第1028.3回 予兆
横浜ベイサイドホテル2階のダイニングバー「白馬」
サンダー龍子がひとりでコーヒーを飲み、パスタを食っていた。
コーヒー1杯900円するハイソなお店だが、サンダー龍子(本名:浅野勝子)はSPZ選手御用達の「よこ川」や「あばしり」には目もくれず、ここを行きつけにしている。
「私はトップアスリートだぞ。一般人の行く店で食事するわけにはいかんだろ」
彼女なりの矜持があるのか、外でごはんを食べるときは多少高くてもホテル内のレストランなど、「サービス料を取られるところ」で食事をしている。
「白石さんを潰すにはどうやったらいいのか・・・」
たいていの選手はサンダー龍子が大技を連続して叩き込むと、「ま、今回は取られてもいいか」と諦めてくれて、カウント3を取らせてくれる。しかし白石は根負けしない。本当に疲れていても何食わぬ顔して起き上がって反撃する。絶対防衛圏か何かを自分の中で持っているようだ。
サンダー龍子、コーヒーを飲みながら思案していると、30代くらいと見られる少し陽に焼けたひとりの精悍そうな男が現れた
「サンダー龍子・・・・さんですね?、私、こういうものでして」
男はスーツの内ポケットからヴィトンの名刺入れを取り出すと名刺を差し出した。
「あ、どうも」
サンダー龍子もバッグから名刺を取り出して渡す。
「株式会社デンドログラム 取締役専務執行役員 鈴木伸之」
受け取った名刺にはこう記されていた
「どういったお仕事ですか、お差し支えない範囲で・・・」
「なあに、普通のディスカウントショップですよ、ええ。」
鈴木氏は笑顔で語りかけた。
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