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(本日は4月1日ですので、筆者の妄想を爆裂させました)
レッスルエンジェルスサバイバー プレイ日記 並行世界編
「社長は?」
井上霧子秘書が社長を探す。横浜のお嬢様プロレス団体の4月シリーズ最終戦、福岡大会もまずまずの入りで終えることが出来た。客出しも終わり、リングやアリーナまわりは片付けの真っ最中。
しかしこの団体の社長は関係者用通路の奥で携帯で誰かと親しげに話していた。
「あ、小川さんと・・・だと思うんですけど、携帯で話されてます」
「ふふっ、まったく社長は」
この団体の社長は1期生の小川ひかるに旗揚げの頃から好意を抱いており、団体が弱小団体からメジャー級団体へ進化するにつれ、二人の距離も縮まり、2年前に小川ひかるが腰の負傷を理由に引退してからは、もう雇い主と部下という関係でなくなったのをいい事に交際を本格化させ、近々の入籍は既定路線であると噂されている。
「うん、ああ、じゃあ明日、新宿BTに12時で、うん、うん、ほんじゃあね」
「社長、デートの約束ですか」
「・・・・・ドキ。聞いてたのか。バレちゃあしょうがないな。ということでオレ明日あさって休むから。書類は100万未満だったら代理決裁して」
「・・・わかりました。ゆっくり休んでください」
このプロレス団体の社長は4月シリーズの全興行に帯同し、取引先関係者へのあいさつ回りやら直前の宣伝活動、グッズ販売の手伝いやたまに起こる大事件や中事件や小事件の対策に奔走し、気の休まるときがなかった。サーキット全日程終了後の2連休くらいなら許容範囲だろう。敏腕秘書の井上霧子はそう考えていた。
その翌日、
前夜を福岡市内のビジネスホテルに泊まった社長は、朝の飛行機で羽田へ飛んで、それからリムジンバスで新宿駅へ向かった。
バスターミナルにはすでに小川ひかるがいた。ラフなGジャンとスカート、やや大きめのボストンを抱えている。現役を離れて2年近くが経っているので、髪型を少し変えれば関係者以外はまず気付かない。
「よっ。」
「お疲れ様です。シリーズどうでした?」
「おかげ様で全会場満員以上。」
「良かった、けっこう儲かったんじゃないですか」
「まあね。」
「で、社長、きょうはどこへ」
この人は昔のクセが抜けず、今でも社長と呼ぶ。
「まあまあ、バス出るよ」
二人が乗ったのは富士五湖方面行きの中央高速バス。西新宿のビル街を抜けて、ほどなく首都高に入る。
「こないだ二人だけの式挙げて披露宴やっただろう、その続き。」
シリーズ前のデートで二人は靖国神社におまいりして水道橋の洋食店でロブスターを食べた。
「二人だけの、新婚旅行」
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バスは高井戸から中央道を走り、三鷹の料金所を抜けてからはけっこうな速度で快走し、八王子の料金所を過ぎてから山間に入り、小仏トンネルに入った。
「ってことは、行き先は・・・」
「そ、秘密特訓場」
「・・・・・・・この人は・・・・はー、そんなことだろうと思いました」
数年前、社長が「どうせ利益出しても税金でもってかれちゃうんだから」などと言って、富士五湖の奥まったところに小さな中古別荘を買った。購入費用は会社の設備投資で落としたため、表向きは「SPZ秘密特訓場」ということで会社の固定資産になっている。出来の悪い選手の特訓用に使おうとしたが、アクセスの悪さと設備の悪さがあり積極的に使おうという選手がおらず、マスコミ記者さんを招いての公開特訓もそんな場所では出来ないので、購入以来一度も特訓目的での使用実績のない不良資産となっていた。このことは社長と井上霧子と、決算の手伝いをしたことのある小川ひかるしか知らない。
大月のジャンクションを左に折れて河口湖方面へ車は走る。
「曇ってて・・・フジサン、見えないですね」
「どうする?ハイランド降りて、童心に返って夕方まで遊んでく?」
「・・・いえ・・・・少しでも・・・・二人でいたいですから」
入籍間近といっても、片方は忙しいメジャー女子プロレス団体の名物社長、もう一方は引退したとはいえ資格取得歴を生かして監査法人に早々と再就職した人なので、なかなか二人で会う機会も少ない。今日と明日は社長の休みにひかるが合わせた。
「ひかるさんの仕事は、どうなん?」
「うふふ、まあ、適当にやってます。不適合の指摘の伝え方が難しいですね」
「まあねえ、強く言うとクライアントの心証悪くしちゃうし」
そうしているうちにバスは河口湖インターを降りて一般道に入った。山中湖方面の国道を少し走って、山中湖バスターミナルに到着。
「ふう」
「・・・いい空気ですね」
「次のバスまで30分ある。食料仕入れときますか」
バスターミナル近くの食料品店で明日朝までの食料とビールを買い、ふたりは道志方面行きのバスを待った。すでに日は西に傾いてきた。
今度のバスはいかにも地方バスという感じである。それに10分ほど揺られて、道志村との境にあるトンネルの近くでバスを降りた。
「じゃ、歩こうか」
「・・はい。」
「あの。腕を・・・誰もいませんから」
「・・そうだな」
二人は腕を組みながら別荘へ向かった。
林道を小一時間歩き、すっかり夕陽がさすころ、ようやくふたりは「秘密特訓場」にたどり着いた。
二階建ての小さな別荘。
「とりあえず掃除だけしとくか、ひかるさん、下に掃除機あるから」
「はい」
社長は窓を開けて換気、小川ひかるは掃除機がけ。
社長は数ヶ月に一度は、一人でここを訪れて空気の入れ替えと掃除をしに来ている。建物の資産価値を落とさないための配慮などと言っているが、会社携帯が通じにくいエリアと言う立地が気に入っている
ぐいーん・・・・
二階の部屋も狭いのですぐに掃除は終わった。
「じゃあご飯にしますか」
さっき食料品店で買ったレトルトご飯と鮭フレークで鮭茶漬けを二人はさらさらとかきこんだ。この後起こることを予測してか、口数も少ない。
やがて日が西の山に没した。
「・・・寒くなりそうだな」
社長はまきストーブに適当に薪を投げ込み、付け木代わりの週刊誌にライターで火をつけた。
・・・パチ・・・パチ・・・・
小川ひかるが間合いをつめてきた。
視線がぶつかる。
「ねえ、・・・社長・・・」
「うん。」
ソファの上で座りながら抱き合った。そして、唇を合せた。
「ン・・・んっ・・・・んっ・・・・」
最初はついばむようなキス、その後舌と舌を絡めあう。
社長は口付けしたまま服の上からひかるの胸に手を当てた。
「んっ」
感触を確かめるように手を当てる。決して豊かではないが、ひかるのやわらかさが詰まっている。
「や・・・・続きは・・・・布団で・・・っ」
そのあと、いったん行為を中断して布団を敷いた二人、すぐさま抱き合って再開。
ひかるの身体はやさしく布団の上に倒される。
「ひかる・・・さん・・・」
社長はひかるの緑色のブラウスに手をかけた。ボタンを上からひとつずつ丁寧に外してゆくと、雪白の肌が覗く。
(中略)
「・・・・・・大好き」
「ありがとう」
互いに唇を合わせた。
二人きりの富士山麓の別荘、激しく睦みあった二人は唇を離し、荒い息をつく。
「・・・素敵だったよ。毎回のことだけどひかるさんの上でなら死んでもいいと思う」
「・・・・・もう、バカ・・・・」
荒い息づかいが収まると、心地よい疲労感と、眠気が押し寄せてきた。
「このまま、ひかるさんと眠りたい」
「うん・・・・」
社長はひかるの胸に顔をうずめ、甘い匂いに包まれながら、深い眠りに入っていった。
そして、
夜明け前の寒さで社長は目を覚ました。
「寒ッ」
「あ、おはようございます」
ひかるも既に目が覚めていて、社長の隣にたたずんでいた。少し前に目覚めたのか、昨夜の水色のブラとショーツをつけている。
ようやく部屋を薪ストーブの暖気が包んだので、その後二人は八時頃までうたた寝をしてすごし、そのあと部屋の中を片付けて、昼前に別荘をあとにした。
河口湖畔のステーキハウスで遅い昼食。さすがに1泊2日の旅行で何してたんですかという選手社員からのツッコミが予想されるのでアリバイ作り。
「ひかるさん・・・考えたんだけど・・・・」
「はい」
「一緒に・・・暮らさないか」
ひかるは現役時代に溜め込んだ金で川崎に2DKのマンションを買ってそこに住んでいる。一方で社長は会社に泊まりこむことが多かったが、基本的には新子安のワンルームマンション住まいをしていたので、しばらくは小川ひかるの家で同居生活を送る
「はい!」
ひかるは喜んで応えた。
「これで、お互い、もう逃げられない・・・・ね」
「そ、そうですね」
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その一週間後の昼、小川ひかるのマンションに引越しのダンボールがたくさん届けられた。
「捨てられるものは捨てたんだけど、本とか多くてねえ」
そのあと社長が身の回りの品をつめたトランクとともに姿を現した。
「この部屋の半分、使ってください」
仕事部屋の半分に社長はパソコンデスクを置き、本やCDの詰まった段ボール箱をとりあえず置いた。ひととおりの荷解きが終わる頃、あたりはすっかり暗くなった。
「じゃ、じゃあ・・・ご飯にしますか」
「・・・はい」
小川ひかるも忙しい人なので、料理はあまり得意な方ではない。今日は二人暮らし初日なのでごはんを炊き味噌汁を作ったが、おかずは通販で買った冷凍春巻きだった。
「週の半分は外食です。あまり料理得意じゃあないんで」
「私もそんな感じだよ」
質素な夕食が終わり、
「じゃあ、洗い物しますから、先にお風呂入ってください」
「うん」
風呂に漬かった後、社長はパソコンでネットニュースを見ていた。小川ひかるがチェック柄のパジャマ姿で現れた。
こんな姿を見るのも初めてだ。
「ひかるさん、明日も仕事?」
「はい、朝・・・早いんで」
「じゃ、じゃあ・・・寝ますか」
家具通販で勝っておいた新しい布団を社長は敷く。隣には小川ひかるの布団が、
「何か・・・恥ずかしいですね」
「うん・・・・・」
そのまま寝るわけには行かなかった。小川ひかるの家に来て初めての夜を過ごす。
「そっちに・・・行くよ」
「・・・はい」
「これが・・・ひかるさんの・・・布団・・・・」
19歳の頃退寮してから使い続けているライトグリーンの布団。社長はライトを枕灯だけ残して消すと、小川ひかるを軽く抱きしめた。
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(昨年10月頃に文章の練習がてら書いたものです。元原稿は中略部分を含めると38ページあるのですが、中略部分をさらすとこのブログごと消されかねないので、中略部分は削りました。いつの日か何らかの形で晒したいとは思っています)
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