第1,597回 小川あかり、タッグ2冠王
時に西暦2080年、
旗揚げ71年を迎えた横浜のお嬢様プロレス団体は、新人スカウトや新人テストを行い、3人の練習生を獲得した。一人は秋川美喜子、もう一人は佐藤優香(サキタン)、この2人は難なくデビューを果たしたが、最後の一人がなかなかデビューさせてもらえなかった。
「うう…まだまだ努力が足りないみたい・・・」
少女の名は山田輝美15歳、基礎体力はそこそこあって何とか新人テストをパスしたのだが、いかんせん受け身が下手で、上原課長いわく「実戦に出すとやばいレベル」とのことで、なかなかデビューの許可が出なかった。(SPZはいちおうシビアなプロレス団体なので、選手の実戦デビューは現場を仕切るブレード上原の承認が必要なのである)
「ちょっと今のままじゃあリングに上げられないなあ」
この団体は新人を取ったらまず受け身だけ覚えさせて、実戦デビューさせてやられるところから始まる。とはいえ入門から半年もたっているのにボディスラムで投げられただけで頭から落ちてしまうような、壊滅的に覚えの悪い娘だったので、先輩方も手を焼いていた。
「あなた、当分デビューは無理だから、レフェリーにでも転身する?」
「そんな…嫌です。私どうしてもレスラーとしてデビューしたいんです」
とはいえSPZも覚えの悪い練習生に無駄飯を食わせ続けるほど寛容な会社ではない。営業会議で、山田輝美について解雇やリング設営やグッズ販売部門に飛ばしてはという処遇が検討されたが。セブン山本統括部長が口を開いた。
「今までと同じ育成の枠にはまらなければ、別の方法を考えればいいじゃないですか」
「山本さん?」杉浦社長がいぶかしがる
「いままでうちの新人育成はとりあえず前座の試合に出して1こ上や2こ上の先輩にやられてその流れでプロレスを覚えさせました。しかしその手が通じないのであれば専属のコーチャーをつけて、みっちり動きを覚えこまさせたうえで、本番でもその人相手限定でやらせればいいじゃないですか」
「・・・・とはいっても」
「立ち技を多用する選手や力自慢の選手だと事故る可能性が高まりますから。ある程度相手に手加減ができる人でグラウンドレスリングだけで試合のできる人がいるでしょう。うちの会社には」
「そうか、その手がありましたか」
「んで、アングルはうまい事考えましょう、うちらで」
しかし、この仕込みが花開くにはもう少し時間がかかるのであった・・・・
******************************
72年目9月
ところがー
Sクラ4連覇を成し遂げた玄海だったが、最終戦で脇腹を痛めてしまい、入院となった。
「んー、これはちょっと・・・」
そして最古参選手のフェアリー三井寺も右アキレスけん断裂で入院・・・
この状況下で「ウルトラソウルシリーズ」開幕。メインは正規軍の小川、菊次、長原とアポカリプス軍が対抗する構図でカードを組んだ。
シリーズ第6戦奈良大会、メインはあばしりタッグ戦、王者神田幸子、菊次莉乃に対するは小川あかり、長原ちづる組。
長原ちづる、同期の菊次へのライバル心はかなりのものがあった、このチャンスを生かすべく菊次を追い込んでいったが、何しろパートナーの小川のファイトがぐだぐだ。それでも長原、奮闘し、神田に嫌な顔をさせる。そして菊次と長原の同期対決。しかし神田の裏拳が長原に炸裂。このあたりで4人が入り乱れる展開。
「神田さんをお願い!」
長原、うまく神田を場外に突き飛ばすと、小川と合体攻撃、菊次をかかえ上げてダブルパワーボム!
ワン、トゥ・・・ドドドドド!!
懸命に返した菊次だが起き上がれない!!
「もう逃げられないわよ!」
小川あかりSTF、懸命にこらえた菊次だったがついにギブアップの言葉を吐いた。勝負タイム42分24秒のいい試合、王者組は4度目の防衛に失敗。小川あかりはタッグ2冠王!
最終戦はさいたまドーム大会。
« 第1,596回 玄海恵理偉業4連覇 | トップページ | ロマンティック秋色20131016 »
この記事へのコメントは終了しました。
コメント