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2012年8月24日 (金)

第1,366回 私って、ほんとバカ・・・・

ハルカの人生終了プランは新潟県の崖の前まで行っただけで終わった。

会社には4日ほど実家に帰省すると伝えてあったので、ハルカは来た列車に乗って、二度乗り換えて長野県のマツモトという街に出て、巡業で使ったことのある市内のビジネスホテルに泊まった。

(私、何やってるんだろう・・・・)

暗い部屋で一人物思う。

(働きたくない・・・・)

このまま、また一日一日を灰色で塗りつぶされ、灰色にうずもれなければならないのか。

生きるのは痛い、でも死ぬのはもっと痛いだろう。

電車に飛び込んだらその衝撃は外人さんのラリアットどころじゃないだろうし、包丁でカップクジケツを図っても痛くてたまらないだろう。クビツリもものすごく苦しいだろうし、凍死も凄く痛くて苦しいんだろうな、薬物系はよくわからないけどギギギとかいってすごく苦しいんだろうな、飛び降りがいいと思ったけどうまくいかなかった。安楽死マシーンなんてものはネット通販でも売ってないし・・・

(人生って、ゴウモンなんだ・・・・)

けっきょく、ハルカはマツモトに2日滞在して、そのあと高速バスで横浜に戻った。

**************************

12月29日、新春シリーズ前の全体練習が再開。

ハルカは後輩のフォルトゥナ紫月とスパーリングをこなした。腕関節を取られて

「痛い痛い痛い痛い!」

「あっ、すみません・・・」

どちらが先輩かわかったものではない。この選手がいざリングに上がり本番の試合では蹴りまくって相手をなぎ倒すとはとても思えないのだが。

全体練習の後、休憩。

京スポ新聞の記者さんが来ていた。

「ハルカ選手、1月シリーズは山場ですね。ブレード上原選手の挑戦を受けますし、VIPレースも大詰めですから、このまま1位で逃げ切れば1000万円入ってきますよ」

(この会社は・・・・・・)

そうマスコミ記者さんに言われても「え、ああ、頑張ります」といった生返事しかできなかった。

(わたしは、闘犬じゃない、マシーンでもない。おカネは必要なものだけど・・・・)

元旦だけ練習は休み。2日は軽く調整した後、3日の朝、いよいよ巡業に出る。

1月2日の夜、スーツケースにもう使うことはないと思っていたリングコスチューム、リングシューズ、その他1週間分の着替えその他を詰める。

(私って、ほんとバカ・・・・・。)

腰の痛みは慢性化しつつあるが、痛み止めを飲めば何とかなるレベル。この会社のベテラン選手やOGは、ほとんどが腰痛をわすらった経験があり、痛み止めが利かなくなったり、痛み止めを飲みすぎて胃をやられて引退に追い込まれた選手とか、我慢してファイトしつづけたが医者からライセンス返納勧告書を出された選手・・・・とかといった数々の伝説がある。

1月3日の朝、ハルカはバスに乗り込んだ。

(あーあ・・・・)

流されているのが自分でもわかる。明日は岡山で上原さんとタイトルマッチ。

(一日一日、その日その日でしのいでいくしかないのかな・・・・そうしたらいつか、光が見えるかもしれない・・・)

バスは東名高速を走っていた。

************************

その翌日20時ころ、

岡山武闘館の赤コーナー側控室、

衝立で仕切られた着替えスペースで、私服を脱ぎ、試合用の下着の上にリングコスチュームを着る。そのあとリングシューズを履き、紐を結ぶ。

モニターではセミファイナルの試合が流れている。15分が経過したところ、

(もうすぐ出番だ)

ガウンに袖を通そうとしたところ、

「遥さん、ベルトベルト!」

マネージャーさんから古びた黄金のベルトを手渡される。今日はタイトルマッチなので、チャンピオンベルトを巻いて入場しなければならない。

カチャッ

マネージャーさんにベルトを巻いてもらう。この団体で一番強いという称号だが、ハルカはそんなものにあまり興味はなかった。

両手首にテープを巻いてから、会社が勝手に作った不死鳥をあしらった銀色のガウンを羽織り、入場を待つ。

ほどなくセミファイナルの試合が終わった。

「アーーーーーーーーーーーーーッ!」

ハルカは控室出口で絶叫する。リングへ向かう前の恒例行事だ。若手選手も慣れたものなので平気で聞き流す。

控室を出て、赤コーナー側入場通路奥で待機。

挑戦者のブレード上原がリングインしたあと、自分のテーマ曲「Rumbling Hearts」が流れる。

神妙な表情で花道を歩き、リングイン。

「赤コーナー、SPZ世界王者、神奈川県大和市出身、ハルーカー!!」

一礼する。

(とりあえず、きょう、やるしかないんだ。やるしかないんだ。)

ハルカは湧き上がってくる弱気を押し殺しながら対戦相手を見据えた。

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