第994回 イザベラ・スミスVSフローラ小川
45年目2月
SPZ最古参選手フローラ小川27歳が結婚記者会見。ファンへの報告は昨年末のマスターズ戦で行ったのだが、腰の治療が終わり、2月シリーズへの参戦が発表されたので、区切りの意味で本社会議室で記者会見が行われた。記者さんたちの質問にひとりひとり丁寧に答えるフローラ小川。
「どういう経緯で出会ったのですか」
「・・・・・5年前に、『よこ川』で出会いました。飲んでいるときに横川さんに紹介されました。」
「プロポーズはどちらからだったのですか」
「や、そんな・・・・自然に、お付き合いさせていただいて、何年かたって、どちらからともなく、ちゃんとしよう・・・って話になっただけです」
「子供は何人ぐらい欲しいと思っていますか?」
「こればっかりは・・・・わかんないですね。授かりものですから。でも頑張りますよ」(記者爆笑)
お相手はIT会社に勤める普通の会社員。なかなか引退させてもらえないフローラ小川、既成事実を積み重ねる方法に出たらしい。
そして2月14日、横浜ベイサイドホテルのバンケットルームで結婚披露宴まで行ってしまった。これにはマスコミ各社も集結。ウエディングドレス姿にカメラのフラッシュが瞬く。京スポ新聞は誓いの口づけシーンを一面に掲載した。
「これからしばらくは、人妻レスラーとして頑張ります」
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そして2月シリーズ「スノーエンジェルシリーズ」開幕。
フローラ小川は各地で「結婚おめでとう」という声援が飛ぶようになり、たびたびメインの6人タッグで起用されたが、対戦相手チームに狙われて負け続けた。
フローラ小川、第6戦金沢大会では第1試合で新人のドルフィン下窪とシングルで当たったが、ぐだぐだっぷりをいかんなく発揮して下窪に攻め込まれる。時折エルボーで反撃するものの単発で、最後はボディスラムで投げられて敗北という情けない結末。
「ううッ・・・イタタタ」
やはりシングルマッチでは使い物にならなくなっている。勝負タイム13分10秒。それでも温かい拍手が飛ぶのだからこの業界何が幸いするか分からない。
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最終戦、横スペ大会。本拠地決戦なので大盛り上がり。
第1試合は真壁なつき対ダイナマイトリナ。先月の武道館決戦のセミと同一カード。真壁もそろそろ中堅どころに割って入っていい選手だが、この日はダイナマイトリナのラリアット3連発をもらってしまうなど苦境に陥る。それでも、
「やっ」
エルボーで反撃するあたり負けん気の強さ。ダイナマイトリナも4発めのラリアットで吹き飛ばしタイガードライバー。これで頭を打った真壁、動きが止まった。
「CHANCE」
そこへえぐいバックドロップ。さすが試合巧者。それでも真壁諦めず延髄キックで反撃、しかし2発目のバックドロップで目の前が真っ黒になった真壁、なんとか起き上がったもののミサイルキックで吹っ飛ばされて3カウントを喫した。勝負タイム19分54秒。オープニングマッチから大いに盛り上がった。
第2試合で早くもSPZ元タッグ王者のジャンヌ永原、ミシェール桜井が登場。対戦相手は異色のNARATA,ドルフィン下窪組。ジャンヌ永原も年季が入っていて痛い場所がたくさんあるのだが、それを感じさせずNARATAの攻めを受けて、下窪を子供扱い。最後はうまく分断に成功してミシェール桜井がひとり格落ちのドルフィン下窪をダイビングプレスで屠った。
第3試合は怖いおねえさんトリオ3人が出陣。八島静香、グリズリー山本、オーガ朝比奈の3人が並ぶだけで風格みたいなものがある。
対戦相手はデニースハン、マリーネルソン、カトリーヌチャンの微妙外人3人とあっては怖いおねえさん3人が主導権を握る。
「なめんな!」
八島さんも元気一杯。重たいスクラップバスターでデニースを追い込み、グリズリー山本が重爆ドロップキックで追い打ち。
「げへげへげへ、氏ね、ダークレフトー」
この人ノリノリで左の裏拳をマリー・ネルソンに叩き込む。マリーさん、鼻に入ってしまったらしく流血。この一撃でマリー・ネルソンは戦闘不能に陥ってしまった。
「ぶっつぶうす」
孤立したカトリーヌチャンには豪腕ラリアット。絶対王者の頃は使っていなかった技だが、威力は充分。もちろんこれで試合は終わった。勝負タイム10分45秒。
その試合が終わると休憩。
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休憩後第4試合、リングになぜかマリー・ネルソンが上がり、英語でなにやらマイクアピール。
「Next Match・・・・・・********」
1割くらいのファンにどよめきが走る。そして阿部リングアナが補足。
「和訳します。次の試合に出るイザベラ・スミスはこの試合が最後のファイトとなります。声援を送ってください」
そして場内に軽快なダンスミュージックが流れ常連外人のイザベラ・スミスが登場。シングルプレーヤーとしてはいまいちだったが、ダークスターカオスのタッグパートナーを務めるなどタッグ戦ではくせ者ぶりを発揮した名レスラーだった。
「ハーイ」
イザベラスミス、いつもの陽気さでマイクアピール。
英語なので阿部リングアナが和訳してファンに話す。
「日本のファンの皆様、私は腰を痛め、パフォーマンスを続けることが難しくなってきており、疲れたので引退します。きょうはさくっと相手を倒して寿司食べに行きます」
場内爆笑。そのあと流れたのは「ディヴェルティメントK138」
最終試合の相手を務めるフローラ小川が入場。結婚しても相変わらずの小川人気。
フローラ小川がSPZTシャツを脱ぐ。あちこちのテーピングが痛々しい。
握手したあと試合開始。
「HOU,YA!」
イザベラスミス、いきなりドロップキック、そしてミサイルキック。派手にスっころぶフローラ小川を捉えて逆片エビ固め、
「うあああっ・・・・・」
グイグイグイと絞り上げるイザベラスミス。相手の弱点である腰を痛めつけるえげつない攻めである。懸命にロープへ逃げたがもうフローラ小川の戦意はなくなっていた。
イザベラスミス、そしてミサイルキック。このフォールは2だったが、グロッキー状態のフローラ小川を引きずり起こして頭をばこッと蹴りつけた。
「ううっ」
痛みに悶え苦しむフローラ小川。イザベラ、すかさず片エビで押さえ込んでフォール。これで3カウントが入った。勝負タイム6分8秒。最終戦を快勝。
「HAHAHAHA」
イザベラスミス、リング上でダンスを一曲踊る大サービスぶりだった。
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