第802回 王者のような挑戦者と、挑戦者のような王者
38年目9月 ウルトラソウルシリーズ、最終戦さいたまドーム大会。
休憩後―
「Eternal Heart、Eternal Heart、Eternal Heart、Eternal Heart、」
「Eternal wish」が流れ、SPZ屈指のアイドルレスラー藤島瞳がリングに向かう。レスラーとしては大成しなかったが、存在感では得がたいものがあった。
対戦相手は新人のジャンヌ永原。もうこのへんしか藤島が勝てそうなのがいないから、最後くらい花を持たせてあげようという中森社長の温情マッチメイク。
しかしジャンヌ永原も先輩に花を持たせるつもりは毛頭ない。ブレンバスター、スリーパーで追い込む。しかし、
「アイドルだって、強いんだからっ」
藤島瞳、逆転のシューティングスタープレス。決まるとドハデだ。これはなんとか右足をロープに伸ばしたジャンヌ永原だったが立て続けに藤島、走りこんでのショルダータックル。
ワン、トゥ、スリー。
これで3カウント。勝負タイム14分8秒、藤島瞳が最後の花道を飾った。このあと所属全選手がリングに上がり、藤島瞳を胴上げ。
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セミファイナルはタッグマッチ、売り出し中のジャスティスえちごが葛城早苗とタッグを組んで最強外人ダークスターカオス&マレンと対戦。やはり今のえちごの力ではダークスターカオスにまったく歯が立たない。
ならばと葛城が突破口を開く。カオスを打撃で怯ませてマレンへ交代したところを一気に攻める。
「これで終わり」
出た出たついに、SPZキック。マレンはこれでノックアウト。当然カウント3が入った。カオスのカットはえちごに阻まれ間に合わなかった。勝負タイム13分35秒。
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そしてメインイベントSPZ戦
「げひゃひゃひひゃひゃ、ぶっつぶしてやるぜ」
「・・・やるだけです」
王者のような挑戦者(グリズリー山本)と、挑戦者のような王者。(フローラ小川)
「解説の吉田さん、フローラ小川に勝機はあるんでしょうか」
「んー、無理だと思いますよ」
解説者もはなっから挑戦者が勝つと断言。8月のSクラ公式戦での惨敗っぷりは記憶に新しい。
フローラ小川、やはり試合が始まるや完全に力負け。チョップ一発で吹っ飛ばされてしまう。そして頭突きに崩れ落ちる。
「ふぁふぁふぁふぁふぁ、少しは攻めさせてやるからかかってこいや」
フローラ小川、懸命に組み付いてスリーパーや脇固めで攻めるが、グリズリー山本も防御はしっかりしているので極まるには至らない。
「げはげはへははは」
掌底大降り。さいたまドームに詰めかけたファンの中にはあまりの残虐ショーぶりに目をそむける方もいた。
「うわ、もう見てランないよ・・・」
しかしフローラ小川、25分過ぎに、あきらめずなんとか得意のSTFにとらえたが、
「う、ぬん!!」
グリズリー山本、野獣のような気合いとともに力ずくで振りほどいてしまった。何たる規格外のパワー。
あーあーという場内のため息。これでフローラ小川に攻め手がなくなった。
「ドゥハハハハ」
グリズリー山本、笑いながら掌底一撃。フローラ小川この一撃でノックアウト。覆いかぶさったグリズリー山本、3カウントが入った。勝負タイム30分44秒。
「ウァハハハハハ 弱すぎんだよッ」
グリズリー山本がSPZ王者に返り咲いた。
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SPZ世界選手権(60分1本勝負)
グリズリー山本(30分44秒、裏拳からの片エビ固め)フローラ小川
第106代王者が2度目の防衛に失敗、G山本が107代王者となる
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「うううっ・・・・」
セコンドのミネルヴァ石川に背負われて引き揚げてきたフローラ小川、負けると実に痛々しい。
「完敗です・・・また一から練習します」
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メインイベント終了後、藤島瞳の引退セレモニー。
「アイドルレスラーとして伝説を作る事ができました!、みんな、アリガトー!」
藤島瞳
SPZ31期
2039年4月15日、札幌どさんこドーム大会での対マーメイド千秋戦でデビュー。2046年9月22日、さいたまドーム大会での対 ジャンヌ永原戦で引退。稼動月数90ヶ月、出場試合数(概算)632試合。
タイトル歴
第67代・70代あばしりタッグ王者(パートナーは早瀬葵)
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