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2012年11月23日 (金)

書き下ろしSS  軽減税率

時に西暦2015年

「参ったよなあ・・・・」

横浜のお嬢様プロレス団体の社長がつぶやく。

4月から消費税が10%に上がってしまう。

「特リン1万円から上げられないんだよ」

8%に上がった時も税込のチケット代は据え置きにして、実質値下げで対応した。しかし税率10%で再度値下げとなると、確実に会社の収益を圧迫する。旗揚げ6年を迎えたとはいえ、資金繰りは綱渡り状態なのは変わらない。

「それにね、消費税が上がるとこういうどうでもいい消費は真っ先に控えられちゃうんだ」

社長が慨嘆する。

「・・・・・何か対策を考えないといけないですね」

井上霧子秘書も浮かない顔。観客動員で苦戦するとスタッフの賞与に影響が出てしまうのだ。

「特リンで1万円払ったらそのうち909円は国にぶんどられてしまう・・・そうお客さんが我にかえっちゃうんだよね」

「・・・・・・・」

しかしその頃、スポーツ観戦に5%の軽減税率が適用されるという話ができつつあった。

「野球観戦、サッカー観戦などに5%の軽減税率が適用されるって?」

 「・・・はい、スポーツ観戦は『青少年の健全育成に資する』ということらしく」

「凄い理屈だな・・・んで、プロレス観戦も対象にできないかな」

 「財務省に申請を出して通ればということらしいですので、出すだけ出してみたらどうでしょうか」

その数日後、

「・・・・ダメそうだ」

 「えっ」

「財務省窓口のやつら『プロレスはやる前に勝敗が決まっている演武でしょ』ってヌカシテきた。したがってスポーツ観戦に当たらないって。サーカスや劇団と同じ扱いらしい」

「・・・・そうですか」

「・・・そりゃまあ地方では事前の打ち合わせもあるし、ケツギメしている試合がないとは言わないけどさあ、表に出ていない以上そんなの部外者の憶測でしかないし、うちはビッグマッチはガチでやってるよ、もうあーイラッとする。大相撲は申請通るらしいのに。あれだって半分くらい演武だろ」

「・・・・・・親会社を通してみてはいかがでしょうか」

この団体の親会社は上場しているIT企業だ。政財界にもコネクションがあるのでそのルートで軽減税率を申請してみてはどうかと井上霧子が提案した。

「・・・・なるほどね。」

その2週間後、

「通るかもしれない。

「そうですか!」

「事前の打ち合わせのエビデンスが存在せず、かつ選手の練習時間の3分の2以上が体力筋力トレーニングに充てられている以上、演武ショーであるとまではいえない。って言ってきた。」

「・・・・・・・」

「このための資料作りも大変だった」

選手の練習スケジュールとかカード編成会議の議事録とか段ボール1箱分の資料を提出しなければならなかった。

「で、申請を通すにはやはり条件があるっぽい」

「なんですかそれは」

社長が重い口を開く

「OBの天下りを1人受け入れろってさ」

「うっわー、やはりそう来ましたか・・・・どうしようもない奴らですね」

「でもまあ売上がガタ落ちすることに比べれば天下りの一人くらい安いもんだ」

その一か月後、横浜のお嬢様プロレス団体の興行は「青少年の健全育成に資するプロスポーツ興行」に認定され、軽減税率適用の対象になった。

「きょうから監査役をお願いすることになりました、蒲原さんです」

「よろしく」

戸塚本社の一角に「監査役室」が設けられ、財務省OBの60代のおじさんが年俸1500万で着任することになった。と言っても特段仕事もなく、役員会に出席するほかは、週2回程度顔を出してお茶を飲むだけという待遇だった。

」2015年、軽減税率制度がスタートしたが、導入当初から適用基準のあいまいさが指摘され、波乱のスタートとなった。

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