第1,679.5回 マキーナ姫の日本ホームステイ(1)
「プロレスも、やってみると、難しいですね・・・」
8月のSPZクライマックスで2点に終わったマキーナ・オケッチ・ネグシハベシ姫。
最終戦の横浜スペシャルホール大会終了後、マキーナ姫とお付きのエナ・ガロニンティスは統括部長のセブン山本に呼ばれた。
「お疲れ様でした。これ、今シリーズのギャラです」
セブン山本がやや分厚い長3の封筒を差し出す。外人選手扱いなのでギャラはニコニコ現金払い。
ワンマッチ10万円(手取り)で8試合ファイトする契約だったが、若干「ボーナス」がプラスされて封筒の中には95万円が入っていた。
「で、こちらはエナ様の分です」
エナさんは1試合のみのファイトだったので封筒の中には10万円が入っていた。
「で、今後のことですが」
セブン山本が切り出す
「ファイト内容も堅実ですし、トップ選手相手でもきっちり試合を作ってましたので、ギャラはしばらく同じ・・・という条件で継続参戦いただけませんか?ただ、条件が2つありまして、エナさんとのタッグで売り出したいので2人セットでの参戦契約ということ。あ、もちろんどちらかが負傷された場合はこの限りではありません。あと、シリーズ終了後都度、お国にお帰りいただいたのでは航空券代がかさんでしまうので、当面横浜にホームステイいただくのが条件ですが」
マキーナ姫、しばらく沈思していたが
「・・・わかりました、エナと一緒に残ります。プロレスのチャンピオンになるまでは帰れません」
「ありがとうございます。それでは、シリーズが終わりましたので今までのようにホテル住まいというわけにも参りませんので、さっそく滞在先マンションの手配ですが・・・こんなのはどうでしょうか」
セブン山本統括部長、ノートパソコンを操作し、SPZ道場に近い物件候補を検索した。
「家賃、月額8万円?それにシキキン16万って・・・」
2DKのマンションの数字に絶句するエナさん。
「何でただ住むだけなのにこんなにお金がかかるのですか?」
「・・・・・・いや、それが日本の・・・・」
要するにキャッシュを稼ぎたいマキーナ姫、滞在費を会社持ちにするよう要求。条件は同年代の所属選手と同じ、特別扱いは認められないと交渉するセブン山本。しばらくすったもんだの話し合いが続いたが、出た結論は、戸塚にあるSPZ本社ビルの一隅に2人はホームステイするという条件だった。これなら家賃はタダである。
「どうもー、ボッケリーニ運輸です」
その日の夕方、SPZ本社ビル5階のグッズ販売部のサンプル在庫スペースが急きょ片付けられ、パーテーションで15坪ほどが仕切られた。そこへベッドが2組運び込まれ、あとは応接室から古びたソファや会議用テーブルが運び込まれた。あとは若干のロッカーも。
「ひ、姫さま」
「エナ、私たちは少しでも多く外貨を稼がなくてはならないのよ。住めば都だわ」
お風呂だけは本社に設備がないので、練習の帰りに徒歩で数分の合宿所に入りにゆくこととなった。
「夜間は本社が無人となりますので、出入りはこのカードキーを使ってください。あと通用口が夜10時以降は自動ロックされますので、入り口で4ケタの暗証番号を押すことになります」
セブン山本統括部長、持ち前の手際の良さでマキーナ姫とエナさんの日本滞在の手筈を即日整えた。
「あの…食事は・・・・どうすれば」
エナさんが聞く
「合同練習のある時は、昼食は合宿所で食べられますが、基本的には本社ビルには自炊スペースがないので、外食という形でお願いします、幸い、歩いてすぐのところに牛丼チェーン店が・・・」
「ぎゅう・・・どん?」
まだ箸も満足に使えないマキーナ姫、その日から9月シリーズ開幕前日までは、すべての朝食と夕食を牛丼店で食べることになった・・・・・・
「姫さま、飽きてきました」
その店には他のメニューもあったが、彼女たちは安く上げるためと、食べられそうにないメニューもあったので毎回、『並とみそ汁』で済ませていた。
「エナ、贅沢を言わないの。国でもそんな豪勢なものは晩餐会の時にしか食べられないほど財政は悪化していたでしょう。それに、あの伝説レスラー、スタン・ハンセンも駆け出しの頃はハンバーガーしか食べられなかったらしいから、頑張って大成しましょう。」
「は、はい」
「あと、牛丼に飽きたと思った時は、紅生姜をいっぱいふりかけて食べればいいと思うわ」
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