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2014年4月 3日 (木)

2014エイプリルフール書き下ろし(下)

「今まさに至高の入場曲が収録された録音盤の再生準備に入った。まもなくその姿を表すことになるだろう」

そして、ほどなくして場内にベートーベンの「運命」がかかり、フードに身を包んだ女が花道奥に姿を表した。当然その前にはスピーカーおばさんが。

「いままさに我らが最強の戦士、ム・ジヒが殺戮の場へ確かな一歩を踏み出した。これで愚かな対戦相手の生還の望みは万に一つもなくなった」

スピーカー女は一歩歩くごとに威嚇の言葉を叫ぶ

「我らが戦士・ム・ジヒの気力は漲り、そのッ闘争心は無限大に横溢している。そこにあるのは暴力への渇望。その力が無慈悲に発動されたとき、あわれな犠牲者が血を流しうめきながら絶命するのはほぼ確実であるゥッ」

「・・・・・・くっ」

渡辺智美、だんだん顔から血の気が引いて行った

「我らが最強の戦士、ム・ジヒの筋肉の一片一片が稼働するとき、対戦相手を無慈悲に絶望の谷底へ突き落すことだろう。もうこれは戦いなどという生易しいモノではない、一方的な破壊と殺戮だ」

「・・・・ッ」

「今まさに血に飢えた野獣が狩場まで10メートル。これから目をおおわんばかりの惨劇が展開されるであろう。愚かな犠牲者は己の無力を悟り、非力を嘆きながら、粉砕磨滅していくにちがいない」

「・・・・っ」

「さあ、最強の戦士、ム・ジヒが屠殺場までの距離はほんの数歩。その身体能力が発動されたとき無慈悲な力の奔流が発露し、マットは鮮血に染められることだろう」

「・・・・・ううっ」

渡辺智美、足元がこきざみに震えていた。

「さあ、今まさに最強の戦士・ム・ジヒが鉄柵の中に入った。その凶暴性の発動はもう誰にも止められないッ、愚かな対戦相手が完全に沈黙してもなお、その無慈悲な攻勢は止まないであろう」

「・・・ふぇぇ・・・」

渡辺智美、スピーカーおばさんの精神攻撃に完全に圧されてしまっているようだ。

「ついに最強の戦士・ム・ジヒは壇上へ上がる階段に足がかかった。その無慈悲な暴力の発動を見るのはあと1分1秒以内であろうッ」

「いま階段の2段目に足がかかった。殺戮の時はまさに秒読みに入っている」

「いまム・ジヒが狩場へ通じるロープを跨いだ。その暴力の発動はもはや止められないであろう。愚かな対戦相手が涙を流し許しを乞うても無慈悲な攻撃は渡辺なんちゃらがものいわぬ肉塊に変わるまで続くであろう」

「・・・うううう」

そろそろ渡辺智美が涙目になってきた。

「ついにム・ジヒが殺戮の場へ降りたった。最終臨戦態勢に入り、その悪魔的な暴力装置が薬室に装填されたのであるゥツ」

「・・・うううう」

そしてスピーカーおばさんはム・ジヒのフードつきガウンを取り去った。赤いレスリング着をまとった肉付きのいいシルエットがあらわになる。

「いよいよム・ジヒは最終臨戦態勢に入り、その悪魔的な筋力が躍動を始めた。まもなく今まで誰も見たことのない、そうまさに煉獄の炎より苛烈な暴力の発動がみられるであろう」

ム・ジヒは青コーナー付近で仁王立ちしたまま動かない。

そのままスピーカー女は場外に降り、本部席ゴングの前に陣取った。
そしてスピーカー女が自らゴング横の木槌を手に取る。

「戦闘開始のゴングを慣らす木槌をいまわれわれは手にした。ゴングが打ち鳴らされたその瞬間、無慈悲なる暴力がせきを切ったように押し寄せるであろう」

「・・・ふぇぇぇ」

「いまわれわれは木槌を持った手を振り上げた。その手を振り下ろした時まさに、血みどろの宴が始まる鐘が鳴ることだろうッ」

「・・・ああああ、あ」

もう渡辺智美、戦意を完全に失っていた。顔面蒼白。

「木槌とゴングの間隔はもうほんの10センチに過ぎない。ゴングが打ち鳴らされたその瞬間、ム・ジヒの力が解放され、愚かな対戦相手を無慈悲に蹂躙することだろう、そしてその行きつく先は、力無き者の無残な最期だ」

「木槌がゴングをとが触れ合うまで。そう破滅の鐘が鳴るまであと5センチ」

「あと3センチ」

 「・・・ああああ、ああっ」

「あと2センチ」

 「ひいいいいっ」

「あと1センチ」

 「ふぁぁぁあ、怖いよ、もうだめー、家に帰るーーー」

と叫びつつ渡辺智美は場外に飛び降りるようにロープを跨ぎリングを降り、
ダダダダダッ

そのまま花道を全速力ダッシュで逃走し、控室へ消えてしまった。場内唖然。前代未聞の事態に、本部席に座っていた社長が井上霧子とわずかに協議した後、リングに上がり裁定を下した。

「えー、ただいまの協議について説明いたします。渡辺智美選手、逃走のため、運営といたしましては、試合放棄と判断し、ム・ジヒ選手の不戦勝といたします」
場内爆笑。

そしてスピーカーおばさんも一方的に勝利宣言。

「前代未聞の対決戦で、我々は主導権を握り、愚かな対戦相手は破滅の恐怖に押し潰されてしまった。我々には災いを福に作ってゆく、そうまさに、勝利者の春であるゥッ」

(筆者より:某国のミサイルやるやる詐欺にインスパイアされてつい書いてしまいました)

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