第1,707.5回 マキーナ姫の日本ホームステイ(3)
マキーナ姫とエナさんの日本ホームステイ日記
SPZクライマックスのシリーズは会場間の移動距離が長いので、選手の移動は基本的に新幹線である。
第6戦の名古屋大会から第7戦の仙台までは新幹線2本を乗り継ぐ。
ゴオオオオッ
時速350kmで列車は疾走する。外の景色が目まぐるしく変わってゆく。
「ひ、姫さま、ものすごく速いです」
「そ、そうね・・・さすがはシンカンセン」
母国・ネグシハベシ国の財政危機を救うため、日本にプロレスの出稼ぎにきている、マキーナ・オケッチ・ネグシハベシ姫とそのお付きの侍女、エナ・ガロニンティスの二人。このシリーズは2人そろってSPZクライマックスに参戦ということもあって、少々お疲れモード。
昼前の新幹線、名古屋から東京へ向かう「ハイパーのぞみ号」10号車の指定席に2人並んで座っていた。本隊側の選手ではないので、移動は基本的に別行動。もっとも来日して1年になるので、マネージャーの付き添いなく新幹線に乗るぐらいはできるようになった。
名古屋から一時間少々で東京駅に到着。次は仙台行の新幹線「パワフルあおば」に乗り継ぐ。あらかじめ会社から渡されていたチケットでは東京駅で40分ほどの乗り継ぎ時間があった。
「ちょっと時間があるわね、会場入りしてからではお昼食べられないと思うから、ここで適当にお昼食べましょうか」
マキーナ姫とエナさんには「栄養費」が支給されている。何しろファイトマネーのほとんどを母国に送金しているので、領収書を提示すれば月間10万円まで経費で落ちる制度が適用された。レスラーは食べるのも仕事のうち。
「今日の試合もきついカードだから、がっつり食べるのはあまりよくないので・・・」
2人は新幹線コンコース近くにある駅弁コーナーへ歩みを進めた。何軒もの駅弁屋さんが軒をつらねている。高級食材を使ったものからスタンダードなランチボックスまで多種多様。
「これが、EKIBEN・・・・ちょっと高いけど、いろんなお弁当があって目移りするわね」
「姫さま、あれなんかどうですか。この間山本さんが会議室でおいしそうに食べていました。山本さんの話ではなんでも日本で一番おいしい駅弁らしいです」
「元祖シウマイ弁当・・・・値段も850円と高くはないわね。じゃあ買ってきなさい」
駅弁とミネラルウォーターを買って、仙台行の新幹線に乗り込み、列車が動き出したところで二人は弁当の紙蓋を外した。
「弁当箱が木でできてます」
経木づくりの弁当箱の中には、一方に俵型に盛られたご飯、もう一方にシューマイをはじめとした色とりどりのおかずが並ぶ。
「うううっ…凄く、おいしいです」
シューマイの味に感動するエナさんだった。
ぽり、ぽり
「これが・・・タケノコ」
マキーナ姫、弁当箱の隅に盛りつけられた筍の煮物がいたく気に入ったようだ。
「駅弁も、なかなかいいものですね・・・」
仙台行の新幹線は、大宮を過ぎ、関東平野を北へ疾走していった。
2人の移動中の映像を収めたあおりVTRは9月シリーズの各会場で第1試合前に放映され、観衆の爆笑を誘った。
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