第1,953.5回 ガラスの割れる音
時に、西暦2095年8月
横浜のお嬢様プロレス団体、スーパースターズ・プロレスリング・ゼットが、プロレス文化の普及と新しいファンの拡大を狙って戸塚駅前につくったSPZプロレスミュージアムで事件が起こった。
ガシャーン
深夜2時、通用口の施錠してあったガラス扉が破壊された。
侵入する数名のスーツ姿の男たち。
階段を駆け上がり、2階の展示スペースへ。
翌朝、出勤した社員が見たものは、
見るも無残に荒らされた展示スペースだった。
「ひどいことを・・・」
往年の名レスラーのシューズやリストバンド、ガウンの入ったガラスケースがバールのようなもので叩き割られ、無惨に荒らされていた。
「機械警備は作動しなかったのですか?」
あわてて出勤したSPZミュージアム館長、杉浦美月(SPZ前社長だが、年齢が年齢なので、SPZミュージアムの館長という閑職におさまっていた)が社員に問う。
「・・・そのう・・・どうも昨日の遅番が退出時に機械警備をセットし忘れたようでして・・・」
売上金は金庫に入れてあるので、金目の物はないが、いちおう展示物はSPZの歴史が詰まっているので、最終退館者は、通用口のカギを閉めて、さらに機械式警備のカードキーを通して警備をセットするルールになっている。
「この間抜け!始末書よ!」
その日は臨時休館となり、破壊されたガラスケースを撤去し、スタッフは修繕に追われた。
(何か盗られたものは・・・)
修繕のかたわらで、展示物の状況をチェックする杉浦社長。
「・・・・・!!」
2階の一番奥のガラスケース
トルソーに展示されていた、
SPZ1期、南利美の
リングコスチュームが消えていた。
(これは責任問題になりますね・・・)
くちびるを噛んだ杉浦美月だった。
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