第631回 31年目12月 夢のマスターズ戦(下)
メインイベント 会長ランブル2039
SPZの過去の選手会長5名によるバトルロイヤル。
まずはSPZ1期生にして初代選手会長、小川ひかるの代理人、覆面レスラー、「エル・オガワ・メンドーサ」がメキシコ音楽に乗ってリングイン。2年ぶりの登場に場内ドワアアア
続いて「RED FRACTION」がかかり、SPZ5期生にして現SPZ社長、吉田龍子がトレーニングウェア姿でリングイン。メンドーサとがっちり握手。
そして「oblivion」がかかり、SPZ10期生、ギムレット美月が(現ギムレットホールオーナー)リングイン。もう37歳だが知的なイメージは変わっていない。コスチュームは大胆にも現役時代のまんま。
「どもです。」
さらに「ミオクルカラ」が流れ、SPZ15期生にして関西系スター、成瀬唯(第4代選手会長)がリングイン。例によって手には巨大ハリセンが握られている。
「賞金はもらうでーーー」
最後は「you give・・・」が流れ、SPZ20期にして第5代選手会長、現SPZコーチのイージス中森27歳がジャージ姿で入場。
「すごいメンツですね。私も負けないようにしないと」
5人によるバトルロイヤル。優勝者には賞金30万円が贈られる。5人がコールされるだけでものすごい拍手。裁くレフェリーは現選手会長のハリケーン神田。
カンッ
ゴングが鳴った、だが誰も動かない。いや動けない。5人ともこの日のための練習はあまりしてこなかった。昔の感覚などとうに忘却している。そのまま奇妙なにらみ合いが1分続いたので場内失笑。
「中森、お前行けよ」
イージス中森をけしかける吉田龍子。
「社長命令ですかッ?」
顔をしかめるイージス中森だったが、とりあえず成瀬唯につかみかかる。
「なんでうちに来るねん・・・」
あとの3人はコーナーで待機。しばらくリング中央での腕の取り合いやバックの取りあいが続いたが、やはり成瀬唯が息が上がってしまった。
「ゼェゼェ・・・」
「チャンスッ」
イージス中森がすばやくバックに組み付いてバックドロップ。高さもスピードもないが、それなりにキレイなフォーム。この人何をやらせてもそつなく決める人だった。
「ぐわあっ」
苦しがる成瀬、しかしここで先輩3人が動いた。バックドロップで投げたイージス中森が起き上がる前にメンドーサ、吉田、G美月の3名がのしかかってフォール。3人に乗っかられては返せなかった。
「イージス中森退場」
意外にも大本命、もっとも動ける人が真っ先に退場。
「ううっ・・・あたー」
バックドロップの後遺症か、成瀬唯、起き上がれずそのまま場外にエスケープ。
「じゃあ仕方ないね。そろそろ行きますか」
吉田龍子、ようやく動き出して腕をぐるぐる回す。そしてギムレット美月におそいかかる。しばらくリング中央でもみ合いが続いて、差し手争いを制した吉田龍子がG美月をロープに振り、自らもロープに走った。
「クラえっ!ラリアット!!」
バシーン。
それなりに体重の乗った一撃にダウンするG美月。吉田カバー。
わん、トゥ・・ドドドドド
しかしG美月もフォールをカウント3ギリギリで返す。場内大盛り上がり。
「こっちも体力ねえんだ。次で決める」
吉田龍子、フラフラ状態のG美月を引きずり起こすと自らロープに走った。もう一度ラリアットを狙ったか、
「これで終わりだ、あれ?・・うわあっ!!」
バターン
ロープ際、リング下から吉田龍子の足をつかんでスっ転ばさせた。因縁の抗争相手、渡辺智美の仕業だ。
「うあああああ、イテぇ・・・・」
顔面からマットに転げ落ちてのた打ち回る吉田龍子。そこをG美月が押さえ込んで3カウントが入った。
「吉田龍子退場・・・」
今野役員がぼそりと告げる。
「・・くそっ、渡辺、どうゆうつもりだてめえええ!!」
「へへーん、だれがあんたなんかに優勝賞金を渡すもんですか」
花道を逃走する渡辺、
「待てコノヤロウ!!」
吉田龍子、追いかける。そのまま控室方面に消える両者、場内は笑いころげた。
これで残るは成瀬、メンドーサ、G美月の3名。
「小川さん、悪く思わないでください」
こんどはメンドーサにターゲットをロックオンしたG美月、青コーナーへつかつかと歩み寄り、メンドーサに組み付いた。
「ううっ・・・」
力の差は歴然、うまくメンドーサの手首をつかんだG美月が対角線に振る。
「ああっ」
対角線コーナーに叩きつけられるメンドーサ、その場に崩れ落ちる。もう中の人が40代後半のはずなので耐久性がない。
「顔面ウォッシュ!!」
ギムレット美月、自らも対角線に走って、コーナーで崩れるメンドーサへ「顔面ウォッシュ」を見舞った。リングシューズで相手の顔面を擦る屈辱的な技。SPZではないムーブだが、フリー時代にインディーを転戦していた頃に覚えたムーブ。
「・・・・・・・」
これでちょっとムッとしたメンドーサ、立ち上がってG美月に顔面パンチ。身体を張ったファイトに場内盛り上がった。
「えいっ」
そのまま対角線に振りかえす。コーナーにぶつかって崩れるG美月。
「iTe cogi!」(日本語訳:もらった!)
メンドーサ、自らも対角線を勢い良くダッシュ、しかし、
「うわおっ・・・・」
なれないファイトをした上でのダッシュでふくらはぎを痛めてしまったのか、もんどりうって転倒。つったのか、肉離れか。ともかく起き上がれない。危険と判断したハリケーン神田レフェリーがメンドーサのTKO負けを宣した。
「エル・オガワ・メンドーサ退場」
「あー、これは重い重―いじん帯損傷かもしれませんね、すぐにお手当てしないと、大変です」
診察のためリングに上がったリングドクター羽山海、なにをするかはもう書くまでもないだろう。
ブスーッ
「ああっ」
あわれメンドーサ、注射を打たれた上に担架で運ばれた。場内爆笑。
さてアクシデント?はあったが試合再開。残るはギムレット美月と成瀬唯の二人。しかし成瀬はバックドロップのダメージが深く動きがいまひとつ。あっさりギムレット美月に捕らえられコブラツイストの餌食に。
「ぐわあああ」
それでも耐えた成瀬唯。持ち前の根性はさすがだ。
「ならばこれでっ」
フォール勝ち狙いに切り替えたギムレット美月、ショートレンジのラリアットを叩き込むがカウント2。ならばと組みとめてダブルアームスープレックスを狙った。
「ん・・・・・」
気合いと力のこもるG美月、しかし投げられない。37歳、力は相当落ちているし成瀬も下から踏ん張っている。1分以上根競べが続き場内やんやの歓声。
「んん・・・・っ、ああっ?」
なおもダブルアームをねらうG美月、こらえた成瀬の足が離れたそのとき、G美月の腰に電気が走った。無理をするとこういうことになる。
「ああっ・・・」
本能的にヤバイと感じマットに崩れ落ちるG美月、そのまま上から覆いかぶさった成瀬、3カウントが入った。
カンカンカン・・・
「11分21秒、体固めで成瀬唯の勝ち」
「やったでーーーーー!!」
はっきりいって棚ボタながら、優勝賞金30万円を手に入れた成瀬唯、ガッツポーズ。こうして31年目の百花繚乱マスターズ戦は終った。
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年末のプロレス大賞、最優秀選手はマイティ祐希子、シングルのベストバウト(対ジェーン戦)、タッグのベストバウト(藤原と組んでの対ジェーン、N神威戦)も総なめ。最優秀新人はグリズリー山本。
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