第1,750回 新人に負けちゃあ、カッコが悪い
78年目7月
「もうそろそろダメだと思います」
団体最年長のアイドルレスラー、山科瞳が引退を表明。長らく前座要員として飛び回るプロレスを展開されてきたが、いよいよ体が言うことをきかなくなってきたらしい。
サマースターナイツシリーズ開幕。
東北地方を南下するシリーズ。各地で熱戦が展開された。
第5戦宇都宮大会のメインで組まれたのはSPZ戦、
王者ガラパシ・ガルパンに挑むのは前王者のカンナ神威。早くもリターンマッチ。
「神威選手、前月は不覚を喫してますから、今回は勝ちにいく試合をするでしょうねえ」
(かいせつの杉浦美月)
「同じ相手に連敗は避けたい」(カンナ神威)
しかしいきなりのスリーパー責めで先手を取ったガラパシ、執拗な攻めでスタミナを奪う作戦に出た。しかしカンナ神威も鋭いエルボーを連発しダウンを取るとスリーパーのお返し。そしてダイビングプレスで優位に立つ。ここでさらに、サソリ固めで痛めつける。
ガルパンもボディスラム連発で意地を見せたが、カンナ神威、トップロープに登ってダイビングショルダー。この選手器用だ。これで吹っ飛ばされたガルパンはあっけなく3カウントを奪われた。24分52秒、カンナ神威王座奪還。
「うん・・・これでいい、取り戻した」(カンナ神威)
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そして最終戦は新日本ドーム大会。
「山科瞳引退試合」の大看板が掲げられた。
試合開始前のカード発表の際、鈴木リングアナが一言
「第1試合に登場する山科瞳選手はこの試合が最後のファイトとなります。ファンの皆様、より一層のご声援をお願いいたします」
ドワアアア!!
山科瞳の引退試合は第1試合に組まれた。「前座でいいです」と本人が希望した。対戦相手は新人の結城千種。
―新人に負けちゃあ、カッコが悪い。
いきなりドロップキック連発、そしてタックルと流れるような攻めを見せて先手を取った山科、結城もボディスラム、エルボーで応戦したので場内盛り上がった。
―これが、プロの重さよ
山科瞳、一瞬だけ客席をチラ見すると、自らダッシュしてネックブリーカードロップ!勢いよく決まり、これで3カウントが入った。勝負タイム8分38秒。
「今までどうもありがとう!」
引退試合を白星で飾った山科瞳、リストバンドを客席に投げ入れ、そのあと自らシューズの紐をほどいて、
「さよなら!」
なんとリングシューズを客席に投げ入れて、現役生活への未練を断ち切った。場内大盛り上がり。そのあとゆっくりと花道を引き揚げ、入場ゲートで深々と一礼し姿を消した。
「ふぅー、やれやれ。」
安堵した表情でペットボトルの水を飲む山科瞳だった。
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