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2012年11月19日 (月)

第1,422.5回 これってデートみたいだったんじゃないの?

時に西暦2074年

SPZ60期のハルカは、いつものように戸塚の居酒屋「すずなみ」でにら玉を肴にビールを飲んでいた。

ー最近は酒に逃げるしかなくなった。アスリートにとっては良くないんだけど・・・

ガラ

その時、居酒屋の常連客、加藤貴明氏(31)が入ってきた。

「いらっしゃい」鈴波総店長が挨拶する。

「日本酒冷やとイカ塩辛」

そう注文してから、加藤貴明はハルカの方に向き直り

「試合観たよ。こないだの新日本ドーム。特別リングサイド1万円高いねえ」

 「えっ・・・・あ、ありがとうございます」

「なんちゅうか、すごい世界だね。本気で殴り合ったり投げたりしているのがようわかる」

 「・・・・・・・・・」

「最後の前の試合で大月さん出てたよね、最後、必殺技を仕掛けるときにアルティマシュート!って叫んでたのが印象的だった」

 「あ、あれは会社からそうやれって言われてるだけで」

「でもね、最初の試合から見て、大月さんの抱えてる苦しみや悲しみがちょっとだけわかったような気がする。」

 「・・・・・・・・」

「辞めようとは思わなかったの。いままで。自分も駆け出しのSEで徹夜続きの時はやめようと思ったよ何度も」

ハルカ、ビールをあおってから

 「・・・・・・辞めたいのはやまやま。でも・・・・」

ハルカ、少し考えて

 「辞めるのは、いつでもできる。でもその時を伸ばすほど、この先いい人生が送れるような気がする」

「・・・・そうだね」

 「上原さんも辞めた。自分もあと2-3年がいっぱいいっぱいだと思う。腰とか長い時間座ってると痛いし」

「・・・・・」

 「あー、来月エスクラだよー。出たくない、ズル休みしたいー、やーだー」

「大月さん・・・・・今度の日曜、気分転換に遊びに行かない?まだオフでしょ」

 「え・・・・・・・」

「大月さんに見せたい景色があって」

普段のハルカならその申し出を峻拒していたところだが、酔った勢いもあって「うん、わかった」などと言ってしまった。

「じゃあ、待ち合わせは新宿の1番ホームの前、9時で」

***********************

ハルカ、家に帰った時はどうしてその約束を受けてしまったんだと後悔したが、生来の生真面目さか。ジーンズにジャケットのラフな服装で、だてメガネで変装して、新宿駅に向かった。

乗ったのは松本行の「ウルトラあずさ」だった。新幹線なので松本までは一時間かからない。そのあとオオイト線の快速に30分ほど揺られて、シナノオオマチという駅に着いた。

ここで2人はタクシーに乗り込んだ。

「扇沢まで」加藤貴明が告げる。

「やっぱり自然はいいなーって思うのよ。仕事がなんだってね。僕は仕事に詰まったらよくここに来るんだ」

タクシーに30分揺られてオオギサワに着いた。

「ここでトロリーバスに乗り換えるんだ」

武骨なバスに乗る、観光客で一杯だ。トロリーバスは長いトンネルの中を疾走する。やがて終点というところで降ろされ、トンネルを少し歩いてハルカが目にしたものは、

「凄い・・・・・」

圧倒される、巨大な人工建造物だった。

黒部第4ダム。

コンクリートの巨大な壁が眼下へ落ちている。そして水飛沫が勢いよく落ちている。

「この景色をあなたに見せたかった。人間は力を合わせるとこんなものまで作れるって、そう思うんだ」

「・・・・・・・・」

そのあと、一時間ほどいて、またトロリーバスに乗って引き返して、信濃大町の駅前でランチを食べてから、ウルトラあずさで夕方ころ新宿へ戻った

「それじゃあ、また」

手を振って加藤貴明は新宿の雑踏に消えた。

「・・・・うん」

ーこれってデートみたいだったんじゃないの・・・・・

帰りの湘南新宿ラインの中で、ハルカ、ちょっと動揺していた。

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