第1,388回 セイウン草薙の失策
そしてメインはSPZ戦、
「キャプチュード」が流れる中、リングコスチュームの上からデザイナーズTシャツを羽織っただけのフォルトゥナ紫月、花道を淡々と歩いてリングイン。Tシャツを脱いで王者の入場を待つ。
「暉映の戦場」が流れ、こんどは白装束に身を包んだセイウン草薙が錫杖の音を響かせながらゆっくり花道を歩いてリングイン。腰には金色のSPZベルトが巻かれている。
無敵の王者セイウン草薙に初めて挑むのは、同期のフォルトゥナ紫月。ようやくタイトル戦線で闘うところまで並んできた。
お決まりのセレモニーの後、8時31分、運命のゴング。
―あの人は滅法強い。まともにいったらまず勝てない。隙を見て絞め落とすしかない。
実際その通りで、この下半期シリーズでS草薙が喫した4敗は、いずれもハルカに蹴られて意識を飛ばされて不覚を取ったパターンである。
「はっ」
のっけからスリーパー攻めでセイウンを責めるフォルトゥナ。しかしこれは草薙があえて受けたようで、5分過ぎにいきなりS草薙が草薙流兜落としを仕掛けた
ー頭の中が真っ黒に・・・!!!
「ぐううう」
頭から落ちていきなり朦朧状態の紫月。
悠然と見下ろすS草薙。
「やれるか、大丈夫か?」
セブン山本レフェリーが焦って叫ぶ。
「だ、大丈夫です・・・っ」
何とか立ち上がったフォルトゥナ、なおも腕関節を取って反撃を見せるが動きがおかしい。そこへS草薙バックドロップ。
またF紫月の頭が危険な角度でマットへ。同期で至近でお互いのファイトを見てきたので、これくらいなら受けられるだろうという判断はS草薙、働いている。
ーこれ以上は・・・もう・・・・
しかしフォルトゥナ、気力を振り搾って起き上がり、ここで組みついてストレッチプラム!!
運の悪いことにリング中央、場内ドワアアアア
「ぐぐぐぐ・・・・ああああっ!!」
これは何とか強引に腰投げで振りほどいたS草薙、
しかしフォルトゥナ、休まず、
「これでっ」
ここでコブラツイスト。絞り上げる。絞り上げる。単純な技なのだがフォルトゥナ、本気で絞り上げている。
S草薙、再度腰投げで返そうとしたときに電気が腰に、びりっと走った。
「ひぎいっ!!」
S草薙、激しい痛み、苦悶の表情がオーロラビジョンに大写し、
場内ハイテンションマックス。
なおも絞り上げるフォルトゥナ。
―参ったしてください。あなたには次のチャンスがあるはずです。
「う・・・あああああ・・・・」
王者の意地で懸命にこらえたS草薙だったが、腰に異常が起こったことを理解して、山本レフェリーにギブアップの意思表示。
山本レフェリー、まさかの結末にたじろいだが、すぐ本部席のほうを向いて試合終了のサインを送った。
カンカンカンカン
どえええええええええええええ!!!!
「27分23秒、コブラツイストでフォルトゥナ紫月の勝ち」
誰もが予想していなかったフォルトゥナ紫月逆転勝利。コブラツイストが解かれる。
顔を覆って呆然とするS草薙。7回目の防衛に失敗。
ー意識を持って行かれたわけではないが、腰が釘でも撃ち込まれたように痛い。
大事を取ってセコンドの若手2人、北条と神田の肩につかまりながら引き揚げた。
「決して油断したわけではありませんが・・・この結果は悔しいです。身体を治して取り返しに行きます。」(S草薙)
ドワアアアアア
まだざわめきが収まらないさいたまドーム。フォルトゥナもまさか勝てるとは思っていなかったらしく、青天の霹靂といった表情でベルトを巻いてもらうフォルトゥナ。183代目SPZ王者の誕生だ。
「うーん・・・・」
本部席でかいせつの杉浦美月がうなる。
「フォルトゥナ選手ああ見えてけっこう馬力がありますから、ストレッチプラムとコブラツイストの流れがかなり効いたんでしょうね。まあ、強引に返そうとしたセイウン草薙選手がちょっとまずかったですね。あの手の技は耐えながら相手の息継ぎを見て振りほどくかロープに逃げるのがいいんですけど。まあ試合終了のゴングまでは何が起こるかわからないのがプロレスです。そいった意味では若い選手の参考になったと思いますよ」
かみ合わない勝利者インタビュー(ええ・・・とかはい・・・とかの受け答えばかりだった)のあと、お決まりの記念撮影があって、そのあとフォルトゥナが引き揚げた。
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年末恒例のプロレス大賞、MVPはセイウン草薙が2年続けて受賞。最後の最後でベルトを落としてしまったものの、年間通じた活躍が評価された。最優秀新人は北条咲が選ばれた。しかしベストバウトはまたも新女の外人激突カードが選ばれてしまった。
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