第1,439.7回 もう何も怖くない(下)
事が終わって、
日付が変わるころ、
「ごめん…貴明さん」
「え・・・・」
加藤氏に二度抱かれたハルカ、瞳が少しうるんでいる。
「私の・・・・いろいろと・・・その、女の子らしくなかったでしょ・・・・」
「とんでもない。ますます好きになった。自分の中では思いを遂げたんだから。もうあなたを離さない」
ハルカ、耳まで赤くなる。
「まあ、明日も仕事だから、とりあえず今日のところは寝よう」
翌朝、ハルカは加藤氏からマンションの合鍵を受け取った。
そしてシーズンオフ休みの間、ハルカは加藤氏のマンションに日参して、何度もぬくもりを分け合った。回を重ねるごとに、ハルカも甘い声を上げるようになり、加藤貴明も我を忘れて9歳年下の戦女神の肌を貪った。
「一緒に家でも買うか」
何度目かの夜、濃密な時間を過ごした後、加藤氏がぼそりと。
「えっ・・・・」
「二人になった以上、ワンルームに住み続けるのもどうかと思ってね。あなたも・・・・引退したら、社宅出なきゃあかんのでしょ」
「うん・・・・」
「一戸建て、キャッシュで買っちゃえば家賃払わなくていいしねえ、ハルカさんの仕事のメドがついたら一緒に暮らそうよ」
「た、貴明さん・・・・・」
「案外安いんだよね。埼玉の北の方だと、新宿1時間圏内で中古で1000万切る物件がごろごろあるから、さ、」
―そっか、もうすぐ、もうすぐなんだ・・・・
明け方、6時からの合同ロードワークに合流するため、戸塚道場にひとり歩くハルカ。
―もう少しだけ頑張って、お客さんにさよならを言って、この世界から卒業して、落ち着いてから第2の人生を考えよう。
そう考えたら、ハルカ、急に肩の荷が軽くなった気がした。
―もう、何も怖くない。
5月下旬、明け方の風が爽やかにハルカの頬を撫でた。
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