第1,372回 2連勝!驚異の新人もうひとり
横浜のお嬢様プロレス団体、SPZは旗揚げ63年を迎え、2名の新人、北条咲と神田幸子を採用して、簡単な受け身や基本動作だけ覚えさせてから4月シリーズに投入した。
通常ならば、デビューシリーズは緊張とかスタミナ切れとかで、練習で覚えたことの半分も出せず第1試合でむごくやられてしまうのが常なのだが、北条咲は違った。京都大会で三井寺を倒してデビュー戦白星を飾ると、大阪ではミスティックベータ、広島ではアプリコットつばさをそれぞれタイガードライバーで倒してまさかの3連勝スタートを飾った。
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北条咲、デビュー3連勝。
「自分の持ち味をリングで出そうと考えただけです」
これはすごい新人が入ってきた。
(動きはともかく、力が凄い。こりゃあ2年もしないうちに上がってくるなあ)
控室モニタで観ていたブレード上原が瞠目。
そこへ試合を終えた北条咲が戻ってきた
「よっ、お疲れさん。見てたけどいい動きだったよ」
「あ、ありがとうございます」
「明日からの4つは試合ないけど、最終戦のドームにそなえてみんなの試合を見てろ。人の試合を見るのも大事だ」
「はい、わかりました」
(呼吸がそんなに乱れてない・・・・体力もありそうだ)
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第4戦九州ドーム大会。この日は第1試合で神田幸子のデビュー戦。新人のシリーズフル参戦は厳しいと判断した会社側が、巡業前半を北条、後半を神田の育成マッチに充てるカードを組んだのである。
対戦相手は1期先輩のフェアリー三井寺。
―やるしか、ない・・・
激しいチョップでたじろがせた神田、しかし対戦相手の三井寺も新人にこれ以上負けるわけにはと考えたのか、スリーパー、アキレス腱固めで応戦。
―く、息が上がってきた、どうしたら・・・・
しかし神田幸子、あきらめずに組みついて上から押さえつけて、思い切り顔面に蹴りを入れた
「ひぎいっ!」
これで昏倒したフェアリー三井寺、押さえ込む神田、3カウントが入った。
ええええええええええええええええええええええええ!!
どよめく観衆、もう一人の新人、神田幸子もデビュー戦を白星で飾った。
セコンドとしてリング下で観ていた(今日試合のない)北条咲、瞠目した。
―あれを自分が食らったら、立ち上がれるだろうか?
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5戦目の名古屋しゃちほこドーム大会。第1試合で組まれたのはフェアリー三井寺VS神田幸子の再戦。さすがに三井寺は厳しい表情をしていた。
―新人と思ったら、やられる。目の前にいるのは私を倒そうとする一人の格闘家。同じ相手に連敗はしたくない・・・・
三井寺、アキレス腱固めで絞り上げたが、ギブアップしなかった神田、懸命にロープへのがれて、そのあと組みつくと見せかけて、強烈なエルボーを食らって三井寺の意識が遠のく。
ーっ・・・・
「これでっ」
ボディスラムで投げつけられる。押さえ込まれる。懸命に足をばたつかせて返そうとした三井寺だったが、山本レフェリーがやや高速気味に3カウントを叩いた。勝負タイム7分4秒。
この会社始まって以来の「新人の2連勝」が2人続いた。
呆然とするフェアリー三井寺。ホッとした表情で勝ち名乗りを受ける神田幸子。
「うーん・・・・・空手の経験を活かしてますね。一発が重いから動けなくなっちゃうんでしょうねえ、自分のいいところを出すということができていますね」
辛口の解説で知られる杉浦美月もほめるしかなかった。
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第6戦どさんこドーム大会。第1試合で神田幸子VSミスティックベータ。
―新人に負け続けたら、日本に呼んでもらえなくなる!
「生活上の理由」で奮起したミスティックベータ、とにかくひたすら飛び回って神田を幻惑。そして組みついてアームホイップ。
―だてに世界各国でやってるわけじゃあないノヨ!!
神田、ペースをつかめず、4回目のホイップで場外に落とされ、場外でブレーンバスターを食らってしまう
―ぐぐぐぐぐ
これで非力となった神田。すかさずリングに戻ったベータがアームホイップで仕留めた。
―これが負けか・・・北条さんは勝てたのに・・・
神田幸子、初黒星、勝負タイム10分16秒。
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「今年の新人は2人ともいいのが入ってきたなあ」
村上千春が花道奥でぼそりと。
神田幸子、7戦目の仙台でもミスティックベータにソバットをもらって敗れ、リベンジはならなかった。
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