第1,373回 割り返し
そして最終戦は新日本ドーム大会。
「旗揚げ63周年記念興行!」
の大看板が掲げられた。超満員の盛況。
いつもなら淡々と第1試合が始まるのだが、
「本日はスーパースターズ・プロレスリング・ゼットの旗揚げ63周年記念興行にお越しいただきまして、誠にありがとうございます。えー、まずお配りのプログラムに掲載されているカードですが、一部変更がございます。」
鈴木リングアナがそういってセブン山本にマイクを渡す。
観客に入口で無料配布されているプログラムの2ページ目に【本日のカード】が印刷されている。万単位の観客を呼ぶ大会場の場合、カードは事前に印刷されている。
その上半分はこう印刷されていた。
△30分1本勝負
1.アプリコットつばさ VS 神田 幸子
2.フェアリー三井寺 VS 北条 咲
3.ペガサス藤原 VS ユーリ・セモポヌメ
「プログラムではこのように印刷されておりますが、カードを一部変更させていただきます」
セブン山本レフェリーがアナウンス。
「変更後のカードを申し上げます。第2試合シングルマッチ30分1本勝負、ペガサス藤原VS北条咲、第3試合シングルマッチ30分1本勝負、フェアリー三井寺VSユーリ・セモポヌメ、以上であります。直前になってのカード変更となったこと、深くお詫び申し上げます。大変申し訳ございませんが、あしからずご了承のほどお願いいたします」
負傷とかアクシデントもないのに、直前になって、事前に発表されていたカードが変更されるというのも異例だ。
「えー、なんでー?」「理由はー?」リングサイドの観客が茶々を入れる。
セブン山本レフェリーが反応する。
「お察しください」
ドワハハハハハ
「割り返しかよ」「新人なのに北条やるなあ」客席からはつぶやきが漏れた。
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そして第1試合は、神田幸子(新人)VSアプリコットつばさ。
神田幸子の東都デビュー戦。場内に「メイキング・ラヴ」(神田幸子テーマ曲)が流れて、SPZTシャツを羽織った神田が淡々と入場。
―SPZで1年もまれた意地を見せる。
先輩の意地を見せるべく、神田へ向かっていったアプリコットだが、押さえつけられてステップキック。
「ぎゃあああ」
これで火花が散ったアプリコット。タックルでなぎ倒されてフォール、しかしぎりぎりで返した。
―負けられない、私は・・・
しかし起き上がれない。先ほどのキックがきいてるのか
あれ、何かが落ちて・・・
神田幸子、この流れに乗ってギロチンドロップを決めて勝利。
うぉぉぉぉぉぉぉぉ!!
新日本ドーム熱狂。新人の神田幸子がこれで3勝2敗でシリーズを終えた。
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そして第2試合、「チゴイネルワイゼン」が場内に流れ、これまた東都デビュー戦の北条咲登場。
対戦相手は当初発表ではフェアリー三井寺となっていたが、
「常識的に考えて新人をこれ以上勝ち進ませるわけにはいかんやろ。彼女のためにもよくない」(ブレード上原)
異例のことだが、直前になって急きょカードが変更され、入社3年目のペガサス藤原が第2試合で北条の相手を務めることになった。
「お手柔らかにね」
試合前リング中央で握手。
―!!
オーラが違う。今までの相手とは。
北条咲、戦う前から気圧されていた。
「いくぞっ」
ペガサス藤原、いきなりアームホイップで転がし、
「終わり」
引きずり起こして組みつくや、
そしていきなりタイガースープレックス!
ええええええ新人相手にやりすぎだろそれは。場内どよめき。
ーっつ!!
北条懸命に顎を引いて衝撃を逃がす。目の前が真っ黒に、
「ツー、」
次の瞬間レフェリーの声は聞こえたので、懸命にもがいて肩を上げる。
「へえ、わけわかんなくなっても返すんだ。すごいね」
ちょっと感心したペガサス藤原、チョップでなぎ倒すと
「どうだっ」
起き上がってくるところを強烈なタックルで弾き飛ばす。
崩れ落ちる北条、がっちり押さえ込むP藤原、これで3カウントが入った。
―うううっ…何が何だか・・・・
それでも何とか起き上がり、ふらつく足で引き揚げた北条へ大きな拍手が送られた。勝負タイム4分16秒。
「いや、結果から見たら北条が潰された試合なんですけど、ペガサス藤原選手が力押しの消耗戦を避けましたね。ペガサス藤原選手も上を目指すためには新人に負けるわけには絶対に行きませんからね。受け身の練習がまだ不十分な相手の弱点を最初に突きましたね。でもまあカード変更まで会社にさせたなんてのは、私の知る限り初めてですよ。そういう意味ですごい新人ですね、今後が楽しみです」(かいせつの杉浦美月)
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第3試合はフェアリー三井寺VSセモポヌメ。これも急きょ割り返されたカードだ。
「ウォラアアアアア」
(ペガサスフジワラとやるはずだったのに、こんなザコの相手をしろだと?私はSPZクライマックスのウィナーだぞわかってるのか)
案の定、セモポヌメが暴れまわり、4分56秒、ニーリフトで三井寺を悶絶させて終了。
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