第 1,439.5回 もう何も怖くない(中2)
「もういい加減疲れた」
「まあまあまあまあ」
SPZ60期、ハルカ、横浜戸塚郊外の彼氏宅でポカリスエットを飲んでいた。巡業中は練習や試合で水分不足が続くので、意識して巡業後数日間は水分を多くとるようにしている。
「でも、ハルカさんは…・強いよ」
「えっ」
「結果において、7年間ハードな仕事をやってきたんだから。弱音は…いくら吐いてもいいけど、やっぱり仕事は・・・・結果だからねえ」
「・・・・・っ、そんなんじゃないです」
「・・・・・」
「ここまでやってこれたのは・・・・何度も心が折れかけたけど・・・・運が良かっただけ、あとは・・・・お金が欲しかっただけ」
「お金は大事な動機だよ、どうやったって生きているのにコストがかかるんだから」
「でも、あーもーこんな仕事辞めたい、退職届叩きつけたい・・・・です」
「ハルカさん」
「・・・うん」
「あなたの身体の痛みがどんあものなのか、私にはわからないけど・・・・本当しんどいんだったら・・・辞めちゃっていいと思うよ。」
「貴明さん・・・・」
「私はあなたの『パートナー』だから。」
「でも、まだ先輩が3人もいて・・・・・まだ私の順番じゃ」
「まあまあまあまあ。そこはもっともらしい言い訳の手を考えるんだ。自慢じゃないが私は30人の退職申し出者面接表を書いたからな。まあ一番多いのが『他にやりたいことができました、お勉強したいんです』って言ってくるパターンだね」
そして夕方。
二人はデリバリーピザを食べながら、引退・退職の話の持っていき方について話し合った。
「まあ、もうしばらくは、俺のパートナーでいてくれよ。二人でいればさ、つらいことは半分に、喜びは倍になるよ」
「貴明さん」
「ん?」
「もうしばらく、じゃなくて・・・その・・・・できれば、ずっと・・・・・
「そう言って貰えると・・・まーそのなんだ・・・嬉しい」
二人の距離が縮まる。
顔が近づく。
唇を合わせた。
「んっ・・・・・・んっ・・・・んっ」
最近はハルカも深いキスに慣れてきた。
加藤貴明は視線をハルカにぶつける。
今回はハルカも拒絶しなかった。
「シャワー浴びる?」
「ん」
ハルカがシャワーを浴びる間、加藤は布団を敷いた。
ほどなく、
裸身にバスタオルを巻いたハルカが出てきた。
ちょっと広い肩幅、鍛え上げられて筋肉の付いた身体。
加藤貴明はハルカを軽く抱きしめた。
「肩とか、まだちょっと赤いね」
「ま、それは・・・・仕事で」
「わかってるよ」
加藤貴明、ハルカの肌に点在する赤さの残る部分へ、優しく唇を這わせた。
そしてハルカの身体を布団に横たえる。
「・・・はっ・・・・・」
(二人の、思い出の夜となった)
« 第1,439.3回 もう何も怖くない(中1) | トップページ | 第1,439.7回 もう何も怖くない(下) »
この記事へのコメントは終了しました。
コメント