ!」
中江里奈、堂々の4勝目を挙げて、予選会突破、SPZクライマックス初出場を決めた。

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

スカーレット小縞、出番前に本大会出場の可能性が消えてしまった。(斉藤彰子に勝っても8点で中江と並ぶが、直接対決で負けてしまっているため)

斉藤彰(12点、スクラップバスターからの片エビ固め 12.46)S小縞(6点)

2年続けてあと一歩のところで本大会出場を逃したスカーレット小縞、悔しさをぶつけるように攻めていったが、斉藤彰子の裏拳が意識ごと持ってってしまった。この選手どうして上位にはコロリと負けるくせに格下にはやたら強いのだろうか。最後はスクラップバスターで3カウント。1敗で予選会を終えた。

霧島(12点、ラリアットからの片エビ固め 13.11)H神田(12点)

既に本大会出場を決めている両者の対戦。しかし霧島レイラの頭突きが冴える。そして倒れたところへ重いギロチン。ハリケーン神田をあっという間に追い込む。そしてブレンバスター。H神田、得意の打撃で有効打を返せないままズルズルいってしまう悪いパターン。終盤になってゴッドハンド、ステップキックで粘りを見せたが、

「行くぞッ」
ラリアット炸裂。これで3カウント奪取。

この結果リーグ戦は1位通過がH神田、霧島、斉藤彰子の3人、4位通過中江、この4名が本大会出場権を得た。

そのあとー

場内に定型のアナウンスが流れる。

「次の試合に出場するセイレーン千春選手はこの試合が最後のファイトとなります、ファンの皆様よりいっそうのご声援をお願いいたします。」

対戦相手は25期の八島静香、はっきりいって結果は見えていた。

「ケッ」
いきなりパワーボムを連発で食らって大ピンチ、3発目のパワーボムこそウラカンラナで返したもののもうフラフラだ。それでも、

「イヤアッ」

セイレーン千春、さいごの延髄斬り。これで客席どっと沸く。

八島静香、どことなく堅い動きだったが、エルボー、スリーパーとつないでからもう一度パワーボム!
どおんっ!

全体重を浴びせて押さえ込む八島、これで3カウントが入った。

「9分53秒、パワーボムからのエビ固めで八島静香の勝ち」

勝った八島、複雑な表情で勝ち名乗りを受け、一礼してから引き揚げた。

かなりの時間をかけて起き上がったセイレーン千春。セコンドについていた双子の妹のマーメイド千秋と一礼して引き揚げた。

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セミファイナルはタッグマッチ。ナイトメア神威、マリシアルイス組対キャシーウォン、ブルックウォン組。ナイトメア神威が暴れ回って14分1秒、パワーボムでキャシーを倒して終了。

そしてメインイベントのSPZ戦、今回の挑戦者は最強外人ジェーン。しかし今回の対決ではジェーンが投げまくり攻勢に出てきて、マイティ祐希子が劣勢に立たされる。フロントスープレックスを連発で食らって動きが止まったマイティ祐希子、続くキャプチュードにあっけなく3カウントを喫した。勝負タイム21分6秒、王座流出となってしまった。

ざわつく館内、そしてセイレーン千春の引退セレモニー。

「私は辞めたいときに辞める、それだけだよ!」

悪役レスラーとしてSPZの前座戦線を引っ張った名脇役がリングを去った。

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セイレーン千春

SPZ22期生

2030年5月11日、鹿児島県営公園大会の対野村つばさ戦でデビュー。2038年6月22日、さいたまドーム大会での対八島静香戦で引退。稼動月数98ヶ月、出場試合数(推定)704試合

タイトル歴
第41代・45代・48代・50代・55代あばしりタッグ王者(パートナーはマーメイド千秋)

2009年1月18日 (日)

第588回 30年目6月 SPZクライマックス予選会(中)

30年目6月 SPZクライマックス予選会

今年の出場権は4つ、華麗なイス取りゲームが繰り広げられた。

第4戦、三重大会。
中江(4点、片エビ固め 4.21)RIKKA(0点)

中江完勝。RIKKAをわずか4分あまりでしとめた・・・

(筆者がトイレに行っている間に勝ってしまった)

藤原(2点、JOサイクロン 12.0)M千秋(0点)

2連敗中の両者の対戦、同期の中江がM千秋に勝っているだけに勝っておきたい藤原。しかしマーメイド千秋も先輩のプライド、タッグ王者のプライドで応戦したので盛り上がった。

「これでどうだっ!」

この日2回目の秘技、JOサイクロンが決まり、藤原もマーメイド千秋から3カウントを奪った。
「クソ・・・こんなはずじゃあ」

SPZタッグ王者のマーメイド千秋、まさかの3連敗に意気消沈・・・

斉藤彰(4点、飛燕脚からの片エビ固め 15.04)霧島(4点)

「せえいっ」
斉藤彰子のジェットスマッシュに霧島の動きが止まる。あとはもう殴られ蹴られるだけ。フィニッシュは飛燕脚だった。

H神田(6点、脇固め 12.47)S小縞(4点)

ハリケーン神田強い。掌底連打で相手の動きを止めて、とどめの脇固めでギブアップを奪った。これでただひとりの3連勝。

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5戦目は滋賀大会。
藤原(4点、アームホイップからの片エビ固め 11.07)RIKKA(0点)

藤原が落ち着いた戦いぶりを見せて、最後は相手のスタミナが尽きたところをアームホイップで投げて2勝目ゲット。

斉藤彰(6点、ジェットスマッシュからの片エビ固め 15.07)M千秋(0点)

ズバッと決まったジェットスマッシュ。斉藤彰子も手堅く白星を積み重ねた。

霧島(6点、スプラッシュマウンテンからのエビ固め 17.25)S小縞(4点)

1敗同士の対戦。スカーレット小縞が頭突き連打で先手を取るが、、パワーでは霧島のほうが何枚も上、DDTで小縞をグサリと突き刺して主導権を握る。そして最後はスプラッシュマウンテン。これで3勝目をゲット。

H神田(8点、ゴッドハンドからの片エビ固め 16.04)中江(4点)

ハリケーン神田が先輩の意地を見せて、中江をゴッドハンド2連発で昏倒させた。これでただひとり4連勝。

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第6戦和歌山大会。
S小縞(6点、ジャンピングニーからの片エビ固め 14.47)藤原(4点)

2敗同士の直接対決。やはり昨年本大会に出たH神田がここまで全勝、霧島、斉藤が1敗できているので4つ目のイスを狙うためにもお互い負けられない。

「おーりゃーー」

かわいい顔して豪快なヘッドバット。しかし藤原もドロップキック、スリーパーで手数を返す。しかしこの日はスカ小の意地が勝った。なにしろ地元凱旋である。

―なんとしてもSクラに出る!!

ジャンピングニー2連発。これで藤原和美を退けた。
「・・・くっ」
藤原和美3敗目、これで本大会出場へあとがなくなった。

斉藤彰(8点、ジェットスマッシュからの片エビ固め 12.27)中江(4点)

斉藤彰子、1敗をキープ。中江を伝家の宝刀ジェットスマッシュで退けた。

霧島(8点、ラリアットからの片エビ固め 6.16)RIKKA(0点)

RIKKA、玉砕覚悟で攻めていって農鳥も見せたがそこまでで、霧島レイラのラリアットに散った・・・霧島レイラも4勝目を上げて本大会出場に大きく近づいた。

H神田(10点、DDTからの片エビ固め8.10 )M千秋(0点)

ここまで0点と星の上がっていないマーメイド千秋。やはり正面切ってのシングルマッチでは衰えは隠せないのか。この日もハリケーン神田にいいところなく敗れた・・・
「よし・・・」
ハリケーン神田、5連勝で本大会出場を決めた。

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第7戦は長野大会。予選会リーグも佳境。
斉藤彰(10点、ジェットスマッシュからの片エビ固め、15分くらい)藤原(4点)

もうこれ以上負けられない28期生、藤原和美。勝てば予選会突破が決まる26期生斉藤彰子、両者思いをぶつけあう好ファイトを展開。藤原、JOサイクロンを早めに繰り出すなど積極的に攻める。だが、斉藤彰子、格下には強い。掌底や裏拳をコンスタントに当てて、

「う・・あ・・・っ」

藤原がついに足に来てしまった。こうなったら斉藤のもの、飛燕脚、ジェットスマッシュのお決まりコースで藤原を地獄送り・・・

「ぐ・・・・」

4敗目を喫した藤原、ここで脱落。蹴りつぶされてしまいセコンド陣におんぶされて退場。斉藤彰子はこれで予選会突破を決めた。

中江(6点、バックドロップからの片エビ固め 15.40)S小縞(6点)

藤原脱落に伴い4つ目のイスはスカ小と中江の争いとなった。既に3敗を喫しており後がない中江、積極的に飛ばすが、スカーレット小縞も頭突き連打で応戦。

「ウオーーーッ」

中江里奈、パワーボムを繰り出すも決定打にならず。逆にスカ小のラリアットを食らってしまい苦境に立たされる。

「おりゃあっ」
スカーレット小縞パイルドライバー。頭から落ちた中江、1発目は2.9でクリア、2発目はのロープに逃げた。そしてSTOで反撃、そのあとジャンピングニー、バックドロップとたたみかけて、スカ小越えに成功。

「・・・やったね!」

これで4つ目のイスをめぐる争いは一気に分からなくなった。

H神田(12点、ボディスラムからの片エビ固め 10.15)RIKKA(0点)

ハリケーン神田、完勝。RIKKAをまったく寄せ付けず。これで6連勝。明日の霧島戦に勝てば全勝通過である。

霧島(10点、ラリアットからの片エビ固め 9.47)M千秋(0点)

霧島レイラ、ラリアットで5勝目を挙げて予選会突破を決めた。
そして最終戦、さいたまドーム大会。

(続きます)

2009年1月17日 (土)

第587回 30年目6月 SPZクライマックス予選会(上)

30年目6月
27期生・中江里奈のファンクラブが結成された。ゴツゴツした突貫ファイトが評判になったようだ。

コンバット斉藤、ケンドーカミスワが負傷欠場。新人のサキュバス真鍋も「居残り練習」のため欠場。

「・・・ケッ」

22期生のセイレーン千春が引退を表明。入門してすぐ海外団体に移籍し、成長期の練習量の貯金がないため、衰えだすのも速かった。

恒例のSPZクライマックス予選会。

ハリケーン神田(前回本大会5点)

霧島レイラ(前回本大会5点)

斉藤彰子(前回本大会2点)

マーメイド千秋(22期)

スカーレット小縞(26期)

藤原和美(28期)

中江里奈(28期)

RIKKA(29期)

総当りリーグ戦を行い、上位4名が本大会に出場できる。

第1戦沖縄大会、メインはなんとSPZタッグ選手権、沖縄でのタイトル戦開催は珍しい。王者の25期生コンビに対するはPDFのナイトメア神威&マーメイド千秋。2戦目以降がSクラ予選会リーグ戦なので、初戦に持ってくるしかなかったのである。

しかし25期生コンビの連係が抜群。PDF相手でもまったく容赦なし。手堅く分断してまずはマーメイド千秋を集中砲火。サンドイッチラリアットで悶絶させる。

あとは怪人ナイトメア神威をつぶすだけと思われたが、ナイトメア神威も持ち前のパワーと打たれ強さを武器に奮戦。場外パワーボムで八島に大ダメージを与える。代わって出てきたハリケーン神田には裏投げ。しかしローンバトルで疲れたのかマーメイド千秋にタッチ。あーあという雰囲気。

「今だーー」

八島が肩車、ハリケーン神田が飛んだ、ダブルインパクト発動。頭からマットに突き刺さったM千秋、誰もがこれで終わったと考えたが、

ワン、トゥ・・・ドドドドドド
カウント3ギリギリで肩を上げたマーメイド千秋。

「コノヤロウッ」

マーメイド千秋、最後の力を振り絞り、H神田を捕らえてフェイスクラッシャー。なんとこれで3カウントを奪取。勝負タイム54分48秒、PDFにSPZタッグベルトが渡ってしまった・・・

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2戦目の浜松大会から予選会リーグがスタート。

斉藤彰(2点、飛燕脚からの片エビ固め 6.17)RIKKA

斉藤彰子が一方的に蹴りまくって女忍者つぶし。しかしどうして格下の選手にはやたら強いのか・・・

S小縞(2点、シャイニングウィザードからの片エビ固め 13.17)M千秋

2日まえの沖縄大会でSPZタッグ王座を奪取してご機嫌のマーメイド千秋、しかしこの日はスカーレット小縞の思い切りのいい攻めに押されてしまう。フィッシャーマンバスターで反撃するも後が続かず、
「そろそろ本気で行きます」
ダイビングプレス2連発からのシャイニングウィザードでフォール負け。

霧島(2点、スリーパーホールド 18.17)中江

「予選会は全部勝ちますよ。」

同期のM祐希子のSPZベルトに挑戦するためにも、こんなところでもたついてられない霧島、後輩の中江のラリアット攻めに手こずったものの、スタミナ切れを待って攻めに転じ、ブレーンバスターでぐったりさせておいてスリーパーで絞め落とした。意外な結末にどよめき。

H神田(2点、DDTからの片エビ固め 12.40)藤原

今回のリーグ戦、予選通過の枠3つまでは前回の本大会に出たH神田、霧島、斉藤彰で固いと見られていて。4つ目のイスをスカ小、M千秋、藤原、中江で争う展開と見られていた。

前タッグ王者のH神田に勝てないまでも印象を残しておきたい藤原だったが、一方的に殴られてDDTに敗戦。次代のエースを狙うのがこんな負け方でいいのか。

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第3戦岐阜大会。

S小縞(4点、タイガードライバーからの片エビ固め 6.33)RIKKA(0点)

スカーレット小縞、完勝。2連勝と堂々の立ち上がり。

「去年悔しい思いをしていますから、今年はなんとしても本大会に出ます!!」

中江(2点、パワーボムからのエビ固め 11.26)M千秋(0点)

なんと中江がパワーボムで22期生でSPZタッグ王者のマーメイド千秋に勝ってしまう番狂わせ。場内どよめき。

「Sクラに出るためにも、これ以上負けられません!」

霧島(4点、スプラッシュマウンテンからのエビ固め 15.22)藤原(0点)

これも楽しみな一戦。しかし霧島レイラ、後輩に足元をすくわれるわけにはいかんと重量感あふれる攻め。藤原、新技のJOサイクロンを初公開するも岩のような身体の霧島には決定打にならない。そのあとも押し込まれて、

「ウォオオオオオ!イクゾッ」

スプラッシュマウンテンで藤原、轟沈・・・

H神田(4点、掌底からの片エビ固め 19.54)斉藤彰(2点)

例によって壮絶な打撃戦が展開されたが、長期戦で踏ん張りきれない斉藤彰子、ゴッドハンドを食らってしまって動きが止まり、そのあとはズルズルと・・・

(続きます)

2009年1月16日 (金)

第586回 30年目5月 東西対抗戦

30年目5月。
「スーパーファイトシリーズ」開幕。九州地方を回る。

「うわあああっ」

新人のサキュバス真鍋、第1試合で痛めつけられる日々が続いた。もう2ヶ月目なので会社側もあまり配慮しない。第2戦宮崎大会でセイレーン千春に一方的に攻められ、7分2秒、ギロチンドロップにフォール負け。

第5戦長崎大会、メインで組まれたのはSPZ選手権、長崎で開催されるのは珍しい。王者マイティ祐希子に挑むのは23期生のナイトメア神威。

SPZもマイティ祐希子の後に続くスター選手候補が育っていないので、PDFの首魁、ナイトメア神威をぶつけるしかなかった。

「キェアーーーーー」
ナイトメア神威、奇声を発しながらボディスラムを放っていたまでは良かったのだが、ローリングソバットで動きが止まってしまう。

「あーこれは祐希子ちゃんの勝ちですね」
かいせつの吉田社長、身も蓋もないコメント。あとは弱ったナイトメア神威を押しまくったM祐希子、的確な延髄斬り出追い込む。ナイトメア神威もパワーボムを放つなど意地を見せたが、

「はぁぁー、いっくよー!」
最後は得意のムーンサルトでカウント3。勝負タイム21分20秒、あっさりと3度目の防衛に成功。

その翌日佐賀大会、メインで組まれたのがあばしりタッグ戦。王者藤原和美中江里奈に挑むのは元あばしり王者チーム、ハムルシアター&マリシアルイス組。伸び盛りの若手と中堅外人でいい勝負やってもらいましょうかというマッチメイク。

しかしハムルシアターは実力者、打撃が実に重い。伊達に過去6度もあばしりベルトを巻いていない。マリシアも絶妙の立ち回りでサポート。執拗な脇固めで中江に悲鳴をあげさせる。
「うおーっ」
しかし中江も仕掛ける。パワーボムで反撃。
「ウグググ」
頭を押さえてマリシア、ハムルにタッチ。代わって出てきたハムルも中江に脇固め攻勢。これは藤原がカット。試合は長期化した。しかしながいあいだローンバトルを強いられたハムルの動きがだんだん落ち、そこを突いて中江がラリアット。

ならばとマリシアが再び前面に出るが、藤原のジャーマンをまともに食らって戦闘不能になった。落ち着いて藤原がトドメのスクラップバスター。51分40秒の激戦を制した。王者組が初防衛に成功。

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第7戦山梨カイメッセ大会ではメインでSPZ世界タッグ戦、王者の25期生コンビ、ハリケーン神田&八島静香に対するはコンバット斉藤&斉藤彰子の空手道姉妹。
組み合う。それだけで大歓声。

―蹴って蹴って蹴りつぶす。それしかない。

団体最古参となったコンバット斉藤、動きは落ちているのだが迷いのない攻め。

―長期戦にもつれこめば、斉藤さんは必ずへばる!

ハリケーン神田も殴り返す。双方の打撃が交錯するゴツゴツした試合となった。
「はっ」

ハリケーン神田がここで必殺ゴッドハンド。ここで斉藤彰子にタッチ。しかしこの日は斉藤彰子、調子が悪いのかファイトもいまひとつ冴えない。八島のデスバレーを食らって悶絶。
再びコンバット斉藤が出てきた。

「ハーッ!」
伝家の宝刀ジェットスマッシュ。八島たまらずH神田にタッチ。

コンバット斉藤、飛燕脚。これはロープに逃れたH神田。そのあとは4選手が入り乱れるタッグマッチ終盤に良くある攻防。しかし斉藤彰子がついにスタミナ切れを起こし孤立。そこを突いて合体技ダブルインパクト。

まっさかさまに転落した斉藤彰子、無念の3カウントを喫した。勝負タイム60分の熱戦を制した王者チーム。

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最終戦横スペ大会、恒例の東西対抗戦が行われた。

RIKKA(山梨)○(掌底からの片エビ固め 5.32)サキュバス真鍋(福井)

新人のサキュバス真鍋、RIKKAに一方的にやられてしまった・・・これで東軍が1勝

藤原(栃木)(シャイニングウィザードからの片エビ固め 11.21)M祐希子(山口)○

SPZ王者マイティ祐希子が早くも登場。対戦相手の藤原をまったく寄せ付けず、シャイニングウィザードで快勝。これで1勝1敗の五分に戻した。

中江(秋田)(飛燕脚からの片エビ固め14.30)斉藤彰(三重)○

存在感を示すためにそろそろ先輩越えを果たしたい中江、しかし斉藤彰子も打撃で応戦。かみ合った好勝負となった。しかし斉藤彰子、このクラスの相手にももたつく。パワーボム、DDTを食らって追い込まれる。なんとか裏拳、回し蹴り、飛燕脚とたたみかけて3カウント奪取。西軍が2勝目。

S小縞(和歌山)(エルボーからの片エビ固め 12.30)八島(島根)○
SPZ世界タッグ王者の八島静香が4試合目の登場。荒々しい攻めでスカ小を圧倒。スカーレット小縞もパワーボムをウラカンラナで切り返すなど良く粘ったのだが・・・これで西軍が3勝目、王手をかけた。

H神田(茨城)○(掌底からの片エビ固め15.38)S千春(鳥取)
10分過ぎ、ハリケーン神田の掌底がモロに入ってしまいセイレーン千春の動きが止まる。あとは一気に攻めたH神田、最後も掌底で3カウントを奪って勝利。

M神威○(北海道)(サソリ固め 15.36)M千秋(鳥取)
PDFの同門対決はナイトメア神威が勝利。これで東軍も3勝目を挙げて逆王手、決着はメインイベントに託された。

Kカミスワ(長野)(飛燕脚からの片エビ固め 60.0)C斉藤○(三重)
優勝賞金70万円の行方はメインイベントに託された。去年はコンバット斉藤が勝っているカードなのだが、シングルマッチでは動きが相当落ちてきている。相手の技を食らったあと動きが止まってしまい反撃できない。カミスワはいつもの脇固め右腕一点集中で試合を作る。やはり試合は長引いた。
コンバット斉藤、掌底で盛り返そうとするが、カミスワもうまく受けて、エルボーで反撃。そして40分頃、コンバット斉藤のスタミナが尽きたか、棒立ち。そこへボディスラム、ローリングソバットで切り崩しにかかるカミスワ。そしてまたしつこい右腕攻め、この展開に焦れたコンバット斉藤、

「ハッ!」
ジェットスマッシュで勝負に出た。しかしカミスワ吹っ飛んだものの続くフォールを2で返す。

コンバット斉藤、ここを勝負どころと見て裏投げ、裏拳、飛燕脚と一気にたたみかけて、なんとか3カウントを奪った。勝負タイム60分の激闘。

この結果東西対抗は、西軍の勝利となった。

2009年1月15日 (木)

SPZスター選手列伝 040 イージス中森

SPZスター選手列伝 40

従業員コード:040

「ザ・仕事師」 

イージス中森

本名:中森かずさ、2012年11月29日、徳島県徳島市出身、SPZ新人テストに合格し、20期生として2028年4月16日、京都市体育館でのキューティー金井戦でデビュー。練習熱心な性格で、関節技を主体としたキビキビしたファイトを繰り広げ、武藤めぐみと組んでSPZタッグ王者に輝き、シングルでもTWWA世界王者に輝くなどトップスターとして活躍。SPZ最古参選手として団体を支える。得意技はストレッチプラム。

2038年4月28日、新日本ドームでのRIKKA戦で引退。稼動月数121ヶ月、出場試合数(概算)880試合

タイトル歴

TWWA世界王者

第50代SPZ世界タッグ王者(パートナーはノエル白石)
第54代SPZ世界タッグ王者(パートナーはノエル白石)
第56代SPZ世界タッグ王者(パートナーはノエル白石)
第62代SPZ世界タッグ王者(パートナーはマイティ祐希子)
第67代SPZ世界タッグ王者(パートナーはマイティ祐希子)

第30代あばしりタッグ王者(パートナーは野村つばさ)

第22回SPZタッグリーグ優勝(パートナーは武藤めぐみ)
第29回SPZタッグリーグ優勝(パートナーはマイティ祐希子)

今野役員コメント、団体エースのタッグパートナーとして脇を固める、軍師のような名選手だった。地方大会では武藤めぐみやノエル白石と組んで、また晩年はマイティ祐希子と組んで、メインやセミでDFやPDFと相対する役割を演じた。武藤とライラが派手にやりあい、A中森とREKIがしのぎあうという展開はひときわ会場が沸いた。

派手な大技はノーザンライトスープレックスくらいしかもっていないのだが、シングルプレーヤーでも息の長い活躍を続け、8年連続Sクラ出場の偉業や、TWWAベルトを奪取したりとけっこうな活躍を見せた。引退後は団体に残り、トレーナーで選手の体のケアに携わる一方、マイティ祐希子の「テクニカルアドバイザー」としてセコンドについている。

2009年1月14日 (水)

SPZスター選手列伝 39 REKI

SPZスター選手列伝 39

従業員コード:039 SPZ20期

「ザ・クノイチ」

 REKI

本名:大門敬子、2012年8月18日、山梨県早川町出身、幼少の頃より忍者としての修行を積み、対人格闘術の修行のために流派の壁を越えプロレスの道を選び、SPZ20期生として2028年4月16日、京都市体育館での対野村つばさ戦でデビュー。忍者ならではの軽快な身のこなしを生かしたファイトで観客の度肝を抜く。ライラ神威のパートナーに起用され、あばしりタッグ、SPZタッグを戴冠。ライラ引退後はナイトメア神威のパートナーとなり、PDFの重鎮として活躍。得意技は農鳥(変形ミサイルキック)

2037年7月23日、新日本ドームでの対 藤原和美戦で引退。稼動月数112ヶ月、出場試合数(概算)808試合

タイトル歴

第45代SPZ世界タッグ王者(パートナーはライラ神威)
第48代SPZ世界タッグ王者(パートナーはライラ神威)
第53代SPZ世界タッグ王者(パートナーはライラ神威)
第55代SPZ世界タッグ王者(パートナーはナイトメア神威)
第57代SPZ世界タッグ王者(パートナーはナイトメア神威)
第59代SPZ世界タッグ王者(パートナーはナイトメア神威)
第61代SPZ世界タッグ王者(パートナーはナイトメア神威)
第64代SPZ世界タッグ王者(パートナーはナイトメア神威)

第26代あばしりタッグ王者(パートナーはライラ神威)
第28代あばしりタッグ王者(パートナーはライラ神威)
第33代あばしりタッグ王者(パートナーはフレイア鏡)
第35代あばしりタッグ王者(パートナーはコンバット斉藤)
第26回SPZタッグリーグ優勝(パートナーはナイトメア神威)

写真集 1冊
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今野役員コメント:ギラリと光る鋭い刃物のような個性のある選手だった。寡黙だが機敏な動きでマットを駆け回るので、ヒールサイドの用心棒的役回りにしてはどうかと吉田さんが思いつき、ライラ神威のパートナーに抜擢されたらそれがうまくはまってしまった。好き勝手に暴れるライラ神威ときっちり対戦相手から勝ちを取りにいくREKIの組合せはSPZの長い歴史の中でもベストタッグの呼び声が高かった。

試合終盤にライラ神威が場外大乱闘をおっぱじめる間にREKIがもう一人を仕留めるというパターンは役割分担の極致を見ているようで実に見ごたえがあった。ライラ神威引退後はPDFのナイトメア神威とコンビを組んだが、狂乱と冷酷の組合せでこれも味があった。
シングルプレーヤーとしてはベルトには手が届かなかったが、それなりの戦績を残した。

とくに見えない位置までジャンプして急降下で落ちてくる変形ミサイルキック「農鳥」はファンの印象に強く残る技だった。試合が混戦や乱戦になるともうひとつの決め技「新蛇抜」で丸め込む技術も持っていた。引退後は奈良田忍者軍に復帰し、東京で要人警護の仕事に従事している。

2009年1月13日 (火)

SPZスター選手列伝 038 ノエル白石

SPZスター選手列伝 038

従業員コード:038

「不思議系戦士」

ノエル白石(SPZ19期生)

本名:白石直子、2011年11月11日、新潟県糸魚川市出身。中学時代は助っ人で出た柔道大会で5人抜きするという伝説を持つ。SPZにスカウトされ、19期生として2027年4月20日、釧路アリーナ大会での対 野村つばさ戦でデビュー。細身の身体からは想像もつかない腕力の強さを持ち、氷室紫月とタッグを組んでSPZ世界タッグ王者に輝く。シングル戦線でもSPZクライマックスで優勝決定戦まで残るなど実力は急上昇し、SPZのトップグループに割り込んで、2031年には武藤めぐみを破りSPZ世界王者に輝く。得意技はSTO。

2036年2月22日、横浜スペシャルホール大会での対マイティ祐希子戦で引退。稼動月数107ヶ月、出場試合数(概算)776試合

タイトル歴

第64代SPZ世界王者

第66代SPZ世界王者

第37代・39代・42代・46代SPZ世界タッグ王者(パートナーは氷室紫月)

第50代・54代・56代SPZ世界タッグ王者(パートナーはイージス中森)

第47代あばしりタッグ王者(パートナーはマイティ祐希子)

写真集1冊

今野役員コメント:つかみどころのない選手だが力はあったし、シングルマッチの勝率も高かった。あの武藤めぐみの長期政権を止めたのはこの人だった。地方興行でもドームでも淡々と戦って、勝っても負けても表情をあまり変えず花道を後にするタイプの選手。パートナーにはしっかり者の氷室やA中森と恵まれたので相手にダメージを与える削り役としてタッグタイトル戦線でも大いに活躍していた。STOを仕掛ける前の「もう終わりにするの・・・」の決め台詞はファンがよく沸いた。引退後は郷里の新潟に帰り、よろず屋の店番として第二の人生を送っているらしい。

2009年1月12日 (月)

第585回 you gave me a smile・・・

30年目4月 イージス中森ご声援ありがとうシリーズ

最終戦は新日本ドーム大会。

「イージス中森最終試合」

の大看板が掲げられた。玄人好みのファイトスタイルながら、息の長い活躍を見せて、武藤めぐみ、マイティ祐希子のパートナーを務めるなどタッグ戦線では非常に活躍した。第5代SPZ選手会長として選手のまとめ役としても貢献した。

第1試合でセイレーン千春対ファントムローズ2号(初来日)

初来日のファントムローズ2号、空中戦を主体とした派手なプロレスを見せファンの歓声を浴びる。最後はボディスラムでセイレーン千春から3カウントを奪った。勝負タイム14分19秒。

第2試合はスカ小、サキュバス真鍋対ジェシービートン、アネットデュラムのタッグマッチ。スカ小がいつものように先輩風を吹かせたのか張り切ってファイト。ある程度弱らせてから

「ちょっとお願いね」

サキュバス真鍋につなぐ。しかしアネットもそれなりの実力者、ローリングソバットで動きを止めてサンドイッチラリアット。たちまちサキュバス真鍋大ピンチ。

「う、わーーーっ」

なんとか戻ってスカ小につなぐ。あとはスカ小がアネットをジャンピングニーで料理した。サキュバス真鍋、ドームでも勝利。

第3試合は中江里奈対藤原和美。昨日あばしりタッグをとったばかりの28期二人がシングルマッチで対決。同期で実力も同程度なのでお互い負けられない。

しかしこの二人の直接対決の場合相性がいいのは力任せに攻めてくる中江のほう。今回も藤原の動きを止めて

「こっちからいくよっ」

パワーボム一閃。これでカウント3.勝負タイム13分55秒。その試合が終わると休憩。

**************************

休憩明けの試合は霧島レイラ七番勝負最終戦、相手はPDFのマーメイド千秋。過去何回か勝っているので落ち着いてファイト。パワーで圧倒し最後はスプラッシュマウンテンで幕。勝負タイム11分39秒。これで七番勝負は5勝2敗。

そして・・・

「次の試合に登場する、イージス中森選手はこの試合が最後のファイトとなります。ファンの皆様一層のご声援をお願いいたします!」

まず「ラ・フォリア」がかかり、デビュー2年目のRIKKAが入場。そして

「you gave me a smile・・・」

「you give・・・」がかかり、ものすごい歓声が。

SPZにはいって丸10年、精一杯戦い抜いてきたイージス中森、歴代最長距離を駆け抜けたレスラーがきょう、リングシューズを脱ぐ。

イージス中森、感慨ぶかげな面持ちで長い花道をリングへ。

コールを受けるやものすごい量の紙テープ。

そのあとゴング。

組みあう、するするするっとスリーパーへ移行。このあたりがうまい。そして逆片エビ、ランニングタックル。一つ一つの技を的確に、確かめるように繰り出す。

「ふっ」

エルボーもきっちり当てる。しかしRIKKAも掌底で応戦。懸命に受けるイージス中森。

10分過ぎ、RIKKAの動きが鈍ってきた。そこを野がs図イージス中森、スクラップバスターで叩きつける。地味な技だがこの人はお手本のようにきっちり決める。
「ウウウ・・・」

これでRIKKAの動きが止まった。

イージス中森、ダウンしたままのRIKKAを引きずり起こして組み付いて、

「せいっ!」

みごとなノーザンライトスープレックス。その後のブリッジも完璧。

ワン、トゥ、スリー!!
「11分50秒、ノーザンライトスープレックスホールドでイージス中森の勝ち」

動けないなりに試合を作ってきっちりクローズするあたりはさすがとしかいいようがない。このあと選手全員がリングに上がってイージス中森を胴上げ、新選手会長のハリケーン神田が花束を渡した。

イージス中森、この日2度目の「you give・・・」が流れる中、笑顔で引き揚げた。

「ハァ、ハァ・・・・勝てて終われてよかったです。まあ最後は大きい会場なんで、寝技より立ち技のほうがいいかなって、ははっ」

****************************

セミファイナルは「コンバット斉藤デビュー9周年記念試合」

妹の斉藤彰子と組んで、ロゼ様、ワイルドローズ1号と対戦。

「はぁぁっ」

コンバット斉藤、さすがの蹴りでファントムローズ1号をまずつぶす。そのあと残ったロゼの相手。この選手は強豪なので斉藤彰子と入れ替わり立ち代り攻めてスタミナ切れを待つ。

―彰子も、まあ強くなったな・・・

少し前は自分が出ずっぱりだったのだが、今はこうしてコーナーで見ていられる。

ロゼを蹴り倒し、出てきたワイルドローズ1号にも裏拳ブーン。レスリングへの対応はともかく、打撃技なら並んだかもしれない。

「姉さん!!」
コンバット斉藤を呼び入れる彰子、何をやるかは目でわかる。
ロゼの頭をつかんで威力を倍加、
合体パワーボム。

これでロゼヒューイット悶絶、12分11秒、斉藤姉妹が完勝。コンバット斉藤も動きはかなり落ちているのだが、タッグのときは妹の彰子がカバーしてくれるのであまり粗が目立たない。

***********************

メインイベントSPZ戦、王者マイティ祐希子に挑むのは22期生のケンドー・カミスワ。もうM祐希子とまともに渡り合える人材が払底している。

(評価の差が300未満がN神威、カミスワ、C斉藤しかおらずうち2人は落ち目)

「Disintegration」がかかり、マイティ祐希子が入場。もう堂々たるSPZのエース。ゴングが鳴るやいつものハイスパートレスリングで追い込む。

カミスワ、懸命に耐えて関節一発を狙うも、M祐希子その辺は分かっていてロープを背にして闘う。
あっという間に追い込んで、
「これでどうだ!」

マイティ祐希子のつぶし技、ニーリフト乱打。衝撃でカミスワの身体が浮き上がってしまう。
「うううっ・・・」
足をばたつかせてもがき苦しむカミスワ。そこへ走りこんで豪快なラリアット!これで3カウント奪取。勝負タイム17分42秒。王者が2度目の防衛に成功。これでマイティ祐希子、年明けからシングル5連勝。

**************************

メイン終了後、イージス中森の引退式。引退後もコーチとして団体に残ることが決まっている。10カウントゴングのあと、ファンに挨拶。

「自分の仕事はこれで終わりです、ありがとうございました」

イージス中森

SPZ20期

2028年4月16日、京都市体育館でのキューティー金井戦でデビュー。2038年4月28日、新日本ドームでのRIKKA戦で引退。稼動月数121ヶ月(歴代1位)、出場試合数(概算)880試合

タイトル歴
TWWA世界王者

第50代SPZ世界タッグ王者(パートナーはノエル白石)

第54代SPZ世界タッグ王者(パートナーはノエル白石)

第56代SPZ世界タッグ王者(パートナーはノエル白石)

第62代SPZ世界タッグ王者(パートナーはマイティ祐希子)

第67代SPZ世界タッグ王者(パートナーはマイティ祐希子)

第30代あばしりタッグ王者(パートナーは野村つばさ)

第22回SPZタッグリーグ優勝(パートナーは武藤めぐみ)

第29回SPZタッグリーグ優勝(パートナーはマイティ祐希子)

2009年1月11日 (日)

第584回 さなぎは蝶へと、そして羽ばたいた

第4戦は広島若鯉球場大会。

「今日はきつい相手だから、焦らないでね」

このシリーズデビューしたばかりのサキュバス真鍋は26期生のスカーレット小縞と組んで、セイレーン千春マーメイド千秋のあばしり王者チームと対戦。

「おらおらおらあーーー」

悪役姉妹の荒々しい攻め。殴る蹴るの暴行をこらえる。それでもサキュバス真鍋、チョップで反撃してスカ小にタッチ。

スカ小、新人に負担を掛けまいとして長いこと奮闘するが、マーメイド千秋にフィッシャーマンバスターを食らって悶絶。サキュバス真鍋が孤立してしまった。

―ど、どうすれば・・・

セイレーン千春、戸惑いを見透かしたようにS真鍋に組み付いて、ボディスラム。そしてサソリ固め。

「ぎゃああああ・・・」

あえなくサキュバス真鍋、ギブアップ。勝負タイム20分21秒。

この日のイージス中森はマイティ祐希子と組んで斉藤姉妹と最後の対決。例によってつなぎに徹するイージス中森、のびのびと暴れる団体エース・マイティ祐希子。

「中森さん!」

連係技、ダブルラリアットも決めた。

しかしコンバット斉藤も動く。
「ジェットスマッシュ!」

叫んでから伝家の宝刀をM祐希子に叩き込む。

やはりこの技はまだまだ危険だ。マイティ祐希子ぶっ倒れる。たまらずイージス中森にタッチ。

「やってしまえっ!」

コンバット斉藤の指示を受けた斉藤彰子が力強い攻め、イージス中森にスクラップバスター3連発。これは祐希子がカットしたが、続くドロップキック、イージス中森これはなんとかロープに逃れたが、

「はぁーっ!!」
斉藤彰子、飛燕脚、ドロップキック、しかしM祐希子カット。

ー祐希子との最後のタッグ、負けるわけにはいかない!

イージス中森、ストレッチプラムで彰子を振り切って、M祐希子にタッチ。

「いっくよーっ」
M祐希子ムーンサルト2連発、しかし斉藤彰子2でかえしてジェットスマッシュ!しかしこれはイージス中森がカット。総力戦の様相を呈してきた。

「これでどうだっ!」

M祐希子、コンバット斉藤を捕らえて合体パイル。そしてシャイニングウィザードでぐらつかせて

「中森さん!」
「はいよ!」

イージス中森がコンバット斉藤を肩車、コーナーに登る祐希子、出た出たダブルインパクト。頭からマットに落ちるコンバット斉藤。イージス中森は斉藤彰子を逆カット。これで激闘に終止符。30分の熱闘だった。

広島大会メインは霧島レイラ7番勝負第3戦。相手はケンドーカミスワ。カミスワのグラウンドレスリングに手こずったものの、ラリアットで突破口を開き、ネックブリーカーで元SPZ王者のカミスワから3カウントを奪った。勝負タイム24分31秒。

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翌日は第5戦九州ドーム大会。サキュバス真鍋はタッグマッチで勝利。(カミスワと組んで三下外人チームを撃破)

ー今日からシングル4連戦・・・これで終る。

試合前の控室。リングシューズの紐を結びながらイージス中森、精神統一。

第3試合で藤原和美対イージス中森。藤原がガンガン攻めていってジャーマン、ネックブリーカーとつないで3カウント奪取。勝負タイム14分30秒。

九州ドームメインは霧島レイラ対コンバット斉藤。売り出し中の霧島レイラ、元団体エースのコンバット斉藤もパワーで圧倒。蹴り技を出す隙を与えない。しかしコンバット斉藤も一発にかけていた。
―ジェットスマッシュ!

しかし当たりが浅かったのか、霧島レイラ、すぐさま起き上がって走りこんでジャンピングニー続けてラリアット。

―くっ、この!

コンバット斉藤なりふりかまわず2発目のジェットスマッシュ、これはさすがにぐらついた。すかさずデスバレーしかしカウント2.

霧島レイラ、ネックブリーカーで反撃、カウント2.8で返すC斉藤、

「アーーーッ!」
霧島レイラ、ここで切り札、スプラッシュマウンテン!!

まっさかさまに落とされたコンバット斉藤は無念の3カウントを聞いた。

霧島レイラが23分39秒の激戦を制した。
―そんな・・・ジェットスマッシュ2発入れたのに・・・
21期生のコンバット斉藤、敗北。がっくりと肩を落として引き揚げた。時代は確実に流れている。かつての団体エースなのだが・・・

*****************************

第6戦京都大会。

霧島レイラ、きょうは7番勝負の第5戦でイージス中森と対戦。動きの落ちたイージス中森相手なら楽勝で、スプラッシュマウンテン、裏投げとたたみかけてジャンピングニーで終了。霧島レイラの完勝で終わった。勝負タイム10分5秒。

**************************

第7戦名古屋しゃちほこドーム大会。

―今日と明日で終わり・・・

イージス中森、きょうの対戦相手はタッグパートナーにしてSPZ王者のマイティ祐希子。はっきりいって結果は見えていた。懸命に攻勢を耐えたが、マイティ祐希子がのっけからムーンサルト2発を出してきた。イージス中森もストレッチプラムで反撃したがあっさり振り解かれ、

「はああーーーっ」

別れのニーリフト乱打

2.8で返すイージス中森。

マイティ祐希子、もう一度ニーリフト乱打。マイティ祐希子も泣きそうな表情だ。

―起き上がって、来ないで・・・

ワン、トゥ・・ドドドドドドド!!

2.9ギリギリで返すイージス中森、

―タノムカラ、早く。こんな時間。過ぎて・・・

マイティ祐希子、もう一度引きずり起こして組み付いてニーリフト!

「がふうっ・・・」

こんどは完璧に入った。返せない。勝負タイム7分20秒。

「コテンパンにやられました・・はははっ。」

試合後のイージス中森はさばさばした表情でコメント。さすがにトップ選手相手だと歯が立たない。

セミファイナルは霧島レイラ7番勝負6戦め、霧島レイラ対斉藤彰子。姉のカタキを討とうと攻め込んでくる斉藤彰子。一進一退の攻防が続きたちまち20分経過。斉藤彰子がここで勝負をかけてきて、裏拳、ジェットスマッシュと畳み掛けられてピンチに陥ったが、霧島も裏投げで反撃、

ゼェ、ゼェ、ゼェ・・・

お互い大ダメージを負ってフラフラの状態。

「ウアオーーーー」
意を決して組み付くために踏み込んだ霧島レイラ、しかし目の前に出されたのは斉藤彰子の右足だった。

この日2度目のジェットスマッシュ、続くフォールを返せなかった。勝負タイム26分48秒。

名古屋大会メインはあばしりタッグ戦、王者極悪姉妹(マーメイド千秋&セイレーン千春)に挑むのは28期生コンビ、藤原和美、中江里奈組。デビュー3年目、すっかり体つきも雰囲気もいっぱしのレスラーらしくなってきた。

PDFの極悪姉妹相手に一歩もひかず抗戦する中江と藤原。セミに続いていい試合となった。多少ぎこちないがサンドイッチラリアットなどの連係も出した。

しかし極悪姉妹、S千春は2年間海外で遊んでいたのだがM千秋は8年間SPZで曲がりなりにもヒールとしてやってきたので実力はある。ローリングソバットを当てて怯ませる。そしてセイレーン千春がパワーボム、パイルドライバーと攻め立てる。2.9で返した中江、なんとか藤原にタッチ。

―もう、持たない・・・その前に仕掛ける!!

藤原和美、勝負をかけたジャーマン!これでマーメイド千秋から3カウントを奪った。勝負タイム51分33秒の死闘を制した。
「やったーっ!ベルトだ!」
28期生のふたり、デビューからまる2年であばしりのベルトを巻いた。

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あばしりタッグ選手権試合(60分1本勝負)

○藤原和美、中江里奈(51分33秒、ジャーマンスープレックスホールド)マーメイド千秋×、セイレーン千春

55代王者が2度目の防衛に失敗、藤原・中江組が56代王者となる

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2009年1月10日 (土)

第583回 30年目4月 足が絡むほど 坂駆け下りたら

30年目4月シリーズ

翌日第2戦札幌どさんこドーム大会。サキュバス真鍋の「青さ」に配慮したSPZフロント陣はタッグマッチでの養成策をとった。

この日はマーメイド千秋とタッグを組んで、ジェシービートン、アネットデュラムと対戦。先発はマーメイド千秋。

「まあ、そこに突っ立ってな、気が向いたらタッチしてやるよ」

しばらく流れを作って、相手方がアネットが出てきたところでタッチ。

「ほらよ、適当にやってこい」

サキュバス真鍋、アネットと組みあって、ロープワーク。タックルを決めた。しかし外人組、場外乱闘でいきなりしかけた。

ビートンが場外ブレーンバスター。リング内に戻してサンドイッチラリアット。これで終わったかと思われたがM千秋が蹴りを入れてカット。

「ウワーッ」
サキュバス真鍋、なんとかチョップで反撃してM千秋につなぐ。

このあとM千秋が奮戦。ビートンを場外乱闘でしばき倒して、アネットをどうにか捕まえる。

「真鍋、足持ってろ!」
デビュー2戦目で合体パイルを成功させた。そのままM千秋が押さえ込む。

「逆カットしろ!」
サキュバス真鍋、場外からリングインしようとするビートンを目でけん制。

カウント3が入った。勝負タイム15分8秒。サキュバス真鍋プロ初勝利。
「ようし、よくやったっ。」

マーメイド千秋がうまく立ち回ったおかげもあるが、デビュー2戦目で勝利。場内にマーメイド千秋のテーマ曲「SEEK&DESTROY」が流れる。

「勝ったんだから胸張って引き揚げろ」

札幌大会セミ前はイージス中森対ケンドー・カミスワ。技巧派同士の対戦、

グラウンドには定評のある両者の対戦だが、イージス中森の動きはもう見る影もない。カミスワがじわじわ攻めていって、上諏訪温泉極楽絞めで追い込み、最後はネックブリーカーで3カウント。それでも17分43秒の試合が成立した。

「そりゃぁ・・悔しいですけど・・・まあカミスワ選手も巧いですから」

このシリーズ、主力選手が抜けまくっている上に会場のハコが大きいので、集客のために「霧島レイラ7番勝負」という企画を組まざるを得なかった。この日はメインでロゼヒューイットと対戦。

総合力のあるロゼ相手にスプラッシュマウンテンで突破口を開く。ロゼもバックドロップ、シャイニングウィザードで反撃。どちらに転ぶか分からない状況となったが、

「ウオオーッ!!」
豪快なラリアット炸裂。これで頭からマットへ落ちたロゼ、続くギロチンドロップに3カウントを喫した。勝負タイム24分7秒。

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第3戦大阪大会。
「飛行機にもう2回も乗りました。楽しいですっ」
サキュバス真鍋は第2試合でカミスワと組んで昨日と同じ相手のJビートン、アネットと対戦。

「てやっ」
初めてドロップキックを打った。いい流れでカミスワにタッチ。
そして10分頃、カミスワがグラウンド技で弱らせたところへ再リングイン。

「ど、どうなっても知りませんからね・・・」
アネットのフロントスープレックス。サキュバス真鍋、懸命に受け身をとる。すぐさま出てきたビートンがギロチンドロップ。

フォールされる。

ワン、トゥ・・・ドドドドドド

ワアアアア!

カウント3ギリギリで返す。新人の奮闘に沸く場内。

「てやっ!」
懸命にチョップを打ってビートンを怯ませると、カミスワにタッチ。

後はカミスワが相手チームを追い込んで、ネックブリーカーでアネットを仕留めた。勝負タイム15分58秒、サキュバス真鍋、早くも2勝目。

「あの子、実戦向けだね」
イージス中森がぼそりと。

続く第3試合、今シリーズ限りで引退するイージス中森が登場。この日の相手は28期の中江里奈。案の定、一方的に攻め込まれる。しかしパワーボム狙いをウラカンラナで返すなど技術は健在。

―コツコツやって長期戦に持ち込めば・・・

中江、エルボーやヘッドバットでこまかくダメージを与えて、イージス中森のスタミナ切れを待つ方法に切り替えた。そうしてイージス中森が弱ったところでラリアット。そしてフラフラにさせておいてパワーボム。これで大ダメージを負ったイージス中森。もう一度パワーボムを食らって3カウントを奪われた。勝負タイム22分1秒の熱戦。

大阪大会メインは霧島レイラ7番勝負第2戦、対戦相手はSPZ王者マイティ祐希子。祐希子のスピードに対して力で対抗、スプラッシュマウンテンで怯ませる。

ーしかしマイティ祐希子もラリアット、ネックブリーカーで反撃。同期とはいえ、SPZ王者がシングルマッチでやられるわけにはいかない。

「はっ!」
ニーリフトをどばどば叩き込んで3カウント奪取。それでも23分58秒のいい勝負だった。

2009年1月 9日 (金)

第582回 晴れ渡る空に、丘をすべる風

レッスルエンジェルスサバイバー プレイ日記のようなもの
輝くエッセンシャルS

30年目4月

「どうやら、自分はもう闘えないようです・・・」

20期生のイージス中森が引退を表明。去年の秋ごろから考えてはいたのだが、タッグ王座を手放して、ついに決断したらしい。後輩の指導力に定評があったので、そのままコーチとして団体に残ることが決まっている。

SPZは新人スカウトを試みたが、有望な選手が見当たらない。しかたがないので、新人テストを実施。しかしいい人材は早々簡単に見つかるものではない。

「素質はそれなりかと思いますが・・・性格がちょっと・・・」

「でも声の感じは良かったよ、あれで悲鳴とかあげたら人気出るんじゃない、入れちゃおう」

「このスケベおやじ・・・」

真鍋凛奈(福井県出身)入団。イージス中森コーチが付きっ切りで基本動作と受け身を教え込んだ。中森コーチいわく「けっこう手のかかる新人」らしく、引退シリーズに向けて自らの調整どころではなかったらしい。

4月シリーズ「旗揚げ29周年&イージス中森ご声援感謝シリーズ」は仙台市からスタート。

「おおぅ・・・どきどきしてきた・・・」

今シリーズ、ナイトメア神威、八島静香、ハリケーン神田の3人が負傷欠場という惨状なので、シリーズ初戦第1試合でいきなり真鍋のデビュー戦が組まれた。リングネームは今野役員が冗談のつもりで言ったサキュバス真鍋。

「まあ、相手は中森さんだから、きっちりまとめてくれるでしょう」

第1試合、まずサキュバス真鍋15歳が花道をたたたたっと走ってリングイン。新人なのでテーマ曲はまだない。

そしてかかった曲は「you give・・・」

ものすごい声援と手拍子が巻き起こる。熱心なファンはテーマ曲を唱和する。

♪晴れ渡る空に、丘をすべる風ー、

赤コーナー側から最古参選手兼任コーチイージス中森25歳入場!
ワアアアアアア!!
これだけで場内沸く。

―ありがたくて涙が出そうになる。でも、決めたこと。今シリーズでリングから降りる。

イージス中森、階段を上がってロープをくぐり、赤コーナーサイドに立って屈伸運動。そのあとリングアナのコール。

「青コーナー、福井県大野市出身、さきゅばーす、まなべーっ」

阿部幸一リングアナがコール。拍手はまばら。
「赤コーナー、徳島県徳島市出身、いーじす、なかーもりー」

どワアアアアア!

今シリーズ限りでの引退はみんな知っている。第1試合なのに紙テープまで飛んだ。

―これが・・・中森さんの・・・今まで培ってきた・・・

ファイッ!
R北条レフェリーが試合開始を宣した。今野役員がゴングを一打。

いきなり組み付いて、イージス中森するするっとスリーパー。このあたりの流れはうまいとしか言いようがない。

「うっ・・・ぐぐぐ」

苦しがるサキュバス真鍋。自力で外せるわけがない。

「うううっ」

イージス中森、いったんスリーパーを解いて、ダウンしている真鍋の足を取って逆片エビ固めにとらえた。手加減したもののグイグイグイ!

「う・・・ひぎいいいいっ!」

えびぞリ状態。もがき苦しむサキュバス真鍋。早くも半べそをかいていた。
腰に鋭い痛みが走る。だが懸命にこらえてギブアップの言葉はのみ込んだ。

―そろそろ決めなさいよ。

ロイヤル北条レフェリーがイージス中森に視線を送る。

―はいはい。

イージス中森、逆片エビを解いて、ダウンしたまま起き上がってこない真鍋をつかんで引きずり起こしてコブラツイストに捕らえる。

「あ・・・・がっ・・・・!!」

真鍋の上半身が変な方向へ曲がってゆく。あまりの痛みに声も出ない真鍋。

「はいダメ、終わり!」

これ以上は危険と判断したロイヤル北条レフェリーが試合を止めた。

カンカンカンカン・・・

「4分38秒、コブラツイストで、イージス中森の勝ち」

そして再び流れる、「you give・・・」

―10年前は、私もあんな感じだった。頑張ってくれよ・・・

勝ち名乗りを受けたイージス中森、ダウンしたまま動けないサキュバス真鍋を見たあと、リングを後にした。

******************************

「すごく痛かった・・・ぐすっ」

ふらつきながら花道を戻ってきたサキュバス真鍋、半べそをかきながら控室に戻ってきた。

「デビューおめでとう!」

控室で先輩レスラー全員から声をかけられる真鍋。
こうしてSPZにまたひとり新星が登場した。

2009年1月 8日 (木)

第581回 あれから10年も

29年目3月
TWWAを新女に持ってかれる。まだまだ興行戦争は続いているのである。

3月シリーズ「ファイヤーソウルシリーズ」開幕。

第4戦カシマ大会で28期生の藤原和美が8期上でSPZタッグ王者のイージス中森をシングルで撃破。相手の関節技攻勢をしのいでしのいで、27分16秒の大勝負の末、ジャーマンで3カウント奪取。場内えええ!の声。

「ああ、もう・・・決め切れませんね」

イージス中森が自嘲気味にコメント。

***********************

そして第7戦、幕張大会。メインで組まれたのはSPZ世界タッグ戦。
「ボコボコにしてやんよーーーー」

元王者で25期生コンビの八島静香&ハリケーン神田が挑戦者チームで登場。八島さんは打たれ強いしハリケーン神田は打撃が恐ろしいものを持っているので案外いいコンビ。

「さぁ、今日もがんばるわよーー!」

「ベストをつくす、それだけです。」

シングルでは2年目の選手に負けても、タッグでは経験がものをいう。しかもパートナーは無敵のマイティ祐希子。やはり試合が始まるやいなやマイティ祐希子ぶっちぎりの波状攻撃。

―つぶすしかない。

しかしハリケーン神田、一発狙っていた。裏拳、思いっきり力をこめてぶん殴りぬける!

―イタッ・・・

出た出たゴッドハンド。これでM祐希子、動きが鈍った。ふだんなら一気の攻めをしてくるところだが動きがいまひとつ。流れを変えるためにパートナーにタッチ。

「いまだつぶせーーーーー」

挑戦者チーム、イージス中森が出てくるや一気の攻め。しかしA中森も自らが狙われることは百も承知。速いタッチワークで切り抜けようとしたが、

「なめんなああああああ」

デスバレー、これはM祐希子がカットしたが、次の瞬間H神田がうまーく場外乱闘に連れ込んだ!分断された王者チーム。

「!」

置かれた状況に慄然とするイージス中森。

「ウォーッ」

立ち上がるA中森、目の前に迫る八島静香。

―これは痛そうだな

バウンッ。

八島の体当たりに吹っ飛ぶイージス中森。そしてカバー。

ワン、トゥ・・・・

―ダメだ返せない。

スリー。

「29分39秒、タックルからの片エビ固めで八島静香ハリケーン神田組の勝ち」

―これまでかもしれませんね。

タッグベルトを手放したイージス中森、ふらつく足取りで引き揚げた。

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最終戦埼玉ドーム大会。

第1試合は昨日タッグ王座を失ったばかりのイージス中森が登場、新人のRIKKAと対戦。イージス中森にとっては屈辱のマッチメイクである。

RIKKA、この一年前座戦線でそれなりに力をつけてはいるが、イージス中森にスクラップバスターをもらって動きが止まる。それでもフェイスクラッシャー、DDT3連発で懸命に反撃、場内ざわつきだす。

「はっ」

RIKKA,4発目のDDT。フォール。しかしイージス中森はカウント2.8で返して、

「はーっ!」
見事なノーザンライトスープレックス。これでカウント3が入った。試合後のリング上、腹を押さえてうずくまるRIKKA、頭を押さえて倒れこむイージス中森、新人にまで追い込まれる厳しい戦いだった。

勝ったイージス中森、かなりの時間をかけて起き上がり、勝ち名乗り。大声援が飛ぶ。イージス中森、一礼したあとリストバンドを客席に投げ入れた。

ーもう、心は決まりました。

この時点で常連ファンはあれっと思ったらしい。

第2試合は中江里奈がパワーボムでディスガイズマスクを粉砕。

第3試合は藤原和美対S小縞。スカーレット小縞が先輩の意地を見せてタイガードライバー、ジャンピングニーと畳み掛けて3カウント奪取。

セミ前で波乱。昨日タッグ王者になったばかりの八島、H神田組がカミスワ、霧島組に敗れる。カミスワのとびつき腕ひしぎにハリケーン神田がやられてしまった。

セミファイナル、斉藤姉妹が蹴りまくってPDFのナイトメア神威、マーメイド千秋を撃破。

メインイベントはSPZ選手権。今回の挑戦者はGWAのロゼ様。日本人選手で祐希子に勝てそうな人材がいない。そしてマイティ祐希子が横綱プロレスを展開。ムーンサルトプレス2連発で手堅く勝利。勝負タイム19分17秒、王者が初防衛に成功。

2009年1月 7日 (水)

第580回 記念写真

29年目2月

斉藤彰子、八島静香、ケンドーカミスワが負傷欠場。

2月シリーズ「ウルトラソウルシリーズ」開幕。

第4戦神戸大会、メインはSPZタッグ戦。王者マイティ祐希子、イージス中森に挑む今回の挑戦者はPDFからナイトメア神威、マーメイド千秋組。

「なあに、あのヘボロートル(イージス中森のことか)をつぶせばいいのさあ」

しかし、イージス中森も試合巧者、深追いせずにマイティ祐希子にさっとつなぐ。

こうなるとPDFはナイトメア神威が頑張らないといけないのだが、マイティ祐希子相変わらずのハイスパートレスリング。付け入る隙を与えない。

そしてイージス中森がゆっくりと特別出演。合体パイル、合体パワーボムの連係攻撃であっさりM千秋をフォールして終了。勝負タイム26分4秒。王者組が4度目の防衛に成功。

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第7戦金沢大会のメインであばしりタッグ戦。極悪姉妹(セイレーン千春マーメイド千秋)に挑むのは前王者のハムルシアター、マリシアルイス組。しかし久々来日となったハムルの打撃はなお脅威、裏拳でS千春の意識を飛ばす。代わって出てきたマーメイド千秋がなんとかペースを握り返そうとするが痛いハイキックをもらってしまう。

「お前の負けだ」
マリシアも調子に乗って裏拳。苦戦を強いられた王者チームだが、なんとかマーメイド千秋がフェイスクラッシャーで3カウント奪取。28分43秒、初防衛に成功。

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そして最終戦横スペ大会。

休憩明けの第4試合、Jビーチのラストマッチ。

「次の試合に出場するジェニービーチ選手は、この試合が日本で最後のファイトとなります。ファンの皆様より一層の声援をお願いいたします」

元SPZタッグ王者、Jビーチが花道を走ってリングへ。明るいキャラクターで日本人選手とタッグを組んでも違和感がなく、武藤めぐみのパートナーに起用されたりもした。しかし、長年のレスラー生活で身体はボロボロの状態、ついに引退を決意した。

いつも通りビーチボールを持参して客席に投げ入れるパフォーマンス。
対戦相手は28期の中江里奈。パワーに押される一方。ジャンピングニー、ミサイルキックで反撃するが及ばなかった。

「ウオーーー!!」
中江里奈の新技STO.これでブッ倒されたJビーチ、3カウントを喫した。勝負タイム13分52秒。
Jビーチ、深々と一礼してから引き揚げた。

続く第5試合

「次の試合に登場するワイルドローズ2号はこの試合が最後の日本でのファイトとなります、ファンの皆様より一層のご声援をお願いいたします」

ワイルドローズ2号も最終戦。きょうの相手はロゼ様と組んで霧島レイラ、ハリケーン神田と対戦。精一杯のパフォーマンスを繰り広げたが、案の定日本人チームにつかまってしまい分断させられて16分30秒、合体パイルに力尽きた。

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そしてセミファイナル。

「試合に先立ちまして、イージス中森選手へ永年勤続の表彰を行います」

イージス中森の選手としての稼動月数が119ヶ月となり、歴代1位のライラ神威を抜いたので会社から表彰が行われる。

「you gave me a smile」
「you gave me a smile・・・」

イージス中森の入場テーマ曲「you give・・・」がかかるやものすごい歓声が。

♪晴れ渡る空に、丘をすべる風・・・・

SPZ本隊の参謀・軍師として存分に存在感を発揮し、今なおSPZタッグ王者の地位を守っている。派手な技こそないが、レスリングの技術はしっかりしたものを持っており、8年連続SPZクライマックス出場という偉業をなしとげた。

25歳のイージス中森、最近はもう全身ボロボロで、会社サイドも気を使って休ませながら使ったりタッグマッチ限定で起用したりしているが、10年近く現役を守ったのはさすがというほかない。

吉田社長がリングに上がって表彰状を朗読。

表彰状、イージス中森様、あなたは2028年4月のデビュー以来、119ヶ月の長きに渡ってSPZで、熱いファイトを展開されました。これはひとえにお客様を第一とし、かげひなたなく技術の向上に励まれた賜物であります。よってその栄誉と功績を称え、ここに表彰いたします。2038年2月22日、株式会社スーパースターズプロレスリングゼット、代表取締役社長 吉田龍子」

「ありがとうございます」

吉田社長から表彰状と金一封、副賞のブランド腕時計が手渡され、そのあとマスコミ各社から記念パネルが贈呈された。場内に瞬くフラッシュ。

―さして長くない残りのプロレス生活、楽しみながらやります。

セレモニーの後、パートナーのコンバット斉藤(21期)&藤原和美(28期)が入場。

そのあと「レクイエム」が流れ、対戦相手PDFの3人(ナイトメア神威&セイレーン千春&マーメイド千秋)が入場。いきなりマーメイド千秋がマイク。

「なにが永年勤続じゃボケ、祐希子とつるんで軍師ヅラしやがって、オメーみてエなヤツはな、さっさと引退してお茶でも飲んでろコノヤロウ」

いきなり戦闘開始。殺伐とした乱闘。いきなりコンバット斉藤が飛燕脚をしかけたから試合は荒れた荒れた。3分過ぎに登場したイージス中森だったがN神威に裏投げで叩きつけられる。なんとかS千春にエルボーをたたきこんでいい流れでタッチ。

そのあともPDFの仕掛けるケンカファイト、イージス中森はこういう状況下だとちょっと・・というのがある。コンバット斉藤もこのどさくさにまぎれてジェットスマッシュを叩き込む。むしろコンバット斉藤のほうが混戦や乱戦には強い。

しかし試合はキャリアの浅い藤原が捕まってしまう。デスバレーを食らって大ピンチ。でもなんとかコンバット斉藤につなぐ。

「フィニッシュです」
イージス中森がM千秋にストレッチプラム。しかしN神威が即カット。そのあとS千春がパイルドライバー。この流れでN神威が出てきて地獄落とし、掌底の波状攻撃でイージス中森を沈めた。

「ヒャハハハハざまあねえな。イージス中森、永年勤続祝いの記念写真を撮ってやるよ、(携帯電話を取り出し)ハハハハハ」

マーメイド千秋が撮影ボタンを押した。

パシャァッ

負けて起き上がれず、転がってるところを記念写真に撮られてしまうイージス中森。

「・・・甘くないですね。」

メモリアルマッチに自らがフォールされるという屈辱を味わったイージス中森。それでも26分24秒の熱戦となった。

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メインはSPZ戦、王者ジェーンメガライトに対するは前王者マイティ祐希子。今回は祐希子、王座奪還へ向けて気合いが入っており、飛び技を交えて王者を追い込むが、ジェーンも試合巧者、ベリートゥバックでブッコ抜く。しかしマイティ祐希子も奥の手、逆さ押さえ込み!!

ナッ!

ジェーン、あせってばたつかせてなんとか脱出。こういう軟らかい攻めもできるようになったマイティ祐希子。これでジェーンの息が乱れた。そこを突いてタイガースープレックスホールド!これでカウント3が入った。勝負タイム23分54秒、マイティ祐希子が王者に返り咲いた。

2009年1月 6日 (火)

新春特別外伝SS イージス中森の彼氏(下)

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昨日に引き続き外伝「イージス中森の彼氏」をお送りいたします。

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そして一週間後、10日目、川崎大会結びの一番。

「西方、関脇、鳥ノ詩ーーーー」

「東方、横綱、砂漠乃雪ーーー!!」

9連勝同士の対戦。勝った方が優勝へ大きく近づく大一番。

両雄、仕切りながら徐々に闘志を高めてゆく。

「制限時間いっぱい、用意してください」

土俵奉行が指示。そしてぶつかる。

「鳥さん、前に出て!」

中森が花道奥から声援を送る。

はっけよい!

ぶつかる。鳥ノ詩、当たった後すぐに前に出る。全身を躍動させながら前に出る。休まずがばがばと寄る。轟きわたる歓声。あっというまに砂漠乃雪を、土俵際まで追い詰めた。

―いける。いけるぞ!

鳥ノ詩、とどめの右のど輪を繰り出そうとしたが、読んでいた砂漠乃雪、顎を引いてノド輪を顔で受けて体勢が崩れるのを防ぐ。そして右腕はしっかりと上手を引いて、

「うぉあああああーーー」

砂漠乃雪、渾身の右上手投げ。これで逆転。鳥ノ詩、派手に土俵外に叩きつけられた。
「ただいまの決まり手は、上手投げで砂漠乃雪の勝ち」

「はー、勝てなかった・・・・」

打ち出し後、大田区にある鳥ノ詩の自宅マンション。NSAは部屋制度が存在しないので、地方巡業以外は選手は自宅からの通いなのである。

NSAの新鋭力士・鳥ノ詩(本名:鳥海和也)の彼女がSPZの看板レスラー、イージス中森(本名:中森登志子)

「でもお客さんは沸いてましたよ」

「はー、でもなあ、砂漠関は残り5つ多分取りこぼさないだろうし、大関取りがなあ・・・・」

「切り替えて次のチャンス狙いなさいよ。人生いいことばかりじゃないよ、ほら、お肉煮えてきたよ」

大一番敗戦の残念会を二人で行っている。二人で鍋パーティー。イージス中森、勝手知ったる表情で冷蔵庫から缶ビールを取り出し、二つのグラスに注ぐ。

「じゃ、カンパイ・・・」

「いいの、中森さん?・・・クルマでしょ?」

「・・・・泊まって・・・いきますからっ」

「・・・・はい。」

二人は3年前にスポーツ番組の対談で知り合い、意気投合して交際を続けている。お互い真面目で仕事熱心な性格のアスリート同士なので、打ち解けるのも早かった。

二人で黙々とビールを飲みながら牛肉の鍋をつつく。

「鳥さん、私・・・いまの仕事、多分辞めると思う」

 「・・・そうか」

「投げられるたびに腰が痛くなってきた。多分ダメだと思います」

 「ボルタレンは・・・」

「飲んでるけど効かなくなってきた。量を増やすと胃がおかしくなっちゃう」

 「そっか・・・・でも、ベルトまだ持ってるでしょう」

「そこなんだよねえ」

イージス中森のほうが一つ年上で、年の差はないが、イージス中森はプロレスデビューが早くて15歳からレスラー生活を続け、もう10年になるので全身ボロボロの状態。

「まあ、今日明日の話じゃないから。お互い頑張りましょう」

 「そうだね」

夕食後、イージス中森が後片付けをする間、鳥ノ詩が録画しておいたスポーツニュースで自分の取り組みをチェック。

何回も見る。なぜ負けたのか。どこが悪かったのか、負けた試合は10回は見る。イージス中森がやってることを真似して、その効果も実際に出てきている。

 「ここかなぁ、追い詰めたまでは良かったんだけど、のど輪出そうとするところ読まれちゃってたかなぁ」

「そうですね。目があわててないですね、この選手」

イージス中森もコマ送りを見る。

「あの場面、そのまま身体を預けて突っ込んでいったほうが負けない確率はあったんじゃないでしょうか」

 「うん、オレもそう思った、・・・・・勝ちたかったな・・・」

「頑張れー、また次があるんだから」

 「はい。分かりました」

そう言って鳥ノ詩、コマ送りを止めた。

そのあと二人、たわいもない話をしたりして過ごし、日付が変わるころ、どちらともなく視線がぶつかり、

「・・・・・・・」

「鳥さん・・・・・」

唇を合わせた。

(以下数ページ省略)
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翌日、NSAは藤沢での興行。

「東方、関脇、鳥ノ詩!」

ドワアアアアア

「西方、前頭2枚目、源氏丸」

昨日善戦したが横綱に惜敗した鳥ノ詩、優勝争いから後退したので気落ちしていなければいいが・・・・よりによってきょうの対戦相手は巨漢力士、源氏丸である。

―オレは諦めない。いつか、頂点に立つことを・・・

「はっけよい!」

鳥ノ詩、セオリーどおり回りこんで横から攻める。頭をつけてのはず押しで相手の上体を起こす。みごとな速攻、たまらず源氏丸は土俵を割った。

―見ていてくれ、登志子さん。

2009年1月 5日 (月)

新春特別外伝SS イージス中森の彼氏(上)

いつもWAS没頭中にご訪問いただきましてまことにありがとうございます。今日と明日は新春スペシャ外伝と致しまして、完全妄想作話でお送りいたします。こんな事を刷るから本編がちっとも進まないとは思うのですが、イージス中森が思い入れの強い選手なのと、相撲アクションを書いてみたかったので。つい気のおもむくまま書きました。今は後悔していない。

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レッスルエンジェルスサバイバー プレイ日誌 外伝

イージス中森の彼氏。

時に西暦2037年、

日本の国技である相撲は、2つの団体がしのぎを削る状態となっていた。ひとつが300余年の歴史と伝統を自称する相撲協会。もうひとつが2020年に旗揚げした新鋭団体だが、斬新な経営術と演出で人気を集めだした新団体、NSA(株式会社 New SUMO アソシエイション)である。

「西方より!前頭3枚目、翼我道の入場です!」

ドワアアアア

本家の相撲協会が暴行かわいがり問題やら麻薬問題やら外国人力士関連などでトラブル続きの中、NSAはあくまで「エンターテインメント会社です」というスタンスで興行を打ったので、たちまち人気が急上昇。相撲協会と人気を二分する状態になってきた。

新春シリーズ、代々木の体育館で三日目の興行が行われる。移動式の土俵を開発したため、1月シリーズは関東地方をぐるっと巡業する。

NSA,相撲界の横綱大関といった番付制度や、15日制取り組みでの優勝制度は変えずに、プロレスや格闘技の演出エッセンスを取り入れ、それが受けている。入場テーマ曲が流れ、レーザー光線がパパパパ光る中、翼我道(よくがどう)が入場。前頭3枚目だ。外見はアンコ形のお相撲さんそのもの。

「東方より、関脇、鳥ノ詩入場です!」

ドワアアア

入場テーマ曲が流れ、こんどは灰色の締め込みをした比較的小柄ながら、肩幅のがっしりした鳥ノ詩(とりのうた)が入場。

土俵アナウンサー(NSAではこう呼んでいる)のコールを受けた後、にらみ合いと仕切り。これは本家どおり。そして一定時間が経過後、土俵奉行(NSAではこう呼んでいる)の指示で立ち合い。

「ハーッキョイ、残った残った」

鳥ノ詩、鋭い出足ではず押し。一気に翼我道を土俵際に追い詰め、トドメの右ノド輪。これで翼我道は土俵を割った。これで初日から3連勝。

「とりのうたーーーー」

鳥ノ詩、手刀を切って懸賞金を受け取る。そしてまたテーマ曲が流れ、意気揚々と退場。今場所は大関昇進がかかっているので気合いも充実している。

そのあとベテラン大関の石楠花(しゃくなげ)、天稲(てんいな)が登場して館内はますます盛り上がり、そして結びの一番、一人横綱で現在のNSAのエース、砂漠乃雪(さばくのゆき)が登場した。もう30歳のベテランだが、上背と筋力で孤高のエースの座に君臨してきた。

対戦相手は西前頭筆頭、下呂の海。

ワアアアア!

やはり横綱強い。砂漠乃雪、あっさり電車道の寄り切りで下呂の海を下した。そしてマイク。

「おう!今シリーズも優勝はこのワシじゃ!鳥ノ詩なんかまだまだ目じゃねえぜ、ガッハハハハ」

この団体は横綱に限りマイクパフォーマンスありなのである。

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「鳥さん、お疲れ」

関係者入り口前、SPZの看板古参レスラー、イージス中森(SPZ20期)が鳥ノ詩を出迎えた。

「登志子さん・・・・来てたんすか」

「まあ、勉強に。顔パスで入れるから。このあと久しぶりにご飯でも食べに行きますか」

イージス中森の交際相手がこのNSAの新鋭力士、鳥ノ詩(本名:鳥海和也)である。ふだんはお互いプロスポーツ選手同士、忙しくて逢瀬の暇もなかなかないが、今月はイージス中森が負傷欠場中なので時間を作れる。

2時間後、都内の高級寿司屋。イージス中森と鳥ノ詩が寿司をつまんでいた。

「あー、多分10日目くらいに当たるんだけど、砂漠関には勝てないだろうなー、パワーの差がありすぎる」

「鳥さん、岡目八目ですが、そうやって相手を戦う前から弱気にさせるのが向こうの戦略だと思いますよ。死に物狂いで前に出れば相手も驚いてくると思います」

「そうかなぁ・・・・」

鳥ノ詩、素質はあるのだが性格が格闘技向きでなく、小心な性格が災いしてなかなか優勝できないでいた。NSAの基準では関脇で優勝1回することで大関に上がれるのであるのだが・・・

(続きます)

2009年1月 4日 (日)

第579回 29年目1月 新春ロケットシリーズ

29年目1月、

「新春ロケットシリーズ」開幕。

イージス中森の腰痛が悪化し重症となってしまったため欠場。

またコンバット斉藤も右ひざ負傷のため欠場。SPZ王者のジェーンメガライトもスケジュールの都合で来日しないため、新年の新日本ドーム興行は苦しい編成となった。

第2試合で藤原和美対中江里奈の名勝負数え歌。こんどは藤原がジャーマンで15分50秒、先月の雪辱を果たした。

ドーム大会メインは、結局何も出し物がないので、団体のナンバーワン対ナンバーツーをシングルマッチでそのまま当てた。マイティ祐希子対ナイトメア神威のノンタイトル戦。

シャイニングウィザード、ムーンサルトプレスと終盤の大技攻勢でたたみかけたM祐希子が14分33秒、勝利。

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新春ロケットシリーズはそのあと四国各地を巡業。

第2戦の高知大会で28期の中江里奈がケンドーカミスワとシングル対決、中江里奈、力押しで攻め込み、パワーボムでカミスワを叩きつけてあわてさせたものの。最後はカミスワが態勢を立て直して、腕ひしぎで右腕を使えなくしておいてのタックルでトドメ。19分16秒の熱戦だった。

最終戦新潟大会、メインは空位になっていたあばしりタッグ選手権。セイレーン千春、マーメイド千秋対藤原和美、中江里奈。28期生コンビと悪役姉妹が対峙。

―上の人を追い抜くためにも、負けられない!

しかしベテランのマーメイド千秋は曲者。パフォーマンスを交えたラフファイトで藤原中江をいたぶる。

「おらどうした、かかってコンカイガキドモ」

そしてあまり疲れていないS千春がすっと出てきて殴りかかる。このあたりは長いことタッグを組んでいるだけあってさすがだ。でもって、長期戦になってしまうと若手コンビはブが悪い。

「死ねや」

マーメイド千秋のフィッシャーマンバスター。中江のカットはS千春が逆カット!しかし2.9で返す藤原!

どどどどどど

しかし藤原、パートナーの中江にタッチするやいなや場外で伸びてしまった。さっきのフィッシャーマンバスターが相当効いたようだ。

「うりゃああああ」

M千秋、出てきた中江にもフィッシャーマンバスター。

「ぐわああああっ」

場外へ逃げた中江だったが、マーメイド千秋追ってきて、なんと場外でフィッシャーマンバスター!

これで伸びてしまった中江、リングに戻されて合体パイルドライバーでトドメを刺された。勝負タイム36分52秒、極悪姉妹があばしりタッグを奪還した。

「ヒャヒャヒャヒャ、あんなヒヨっこのカスどもに負けるわけがねえだろ!!」

マーメイド千秋、ひさびさにあばしりベルトを巻いて怪気炎。

2009年1月 3日 (土)

第578回 新春マスターズ戦 ラッキー内田VS武藤めぐみ

こんばんわ、筆者のkonnoです。お正月気分が続いているのでマスターズ戦のSSをさらします。

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レッスルエンジェルスサバイバー 
プレイ日誌のようなもの 輝くエッセンシャル
29年目1月 夢のマスターズ戦

12月31日深夜、東京調布のギムレットホール。いつものSPZのリングではなく、ギムレットホールの備品リングが置かれていた。キャンバスの色は黒。今年もSPZを卒業したおねえさん達がゆるい戦いを繰り広げるのか。年越し興行と言う事で23時30分アトラクション開始というスケジュール。

カン、カン、カン、カン、カン・・

「今年もあと30分ほどとなってまいりました。年末といえばSPZのグダグダ興行。今年は夢のマスターズ戦であります」

リング上で井上霧子が挨拶。

「本日は、年末のお忙しい中、SPZマスターズ自主興行、ストリートファイト2037にお越しいただきましてありがとうございます」

(チケットは破格の2,000えん)

「なお、本日出場する選手は、いずれも元プロレスラーでありますので、技のかけ方は忘却しておりますし、私ども実行委員会と致しましても怪我でもされたらうまくありませんので、頭から投げ落とす攻撃は禁止と致しました。」

(場内笑い)

「なお、本日の興行は株式会社スーパースターズプロレスリングゼットは無関係でありまして、このイベントの権限と責任はすべて井上霧子にあります。そこのところもお含み置きください」

(場内失笑)

第1アトラクション 酒飲みトークショー

吉田龍子(40)VS井上霧子(57)。

「吉田社長、来年以降のSPZの展開を占ってみてください」(司会)

「次のエースですか、私は中江に期待してるんですけどね。ちょっと器用さがないんだよね」(吉田)

「2,3年は祐希子ちゃんが大エースで行くんじゃないでしょうか。いまのメンツで脅かしそうなのはいないと思いますから、いい選手をスカウトしてこないとダメですね」(井上)

SPZの影番と社長による高級日本酒を飲みながら、グダグダとSPZの展望について語るという締まらないトークショー。司会はイージス中森選手会長。

話題は誰がマイティ祐希子の快進撃を止めるのかという話になったが、30分ほどで酒が入ってきたので両者ともに呂律が回らなくなってしまい、そのまま両者ドローの最低が下された。純米酒の一升瓶が1本半空いた。

第2アトラクション、渡辺智美 年越しカウントダウンライブ

「ごー、よん、さん、にー、いち!はっぴーにゅーいやーーーっ!」

どうやら今年のマスターズ戦は試合で売らないグダグダ系らしい。5期生6期生といった連中がお遊びとはいえ寒い中リングに上がるのがしんどくなってきたらしい。

売れない歌手渡辺智美(SPZ5期)、年越しカウントダウンのあと「黒部峡谷」「夜行急行能登号」「悲しみの日本海」の3曲を熱唱。

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「うわ、前半試合やらないで終っちゃったよ」

「今年のマスターズ戦はゆる系かよ」

「いや、SPZは何かやらかす。これは絶対嵐の前の静けさだ」

ここでイベント開始から1時間少々が経過したので休憩。ファンはやたら静かなマスターズ戦にいぶかしげな表情。

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休憩後の第3試合、場内に流れたテーマ曲は「oblivion」

一気に場内が沸きあがる。

「ミツキ!ミツキ!ミツキ!ミツキ!」

この会場のオーナーにしてSPZ10期生、ギムレット美月(35)が登場。SPZ撤退後はインディー団体に随時参戦しプロレスの発展に尽くす一方で、自分の理想とするプロレス会場をつくりあげた。使用料収入もぼちぼち入ってくるようになったのだが、電光掲示板やレーザー光線装置を導入したいのでまだリングに上がり続けている。

対戦相手はSPZOGルチャドーラ??のエル・オガワ・メンドーサ(年齢不詳)。ギムレット美月はSPZ時代のコスチュームを引っ張り出してきた。メンドーサはトレーニングウェア姿に銀色の覆面。

「iTe cogi!」

メンドーサの中の人がけっこう齢なのだが、5分ほど基本的なグラウンドレスリングをやってのけた。殴る蹴る投げるという立ち技を一切使わなくても試合が成立するのだから恐ろしい。そのあと、ごろんごろんとゆったりとしたスモールパッケージの応酬。お互い2回ずつ首固めを仕掛けたあと、

「これでっ」
ギムレット美月、うまく絡み付いて逆さ押さえ込み。メンドーサ足をばたつかせるも返せず試合は終わった。勝負タイム7分3秒。

「今日はどうも寒い中お越しいただいてありがとうございます。新しい年、皆さんのご多幸をお祈りいたします」

ギムレットオフィス社長のG美月が新年の挨拶。もうあまりリングに立っていないのだが、きょうの相手はもうエキシビション同然なのできっちりブックどおりに仕上げた。

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セミファイナルはどたばた6人タッグマッチ。スターライト相羽(SPZ9期)、菊池理宇(SPZ11期)、ロイヤル北条(SPZ13期)対マッキー上戸(SPZ16期)、氷室紫月(SPZ16期)、ノエル白石(SPZ19期)。

百花繚乱、スリーパーの数珠繋ぎが出るなど、正月らしい肩の力を抜いたファイトが展開されたが、最後は2年前と同じく要領の悪いスターライト相羽が捕まってしまい、後輩3人に太鼓の乱れ打ちで袋叩きにされたあげく、

「これも運命」

氷室のやさしく倒れこむエルボードロップを食らって終了。勝負タイム13分30秒。

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午前1時30分、ついにメインイベントのスペシャルマッチが始まる。
メインイベント、

お年玉争奪シングルマッチ・スーパーZ選手権初代王者決定戦:60分1本勝負、

ラッキー内田(SPZ16期)VS武藤めぐみ(SPZ16期)

立会人の京スポ新聞若林記者が認定証まで読み上げる。

「えー、この試合はSPZマスターズ戦実行委員会が認定するスーパーZ初代王者決定試合であることを認定する 2038年1月1日 京スポ新聞 若林太郎」

スーパーZ選手権ですか。いつの間にそんなものが設立されたのか。ご丁寧にも京スポ新聞が制作したと見られるチャンピオンベルトまで披露される。ヨーロッパ製のブランド物のベルトを改造して金属板やらガラス玉をはめ込んだだけのチャンピオンベルト。冗談のお遊びにここまで凝ってしまうところが京スポ新聞らしい。

「この試合の勝者が初代スーパーZ選手権者として認定され、賞金30万円が贈られます!」

「ふーん。バッカみたい」

このテの催しに初めて出た武藤めぐみ、クールな表情だが、勝利者の賞金30万円に釣られたのは明らかだ。

「30万あれば全自動麻雀卓が中古で買えるわね、頑張って臨時収入といきますか。」

ラッキー内田、関節ごきりで賞金を掻っ攫おうという魂胆なのか。

本部席では今野役員と若林記者がそろって缶コーヒーを飲んでいた。

「いいんですか若林さん、30万円も経費使って・・・」

「今野さん、京スポ新聞をなめたらいかんよ。賞金の支払いは多分ないと思う。サプライズゲストを用意してある。」

そしてトレーニングウェア姿のラッキー内田と武藤めぐみがコールされる。両者とも、元SPZ王者で絶大な人気を誇った。

「武藤さんには悪いけど、こっちは連日コーチやレフェリングで身体を動かしてる。今なら負けるわけがないわ」

その言葉通りグラウンドレスリングで主導権を握るラッキー内田。すきあらば関節を狙ってきて武藤めぐみに悲鳴をあげさせる。マスターズ戦らしからぬわりとまともな展開に場内拍手。10分ごろ、ラッキー内田が、息が上がってきたのか決めにかかる。

「そろそろ決めどき・・・ねっ」

ラッキーキャプチャーを狙ったが、武藤めぐみこの動きを読んでいて、STFを防いだままたくみにロープへ逃げて、反撃に転じる。

「せえいっ」

切れのあるノーザンライトスープレックス。かろうじて2で返したラッキー内田だが、衝撃で起き上がることが出来ない。やはり腰に来てしまったか!

「うぐぐぐ・・・・」

「この技を受けても、立っていられる?」

武藤めぐみ、勝ちを確信したかのように笑みを浮かべてコーナー最上段へ上がる。ムーンサルトを狙っているのか。3年ぶりに飛ぶのか、飛べるのか?ファンの興奮はピークに達した。

だがーー

がしゃん!

しかし次の瞬間悲鳴に。突然リングサイドからパイプイスが飛んだ。タイミングよく武藤めぐみの頭にジャストヒット。

「わああっ!」

べしゃっ

ぶざまにコーナー最上段から転落する武藤めぐみ、誰だイスを投げてムーンサルトを妨害したヤツは。

「ヒャハハハハハハハ」
なんとここで悪の権化・ライラ神威(SPZ17期)が乱入。

「ここで会ったが百年目、武藤めぐみ、てめえをSATSUGAIしてやるぜええええ」

バキョ、バキョ、バキョ

倒れ伏す武藤めぐみに黒バットを連打する。

「や、やめなさい、いまは試合中よ」

ラッキー内田が止めに入ったが、

「知るかそんなの!」

ライラ神威、ラッキー内田を蹴りつけて怯ませるや黒バットをフルスイング。

「ぶべらッ」

あわれラッキー内田はこの一撃でKO。マスターズ戦のお遊びとはいえ選手権試合をぶち壊したライラ神威、なんてことするんだ!

「いかんもうダメだ試合どころじゃない!!」

カンカンカンカン!
若林記者がゴングを乱打するがライラ神威は気にも留めず、

「さあーいまから武藤めぐみを公開処刑じゃあああ、ガソリンかけてSATSUGAIしてやんよーーー」

ライラ神威、怪しげな液体が入ったペットボトルを取り出し、倒れている武藤めぐみにぶちまけようとするが。

「やめてください、ここは私の会場です!」

珍しく怒りをあらわにしたこの会場のオーナー、ギムレット美月が乱入。自分が作った会場が燃やされるのはたまったものではない。

「出たなあヘボロートルーーー」

しかしギムレット美月、タックルで倒してライラ神威の持っていたペットボトルを奪い取る。これで最悪の事態を回避した。しかも異常事態を察知してリングの回りには選手関係者がぞろぞろと。すわ乱闘か。

「ケッ、急用を思い出しちまったぜ。今日はこの辺で勘弁してやるからな。」

そういってライラ神威、リングを降りると黒バットを振り回しながら退場。なんてやつだ・・・

「くされSPZファンども、石川町の居酒屋トムラウシ。食べに来ないやつは死刑だアアアアア」

捨てゼリフを吐いてからギムレットホールを後にした。(結局店の宣伝がしたかっただけか・・・)

嵐が去ったリング上、バット攻撃で動けなくなったラッキー内田と武藤めぐみが転がっていた・・・

「ただいまの試合は12分7秒、乱入によるノーコンテストといたします。スーパーZ初代王者はコミッショナー預かりとして、いつの日か再タイトル戦をたぶん、行うんじゃないかな。」

けっきょく無効試合が宣された。しかしダメージの深い二人は起き上がれず、担架で運ばれた。こうして悪魔のマスターズ戦は終わった。

2009年1月 2日 (金)

第577回 外伝SS ライラ神威の「それから」

筆者より、お正月特番ということで、書き下ろしSSをさらします。

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石川町の居酒屋トムラウシ潜入記。

横浜から電車で7分、根岸線石川町駅を出て海方向に歩いて数分、ライラ神威プロデュース居酒屋「トムラウシ」がある。

「ついたぞ・・・ここだ」

SPZファン、中年男性の二人組がこわごわ暖簾をくぐる。入り口には「トムラウシ」と大書きされた看板がががが。SPZで恐怖の大王として君臨したあのライラ神威、どんなものを食わせるのだろうか。入ったら出て来れないかもしれないが・・・

「ご来店ありがとうございます!」

厨房・ホールのスタッフがいっせいに挨拶する。どうやらまともな居酒屋のようだ。壁には手書きのメニューが所狭しと貼られている。

(海鮮炉辺焼き)焼きホタテ 600円 焼きジャガイモ 350円 焼きホッケ 700円 焼きコマイ 650円 焼きサンマ 300円 焼きカレイ 700円 焼きイカ 500円

黒を基調とした落ち着いたインテリアの店内。2人はカウンター席に座った。カウンター内のキッチンでジャガイモを焼いているのが、どことなく見覚えのある若い女性、名札には「島宮」とある。素顔をさらしているのでひと目では気づきにくいが、間違いなくあのライラ神威だ。

(おつまみ)ポテトサラダ 350円 ニシン漬け 350円 ホタテフライ 650円 ホッケの煮付け 700円 ジンギスカン950円 モズク酢250円 しめ鯖 550円 ハムサラダ450円

平日だからか、店内はまばら。それほど繁盛しているというわけではない。食の激戦区横浜だし、料理もそんなのうまいという評判ではない。

(お食事もの)豚丼500円 スープカレー550円 必殺カレー700円 ペペロンチーノ500円 アラビアータ550円 カルボナーラ520円

とりあえずワインを注文する。もちろん十勝産の「トカップ」である。

「あの・・・ライラ神威さんですか?」

客のひとりがおそるおそる問う。

 「まあ、昔は・・そうだったね。今は北海道居酒屋の店員ですよ。」

そう言って島宮さんはジャガイモを炭火で焼き始める。

「年末のマスターズ戦には、出るんですか?」

 「さあ、どうだろうね、カードには入らないと思うけど店の宣伝がてら顔を出すよ。見たとおりお客さんは入ってないからさ」

やはり横浜という場所柄、競合が多く売上は伸び悩んでいるらしい。

お飲み物)生ビール350円 エーデルピルス450円 十勝ワイン(赤・白)300円 北の大空(日本酒・一合)420円 知床岬(日本酒・一合)780円

ふたりで焼きホッケをつつく。チェーン居酒屋のものよりうまい。北海道の味だ。

(ソフトドリンク)コーヒー210円 紅茶210円 トムラウシ水 200円 キリンレモン200円 玉露200円

「焼き物は美味しいですね」

 「まあな。北海道から素材のいいものをヒコーキで運んでるから」

「じゃあ次は、しめ鯖を」

「あ、悪いね。しめ鯖きょうは売り切れ。板前見習いの松本がカゼで休んじゃって。あたしは作れないから。はは。」

現役時代ライラ神威は花道での悪行三昧のたびに心無いファンからしめ鯖を投げつけられたのは有名な話で、本にもそれをネタにしてメニューに加えている。

「じゃあホッケの煮付け」

「あいよ」

そう言って島宮さんは小鍋にホッケのブツ切りと玉ねぎをほうり込んで、だし汁らしき物を入れてから火にかけ始めた。

「東京の人はホッケは焼いて食うもんだけどね。北海道じゃあ安いからさ、煮たりね、刺身にしても食うんだ」

デザート)ヨーグルトパフェ500円 ショコラパルフェ500円 ショコラケーキ400円 北海道バニラアイス300円 抹茶アイス400円

二人はホッケの煮付けをサカナにビールを飲んだ。

「島宮さん、PDF(SPZの悪役集団)はどうですか?」

「まあよくやってんじゃないかな、千秋選手は。ただいまのSPZはマイティ祐希子のワンマンショーだからね。コンバット斉藤ちゃんももうそろそろ潮時だしね。若手でイキのいいのが出てくればいいけどね」

「じゃあ〆になんか食べます、お勧めは?」

 「うーんそうだね、あばしりで練習させられまくったペペロンチーノかな・・・」

島宮さん、引退後しばらくは「喫茶あばしり」でフードビジネスのノウハウを叩き込まれた。経営術よりも「飲食店はうまいもの出してナンボよ」という鈴波店長の教えでスパゲティ類を特訓させられたらしい。

出てきたペペロンチーノ、イタリアンレストランの味には到底及ばなかったが、ライラ神威の心がこもった味だった。

「久々にSPZファンが来たからな、お茶サービスするよ。惚れ玉露。」
ペペロンチーノを食べ終わった二人にサービスでお茶が出てくる。

「おいしいですね。これけっこういい玉露だ。」

「まあ、アイツが送ってきやがるんだ。静岡川根産だってさ。敵にお茶贈られちゃったよ」

壁に飾られた色紙には仇敵、武藤めぐみのサインがががが。

「祝開店、ライラ神威様。武藤めぐみ」

2009年1月 1日 (木)

第576回 29年目12月 さいたま3大シングルマッチ

29年目12月 スノーエンジェルシリーズ

最終戦はさいたまドーム大会。

第3試合で藤原和美対中江里奈、28期生同士の一騎打ち。中江が前半はパワーで押し込んだが、藤原もジャーマンで形勢逆転。しかし中江もDDTで応戦。試合は盛り上がった。

「HAU!」

藤原、得意のバックドロップ、カウント2.8で返す中江。

中江も同じ技でお返し!カウント2.5で返す藤原、

しかし、中江がここで切り札のラリアット。

「が・・・っ」
吹っ飛んだ藤原、これで3カウントが入った。勝負タイム12分56秒。その試合が終わると休憩。

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休憩明けの後半、第4試合。M千秋、S千春の極悪姉妹がマリシアルイス、ブルックウォン組に快勝。

第5試合では霧島レイラがスカーレット小縞と組んで、ハリケーン神田・斉藤彰子組と対戦。霧島レイラが豪快なスプラッシュマウンテンで斉藤彰子を退けた。

セミ前から3大シングルマッチ。

ナイトメア神威対八島静香。トップグループまであと一歩の女番長八島、ここは勝っておきたいところだが、N神威の狂乱ファイトに苦戦。

「URAAAAAAAA」

力のこもったパワーボム、そして地獄落としとたたみかけられてしまう。だが八島も懸命に挽回、力押しの消耗戦となった。
「オラアアアアア」
最後は両者フラフラの状態。しかし勝利への執念が勝ったか、

「なめんな!」

八島がタックルでなぎ倒してナイトメア神威から3カウント奪取。

セミファイナルは、コンバット斉藤対ケンドー・カミスワ。

かつてはシングルマッチ29連勝の団体記録を持つC斉藤も最近は急速に落ち目。だがカミスワのようなコツコツ攻めてくるタイプには自信があるのか、蹴りをばきばき当ててゆくが、ここで落とし穴がががが。

15分過ぎ、カミスワのいきなり飛びつき腕ひしぎ。これは狙っていたか。

関節技への対応がヘタクソな選手は来ると分かっていても逃げられない。運の悪いことにロープは遠く、たちまちコンバット斉藤の右腕が変な方向へ・・・

「・・・・ギブアップ」

コンバット斉藤、ギブアップ負けを喫した。

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メインイベントはSPZ選手権、王者マイティ祐希子に対するはジェーンメガライト。日本人選手で祐希子を止められそうなのがいないから、とりあえず外人でも当てとこうかというマッチメイク。ベリートゥバックが決まればどうなるかわからない。

スパーン

ジェーン・メガライトのラリアットがまともにはいってしまった。

祐希子の表情が曇る

「これで終わりだ!」

ジェーンメガライト、ベリートゥバック、これはカウント2で返したM祐希子だったが立て続けにフェイスクラッシャーをもらって終了。勝負タイム20分24秒、SPZベルトが海外流出してしまった・・・・

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