第1,796回 未練を断ち切ること
そしてセミ。まず欲野深子が試合の予定もないのにリングコスチューム姿で登場しリングイン。場内どよめき。
「次の試合に登場する、サキタン、ファイナルバトル!!」
絶叫した。
次に対戦相手のエナ・ガロニンティスが入場。いつも通り淡々と入場し、メイド服を脱ぐ。
そのあと「機械獣のテーマ」が流れ、空飛ぶ小悪魔、サキタンが入場。場内ヒートアップ。
両者コールのあと、欲野がセコンドに下がる。欲野、サキタン、エナの3人は同期。
一つ一つの技を確かめるように繰り出して行ったサキタン。そしてエナと若手時代を思い出したかのようなグラウンドの攻防を見せる。そしてドロップキック、ブレンバスターで仕掛けて、バックドロップで相手の戦意を削ぎにかかる。相手が倒れたのを見て
「うりゃーー」
ムーンサルト炸裂。しかしエナ2で返す。ドドドド。ならばとサキタン、ニーアタックを狙ったが背面トペに切り返される。
「じゃあこれで」
2度目のバックドロップ、しかしエナさんこれも返してタントラロック!!しかしあまりにもロープに近い。このあとエナも勝負に出てジャーマン。
ワン、トゥ…ドドドド
これ以上は受けられないと判断したサキタン、ボディスラムで転がすや、素早くコーナー最上段に上がって一瞬だけ観客席をチラ見。
(さよなら!)
この日2度目、最後のムーンサルト炸裂。いつみても華麗なフォーム。
ワン、トゥ、スリ
「23分9秒、ムーンサルトプレスからの片エビ固めでサキタンの勝ち」
引退試合をなんとか制したサキタン、苦しい表情で勝ち名乗り。同期でタッグパートナーの欲野深子が駆け寄る。
(ダメ、これ以上は・・・・秋川さんごめん、こうする・・・しかないの)
欲野深子、プロレスへの未練を振り切るため、最後のアクションに出た。リストバンド下に隠し持っていたゴムパックを口に含む。
欲野と握手するふりをしていきなり蹴り!!そして
ブーッ
青色の独霧を欲野の顔面へ噴射!!
「アッー」
欲野悶絶!
「最後の最後まであんたの下でやってられないわよ」
入場コールも欲野の前、テーマ曲も欲野のテーマ。週刊専門誌に書かれるのも「欲野、サキタン組」
止めに入ったエナもグーパンチ一撃。リングアナがゴングを乱打。返す刀でレフェリーのセブン山本には隠し持っていたせん抜きで殴る!殴る!
「ギャーッ」
セブン山本統括部長、悶絶
若手選手があわてて止めに入ったがリング上は大パニック。ひとしきりもみ合った後。花道に出て、自らリングシューズの紐をほどき、左足、右足と脱いだ。
「シーユーインヘル!」
サキタン、プロレスへの未練を断ち切るため、自らリングシューズを客席に投げ入れた。場内どよめき。そのあとリストバンドも外して投げ入れた。そしてどたどたと花道を歩き、ゲートへ消えて行った。
「はー終わった・・・・」
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埼玉大会メインはカンナ神威VS越後しのぶのSPZ戦。カンナの苛烈な攻めを越後、耐えて耐えて耐えきって60分フルタイムドロー。王者が6度目の防衛に成功。
メイン終了後、サキタンの引退セレモニー。
久々に、顔のペイントを落としたサキタンがパンツスーツ姿でリングに上がる。もう狂戦士サキタンの面影はなく、ひと仕事終えた、佐藤優香の安堵の表情がそこにはあった。
「ファンの皆様、いつも株スーパースターズプロレスリングゼットにお金を落としていただきありがとうございます。御覧の通りサキタンはいなくなりましたが、そこは狡猾な欲野先生のことですから、つづく戦士を仕込んでいることでしょう。」
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サキタン
SPZ72期
2080年6月12日、長野マウンテンウエーブ大会での対 北条咲戦でデビュー。2088年6月22日、さいたまドーム大会での対エナ・ガロニンティス戦で引退。稼働月数97ケ月
出場試合数(概算)712試合
タイトル歴
第220代SPZ世界王者
第222代SPZ世界王者
第148代・151代・153代・155代・157代・160代SPZ世界タッグ王者(パートナーは欲野深子)
第105代あばしりタッグ王者(パートナーは欲野深子)
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