第2,063.5回 出戻り
「ワン、トゥ、スリッ」
元SPZのスター選手、橘みずきは今日も負け役をこなしていた。アメリカ、ミネソタ州セントポール郊外のスモールハウス。ローカル団体の興行の第3試合、リングネームは「タカツキ・ミズキ」。対戦相手の女子レスラーを追い込んだものの、トドメのダイビングプレスを狙うや対戦相手のマネージャーに妨害されてデッドリードライブを食らって敗北という役どころ。
そして貰えるギャラも当初の話の5分の1以下。下部団体の下積みで3か月も頑張ればWWCAやTWWAのサーキットに揚げてもらえるという話だったが、大会場のリングには数回しか上げてもらえなかった。
やむなくローカル興行のリングを転戦して稼いでいるが、はっきりいって待遇は日本にいた時の方が良かった。サロンバスで移動していたSPZ時代と比べて、エージェントの車で長時間の移動はしんどい。自らハンドルを握ることすらある。宿舎の手配も自分でやらなければならない。
(そろそろアメリカの旅も終わりかな・・)
橘みずき、宿舎に着くや、SPZの山本社長にメールを打った。またSPZで仕事がしたい。過去のことは水に流してもらえないか・・・と。
8月のSPZクライマックス開幕の前日、橘みずきは羽田着の飛行機で極秘帰国した。その足で横浜戸塚のSPZ本社で契約交渉。
「じゃあ、ギャラはこんな水準でどうでしょうか」
同期の真田美幸を少し下回る、1試合11万円強のファイトマネーで話はまとまり、さすがに長旅で疲れており、かつ8月シリーズはすでにカードが決まっているので、巡業に帯同せず調整にあて、9月シリーズからSPZマット復帰というスケジュールで話がまとまった。
「瀬戸田さんゴメン。戻ってきちゃった」
「・・・・・・・・・・・そうなるかなって想定はしてた。まあ、SPZでやってたころの感覚を早く戻して。」(瀬戸田光)
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