第1,444回 遥か彼方のハルカ
67年目7月
サマースターナイツシリーズ シリーズ第5戦
宇都宮市体育館
そして宇都宮大会のメインイベント、
ハルカ、いつものように支援者から送られたガウンを羽織ってリングイン。
対戦相手のフォルトゥナと相対する。
「青コーナー、神奈川県大和市出身ーハルーカー!!」
ドワアアアアア
「赤コーナー 、富山県八尾市出身ー、フォルトゥナー、しづーくー!!」
ワアアああああああ
「レフェリー、セブン山本」
セブンー!!
宇都宮体育館に詰めかけたファンの興奮もピーク。
午後8時25分、ゴング。いきなりエルボーのドロップキックの応酬。
―紫月さんは組むと厄介・・・離れてやるほかない
そう考えたのか、ハルカ、ドロップキックを連発。いつもとやや違うハルカの攻め方に場内どよめき。
―逃げても駄目。
フォルトゥナ、頃合いを見てすっと組みつくやスリーパー責め。長々とスリーパー攻め。こうやってじわじわとスタミナを奪ってゆくのがフォルトゥナの戦い方。
ハルカ、この展開に焦れたのか
「アルティマシュート」
形勢を変えるために繰り出した得意のジャンピングハイキックでフォルトゥナをダウンさせる、
そして起き上がってくるところをとらえてニーリフト。そのあとブレーンバスターの打ち合いも制した。しかしフォルトゥナもスクラップバスターで手数を返す。
このあたりで両者の息が乱れてきた。
ハルカも長身を生かしたDDTで追い込む。
「いける」
ハルカ、ネックブリーカードロップ、続くフォールは2返したフォルトゥナ、
フォルトゥナ、とっさに投げてレッグドロップを落とす、
「ぐっ」
ハルカの頭の中が少しはじけた。
フォルトゥナ紫月、相手の動きが鈍ったとみるや
ブレーンバスター、DDTの猛反撃。
ハールーカ!ハールーカ!ハールーカ!
「くっ・・・・・」
頭を打ったハルカ、しばらく起き上がれなかったが、起き上がって組みつき容赦のない膝蹴り。
「ぐううう」
ダウンするフォルトゥナ紫月、
ハルカ、フォールにいくもフォルトゥナ、2.8で返す。そのまま両者ダウン。そして60分時間切れ引き分けのゴングが鳴った。お互い譲らなかった好試合、場内はSPZコールに包まれた。
「終わっ・・・・た…帰ろう」
ハルカ、苦しそうな表情で起き上がり、フォルトゥナと握手を交わすと、青コーナー花道へ向かうためリングを降りたところでちょっと立ちくらみを起こした。
「つっ」
バタ
リングを降りるときに足から降りられず場外マットに全身を強打した。
「大丈夫ですか!?」
「うん…ちょっとくらっとしただけ、ん、おっけ」
リング下で頭に手をやりながら顔をゆがめるハルカ。しばらく座ったままひじや腰を気にしていたが、フェンスにつかまりながら立ち上がり、小川あかりの肩を借りながら花道を引き揚げた。場内ものすごい拍手
「ハァ、ハァ、ハァ・・・・・暑い中60分やるとね・・・・」
花道を引き揚げ控室にたどり着いたハルカ、息も絶え絶えといった感じでペットボトルのスポーツドリンクを一気に飲み干す。
「きょうはハネ立ちか・・・・シャワー浴びないと」
もうほかの選手は帰り支度を済ませている。
息を整えてからシャワーに向かったハルカ、脱衣所でリングコスチュームを脱いで生まれたままの姿になり、シャワー室へ。
ザアアアアア
ここでハルカ、少し気分が悪くなってきた。
―あれ、どうしてだろう
あわてて目の前のコックに手を伸ばす。その時ハルカは猛烈な吐き気に襲われた。
ーこんなの、いままでにな・・・
ウ・・ウオオオオ
目の前が見えなくなる、立っていられない。ハルカの脳裏に最後に浮かんだものは、東京で帰りを待っている貴明の顔だった。
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「あれ?ハルカさんは?」
移動バス2号車、外人選手とVIP青コーナー側、スタッフが陣取るバス、点呼を取っていたマネージャーさんがハルカがいないのに気づく。
「ちょっと見てきます」
雑用をこなしていた小川あかりが携帯で連絡を受け、探し回る。控室にはいない。
―ハルカさん?どこ?
探し回った小川、撤収中の試合会場にもいない、自販機のあるロビーにもいない。
まさか。
小川あかり、階下にあるシャワー室を見た。
西側シャワー室にはいない。東側シャワー室…脱衣所にリングコスチュームが。
―まだシャワー浴びてるのかしら。それにしては・・・
もうメインイベントが終わってから30分以上経っている。なかなかシャワーの水音がやまないので気になった小川あかり、
「失礼します」
視界に入ったのは、うつぶせに全裸で倒れているハルカの姿だった。
「えええええ!!」
傍らの吐しゃ物、ただごとではない。
会社携帯を取り出した小川あかり、
「中森さん、あの、大変です!!ハルカさんが・・・・」
「今いく」
その15分後、救急車が到着。
「救急搬送、搬送者の氏名は、大宮遥。大小の大にお宮の宮、遥か彼方の遥・・・」
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遠山の端から 陽は昇り
水面に 嵐 巻き起こる
行かねばならぬ ああ 私には
戦いの場が 待っている
悪鬼羅刹の 炎に焼かれ
気づけば四方 すべて崖
逃げ惑っても 追ってくる
動けば銃火に 晒される
(戦いの歌 作詞作曲:今野和弘)
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レッスルエンジェルスサバイバー リプレイ記
「輝くエッセンシャル」
後半 第2部 完
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