第1345.7回 間奏曲2
パパとママは、仕事大好き人間。
ママはホテルで調理チーフとかでめちゃめちゃ忙しい。
パパはシステム会社の課長とかでめちゃめちゃ忙しい。
だから自分は聞き分けのいい子を演じる。
朝7時には家を出て、帰りは夜遅く。
土日も仕事が入って家を空けることが多い。
西明里(にしあかり)11歳、東京都渋谷区笹塚在住。
ママがたまの休みの日も、ママは仕事で疲れていて、顔色が良くないのでソファーでゴロゴロしている。そんなときママは言ってくれる。
「ひかるおばちゃんのとこ、行く?」
といってママは1万円札をくれた。
もう何回か行っているので、行き方はわかっている。都会っ子だから。
京王線で新宿に出て、新宿で「ウルトラあずさ」に乗って、本を一冊読んでいればそのうちに松本に着く。
松本でバスに乗り換えて、ちょっといなかにはいったところに、おばあちゃんの実家がある。
「あらー、よく来てくれたねー」
おばあちゃんはもう70代だけど、まだ元気で身の回りのことはできる。
「ちょっと病院行ってくるから、お留守番お願いね」
「はい」
おばあちゃんの家は広い。
笹塚のマンションの3倍はある。開かずの間がいくつもあって、探検みたいで面白い。
一番北側の部屋には、段ボールがいっぱい重なっていた。
おばあちゃんからも「危ないからそこで遊んじゃダメですよ」といわれてたけど、ウンで追う神経はある方だから。
段ボールの中は「監査記録」とか「決算短信」とか書いてあるわからない書類ばかりで、重いのが多い。
ひとつくらい財宝とか金塊とか札束とか入ってないかなーって思ってさがしていたら、ひとつだけ大きい割に軽い段ボールがあった。
「わっ・・・・と」
開けてみたら、靴がいっぱい入っていた。
「なに、この靴・・・・」
底がやけに薄いブーツのような靴が6足入っていた。
気になったのは、やけにかっこいい色使い。6足とも銀色の靴で、ピンクや赤、ブルーでぶち取りがされている。
そのときおばあちゃんが戻ってきた。
「おばあちゃん、この靴、なに?」
「・・・・!!」
おばあちゃんは一瞬厳しい表情になってたけど
「昔、おじいちゃんから貰ったのよ、お仕事で使ってただけ・・・・」
******************
私もそれ以上は聞かないでおいた。
おばあちゃんも昔、プロレスをやっていたんだ。
帰りの「ウルトラあずさ」の中、ちょっとコウフンしている自分がいた。
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