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2014年8月17日 (日)

第1,797.5回 王宮のゲバゲバ(1)

80年目 あおりVTRから
東欧の山奥にある人口634名の小国、ネグシハベシ国。
交通の不便な山奥に位置し、かつこれといった産業もないため、ネグシハベシ国の国力は衰退の一途をたどっていた。

この国の元首は国王だが、君臨すれども統治せずをモットーにしていたので、基本的には辺境の別荘にこもって詩作にふける毎日を送っていたので、政務全般は選挙で選ばれた議会、そして数人の大臣と官僚が執行していた。

ネグシハベシ国政府は失業者を増やさないため、なけなしの政府資金を使って年中、道路や河川の改修工事を手掛けていた。こうして65歳未満の働けるものは働くといった社会構造となっていたが、政府の資金は細る一方なのでこまった官僚は税金を取りやすいところから取り、それで道路工事や社会保障にあてようと画策した。

「4月1日より消費税が70パーセントとなります」

物やサービスを買った時に、税金として本体価格に上乗せして徴収される。所得税を取ろうにも金持ちがいないのでろくな税収にならないし、ろくな産業がないので法人税も取れない。ということでネグシハベシ国の消費税率はたちまちのうちに上がっていった。パンやトマトスープといった最低限の食品に軽減税率を導入すべきではという意見もあったが、「対象の線引きでもめるから」という理由で単一税率が堅持され、本体価格が200バルス(ネグシハベシ国の通貨単位)のパンを買うと税込で340バルスを払わなければならないという状況に陥った。

「民は苦しんでおります」

この状況を打破するために立ち上がったのはネグシハベシ国第一皇女のマキーナ・オケッチ・ネグシハベシ姫。母国の財政悪化が深刻化し、王族の人間も晩御飯の内容が貧相になってしまった。

このままでは外貨が底を突きかねないと考えたマキーナ姫は、17歳になるや侍女のエナ・ガロニンティスを伴い、極東の経済大国・日本に出稼ぎに出た。幸い、王家の人間は幼少のころからタントラという独自のレスリングに似た格闘術の習得を義務付けられており、それを活かすために日本の格闘技興行「プロレス」の門をたたいた。

動きが若干違っており、かつある程度相手を光らせたり、技を受けたりしなければならないので戸惑う面もあったが、そこは若さならではの順応性があり、たちまちのうちにプロレスのリングになじんでいき、マキーナ姫は日本マットで年収1000万円を超える大金を稼ぐに至った。

驚くべきことに、マキーナ姫とエナはファイトマネーのほとんどを母国に送金し、王国の雑収入として一般会計に組み入れていた。しかしネグシハベシ国の官僚は上がった収入を政府の財務改善には使わず、新規のバラマキ支出に充てていたので、本質的には何の解決にもならず、ただ財政だけが悪化し、政府は消費税率を80%、90%、100%と加速度的に上げて行った・・・・

「税金が上がって生活が苦しい」
農作物を打って生計を立てている者は特に増税の影響をもろに受けていた。消費税率が100%を超えた時点で庶民の間では節税対策のために家庭菜園を作るのが流行し、休みの日は釣りで魚を確保ということが流行し、政府が資源保護を理由に無許可の釣りを禁止し役人と小競り合いになる事態が起こった・・・・

「私がいくら稼いでお金を入れても何も変わらないではないですか!」

マキーナ姫が里帰りのたびに政府高官に申し入れを行う。SPZシングルのベルトやタッグのベルトを巻いて、SPZにベルトのリース料を請求しても、政府は増えた収入分だけ道路工事をばらまくので財政の悪化は止められなかった。

「かくなるうえは、わたくしも政府入りして王国の財務を全面的に見直しさせていただきたいと思います」
何度目かの一時帰国の際、マキーナ姫が議会で意見陳述。

「私たちは政府の無意味なバラマキ支出のために、異国の地で体を張って闘っているのではありません」

王族の政治介入だという異論もあったが、議会にはマキーナ姫を支持する勢力もあったので、ついに2月21日付でマキーナ姫はネグシハベシ国の大蔵大臣となった。

「私が大蔵大臣となったからには、私がすべての支出を精査いたします。」
まずは一定金額以上の支出は事前に大蔵大臣の決裁を得る制度に改めた。

「バラマキでの道路工事や河川工事など、意味がありません。即刻停止するべきです」
「しかし、それでは工事作業で給与を得ている多くの民が路頭に迷います」

大蔵官僚がマキーナ姫に諫言する。
「もともとそれが不自然な制度だったのです。あくまで個人の才覚で糧を得るべきなのであります・・・とはいえ激変はよくありませんから」

「失業手当でも配るのですか」

「いえ、ですから、一時的にお金を配っても何の解決にもなりませんから・・・民で路頭に迷うものが出たら収容所を作ってそこで暮らさせなさい。」
大蔵大臣に就任したマキーナ姫は就任一か月で政府支出の約半分を、公共工事や社会保障といった部分をカットしてしまった。政府から配られるカネで生計を立てていた民はことごとく生活が立ち行かなくなり、蓄えを使い果たすや「生活破綻者収容所」に入れられ、3食とも黒パンと不味いスープで無聊をかこつことになってしまった。

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