第1,857回 結城千種、欠場
83年目8月
パシャパシャパシャ
いつもなら閑散としているシリーズオフのSPZ本社、出勤してくる杉浦社長、山本統括部長を報道陣が多数取り囲んだ。
「結城千種は本当に引退してしまうんですか」
「会社として慰留はしているんですか?」
もみくちゃにされた杉浦社長、ちょっとムッとした表情で
「あとで記者会見しますから!」
さすがの杉浦社長も年齢を重ね、気が短くなってきていた。役員会議室で幹部社員だけを集めての緊急会議。
「山本君どうするのよう!いまさら『あれはアングルでした』なんて言えないでしょう。今回やりすぎよ。負けたら即引退マッチなんて!!」
「しゃ、社長、落ち着いてください。当社はプロレス興行会社です。アングルかどうかは墓の中まで持っていくのが運営の共通認識のはずです。起こったことは受け止めて、アングルを調整してゆくしかないと思います」
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30分後本社会議室で、杉浦美月社長と山本和男統括部長が記者会見。
「このたびは騒ぎが大きくなってしまい申し訳ありません。一部の演出に行き過ぎがあったことは深くお詫びします・・・」
「結城千種選手は引退してしまうんですか?」
セブン山本統括部長が口を開いた。
「退職届は出ています。ですがあれほどの選手をはいそうですかと手放すほどうちは間抜けな会社ではありません。どんな手を使ってでも慰留しますから」
最大のイベントSPZクライマックスが迫っていたが、ファンの注目は結城千種が引退するのかどうかが焦点になってしまった。
その翌々日SPZクライマックスの記者会見。エントリーは下記の8名
◆マキーナ・オケッチ・ネグシハベシ(年齢非公開)
2年ぶり8度目の出場
「王国再興のため・・・・賞金をなんとしても」
◆小下小石(22)7年連続7度目の出場
第80回大会優勝
「私が望むのは優勝。力負けしないようにやります。真のアイドルレスラーになるために、頑張ります」
◆アドミラル・ヤジマ(21)3年連続4度目の出場
「ことしはトーナメントだから一発狙ってやんよ」
◆市ヶ谷レイカ(19)4年連続4度目の出場
前回優勝
「まあ、わたくしが優勝することは確定事項ですわね」
◆金森麗子(23)2年ぶり3度目の出場
「Sクラに出るのも多分これが最後になると思いますので、精いっぱいやります」
◆斉藤智子(20)2年連続2度目の出場
「全力でやります」
◆エステル・ブリザード(年齢不詳)2年連続2度目の出場
「神よ。お守りください・・・」
◆遠藤亜美(16)初出場
「優勝は無理だと思うけど、かき回すよ~」
けっきょく結城千種は次期シリーズ全戦欠場となった。
なお、ことしはリーグ戦での開催を取りやめて、最終戦大阪大会のワンナイトトーナメント形式でおこなわれることになった。
「市ヶ谷選手と力の差がある選手とシングルマッチをメインイベントに組んでも、お客さまに支持されないと考えました」
シリーズ最終戦、大阪大会、休憩後からワンナイトトーナメント開始。
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